説明

画像形成装置および画像形成装置の制御方法

【課題】インクの空吐出によるノズル回復動作を行った場合でも、低コスト、省スペースで周囲のヘッドの汚損を防止可能な画像形成装置を提案することを、その目的とする。
【解決手段】インクを吐出するための複数のノズル51〜58を有し、記録媒体10に向けて複数のノズルからインクを吐出して記録媒体に画像を形成すると共に、それぞれ独立して少なくとも記録媒体搬送方向Xに移動可能な複数のインク吐出手段50a,50bと、各インク吐出手段のノズルをそれぞれ個別に閉塞可能な複数のキャップ手段6a,6bとを備え、インク吐出手段のノズル回復動作としてインキの空吐出を行う画像形成装置であって、1つのインク吐出手段に対するヘッド回復動作中に、別なインク吐出手段のノズルを、少なくともキャップ手段の1つを用いて閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成には寄与しないインクを空吐出する構成を備えたインクジェット記録方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドから記録媒体に単色あるいは複数色のインクを吐出して印刷を行うインクジェット方式の画像形成装置では、液体吐出ヘッドのノズルから記録媒体に対して微小なインクの液滴を吐出し、文字や画像を形成する。このようなインクジェット方式の画像形成装置では、インクを吐出しないで放置すると、ノズル開口部において水分等が蒸発し、インクの増粘を引き起こし、次にインクを吐出する場合に正常な吐出が行えなくなる。このため、この種の画像形成装置では、一定間隔で、画像形成には寄与しないインクを吐出する空吐出を行うことで、ノズルには増粘したインクが残らないようにしているが、この空吐出によるインクの消費が問題となっている。
【0003】
そこで、印刷に使用しないヘッドにキャップをすることで、インクの乾燥を防止して空吐出によるインクの消費を抑制するような構成が既に知られている。例えば、特許文献1には、黒インクとカラーインクのメンテナンスを独立させる目的で、黒インクとカラーインクを吐出する黒色ヘッド部とカラーヘッド部をそれぞれ個別に閉塞するキャップ部材を備えた構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、予備吐出による記録装置内の汚れを防止する目的で、予備吐出インクを受けるインク受容部を2ヶ所設け、どちらかを選択して予備吐出を行う構成が開示されている。
【0005】
特許文献3には、空吐出の際のインクのミストによる周りの汚損防止を目的として、仕切り部材を設け、発生したミストによるヘッド周りの汚損を防止することが開示されている。
【0006】
特許文献4には、インクの吐出不良を生じている記録ヘッドのみに、部分的に吸引回復処理を行うことと、回復処理を行うキャップ部材が別体化された構成が開示されている。
【0007】
特許文献5には、メンテナンスユニット移動時の位置決め機構についての構成が開示されている。
【0008】
特許文献6には、全キャップを2以上のキャップグループに区分けし、全キャップで同時にノズルを閉塞できると共に任意のキャップグループで独立にノズルを閉塞可能な構成が開示されている。
【0009】
特許文献7には、紙サイズを超える部分に位置するヘッドに対して移動可能なキャップ部材を対向位置に配置して空吐出を行い、回復処理を行うことが可能な構成が開示されている。
【0010】
特許文献8には、多数のノズルを具備するヘッドにメンテナンスを行い、各吐出口から均一にインクを吸引する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来構成では、独立して加圧吐出や吸引回復、空吐出を行うことは可能であるが、キャップ部材でノズルを閉塞した状態において空吐出を行った場合に発生するミスト状のインキによりヘッドが汚損してしまう課題がある。
【0012】
すなわち、特許文献1では、メンテナンス機構を備えた黒ヘッド用のキャップ部材をカラーヘッド部との対向位置に移動させ、当該キャップ部材でカラーヘッド部を閉塞状態として空吐出を行うが、閉塞状態で空吐出を行うと閉塞空間にミスト状のインクが充満してしまう。このような汚損を防止あるいは抑制するためにはキャップを閉塞状態から開放させる必要があるが、開放の際のミスト状のインクがもれてしまう。
【0013】
特許文献2においても、キャップ部材によりヘッドの閉塞状態として予備吐出を行っているため、閉塞状態で空吐出を行う場合と同様、閉塞空間に充満したミストのインクでヘッドが汚損される課題がある。
【0014】
特許文献3では、ミストによる汚れ対策として仕切り部材を新たな構成要素として加える必要があるため、部材のためのスペース確保、コストの増加といった課題がある。
【0015】
特許文献4では、回復処理を行うキャップ部材を別体としているが、キャップ部材に対する空吐出を行う制御についての構成は開示されておらず、またキャップ部材に空吐出を行う際に生じるミスト発生による不具合とその解消方法についても記載されていない。
【0016】
特許文献5では、メンテナンスユニットを移動可能としているが、メンテナンスユニットに対する空吐出を行う制御についての構成は開示されておらず、またメンテナンスユニットに空吐出を行う際に生じるミスト発生による不具合と、他の色用のキャップ部材の一時転用による不具合の解消に関する制御についても記載はない。
【0017】
特許文献6では、キャップ部材の全閉塞と個別閉塞を可能としているが、キャップ部材に対する空吐出を行う制御についての構成は開示されておらず、またキャップ部材に空吐出を行う際に生じるミスト発生による不具合とその解消に関する制御についても記されていない。またヘッドの回復処理を行うために全キャップユニットにメンテナンス機構を備える必要があり、構成の複雑化やコストの増大を招いてしまう。さらに、ヘッドユニット毎の個別のキャップ動作を実現するために、ヘッドのライン毎にステッピングモータ等の駆動ユニットを配置する必要があり、装置の大型化とコストの増大を招いてしまう。
【0018】
特許文献7では、移動可能なキャップ部材に空吐出を行っているが、キャップ部材に空吐出を行う際に生じるミスト発生による不具合と、不具合の解消に関する制御についても記されていない。
【0019】
特許文献8では、多数のノズルを具備するヘッドに対するメンテナンスを行っているが、このメンテナンスは空吐出ではなく吸引メンテナンスについてのみ記載されており、その他のメンテナンス方法及び不具合と不具合の解消法については記載されていない。
【0020】
本発明は、インクの空吐出によるノズル回復動作を行った場合でも、低コスト、省スペースで周囲のヘッドの汚損を防止可能な画像形成装置を提案することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、インクを吐出するための複数のノズルを有し、記録媒体に向けて複数のノズルからインクを吐出して記録媒体に画像を形成するとともに、それぞれ独立して少なくとも記録媒体搬送方向に移動可能な複数のインク吐出手段と、各インク吐出手段のノズルをそれぞれ個別に閉塞可能な複数のキャップ手段とを備え、インク吐出手段のノズル回復動作としてインキの空吐出を行う画像形成装置において、1つのインク吐出手段に対するノズル回復動作中に、別なインク吐出手段のノズルを、少なくともキャップ手段の1つを用いて閉塞することを特徴としている。
【0022】
本発明に係る画像形成装置において、各キャップ手段をノズルと対向する対向位置とノズルと対向しない退避位置とにそれぞれ移動するキャップ移動手段と、各キャップ部材を対向位置においてノズルに当接して閉塞する閉塞位置へと移動させる閉塞移動手段と、1つのインク吐出手段に対するノズル回復動作中に、別なインク吐出手段のノズルを、少なくともキャップ手段の1つを用いて閉塞するキャッピング動作をするように、キャップ移動手段と閉塞移動手段の作動を制御する制御手段を有することを特徴としている。
【0023】
本発明に係る画像形成装置において、制御手段は、1つのインク吐出手段に対するノズル回復動作中に、ノズル回復動作を終えたインク吐出手段のノズルを、キャップ手段の1つを用いて閉塞するキャッピング動作をするように、キャップ移動手段と閉塞移動手段の作動を制御することを特徴としている。
【0024】
本発明に係る画像形成装置において、制御手段は、1つのインク吐出手段に対するノズル回復動作中に、ノズル回復動作を成されているインク吐出手段に隣接しているノズルを、キャップ手段の1つを用いて閉塞するキャッピング動作をするように、キャップ移動手段と閉塞移動手段の作動を制御することを特徴としている。
【0025】
本発明に係る画像形成装置において、ノズル回復動作時の空吐出量を設定する空吐出量設定手段を備え、制御手段は、空吐出量設定手段で設定された空吐出量に応じて、ノズル回復動作中のキャッピング動作の時期を変更することを特徴としている。
【0026】
本発明に係る画像形成装置において、制御手段は、空吐出量が所定値以下の場合には、キャッピング動作を実行しないように、キャップ移動手段と閉塞移動手段の作動を制御することを特徴としている。
【0027】
本発明は、インクを吐出するための複数のノズルを有し、記録媒体に向けて複数のノズルからインクを吐出して記録媒体に画像を形成するとともに、それぞれ独立して少なくとも記録媒体搬送方向に移動可能な複数のインク吐出手段と、各インク吐出手段のノズルをそれぞれ個別に閉塞可能な複数のキャップ手段とを備え、インク吐出手段のノズル回復動作としてインキの空吐出を行う画像形成装置の制御方法において、1つのインク吐出手段に対するノズル回復動作中に、別なインク吐出手段のノズルを、少なくともキャップ手段の1つを用いて閉塞することを特徴としている。
【0028】
本発明に係る画像形成装置の制御方法において、各キャップ手段をノズルと対向する対向位置とノズルと対向しない退避位置とにそれぞれ移動するキャップ移動手段と、各キャップ部材を対向位置においてノズルに当接して閉塞する閉塞位置へと移動させる閉塞移動手段と、キャップ移動手段と閉塞移動手段の作動を制御する制御手段を有し、1つのインク吐出手段に対するノズル回復動作中に、別なインク吐出手段のノズルを、少なくともキャップ手段の1つを用いて閉塞するキャッピング動作をするようにキャップ移動手段と閉塞移動手段の作動を前記制御手段で制御することとを特徴としている。
【0029】
本発明に係る画像形成装置の制御方法において、制御手段は、1つのインク吐出手段に対するノズル回復動作中に、ノズル回復動作を終えたインク吐出手段のノズルを、キャップ手段の1つを用いて閉塞するキャッピング動作をするように、キャップ移動手段と閉塞移動手段の作動を制御することを特徴としている。
【0030】
本発明に係る画像形成装置の制御方法において、制御手段は、1つのインク吐出手段に対するノズル回復動作中に、ノズル回復動作を成されているインク吐出手段に隣接しているノズルを、キャップ手段の1つを用いて閉塞するキャッピング動作をするように、キャップ移動手段と閉塞移動手段の作動を制御することを特徴としている。
【0031】
本発明に係る画像形成装置の制御方法において、ノズル回復動作時の空吐出量を設定する空吐出量設定手段を備え、制御手段は、空吐出量設定手段で設定された空吐出量に応じて、ノズル回復動作中のキャッピング動作の時期を変更することを特徴としている。
【0032】
本発明に係る画像形成装置の制御方法において、制御手段は、空吐出量が所定値以下の場合には、キャッピング動作を実行しないように、キャップ移動手段と閉塞移動手段の作動を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、インク吐出手段のノズル回復動作としてインキの空吐出を行う画像形成装置において、1つのインク吐出手段に対するノズル回復動作中に、別なインク吐出手段のノズルを、少なくともキャップ手段の1つを用いて閉塞するので、キャップ内空吐出を行うノズル回復動作を行う際に吐出させたインクのミストによる周囲のヘッドの汚損を防止することを低コスト、省スペースで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成図である。
【図2】キャップ移動手段の一形態を示す構成図である。
【図3】閉塞移動手段の一形態を示す構成図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】ヘッド部とキャップ部材の待機状態を示す図である。
【図6】一方のインク吐出手段による印刷時の状態を示す図である。
【図7】全てのインク吐出手段による印刷時の状態を示す図である。
【図8】キャップ部材の待機状態とインク吐出手段の待機状態を示す図である。
【図9】第1色目のノズルに対するノズル回復動作時のインキ吐出手段とキャップ部材の状態を示す図である。
【図10】第2色目のノズルに対するノズル回復動作時のインキ吐出手段とキャップ部材の状態を示す図である。
【図11】第3色目のノズルに対するノズル回復動作時のインキ吐出手段とキャップ部材の状態を示す図である。
【図12】第4色目のノズルに対するノズル回復動作時のインキ吐出手段とキャップ部材の状態を示す図である。
【図13】全てのヘッド部のノズルに対してノズル回復動作を行う場合の制御内容の一例を記すフローチャートである。
【図14】任意の1色のヘッド部のノズルに対してノズル回復動作を行う場合の制御内容の一例を記すフローチャートである。図である。
【図15】任意の2色のヘッド部のノズルに対してノズル回復動作を行う場合の制御内容の一例を記すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1に示すインクジェット方式の画像形成装置は、ライン型の画像形成装置であり、装置本体1と、記録媒体となる用紙10を積載し給紙する給紙トレイ2と、印刷された用紙10を排紙積載する排紙トレイ3と、用紙10を給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送ユニット4と、搬送ユニット4によって搬送される用紙10にインク液滴を吐出し印字する記録ヘッドを構成するインク吐出手段としての黒ヘッドアレイ(以下「黒ヘッド部」と記す)50a及びインク吐出手段としてのカラーヘッドアレイ(以下「カラーヘッド部」と記す)50bを含む画像形成ユニット5と、画像形成ユニット5の黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bの維持回復を行う維持回復手段を構成する黒用のキャップ部材(以下「黒キャップ」と記す)6aとカラー用のキャップ部材(以下「カラーキャップ」と記す)6b、黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bにインクを供給する図示しないサブタンクやメインタンクで構成されるインク供給系と、制御手段500を備えている。
【0036】
装置本体1は、図示しない前後側板及びステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙10は、分離ローラ21及び給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙される。
【0037】
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bと、これらのローラ41A,41B間に掛け回された無端状の搬送ベルト43とを備えている。この搬送ベルト43の表面には複数の図示しない吸引穴が形成されている。搬送ベルト43の下部には用紙10を搬送ベルト43の表面に吸着するための吸引ファン44が配置されている。搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bの上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42A,42Bが図示しないガイドに保持されて、自重にて搬送ベルト43に当接している。搬送ベルト43の裏面側には、支持部材148が配置されている。搬送ベルト43は、この支持部材148によって搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bの間の部分が下方側から支持されている。
【0038】
搬送ベルト43は、搬送駆動ローラ41Aが図4に示す搬送ベルト駆動モータ512により回転されることで周回移動し、用紙10は搬送ベルト43上に吸引ファン44の作用により吸着されることで、搬送ベルト43の周回移動によって搬送される。搬送従動ローラ41B、搬送ガイドローラ42A,42Bは搬送ベルト43に従動して回転する。
【0039】
搬送ユニット4の下流側には用紙10を収納する排紙トレイ3が設けられている。排紙トレイ3は、用紙10の幅方向を規制する対のサイドフェンス31と用紙10の先端を規制するエンドフェンス32を備えている。
【0040】
搬送ユニット4の上方には、用紙10に印字する液滴となるインキを吐出する黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bの2つのヘッドモジュールを備えた画像形成ユニット5が配置されている。
【0041】
黒ヘッド部50aは、搬送ベルト43上に吸着保持されて搬送される用紙10に対して1色分のインク(ブラックK)の液滴を吐出する複数のノズル57,58が用紙幅方向にライン状に配列されたライン型記録ヘッドとして構成されている。カラーヘッド部50bは、搬送ベルト43上に吸着保持されて搬送される用紙10に対して3色分のインク(イエローY、シアンC、マゼンタM)の液滴を吐出する複数のノズル51〜56が用紙幅方向にライン状に配列されたライン型記録ヘッドを有している。画像形成ユニット5において色の順序は矢印Xで示す記録媒体搬送方向下流側(図1における左側)からイエローY、シアンC、マゼンタM、ブラックKの順に配置されている。カラーヘッド部50bのカラーの並び順はイエローY、シアンC、マゼンタMに限定されるものではなく、その他の二次色やグレーインク等を使用し、その分のノズルの数を、あるいはカラーヘッド部50bのライン型記録ヘッドの数を増やす構成でもかまわない。
【0042】
黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bは、互いに隣接配置されていて、それぞれ搬送ベルト43上の用紙10にインクを吐出する図1、図7に示す印刷位置と、印刷位置から図中上方に離脱した図5に示す待機位置へと図示しないヘッド部移動手段によりそれぞれ独立して図中上下方向に移動するように構成されている。ヘッド部移動手段としては、カム機構で黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bをそれぞれ上下方向に移動可能にしてもよいし、ベルトとプーリで構成された移動手段を用いて黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bを上下方向にそれぞれ移動可能とすることで実現することができる。
【0043】
画像形成ユニット5は、各ヘッド部が備えるノズル51〜58の開口部のインクの乾燥を防止するために、印刷に使用しないヘッド部のノズルからインクの空吐出を行うノズル回復動作を実行するように構成されている。このノズル回復動作は、各ヘッド部を図1、図7に示す印刷位置から上方に移動して図5に示す待機位置を占めた状態で行われる。ノズル回復動作については後述する。
【0044】
黒キャップ6aとカラーキャップ6bは、各ヘッド部との対向位置を占め、それぞれの対向位置において各記録ヘッドに当接することでノズル51〜58を閉塞するものである。画像形成ユニット5には、黒キャップ6aとカラーキャップ6bにそれぞれ連結された周知の流路、吸引手段、圧力室等が、黒キャップ6a及びカラーキャップ6bよりも連結下流側に配置されているとともに、記録ヘッド面に密着してワイピングするためのブレード部材を備えている。
【0045】
この画像形成装置は、図2,図3に示すように、黒キャップ6aとカラーキャップ6bを各ヘッド部のノズル51〜58と対向する対向位置とノズルと対向しない退避位置とにそれぞれ移動するキャップ移動手段60A,60Bと、黒キャップ6aとカラーキャップ6bを、黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bのノズルとの対向位置においてノズルに当接させて閉塞する閉塞位置へ移動する閉塞移動手段70A,70Bとを備えている。
【0046】
図2を用いて、黒キャップ6aを移動するキャップ移動手段60Aと閉塞移動手段70Aの構成を説明する。キャップ移動手段60Aは、プーリ612,613と、プーリ612,613に巻き掛けられたベルト620と、ベルト620の一部に黒キャップ6aを固定するための固定部材616と、プーリ612,613を回転自在に支持するとともに、黒キャップ6aを支持するベース部材611と、プーリ612を回転駆動する駆動手段となるメンテナンス移動モータ617Aとを備えている。
【0047】
黒キャップ6aは、メンテナンス移動モータ617Aが作動してプーリ612が回転駆動されてベルト620が移動すると、ベルト移動方向に移動するように構成されている。本形態において、ベルト620は搬送黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bの隣接する記録媒体搬送方向Xで、カラーヘッド部50bの下方まで配置されていて、図中左右方向に黒キャップ6aをスライド移動するように構成されている。黒キャップ6aの移動範囲は、黒ヘッド50aのノズル57,58と対向しない図2、図6に示す退避位置からカラーヘッド部50bのノズル51,52と対向する位置までの範囲に設定されている。黒キャップ6aの移動位置は、固定部材611の移動軌道上に配置された検知センサS1〜S5により検知される。検知センサS1で検知される位置は、カラーヘッド部50bのノズル51,52と対向する第1の対向位置を、検知センサS2で検知される位置はノズル53,54と対向する第2の対向位置を、検知センサS3で検知される位置はノズル55,56と対向する第3の対向位置を、検知センサS4で検知される位置は、黒ヘッド部50aのノズル57,58と対向する第4の対向位置を、検知センサS5で検知される位置は、カラーヘッド部50bおよび黒ヘッド部50aとも対向しない退避位置をそれぞれ検知する。
【0048】
ベース部材611の一方の端部611a側には、図中上下方向に延在する駆動軸となるねじ付きシャフト619の一端619Aが螺合している。シャフト619の他端619Bには、ステッピングモータからなるメンテナンス移動モータ617Bによって回転駆動される駆動歯車617と噛合する歯車618が固定されている。これら駆動歯車617、歯車618、シャフト619及びメンテナンス移動モータ617Bで閉塞移動手段70Aが構成されている。
【0049】
閉塞移動手段70Aでは、メンテナンス移動モータ617Bが作動して駆動歯車617が回転すると、歯車618を介してシャフト619が回転してベース部材611が図中上下方向に移動する。移動方向に関してはメンテナンス移動モータ617Bの回転方向を正逆回転することで行える。黒キャップ6aは、メンテナンス移動モータ617Bが例えば正転すると対向位置へ、逆回転すると対向位置からノズルに当接して閉塞する閉塞位置へと移動可能とされている。対向位置と閉塞位置の位置検知は、メンテナンス移動モータ617Bをステッピングモータで構成した場合にはパルス数によって制御してもよいし、ステッピングモータを用いない場合には、別途センサ等を設けて検知するようにしてもよい。
【0050】
図3を用いて、カラーキャップ6bを移動するキャップ移動手段60Bと閉塞移動手段70Bの構成を説明する。キャップ移動手段60Bは、プーリ602,603と、プーリ602,603に巻き掛けられたベルト630と、ベルト630の一部にカラーキャップ6bを固定するための固定部材601と、プーリ602,603を回転自在に支持するとともに、カラー用キャップ6bを支持するベース部材600と、プーリ603を回転駆動する駆動手段となるメンテナンス移動モータ617Cとを備えている。
【0051】
カラー用キャップ6bは、メンテナンス移動モータ617Cの作動によりプーリ603が回転駆動してベルト630が移動すると、ベルト移動方向に移動される。本形態において、ベルト630は、黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bとの隣接方向に配置されていて、図中左右方向にカラー用キャップ6bをスライド移動するように構成されている。カラー用キャップ6bの移動範囲は、カラーヘッド部50bのノズル51〜56と対向しない図3、図7に示す退避位置からカラーヘッド部50bの全てのノズル51〜56と対向する図6、図12に示す対向位置までの範囲とされている。カラー用キャップ6bの移動位置は、固定部材601の移動軌道上に配置された検知センサS6〜S10により検知される。検知センサS6で検知される位置はカラーヘッド部50bの何れのノズルとの対向しない退避位置を、検知センサS7で検知される位置はノズル51,52と対向する第5の対向位置を、検知センサS8で検知される位置はノズル51〜54と対向する第6の対向位置を、検知センサS9で検知される位置はノズル51〜56と対向する第7の対向位置をそれぞれ検知する。
【0052】
ベース部材600の一方の端部600a側には、図中上下方向に延在する駆動軸となるねじ付きシャフト610の一端610Aが螺合している。シャフト610の他端610Bには、ステッピングモータからなるメンテナンス移動モータ617Dによって回転駆動される駆動歯車608と噛合する歯車609が固定されている。これら駆動歯車608、歯車609、シャフト610及びメンテナンス移動モータ617Dで閉塞移動手段70Bが構成されている。
【0053】
閉塞移動手段70Bでは、メンテナンス移動モータ617Dが起動して駆動歯車608が回転すると、歯車609を介してシャフト610が回転することで、ベース部材600が図中上下方向に移動する。移動方向に関してはメンテナンス移動モータ617Dの回転方向を正逆回転することで行える。カラー用キャップ6bは、メンテナンス移動モータ617Dが例えば正転すると対向位置からノズルに当接して閉塞する閉塞位置へと移動可能とされている。対向位置と閉塞位置の位置検知は、メンテナンス移動モータ617Dをステッピングモータで構成した場合にはパルス数によって制御してもよいし、ステッピングモータを用いない場合には、別途センサ等を設けて検知するようにしてもよい。
【0054】
図4を用いて画像形成装置の制御手段500の概要を説明する。
制御手段500は、周知のCPU501と、ROM502、RAM503、不揮発性メモリであるNVRAM504とホストインターフェース(ホストI/F)506を備えた周知のパソコンなどの周知の情報処理装置である。
【0055】
制御手段500は、黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bの記録ヘッドのインク吐出動作を制御するためのヘッド駆動制御部508及びヘッドドライバ509と、黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bを上下方向に移動するヘッド部移動手段の駆動手段となるヘッド部移動モータ512A、512Bを駆動するためのヘッド部移動モータ駆動部511A,511Bと、少なくとも黒キャップ6aとカラーキャップ6bを上下方向と左右方向に移動するキャップ移動手段60A,60Bと閉塞移動手段70A,70Bの各駆動モータで構成されたメンテナンス移動モータ617A〜617Dを駆動するためのヘッド部メンテナンス移動モータ駆動部617A〜Dと、搬送ベル43の駆動源となる搬送ベルト駆動モータ512を駆動するための搬送ベルト駆動部513と、吸引ファン44を回転する吸引モータ515を駆動する吸引モータ駆動部514と、環境温度及び又は環境湿度を検出する環境検知手段となる環境センサ521と用紙10の搬送位置を検知する用紙センサ522、検知センサS1〜S9を含む図示しない各種センサからの検知信号を入力するためのI/Oポート516等を備えている。制御手段500には、この画像形成装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル520が接続されている。操作パネル520には、ヘッド回復動作時の空吐出量を設定する空吐出量設定手段540が設けられている。
【0056】
本形態において、ROM502には、湿度と空吐出量の関係を設計時にテーブルとして作成し、制御シーケンステーブルとして格納されている。このテーブルは、インクを空吐出するノズル回復動作においてインクの空吐出量が多くなると、黒キャップ6aとカラー用キャップ6b内に空吐出したインクがミストとして飛散し周囲を汚損する可能性がある。そのためインクの空吐出(ノズル回復動作)時の黒キャップ6aとカラーキャップ6bに対する制御は、インクの空吐出量に関し、設定値Tを空吐出量設定手段540で変更されるように設定している。すなわち、インク回復動作時のインクの空吐出量が設定値Tを超える場合にはミストによる汚損が懸念されるため、インクを空吐出するヘッド部のノズルに隣接したノズルに対してキャップ6aまたはキャップ6bでノズルを閉塞する閉塞動作(キャッピング)を実行し、インクの空吐出量が設定値T未満であればミストの発生が少なく汚損の可能性もなくなるため、インクを空吐出するヘッド部のノズルに隣接したノズルに対してキャップ6aまたはキャップ6bによる閉塞動作(キャッピング)を行わないように各キャップ部の動作制御としている。
【0057】
設定値TはROM502に格納してあり、図4に示す空吐出量設定手段540によってユーザーによって変更できるように設定可能とされている。設定値Tは不揮発性メモリ504に記録され、操作パネル520のユーザーの操作で設定して空吐出時の閉塞動作(キャッピング)を変更するようにしても良い。
【0058】
制御手段500、そのCPU501で印刷動作時に、ホストI/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にてデータの並び替え処理等(場合によっては、画像処理の一部の処理)を行ってヘッド駆動制御部508に画像データを転送する。画像出力するための印刷データの1つであるビットマップデータ(印刷ラスタデータ)への変換は、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開し、印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)を作成した上で、該印刷ラスタデータをこの制御手段500に転送するようにしている。
【0059】
ヘッド駆動制御部508は、ホストI/F506が印刷ラスタデータを受け取ると、このドットパターンデータ(印刷ラスタデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ509にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ509に送出する。
【0060】
このヘッド駆動制御部508は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM502で構成することもできる。)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される駆動波形発生回路を含む。また、ヘッドドライバ509は、ヘッド駆動制御部508からのクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部508からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含み、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的に各ヘッド部50a,50bの記録ヘッドのアクチュエータ手段に印加して記録ヘッドを駆動し、画像データを印刷してドットパターンを形成する。ヘッド部移動モータ駆動部511A、511Bは、印刷時やノズル回復動作時に、ヘッド部移動モータ512A,512Bを作動する。ヘッド部メンテナンス移動モータ駆動部516は、ノズル回復動作となるインクの空吐出動作となると、インクの空吐出を実行するヘッド部のノズルと対向する位置へ黒キャップ6aを移動すべくメンテナンス移動モータ617Aを作動するとともに、インク空吐出を実行するノズルと隣接するノズルを、カラー用キャップ6bで閉塞すべくメンテナンス移動モータ617C,617Dを作動する。
【0061】
図5は、電源投入時、もしくは一定時間印刷が行われない場合の省電力モードにおいて、各ヘッド部のノズル51〜58が全て黒キャップ6aとカラーキャップ6bで閉塞(キャッピング)された待機状態を示す。図6は黒ヘッド部50aを用いたモノクロ印刷時における各ヘッド部と各キャップ6a,6bの状態を示し、図7は黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bによるカラー印刷時の各ヘッド部と各キャップ6a,6bの状態を示す。そして、制御手段500からインクの空吐出(ノズル回復)が指示される場合のヘッド部の状態は図5,図6,図7に示す3つの場合が考えられる。
【0062】
図5の待機状態から印刷を開始する場合、キャッピング状態での放置時間でメンテナンスの必要性の有無が決まる。ブラック、カラーとも予め設定された時間以上放置されており、印刷時に黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bを用いて印刷を行う図7に示すカラー印刷を行う場合、双方のヘッド部に対してメンテナンス(空吐出やワイピングなどのノズル回復動作)を行う必要がある。また、図5の待機状態から図6に示すモノクロ印刷を行う場合は、黒ヘッド部50aに対してメンテナンス(ノズル回復動作)を行えばよい。
【0063】
図6はモノクロ印刷の終了直後の状態であり、次にカラー印刷を行う場合、カラーキャップ6bでキャッピングされたカラーヘッド部50bの放置時間が設定された時間以上の場合、カラーヘッド部50bについてメンテナンス(ノズル回復)を行う必要がある。この状態において一定時間の放置により省電力モードに移行した場合、黒ヘッド部50aは黒キャップ6aで図5に示すキャッピングの状態となる。黒ヘッド部50aについては印刷直後の状態でありノズル面は吐出可能な状態を維持しているため、基本的にメンテナンスの必要は無いが、ノズルダウンなどの吐出異常や定期メンテナンスなどによりメンテナンスが指示される場合もある。
【0064】
図7に示す状態はカラー印刷終了直後の状態であり、一定時間の放置により省電力モードに移行して図5に示す待機状態(閉塞状態)へと移行する。移行以前であればカラーヘッド部50bの全てのノズル51〜56は、カラー印刷直後の状態であり吐出可能な状態を維持しているため基本的にメンテナンスは必要ない。しかしノズルダウンなどの吐出異常や定期メンテナンスなどにより任意のヘッドのノズルについてメンテナンスが指示される場合がある。以下各ヘッド部の回復動作について説明する。
【0065】
図8〜図12は、インク空吐出時(ノズル回復動作時)のキャッピング動作の説明図である。図8は印字が行われない待機状態であり、図5に示し閉塞状態から黒キャップ6aとカラー用キャップ6bが開放されて待機位置を占めた状態である。この例ではノズル51,52をイエローY、ノズル53,54をシアンC、ノズル55,56をマゼンタM、ノズル57,58をブラックK用としている。
【0066】
このような状態から全色、すなわち全てのノズル51〜58に対してノズル回復動作としてインクの空吐出を行う場合の制御手段500による制御内容について、図13に示すフローチャートと図8〜図12を用いて説明する。
【0067】
制御手段500では、ノズル回復動作が開始されると、ステップST1においてノズルメンテナンスが可能となる図8に示す待機位置に各ヘッド部が位置している否かを判断する。ここで各ヘッド部が待機位置に位置していない合にはステップST2においてヘッド部移動モータ512A,512Bを作動して各ヘッド部を待機位置へ移動し、待機位置を占めた場合、あるいは既に待機位置を占めている場合にはステップST3に進む。
【0068】
待機位置への移動後は、ステップST3において、黒キャップ6aが図9に示すように、カラーヘッド部50bの端部に位置するノズル51,52と対向する第一の対向位置P1を占めたか否かを検知センサS1からの出力の有無で判断する。ここで、検知センサS1からの出力の出力がない場合には、黒キャップ6aが第一の待機位置P1に達していないものとして、ステップST4において黒キャップ6aを第1の対向位置P1に移動すべくメンテナンス移動モータ617Aを待機位置への移動時とは逆方向へ作動してキャップP1位置へ移動する。そして、黒キャップ6aが第1の対向位置P1を占めると、ステップST5に進んでイエローYのノズル51,52に対するインクの空吐出によるノズル回復動作を実施してステップST6に進む。
【0069】
ステップST6では、図10に示すように、黒キャップ6aをマゼンタMのノズル53,54と対向する第2の対向位置P2へ移動すべくメンテナンス移動モータ617Aを作動する。また、ノズル回復動作を終えたノズル51,52を、ノズル53,54からインクを空吐出したときに発生するミスト状のインクで汚れないようにするために、カラー用キャップ6bで閉塞するべく、メンテナンス移動モータ617C、617Dを作動して、カラー用キャップ6bをノズル51,52との対向位置へと移動し、当該対向位置においてカラー用キャップ6bをノズル51,52と当接する閉塞位置まで上昇移動する。
【0070】
ステップST7では、黒キャップ6aが第2の対向位置、カラー用キャップ6bがノズル51,52に当接して塞ぐ閉塞位置を占めたことが検知センサS2と検知センサS7からの出力とメンテナンス移動モータ617B,617Dのステップ数等から判断される。そして各キャップが図10に示す状態を占めると、ステップST9においてシアンCのノズル53,54に対するインクの空吐出によるノズル回復動作を実施してステップST10に進む。
【0071】
ステップST10では、図11に示すように、黒キャップ6aをマゼンタMのノズル55,56と対向する第3の対向位置P3へ移動すべくメンテナンス移動モータ617Aを作動するとともに、ノズル55,56からインクを空吐出したときに発生するミスト状のインクにより、ノズル回復動作を終えたノズル51〜54(特にノズル53,54)が汚れるのを防止するために、カラー用キャップ6bで閉塞するべく、メンテナンス移動モータ617Cを作動して、カラー用キャップ6bをノズル51〜54との対向位置へと移動する。この場合、既にカラー用キャップ6bは、上昇した閉塞位置にあるので、メンテナンス移動モータ617Dは作動せず、メンテナンス移動モータ617Cのみを作動して、カラー用キャップ6bを横方向にスライド移動する。ただこの場合、ノズル51〜54に当接された状態でカラー用キャップ6bが移動するので、ノズルのインクが付着するおそれがある場合、ノズル51,52との閉塞位置からメンテナンス移動モータ617Dを作動して一旦カラー用キャップ6bを対向位置へと下降し、メンテナンス移動モータ617Cを作動してノズル53,54との対向位置へと移動してから、再び当該対向位置においてカラー用キャップ6bをノズル53,54と当接する位置まで上昇移動するようにメンテナンス移動モータ617Dで制御してもよい。
【0072】
ステップST10において、黒キャップ6aが第3の対向位置、カラー用キャップがノズル51〜54に当接して塞ぐ閉塞位置を占めたことが検知センサS3と検知センサS8からの出力とメンテナンス移動モータ617B,617Dのステップ数等から判断される。そして各キャップが図11に示す状態を占めている場合には、ステップST11に進み、マゼンタのノズル55,56に対するインクの空吐出によるノズル回復動作を実施してステップST12に進む。
【0073】
ステップST12では、図12に示すように、黒キャップ6aをブラックKのノズル57,58と対向する第4の対向位置P4へ移動すべくメンテナンス移動モータ617Aを駆動する。また、ノズル57,58からインクを空吐出したときに発生するミスト状のインクにより、ノズル回復動作を終えたノズル51〜56(特にノズル55,56)が汚れるのを防止するために、カラー用キャップ6bでノズル51〜56を閉塞するべく、メンテナンス移動モータ617Cを作動して、カラー用キャップ6bをノズル51〜56との対向位置へと移動する。この場合、既にカラー用キャップ6bは、上昇した閉塞位置にあるので、メンテナンス移動モータ617Dは作動せず、メンテナンス移動モータ617Cを作動して、カラー用キャップ6bを横方向にスライド移動する。
【0074】
ステップST13では、黒キャップ6aが第4の対向位置、カラー用キャップ6bがノズル51〜56に当接して塞ぐ閉塞位置を占めたことが検知センサS4と検知センサS9からの出力とメンテナンス移動モータ617B,617Dのステップ数等から判断される。そして黒キャップ6aとカラー用キャップ6bが図12に示す位置へ移動したことが検知センサS4と検知センサS9で検知されると、ステップST14に進む。ステップST14では、ブラックKのノズル57,58に対するインクの空吐出してノズル回復動作を実施して、この制御が終了する。
【0075】
このようにして全ての黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bに対し空吐出が行われるが、黒キャップ6aに吸引機構、及びワイピング機構を設けることにより、全ての空吐出の前に加圧メンテナンスや吸引メンテナンス、ワイピング等のメンテナンス動作(ノズル回復動作)を行っても良い。以上が全色について空吐出を行う場合の動作説明である。
【0076】
このようにして、黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bのノズル回復動作としてインキの空吐出を行う画像形成装置において、1つのヘッド部のノズルに対するノズル回復動作中に、別なヘッド部のノズル、あるいはノズル回復動作をしているノズルに隣接して、既にノズル回復動作を終えているノズルに対して、既存のカラー用キャップ6bを用いて閉塞状態とするので、インクを吐出するノズル回復動作を行う際に吐出させたインクのミストによる周囲のヘッド(ノズル)の汚損防止を低コスト、省スペースで実現することができる。
【0077】
全てのヘッド部のノズル51〜58に対する空吐出が終了すると、ヘッド部50a、50bは図7に示す印刷位置で待機を行う。黒のみの印刷の場合は図6に示すようにカラーヘッド部50bをカラー用キャップ6bで閉塞した状態で待機する。もしくは印刷後に全てのノズル51〜58から空吐出したノズル回復動作をしてから動作終了を行う印字後空吐出を行った場合には、全ての空吐出を行った後に、図5に示すように、黒ヘッド部50aとカラーヘッド部50bを黒キャップ6aとカラーキャップ6bで閉塞状態として動作終了する場合もある。
【0078】
次に、複数の色のうちの任意の1色のノズルに対して空吐出を行ってノズル回復動作を行う場合の制御内容について、図14を用いて説明する。
ここでは、任意の色のノズルをnノズル、nノズルの右側に隣接するノズルをn+1ノズル、左側に隣接するノズルをn−1ノズルとする。例えばヘッド部50bの構成において、nノズルがイエローのノズル51,52の場合、左側に隣接するn−1ノズルは存在せず、n+1ノズルは隣接するシアンのノズル53,54となり、nノズルがマゼンタのノズル53,54の場合、n−1ノズルはシアンのノズル53,54であり、n+1ノズルは黒ヘッド部50aのノズル57,58となる。
【0079】
制御手段500は、ヘッド回復動作が開始されると、ステップST21においてヘッドメンテナンスが可能となる待機位置に全てのヘッド部が位置しているが判断を行う。待機位置に無い場合ステップST22でヘッド部移動モータ512A,512Bを作動してヘッド部50a,50bを印刷位置から図8に示す待機位置へと移動する。待機位置に全てのヘッド部50a,50bが移動すると、ステップST23において、キャップがnノズルと対向位置にあるか否かを検知センサの出力で判断し、対向位置を占めていない場合には、ステップST24においてインク空吐出する(ノズル回復動作をする)nノズルとの対向位置へ移動すべく、該当するメンテナンス移動モータを作動する。
【0080】
ステップST25では、さらにn−1ノズル(左側にノズル)が存在するか否かを判断し、n−1ノズルが存在する場合には、ステップST26においてカラーキャップを用いたキャッピングを実施する。そして、ステップST27においてn−1ノズルに対してキャッピングがなされているか否かを判断し、キャッピングがされている場合には、ステップST28においてnノズルから黒キャップ6aに対する空吐出(ノズル回復動作)が実施される。
【0081】
次にステップST29では、n+1ノズルの有無が判断され、n+1ノズルが有る場合には、ステップST30に進んで、nノズルからの空吐出量Pを計測し、ステップST31で計測結果を判定する。ROM502には予め設定値Tが設定されている。この設定量Tは、nノズルが空吐出を行うとミストが発生し隣接ヘッドに影響を及ぼす空吐出インク量である。
【0082】
ステップST31において、nノズルからの1回当たりの空吐出量Pが設定値Tを越えると、隣接ノズルにミストが既に付着している可能性があるので、ステップST32でキャップをn+1ノズルと対向する位置へと移動すべく対応するメンテナンス移動モータを作動し、ステップST33においてワイピング動作を実施する。nノズルからの空吐出量Pが設定値T未満の場合は空吐出インクによるミストの発生が無いものとして、n+1ノズルへのワイピング処理は行わず、この制御を終える。
【0083】
例えばnノズルがイエローのノズル51,52の場合、図9に示すキャップ位置P1においてノズル51,52から黒キャップ6aに対してインクの空吐出が行われる。その際n−1ノズルに当たるノズルあるいはヘッドは存在しないためにn−1ノズルのキャッピングは実施されない。ノズル51,52の空吐出量Pが設定値T以上の場合は、図10に示すように、キャップ位置P2に移動し、隣接するn+1ノズルにあたるノズル53,54のワイピングを黒キャップ6aで実施して終了する。
【0084】
nノズルが黒ヘッド部50aのノズル57,58の場合は、図12に示すように、キャップ位置P4にてノズル57,58のインク空吐出を実施する。その場合、左側に隣接するn−1ノズルであるノズル55,56が存在するため、n−1ノズル以下は、カラーキャップ6bによるキャッピングにより閉塞する。また、本形態では、ノズル57,58の右側には隣接するn+1ノズルは存在しないためn+1ノズルのワイピング処理は実行されず、この制御が終了となる。
【0085】
次に、複数の色のうちの任意の2色のノズルに対して空吐出を行ってノズル回復動作を行う場合の制御内容について、図15を用いて説明する。
図15において、ステップST41からステップST48までは、図14において既に説明したステップST21からステップST28までの処理と同様であるので、ここでは省略し、nノズル空吐出実施後に他の色のノズルのインクの空吐出実施について説明する。また、他のノズルはnノズルに隣接する場合はn+1であり、順次n+2、n+3まで可能性が考えられる。
【0086】
例えばnがイエローのノズル51,52の場合は、n+1はシアンのノズル53,54であり、n+2はマゼンタのノズル55,56、n+3はブラックのノズル57,58が該当する。どのノズルの空吐出が実施されるかは、装置の使用状態により異なるため、空吐出される2つの色のノズルのうちひとつをnとし、2つ目のヘッドアレイをn+Xと表す。
【0087】
図15のステップST48においてnノズルからインクの空吐出して(ノズル回復動作)が行われると、制御手段500は、ステップST49で2番目にあたるn+Xノズルの位置を取込み、ステップST50でX≠1、すなわちn+Xノズルがnノズルと隣接したノズルであるか否かを判断する。ここでnノズルに隣接するノズルではない場合、ステップST53でn+Xノズルの空吐出を実施する前に、nノズルの空吐出によるn+1ノズルのミストの付着による汚損の有無を判断する必要がある。その為ステップST50で、X≠1の場合は、ステップST59に進んで、nノズルからの空吐出量Pを計測し、ステップS60で計測結果を判定する。そしてステップST60においてnノズルからの1回当たりの空吐出量Pが設定値Tを越えると、隣接ノズルにミストが既に付着している可能性があるので、ステップST12でキャップをn+1ノズルと対向する位置へと移動すべく対応するメンテナンス移動モータを作動し、ステップST62においてワイピング動作を実施する。
【0088】
一方、X≠1でない場合、ステップST50でn+Xノズルと対向する位置へとキャップを移動し、ステップST51でキャップがn+Xノズルと対向位置にあるか否かを検知センサの出力で判断する。そして、対向位置を占めている場合には、ステップST52で、n+X−1ノズルをキャップでキャッピングして閉塞した後、ステップST53でn+Xヘッドアレイの空吐出を行う。
【0089】
ステップST54では、必要に応じてn+X+1の有無を判断し、ステップST55において、n+Xノズルからの空吐出量P(累積あるいは1回当たりなのか・・?)を計測し、ステップST56でn+Xノズルからの空吐出量Pが設定値Tを越えると、隣接ノズルにミストが既に付着している可能性があるので、ステップST57でキャップをn+X+1と対向する位置へと移動すべく対応するメンテナンス移動モータを作動し、ステップST58においてn+X+1ノズルに対してワイピング動作を実施してこの制御を終える。
【0090】
例えばワイピングを行うノズルがイエローのノズル51,52とマゼンタのノズル55,56と指示された場合、イエローのノズル51,52の対向位置にキャップを移動する。ここでノズル51,52の左隣にあたるn−1ノズルは存在しないのでn−1ノズルのキャッピングの必要はない。
【0091】
ノズル51,52の空吐出終了後は、n+X番目のノズルの空吐出を行う。マゼンタのノズル55,56はX=2に当たるため、n+1ノズルであるシアンのノズル53,54についてワイピングの有無をノズル51,52の空吐出量Pから判断する。そして、設定値T以上の空吐出が行われていた場合、シアンのノズル53,54のワイピングを行う。ワイピング終了後、マゼンタのノズル55,56の対向位置にカラーキャップ6bを移動し、シアンのノズル54以下、つまりノズル51〜54をキャッピングにより閉塞しマゼンタのノズル55,56のインク空吐出を行う。マゼンタのノズル55,56からの空吐出後は、同ノズル55,56からの空吐出量が設定値T以上であった場合、ブラックのノズル57,58のワイピングを行うことになる。以上が任意の2色のノズルのインクの空吐出を行う場合の例である。
【0092】
同様に任意の3色のノズルのインクの空吐出(ノズル回復動作)を行う場合も存在するが、図15の2色の場合の制御内容を拡張した制御内容であるため省略する。ヘッド部に設けられたノズルが、4色以上のインクを吐出するように構成されている場合も同様に図15の2色の場合の制御内容を拡張することで対応が可能となる。
【符号の説明】
【0093】
6a,6b キャップ手段
10 記録媒体
50a,50b インク吐出手段
51〜58 複数のノズル
60A,60B キャップ移動手段
70A,70B 閉塞移動手段
500 制御手段
540 空吐出量設定手段
P 空吐出量
T 設定値
X 記録媒体搬送方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【特許文献1】特第3670428号公報
【特許文献2】特開2001−113714号公報
【特許文献3】特開2008−307797号公報
【特許文献4】特開2006−96017号公報
【特許文献5】特開2009−18519号公報
【特許文献6】特開2009−166357号公報
【特許文献7】特許第2771545号公報
【特許文献8】特開2008−213216号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するための複数のノズルを有し、記録媒体に向けて前記複数のノズルからインクを吐出して前記記録媒体に画像を形成するとともに、それぞれ独立して少なくとも記録媒体搬送方向に移動可能な複数のインク吐出手段と、各インク吐出手段のノズルをそれぞれ個別に閉塞可能な複数のキャップ手段とを備え、前記インク吐出手段のノズル回復動作としてインキの空吐出を行う画像形成装置において、
1つのインク吐出手段に対するヘッド回復動作中に、別なインク吐出手段のノズルを、少なくとも前記キャップ手段の1つを用いて閉塞することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記各キャップ手段を前記ノズルと対向する対向位置と前記ノズルと対向しない退避位置とにそれぞれ移動するキャップ移動手段と、
前記各キャップ部材を前記対向位置において前記ノズルに当接して閉塞する閉塞位置へと移動させる閉塞移動手段と、
1つのインク吐出手段に対するヘッド回復動作中に、別なインク吐出手段のノズルを、少なくとも前記キャップ手段の1つを用いて閉塞するキャッピング動作をするように、前記キャップ移動手段と前記閉塞移動手段の作動を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、1つのインク吐出手段に対するヘッド回復動作中に、ヘッド回復動作を終えたインク吐出手段のノズルを、前記キャップ手段の1つを用いて閉塞するキャッピング動作をするように、前記キャップ移動手段と前記閉塞移動手段の作動を制御することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、1つのインク吐出手段に対するヘッド回復動作中に、ヘッド回復動作を成されているインク吐出手段に隣接しているノズルを、前記キャップ手段の1つを用いて閉塞するキャッピング動作をするように、前記キャップ移動手段と前記閉塞移動手段の作動を制御することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ヘッド回復動作時の空吐出量を設定する空吐出量設定手段を備え、
前記制御手段は、前記空吐出量設定手段で設定された空吐出量に応じて、前記ヘッド回復動作中のキャッピング動作の時期を変更することを特徴とする請求項2,3または4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記空吐出量が所定値以下の場合には、キャッピング動作を実行しないように、前記キャップ移動手段と前記閉塞移動手段の作動を制御することを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
インクを吐出するための複数のノズルを有し、記録媒体に向けて前記複数のノズルからインクを吐出して前記記録媒体に画像を形成するとともに、それぞれ独立して少なくとも記録媒体搬送方向に移動可能な複数のインク吐出手段と、各インク吐出手段のノズルをそれぞれ個別に閉塞可能な複数のキャップ手段とを備え、前記インク吐出手段のノズル回復動作としてインキの空吐出を行う画像形成装置の制御方法において、
1つのインク吐出手段に対するヘッド回復動作中に、別なインク吐出手段のノズルを、少なくとも前記キャップ手段の1つを用いて閉塞することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項8】
前記各キャップ手段を前記ノズルと対向する対向位置と前記ノズルと対向しない退避位置とにそれぞれ移動するキャップ移動手段と、
前記各キャップ部材を前記対向位置において前記ノズルに当接して閉塞する閉塞位置へと移動させる閉塞移動手段と、
前記キャップ移動手段と前記閉塞移動手段の作動を制御する制御手段を有し、
1つのインク吐出手段に対するヘッド回復動作中に、別なインク吐出手段のノズルを、少なくとも前記キャップ手段の1つを用いて閉塞するキャッピング動作をするように前記キャップ移動手段と前記閉塞移動手段の作動を前記制御手段で制御することとを特徴とする請求項7記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項9】
前記制御手段は、1つのインク吐出手段に対するヘッド回復動作中に、ヘッド回復動作を終えたインク吐出手段のノズルを、前記キャップ手段の1つを用いて閉塞するキャッピング動作をするように、前記キャップ移動手段と前記閉塞移動手段の作動を制御することを特徴とする請求項8記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項10】
前記制御手段は、1つのインク吐出手段に対するヘッド回復動作中に、ヘッド回復動作を成されているインク吐出手段に隣接しているノズルを、前記キャップ手段の1つを用いて閉塞するキャッピング動作をするように、前記キャップ移動手段と前記閉塞移動手段の作動を制御することを特徴とする請求項8記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項11】
前記ヘッド回復動作時の空吐出量を設定する空吐出量設定手段を備え、
前記制御手段は、前記空吐出量設定手段で設定された空吐出量に応じて、前記ヘッド回復動作中のキャッピング動作の時期を変更することを特徴とする請求項8,9または10記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項12】
前記制御手段は、前記空吐出量が所定値以下の場合には、キャッピング動作を実行しないように、前記キャップ移動手段と前記閉塞移動手段の作動を制御することを特徴とする請求項11記載の画像形成装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−152768(P2011−152768A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17331(P2010−17331)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】