説明

画像形成装置に用いられる弾性部材

【課題】最表面に高分岐ポリマーを効率よく分散させることで脱落を防ぎ、長時間に亘って優れた離型性または剥離性を発揮することが可能な弾性部材、並びに該弾性部材を有する画像形成用手段を含む画像形成装置を提供すること。
【解決手段】粉体、画像受容シートを含む画像形成装置用他手段と接触しうる画像形成装置の可動部のための弾性部材であって、基材上に、ゴムからなる弾性層が形成されており、前記弾性層は分子内に2個以上の重合性官能基を有し、分子間で縮合反応、付加反応を起こさせることが可能なモノマーを重合させることにより得られる高分岐ポリマーを含有していることを特徴とする弾性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に用いられる弾性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の電子写真方式のカラー画像形成装置には、他の画像形成用装置部品や要素(感光体、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段、シート状記録媒体搬送手段等の一部又は全部として用いられる部品や要素、或いはトナーや紙等のサプライと呼ばれる消耗品)と接触する各種の部材(他の部材と相対的位置が変化してこれらと接触する静止部材、可動部材)が使われている。
例えば、複写機、プリンタ等の電子写真方式のカラー画像形成装置は、記録媒体上に4色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)のトナーからなるカラー画像を形成するため各現像装置を含む画像形成部と、形成されたカラー画像を記録媒体上に定着させる定着装置を備えており、これら現像装置や定着装置は、可動部材(例えばローラやベルト等)を有している。
以下、1つの典型例として、定着装置について見ると、定着装置は、記録媒体上のカラー画像を加熱して定着させる定着部材と、定着部材と定着ニップを形成する加圧部材を有し、記録媒体が定着ニップを通過する際に、カラー画像を加熱加圧して記録媒体上に定着させる。
【0003】
定着部材は、一般に、ローラ形状又はベルト形状であり、金属ローラ又は樹脂製のシームレスベルト上に、シリコーンゴムを含む離型層が形成されており、ヒーターを有する。
しかしながら、シリコーンゴムは離型性が不充分であるため、トナーが定着された記録媒体が定着部材から剥離しにくくなり、ジャムが起こりやすいという問題があった。
そこで、特許文献1の特開2001−342319号公報には、フッ素ゴムに補強剤と球状充填剤を含むゴム組成物を定着部材の表層材料として用いた定着部材が開示されているが、ゴムと各種フィラーとの間の接着力が乏しいために、使用時に脱落してしまうという問題があった。
【0004】
その問題を解決するために、特許文献2の特開2006−78800号公報には、2種以上の離型性バインダーと2種以上の離型性フィラー(ポリテトラフルオロエチレン、2硫化モリブデン、ポリアミド、シリカ、カーボンブラックからなる群から選択される2種以上のフィラー)とを含有することを特徴とする弾性ベルト用表面層部材が開示されている。
しかしながら、これらのフィラーも分子単位ではなく凝集体として混合されているので、分散状態が不均一であったり、使用中にフィラーが脱落したりするという問題が解決されたとはいえない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、最表面に高分岐ポリマーを効率よく分散させることで脱落を防ぎ、長時間に亘って優れた離型性または剥離性を発揮することが可能な弾性部材、並びに該弾性部材を有する画像形成用手段を含む画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は本発明の(1)乃至(7)により解決される。
(1)「粉体、画像受容シートを含む画像形成装置用他手段と接触しうる画像形成装置の可動部のための弾性部材であって、基材上に、ゴムからなる弾性層が形成されており、前記弾性層は分子内に2個以上の重合性官能基を有し、分子間で縮合反応、付加反応を起こさせることが可能なモノマーを重合させることにより得られる高分岐ポリマーを含有していることを特徴とする弾性部材」、
(2)「前記高分岐ポリマーが、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーをラジカル重合開始剤の存在下で重合させることにより得られることを特徴とする前記第(1)項に記載の弾性部材」、
(3)「前記弾性層が、部材の最表面に設けられていることを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載の弾性部材」、
(4)「前記高分岐ポリマーが、フッ素原子を有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の弾性部材」、
(5)「前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の弾性部材であって、記録材上に担持されているトナー像を定着可能であることを特徴とする定着部材」、
(6)「前記第(5)項に記載の定着部材を有することを特徴とする定着装置」、
(7)「感光体と、該感光体を帯電させる帯電装置と、該帯電した感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置と、該感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像装置と、該感光体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記第(6)項に記載の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置」。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像形成装置に用いられる装置用要素(例えば回転体)において、弾性層の表面に高分岐ポリマーを効率よく分散させることで脱落を防ぎ、長時間に亘って優れた離型性または剥離性を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の弾性部材の一例を示す断面図である。
【図2】図1の弾性部材の変形例を示す断面図である。
【図3】本発明の定着装置の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
図1に、本発明の弾性部材の一例として、トナーの定着に用いられる定着ローラ(10)を示す。
定着ローラ(10)は、芯金(11)上に、プライマー層(不図示)を介して、シリコーンゴム、フルオロカーボンシロキサンゴム及びフロロシリコーンゴムからなる群より選択される一種以上のゴムを含む弾性層(12)が形成されている。
芯金(11)を構成する材料としては、特に限定されないが、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮、銅等の金属;ガラス;セラミックス等が挙げられる。
ここでは定着部材を一例として挙げたが、帯電部材、現像部材としては、ニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム等が好適に用いられる。転写部材としては、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が好適に用いられる。
なお、ゴムには、必要に応じて、充填剤、補強材、導電性制御剤、老化防止剤、着色剤、可塑剤、ワックス、オイル等の添加剤が本発明の効果を妨げない範囲で添加されていてもよい。
【0010】
シリコーンゴムとしては、オルガノシロキサン構造(構成単位)を有するゴムであれば、特に限定されないが、下記一般式(1)で表わされる構成単位を有するゴムが挙げられる。
【0011】
【化1】

(式中、R1、R2は脂肪族不飽和結合を有さない非置換または置換の一価炭化水素基であるが、互いに同一の基であっても、異なる基であってもよい。特に炭素数1〜8のものが好ましく、具体的にはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられるが、特にメチル基、エチル基、フェニル基が好ましい。)
【0012】
フルオロカーボンシロキサンゴムとしては、フルオロカーボンシロキサン構造(構成単位)を有するゴムであれば、特に限定されないが、下記一般式(2)で表わされる構成単位を有するゴムが挙げられる。
【0013】
【化2】

(式中、Rは、置換若しくは無置換の炭素数が1〜8のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、a及びeは、それぞれ独立に、0又は1であり、b及びdは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、cは、0〜8の整数である。)
【0014】
フロロシリコーンゴムとしては、フロロオルガノシロキサン構造(構成単位)を有するゴムであれば、特に限定されないが、下記一般式(3)で表わされる構成単位を有するゴムが挙げられる。
【0015】
【化3】

(式中、nは、0〜20の整数である。)
【0016】
芯金(11)に弾性層(12)を形成する方法としては、特に限定されないが、金型の内部に、シランカップリング剤、シリコーン系接着剤等を用いて、プライマー層が形成された芯金(11)を設置し、シリコーンゴム、フルオロカーボンシロキサンゴム及びフロロシリコーンゴムからなる群より選択される一種以上のゴムの前駆体を注入した後、加熱する方法等が挙げられる。
【0017】
シリコーンゴムコンパウンドの市販品としては、KE1950−30(信越化学工業社製)、DY35−2083(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。
フルオロカーボンシロキサンゴムコンパウンドの市販品としては、SIFEL3400(信越化学工業社製)等が挙げられる。
フロロシリコーンゴムコンパウンドの市販品としては、X36−420(信越化学工業社製)、FSE7540、FSL7641(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、SE−1541−U(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0018】
以下に、高分岐ポリマー(樹枝状ポリマー)について、詳しく説明する。
一般に、モノマーを重合する際は、主鎖が線状に伸びていく。これに対して、高分岐ポリマーは、モノマーが中心部から放射状に伸びていき、その形状は球状で多数の末端基を持ち、分子内に空隙を有している。また溶解性が高く、分子間の相互作用が小さいために、マトリクスに分散させても粘度変化が小さいという特性がある。
一般に、高分子混合物の表面には低表面エネルギー成分が選択的に濃縮される。
【0019】
また、化学的に等価な高分子混合物の表面には、低分子量成分が濃縮される。これらは、空気との界面自由エネルギーを極小化させるように高分子表面の凝集構造が形成されることを意味しており、前者はエンタルピー駆動の表面濃縮、後者はエントロピー駆動の表面濃縮と呼ばれる。ここで、分岐の多い高分子は同じ分子量の線状高分子と比べて分子鎖の空間的な広がりが小さいため、表面や界面に濃縮される。また、高分岐ポリマーでは1分子中に多数の末端基を有しているため、末端基の表面エネルギーが骨格と比べて小さい場合には、末端基が浮き輪のような役割を果たして分子自身を表面および界面に濃縮させる。
したがって、機能性を付与した樹枝状ポリマーを通常の線状高分子に少量添加するだけで、表面や界面の性質を劇的に変えることが可能となる。
知られているように、高分岐ポリマーすなわちデンドリティック(樹枝状)ポリマーには、ハイパーブランチポリマーとデンドリマーが含まれるが、本発明においては、その入手(合成法)の簡便さの点から、少なくとも見掛け上、反応速度の異なる官能基を分子内に複数有するモノマー、又は反応速度の異なる複数種類の多官能モノマーを、初めから一挙に反応させて、より活性な部位(箇所)で枝分かれさせる結果、枝分かれがランダムに生じ、分子量分布があるハイパーブランチポリマーが、より好ましく用いられる。但し、入手できれば、その性質の良さの点からも、無論、デンドリマーを用いることに何らの問題はない。
【0020】
本発明において用いられるデンドリマーとは、中心の原子または分子構造部分に対して周囲の分子構造が三次元方向に対称的に規則正しく伸びた球状構造を有し、中心から離れるにしたがって枝分れが大きくなっている分子である。デンドリマーには、いわゆるスターポリマーまたはスターバーストポリマーと呼ばれるものも含まれる。通常デンドリマーにおいては、規則正しいフラクタル構造の枝分れが形成されている。樹枝状多分岐高分子であるデンドリマーは、従来の線状ポリマーとは、非常に異なる物性を示すことが明らかとなっている。例えば、デンドリマーは分子量分布がないか又はきわめて狭いため、同一分子量の線状ポリマーに比べて、粘度の分子量依存性が小さい。
【0021】
一方、本発明において用いられるハイパーブランチポリマーは、前述のように、デンドリマーに比べて分子構造の制御という点では劣るが、高分岐ポリマーとしての性質は備えており、簡便な方法で合成できる点が有利である。
一般に、ハイパーブランチポリマーは、AxBy型モノマーを重縮合あるいは重付加反応させることにより、分岐を展開させて合成される。ここで、A、Bとは、それぞれ、1分子中に重合反応可能な異なる官能基aをx個、bをy個併せ持った化合物である。代わりに、官能基aをx個と官能基bをy個有するモノマーを用いてもよい。さらに、これら化合物は分子内縮合、分子内付加はしないが官能基aと官能基bは互いに縮合反応や、付加反応を起こさせることが可能である。例えば、その組合せは水酸基とカルボキシル基、アミノ基とカルボキシル基、ハロゲン化アルキル基とフェノール性水酸基、アセトキシ基とカルボキシル基、アセチル基と水酸基、イソシアネート基と水酸基などが挙げられる。
さらに場合によっては、分岐のコアとして機能する物質を併用することもある。なお、反応工程の簡便さ、反応制御の面からカルボキシル基あるいはその誘導体と水酸基あるいはその誘導体の組み合わせが好ましい。
【0022】
また、ラジカル重合性二重結合aをx個有するAx型モノマーにラジカル重合開始剤Bを添加することでも、高分岐ポリマーを得ることができる。本発明におけるラジカル重合性二重結合を有するモノマーAとしては、例えば、以下のような化合物が挙げられる。
(1)ビニル基を有する炭化水素化合物
(2)ビニル基またはアリル基を有するエステル化合物
(3)ビニル基またはアリル基を有するエーテル化合物
(4)(メタ)アクリル酸エステル化合物
(5)ビニル基を有する含窒素化合物
(6)ビニル基を有する含ケイ素化合物
(7)ビニル基を有する含フッ素化合物
なお、これらの化合物は、分散させるマトリクスとの相溶性を考慮して、適宜選択することができる。
【0023】
また、本発明におけるラジカル重合開始剤Bとしてはアゾ系重合開始剤を用いることができ、例えば、以下のような化合物が挙げられる。
(8)水溶性アゾ系重合開始剤
(9)油溶性アゾ系重合開始剤
(10)高分子アゾ系重合開始剤
なお、これらの重合開始剤は、重合させる溶媒との相溶性を考慮して、適宜選択することができる。
【0024】
本発明における高分岐ポリマーとは、デンドリマー、ハイパーブランチポリマーのことを指すが、コストや材料の入手しやすさという観点から、ハイパーブランチポリマーが好ましく用いられる。
【0025】
図2に、定着ローラ(10)の変形例を示す。
定着ローラ(10’)は、芯金(11)と弾性層(12)の間に中間層(13)がさらに形成されている以外は、定着ローラ(10)と同一の構成である。これにより、弾性層(12)の厚さを小さくすることができる。
なお、定着部材における中間層(13)を構成する材料としては、耐熱性ゴムであれば、特に限定されない。
【0026】
図3に、本発明の定着装置の一例を示す。なお、図3において、図1と同一の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
定着装置(100)は、定着ローラ(10)及び加圧ローラ(20)を有する。
定着ローラ(10)は、ハロゲンヒータ(15)が内蔵されており、弾性層(12)の表面には、温度センサ(16)が設置されている。
加圧ローラ(20)は、芯金(21)上に、耐熱性ゴムを含む弾性層(22)及び離型層(23)が順次積層されている。
加圧ローラ(20)は、定着ローラ(10)に圧接されており、ニップ部が形成されている。このとき、トナー(T)が付着している記録媒体(P)がニップ部を通過する際に、記録媒体(P)に付着しているトナー(T)は、定着ローラ(10)により加熱されて軟化すると共に、加圧されて、記録媒体(P)に定着する。
【0027】
図4に、本発明の画像形成装置の一例を示す。なお、図4において、図3と同一の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
画像形成装置(1000)は、定着装置(100)と、感光体ドラム(200)、感光体ドラム(200)に接触して帯電させる帯電ローラ(300)、帯電した感光体ドラム(200)にレーザー光(L)を照射して静電潜像を形成する露光装置(不図示)、感光体ドラム(200)に形成された静電潜像にトナーで現像してトナー像を形成する現像ローラ(400)、感光体ドラム(200)に形成されたトナー像を記録媒体(P)に転写する転写ローラ(500)、トナー像が転写された感光体ドラム(200)をクリーニングするクリーニング装置(600)を有する。また、画像形成装置(1000)は、帯電ローラ(300)にDC電圧を印加する電源(310)、感光体ドラム(200)の表面電位を測定する表面電位計(210)を有する。
【0028】
次に、画像形成装置(1000)を用いて画像を形成する方法について説明する。
まず、感光体ドラム(200)を回転させながら、帯電ローラ(300)を用いて、感光体ドラム(200)に形成されている感光層(不図示)を一様に帯電させる。次に、露光装置を用いて、帯電した感光層にレーザー光(L)を照射して静電潜像を形成する。さらに、現像ローラ(400)を用いて、感光層に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像してトナー像を形成する。次に、転写ローラ(500)を用いて、感光層に形成されたトナー像を記録媒体(P)に転写する。そして、定着装置(100)を用いて、記録媒体(P)に転写されたトナー像を定着させる。
【0029】
以上、本発明の定着部材として、ローラ状の定着部材について説明したが、本発明の定着部材は、ローラ状の定着部材に限定されず、シームレスベルト状等であってもよい。
シームレスベルト状の定着部材の基材を構成する材料としては、特に限定されないが、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂;ニッケル、ステンレス鋼等の金属が挙げられる。
シームレスベルト状の定着部材の基材に弾性層(12)を形成する方法としては、特に限定されないが、シランカップリング剤、シリコーン系接着剤等を用いて、プライマー層が形成された基材をマンドレルに固定した状態で金型に設置し、シリコーンゴム、フルオロカーボンシロキサンゴム及びフロロシリコーンゴムからなる群より選択される一種以上のゴムの前駆体を注入した後、加熱する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、実施例により限定されない。なお、部は、質量部を意味する。
【0031】
[合成例1]
高分岐ポリマー1を、非特許文献1のJ.Appl.Polym.Sci.,Vol.100,p.664(2006)に記載の方法を参考に合成した。
なお、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーとしてジビニルベンゼン(メタ体:パラ体=2:1の混合物、6.5部)、及び、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート(9.2部)を使用した。
【0032】
[合成例2]
高分岐ポリマー2を、モノマーとしてジビニルベンゼンの代わりにトリフルオロジビニルベンゼン(9.2部)を用いた以外は合成例1と同様にして得られた。
【0033】
[実施例1]
内径が60mm、幅が400mm、厚さが0.1mmのポリイミド製のシームレスベルトの表面に、シリコーンゴム用プライマーDY39−067(東レ・ダウコーニング社製)を厚さが0.5μmとなるように塗布した後、常温で30分間風乾し、150℃で30分間加熱した。得られたシームレスベルトをマンドレルに固定した状態で、合成例1にて合成した高分岐ポリマー1の10%トルエン溶液を5部添加したシリコーンゴムコンパウンドDY35−2083(東レ・ダウコーニング社製)を注入した。次に、150℃で10分間加熱した後、シームレスベルトを脱型し、200℃で4時間加熱して、弾性層(12)を形成し、定着ベルトを得た。
【0034】
[実施例2]
高分岐ポリマー1の代わりにポリマー2を用いた以外は、実施例1と同様にして、定着ベルトを得た。
【0035】
[実施例3]
シリコーンゴム用プライマーDY39−067(東レ・ダウコーニング社製)及びシリコーンゴムコンパウンドDY35−2083(東レ・ダウコーニング社製)の代わりに、それぞれ含フッ素系樹脂プライマーのプライマーZ(信越化学工業社製)及びフルオロカーボンシロキサンゴムコンパウンドSIFEL3400(信越化学工業社製)を用いた以外は、実施例2と同様にして、定着ベルトを得た。
【0036】
[比較例1]
高分岐ポリマー1の代わりに架橋ポリスチレン微粒子(ケミスノーSX:綜研化学社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、定着ベルトを得た。
【0037】
[比較例2]
高分岐ポリマー1の代わりにPTFEパウダー(Fluon(R) PTFE L150J:旭硝子社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、定着ベルトを得た。
【0038】
[評価方法]
評価条件は以下のとおりである。
複写機:RICOH imagio MP C2500 改造機(クリーニング装置なし)
複写原稿:ベタ画像(シアン、600dpi、画像面積率100%)
複写モード:フルカラー、片面
記録媒体:再生紙、マイリサイクルペーパー100、A4サイズ(リコー社製)
評価間隔:複写枚数10000枚まで1000枚ごと。
トナー:imagioスポットトナーC3000(シアン、リコー社製)
以上の条件のもと、実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた定着ベルトを、RICOH imagio MP C2500(リコー社製)のクリーニング装置を省略した改造機の定着ベルトと交換して複写を行なった。
【0039】
[トナーの離型性]
前記評価条件の複写枚数に達した時点で、定着部材表面を目視で観察してトナー固着の有無を確認した。さらに、白紙を通して定着部材表面から紙に転写されたトナーの有無を目視により確認した。なお、トナーの固着またはオフセットが発生しない場合を○、発生する場合を×として、判定した。
以上の評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1より、実施例1〜3の定着ベルトを用いると、トナーのオフセットが発生しないことがわかる。一方、比較例1の定着ベルトを用いると、ベタ画像の複写を開始して間もなくオフセットが発生した。また、比較例2の定着ベルトを用いると、複写枚数が7000枚目のベタ画像にオフセットに起因する画像の乱れが発生していた。
【符号の説明】
【0042】
10 定着ローラ
10’ 定着ローラ
11 芯金
12 弾性層
13 中間層
15 ハロゲンヒータ
16 温度センサ
20 加圧ローラ
21 芯金
22 弾性層
23 離型層
100 定着装置
200 感光体ドラム
210 表面電位計
300 帯電ローラ
310 電源
400 現像ローラ
500 転写ローラ
600 クリーニング装置
1000 画像形成装置
L レーザー光
T トナー
P 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開2001−342319号公報
【特許文献2】特開2006−78800号公報
【非特許文献】
【0044】
【非特許文献1】J. Appl. Polym. Sci., Vol.100, p.664(2006)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体、画像受容シートを含む画像形成装置用他手段と接触しうる画像形成装置の可動部のための弾性部材であって、基材上に、ゴムからなる弾性層が形成されており、前記弾性層は分子内に2個以上の重合性官能基を有し、分子間で縮合反応、付加反応を起こさせることが可能なモノマーを重合させることにより得られる高分岐ポリマーを含有していることを特徴とする弾性部材。
【請求項2】
前記高分岐ポリマーが、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーをラジカル重合開始剤の存在下で重合させることにより得られることを特徴とする請求項1に記載の弾性部材。
【請求項3】
前記弾性層が、部材の最表面に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性部材。
【請求項4】
前記高分岐ポリマーが、フッ素原子を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の弾性部材であって、記録材上に担持されているトナー像を定着可能であることを特徴とする定着部材。
【請求項6】
請求項5に記載の定着部材を有することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
感光体と、
該感光体を帯電させる帯電装置と、
該帯電した感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置と、
該感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像装置と、
該感光体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
請求項6に記載の定着装置、
を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−255839(P2012−255839A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127584(P2011−127584)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】