説明

画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】簡単な構成により、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤにおける微小なクリアランスや同軸のズレが原因で発生する、ギヤ噛合いピッチのバンディングを防止できる画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】ブラシローラ芯材の周りにブラシ毛が配置されたブラシローラと、ブラシローラ芯材の中心軸上に配置され、ブラシローラを駆動するブラシローラ駆動ギヤと、を有する画像形成装置であって、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤとが一体的に成型されて一部品化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体表面に当接し回転するブラシローラを備えた画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する画像形成装置として、電子写真プロセスを用いたものがある。この画像形成装置は、像担持体として感光体を備えており、感光体の表面に放電によって電荷を与え帯電させ、帯電した感光体表面を露光して静電潜像を形成し、その静電潜像にトナーを供給して可視像化し、形成された感光体表面の可視像を転写紙表面に転写した後、定着して排出する。可視像を転写した後の感光体表面には未転写のトナー等が残留するため、これらが次の画像形成に悪影響を与えないように、感光体表面はクリーニング部材(クリーニング装置)によりクリーニングされて次の画像形成プロセスに備えられる。クリーニング部材としては、例えば、ゴム等の弾性体からなるクリーニングブレードがある。このクリーニングブレードを感光体表面に摺擦させることで、未転写トナー等の付着物を除去することが一般的に知られている。
【0003】
クリーニング部材の摺擦により感光体表面が摩耗するため、寿命が短くなる。そこで、感光体とクリーニング部材との間に働く摩擦抵抗を低減して、クリーニング部材と感光体の摩耗等の不具合を解消するために、感光体表面に潤滑剤を塗布するなどの手法がとられている。感光体表面に潤滑剤を塗布すると、感光体表面の摩擦係数が低下するため、トナーに外添される流動化剤や帯電制御剤等がクリーニング部材との当接圧で感光体表面に膜状に固着する、いわゆるフィルミングの発生を防止することができる。また、感光体上に現像されたトナーも感光体表面との付着力が低減するため、転写性が向上する。
【0004】
このように感光体表面に潤滑剤を塗布する手段として、例えば、脂肪酸金属塩等の潤滑剤を棒状に成型した固形潤滑剤を設置し、この固形潤滑剤と感光体の両方に当接するようにブラシローラを備えるものがある。この塗布手段によれば、ブラシローラが回転駆動することにより、固形潤滑剤がブラシローラの摺擦により削られて粉体となってブラシローラのブラシ繊維に付着し、そのブラシローラに付着した粉体状の潤滑剤が感光体の表面に塗布されるようになっている。
【0005】
また、感光体表面に潤滑剤を塗布するブラシローラ(潤滑材塗布ブラシローラ)を効率よく機能させるために、塗布ブラシローラの上流側に感光体表面の未転写トナーを掻き落とすためのクリーニングブラシローラを備えるものがある。このクリーニングブラシローラの表面には未転写トナーが付着するため、この付着トナーを廃トナー経路に掻き落すためのフリッカーがクリーニングブラシローラに当接され設置されている。
【0006】
近年では、上述したようなブラシローラを1つ又は2つを併用して備え、クリーニング性を向上させる方式が取られている。そして、上記どちらのブラシローラ(潤滑材塗布ブラシローラ及びクリーニングブラシローラ)も像担持体に当接、回転していることから、その駆動手段は像担時体の駆動源と同じとなっている。中にはブラシローラ専用の駆動源を持つ場合もあるが、低コストや小型化の事情により、像担時体と共通の駆動源である場合が多い。よって、上記潤滑材塗布ブラシローラ及びクリーニングブラシローラは、例えば、像担持体の端部の像担持体フランジギヤの駆動により、ブラシローラ芯材に設置されたブラシローラ駆動ギヤを介して回転駆動されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ブラシローラ駆動ギヤと像担持体フランジギヤのギヤ噛合いがスムーズでないと、ギヤ振動が発生し、この振動が像担持体に伝わることで像担持体の回転ムラとなり、ギヤ噛合いピッチの濃淡ムラ、いわゆるバンディングが発生する。このバンディングを防止するために、像担持体の駆動軸や駆動源近傍にフライホイールを備えたり(例えば特許文献1参照)、ギヤの歯面精度を向上したりするなどの様々な試みがされている。
【0008】
しかし、フライホイールを備えることは画像形成装置の大型化とコストアップにつながってしまっていた。また、一般的に用いられる樹脂成型ギヤの歯面精度には限界があるため、振動のレベルによってはバンディングを抑えることができない場合も多かった。特にクリーニング性や潤滑材塗布効率を高めることを目的とした高密度のブラシローラを使用する場合は駆動トルクも高くなるため、ギヤ噛合い振動が大きくなり、バンディングが発生しやすいという問題がある。
【0009】
また、例えば特許文献2、3に開示されているように、ブラシローラ芯材は単体の部品である。よって、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤは別々の部品となっているので、組立の必要がある。しかし、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤの組立後には、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤの周り止め面の間に、微小なクリアランスが発生することがある(組立性を向上するために設計上のクリアランスがある場合)。又は、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤの組立直後にクリアランスが無い場合(組立性を損なわない程度に設計上のクリアランスがない場合)でも、繰り返しの画像形成(=経時)により、微少なクリアランスが発生することがある。
【0010】
このような微少なクリアランスにより、特にブラシローラに負荷変動が発生すると、像担持体フランジギヤからブラシローラ駆動ギヤへの駆動伝達がスムーズではなくなり、ギヤ振動が発生し、バンディングが発生してしまう。経時においては、微少なクリアランスが発生しないように、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤの組立に圧入治具を用いて、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤの周り止め面に十分な圧入シロも設けて一体化することもできるが、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤが別部品であるため、一体化したとしてもブラシローラ芯材中心とブラシローラ駆動ギヤ中心の同軸精度には限界がある。同軸精度が高くないと、ブラシローラ1/2回転周期毎にギヤ中心距離が大小を繰り返して変動するため、ブラシローラ駆動ギヤと像担持体フランジギヤのギヤ噛合いはスムーズではなくなり、この周期毎にギヤ振動が発生し、結果的に、ギヤ噛合いピッチのバンディングが発生してしまう。なお、圧入治具を用いると、組立工数が増大し、コストアップにもつながってしまう。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成により、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤにおける微小なクリアランスや同軸のズレが原因で発生する、ギヤ噛合いピッチのバンディングを防止できる画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、ブラシローラ芯材の周りにブラシ毛が配置されたブラシローラと、ブラシローラ芯材の中心軸上に配置され、ブラシローラを駆動するブラシローラ駆動ギヤと、を有する画像形成装置であって、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤとが一体的に成型されて一部品化されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の画像形成装置において、ブラシローラは、ブラシ材が導電性又は半導電性であり、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤの材質が摺動性樹脂をベースとした導電性樹脂であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の画像形成装置において、ブラシローラ駆動ギヤは、像坦持体の端部に圧入され摺動性樹脂をベースとした導電性樹脂製であり、アース(接地)された像坦持体フランジギヤとギヤ列を成していることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の画像形成装置において、ブラシローラは、像担持体上に残存するトナーを回収するクリーニングブラシローラであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の画像形成装置において、ブラシローラは、潤滑剤を像担持体上に供給する潤滑剤塗布ブラシローラであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の画像形成装置において、画像形成装置の本体に対して、像担持体と、現像手段、帯電手段及びクリーニング手段のうちの少なくとも1つとを一体に構成したプロセスカートリッジが着脱可能であり、ブラシローラは、クリーニング手段の一部として備えられることを特徴とする。
【0018】
本発明のプロセスカートリッジは、像担持体と、現像手段、帯電手段及びクリーニング手段のうちの少なくとも1つとを一体に構成し、画像形成装置の本体に対し着脱自在なプロセスカートリッジであって、クリーニング手段は、上記本発明の画像形成装置に備えられるブラシローラを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構成により、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤにおける微小なクリアランスや同軸のズレが原因で発生する、ギヤ噛合いピッチのバンディングを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成ユニットの構成例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る感光体、クリーニングブラシローラ、潤滑剤塗布ブラシローラ、ギヤ列の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るクリーニングブラシローラ、潤滑剤塗布ブラシローラの側面の断面を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤを一体成型により1部品化した構成の正面及び側面の断面を示す図である。
【図6】従来技術に係る別部品のブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤを組み立てて一体化した構成の正面及び側面の断面を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る構成及び従来技術に係る構成の実験結果を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係る感光体と感光体軸の側面の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態(実施形態)について詳細に説明する。まず、本実施形態の概要について説明する。従来、ブラシローラ駆動ギヤとブラシローラ芯材を一体成型により1部品化したものはなく、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤは別々の部品であった。よって、従来では、ブラシローラ駆動ギヤとブラシローラ芯材を組立により一体化していた。しかし、ブラシローラ駆動ギヤとブラシローラ芯材の組立後には、ブラシローラ駆動ギヤとブラシローラ芯材の間に微少なクリアランスが発生し、この微妙なクリアランスによりギヤ噛合い振動が発生し、ギヤ噛合いピッチのバンディング(濃淡ムラ)となるという問題があった。また、ブラシローラ駆動ギヤとブラシローラ芯材の組立後にクリアランスがゼロの場合でも、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤの同軸ズレが原因となり、ブラシローラ1/2回転周期毎にギヤ噛合い振動が発生し、この周期でギヤ噛合いピッチのバンディング(濃淡ムラ)となるという問題があった。
【0022】
そこで、本実施形態では、ブラシローラ駆動ギヤとブラシローラ芯材を一体成型により一部品化することで、上記ブラシローラ駆動ギヤとブラシローラ芯材における微少なクリアランスや同軸ズレを防止する。これにより、微少なクリアランスや同軸ズレが原因で発生していたギヤ振動を無くし(防止でき)、ギヤ噛合いピッチのバンディングを無くす(防止する)ことができる。特に駆動トルクが大きくなりがちな、高クリーニング性、高潤滑材塗布効率なブラシローラではギヤ振動が発生し易いため、本実施形態による効果は大きくなる。以下、本実施形態の具体例について添付図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。ここでは、タンデム型のフルカラー複写機を例に挙げて説明する。
【0024】
本実施形態の画像形成装置100は、その要部として、画像形成部300、給紙部200、原稿読み取り部(スキャナ部)400、原稿搬送部(ADF:Auto Document Feeder)500を有する。また、画像形成装置100は、両面反転ユニット9や排紙トレイ8等を備える。画像形成部300は、画像形成ユニット10、露光手段3、転写手段5、定着手段7を有する。なお、画像形成装置100において、画像形成ユニット10以外の詳細な構成は、一般的な従来のタンデム型電子写真装置と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0025】
画像形成ユニット10は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のトナー像をそれぞれ形成する4つのユニットを並列して備える。各画像形成ユニット10の中央には、感光体1K、1C、1M、1Yがそれぞれ備えられている。また、感光体1K、1C、1M、1Yの周囲には、帯電手段、現像手段、クリーニング手段がそれぞれ備えられている。
【0026】
露光手段3は、原稿読み取り部400で読み取った画像データ、又は、図示しないPC(Personal Computer)等の外部より送られてきた画像信号を変換し、ポリゴンモータでレーザー光をスキャンさせ、ミラーを通して画像データ又は画像信号を基に感光体1上に静電潜像を形成する。
【0027】
転写手段5は、各感光体1上に形成されたトナー像を順次重ね合わせて保持する中間転写ベルト50を含んで構成されており、中間転写ベルト50上に形成されたカラートナー像を記録紙(記録部材の一例)に転写する構成となっている。なお、これ以外の例として、転写搬送ベルトによって記録紙を搬送し、各感光体1上に形成されたトナー像を直接記録紙に転写する構成であってもよい。
【0028】
定着手段7は、内部にハロゲンヒータ等を有するローラに張架されたベルトと、加圧ローラとから構成されており、それら両者によって形成されるニップ部にて記録紙上のトナーに熱と圧を加えてトナー像を記録紙に定着させる。なお、これ以外の例として、一対のローラ、又は、一対のベルトを用いるものであってもよい。
【0029】
図2は、図1の画像形成ユニット10の構成を拡大して示す図である。
【0030】
感光体1は、光導電性を有するアモルファスシリコン、アモルファスセレン等の非晶質金属、あるいは、ビスアゾ顔料、フタロシアニン顔料等の有機化合物を用いることができる。環境問題及び使用後の後処理を考慮すると、有機化合物を用いた感光体が好ましい。
【0031】
帯電手段2は、コロナ方式、ローラ方式、ブラシ方式、ブレード方式のいずれであってもよく、ここでは、ローラ方式の帯電手段2を示す。帯電手段2は、帯電ローラ2a、帯電ローラ2aを清掃するために当接されている帯電ローラクリーニング部材2b、帯電ローラ2aに接続される図示しない電源を備える。帯電手段2は、帯電ローラ2aに高電圧を印加することで、感光体1との間でコロナ放電を発生させ、感光体1の表面を一様に帯電するものである。
【0032】
現像手段4は、現像剤を担持して感光体1に供給する現像剤担持体4aと、トナー供給室4b等を備える。現像剤担持体4aは、回転可能に支持された中空円筒状の現像剤担持体4aと、現像剤担持体4aの内部にこれと同軸に固設されたマグネットロールとを備えており、現像剤担持体4aの外周面に現像剤を磁気的に吸着して搬送するようになっている。現像剤担持体4aは導電性で、非磁性部材で構成されており、現像バイアスを印加するための図示しない電源が接続されている。現像剤担持体4aと感光体1との間には、電源から電圧が印加され、現像領域に電界が形成される。
【0033】
中間転写ベルト50を挟んで感光体1に対向する位置には、1次転写手段51が備えられている。1次転写手段51は、図示しない電源が接続されていて、感光体1上のトナー像を中間転写ベルト50に転写する際に電圧が印加される。これにより、感光体1と中間転写ベルト50の間に電界が形成され、静電気的にトナー像の中間転写ベルト50への転写が行われる。
【0034】
ここで、本実施形態の特徴であるブラシローラについて説明する。図2において、ブラシローラは、クリーニングブラシローラ62、潤滑材塗布ブラシローラ63であり、クリーニング装置6の一部として備えられている。また、クリーニング装置6は、感光体1に当接するクリーニングブレード61を備える。潤滑材塗布ブラシローラ63は、固形潤滑剤64を削り取り感光体1上に供給する。クリーニングブラシローラ62は、一次転写を終えた後の感光体1上に残存するトナーを、感光体1上から回収する。潤滑材塗布ブラシローラ63により感光体1上に固形潤滑剤64の微粒子が供給され、感光体1上に残存するトナーやフィルミング等が最終的にクリーニングブレード61によって掻き取られる。トナー除去手段としては、感光体1表面にダメージを与えることなく、効率よくトナーを除去する手段として、クリーニングブラシローラ62の表面に付着したトナーを掻き落とすフリッカー65を備えた構成とする。クリーニングブラシローラ62と潤滑材途布ブラシローラ63は直毛ブラシであり、感光体1に対して1mm食込みして当接されている。クリーニングブラシローラ62の回転方向は、感光体1表面の転写残トナー及びフィルミングを効率良く除去できる回転方向(感光体1の回転方向と逆回転方向)である。また、潤滑材塗布ブラシローラ63の回転方向は、感光体1表面に効率良く潤滑材を塗布できる回転方向(感光体1の回転方向と同一回転方向)である。
【0035】
なお、図2の画像形成ユニット10は、クリーニング装置6、像担持体1、帯電手段2、現像手段4を一体に構成したプロセスカートリッジとなっている。この構成により、メンテナンス部品としての像担持体1、現像手段4、帯電手段2及びクリーニング装置6を一括して容易に交換できるため、メンテナンス性が向上する。
【0036】
図3は、感光体1、クリーニングブラシローラ62、潤滑剤塗布ブラシローラ63、ギヤ列の斜視図であり、図4は、クリーニングブラシローラ62、潤滑剤塗布ブラシローラ63の断面図である。
【0037】
図3及び図4に示すように、クリーニングブラシローラ62及び潤滑剤塗布ブラシローラ63はそれぞれ、ブラシ毛62c、63cが植毛された基布が螺旋状にブラシローラ芯材62a、63a周辺に巻きつけられた構成となっている。ブラシ毛62c、63cは、材質:半導電PET繊維、原糸比抵抗:1000Ω・cm(DC2000V印可時)、太さ:400T/24F、毛足長さ3mmであり、基布は基布幅:8mm、植毛密度:100000本/inch^2、植毛ピッチ:0.5mmである。
【0038】
ブラシローラ芯材62a、63aは、図4に示すように、図2のプロセスカートリッジ枠体101に設置されたブラシローラ軸受102により両端を支持されている。また、ブラシローラ芯材62a、63aは、直径6mmの2層構造となっており、図4において、芯材内層622a、632aは直径3mm、材質:鋼材SUM24の丸棒であり、芯材外層621a、631aは厚み1.5mmの導電性摺動ポリカーボネート材となっている。
【0039】
図3及び図4に示すブラシローラ駆動ギヤ62b、63bは、芯材外層622a、632aと同一材質であり、芯材外層622a、632a及び芯材内層622a、632aと共に同一金型にて射出成型により一体的に製造されている。芯材内層を鋼材やステンレス材などの金属にすることで、ブラシローラの撓みによる当接圧ムラを防止できる。このように、ブラシローラ芯材62a、63aとブラシローラ駆動ギヤ62b、63bは同一金型での射出成型により製造されているため、芯材中心軸線とギヤ中心軸線の同軸誤差はほとんど発生しない構成となっている。2層構造としなくてもブラシローラの撓みが問題とならない場合は、ブラシローラ芯材62a、63a全てを導電性摺動ポリカーボネート材としても構わない。
【0040】
図5は、ブラシローラ芯材62a、63aとブラシローラ駆動ギヤ62b、63bを一体成型により1部品化した構成(上記本実施形態における構成)を示す図であり、図6は、別々の部品であるブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤを組み立てて一体化した構成(従来における構成)を示す図である。図5及び図6において、左図は、ブラシローラ芯材及びブラシローラ駆動ギヤの正面の断面を示しており、右図は、ブラシローラ芯材及びブラシローラ駆動ギヤの側面の断面を示している。
【0041】
別部品としてのブラシローラ芯材62a、63aとブラシローラ駆動ギヤ62b、63bを組み立てた場合では、図6に示すように、芯材回り止め面(Dカット面)とギヤ回り止め面(Dカット面)の間にクリアランス(組立性向上のために意図的にクリアランスを設けている)が発生し、また、芯材中心軸とギヤ中心軸のズレ(同軸ズレ=同軸度)が発生する。クリアランスがあると、ブラシローラに負荷変動があった場合に、ギヤからブラシ芯材への回転伝達に遅れが生じ、ギヤ歯面が衝突することでギヤ振動が発生する。ブラシローラは、ブラシ毛が感光体やフリッカーと常に摺動しているため、負荷変動も常に発生している。また、同軸ズレが大きいと、ブラシローラギヤと感光体フランジギヤの中心間距離がブラシローラ回転周期で変動するため、ギヤ噛合いがスムーズでは無くなり、ブラシローラ1回転のうち2回(中心間距離の大と小にて)ギヤ噛合い振動が発生する。このようなギヤの振動によって、ギヤ噛合いピッチのバンディングが発生する。これに対して、本実施形態の構成では、ブラシローラ芯材62a、63aとブラシローラ駆動ギヤ62b、63bを一体で成型し1部品化しているため、図5に示すように、図6で示したクリアランスや同軸ズレを無くすことができる。よって、上記ギヤ振動の発生を防止できるので、ギヤ噛合いピッチのバンディングの発生を防止できる。
【0042】
このように、本実施形態の構成では、ブラシローラ芯材62a、63aとブラシローラ駆動ギヤ62b、63bを1つの金型で一体成型して1部品化することによって、上述した回り止めが不要となるためクリアランスは無くなり、同軸ズレも高精度化できる。従来技術のようにブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤが別部品構成の場合は、圧入治具などで同軸ズレを高精度化することも可能だが、別部品構成であるために高精度化には限界があり、また圧入治具を使用するため組立性が悪化し、コスト高にもなっていた。
【0043】
上述した本実施形態の効果を確認した実験結果を図7に示す。図7において、従来技術による別部品構成のケースは実験No.1〜4、また、本実施形態による一体成型の1部品構成のケースは実験No.5である。実験は(株)リコー製のImagio MP C7500を改造して行った。バンディングの評価は、2x2dotのハーフトーン画像を目視によるランク付けを行い、ランク5がバンディングの発生が無く、ランク4はバンディングの発生のあるものの実使用上許容されるレベル、ランク4未満は実使用でクレームが発生するレベルとした。初期と経時(A4Y換算10万枚通紙後)にて評価した。
【0044】
実験No.1、2:組立性向上のためクリアランスを大き目に設定した。このためバンディングは初期、経時ともにクレームとなるレベル(ランク2〜3.5)となった。
【0045】
実験No.3:手作業でギヤを芯材に圧入してクリアランスをゼロとした。同軸度は2部品構成であるため、初期でも0.05未満にすることはできなかった。また、圧入シロが少ないため、経時でクリアランスが発生し、初期では実使用上許容されるレベル(ランク4)だったものが、経時 (ランク3.5)となり、実使用上クレームが発生するレベル(ランク3.5)となった。
【0046】
実験No.4:圧入治具にてギヤを芯材に圧入してクリアランスをゼロとした。実験No.3と同様に、同軸度は2部品構成であるため、初期でも0.05未満にすることはできなかった。圧入シロを十分に確保できたため、初期、経時とものは実使用上許容されるレベル(ランク4)となったがバンディングの発生を完全に無くすことはできなかった。また、圧入治具を使用するため組立性は大幅に悪化し、またコスト高となる。
【0047】
実験No.5:本発明の構成であり、クリアランスをゼロ、同軸度を0.02と2部品構成よりも大幅に高精度化できたため、初期、経時とものバンディングは発生しなかった(ランク5)。1部品構成であるため、組立性が良く、低コストである。
【0048】
以上のことから、本実施形態では、特にクリーニング性と潤滑材塗布効率を向上させるためにブラシローラのコシを強めた(太さ、毛密度などをアップさせる)構成でもバンディングは発生しないため、プロセスカートリッジ、画像形成装置の高画質化、高寿命化が可能である。
【0049】
〔ブラシローラの駆動方法とアース経路〕
図3、図8を用いて、ブラシローラの駆動方法とアース経路について説明する。図8は感光体1と感光体軸12の断面図である。図3において、感光体軸感光体フランジギヤ11は、潤滑材塗布ブラシローラ駆動ギヤ63bと噛合っており、潤滑材塗布ブラシローラ駆動ギヤ63bとクリーニングブラシローラ駆動ギヤ62bは、2つのアイドラギヤ67を介してギヤ列を成しており、感光体1が回転することで、各ブラシローラ62、63は所定の方向に回転する構成となっている。感光体フランジギヤ11とアイドラギヤ67はブラシローラ芯材62a、63aと同一材料の導電性樹脂であるため、それぞれのギヤは導通している。一方で、図8に示すように、感光体フランジギヤ11は、感光体素管14と感光体軸12と導通されており、感光体軸12は導電性の感光体軸受13に支持されており、感光体軸受13は画像形成装置本体100にアース(接地)されている。これにより、各ブラシローラ62、63(クリーニングブラシローラ、潤滑剤塗布ブラシローラ)は、画像形成装置本体100にアース(接地)される構成である。このように、ブラシローラ62、63のアースを容易かつ低コストで実現可能である。ブラシローラ62、63をアースしない場合は、感光体1やフリッカー65との摺擦によりブラシ62c、63cが帯電し、クリーニング性や潤滑材塗布性が低下してしまう。また、ギヤ噛合いによっては数[msec]の間にブラシローラと画像形成装置のアース導通が途切れることもあるが、実使用上問題となる時間ではない。
【0050】
以上、本実施形態の詳細について説明してきたが、上記本実施形態の特徴と効果について以下にまとめる。
【0051】
本実施形態の画像形成装置によれば、ブラシローラ芯材の周りにブラシ毛が配置されたブラシローラと、ブラシローラ芯材の中心軸上に配置され、ブラシローラを駆動するブラシローラ駆動ギヤとを有する画像形成装置(上記画像形成ユニット10又は画像形成装置100)であって、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤとが一体的に成型されて一部品化されていることを特徴とする。この特徴により、本実施形態は、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤとが別部品構成の場合に発生する、ブラシローラ駆動ギヤとブラシローラ芯材の周り止め面の間の微少なクリアランスを無くすことができる。これにより、駆動伝達がスムーズになり、ブラシローラ駆動ギヤとその駆動ギヤ(例えば像担持体フランジギヤ)のギヤ噛合いがスムーズになり、ギヤ噛合いによって発生する振動を防止することができる。また、上記特徴により、本実施形態は、ブラシローラ芯材中心とブラシローラ駆動ギヤ中心の同軸精度を高めることができる。ブラシローラ駆動ギヤとその駆動ギヤ(例えば像担持体フランジギヤ)の中心間距離は、ブラシローラ芯材を軸受などで保持して決定されているため、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤの同軸精度が高いことで、ギヤ中心間距離の精度を高めることができる。これにより、中心間距離がブラシローラ1/2回転周期で変動することがなくなるため、ブラシローラ駆動ギヤとその駆動ギヤのギヤ噛合いもスムーズとなり、ギヤ噛合いによって発生する振動を防止することができる。以上のことから、本実施形態では、ギヤ噛合い振動によって発生するギヤ噛合いピッチのバンディング(濃淡ムラ)を無くすことができ、その結果として高画質化を実現できる。また、本実施形態は、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤが、樹脂の一体成型であるため安価に作製することができ、また、一部品構成であるため組立コストも削減でき、その結果として低コスト化を実現できる。
【0052】
また、上記本実施形態の画像形成装置において、ブラシローラは、ブラシ材が導電性又は半導電性であり、ブラシローラ芯材とブラシローラ駆動ギヤの材質が摺動性樹脂をベースとした導電性樹脂製であることを特徴とする。この特徴により、本実施形態は、ブラシ材の帯電を防止するためのブラシ材のアース(接地)経路として、導電性樹脂のブラシローラ芯材又はブラシローラ駆動ギヤを用いることで、ブラシローラ芯材又はブラシローラ駆動ギヤにアース接点を設けるだけの簡単な構成で導通経路を確保でき、さらに摺動性樹脂とすることで、ギヤ摩耗や、軸受との摺動による摩耗が抑制され、低コストで高画質な画像形成装置を提供できる。
【0053】
また、上記本実施形態の画像形成装置において、ブラシローラ駆動ギヤは、像坦持体の端部に圧入され摺動性樹脂をベースとした導電性樹脂製であり、アース(接地)された像坦持体フランジギヤとギヤ列を成していることを特徴とする。この特徴により、本実施形態は、ブラシ材の帯電を防止するためのブラシ材のアース(接地)経路としてブラシローラ駆動ギヤとギヤ列を成す像坦持体フランジギヤを用いることで、ブラシローラにアース接点を設ける必要がなくなり、ブラシローラのアース(接地)を簡単な構成で実現できる。このため、低コストで高画質な画像形成装置を提供できる。像担持体の素管はアース(接地)する必要があり、この経路をブラシローラのアースにも使用する。
【0054】
また、上記本実施形態の画像形成装置において、ブラシローラは、像担持体上に残存するトナーを回収するクリーニングブラシローラであることを特徴とする。この特徴により、本実施形態は、上記クリーニングブラシローラを用いることで、経時においても良好なクリーニング性を維持することが可能となる(=画像形成装置における高画質化、高寿命化の実現)。特にクリーニング性を高めるため(=高画質化、高寿命化)ことを目的として使用される高剛性毛のブラシローラの場合は、ギヤへの負荷トルクと変動が大きいため、ギヤ噛合いがスムーズで無い場合は、ギヤ振動によるバンディングが特に発生し易く、本実施形態による効果は大きい。
【0055】
また、上記本実施形態の画像形成装置において、ブラシローラは、潤滑剤を像担持体上に供給する潤滑材塗布ブラシローラであることを特徴とする。この特徴により、本実施形態は、上記滑材塗布ブラシローラを用いることで、経時においても良好な像担持体保護性、クリーニング性を維持することが可能となる(=画像形成装置における高画質化、高寿命化の実現)。特に潤滑材塗布効率を高める(=高寿命化)ことを目的として使用される高剛性毛のブラシローラの場合は、ギヤへの負荷トルクと変動が大きいため、ギヤ噛合いがスムーズで無い場合は、ギヤ振動によるバンディングが特に発生し易く、本実施形態による効果は大きい。
【0056】
本実施形態のプロセスカートリッジ(画像形成ユニット10)によれば、像担持体と、現像手段、帯電手段及びクリーニング手段のうちの少なくとも1つとを一体に構成し、画像形成装置の本体に対し着脱自在なプロセスカートリッジであって、クリーニング手段は、上記本実施形態の画像形成装置に備えられるブラシローラを用いたことを特徴とする。この特徴により、本実施形態は、像担持体と他手段とを一体のカートリッジとすることで、メンテナンス部品である像担持体と他手段を一括して画像形成装置に挿入するだけで容易に交換可能となる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 像担持体(感光体)
2 帯電手段(帯電装置)
2a 帯電ローラ
2b 帯電ローラクリーニング部材
3 露光手段(露光装置)
4 現像手段(現像装置)
4a 現像剤担持体
4b トナー供給室
4c トナー搬送スクリュー1
4d トナー搬送スクリュー2
5 転写手段(転写装置)
6 クリーニング装置
8 定着手段
10 画像形成ユニット(プロセスカートリッジ)
11 像担持体フランジギヤ
12 像担持体軸
13 像担持体軸受
14 像担持体素管
50 中間転写ベルト
51 1次転写手段
61 クリーニングブレード
62 クリーニングブラシローラ
62a クリーニングブラシローラ芯材
621a クリーニングブラシローラ芯材外層
622a クリーニングブラシローラ芯材内層
62b クリーニングブラシローラ駆動ギヤ
62c クリーニングブラシ
63 潤滑材塗布ブラシローラ
63a 潤滑材塗布ブラシローラ芯材
631a 潤滑材塗布ブラシローラ芯材外層
632a 潤滑材塗布ブラシローラ芯材内層
63b 潤滑材塗布ブラシローラ駆動ギヤ
63c 潤滑材塗布ブラシ
64 固形潤滑剤
65 フリッカー
66 搬送スクリュー
67 アイドラギヤ
100 画像形成装置
101 プロセスカートリッジ枠体
102 ブラシローラ軸受
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2002−123130号公報
【特許文献2】特開2008−20825号公報
【特許文献3】特開2003−262998号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシローラ芯材の周りにブラシ毛が配置されたブラシローラと、前記ブラシローラ芯材の中心軸上に配置され、前記ブラシローラを駆動するブラシローラ駆動ギヤと、を有する画像形成装置であって、
前記ブラシローラ芯材と前記ブラシローラ駆動ギヤとが一体的に成型されて一部品化されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ブラシローラは、ブラシ材が導電性又は半導電性であり、
前記ブラシローラ芯材と前記ブラシローラ駆動ギヤの材質が摺動性樹脂をベースとした導電性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ブラシローラ駆動ギヤは、像坦持体の端部に圧入され摺動性樹脂をベースとした導電性樹脂製であり、アース(接地)された像坦持体フランジギヤとギヤ列を成していることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ブラシローラは、像担持体上に残存するトナーを回収するクリーニングブラシローラであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ブラシローラは、潤滑剤を像担持体上に供給する潤滑剤塗布ブラシローラであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成装置の本体に対して、像担持体と、現像手段、帯電手段及びクリーニング手段のうちの少なくとも1つとを一体に構成したプロセスカートリッジが着脱可能であり、
前記ブラシローラは、前記クリーニング手段の一部として備えられることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
像担持体と、現像手段、帯電手段及びクリーニング手段のうちの少なくとも1つとを一体に構成し、画像形成装置の本体に対し着脱自在なプロセスカートリッジであって、
前記クリーニング手段は、
請求項1から6のいずれか1項に記載の画像形成装置に備えられるブラシローラを用いたことを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−242467(P2011−242467A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112382(P2010−112382)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】