説明

画像形成装置の騒音低減機構

【課題】 プロセスカートリッジ着脱式の画像形成装置において、プロセスカートリッジ着脱時に開閉するカートリッジドアの内側に吸音部材を貼付する。そして、その吸音部材にてプロセスカートリッジの固定、およびプロセスカートリッジの挿入不良時に押圧を行うことで、プロセスカートリッジ固定部材や押圧部材の省略を可能とし、コストアップすることなく静音化を図る。
【解決手段】 プロセスカートリッジ着脱式の画像形成装置において、プロセスカートリッジ着脱時に開閉するカートリッジドアの内側に吸音部材を貼付する。その吸音部材はプロセスカートリッジとカートリッジドアの隙間を埋めるように貼付し、カートリッジドア閉時には吸音部材が接触し変形することでプロセスカートリッジと密着し押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真プロセスを用いたプリンタ・複写機等の画像形成装置に用いられる騒音低減機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置の一例を、図7(a)を用いて説明する。電子写真プロセスを用いた画像形成装置1は、次のような一連の動作によりシートに画像を形成する。給紙ローラ101により給紙されたシートは、画像形成部に搬送される。画像形成部では、プロセスカートリッジ2内に備えられた感光体ドラム103を、同じくプロセスカートリッジ2内の帯電ローラ等の帯電装置(不図示)により帯電させる。そして、その感光体ドラム103に対しポリゴンスキャナ102中に設置された半導体レーザ等により発生させた光を照射することで潜像を形成する。そして、その潜像にトナーを吸着させ、さらにそのトナーを記録媒体に転写ローラ104により転写することで画像を形成する。画像を転写されたシートは定着器105により定着され、排紙トレイ106に排紙される。
【0003】
このような画像形成装置における帯電の方式には、ローラを感光体103に接触させて帯電させる接触帯電方式が多く用いられている。ローラを用いた接触帯電方式では、感光体103に接触させたローラに対し直流電圧や直流電圧に交流電圧を重畳させて印加し、その電位によって感光体103表面を一定電位に帯電させる。この時、直流電圧に重畳させた交流電圧によって帯電ローラと感光体103が一定の周期で接触と剥離を繰り返す。そして、それが起因して帯電音と呼ばれる音が発生することがある。この帯電音の発生要因に関しては特許文献1で詳細に説明されている。
【0004】
またプロセスカートリッジは図7(b)のようにカートリッジドア3を開閉し着脱する場合が多い。プロセスカートリッジは、プロセスカートリッジに設置された感光体支持部108およびボス形状の凸部109をそれぞれカートリッジガイド107に係合させ、カートリッジガイドに沿って移動させることで着脱を行う。挿入したプロセスカートリッジ2はカートリッジ固定部材6により固定される。
【0005】
着脱可能なプロセスカートリッジ2を有する画像形成装置は、プロセスカートリッジ2を着脱するために開閉可能なカートリッジドア3が設けられている。そして、カートリッジドア3は、開閉操作時にユーザの負担とならないように、カートリッジドアを閉じた際に本体との密閉度を少なくするなど、加重を軽くしている場合が多い。このような場合、本体とカートリッジドアの間に隙間が発生し、本体内部で発生した帯電音などが外部に漏れ易くなる場合がある。このような音漏れを防ぐために、本体外装の内側に吸音効果を持った繊維状やフェルト状の吸音部材を貼付することで騒音を低減する手法が発案されている。(特許文献2参照)
【特許文献1】特開平5−35050号公報
【特許文献2】特開2002−365985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例で説明したように、ローラを用いた接触帯電方式の画像形成装置であって、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電を行っている場合、ローラと感光体の間で接触と剥離を繰返すことで帯電音と呼ばれる音が発生する。これらの音を低減するために外装内側に吸音部材を貼付する場合、コストアップとなってしまう。
【0007】
本提案に係る目的は、カートリッジドアの内側へ吸音部材を貼付することで、画像形成装置内部で発生した音が本体外装部とカートリッジドアとの間より放出されることを防ぐものである。さらに、その吸音部材にプロセスカートリッジ固定機能ないしは押圧機能を持たせることで、固定部材や押圧部材の省略を可能とし、コストアップすることなく画像形成装置の静音化を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本提案に係る第一の発明の手段は、カートリッジドアの内側へ吸音部材を両面テープ等にて貼付することで、画像形成装置内部で発生した音が本体外装部とカートリッジドアとの間より放出されることを防ぐ。そして、その吸音部材にてプロセスカートリッジを本体内部方向へ押圧し固定することで、プロセスカートリッジの固定部材を省略可能とすることを特徴とする。
【0009】
本提案に係る第二の発明の手段は、カートリッジドアの内側へ吸音部材を両面テープ等にて貼付することで、画像形成装置内部で発生した音が本体外装部とカートリッジドアとの間より放出されることを防ぐ。そして、カートリッジドアを閉じる際に吸音部材にてプロセスカートリッジを本体内部方向へ押し込むことで、挿入不良を防止するためのカートリッジ押圧部材を省略可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、カートリッジドア内側に貼付する吸音部材にプロセスカートリッジを固定する機能を持たせることができる。そして、プリント動作中にプロセスカートリッジにて発生する振動による画像への影響を防止することが可能となる。またカートリッジドア内側に貼付する吸音部材にプロセスカートリッジを押圧する機能を持たせることができる。そして、プロセスカートリッジが所定の位置まで挿入されていない場合に所定の位置まで押し下げることで、挿入不良を防ぐことが可能となる。このように吸音部材に固定機能ないしは押圧機能を持たせることで、プロセスカートリッジの固定部材や押圧部材を省略することコストアップすることなく静音化を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施例1)
本発明における第一の実施例は、プロセスカートリッジとカートリッジドアの隙間に吸音部材を貼付することで、プロセスカートリッジから発生する音を防ぐ。さらに、その吸音部材によりプロセスカートリッジを押圧することで、本体駆動部から受ける駆動力等によってプロセスカートリッジが所定の位置から外れることを防ぐものである。
【0012】
図1〜3を用いて、この例を説明する。
【0013】
図1は画像形成装置本体の断面図であり、図1(a)はカートリッジドア閉時、図1(b)はカートリッジドア開時の図である。4は吸音部材である。ここで、従来例にて説明した図(図7)と構成部分およびそれに伴う作用が同一なものは同一符号を付して重複説明を省略する。
【0014】
図2は、ある製品の画像形成装置稼動時の帯電音の周波数である1200Hz付近の周波数ピークを数値化したものである。
【0015】
図3は吸音部材によるプロセスカートリッジ押圧部分の拡大図である。(a)は吸音部材とプロセスカートリッジとが接触する直前の図、(b)は吸音部材とプロセスカートリッジが接触し、吸音部材によりプロセスカートリッジを押圧している図である。この図において、5は吸音部材によりプロセスカートリッジを押圧する際の吸音部材の変形部分である。
【0016】
カートリッジドア3は一部を装置本体上部と嵌合されており、この嵌合部を回動中心として回動可能に設置されている。カートリッジドア3を開けた状態においてはプロセスカートリッジ2が露出する。プロセスカートリッジ2を本体から取り出す際はこのカートリッジドア3を開け、露出したプロセスカートリッジ2を斜め上方に引き抜く。それにより、カートリッジガイド107に沿ってプロセスカートリッジ2が引き抜かれ、取り出される。またプロセスカートリッジ2を挿入する際は、プロセスカートリッジ2に設置された感光体支持部108とカートリッジガイドを係合するための凸部109を、カートリッジガイド107に係合するように斜め上方より挿入する。そして、カートリッジガイド107を装置本体内部に押し込むことにより装着する。
【0017】
プロセスカートリッジ2を装置本体内部に挿入し、カートリッジドア3を閉じた状態において、このプロセスカートリッジ2とカートリッジドア3の間には隙間が存在する。プロセスカートリッジ2からは、装置本体駆動時に帯電音等の不快な音が発生し、それらの音はプロセスカートリッジ2とカートリッジドア3の間の空間を介して装置本体外部へ放射されることとなる。
【0018】
このような音が装置本体外へ放射されることを防ぐために、プロセスカートリッジ2とカートリッジドア3の間の空間を埋めるようにカートリッジドア3の内側に両面テープ(不図示)を用いて吸音部材4を図1のように貼付する。吸音部材4に発泡ゴムを用いた時の装置本体稼動時の音を測定した結果を図2に示す。帯電音の周波数である1200Hz付近の周波数ピークが吸音部材無時と比較して吸音部材貼付時は約5dB低減している。このように、吸音部材を貼付することで不快な音を減少させることが可能となる。なお、このときの測定条件を図6に示す。プリンタ本体の正面方向で、プリンタ本体表面から前方100mm上方100mmの位置に、また左右方向はプリンタ本体の中央位置となるように騒音計202を設置して測定した。
【0019】
またこの吸音部材4を貼付する際に、カートリッジドア3を閉じた状態で、吸音部材4の一部がプロセスカートリッジ2と接触するように設置する(図1(a))。この際、図3に示すようにプロセスカートリッジ2を押圧する際に、吸音部材4の一部(図3(a)に示す吸音部材の変形部5)が変形することで、プロセスカートリッジ2と密着し、プロセスカートリッジ2を本体内部へ押し当てることとなる。吸音部材の硬度を50°(アスカーC)程度のものを使用した場合、カートリッジ押圧時の押し込み圧は2kgf程度にすることができる。このように吸音部材4によってプロセスカートリッジ2を本体内側に押し当てる。そして、プロセスカートリッジ2が本体駆動部から受ける駆動力等により、プロセスカートリッジ2にて発生する振動の画像への影響を受けることなくプリントを続けることが可能となる。これにより、プロセスカートリッジ2を固定する部材(図7(a)に示す固定部材6)等を設置する必要がなくなり、省略することが可能となる。
【0020】
このようにプロセスカートリッジとカートリッジドアの間に吸音部材を貼付し、吸音部材の一部が変形するようにプロセスカートリッジに押し付ける。それによって、プロセスカートリッジから発生する音を遮蔽し本体騒音を低減すると共に、プロセスカートリッジが本体から意図せず外れることを防止することが可能となる。またこれにより、プロセスカートリッジ固定部材を省略することが可能となりコストアップすることなく静音化を図ることが可能となる。
【0021】
(実施例2)
本発明における第二の実施例は、プロセスカートリッジとカートリッジドアの隙間に吸音部材を貼付する。それによって、プロセスカートリッジから発生する音を防ぐと共に、プロセスカートリッジが所定の位置まで挿入されていない場合に、その吸音部材によりカートリッジを押圧することで、所定の位置まで押し下げ、挿入不良を防ぐものである。
【0022】
図4および図5を用いて、この例を説明する。
【0023】
図4は画像形成装置本体の断面図であり、図4(a)はカートリッジドア開時、図4(b)はカートリッジドアを閉じている途中、図4(c)はカートリッジドア閉時の図である。ここで、従来例および実施例1にて説明した図(図1、図7)と構成部分およびそれに伴う作用が同一なものは同一符号を付して重複説明を省略する。
【0024】
図5は画像形成装置稼動時の帯電音の周波数である1200Hz付近の周波数ピークを数値化したものである。
【0025】
この例においても実施例1同様カートリッジドア3内側に吸音部材を貼付するが、この例では吸音部材4として発泡ウレタンを用い、両面テープ(不図示)にてカートリッジドア3内側に貼付する。発泡ウレタンを用いた時の装置本体稼動時の音を測定した結果を図5に示す。発泡ウレタンに関しても、発泡ゴム同様吸音部材無時と比較し、稼動時の音が約5dB低減される。なお、このときの測定条件を図6に示す。プリンタ本体の正面方向で、プリンタ本体表面から前方100mm上方100mmの位置に、また左右方向はプリンタ本体の中央位置となるように騒音計202を設置して測定した。
【0026】
カートリッジドア3の内側に発泡ウレタンを貼付する際に、図4(c)に示すようにカートリッジドア3を閉じた状態で、吸音部材の一部がプロセスカートリッジ2と接触するように貼付する。このように貼付すると、図4(a)に示すようにプロセスカートリッジ2の挿入が不十分であった場合、カートリッジドア3を閉じる際に図4(b)に示すように吸音部材4がプロセスカートリッジ2の上方に接触する。そして、カートリッジドア3を押し下げることでプロセスカートリッジ2が押し込まれ、これによりプロセスカートリッジを所定の位置まで挿入させることが可能となる。
【0027】
このようにプロセスカートリッジとカートリッジドアの間の隙間に吸音部材を貼付することでプロセスカートリッジから発生する音を遮蔽し本体騒音を低減する。そしてさらに、プロセスカートリッジの挿入が不十分である場合に、カートリッジドアを閉じることでプロセスカートリッジを所定の位置まで押し下げ、プロセスカートリッジの挿入不良を防ぐことが可能となる。また吸音部材を用いてプロセスカートリッジを押し込むことが可能となるため、従来例にて説明したプロセスカートリッジを押し込むための部材を省略することができ、コストアップすることなく静音化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施例に係る、吸音部材を貼付した画像形成装置の断面図で、(a)はカートリッジドア閉時、(b)はカートリッジドア開時
【図2】本発明の第1の実施例に係る、吸音部材の効果を示した図
【図3】本発明の第1の実施例に係る、吸音部材によるカートリッジ押圧部の拡大図で、(a)はカートリッジ未押圧時、(b)はカートリッジ押圧時
【図4】本発明の第2の実施例に係る、吸音部材を貼付した画像形成装置の断面図で、(a)はカートリッジドア開時、(b)はカートリッジドアを閉じる途中、(c)はカートリッジドア閉時
【図5】本発明の第2の実施例に係る、吸音部材の効果を示した図
【図6】本発明の第1および第2の実施例に係る、稼動音の測定条件を示した図
【図7】従来例に係る画像形成装置の断面図
【符号の説明】
【0029】
1 画像形成装置本体
2 プロセスカートリッジ
3 カートリッジドア
4 吸音部材
5 プロセスカートリッジを押圧するための吸音部材の変形部
6 カートリッジ固定部材
101 給紙ローラ
102 ポリゴンスキャナ
103 感光体ドラム
104 転写ローラ
105 定着器
106 排紙トレイ
107 カートリッジガイド
108 感光体支持部
109 カートリッジガイドと係合する凸部
201 稼動音測定時の装置本体
202 稼動音測定で用いた騒音計
203 騒音計を固定するための三脚
204 装置本体を設置するための台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の記録媒体に画像を形成する画像形成部の一部を構成する着脱可能なプロセスカートリッジと、前記プロセスカートリッジを着脱するために装置本体外装の一部が開閉可能となるカートリッジドアと、カートリッジドアの内側にカートリッジドアを閉じた状態においてプロセスカートリッジの一部を押圧するカートリッジ押圧部材と、を備えた画像形成装置において、
前記カートリッジ押圧部材が500Hz以上2000Hz以下の領域で吸音効果を有する吸音部材であり、そのカートリッジ押圧部材はプロセスカートリッジとカートリッジドアの隙間を埋めるようにカートリッジドアの内側に両面テープないしは接着剤にて貼付されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
カートリッジ押圧部材が弾性体であることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
カートリッジ押圧部材がカートリッジドアの内側に両面テープないしは接着剤にて貼付されており、前記カートリッジ押圧部材はカートリッジドアを閉める際にプロセスカートリッジを本体内部方向へ押し込みながら閉まることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−163879(P2007−163879A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360651(P2005−360651)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】