説明

画像形成装置及びその制御方法

【課題】ネットワーク通信状態確立前に正確なパケット処理可否判定条件を生成して、効率よく消費電力を低減する。
【解決手段】省エネルギー対応I/OプロセッサであるサブCPUを含む複数のCPUと、ネットワーク機能を有するI/Oコントローラと、を有し、前記I/Oコントローラは、内部に、省エネルギーモード時に受信したパケットが前記サブCPUで復号化処理を行うパケットであるか否かを判定するパケット処理判定を行うパケット処理判定部と、暗号化されたパケットを復号化するハードウェアの暗号化回路と、前記サブCPUが前記暗号化回路を用いて暗号化されたパケットを復号化するのにかかった時間を格納するフィールドメモリと、を備え、前記パケット処理判定部は、前記フィールドメモリに格納された前記復号化するのにかかった時間に基づいて、前記パケット処理判定に用いる、前記サブCPUでの復号化処理の可否判定条件の生成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の消費電力を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数装置間においてネットワーク機能を用いたデータ通信を行う装置では、電波傍受によるデータの解読/他人へのなりすまし/データの改ざん/不正アクセス等の無線特有の問題を回避するためのセキュリティ強化が課題となっている。このような課題の対策として通信データの暗号化が広く知られている。
【0003】
パケット通信を行う送信装置及び受信装置は共通の暗号アルゴリズムを持っており、送信装置はネットワーク層内でその暗号アルゴリズムを用いてパケットを暗号化し、そのデータを受信装置へ転送する。受信装置は受信したパケットを同様にネットワーク層内で共通の暗号アルゴリズムを用いて復号できるようになっている。さらに、この暗号化したパケットを解読するために必要な暗号鍵は相互の装置のみが使用できるように悪意のある第三者からの盗聴を防ぐためのさまざまな方式が提案されている。
【0004】
このようにPHY/MAC層を含むネットワーク層以下ではセキュリティ機能を向上させることでセキュアレベルの高いデータ転送が出来るようになっている。
【0005】
また、省エネルギー対応プロセッサを含むI/Oコントローラを搭載する画像形成装置では、低消費電力を実現するためI/Oコントローラ以外の回路が最低消費電力で待機状態または電源供給を遮断されることが知られている。
【0006】
このようなシステムではメインコントローラの代わりにI/Oコントローラが外部からのアクセスを対応するため少なくとも外部からのアクセス応答を行う回路については、ネットワークのパケット等を受け付けるよう常に応答できる状態にしておかなければならない。
【0007】
さらに暗号化アルゴリズムを搭載した暗号化処理回路は回路規模が大きくなることが一般的に知られており、待機状態での暗号化処理回路の消費電力は無視できないものとなっている。
【0008】
しかしながら従来のシステムでは省エネルギーモード時も暗号化処理回路は常時電力を消費しており、I/Oコントローラ自体のさらなる消費電力低下が行えていなかった。
【0009】
ここで、特許文献1に開示されたデータ処理装置では、暗号化処理回路の電力供給を停止することで消費電力を低下するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記従来技術では、暗号化処理回路の電力供給を停止後に暗号化処理が必要なパケットを受信した場合、電源の安定化に時間がかかるため、電力供給を再開し暗号化処理回路が処理を行える状態に復帰するまでには多くの時間を必要とする。そのため結果として外部要求パケットに対するパケット応答処理性能が低下してしまうという問題点がある。
【0011】
この問題点を解決するために、暗号化処理回路を条件に基づき、電源供給/停止することが出来且つ電源停止中のハード暗号化処理をCPUによるソフト暗号化処理でまかなう構成を考える。しかしながら、この構成では、暗号化処理回路での処理を行う/行わないの判定条件をソフトウェアによって設定しているため、回路内部のパス遅延等を考慮できないという問題点がある。そのため、電力供給停止後にサブCPUにて暗号化出来ないパケットが送られた時に、電源供給を再開してから要求されたパケットに応答するまでに処理時間がかかる。また、サブCPUにて暗号化処理する/しないの判定手段が実装するハードウェアを考慮した条件の算出が不十分である。
【0012】
本発明は上記の課題を解決するために、ネットワーク通信状態確立前に正確なパケット処理可否判定条件を生成して、効率よく消費電力を低減することが可能な画像形成装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、第1の態様として、省エネルギー対応I/OプロセッサであるサブCPUを含む複数のCPUと、ネットワーク機能を有するI/Oコントローラと、を有し、前記I/Oコントローラは、内部に、省エネルギーモード時に受信したパケットが前記サブCPUで復号化処理を行うパケットであるか否かを判定するパケット処理判定を行うパケット処理判定部と、暗号化されたパケットを復号化するハードウェアの暗号化回路と、前記サブCPUが前記暗号化回路を用いて暗号化されたパケットを復号化するのにかかった時間を格納するフィールドメモリと、を備え、前記パケット処理判定部は、前記フィールドメモリに格納された前記復号化するのにかかった時間に基づいて、前記パケット処理判定に用いる、前記サブCPUでの復号化処理の可否判定条件の生成を行うことを特徴とする、画像形成装置を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、第2の態様として、省エネルギー対応I/OプロセッサであるサブCPUを含む複数のCPUと、ネットワーク機能を有するI/Oコントローラと、を有し、前記I/Oコントローラは、内部に、暗号化されたパケットを復号化するハードウェアの暗号化回路と、前記サブCPUが前記暗号化回路を用いて暗号化されたパケットを復号化するのにかかった時間を格納するフィールドメモリと、を備える画像形成装置の制御方法であって、前記I/Oコントローラが、前記フィールドメモリに格納された前記復号化するのにかかった時間に基づいて、前記パケット処理判定に用いる、前記サブCPUでの復号化処理の可否判定条件の生成を行う第1の工程と、省エネルギーモード時に受信したパケットが前記サブCPUで復号化処理を行うパケットであるか否かを前記可否判定条件に基づいて判定するパケット処理判定を行う第2の工程と、を含むことを特徴とする、画像形成装置の制御方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ネットワーク通信状態確立前に正確なパケット処理可否判定条件を生成して、効率よく消費電力を低減することが可能な画像形成装置及びその制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態における画像形成装置の構成図である。
【図2】本実施の形態における非省エネルギー状態である通常モードのときのネットワーク応答について示した図である。
【図3】本実施の形態における省エネルギーモードのときのネットワーク応答について示した図である。
【図4】本実施の形態のサブコントローラが省エネルギーモードのときのI/Oコントローラのパケット応答について示した図である。
【図5】本実施の形態のI/Oコントローラの回路構成について示した図である。
【図6】本実施の形態の構成を説明するための図である。
【図7】本実施の形態におけるサブCPUの復号化処理時間の計測手順を示すフローチャートである。
【図8】本実施の形態におけるフィールドメモリに格納するテーブルマップの一例を図示したものである。
【図9】本実施の形態のネットワークI/F内のクロック構成について示した図である。
【図10】本実施の形態のパケット受信からパケット応答処理までの処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
上記課題を解決する本発明の画像形成装置の例として本発明をMFP(Multi Function Printer)のようなディジタル複写機を用いた場合の説明を以下に記す。
【0018】
図1は本実施の形態における画像形成装置の構成を示した一例である。
この例のエンジン側には画像を読み込むスキャナ、画像を書き込むプロッタとこれらの制御を行うエンジンASICを含むエンジン部を有し、メインコントローラとPCIeバス等の汎用高速バスによって繋がっている。
【0019】
メインコントローラ部の画像処理ASICは画像処理機能の他に多量の画像データの蓄積やジョブ履歴等を記憶するローカルストレージとのI/F機能を備えている。メインコントローラ部のメインCPUは画像データを蓄積する画像メモリを有し、上記画像処理を行う画像処理ASICや各デバイスを含むメインコントローラ全般の制御を行う。
【0020】
I/Oコントローラ部はエンジン側の汎用高速バスとは別のPCIeバス等の汎用高速バスで繋がっていて、I/Oコントローラ側にはネットワークやUSBのホストI/F等のI/Oデバイスを制御し、さらにメインコントローラ、I/Oコントローラ双方がアクセスできる共有RAM、コントローラを制御可能な省エネルギー対応プロセッサ(サブCPU)を内蔵しているI/OコントローラASICを持つ。
【0021】
さらにネットワークI/Fは、ネットワークとの接続及び通信を制御するためのPHY/MAC部、IPsec対応の暗号/復号化を行う暗号処理コントローラ、パケットを解析し受信したパケットに対して処理が必要かどうかを判定するパケット処理判定部、パケットを格納するバッファメモリ、PHY/MAC部から暗号処理コントローラ/バッファメモリのどちらへ送信するかを決定するためのデータパス切り替えセレクタ、パケット処理を行うネットワークコントローラを内蔵している。
【0022】
このメインコントローラとI/Oコントローラを含むコントローラ部でシステム全般の制御を行うものでメインコントローラは共有RAMを初めI/Oコントローラ内の内部レジスタ等へのアクセスを容易に行える構成となっている。
【0023】
図2、図3は非省エネルギー状態である通常モードと省エネルギーモードのときのネットワーク応答について示した例である。
【0024】
コントローラ部はシステムの省エネルギーに対応しており、省エネルギーモード時はメインコントローラ部をPowerOffし、I/Oコントローラに内蔵のサブCPUでメインCPUが行っていた外部要求に対する処理を代わりに受け持つことでシステム全体の消費電力低下を図っている。
【0025】
省エネルギーモード時は外部ネットワークからの要求やUSB接続デバイスからの要求に対して応答する必要がある場合、メインコントローラはPowerOffとなっているのでその要求を受け付けられない。I/Oデバイスドライバを搭載済みのI/Oコントローラ内蔵サブCPUが代わりに処理を行うこととなる。
【0026】
図4はサブコントローラが省エネルギーモードのときのI/Oコントローラのパケット応答について詳細に記したものである。
【0027】
IPsec通信が行われるネットワーク上では、IPsecで暗号化されたパケットがやり取りされる。比較的処理性能の低いサブCPUでは、IPsecで暗号化された受信パケットのサイズによって復号化処理に時間がかかり、ネットワーク応答性能が低下する可能性がある。そのため、パケットに応じてネットワークI/F内蔵の暗号処理コントローラにて復号化を行うことでパケット復号化処理を高速化させ、ネットワーク応答性能を満たし且つメインコントローラを復帰させること無くパケット処理が行える。
【0028】
さらにネットワークI/Fは外部通信速度の変更に耐えうるだけの送受信バッファを備えている。例えばI/Oコントローラ内蔵のPHYにアクセスし、オートネゴシエーションを行うことで外部通信速度が現状より低くなった場合に、パケット転送に間に合う程度にネットワークI/F内部のクロック動作周波数を落とすことが可能となっている。
【0029】
次に省エネルギーモードからの通常動作状態への復帰手段について説明する。
I/Oコントローラには印刷要求パケットの受信等により、特定の外部要求が伝えられると省エネルギーモードからの復帰要因として割り込み信号をPCIeバス経由でメインコントローラに送信する(図中の(1)、(2)参照)。具体例として外部からパケットデータが送られてくるとネットワークI/F内のパケット処理判定部は受信したパケットの解析を行い、受信したパケットに対して応答の必要があるかどうかを判定する。応答の必要があると判断した場合、サブCPUは受信したパケットに対して適宣処理を行う。
【0030】
さらに省エネルギー復帰要因であるパケット応答処理が来たことをメインコントローラへ割り込み信号として伝え、メインコントローラ側、エンジン側をPowerOnする(図中の(3)、(4)参照)。省エネルギーモードへ移る前の通常モードに復帰したメインコントローラは復帰要求信号を受け取った後、何の復帰要因が来たかをI/Oコントローラ内蔵のレジスタを参照することによって知り、I/Oコントローラで行っていた処理を引き継いでメインコントローラ側で継続して行う。
【0031】
このような一連の動作を行うことで外部からの要求に的確に応答しつつ、システム全体の消費電力低下を実現している。
【0032】
図5は、I/Oコントローラの回路構成について図示したものである。
IPsecで使用される主な暗号アルゴリズムは主にDES、DESの改良版である3DES、AESがあり、これら各暗号方式は暗号強度、暗号処理速度共に違いがある。
【0033】
例えば、一般にDESの暗号強度は他の3DES・AESに比べて低いがその分暗号処理にかかる時間は短くなることが知られている。また、同じ暗号アルゴリズムでも暗号鍵の鍵長を長くすると暗号強度が増すかわりに暗号処理時間が長くなる。
【0034】
比較的処理性能の低いサブCPUでIPsecパケットの復号化処理を行うと、処理そのものは行うことができるものの処理速度が遅いため、パケット応答性能が低くなる。
【0035】
従来はパケット処理判定部で受信したパケットがIPsecのパケットだった場合はネットワークI/Fに内蔵してある暗号処理コントローラで復号化を実施することで復号化処理を高速化し、パケット応答性能の低下を防いでいる。
【0036】
このように暗号処理コントローラを用いることでIPsecパケットの処理時間を短くすることが可能となるが、一般に暗号化処理を行う回路は回路規模が大きくなることが知られており、回路規模に応じて消費する電力も大きくなってしまう。この暗号処理回路が消費する電力を低減するために、暗号化処理回路への電力供給を停止することで消費電力の低下を図った装置も知られている(たとえば、特許文献1)。
【0037】
しかし暗号化処理回路自体の電力を遮断してしまう場合、電源供給を再開し電源及びクロックが安定し暗号化処理が正常に出来るようになるまでには長い安定化期間が必要となる。
【0038】
この安定化期間中にサイズの大きなIPsecパケット等を受信した場合、サブCPUでは復号化処理に多くの時間を要するため応答時間は長くなり、結果として省エネ待機時のネットワーク応答性能が低下してしまう。
【0039】
本明細書の課題の欄で述べたように、この問題を解決するために、受信したIPsecパケットのサイズに応じて、電力を遮断せずにネットワークI/F内にある暗号処理コントローラのクロックの供給/停止を制御することでネットワーク処理性能の低下を防ぎつつ、消費電力の低下を図ることも考えられる。
【0040】
ここで、サブCPUによって暗号化処理が行えるパケットについては、サブCPUの処理性能に依存してしまう。そのため、上記パケット判定処理条件を一義に決定した場合、I/Oコントローラに搭載するサブCPUに制限が出来てしまいコスト高となってしまう可能性がある。
【0041】
本実施の形態では上記問題を考慮し、パケット判定条件に使用するレジスタをサブCPUで任意に設定できるようにし、さらにサブCPUのパケット処理可否条件を内蔵の暗号化回路を用いてより正確に生成可能とすることで、サブCPUの処理性能に応じた条件設定が可能とする。
【0042】
本実施の形態における内蔵の暗号化回路を用いた従来より正確な判定条件を算出する方法について以下に説明する。
【0043】
本実施の形態では画像処理装置が電源供給開始時のスタンドアロン状態から周辺機器とのネットワークが確立するまでの間に、I/Oコントローラ内蔵の暗号化回路を用いて生成した複数の暗号データをサブCPUで復号化処理を行い、復号化にかかった時間を計測する。この計測結果を元にサブCPUのパケット処理判定条件を生成することで、従来よりも正確にサブCPUのパケット対応可否を判定する。
【0044】
図6は本実施の形態の構成を説明するための図である。図5中のネットワークI/F及びサブCPUを抜粋して処理の流れに関する説明を加えている。
【0045】
図6に示すように、I/Oコントローラ100は、PHY/MAC101、パケット判定処理部102、暗号処理コントローラ103、バッファメモリ104、ネットワークコントローラ105(以上、ネットワークI/F)、サブCPU106を有する構成である。
【0046】
暗号処理コントローラ103は、複数の暗号データをバッファメモリ104へ格納後サブCPU106へ割り込みを通知する(図中(1)参照)。サブCPU106は、暗号データの復号処理を行う(図中(2)参照)。パケット判定処理部102は、(1)と(2)の合計処理時間をフィールドメモリに格納し、復号化にかかった時間を計測する。パケット判定処理部102は、この計測結果に基づいてサブCPUのパケット処理判定条件を生成する。
【0047】
図7はサブCPUの復号化処理時間の計測手順について図示したものである。
パケット処理判定部102内のフィールドメモリに暗号化データを生成するためのSAテーブルを別途生成し(S701)、I/Oコントローラ100の暗号化処理コントローラ103内の暗号化回路にロードさせる(S702)。暗号化回路は鍵/暗号方式/パケットサイズ等のロードした情報を元に暗号データを生成し、ネットワークI/F内のバッファメモリ104へ転送する(S703)。バッファメモリ104へ指定のパケットサイズ分のデータが書き込まれると(S704))、暗号化回路はサブCPU106に対し暗号データ転送が完了した旨を割り込みで通知する(S705)。サブCPU106は割り込みを検出すると適宜割り込み処理を行った後に、バッファメモリ104内に格納された暗号データに対し復号化処理を行う(S706)。上記一連の処理を暗号化回路及びサブCPU106はSAテーブルのリスト順に実行していく。
【0048】
サブCPU106は暗号データを受信した状態から暗号データの復号化完了までの時間を計測する。サブCPU106による復号処理時間の計測に外部からの暗号パケットを使用しないのは、サブCPU106の処理性能に関係ない外部遅延要因の影響を無くすためである。外部遅延はパケット生成を行う機器によって、使用環境により接続ケーブルの伝送遅延などの物理的な遅延が一定ではないため、対象となる機器ごとに異なってくる。このような影響を排除して計測するために、本実施の形態では変動要因の発生しないI/Oコントローラ100内部の暗号化回路を使用するものである。またサブCPU106が復号化処理を行うデータパスについて計測を行うので、各機能ブロック間の内部パス遅延を加味した計測が行え、ソフトウェアで算出する計測よりも計測精度を上げることが出来る。またサブCPU106自体のデバイス変更が発生する場合も上記計測はサブCPU106を含めた形での計測になるので、デバイス変更による計測値のずれが発生することはない。
【0049】
図8はフィールドメモリに格納するテーブルマップの一例を図示したものである。
【0050】
計測を行った後、サブCPU106は計測結果及び計測したSAテーブル記載のパケットに対してネットワーク応答するために必要な処理時間をパケット判定処理部102内のフィールドメモリのSAテーブルリストに紐付けて書き戻す(図7のS708)。パケット処理判定部102はこれら2つの時間を比較し、可否判断を知らせるフィールドにサブCPU106で処理可能であれば1を処理不可能であれば0を書き込む。パケット処理判定部102への測定結果の書き戻しが完了後に受信バッファには計測のために生成した不要なデータが残っている。そこで周辺機器とのネットワークが確立前に受信バッファをリセットを供給し内容をクリアすることで間違ったデータ受信が行われないようにする(S709)。
【0051】
周辺機器とのネットワークが確立し、ネットワーク上から送信されてきた暗号パケットを受信した場合に、パケット処理判定部102はサブCPU106での処理可否判断フィールドを参照することで簡単且つ時間をかけることなく処理判定が行える。またI/Oコントローラ100内の暗号化回路を用いた上記計測を電源供給開始時から周辺機器とのネットワークが確立するまでの間に行うことで、ネットワーク確立直後から受信した暗号パケットに対し、パケット判定処理を実行することが出来る。
【0052】
次に上記パケット処理判定を用いたクロック供給停止の方法について説明する。
図9はネットワークI/F内のクロック構成について図示したものである。
【0053】
サブCPUによって制御されるクロック制御部は、ネットワークI/F内のPHY/MAC部、パケット処理判定部、暗号処理コントローラ、バッファメモリ、ネットワークコントローラの各ブロックへのクロック供給/停止を各々制御できる。クロック供給/停止は各ブロックの前にクロックマスク回路を設け、クロック制御部によりクロックのマスクON/OFFを制御している。さらにネットワークI/F内のクロックをパケット受信部/送信部ごとに用意することで個別に制御が出来る構成としている。省エネルギーモード時は、外部からの通信要求がない限り、パケット送信は行わないため、省エネルギーモード移行時にサブCPUはクロック制御部を用いてネットワークI/F内のパケット送信部のクロックを停止することで、消費電力を低下させることができる。
【0054】
図10はパケット受信からパケット応答処理までの処理手順を示したものである。
【0055】
パケット処理判定部にはサブCPUにてパケット処理判定部内のフィールドメモリへ判定条件(図8参照)が書き込まれ(S1001)、その情報を元にパケット処理判定部がパケットを解析した上で(S1002、S1003)、受信したパケットの復号化処理をサブCPUで実施するか、暗号処理コントローラで実施するかの判定処理を行う。
【0056】
内部のフィールドメモリに判定条件が書き込まれサブCPUが処理判定機能を有効にすると、上記処理判定は外部通信速度、暗号アルゴリズム、暗号に使用する鍵長、受信パケットのパケットサイズ等の情報を取得し、判定条件と比較を行い、条件と一致した際にネットワークI/F内の不要なクロックを停止する。
【0057】
外部通信速度はI/Oコントローラ内にあるPHYのレジスタへアクセスすることで情報が読み出せる。暗号アルゴリズム及び暗号アルゴリズムに使用する鍵長については、I/Oコントローラと外部ネットワークの間で暗号コントローラ内にSAテーブルが作成されるのでそのテーブルを参照することで情報が読み出せる。その他受信パケットサイズの情報等についてはパケットヘッダのフィールドより情報を読み出せる。
【0058】
これらの情報とパケット処理判定部内のレジスタに記載の情報を比較し(S1008)、条件が一致または条件以下の場合はサブCPUで実施すると判断し、サブCPUへ復号化処理を実行する旨を割り込みで通知する(S1009)。サブCPUは割り込みを検出すると適宜割り込み処理を行った後に、クロック制御部を用いて受信側の暗号処理コントローラのクロックを停止させる。次にサブCPUはPHY/MAC部と暗号処理コントローラ間のデータパス切り替えセレクタを制御し、PHY/MAC部からの出力データを暗号処理コントローラを経由せずにバッファメモリへと転送される。バッファメモリに格納したIPsecパケットをサブCPUで復号化後、応答が不要なパケットと判断した場合は該当パケットを破棄し、応答が必要と判断した場合はパケット送信部へのクロック供給を再開し、送信パケットを生成してネットワーク応答を行う。
【0059】
上記判定条件を用いてクロック供給を停止した場合、クロック停止したネットワーク機能ブロックから不定データが出力され、後段の回路に不定が伝播する可能性がある。この問題を解決するためネットワークI/F内の各機能ブロックに対しリセット生成部からリセットを供給する。リセットの対象回路並びにリセットタイミングは受信するパケットに依存するため、サブCPUにてリセット生成回路を制御可能することにより、適切な箇所及びタイミングでリセットの供給が可能とする。
【0060】
以上の点から電源供給開始時から周辺機器とのネットワークが確立するまでの間に暗号化回路を用いてサブCPUの復号化処理時間を計測することでサブCPUでのパケット処理の可否判定をより正確に行うことが出来る。またパケット処理判定部にてサブCPUでのパケット処理を行う際に、ネットワークコントローラ内各ブロックのクロックを適切に停止することで消費電力の低減及び転送効率の良い処理を行うことが可能となる。
【0061】
上記の本実施の形態によれば、I/Oコントローラ内部で生成された暗号データを内部の受信バッファへ格納することが出来るのでサブCPUで暗号データへのアクセスが可能になる。
【0062】
また、サブCPUが暗号方式や鍵長、パケットサイズを任意に設定できるので判定条件に必要な暗号データを任意に生成することが出来る。
【0063】
また、サブCPUの処理能力に応じた復号化処理時間の計測を行うことが出来る。
【0064】
また、適切な判定条件でサブCPUの復号化処理可否判断を行うことが出来る。
【0065】
また、適切なタイミングでサブCPUの復号化処理可否判断を行うことが出来る。
【0066】
また、不要なパケットデータの受信を防ぐことが出来る。
【0067】
なお、上述する各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0068】
100 I/Oコントローラ
101 PHY/MAC
102 バケット判定処理部
103 暗号処理コントローラ
104 バッファメモリ
105 ネットワークコントローラ
106 サブCPU
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2009−015507号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
省エネルギー対応I/OプロセッサであるサブCPUを含む複数のCPUと、
ネットワーク機能を有するI/Oコントローラと、を有し、
前記I/Oコントローラは、内部に、
省エネルギーモード時に受信したパケットが前記サブCPUで復号化処理を行うパケットであるか否かを判定するパケット処理判定を行うパケット処理判定部と、
暗号化されたパケットを復号化するハードウェアの暗号化回路と、
前記サブCPUが前記暗号化回路を用いて暗号化されたパケットを復号化するのにかかった時間を格納するフィールドメモリと、
を備え、
前記パケット処理判定部は、前記フィールドメモリに格納された前記復号化するのにかかった時間に基づいて、前記パケット処理判定に用いる、前記サブCPUでの復号化処理の可否判定条件の生成を行うことを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記パケット処理判定部は、異なる暗号化方式で暗号化された複数のパケットについて、前記復号化するのにかかった時間を計測することを特徴とする、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記パケット処理判定部は、ネットワークを介して対向する機器との相互通信確立前に、前記可否判定条件の生成を行うことを特徴とする、請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記パケット処理判定部は、前記可否判定条件の生成の際に、サブCPUが復号化したパケットの一時的な保存に用いた受信バッファに対してリセットクリア処理を行うことを特徴とする、請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
省エネルギー対応I/OプロセッサであるサブCPUを含む複数のCPUと、
ネットワーク機能を有するI/Oコントローラと、を有し、
前記I/Oコントローラは、内部に、
暗号化されたパケットを復号化するハードウェアの暗号化回路と、
前記サブCPUが前記暗号化回路を用いて暗号化されたパケットを復号化するのにかかった時間を格納するフィールドメモリと、
を備える画像形成装置の制御方法であって、
前記I/Oコントローラが、
前記フィールドメモリに格納された前記復号化するのにかかった時間に基づいて、前記パケット処理判定に用いる、前記サブCPUでの復号化処理の可否判定条件の生成を行う第1の工程と、
省エネルギーモード時に受信したパケットが前記サブCPUで復号化処理を行うパケットであるか否かを前記可否判定条件に基づいて判定するパケット処理判定を行う第2の工程と、
を含むことを特徴とする、画像形成装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−244209(P2011−244209A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114574(P2010−114574)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】