説明

画像形成装置及びその制御方法

【課題】複数のCPUを用いた分散制御において、コスト増加を招くことなく、各CPUにおける基準電位の差による各A/D変換器の誤差を低減する画像形成装置を提供する。
【解決手段】本画像形成装置は、複数のCPUを用いた分散制御を実現する。また、本画像形成装置は、補正モードにおいて、同一の表面電位計からの出力が各A/D変換器対して入力されるようにスイッチを制御した状態で、各A/D変換器から出力されるデジタルデータの差分を算出する。さらに、本画像形成装置は、通常測定モードにおいて、補正モードで算出された上記差分を解消するように、各A/D変換器からの出力を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階層構造を有する複数のCPU群を有する分散制御システムによって実現された画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する画像形成装置のプリンタデバイス制御では、1CPUによる集中制御が行われている。しかし、制御の一点集中によるCPU負荷の増大によって、より高性能なCPUが必要となる。さらに、プリンタデバイスの制御負荷の増大に伴い、通信ケーブル(通信束線)をCPU基板から離れた制御負荷ドライバユニットまで引き回す必要があり、長大な通信ケーブルが多数必要となっていた。このような問題を解決するために、電子写真システムを構成する各制御モジュールを個々のサブCPUに分割する制御形態が注目されている。
【0003】
このように複数のCPUにより個々の部分モジュール制御機能を分割して制御システムを構築する例については、複写機以外のいくつかの制御機器製品分野で提案されている。例えば、特許文献1では、車両における機能モジュールを階層的に配置し、分散制御を行う技術が提案されている。例えば、カラー画像形成を行う画像形成装置において分散制御を実現しようとした場合、各色の画像形成を行う複数のエンジンをそれぞれ制御する複数の制御部を設けることが考えられる。そして、各制御部は、各エンジンの状態(例えば感光ドラムの表面電位)を検知するセンサからの出力をA/D変換するA/D変換器を備える。ここで、各制御部に備えられたそれぞれのA/D変換器にはそれぞれ基準電源が接続される。これらの基準電源は複数のA/D変換器の間で同一の電圧になるように設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−120490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし実際は、基準電源やA/D変換器には個体差がある上、周囲の温度の影響を受けるため、それぞれのセンサが同じ値を出力したとしても、それぞれのA/D変換器で異なる値に変換されることがある。特許文献1では、マスタコントローラのD/A変換器の基準電位を参照してスレーブコントローラのA/D変換器はA/D変換することで、アナログデータの伝送誤差を解消する技術が提案されている。しかし、特許文献1に示された技術を画像形成装置に応用した場合、他の制御部の基準電位を参照して、基準電位の補正をすることができたとしても、他の制御部と同じ値にA/D変換できる保証はない。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みて成されたものであり、複数のCPUを用いた分散制御において、コスト増加を招くことなく、各CPUにおける基準電位の差による各A/D変換器の誤差を低減する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、画像形成装置として実現できる。画像形成装置は、アナログデータを出力する複数の出力部と、何れかの出力部に接続され、アナログデータをデジタルデータに変換する複数のアナログデジタル変換器と、出力部及びアナログデジタル変換器との間に設けられ、アナログデジタル変換器が接続される出力部を切り替える少なくとも1つの切替部と、同一の出力部からの出力が各アナログデジタル変換器に対して入力されるように切替部を制御した状態で、各アナログデジタル変換器から出力されるデジタルデータの差分を解消すべく、各アナログデジタル変換器からの出力を補正する補正部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、例えば、複数のCPUを用いた分散制御において、コスト増加を招くことなく、各CPUにおける基準電位の差による各A/D変換器の誤差を低減する画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る画像形成装置1000の概観を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る画像形成部300の構成例を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態に係るマスタCPU、サブマスタCPU及びスレーブCPUの関連を模式的に示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る画像形成装置1000の制御基板の一例を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る作像モジュール282の構成例を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係るサブマスタCPU701、スレーブCPU702及びスレーブCPU704の接続状況を示すブロック図である。
【図7】第1の実施形態に係る作像モジュール282の一部の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態に係る補正データの変形例を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係るサブマスタCPU701、スレーブCPU702及びスレーブCPU704の接続状況を示すブロック図である。
【図10】第2の実施形態に係る作像モジュール282の一部の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態に係る装置内温度とA/D値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、図1乃至図8を参照して、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る画像形成装置1000の概観を示す。画像形成装置1000は、自動原稿搬送装置100、画像読取部200、画像形成部300、及び操作部10を備える。図1に示すように、画像読取部200は、画像形成部300の上に載置されている。さらに、画像読取部200上には、自動原稿搬送装置(DF)100が載置されている。また、本画像形成装置1000は、複数の制御部(CPU)を用いて分散制御を実現する。各CPUの構成については、図3を用いて後述する。
【0011】
自動原稿搬送装置100は、原稿を自動的に原稿台ガラス上に搬送する。画像読取部200は、自動原稿搬送装置100から搬送された原稿を読み取って画像データを出力する。画像形成部300は、自動原稿搬送装置100から出力された画像データやネットワークを介して接続された外部装置から入力された画像データに従って記録材に画像を形成する。操作部10は、ユーザが各種操作を行うためのGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)を有する。さらに、操作部10は、タッチパネル等の表示部を有し、ユーザに対して情報を提示することもできる。
【0012】
次に、図2を参照して、画像形成部300の詳細について説明する。なお、本実施形態の画像形成部300は電子写真方式を採用している。なお、図2の参照番号の末尾に示すアルファベットY、M、C、Kは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックのトナーに対応した各エンジンを示す。以下では、全てのトナーに対応するエンジンを示す場合は末尾のアルファベットY、M、C、Kを省略して参照番号を記載し、個別に示す場合は参照番号の末尾にアルファベットY、M、C、Kを付記して記載する。
【0013】
像担持体としてフルカラー静電画像を形成するための感光ドラム(以下、単に「感光体」と称する。)225は、モータで矢印Aの方向に回転可能に設けられる。感光体225の周囲には、一次帯電装置221、露光装置218、現像装置223、転写装置220、クリーナ装置222、除電装置271及び表面電位計273が配置されている。
【0014】
現像装置223Kはモノクロ現像のための現像装置であり、感光体225K上の潜像をKのトナーで現像する。また現像装置223Y、M、Cはフルカラー現像のための現像装置であり、現像装置223Y、M、Cは、感光体225Y、M、C上の潜像をそれぞれY、M、Cのトナーで現像する。感光体225上に現像された各色のトナー像は、転写装置220によって中間転写体である転写ベルト226に一括で多重転写されて、4色のトナー像が重ね合わされる。
【0015】
転写ベルト226は、ローラ227、228、229に張架されている。ローラ227は、駆動源に結合されて転写ベルト226を駆動する駆動ローラとして機能し、ローラ228は転写ベルト226の張力を調節するテンションローラとして機能する。また、ローラ229は、2次転写装置231としての転写ローラのバックアップローラとして機能する。転写ローラ脱着ユニット250は、2次転写装置231を転写ベルト226に接着させるか、又は離脱させるための駆動ユニットである。2次転写装置231を通過した後の転写ベルト226の下部にはクリーナブレード232が設けられており、転写ベルト226上の残留トナーがブレードで掻き落とされる。
【0016】
カセット240、241及び手差し給紙部253に格納された記録材(記録紙)は、レジストローラ255、給紙ローラ対235及び縦パスローラ対236、237によってニップ部、つまり2次転写装置231と転写ベルト226との当接部に給送される。なお、その際2次転写装置231は、転写ローラ脱着ユニット250ことによって転写ベルト226に当接されている。転写ベルト226上に形成されたトナー像は、このニップ部で記録材上に転写される。その後、トナー像が転写された記録材は、定着装置234でトナー像が熱定着されて装置外へ排出される。
【0017】
カセット240、241及び手差し給紙部253は、それぞれ記録材の有無を検知するためのシートなし検知センサ243、244、245を備える。また、カセット240、241及び手差し給紙部253は、それぞれ記録材のピックアップ不良を検知するための給紙センサ247、248、249を備える。
【0018】
ここで、画像形成部300による画像形成動作について説明する。画像形成が開始されると、カセット240、241及び手差し給紙部253に格納された記録材は、ピックアップローラ238、239、254により1枚毎に給紙ローラ対235に搬送される。記録材は、給紙ローラ対235によりレジストローラ255へと搬送されると、その直前のレジストセンサ256により記録材の通過が検知される。
【0019】
レジストセンサ256により記録材の通過が検知された時点で、本実施形態では所定の時間が経過した後に一端搬送動作を中断する。その結果、記録材は停止しているレジストローラ255に突き当たり搬送が停止されるが、その際記録材の進行方向端部が搬送経路に対して垂直になるように搬送位置が固定され、記録材の搬送方向が搬送経路に対してずれた状態の斜行が補正される。以下では、この処理を位置補正と称する。位置補正は、以降の記録材に対する画像形成方向の傾きを最小化するために必要となる。位置補正後、レジストローラ255を起動させることにより、記録材は、2次転写装置231へ供給される。なお、レジストローラ255は、駆動源に結合され、クラッチによって駆動が伝えられることで回転駆動を行う。
【0020】
次に、一次帯電装置221に電圧を印加して感光体225の表面を予定の帯電部電位で一様にマイナス帯電させる。続いて、帯電された感光体225上の画像部分が所定の露光部電位になるようにレーザスキャナ部からなる露光装置218で露光を行い潜像が形成される。露光装置218はプリンタ制御I/F215を介してコントローラ460より送られてくる画像データに基づいてレーザ光をオン、オフすることによって画像に対応した潜像を形成する。なお、表面電位計273は、一次帯電装置221によって一様にその表面を帯電された感光体225の表面電位を測定し、出力する。
【0021】
また、現像装置223の現像ローラには各色毎に予め設定された現像バイアスが印加されており、上記潜像は、現像ローラの位置を通過する際にトナーで現像され、トナー像として可視化される。トナー像は、転写装置220により転写ベルト226に転写され、さらに2次転写装置231で、給紙部より搬送された記録材に転写された後、レジスト後搬送パス268を通過し、定着搬送ベルト230を介して、定着装置234へと搬送される。
【0022】
定着装置234では、まずトナーの吸着力を補って画像乱れを防止するために、定着前帯電器251、252で帯電され、さらに定着ローラ233でトナー画像が熱定着される。その後、記録材は、排紙フラッパ257により排紙パス258側に搬送パスが切り替えられることにより、排紙ローラ270によってそのまま排紙トレイ242に排紙される。
【0023】
感光体225上に残留したトナーは、クリーナ装置222で除去、回収される。最後に、感光体225は、除電装置271で一様に0ボルト付近まで除電されて、次の画像形成サイクルに備える。
【0024】
画像形成装置1000によるカラーの画像形成開始タイミングは、Y、M、C、Kの同時転写であるため転写ベルト226上の任意の位置に画像形成を行うことが可能である。しかし、感光体225Y、M、C上のトナー像を転写する位置のずれ分をタイミング的にシフトさせながら画像形成開始タイミングを決定する必要がある。
【0025】
なお、画像形成部300においては、記録材を連続的にカセット240、241及び手差し給紙部253より給送させることが可能である。この場合、先行する記録材のシート長を考慮し、記録材が重なり合わないような最短の間隔でカセット240、241及び手差し給紙部253からの給紙を行う。上述したように、位置補正後に、レジストローラ255を起動させることにより、記録材は2次転写装置231へ供給されるが、2次転写装置231に到達すると、再びレジストローラ255が一時停止される。これは、後続の記録材に対して先行する記録材と同様に位置補正を行うためである。
【0026】
次に、記録材の裏面に画像を形成する場合の動作について詳細に説明する。記録材の裏面に画像を形成する際には、まず記録材の表面への画像形成が先行して実行される。表面のみの画像形成であれば、定着装置234でトナー像が熱定着された後に、そのまま排紙トレイ242に排紙される。一方、引き続き裏面の画像形成を行なう場合、センサ269で記録材が検知されると、排紙フラッパ257により裏面パス259側に搬送パスが切り替えられ、それに併せた反転ローラ260の回転駆動により記録材が両面反転パス261に搬送される。その後、記録材は、送り方向幅の分だけ両面反転パス261に搬送された後に反転ローラ260の逆回転駆動により進行方向が切り替えられ、表面に画像形成された画像面を下向きにして両面パス搬送ローラ262の駆動により両面パス263に搬送される。
【0027】
続いて、記録材は、両面パス263を再給紙ローラ264に向かって搬送されると、その直前の再給紙センサ265により通過が検知される。再給紙センサ265により記録材の通過が検知されると、本実施形態では所定の時間が経過した後に一端搬送動作を中断する。その結果、記録材は、停止している再給紙ローラ264に突き当たり搬送が一時停止されるが、その際記録材の進行方向端部が搬送経路に対して垂直になるように位置が固定され、記録材の搬送方向が再給紙パス内の搬送経路に対してずれる斜行が補正される。以下では、この処理を再位置補正と称する。
【0028】
再位置補正は、以降の記録材裏面に対する画像形成方向の傾きを最小化するために必要となる。再位置補正後、再給紙ローラ264を起動させることにより、記録材は、表裏が逆転した状態で再度給紙パス266上に搬送される。その後の画像形成動作については、上述した表面の画像形成動作と同じであるためここでは省略する。このように表裏両面に画像形成された記録材は、そのまま排紙フラッパ257より排紙パス258側に搬送パスが切り替えられることにより、排紙トレイ242に排紙される。
【0029】
なお、本画像形成部300においては、両面印刷時においても、記録材の連続給送が可能である。しかしながら、記録材への画像形成や形成されたトナー像の定着などを行うための装置は1系統しか有していないため、表面への印刷と裏面への印刷を同時に行うことはできない。したがって、両面印刷時においては、画像形成部300に対し、カセット240、241及び手差し給紙部253からの記録材と、裏面印刷のために反転させて画像形成部に再度給送された記録材とは交互に画像形成されることとなる。
【0030】
本画像形成部300は、図2に示す各制御負荷を、後述する搬送モジュールA280、搬送モジュールB281、作像モジュール282、定着モジュール283という4つの制御ブロックに分けて各々が自律的に制御されている。さらに、これらの4つの制御ブロックを統括して画像形成装置として機能させるためのマスタモジュール284を有する。以下では、各モジュールの制御構成について図3を用いて説明する。
【0031】
図3は、第1の実施形態に係るマスタCPU、サブマスタCPU及びスレーブCPUの関連を模式的に示す図である。本実施形態において、マスタモジュール284に備えられるマスタCPU(マスタ制御部/第1層制御部)1001は、プリンタ制御I/F215を介してコントローラ460より送られる指示及び画像データに基づいて画像形成装置1000の全体を制御する。また、画像形成を実行するための搬送モジュールA280、搬送モジュールB281、作像モジュール282、及び定着モジュール283は、各機能を制御するサブマスタCPU(サブマスタ制御部/第2層制御部)601、901、701、801を備える。サブマスタCPU601、901、701、801はマスタCPU1001により制御される。さらに、各機能モジュールは、さらに、各機能を実行するための制御負荷を動作させるためのスレーブCPU(スレーブ制御部/第3層制御部)602、603、604、605、902、903、702、703、704、705、706、802、803を備える。スレーブCPU602、603、604、605はサブマスタCPU601に、スレーブCPU902、903はサブマスタCPU901に、スレーブCPU702、703、704、705、706はサブマスタCPU701に、スレーブCPU802、803はサブマスタCPU801に制御される。
【0032】
図3に示すように、マスタCPU1001と複数のサブマスタCPU601、701、801、901は共通のネットワーク型通信バス(第1信号線)1002によってバス接続される。サブマスタCPU601、701、801、901同士の間もネットワーク型通信バス(第1信号線)1002によってバス接続される。なお、マスタCPU1001と複数のサブマスタCPU601、701、801、901はリング接続されるものでもよい。サブマスタCPU601は、さらに、高速シリアル通信バス(第2信号線)612、613、614、615を介して、複数のスレーブCPU602、603、604、605のそれぞれと1対1接続(ピアツーピア接続)されている。同様に、サブマスタCPU701は、高速シリアル通信バス(第2信号線)711、712、713、714、715を介して、それぞれスレーブCPU702、703、704、705、706と接続される。サブマスタCPU801は、高速シリアル通信バス(第2信号線)808、809を介して、それぞれスレーブCPU802、803と接続される。サブマスタCPU901は、高速シリアル通信バス(第2信号線)909、910を介して、それぞれスレーブCPU902、903と接続される。ここで、高速シリアル通信バスは、短距離高速通信に用いられる。
【0033】
本実施形態に係る画像形成装置1000において、タイミングに依存した応答性が必要とされる制御に関しては、各サブマスタCPUに統括された機能モジュール内で実現されるように機能分割されている。そのため、末端の制御負荷を駆動するための各スレーブCPUと各サブマスタCPUとの間の通信は、応答性のよい高速シリアル通信バスによって接続されている。つまり、上記第2信号線には、上記第1信号線よりもデータ転送のタイミング精度が高い信号線が用いられる。
【0034】
一方、サブマスタCPU601、701、801、901とマスタCPU1001との間では、精密な制御タイミングを必要としない、画像形成動作の大まかな処理の流れを統括するようなやり取りだけが行われる。例えば、マスタCPU1001はサブマスタCPUに、画像形成前処理開始、給紙開始、画像形成後処理開始といった指示を出す。また、マスタCPU1001はサブマスタCPUに、コントローラ460から指示されたモード(例えばモノクロモードや両面画像形成モードなど)に基づいた指示を画像形成開始の前に出す。サブマスタCPU601、701、801、901のそれぞれの間でも、精密なタイミング制御を必要としないやり取りだけが行われる。すなわち、画像形成装置の制御を、相互に精密なタイミング制御を必要としない制御単位に分け、それぞれのサブマスタCPUがそれぞれの制御単位を精密なタイミングで制御する。これにより、本画像形成装置1000では、通信トラフィックを最小限に抑え、低速で安価なネットワーク型通信バス1002で接続することを可能としている。なお、マスタCPU、サブマスタCPU、及びスレーブCPUについては、実装される制御基板が必ずしも一律である必要はなく、装置実装上の事情に合わせて可変的に配置させることが可能である。
【0035】
次に、図4を参照して、本実施形態における具体的なマスタCPU、サブマスタCPU、スレーブCPUの基板構成上の配置について説明する。本実施形態によれば、図4に示すように、様々な制御基板の構成を採用することができる。例えば、サブマスタCPU601とスレーブCPU602、603、604、605とは、同一の基板上に実装されている。また、サブマスタCPU701及びスレーブCPU702、703、704、又は、サブマスタCPU801及びスレーブCPU802、803のように、サブマスタCPUと個々のスレーブCPUが独立の基板として実装されてもよい。また、スレーブCPU705、706のように一部のスレーブCPUが同一の基板上に実装されてもよい。また、サブマスタCPU901及びスレーブCPU902のように、サブマスタCPUとスレーブCPUの一部だけが同一基板上に配置されてもよい。
【0036】
図5は、第1の実施形態に係る作像モジュール282の構成例を示す。作像モジュール282は、電子写真プロセスによって形成されたフルカラートナー像を転写ベルト226に転写させ、さらに搬送モジュールA280より引き渡された記録材に再転写させるまでの作像制御を司っている。作像モジュール282は、作像制御を統括的に制御するサブマスタCPU701と、各制御負荷を駆動するスレーブCPU702、703、704、705、706とを含む。また、各スレーブCPUには、直接制御される制御負荷群が接続されている。
【0037】
スレーブCPU702は、露光装置218K、現像装置223K、一次帯電装置221K、転写装置220K、クリーナ装置222K、及び除電装置271Kを制御負荷とし、ブラック色のトナー像を転写ベルト226に転写させるまでの制御を行なう。スレーブCPU703は、露光装置218M、現像装置223M、一次帯電装置221M、転写装置220M、クリーナ装置222M、及び除電装置271Mを制御負荷とし、マゼンタ色のトナー像を転写ベルト226に転写させるまでの制御を行なう。スレーブCPU704は、露光装置218C、現像装置223C、一次帯電装置221C、転写装置220C、クリーナ装置222C、及び除電装置271Cを制御負荷とし、シアン色のトナー像を転写ベルト226に転写させるまでの制御を行なう。スレーブCPU705は、露光装置218Y、現像装置223Y、一次帯電装置221Y、転写装置220Y、クリーナ装置222Y、除電装置271Cを制御負荷とし、シアン色のトナー像を転写ベルト226に転写させるまでの制御を行う。
【0038】
スレーブCPU706は、転写ベルト226を回転駆動させるローラ227のモータ708、2次転写装置231を駆動させる高圧信号出力器、転写ローラ脱着ユニット250及びレジストローラを駆動させる駆動源モータ709、710を制御負荷とする。また、スレーブCPU706は、これらの制御負荷を制御して、転写ベルト226上に多重転写された4色トナー像を2次転写装置231で記録材へ再転写させるまでの制御を行なう。なお、本実施形態では、サブマスタCPU701とスレーブCPU702、703、704,705、706は各々独立の高速シリアル通信バス711、712、713、714,715により1対1で対向接続されている。
【0039】
次に、図6を参照して、作像モジュール282におけるサブマスタCPU701、スレーブCPU702、及びスレーブCPU704の本実施形態において特徴となる構成について説明する。DC/DCコンバータ272K、272Yは、所定の出力電圧/電流を出力し、それぞれスレーブCPU702、704の基板内への電源を供給する。表面電位計273K、273Yは、出力部の一例であり、一次帯電装置221によって一様に帯電された感光体225K、225Yのドラム表面電位を測定し、出力する。A/D変換器(アナログデジタル変換器)276K、276Yは、それぞれスレーブCPU702、スレーブCPU704に設けられ、アナログデータをデジタルデータに変換する。スイッチ274は、切替部の一例であり、例えば、図6に示すように表面電位計273K、273Yと、A/D変換器276Yとの間に設けられ、2入力を選択してA/D変換器276Yへ出力する。
【0040】
上述したように、作像モジュール282において、スレーブCPU702、704には、それぞれDC/DCコンバータ272K、272Yから電源が供給されている。これらの基準電位は、各基板に設けられたA/D変換器276K、276Yの出力誤差を低減させるために完全に同一であることが望ましいが、回路の設計や当該基板が設けられた環境温度の特性により、完全に同一となることはない。したがって、例えば、表面電位計273K、273Yに接続されたA/D変換器276K、276Yを用いて感光体225K、225Yのドラム表面電位を測定する場合に各A/D変換器で差が生じてしまい、画像品質の劣化に繋がってしまう。そこで、本実施形態では、以下で説明する構成及び処理により、基準電位の差による各A/D変換器の誤差を解消する。
【0041】
まず、上記各要素の接続状況について説明する。Vcc(24V)は、DC/DCコンバータ272Y、272Kの入力に接続される。DC/DCコンバータ272Kの出力は、A/D変換器276Kのref入力に接続される。また、DC/DCコンバータ272Yの出力は、A/D変換器276Yのref入力に接続される。表面電位計273Kの出力は信号線716を介してA/D変換器276Kの入力に接続されるとともに、スイッチ274の一方の入力に接続される。表面電位計273Yの出力は、信号線717を介してスイッチ274の他方の入力に接続される。スイッチ274の出力は、718の信号線を介してA/D変換器276Yの入力に接続される。つまり、スイッチ274は、A/D変換器276Yへ入力する表面電位の出力先を切り替える。
【0042】
次に、図7を参照して、図6の構成におけるA/D変換器から出力されるA/D値の補正データを作成する制御について説明する。以下で説明する処理は、作像モジュール282におけるサブマスタCPU701、スレーブCPU702、及びスレーブCPU704によって統括的に制御される。なお、以下で記載するSで始まる番号は、フローチャートにおけるステップ番号を示す。
【0043】
まず、S101において、サブマスタCPU701は、補正モードとして、画像形成動作前のタイミングで、スレーブCPU704に対してスイッチ274の入力を、信号線716を選択するように指示する。これは、まず、各A/D変換器276K、276Yで同一の入力(表面電位計273Kからの入力)におけるA/D値の差を測定するために行われる。当該指示を受けると、S301において、スレーブCPU704は、スイッチ274の入力を、信号線716を選択するように動作させる。スイッチ274の選択動作が完了すると、S102において、サブマスタCPU701は、感光体225Kのドラム表面電位が500Vになるように設定指示をスレーブCPU702に送出する。このドラム表面電位は100Vから900V程度までの範囲で設定可能であり、例えば、その中間電位である500Vが選択される。
【0044】
次に、S201において、スレーブCPU702は、感光体225Kの回転制御を指示するとともに、一次帯電装置221Kに対して500Vを設定する。さらに、S202において、スレーブCPU702は、A/D変換器276Kによって、500V表面電位時の表面電位計273Kからの信号値を検出する。また、S202と並行して、S302において、スレーブCPU704は、A/D変換器276Yによって、A/D変換器276Kと同様に、500V表面電位時の表面電位計273Kからの信号値を検出する。これは、S301でのスイッチ274の制御により、信号線716と接続されているためである。さらに、S203及びS303において、スレーブCPU702及びスレーブCPU704は、検出値(A/D値)をサブマスタCPU701に送出する。
【0045】
次に、S103において、サブマスタCPU701は、スレーブCPU702及びスレーブCPU704から送出された検出値を比較し、その差分を算出してスレーブCPU704に通知する。ここで、サブマスタCPU701は、算出部の一例である。なお、当該差分は、何れか1つのA/D変換器から出力されるデジタルデータを基準値として、他のA/D変換器から出力されるデジタルデータと上記基準値とを比較して算出される。S304において、スレーブCPU704は、送出された差分値を補正データとして格納する。一方、S104において、サブマスタCPU701は、スイッチ274の入力を、717信号線を選択するようにスレーブCPU704に通知する。スレーブCPU704は、S305において、スイッチ274を通知された内容に基づいて制御する。これは、補正モードから通常測定モードに移行する前にA/D変換器276Yへの入力を表面電位計273Yからの出力に変更するために行われる。
【0046】
最後に、S105において、サブマスタCPU701は、スレーブCPU702、704に対して、補正モードから通常測定モードへの移行を通知する。ここで、スレーブCPU702、704は補正モードから通常測定モードに移行する。つまり、基準となるA/D変換器276Kで検出した値を基準値とし、A/D変換器276Yで検出した値との差分を、通常検出時に補正することとなる。したがって、通常検出が開始されると、スレーブCPU704は、補正部として機能し、補正モード時に格納した補正データを用いてA/D変換器276YからのA/D値を補正する。
【0047】
上述の例では500V時の1点でのオフセット補正について説明したが、同様の補正アルゴリズムにて2点以上の補正値から、補正データをさらに高精度化することも可能である。図8では、横軸に表面電位を示し、縦軸にA/D変換器からのA/D値を示す。例えば、サブマスタCPU701は、第1導出部として機能し、ドラム表面電位の下限100V、及び上限900V時のA/D変換器276Kの値とA/D変換器276Yの値から、帯電電圧値と各帯電電圧値における差分との関係を示す関係式を導出してもよい。この場合、スレーブCPU704は、当該関係式を補正データとして格納する。このように、補正データとして上記関係式を格納することにより、さらなる測定精度の向上につながる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置は、補正モードにおいて、同一の表面電位計からの出力が各A/D変換器対して入力されるようにスイッチを制御した状態で、各A/D変換器から出力されるデジタルデータの差分を算出する。さらに、本画像形成装置は、通常測定モードにおいて、補正モードで算出された上記差分を解消するように、各A/D変換器からの出力を補正する。これにより、本画像形成装置は、複数のCPUを用いた分散制御において、基準電源の精度向上や、CPUチップの高機能化、高精度化などのコスト的に不利な手法を用いることなく、各CPUにおける基準電位の差による各A/D変換器の誤差を解消することができる。なお、上記実施形態では表面電位計を出力部の一例として説明したが、例えば高圧の電流/電圧の検出値や、定着装置の温度の検出値や、その他のセンサ検出値等、A/D変換器を介してアナログ信号を検出する系において適用できることは言うまでもない。
【0049】
<第2の実施形態>
次に、図9乃至図11を参照して、第2の実施形態について説明する。本実施形態においても第1の実施形態と同様に作像モジュール282において、基板構成が分離されているサブマスタCPU701と、スレーブCPU702及びスレーブCPU704とを例に挙げて説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一の参照番号を付し、説明を省略する。図9は、第2の実施形態に係るサブマスタCPU701、スレーブCPU702及びスレーブCPU704の接続状況を示す。図10は、第2の実施形態に係る作像モジュール282の一部の処理手順を示す。図11は、第2の実施形態に係る装置内温度とA/D値との関係を示す。
【0050】
まず、図9を参照して、各要素について説明する。本実施形態では、図6の構成に加えて、温度センサ275が設けられる。温度センサ275は、画像形成部300内に配置され各基板の雰囲気温度をよく反映する場所に設けられる。また、温度センサ275は、信号線719を介してサブマスタCPU701に入力される。これにより、サブマスタCPU701で温度データを逐次、認識することができる。
【0051】
次に、図10及び図11を参照して第2の実施形態の動作について説明する。図10のフローチャートでは、図6のフローチャートからサブマスタCPU701によるS101の実行前に温度センサ275を用いた温度測定が追加される。なお、以下で記載するSで始まる番号は、フローチャートにおけるステップ番号を示す。また、図11では、横軸に温度を示し、縦軸にA/D値の補正データを示す。なお、以下では、温度センサ275により取得される温度の範囲として低温値を0度に予め設定し、高温値を50度に予め設定した例を示す。これらの設定値は一例であり、画像形成装置1000の設置状況により変更することができる。
【0052】
まず、S111において、サブマスタCPU701は、温度センサ275によって測定された温度を取得する。続いて、S112において、サブマスタCPU701は、画像形成装置1000における所定の時間帯の起動処理か否かを判定する。ここで、所定の時間帯とは、例えば、画像形成装置1000が比較的低温の状態にある午前中等の時間帯を示す。なお、この所定の時間帯は、設置場所の外気温等に合わせて変更することができる。S112で所定の時間帯であると判定されると、サブマスタCPU701は、S113に進み、温度センサ275から取得した検出値を低温値として格納する。その後、図6のフローチャートと同様の処理が行われる。ただし、S103において、サブマスタCPU701は、各A/D値の差分と、取得した温度値とからA/D変換器276Yの補正データを算出し、スレーブCPU704に送出する。したがって、S304では、スレーブCPU704は、送出された補正データを格納する。ここでの補正データは、例えば、図11に示す0度に近い低温値での補正データとなる。
【0053】
一方、S112で所定の時間帯でないと判定されると、S114に進み、サブマスタCPU701は、低温値の補正データが存在するか否かを判定する。低温値の補正データが存在しない場合は、S115に進み、サブマスタCPU701は、温度センサ275から取得した検出値を低温値として格納する。その後、上述したS113の後の処理と同様の処理が行われる。ここでの補正データは、例えば、図11に示す0度に近い低温値での補正データとなる。
【0054】
一方、S114で低温値の補正データが存在する場合は、S116に進み、サブマスタCPU701は、検出値が現在設定されている低温温度以下か否かを判定する。検出値が低温温度以下である場合は、S117に進み、サブマスタCPU701は、温度センサ275から取得した検出値を低温値として更新する。その後、上述したS113の後の処理と同様の処理が行われる。ただし、ここでの補正データは、例えば、図11に示す0度より低い低温値での補正データとなる。
【0055】
一方、S116で検出値が低温温度より高い場合は、S118に進み、サブマスタCPU701は、高温値での補正データが存在するか否かを判定する。高温値の補正データが存在しない場合は、S119に進み、サブマスタCPU701は、温度センサ275から取得した検出値を高温値として格納する。その後、上述したS113の後の処理と同様の処理が行われる。ただし、ここでの補正データは、例えば、図11に示す50度に近い高温値での補正データとなる。
【0056】
一方、S118で高温値の補正データが存在する場合は、S120に進み、サブマスタCPU701は、検出値が現在設定されている高温温度以上か否かを判定する。検出値が高温温度以上である場合は、S121に進み、サブマスタCPU701は、温度センサ275から取得した検出値を高温値として格納する。その後、上述したS113の後の処理と同様の処理が行われる。ただし、ここでの補正データは、例えば、図11に示す50度より高い高温値での補正データとなる。
【0057】
上述したように、本実施形態では、補正データを画像形成装置内の低温値と高温値との2点以上で算出する。このように、サブマスタCPU701は、第2導出部として機能し、補正データと温度値との関係式を導出し、それに基づいて各温度での補正データを容易に算出することができる。つまり、当該関係式が導出されると、ステップS103において、当該関係式を用いて温度センサ275から取得された検出に基づく補正データを算出することができる。また、上記実施形態では、500V時の1点でのオフセット補正について説明したが、同様の補正アルゴリズムにて2点以上の補正値から、補正データをさらに高精度化することも可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログデータを出力する複数の出力部と、
何れかの前記出力部に接続され、アナログデータをデジタルデータに変換する複数のアナログデジタル変換器と、
前記出力部及び前記アナログデジタル変換器との間に設けられ、前記アナログデジタル変換器が接続される前記出力部を切り替える少なくとも1つの切替部と、
同一の前記出力部からの出力が各アナログデジタル変換器に対して入力されるように前記切替部を制御した状態で、各アナログデジタル変換器から出力されるデジタルデータの差分を解消すべく、各アナログデジタル変換器からの出力を補正する補正部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
各アナログデジタル変換器から出力されるデジタルデータの前記差分を算出する算出部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記算出部は、何れか1つの前記アナログデジタル変換器から出力されるデジタルデータを基準値として、他の前記アナログデジタル変換器から出力されるデジタルデータと前記基準値との差分を算出することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記出力部は、像担持体の表面電位を測定する表面電位計であり、
前記算出部は、前記像担持体への複数の帯電電圧値において、各アナログデジタル変換器からの出力の差分を算出し、前記帯電電圧値と前記差分との関係を示す関係式を導出する第1導出部を備え、
前記補正部は、前記第1導出部によって導出された前記関係式を用いて、各アナログデジタル変換器からの出力を補正することを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成装置内の温度を測定する温度センサをさらに備え、
前記算出部は、前記温度センサによって測定された複数の温度値で前記差分を算出し、前記温度値と前記差分との関係を示す関係式を導出する第2導出部を備え、
前記補正部は、前記第2導出部によって導出された前記関係式を用いて、各アナログデジタル変換器からの出力を前記温度センサによって測定された温度に基づいて補正することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−256634(P2010−256634A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106946(P2009−106946)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】