説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】画像形成に要するトータルの処理時間を短縮する。
【解決手段】光で描画し、熱で定着する媒体を用いた画像形成において、描画工程と定着工程とを同時に行うことによって、画像形成に要するトータルの処理時間を短縮する。光に反応する発色層を発色させて画像を形成する画像形成装置において、光を発色層に照射して描画を行う発色部と、発色を安定化して定着させる定着部とを備える。定着部は、記録媒体の周辺環境を発色層の発色が安定化する状態とし、発色部は、前記安定化状態の周辺環境にある記録媒体の発色層に光を照射して描画を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成方法に関し、特に、フォトクロミック化合物を含有する発色材への画像形成に関する。
【背景技術】
【0002】
画像、映像、音楽、文書等の電子データを記録する記録媒体として、CD,CD−R,CD−RW,DVD,DVD−RAM等の種々のディスク状の記録媒体が知られている。これらのディスク状の記録媒体に様々なデータを書き込んで記録する際、そのディスク状の記録媒体に記録した内容を目視で確認することができるように、記録内容に関するタイトル等の情報をディスク状の記録媒体の面に記入する場合がある。
【0003】
この場合、ディスク状の記録媒体の表面に筆記具を用いて直接書き込むことが一般的であるが、プリンタを用いて別途用意したラベル紙に記録情報を印刷し、このラベル紙をディスク状の記録媒体の表面に貼り付けることも行われている。
【0004】
このように、ディスク状の記録媒体の表面に直接書き込む場合には、筆記具を用いることから、記録媒体の記録面を損傷させるおそれがあり、また、プリンタを用いてラベル紙に印刷を行う場合には、プリンタが別途必要とするという問題がある。
【0005】
そこで、レーザ光を利用してレーベル面に画像を形成することによって、筆記具による書き込みやプリンタにより印刷を不要にする光ディスク装置が提案されている(特許文献1)。
【0006】
この文献のプリンタでは、レーベル面側に感光材、感熱材等による可視光特性変化層を形成した光ディスクを用意し、この光ディスクのレーベル面をピックアップに向けて光ディスク装置のターンテーブルにセットする。このターンテーブルを回転させて、光ディスクの光ディスクの面を光ピックアップに対して相対移動させ、この移動に同期して光ピックアップから出射するレーザ光のパワーを、画像形成しようとする文字、絵等の画像データに応じて変調して可視光特性変化層に照射する。このレーザ光の照射により、可視光特性変化層に可視光特性を変化させて、画像を形成するものである。
【0007】
また、レーベル面を構成する発色材としてフォトクロミック化合物を含有する発色層を基体上に設けたものを用い、特定波長の光照射によって色相を変えることによって、文字や絵を形成するものも提案されている(特許文献2)。
【0008】
また、フォトクロミック化合物による発色において、所定温度以上に加熱することで発色を安定させて定着させることも知られている。
【特許文献1】特開2002−203321号公報
【特許文献2】特開2005−128453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フォトクロミック化合物は、特定波長の光照射によって色相が変化する特性を有し、例えば、紫外光で発色し、可視光で消色する可逆的に発消色するものが知られている(特許文献2参照)。このようなフォトクロミック化合物を含有する発色材によって画像形成する場合には、フォトクロミック化合物に光を照射することによって画像を描画する描画工程と、この描画工程で描画した画像を加熱によって定着させる定着工程とを行う必要がある。
【0010】
図12は、この描画工程と定着工程による画像形成の工程を説明するための概略工程図である。
【0011】
また、図12に示す画像形成の工程では、所定の色に発色するフォトクロミック化合物に紫外光等の特定波長の光を照射することによってその色を発色させて画像を形成する発色工程を描画工程と、この描画工程の後に行う、所定温度以上に加熱することによって形成した画像を安定に定着させる定着工程の各工程を順に行う。
【0012】
図12(a)において、画像形成の工程は発色工程による描画工程と、描画工程に続いて行う定着工程とからなる。図12(b)、(c)は、ディスク状の記録媒体に画像を形成する場合の描画工程と定着工程を示している。
【0013】
図12(b)は描画工程を示し、面上にフォトクロミック化合物が設けられディスク状の記録媒体6に対して、光源201から紫外線を照射して描画を行う。ここでは、記録媒体6を回転させながら紫外線を照射することで描画部分200を形成する。図12(c)は定着工程を示し、描画が行われた記録媒体6をヒーター301で加熱して描画部分200を定着する。これによって、定着部分300には画像が形成される。
【0014】
ところで、フォトクロミック化合物を含む発色材への画像の描画は、紫外線照射によって全てのフォトクロミック化合物を発色させた後、消色工程によって発色した部分のうちの不要部分の色を消す処理を行って画像の描画を行うことも可能であり、この場合C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の3原色にそれぞれ発色する3種のフォトクロミック化合物を用いればフルカラーの画像を、3原色の3種のうち2種のフォトクロミック化合物を用いればカラーの画像を、3原色の3種のうち1種のフォトクロミック化合物を単独で含む場合には単色の画像を、描画することが可能となる。
【0015】
一方、消色工程を行うことなく紫外線の照射により画像の描画を行う場合は、描画される画像は全て単色となる。このとき、3原色にそれぞれ発色する3種のフォトクロミック化合物を全て含む場合には黒色を、3原色の3種から選択した2種のフォトクロミック化合物を含む場合にはこれら2種の発色材の組み合わせによる色を、3原色の3種のうち1種のフォトクロミック化合物を単独で含む場合には発色材の色を、それぞれ発色する。
【0016】
描画工程はT1の時間を要し、定着工程はT2の時間を要するため、画像形成にはトータルでT1+T2の時間を要することになる。
【0017】
上記したように、フォトクロミック化合物の発色材を用いた画像形成では、描画工程と定着工程とをそれぞれ別々に行なっていたため、トータルの処理時間が長くなるという問題がある。
【0018】
そこで、本発明は上記の課題を解決して、画像形成に要するトータルの処理時間を短縮することを目的とする。特に、フォトクロミック化合物を含有する発色材を用いた画像形成において、発色材を発色させて描画を行う描画工程と、発色した画像を安定させる定着工程とを合わせたトータルの処理時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、光で描画し、熱で定着する媒体を用いた画像形成において、描画工程と定着工程とを同じ時間帯で行うことによって、画像形成に要するトータルの処理時間を短縮する。
【0020】
本発明は、安定して定着が行われる環境状態において描画を行う第1の態様と、描画した部分を安定な定着状態とする第2の態様との2つの態様とすることができ、各態様において、画像形成装置の形態と画像形成方法の形態とすることができる。
【0021】
本発明の画像形成装置の形態において、第1の態様は、光に反応する発色層を発色させて画像を形成する画像形成装置において、記録媒体に設けた発色層に光を照射して描画を行う発色部と、発色部の発色を安定化して定着させる定着部とを備える構成とし、定着部は、記録媒体の周辺環境を発色層の発色が安定化する状態とし、発色部は、安定化状態の周辺環境にある記録媒体の発色層に画像データに応じて光を照射して発色させて描画し、記録媒体に画像を形成する。
【0022】
発色層は、フォトクロミック化合物を含有する発色材をディスク状の記録媒体への塗布により形成する。発色材を形成する材料系は種々存在し、種々の特性を備える。この発色材において、発色および定着との間に係わる特性では、所定の温度条件において発色することで定着が行われる特性や、発色した状態において所定の温度条件とすることで定着が行われる特性が知られている。
【0023】
本発明の第1の態様は、上記した特性の内で、所定の温度条件において発色することで定着が行われる特性を利用するものであり、一方、本発明の第2の態様は、他方の特性である、発色した状態において所定の温度条件とすることで定着が行われる特性を利用するものである。
【0024】
発色部は、この記録媒体上の所定角度範囲内に光を照射する光照射手段を有し、また、定着部は、この記録媒体を所定温度に加熱する加熱手段を有する。そして、照射手段は、加熱手段の加熱により所定温度にある記録媒体に光を照射する。
【0025】
本発明の第1の態様の画像形成装置では、発色部の周辺環境を発色層の発色が安定化する状態とし、この状態で発色層に光を照射して描画を行うことによって、描画を行うと共に同時に定着させる。
【0026】
一方、本発明の画像形成装置の形態において、第2の態様は、第1の態様と同様の構成において、発色部は、記録媒体の発色層に光を照射して発色させて描画を行い、定着部は、記録媒体の描画部分について発色層の発色が安定化する状態とする。
【0027】
発色層、発色部、および定着部は、第1の態様と同様の構成とし、加熱手段については、光照射手段により光照射された記録媒体の描画部分を所定温度に加熱する。
【0028】
本発明の第2の態様の画像形成装置では、発色部と定着部とを組みとして記録媒体に対して相対移動させ、この相対移動に伴う記録媒体の移動領域に対して画像データに応じて光を照射して発色させる描画と、この描画による描画部分の定着とを逐次行うことによって、記録媒体の全面に画像形成する。これにより、記録媒体の描画部分を、発色と同じ時間帯で安定化させることによって、描画を行うと共に実質的に同時に定着させる。
【0029】
本発明の第1および第2の態様の画像形成装置において、光照射手段による光照射と加熱手段による加熱とを、記録媒体を回転させた状態で行う。光照射手段は、記録媒体を回転させる回転手段の中心から径方向にライン状に発光し、記録媒体の回転によって記録媒体上の発色層の全周を照射する。
【0030】
また、加熱手段は、記録媒体上の少なくとも径方向の領域部分を加熱し、記録媒体の回転によって記録媒体上の発色層の全周を所定温度とする。
【0031】
光照射手段が照射する光は紫外光を用いることができ、発色材として、光照射手段が照射する紫外光により、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)を発色するフォトクロミック化合物を少なくとも一つ含む構成とすることができる。
【0032】
C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)を発色するフォトクロミック化合物を全て含む場合には、紫外光の照射によって発色材は黒色を発色する。また、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の単色を発色するフォトクロミック化合物を単独で含む場合には、紫外光の照射によって発色材の各単色を発色する。
【0033】
また、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)から選択した2色を発色するフォトクロミック化合物を含む場合には、紫外光の照射によってこれらの発色材の組み合わせによる色を発色する。
【0034】
本発明の画像形成方法は、光に反応する発色層を発色させて画像を形成する画像形成方法において、発色層に画像データに応じて光を照射して発色させて画像の描画を行う描画工程と、この描画による発色を安定化させる定着工程とを含み、描画工程と定着工程とを重複させることによって、光を発色層に照射する画像の描画と、描画による発色を安定化させる定着とを同じ時間帯で行う。画像形成方法においても、安定して定着が行われる環境状態において描画を行う第1の態様と、描画した部分を安定な定着状態とする第2の態様との2つの態様とすることができる。
【0035】
本発明の画像形成方法の形態において、第1の態様は、定着工程は発色層の周辺環境を発色層の発色が安定化する状態とし、描画工程はこの安定化状態の周辺環境にある発色層に画像データに応じて光を照射して発色させる。
【0036】
描画はフォトクロミック化合物を含有する発色材が塗布された発色層を有する記録媒体に対して行うことができる。このとき、記録媒体を所定温度下にある記録媒体上の発色層に光を照射して画像を描画することにより、描画工程と定着工程とを重複させ描画工程と定着工程とを同じ時間帯で行う。
【0037】
一方、本発明の画像形成方法の形態において、第2の態様は、記録媒体上に光を照射して発色させて描画して発色層を発色させる発色工程と、前記発色工程による発色部分を所定温度に温度設定させて定着させる定着工程とを、記録媒体を移動させながら逐次行うことにより描画工程と定着工程とを重複させ、発色層全面に画像形成する。描画は、第1の態様と同様に、フォトクロミック化合物を含有する発色材が塗布された発色層を有する記録媒体に対して行う。
【0038】
本発明の第1および第2の態様の画像形成方法において、記録媒体はディスク状とすることができ、このディスク状記録媒体を回転させた状態とすることで、光照射による描画と加熱による所定温度の環境設定とを同時に行うことができる。
【0039】
また、照射する光は紫外光とすることができ、発色材は、この紫外光により、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)を発色するフォトクロミック化合物を少なくとも一つ含む組み合わせとすることができる。
【0040】
多色による画像形成では、画像形成装置は、発色部、消色部、定着部の各部を記録媒体の回転方向に配置し、記録媒体を回転させながら、はじめに発色部によって記録媒体上に塗布された発色材を発色させ、次に消色部によって発色した色の内から所定の色を消色して消色による全ての描画を完了した後、定着部によって消色して残った色を定着させる。
【0041】
これに対して、単色による画像形成では、画像形成装置は、記録媒体を回転させながら、定着部によって記録媒体を加熱して、記録媒体の周辺環境を発色が安定化する所定温度とし、この周辺環境において、発色部によって記録媒体上に塗布された発色材を発色させる。周辺環境は発色が安定化する状態にあるため、発色部によって記録媒体上に塗布された発色材を発色させると、この発色による描画が行われると同時に定着が行われる。
【0042】
また、ディスク状の記録媒体の場合には、記録媒体の周辺環境を発色が安定化するために行う記録媒体の加熱と、描画を行うために行う記録媒体の発色材への光照射とは、ディスク状の記録媒体を回転させながら行うことができる。
【0043】
また、記録媒体は回転することから、回転方向に対する発色部と定着部に順は何れが先であっても同様に行うことができる。
【0044】
本発明の単色による描画では発色工程がそのまま描画工程となるため、発色工程と定着工程とを同時に行うことが可能である。
【0045】
多色による画像形成のように、発色工程の後に消色工程を行う場合には、描画工程に対応する消色工程と定着工程とを同時に行うと、定着工程によって消色工程が十分に実行されないおそれがある。
【0046】
本発明が備える光学ユニットの光源は発光ダイオードを用い、光シャッタ部は液晶シャッタを用いることができる。この液晶シャッタは、発光ダイオードからの光を記録媒体側に向けて透過又は反射する。透過光を用いる場合には、ピクセル単位で液晶シャッタによる光の透過、遮光を制御することにより、記録媒体への光の照射を制御する。また、反射光を用いる場合には、ピクセル単位で液晶シャッタによる光の反射、遮光を制御することにより、記録媒体への光の照射を制御する。
【0047】
また、光照射手段による光照射と同時に記録媒体への情報記録を行い、画像描画と情報記録とを同時に行うことができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明の画像形成装置および画像形成方法によれば、画像形成に要するトータルの処理時間を短縮することができ、特に、フォトクロミック化合物を含有する発色材を用いた画像形成において、発色材を発色させて描画を行う発色工程と、発色した画像を安定させる定着工程とを合わせてトータルの処理時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の画像形成装置について図を用いて詳細に説明する。
【0050】
図1、図2は本発明の画像形成による発色工程と定着工程の関係を説明するための概略図である。なお、図1(a)〜(c)、図2(a)〜(c)は本発明による画像形成の発色工程と定着工程の関係を示し、図1(d)は従来の画像形成の発色工程と定着工程の関係を示している。
【0051】
本発明の画像形成において、フォトクロミック化合物はC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の3種のうちで、1種のみを用いて画像形成を行う他、2種の組み合わせあるいは3種を用いて画像形成を行ってもよい。1種のみを用いて画像形成を行う場合には、その1種の単色の色で表示され、3種のうちの2種の組み合わせによる場合には、その2種の混合色で表示され、3種を用いた場合には黒色で表示される。
【0052】
ここで、安定して定着が行われる環境状態において描画を行う第1の態様について図1(a),(b)および図2(a),(b)を用いて説明し、描画した部分を安定な定着状態とする第2の態様について図1(c)および図2(c)を用いて説明する。図2は、ディスク状の記録媒体に画像データに基づいて画像形成を行う場合を示している。
【0053】
第1の態様は、上述したように、所定の温度条件において発色することで定着が行われるという発色材の特性を利用するものであり、第2の態様は、発色した状態において所定の温度条件とすることで定着が行われるという発色材の特性を利用するものである。
【0054】
図1(a)に示す第1の態様では、発色工程による描画工程は、加熱によって記録媒体を所定温度以上の環境とすることで、描画と同時に定着が行われる。ここで、定着工程によって記録媒体は所定温度状態としておく。記録媒体の発色材は、所定温度状態の環境下としておくことで、画像データに基づいて紫外線を照射する描画を行うと同時に安定な状態に定着される。
【0055】
図1(a)において、定着工程から描画工程(発色工程)に向かって記載した矢印は、所定の温度条件において発色を行うことを模式的に示している。図2(a)において、加熱等によって所定温度状態の環境下とした記録媒体の部分100を発色ユニット2で発色させて描画を行う。図2(a)中の描画部分101は、発色ユニット2による発色によって描画された部分を示している。この描画部分101は、記録媒体が所定温度の環境下にあって定着可能な状態にあるため、描画と同時に定着が行われる。
【0056】
図1(b)に示す第1の態様の別の形態では、定着ユニット3と発色ユニット2とを記録媒体の移動方向に沿って、定着工程の次に描画工程(発色工程)が行われるように配置し、定着ユニット3で記録媒体を所定温度状態とし、次に、この所定温度状態にある記録媒体に対して、画像データに基づいて紫外線を照射する描画を行う。描画される部分は、既に所定温度状態にあるため、発色による描画と同時に安定な状態に定着される。図2(b)中の所定温度状態の部分100は定着ユニット3によって所定温度に加熱された部分を示し、図2(b)中の描画部分101は、発色ユニット2による発色によって描画された部分を示している。この描画部分101は、定着ユニット3によって所定温度の環境下にあって定着可能な状態にあるため、描画と同時に定着が行われる。なお、図1(b)において、定着工程から描画工程(発色工程)に向かって記載した矢印は、所定の温度状態とした部分を発色させることを模式的に示している。
【0057】
一方、図1(c)に示す第2の態様では、発色工程によって発色した部分は、加熱等により所定の温度条件とすることで定着が行われる。なお、図1(c)において、描画工程(発色工程)から定着工程に向かって記載した矢印は、発色した部分を所定の温度状態とすることを模式的に示している。
【0058】
図1(c)に示す第2の態様では、発色ユニット2と定着ユニット3とを記録媒体の移動方向に沿って、描画工程(発色工程)の次に定着工程が行われるように配置し、発色ユニット2で画像データに基づいて紫外線を照射して発色させて描画を行い、次に、工程定着ユニット3で記録媒体を所定温度状態とする。発色ユニット2で描画された部分102は、次に配置される定着ユニット3で所定温度状態となるため、描画工程と定着工程が重複して行われ、発色による描画と同じ時間帯で安定な状態に定着される。図2(c)中の描画部分101は、発色ユニット2による発色によって描画された部分を示し、図2(c)中の定着部分103は描画部分101について定着ユニット3によって所定温度に加熱された部分を示している。
【0059】
なお、図1(c)において、描画工程(発色工程)から定着工程からに向かって記載した矢印は、描画部分を所定の温度状態として定着させることを模式的に示している。
【0060】
本発明の第1および第2の態様において、描画工程(発色工程)と定着工程は、共に所定の処理時間を要し互いに重複して行われるため、描画工程(発色工程)において発色が行われる同時間帯において、この発色を定着工程により安定化させることができる。この定着工程は、所定温度以上という温度環境に発色層を置くことで行うことができるため、発色工程と定着工程の同時実行は、所定の温度条件において発色を行うこと、あるいは、発色した発色材を、発色が安定するに要する所定温度以上の温度環境下に置くことの何れにおいても実現することができる。
【0061】
したがって、図1(a)〜(c)に示すように、描画工程(発色工程)と定着工程を同時に行ったときの画像描画に要する時間T0は、図1(d)に示すように、発色工程と定着工程とそれぞれ単独で行ったときに要する時間T1およびT2の和(T1+T2)よりも短縮することができる。
【0062】
次に、本発明の第1の態様と第2の態様の画像形成の手順について、図3のフローチャートを用いて説明する。なお、図3(a)は第1の態様の画像形成の手順を説明するためのフローチャートであり、図3(b)は第2の態様の画像形成の手順を説明するためのフローチャートである。
【0063】
第1の態様は、安定して定着が行われる環境状態において描画を行うものであり、はじめに、定着部を駆動して発色が安定して定着する環境状態を形成する。この環境状態は、ヒーター等によって記録媒体の発色層を加熱して所定の温度状態とする。なお、この所定の温度状態とは、記録媒体の発色が安定して定着する温度を意味する(S1a)。安定した定着可能な環境状態とした後、発色部を駆動する。この発色部の駆動は、記録媒体の発色層に紫外線を照射する等により行うことができ、これによって描画を行う。この描画時には、記録媒体の発色層はその発色が安定して定着可能な状態となっているため、描画と同時に定着が行われる(S2a)。
【0064】
上記したS1a、S2aの工程を、描画を行う全領域について行うことで画像形成が完了する(S3a,S4a)。
【0065】
第2の態様は、描画した部分を安定な定着状態とするものであり、はじめに、発色部を駆動する。この発色部の駆動は、記録媒体の発色層に紫外線を照射する等により行う(S1b)。描画を行った後、定着部を駆動して、描画で発色した部分を安定して定着する環境状態とする。この環境状態は、ヒーター等によって記録媒体の発色部分を加熱して所定の温度状態とする(S2b)。
【0066】
この定着時には、記録媒体の発色層はその発色状態にあるため、描画と同時に定着が行われる(S3b)。
【0067】
上記したS1b、S2bの工程を、描画を行う全領域について行うことで画像形成が完了する(S3b,S4b)。
【0068】
図4,図5は、記録媒体の回転と、本発明の描画工程(発色工程)と定着工程との関係を説明するための図である。なお、図4,5に示す工程では、発色材が塗布された記録媒体を回転させながら、この回転記録媒体の回転方向に配列された発色ユニット2と定着ユニット3によって、描画(発色)と定着を行う構成である。図4は第1の態様の一構成例を示し、図5は第2の態様の一構成例を示している。
【0069】
ここでは、ディスク状の記録媒体6のレーベル面7に画像を描画する場合を示している。ディスク状の記録媒体6は、ディスク状の基材上にフォトクロミック化合物を含有した発色材を塗布して形成され、第1の態様では、この発色材に対して所定温度以上の状態で紫外線が照射することで描画と定着とを重複した状態で行い、また、第2の態様では、発色材に紫外光を照射して発色させて描画し、この発色を所定温度以上とすることで定着させることで描画と定着とを重複した状態で行う。
【0070】
なお、フォトクロミック化合物は、特定波長の光照射によって色相が変化し、例えば、紫外光で発色し、可視光で消色する可逆的に発消色するものが知られている。フォトクロミック化合物を含有する発色材によってフルカラーの色を表現する場合には、発色状態での吸収ピーク波長が、それぞれ例えばおよそ、400nm〜500nm、500nm〜600nm、600nm〜700nmの波長範囲にある3種類のフォトクロミック化合物を用いる。なお、400nm〜500nmの波長範囲のフォトクロミック化合物はイエローを発色する発色材となり、500nm〜600nmの波長範囲のフォトクロミック化合物はマゼンタを発色する発色材となり、600nm〜700nmの波長範囲のフォトクロミック化合物はシアンを発色する発色材となる。
【0071】
3種類のフォトクロミック化合物の発色材が全て発色した場合には、イエロー、マゼンタ、シアン全ての波長領域の光が吸収されるため黒色を表示し、イエローの発色材のみが消色した場合には青色、マゼンタの発色材のみが消色した場合には緑色、シアンの発色材のみが消色した場合には赤色をそれぞれ表示する。
【0072】
本発明において、各色のフォトクロミック化合物を単独で含む発色材を用いた場合には、単色による描画が行われる。また、3種類のフォトクロミック化合物から2種類のフォトクロミック化合物を選択した発色材を用いた場合には、2種の発色の組み合わせによる色で描画が行われ、3種類のフォトクロミック化合物全てを含む発色材を用いた場合には、黒色によって描画が行われる。
【0073】
また、発色層はフォトクロミック化合物と樹脂との混合物とすることができ、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の樹脂等があり、また、この発色層の記録媒体上への形成は、例えば、ディピンングやブレードなどの塗布による方法の他、スピンコーティング法や印刷法によることができ、さらに、発色層の上に、ポリビニルアルコールやシリコーン樹脂、アクリル樹脂等の保護層を設けることができる。これら発色層に関する構成は、例えば、上記した特許文献2にも示されている。
【0074】
ディスク状の記録媒体6のレーベル面7に画像を描画するとき、ディスク状の記録媒体6に対して周方向に発色ユニット2と定着ユニット3を配置し、発色記録媒体6を回転させながら、発色ユニット2および定着ユニット3を駆動することで、描画工程(発色工程)と定着工程とを重複させて同じ時間帯内で実行する。
【0075】
発色ユニット2は、描画データに基づいて紫外光を発光する。このとき、記録媒体6を回転させることによって、記録媒体6のレーベル面7上の所定角度範囲内に紫外光を照射する。したがって、描画データに基づいて発色ユニット2による紫外光の発光制御と、記録媒体6の回転の角度制御とを同期させることで、レーベル面7上で描画することができる。
【0076】
また、定着ユニット3は、加熱手段によって記録媒体を加熱する。このとき、記録媒体6を回転させることによって、記録媒体6のレーベル面7の全面を加熱し、レーベル面7上に設けられた発色材を所定温度以上とする。なお、この所定温度は、発色材の用いるフォトクロミック化合物等の材料の特定に依存する。固定して設けた定着ユニット3に対して記録媒体6を回転させることによって、記録媒体6の全面を均一な温度に加熱することができる。
【0077】
記録媒体6は、発色工程および定着工程において複数回回転する。図4(a),(b)および図5(a),(b)は、複数回回転する間に、描画工程(発色工程)および定着工程が行われる状態を示している。ここでは、説明を容易とするために、記録媒体6のレーベル面7にA,B,C,〜Y,Zを表記し、記録媒体が一回転する間に、A,B,C,〜Y,Zの各位置に対して発色工程によって描画を行い、また、加熱によって発色を定着させる状態を示している。
【0078】
図4の第1の態様では、記録媒体6の回転方向に対して、定着ユニット3と発色ユニット2を周方向に配置する例を示し、図4(a),(b)はこの配置例としたときの、加熱と描画(発色)との関係を示している。
【0079】
記録媒体6が1回転することでA,B,C,〜Y,Zの各位置は定着ユニット3によって順に加熱され、定着可能な所定温度状態となる。この定着ユニット3と隣接して記録媒体6の回転方向の下流側に発色ユニット2を配置し、定着ユニット3で定着可能な状態となった所定温度状態の部分100に紫外線を照射して描画(発色)させる。
【0080】
この定着と描画(発色)の処理を、記録媒体6を回転させながら逐次行うことで記録媒体6の全面について描画を行う。なお、記録媒体6を1回転させるだけでは発色材の発色が十分に行われない場合には、記録媒体6を複数回回転させることによって描画(発色)を完了させる。
【0081】
図4(c)、(d)、(e)は、記録媒体6の各回転位置における定着ユニットおよび発色ユニットの関係を示している。図4(c)は、図4(a)、(b)中のt1に対応した状態を示し、定着ユニット3は記録媒体6のAの位置と対向し、発色ユニット1は記録媒体6のZの位置と対向している。また、図4(d)は、図4(a)、(b)中のt2に対応した状態を示し、定着ユニット3は記録媒体6のBの位置と対向し、発色ユニット2は記録媒体6のAの位置と対向している。また、図4(e)は、ほぼ一回転した状態であって、図4(a)、(b)中のtnに対応した状態を示し、定着ユニット3は記録媒体6のZの位置と対向し、発色ユニット2は記録媒体6のYの位置と対向している。
【0082】
図5の第2の態様では、記録媒体6の回転方向に対して、発色ユニット2と定着ユニット3を周方向に配置する例を示し、図5(a),(b)はこの配置例としたときの、描画(発色)と加熱との関係を示している。
【0083】
記録媒体6が1回転することで、A,B,C,〜Y,Zの各位置に紫外光が照射されて発色処理が行われる。この発色ユニット2と隣接して記録媒体6の回転方向の下流側に定着ユニット3を配置し、発色ユニット2で発色させた描画部分102を定着ユニット3で定着させる。
【0084】
この描画(発色)と定着との処理を、記録媒体6を回転させながら逐次行うことで記録媒体6の全面について描画を行う。なお、記録媒体6を1回転させるだけでは発色材の発色が十分に行われない場合には、記録媒体6を複数回回転させることによって描画(発色)を完了させる。
【0085】
また、A,B,C,〜Y,Zの各位置は記録媒体6が1回転することで順に加熱されるが、記録媒体6は複数回回転する間に継続して加熱が行われるため、記録媒体6のレーベル面7は均一に加熱され、温度むらを防ぐことができる。
【0086】
図5(c)、(d)、(e)は、記録媒体6の各回転位置における発色ユニットおよび定着ユニットの関係を示している。
【0087】
図5(c)は、図5(a)、(b)中のt1に対応した状態を示し、発色ユニット2は記録媒体6のAの位置と対向し、定着ユニット3は記録媒体6のZの位置と対向している。また、図5(d)は、図5(a)、(b)中のt2に対応した状態を示し、発色ユニット2は記録媒体6のBの位置と対向し、定着ユニット3は記録媒体6のAの位置と対向している。また、図5(e)は、ほぼ一回転した状態であって、図5(a)、(b)中のtnに対応した状態を示し、発色ユニット2は記録媒体6のZの位置と対向し、定着ユニット3は記録媒体6のYの位置と対向している。
【0088】
上記したように、記録媒体の回転に伴って、発色ユニットは順次記録媒体上の各位置に紫外光を照射して描画を行うと共に、定着ユニットは順次記録媒体上の各位置を加熱して定着を行うことによって、発色工程と定着工程とを重複させて、同じ時間帯内で行い、実質的に同時に行うことができる。
【0089】
なお、上記例では、発色ユニットと定着ユニットを隣接して設ける例を示しているが、記録媒体を回転させる構成とすることによって、発色ユニットと定着ユニットとは必ずしも隣接した配列である必要はない。
【0090】
また、上記例では、記録媒体の回転方向に対して、定着ユニットの次に発色ユニットを配置する配置順を示しているが、記録媒体を回転させる構成とすることによって、発色ユニットと定着ユニットの配置順は上記例に限られるものではない。
【0091】
次に、本発明の画像形成装置の概略構成について、図6の概略斜視図を用いて説明する。
【0092】
図6に示す画像形成装置の概略構成図において、画像形成装置1は、記録媒体6を回転駆動する機構(図示していない)、および記録媒体6の情報記録面に情報を光学的に記録するピックアップ4を備え、ピックアップ4は記録するデータに基づいてレーザ光を記録媒体6の情報記録面に照射することによって、記録を行う。なお、記録するデータは、画像データ、音声、音楽データ、文字データ等の種々のデータとすることができる。
【0093】
なお、図6に示す画像形成装置1では、記録媒体6を駆動する機構、ピックアップ4を記録媒体6に対して駆動する機構、記録するデータをレーザ光に変換する信号処理装置等については省略している。
【0094】
記録媒体6の少なくとも一方の面をレーベル面7とし、このレーベル面7上に、例えば、発色材(フォトクロミック)が塗布される。このフォトクロミック化合物は、紫外光を当てると発色し、その化合物が吸収する特定の波長の光を当てると特定の色が消えるという特性を有する物質である。例えば、紫外光により、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)を発色するフォトクロミック化合物を含むものを用いることができる。
【0095】
画像形成装置1は、この記録媒体6の面に塗布された発色材を用いることによって、ディスク状の記録媒体6のレーベル面7上に画像を形成する。画像形成装置1は、記録媒体6のレーベル面7上に画像を形成する構成として、発色材を発色させる発色ユニット2と、発色ユニット2によって発色した発色材の色を定着させる定着ユニット3とを備え、この発色ユニット2と定着ユニット3を記録媒体6の回転方向に順に配置して備える。
【0096】
レーベル面7上に紫外光を当てることで発色する発色材(フォトクロミック)が塗布された記録媒体6を用い、このレーベル面7上に画像を形成する場合には、発色ユニット2は、紫外光の波長を発する光源を備える。この発色ユニット2の発する光の波長は紫外光の波長に限られるものではなく、記録媒体6のレーベル面7に塗布される発色材の特性に応じて定められる。
【0097】
発色材としては、 紫外光の照射によって、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)を発色するフォトクロミック化合物を含む発色材を用いることができ、これらの中から選択したフォトクロミック化合物を含む発色材、あるいはこれらの中から選択した複数のフォトクロミック化合物を含む発色材とすることができ、その組み合わせに応じた色が発色される。また、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)を発色するフォトクロミック化合物を全て含む発色材の場合には、紫外光の照射によって黒色を発色する。
【0098】
定着ユニット3は、発色材の発色を定着させる熱源を備える。この熱源は、電熱線、セラミックヒータ、あるいはハロゲンランプ等を用いることができる。図6に示す定着ユニット3は、記録媒体6の径方向にライン状に延びた構成である。この定着ユニット3は記録媒体6をライン状に加熱し、記録媒体6を回転させることで、記録媒体6の全体を加熱する。
【0099】
発色、定着の各動作は、図6に示す発色ユニット2と定着ユニット3の配置順、および記録媒体6の回転方向に応じて定まる順序で行われるが、本発明の構成では、発色ユニット2と定着ユニット3とを同時に駆動すると共に、記録媒体6を回転させることで、発色工程と定着工程の2つの工程を同時に行うものであるため、発色ユニット2、定着ユニット3の各ユニットを記録媒体6の円周方向に沿って配置する際の配置順は、必ずしも動作順と回転方向とを合わせる必要はなく、任意の順序で配列してもよい。
【0100】
次に、本発明の 画像形成装置1を、図7の概略断面図および図8の斜視図を用いて説明する。なお、図7、8に示す発色ユニットの構成は発色ユニットの一例であり、他の発色ユニットの構成については図9,10を用いて後述する。
【0101】
図7の断面図において、記録媒体6が配置される位置を境に、下方の位置に、記録媒体6の記録面にレーザ光等を照射してデータ記録を行う光ピックアップ4と、記録媒体6を回転駆動する回転駆動装置5を配置し、上方の位置に、発色ユニット2、定着ユニット3Aを配置する。ここでは、記録媒体6の上面には発色材が塗布されたレーベル面が設けられているものとする。
【0102】
なお、図7に示す定着ユニット3Aは、記録媒体6上にある立体角で熱を放射し、記録媒体6上の面の所定範囲を加熱する構成を示している。この定着ユニット3Aにおいても、記録媒体6を回転させることで、記録媒体6の全体を加熱する。定着ユニット3と定着ユニット3Aは、何れの構成としてもよい。
【0103】
なお、発色ユニット2および定着ユニット3(3A)の配置位置は、記録媒体6に対して光ピックアップ7と同じ側に設けてもよい。この場合には、記録媒体6の面には、データを記録するための記録面が設けられているため、画像形成を行って印刷を行うレーベル面は、この記録面を除く部分となり、下方位置に配置される発色ユニット2はこの記録面を除く部分に紫外光等の光を照射するように配置される。また、定着ユニット3は、発色材が塗布された面を記録媒体6の回転と共に加熱するのであれば、任意の位置に設けることができる。
【0104】
発色ユニット2は、紫外光等の発色材を発色させる波長を含む光を発光する光源11,光源11の発光を光シャッタに分散させて導くための、例えばインテグレータレンズ等の第1の光学レンズ12,光の偏光方向を揃えて液晶の透過率を高めるための偏光方向変換素子(PBS)15,光シャッタを構成する液晶シャッタ13,光の像を記録媒体6のレーベル面7に結ばせるための、例えば、セルホックレンズ等の第2の光学レンズ16等を備える。また、光源11は、発光した光を有効に利用するために、反射板11aを備える構成としてもよい。
【0105】
液晶シャッタ13は複数のピクセル14を備え、光源11からの光をピクセル毎に透過あるいは遮蔽して、各ピクセルに対応して記録媒体20に画素を形成する。この複数のピクセル14は、記録媒体6の半径方向に少なくとも1列分配列し、光ラインを形成する。この1列分の配列を用いて光を1回照射すると、記録媒体6上には、半径方向に沿った1ライン分の画素に対して露光が行われる。なお、この1ライン分の画素の個数は、ピクセル14の個数に対応する。このピクセル14のライン状の配列は1列に限らず複数列とすることができる。
【0106】
図8は、本発明の画像形成装置が備える発色ユニット2の一構成例を説明するための斜視図であり、各構成部分を分離して示している。
【0107】
この構成例の発色ユニット2は、光源11,インテグレータレンズ等の第1の光学レンズ12,偏光方向変換素子(PBS)15,光シャッタを構成する液晶シャッタ13,セルホックレンズ等の第2の光学レンズ16等を備える。
【0108】
この構成例が備える液晶シャッタ13は、ピクセルの周方向の幅を半径方向内周側と半径方向外周側とで異ならせることによって、記録媒体6上に形成される画像形成領域8の形状を扇状とし、これによって、半径方向内周側において同一箇所に重ねて光が照射されることによる多重の露光を防いで、濃淡むらを抑制する。
【0109】
また、液晶シャッタ13は半径方向に沿ってライン状に配列した複数のピクセル14を備え。このピクセル14の幅は、1ライン内において全て異ならせ、半径方向外周側から半径方向内周側に向かって順に小さくなるように定める構成の他に、各ピクセル14の幅を、1ライン内において複数のピクセルを単位として異ならせ、半径方向外周側から半径方向内周側に向かって、複数のピクセル毎に順に小さくなるように定める構成としてもよい。
【0110】
半径方向に沿ってライン状に配列されるピクセル列の各ピクセルの幅を、半径方向内周側を半径方向外周側よりも小さくすることによって、液晶シャッタ13が形成する透過光の形状を、半径方向内周側を小さくし半径方向外周側幅を大きくする扇状の形状とすることができる。この液晶シャッタ13を透過した光は、記録媒体6のレーベル面7を照射して発色させ、画像を形成する、この画像形成で得られる画像形成領域8の形状は、扇状の形状となる。
【0111】
なお、図8において、画像形成領域8aは、発色ユニット2が図示する位置にあるときに、画像が形成される記録媒体6のレーベル面7上の領域を示し、画像形成領域8bは次回の照射位置において画像形成される領域を示している。
【0112】
発色ユニット2による扇状の形状の画像形成領域8での画像形成を、記録媒体6を回転させながら繰り返すことによって、記録媒体6上のレーベル面7の全面に画像を形成することができ、各画像形成領域8の形状を内周側の幅を小さくする扇状の形状とすることで、同一箇所に重複して露光することを防ぐことができる。
【0113】
なお、各ピクセル14の円周方向の幅は、例えば、そのピクセルの半径方向位置における円周の長さを、その円周上に配置するピクセルの個数で除した値を基準として定めることができる。
【0114】
次に、本発明の画像形成装置の適用することができる発色ユニットの他の構成例については図9,10を用いて後述する。
【0115】
図9は、本発明の画像形成装置1の他の構成例の概略断面を示している。なお、図9に示す構成は、図7において発色ユニット2の構成を除いては同様であるので、以下では発色ユニット2についてのみ説明し、共通する部分については説明を省略する。
【0116】
発色ユニット2は、紫外光等の発色材を発色させる波長を含む光を発光する光源21,光源21からの光の像を記録媒体6のレーベル面7に結ばせるための、例えば、セルホックレンズ等の光学レンズ23等を備える。
【0117】
光源21は、複数のLED素子等の発光部22を、記録媒体6の半径方向に少なくとも1列分配列して光ラインを形成する。この1列分の配列を用いて光を1回照射すると、記録媒体6上には、半径方向に沿った1ライン分の画素に対して露光が行われる。この1ライン分の画素の個数は、発光部22のLED素子の個数に対応する。なお、この発光部22のライン状の配列は1列に限らず複数列とすることができる。また、光源21は、発光した光を有効に利用するために反射板21aを備える構成としてもよい。
【0118】
また、発光部は、上述したLED素子のように自発発光する発光体に限らず、例えば、液晶シャッタにように光源からの光を遮断/透過あるいは反射させるものとしても良い。
【0119】
図10は、本発明の画像形成装置が備える発色ユニット2の他の構成例を説明するための斜視図であり、各構成部分を分離して示している。
【0120】
発色ユニット2は、光源21と光学レンズ23を備え、画像形成装置に載置した記録媒体6のレーベル面7の上方位置に固定して設置され。光源21の各発光部22で発光した紫外光等の光を光学レンズ23を通ってレーベル面7上に照射する。
【0121】
この構成例の発色ユニット2が有する各発光部22は、記録媒体6上に形成する全ての画素について、回転の周方向で隣接する画素の一部を重ねて露光する。発色ユニット2の発光部22は、一回の光照射によって、記録媒体6において半径方向に並ぶ一ライン分の画素8を露光する。この露光を記録媒体6の回転と同期させて繰り返すことにより、記録媒体6のレーベル面7の発色材を発色させて画像を形成する。
【0122】
この記録媒体6の回転と同期して行う露光において、回転の周方向で隣接する画素8a,8bの一部を重ねて露光する。このとき、少なくとも最外周の画素について、回転の周方向で隣接する画素8a,8bの一部が重なるように露光することによって、内周側に画素についても回転の周方向で隣接する画素8a,8bの一部が重なることになる。これにより、隣接する画素間においては、露光されない箇所が発生せず、不完全な塗りつぶし部分の発生を解消することができる。
【0123】
図11は、記録媒体と画像形成領域との関係を示している。発色ユニットによる扇状の形状の画像形成領域8での画像形成を、記録媒体6を回転させながら繰り返すことによって、記録媒体6の全面に画像を形成することができ、各画像形成領域8の形状を内周側の幅を小さくする扇状の形状とすることで、同一箇所に重複して露光することを防ぐことができる。
【0124】
本発明によれば、フォトクロミック化合物を含有する発色材を用いた画像形成において、発色材を発色させて描画を行う発色工程と、発色した画像を安定させる定着工程とを同時に行うことによって、両工程を合わせたトータルの処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の画像形成による発色工程と定着工程の関係を説明するための概略図である。
【図2】本発明の画像形成による発色工程と定着工程の関係を説明するための概略図である。
【図3】本発明の第1の態様と第2の態様の画像形成の手順を説明するためのフローチャートである。
【図4】記録媒体の回転と、本発明の第1の態様の発色工程と定着工程との関係を説明するための図である。
【図5】記録媒体の回転と、本発明の第2の態様の発色工程と定着工程との関係を説明するための図である。
【図6】本発明の画像形成装置の概略構成図である。
【図7】本発明の画像形成装置の概略断面図である。
【図8】本発明の画像形成装置の概略斜視図である。
【図9】本発明の画像形成装置の他の構成の概略断面図である。
【図10】本発明の画像形成装置の他の構成の斜視図である。
【図11】記録媒体と画像形成領域との関係を示す図である。
【図12】画像形成工程と定着工程とを説明するための概略工程図である。
【符号の説明】
【0126】
1 画像形成装置
2 発色ユニット
3,3A 定着ユニット
4 ピックアップ
5 回転駆動装置
6 記録媒体
7 レーベル面7
8 画像形成領域
10 発色ユニット
11 光源
12 第1光学レンズ
13 液晶シャッタ
14 ピクセル
15 偏光方向変換素子
16 第2光学レンズ
20 発色ユニット
21 光源
22 光学レンズ
100 所定温度状態の部分
101 描画部分
102 描画部分
103 定着部分
200 描画部分
201 光源
300 定着部分
301 ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光に反応する発色層を発色させて画像を形成する画像形成装置において、
記録媒体に設けた発色層に光を照射して描画を行う発色部と、
前記発色部による発色を安定化して定着させる定着部とを備え、
前記定着部は、記録媒体の周辺環境を、発色層の発色が安定化する状態とし、
前記発色部は、前記安定化状態の周辺環境にある記録媒体の発色層に画像データに応じて光を照射して発色させ、記録媒体に画像を形成することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
光に反応する発色層を発色させて画像を形成する画像形成装置において、
記録媒体に設けた発色層に光を照射して描画を行う発色部と、
前記発色部の発色を安定化して定着させる定着部とを備え、
前記発色部と前記定着部とを組みとして前記記録媒体に対して相対移動させ、当該相対移動に伴う前記記録媒体の移動領域に対して画像データに応じて光を照射して発色させる描画と当該描画部分の定着とを逐次行い、前記記録媒体の全面に画像形成することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項3】
前記発色層は、フォトクロミック化合物を含有する発色材をディスク状の記録媒体への塗布により形成され
前記発色部は、前記記録媒体上の所定角度範囲内に光を照射する光照射手段を有し、
前記定着部は、前記記録媒体を所定温度に加熱する加熱手段を有し、
前記光照射手段は、前記加熱手段の加熱により所定温度にある記録媒体に光を照射することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記発色層は、フォトクロミック化合物を含有する発色材をディスク状の記録媒体への塗布により形成され
前記発色部は、前記記録媒体上の所定角度範囲内に光を照射する光照射手段を有し、
前記定着部は、前記記録媒体を所定温度に加熱する加熱手段を有し、
前記加熱手段は、前記光照射手段により光照射された記録媒体の描画部分を所定温度に加熱することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記光照射手段による光照射と前記加熱手段による加熱とを、前記記録媒体を回転させた状態で同時に行うことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記光照射手段は、前記記録媒体を回転させる回転手段の中心から径方向にライン状に発光し、記録媒体の回転によって記録媒体上の発色層の全周を照射することを特徴とする、請求項3から請求項5の何れか一つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記加熱手段は、前記記録媒体上の少なくとも径方向の領域部分を加熱し、記録媒体の回転によって記録媒体上の発色層の全周を所定温度とすることを特徴とする、請求項3から請求項5のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記光は紫外光であり、
前記発色材は、紫外光により、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)を発色するフォトクロミック化合物を少なくとも一つ含むことを特徴とする、請求項3から請求項7の何れか一つに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記光照射手段による光照射と同時に前記記録媒体への情報記録を行うことを特徴とする請求項3から請求項8の何れか一つに記載の画像形成装置。

【請求項10】
光に反応する発色層を発色させて画像を形成する画像形成方法において、
前記発色層に画像データに応じて光を照射して発色させて画像の描画を行う描画工程と、当該描画による発色を安定化させる定着工程とを含み、
前記描画工程と定着工程とを重複させることを特徴とする、画像形成方法。
【請求項11】
前記定着工程は前記発色層の周辺環境を発色層の発色が安定化する状態とし、
前記描画工程は当該状態の周辺環境にある発色層に画像データに応じて光を照射して発色させ、
前記描画工程は前記定着工程による安定状態において行うことを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記発色層に対して画像形成を行う部分を順次移動させながら前記描画工程と前記定着工程とを逐次行い、前記発色層全面に画像形成することを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。
【請求項13】
フォトクロミック化合物を含有する発色材が塗布された発色層を有する記録媒体に対して、
所定温度下にある記録媒体上の発色層に光を照射して画像を描画することにより描画工程と定着工程とを重複させることを特徴とする、請求項11に記載の画像形成方法。
【請求項14】
フォトクロミック化合物を含有する発色材が塗布された発色層を有する記録媒体に対して、
記録媒体上に光を照射して発色させて描画して発色層を発色させる発色工程と、前記発色工程による発色部分を所定温度に温度設定させて定着させる定着工程とを、記録媒体を移動させながら逐次行うことにより描画工程と定着工程とを重複させることを特徴とする、請求項12に記載の画像形成方法。
【請求項15】
前記記録媒体をディスク状として、
光照射による描画と加熱による所定温度の環境設定とを、当該ディスク状記録媒体を回転させた状態で行うことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の画像形成方法。
【請求項16】
前記光は紫外光であり、
前記発色材は、紫外光により、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)を発色するフォトクロミック化合物を少なくとも一つ含むことを特徴とする、請求項13から請求項15の何れか一つに記載の画像形成方法。
【請求項17】
前記画像描画と同時に前記記録媒体への情報記録を行うことを特徴とする請求項10から請求項16の何れか一つに記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−176856(P2008−176856A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8911(P2007−8911)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】