説明

画像形成装置及び方法

【課題】着弾インクの粘度を制御して記録媒体上での液滴同士の干渉、液の移動、フェザリング等を低減するとともに、インク表面の凹凸を低減した状態でインクを確実に硬化・定着させることで高品質の画像形成を実現Iし得る画像形成装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明による画像形成装置(10)は、電気粘性効果を有するインクを記録媒体(20)に向けて吐出する吐出ヘッド(12K,12M,12Y,12C)と、記録媒体(20)上に着弾した液滴状のインクに電界を付与する電界付与手段(28)と、記録媒体(20)上のインクの定着を促進する処理を行う定着促進手段(16)と、記録媒体(20)上のインクに対する電界付与手段(28)による電界の印加を解除するタイミングと定着促進手段(16)による処理のタイミングとの時間差を制御するタイミング制御手段と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及び方法に係り、特にノズルから液滴を吐出して記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置などの画像形成装置に好適な画像形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式の記録ヘッドを用いる記録装置において、記録媒体上でのインクの滲みや混色等を防止するため、電気粘性流体を利用する技術が提案されている(特許文献1〜3)。
【0003】
特許文献1には、絶縁性溶媒に色材が分散若しくは溶解している電気粘性流体であることを特徴とする画像形成材料が開示されている。特許文献2には、絶縁性溶媒に色材が分散している電気粘性流体を用い、記録媒体(記録部材)に電界を印加することを特徴とする画像形成方法が開示されている。また、特許文献3には、電気粘性効果を有する記録液を付着させる記録ヘッドと、記録液付着面に電界を形成する手段とを備えたことを特徴とする記録装置が開示されている
【特許文献1】特開平2−169253号公報
【特許文献2】特開平2−212149号公報
【特許文献3】特開平5−4343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、オリフィス近傍に電界印加することでインク粘度を大きくし、サテライトを防止する技術を開示するものであり、着弾後の液の挙動については言及していない。
【0005】
また、特許文献2及び3においては、電気粘性流体をインクとして用い、記録媒体に電界を印加することが開示されているが、記録紙に対する浸透防止による滲み抑制を目的にしており、非浸透性(或いは低浸透性)の記録媒体を使用する場合の着弾干渉や混色等については考慮されていない。
【0006】
更に、従来、非浸透性(或いは低浸透性)の記録媒体表面上でインクを硬化定着させると、印字面(インクの表面)に凹凸が残り、プリント結果の画像に光沢感が失われるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、着弾インクの粘度を制御して記録媒体上での液滴同士の干渉、液の移動、フェザリング等を低減し、その良好なドット状態で確実に定着させるとともに、印字面を平滑化して高品質の画像形成を実現し得る画像形成装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る画像形成装置は、電気粘性効果を有するインクを記録媒体に向けて吐出する吐出ヘッドと、前記記録媒体上に着弾した液滴状のインクに電界を付与する電界付与手段と、前記記録媒体上のインクの定着を促進する処理を行う定着促進手段と、前記記録媒体上のインクに対する前記電界付与手段による電界の印加を解除するタイミングと前記定着促進手段による処理のタイミングとの時間差を制御するタイミング制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、電気粘性効果を有するインクを用い、吐出ヘッドから記録媒体に向けてインクを吐出する。記録媒体上に着弾したインク滴は、電界付与手段が発生する電界の作用によって高粘度化し、記録媒体への浸透及びドット径の過剰な拡がりが抑制されるとともに、記録媒体表面上でのインク液滴同士の干渉や液の移動が抑制される。また、電界の印加を解除するタイミング(電界OFFタイミング)と、定着促進手段による定着促進処理のタイミング(定着促進処理タイミング)との時間差(両タイミングの時間的な前後関係並びにその時間間隔)を調整し、電界OFFによってインク表面(印字面)の平滑化を進行させるとともに、平滑化した状態でインクの硬化・定着を図る。これにより、印字面の凹凸を低減できるとともに、電界解除後も滲みや混色等が殆ど発生しない高品質の画像形成が可能となる。
【0010】
着弾インクに対する電界OFFタイミングと定着促進処理タイミングとの時間差を調整する方法として、電界OFFタイミングと定着促進処理タイミングの両方を制御してもよいし、両者のうち何れか一方のタイミングを制御することで相対的な関係を変更してもよい。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の画像形成装置の一態様に係り、前記記録媒体の種類を検出する記録媒体種検出手段を備え、前記タイミング制御手段は、前記記録媒体種検出手段で得た情報に基づいて、前記電界付与手段による電界の印加解除タイミング及び前記定着促進手段による処理タイミングを決定することを特徴とする。
【0012】
記録媒体の材質や厚さ、誘電率等の条件により、液の浸透性や記録媒体上における着弾インクの挙動は異なるため、請求項2に示すように、記録媒体種検出手段を用いて記録媒体の種類を把握し、その媒体種に応じて電界の印加期間及び定着促進処理のタイミングを調整することが好ましい。これにより、記録媒体に対応した適切な制御が可能となり、効果的に滲みを防止できる。
【0013】
記録媒体種検出手段には、例えば、記録媒体の反射率を測定する手段、使用される記録媒体の種類を供給マガジンのID等から読み取る手段などが含まれる。また、記録媒体種検出手段は、センサや情報読取手段などによって自動的に情報を取得する形態のものに限らず、記録媒体の紙種等の情報をユーザが所定の入力装置等を操作して入力する構成も可能である。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の画像形成装置の一態様に係り、描画すべき画像の画像情報からインク量を判定するインク量判定手段を備え、前記タイミング制御手段は、前記インク量判定手段で判定したインク量に基づいて、前記電界付与手段による電界の印加解除タイミング及び前記定着促進手段による処理タイミングを決定することを特徴とする。
【0015】
描画用の画像情報を解析することによって記録媒体上に打滴されるインクの量を予測することができ、そのインク量に応じて、電界印加の解除(OFF)タイミングと定着促進処理を行うタイミングとを可変制御する態様が好ましい。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1、2又は3記載の画像形成装置の一態様に係り、前記インクは放射線硬化型インクであり、前記定着促進手段は、当該インクを硬化させる放射線を照射する放射線照射手段を含んで構成されることを特徴とする。
【0017】
すなわち、放射線(可視光や紫外線、X線を含む電磁波、電子線など)により硬化する性質を有する放射線硬化型インクに電気粘性効果を持たせたインクを使用し、これを硬化させる放射線照射手段を具備した態様である。放射線硬化型インクの代表的な例としては、紫外線硬化型インク(UVインク)、電子線硬化型インク(EBインク)などがある。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の何れか1項記載の画像形成装置の一態様に係り、前記吐出ヘッド及び記録媒体のうち少なくとも一方を一定の方向に搬送して前記吐出ヘッドと前記記録媒体を相対移動させる搬送手段を備え、前記電界付与手段は、前記相対移動の方向に沿って並ぶように複数の電極領域に分割され、各電極領域に第1の電極及び第2の電極から成る電極対が配置された構造を有し、前記タイミング制御手段は、前記各電極領域の電極対への電圧の印加/非印加を制御することで電界の発生領域を可変することを特徴とする。
【0019】
かかる態様によれば、各電極領域に配置された電極対に対して選択的に電圧を印加することができるため、電極領域単位で電界の発生領域を変更できる。吐出ヘッドに対する記録媒体の相対的な移動方向に沿って電界の発生領域を長くすると、記録媒体上の着弾インクが通過する電界付与区間が長くなる。その結果、電界発生領域の後端位置に対応する電界OFFのタイミングと、定着促進処理の開始タイミングとの時間差が短くなる。逆に、電界の発生領域を短くすると、電界付与区間が短くなり、電界OFFのタイミングと、定着促進処理の開始タイミングとの時間差が大きくなる。このように、請求項5の態様によれば、電界の発生領域を変えることにより、電界の解除タイミング及び定着促進処理タイミングを調整することができる。
【0020】
本発明における「第1の電極及び第2の電極から成る電極対」は、第1の電極及び第2の電極に相対的な電位差が与えられた場合(すなわち電圧が印加された場合)、電極対周辺部に所定の電界強度を発生させる。したがって、第1の電極及び第2の電極から成る電極対には、一方の電極を正の電位、他方の電極を負の電位とするような正負の電極はもちろん、何れの電極も正又は負とするような電極対も含まれる。
【0021】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5の何れか1項記載の画像形成装置の一態様に係り、前記記録媒体に着弾した液滴上のインクが所定の粘度となるように電界強度を制御する電界強度制御手段を備えたことを特徴とする。
【0022】
電界付与に際し、着弾インク液滴を所定の粘度にするように電界強度を適切に制御することで、所望の液状態を実現し得ることができ、着弾インク液滴同士の干渉を抑制することができる。このとき、着弾干渉や滲み等を回避し得る必要最小限の電界を付与する制御を行う態様がより好ましい。これにより、吐出ヘッド内のインクの増粘を防止でき、吐出不良の発生を抑制できる。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6の何れか1項記載の画像形成装置の一態様に係り、前記定着促進手段による処理の強度を制御する定着強度制御手段を備えたことを特徴とする。
【0024】
記録媒体の種類やインク種、インク量などの条件に応じて定着強度を最適に制御することにより、記録媒体表面上のインクの硬化反応を進行させ、滲み等が発生し得ないレベルに確実に硬化・定着させることができる。
【0025】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7の何れか1項記載の画像形成装置の一態様に係り、前記電界付与手段は、前記記録媒体を静電吸着によって保持する静電吸着手段として機能することを特徴とする。
【0026】
電気粘性効果を発現させるための電界付与手段は、記録媒体を静電気力によって安定的に保持する静電吸着手段として兼用することも可能である。
【0027】
請求項9に係る発明は、前記目的を達成する方法発明を提供する。すなわち、請求項9に係る画像形成方法は、電気粘性効果を有するインクを吐出ヘッドから記録媒体に向けて吐出するインク吐出工程と、前記記録媒体上に着弾した液滴状のインクに電界を付与する電界付与工程と、前記記録媒体上のインクの定着を促進する処理を行う定着促進工程と、前記記録媒体上のインクに対する前記電界付与工程による電界の印加を解除するタイミング及び前記定着促進工程による処理のタイミングを制御するタイミング制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0028】
吐出ヘッドの構成例として、記録媒体の全幅に対応する長さにわたってインク吐出用の複数のノズルを配列させたノズル列を有するフルライン型のインクジェットヘッドを用いることができる。カラー画像を形成する場合は、複数色のインクの色別にかかるフルライン型インクジェットヘッドを配置する構成がある。
【0029】
フルライン型のインクジェットヘッドは、通常、記録媒体の相対的な送り方向(相対的搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってインクジェットヘッドを配置する態様もあり得る。更には、記録媒体の全幅に対応する長さに満たないノズル列を有する短尺の記録ヘッドユニットを複数個組み合わせることによって、これらユニット全体として記録媒体の全幅に対応するノズル列を構成する形態もあり得る。
【0030】
「記録媒体」は、吐出ヘッドの作用によって画像の記録を受ける媒体(印字媒体、被画像形成媒体、被記録媒体、受像媒体など呼ばれ得るもの)であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、吐出ヘッドによって配線パターン等が形成されるプリント基板、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
【0031】
記録媒体と吐出ヘッドを相対的に移動させる搬送手段は、停止した(固定された)吐出ヘッドに対して記録媒体を搬送する態様、停止した記録媒体に対して吐出ヘッドを移動させる態様、或いは、吐出ヘッドと記録媒体の両方を移動させる態様の何れをも含む。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、電気粘性効果を有するインクを吐出ヘッドから吐出して描画を行い、記録媒体上の着弾インクに電界を印加することで滲みや着弾干渉、混色等を防止する。また、電界をOFFするタイミングと、定着を促進する処理のタイミングとの時間差を調整し、電界OFFによってインク表面の平滑化を進行させるとともに、その平滑化した状態でのインクの定着を図る。これにより、印字面の凹凸を低減できるとともに、電界解除後も滲みや混色等が殆ど発生しない高品質の画像形成が可能となる。これにより、高品質の画像形成を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0034】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示すインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェットヘッド(以下、ヘッドという。)12K,12M,12C,12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K,12M,12C,12Yに供給するインク(本例では電気粘性効果を有する紫外線硬化型インク)を貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、定着促進手段としての紫外線光源(以下「UV光源」という)16と、メディア(記録媒体)20を供給するメディア供給部22と、メディア20のカールを除去するデカール処理部24と、ヘッド12K,12M,12C,12Yのノズル面(インク吐出面)及びUV光源16の光出射面に対向して配置され、メディア20の平面性を保持しながらメディア20を搬送する搬送部26と、該搬送部26に付設され、メディア20上の着弾インクに電界を付与する電極ユニット28と、記録済みのメディア20(プリント物)を外部に排出する排紙部30と、を備えている。
【0035】
インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K,12M,12C,12Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンク14K,14M,14C,14Yを有し、各タンクは所要の管路(不図示)を介してヘッド12K,12M,12C,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0036】
本実施形態では描画インクとして、紫外線硬化型のインクに電気粘性(Electro Rhelogical) 効果を持たせた電気粘性流体を用いる。電気粘性流体とは、電界を付与(電圧印加)することにより瞬間的に見かけ上の粘度が上昇する液体であり、電界のオン/オフにより粘度が可逆的に変化するものである。このような電気粘性流体には、分散型と、均一系の2種類がある。
【0037】
分散型は、電気絶縁性溶媒中に誘電体微粒子が液体内に分散させられたもので、電界が付与されない状態では、微粒子が分散されたままの状態で、粘性の低い状態であるが、電界を付与すると、分極した粒子が電界方向に繋がった鎖状構造(橋)を形成し、この橋が流体の粘度を増大させる働きをするため流体の粘度が上昇したような挙動をとるものである。
【0038】
また、均一系は、液晶などのように分子やドメインが電界方向に配向し、異方性を示すものである。均一性の電気粘性流体は現状では粘性変化が少ないため、インクジェットプリンタ用途には分散型の電気粘性流体が向くと考えられている。
【0039】
本実施形態では、紫外線硬化型のインクに電気粘性効果を持たせるようにしているが、このようなインクの作成方法としては、例えば、少なくとも放射線硬化モノマー、重合開始剤を含む液体に固体微粒子(シリカゲル、澱粉、デキストリン、カーボン、石膏、ゼラチン、アルミナ、セルロース、マイカ、ゼオライト、カオライト等)を分散させる方法や、顔料微粒子そのものを電気粘性効果の分散剤として利用する方法や、染料または顔料をマイクロカプセル化し、その表面を絶縁処理することにより電気粘性効果の分散剤として利用する方法、或いは、均一系電気粘性流体を混合させる方法などが考えられる。
【0040】
図1において、メディア供給部22の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジン32が示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0041】
複数種類のメディアを利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用されるメディアの種類を自動的に判別し、メディア種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0042】
メディア供給部22から送り出されるメディア20はマガジン32に装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部24においてマガジン32の巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム34でメディア20に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0043】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター38が設けられており、該カッター38によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター38は、メディア20の搬送路幅以上の長さを有する固定刃38Aと、該固定刃38Aに沿って移動する丸刃38Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃38Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃38Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター38は不要である。
【0044】
デカール処理後、カットされたメディア20は、搬送部26へと送られる。搬送部26は、ローラ41,42間に無端状の微導電性ベルト43が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも各ヘッド12K,12M,12C,12Yのノズル面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0045】
微導電性ベルト43は、メディア20の幅よりも広い幅寸法を有しており、メディア20を保持する部分の裏面側に電極ユニット28が配置されている。詳細は後述するが、不図示の直流高圧発生器(図7中符号78)によって電極ユニット28に直流高電圧が印加されることにより、メディア20は静電気力によって微導電性ベルト43上に吸着保持され、メディア20上の着弾インクに電界が付与される。
【0046】
微導電性ベルト43が巻かれているローラ41,42の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図9中符号138として記載)の動力が伝達されることにより、微導電性ベルト43は図1上で反時計回り方向に駆動され、メディア20は図1の右から左へと搬送される。
【0047】
各ヘッド12K,12M,12C,12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とするメディア20の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズのメディア20の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
【0048】
ヘッド12K,12M,12C,12Yは、メディア20の送り方向に沿って上流側から黒(K)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド12K,12M,12C,12Yがメディア20の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0049】
搬送部26によりメディア20を一定の速度で搬送しつつ各ヘッド12K,12M,12C,12Yからそれぞれ異色のインクを吐出することによりメディア20上にカラー画像を形成し得る。
【0050】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12K,12M,12C,12Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)についてメディア20をヘッド12K,12M,12C,12Yに対して相対移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、メディア20の全面に画像を記録することができる。このようなシングルパス方式のインクジェット記録装置10は、記録ヘッドを主走査方向に往復動作させながら描画を行うシャトルスキャン方式に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0051】
本例では、KMCYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせは本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクなどを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0052】
印字部12の後段に配置されているUV光源16は、ヘッドと同様にメディア20の最大紙幅に対応する長さを有し、メディア20の搬送方向と略直交する方向に延在するように設置されている。例えば、UV光源16は、紫外線LED素子又は紫外線LD素子をライン状に配列させた構成から成る。かかる構成によれば、発光素子別に選択的に発光制御が可能であるため、点灯させる発光素子数や発光光量を容易に調整でき、紫外線の照射エリアについて所望の照射範囲及び光量(強度)分布を実現できる。もちろん、紫外線LED素子アレイ又は紫外線LD素子アレイに代えて、紫外線ランプを用いることも可能である。
【0053】
UV光源16は、メディア20上の着弾インクの硬化を促進するための紫外線を照射する。なお、メディア20上に打滴されたインク液滴を必ずしも完全に(硬化反応が完了した状態に)硬化・定着させることまでは要求されない。ただし、当該UV光源16を通過したときには、その後の(下流側工程の)ハンドリングによって画像劣化が起こらない程度に硬化・定着が進んでいることが好ましい。ここでいうハンドリングとは、[1] 第2の硬化手段の下流側搬送工程におけるローラや搬送ガイド等と画像面との擦れ、[2] プリント集積部におけるプリント同士の擦れ、[3] 仕上がったプリントを実際に取り扱うときに種々の物体による擦れ、などを意味する。
【0054】
こうして、UV光源16を通過したメディア20(生成されたプリント物)は、歯付き従動ローラ47及びニップローラ48を介して排紙部30から排出される。なお、図1には示さないが、排紙部30には、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0055】
搬送部26に付設される電極ユニット28は、紙送り方向の上流側から下流側に向かって、複数の領域(本例では4つの領域;28A〜28D)に区分けされており、領域単位で電圧の印加(ON/OFF)を制御することができる。
【0056】
符号28Aで示した第1の電極領域は、印字部12の印字領域(インク吐出領域)に対応した領域である。符号28B〜28Dで示した第2〜第4の電極領域は、印字領域の後端からUV光源16の照射領域までの範囲に配置されている。印字動作中、少なくとも第1の電極領域28Aに電圧を印加して電界を発生させる。また、メディア種やインク種並びに打滴インク量などの条件に応じて第2〜第4の電極領域28B〜28Dに対して選択的に電圧を印加することにより、電界発生エリアを下流側に延長することができる。
【0057】
すなわち、第2〜第4の電極領域28B〜28Dについての電圧印加のON/OFFを制御することにより、メディア20上の着弾インクに電界を付与する期間(つまり、搬送部26によって搬送されるメディア20上の着弾インクに対する電界の印加をOFFするタイミング)を調整できる。第1の電極領域28Aは、印字中に必ず電界を発生させる領域という意味で「固定ゾーン」と呼び、第2〜第4の電極領域28B〜28Dの範囲は状況に応じて選択的に電界を発生させる領域という意味で「ON/OFF制御ゾーン」と呼ぶことにする。
【0058】
本例のインクジェット記録装置10では、ON/OFF制御ゾーン(28B〜28D)によって電界発生エリアを可変することにより、定速搬送されるメディア20上の着弾インクへの電界印加を解除(OFF)するタイミングとUV光源16によるUV光の照射タイミングとの時間差を調整できるようになっている。
【0059】
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各ヘッド12K,12M,12C,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
【0060】
図2(a) はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図2(b) はその一部の拡大図である。また、図3はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4は1つの液滴吐出素子(1つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図2中の4−4線に沿う断面図)である。
【0061】
メディア20上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図2(a),(b) に示したように、インク滴の吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなるインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0062】
メディア20の送り方向(矢印S方向;副走査方向)と略直交する方向(矢印M方向;主走査方向)にメディア20の全幅Wm に対応する長さ以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図2(a) の構成に代えて、図3に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドユニット50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることでメディア20の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0063】
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており(図2(a),(b) 参照)、対角線上の両隅部にノズル51への流出口と供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。
【0064】
図4に示したように、各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインクタンク(図4中不図示、図6中符号60として記載)と連通しており、インクタンク60から供給されるインクは図4の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
【0065】
圧力室52の天面を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されている。個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。インク吐出後、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。なお、アクチュエータ58には、ピエゾ素子などの圧電体が好適に用いられる。
【0066】
かかる構造を有するインク室ユニット53を図5に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0067】
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、高密度のノズル列を実現することが可能になる。
【0068】
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0069】
特に、図5に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)、メディア20の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することでメディア20の幅方向に1ラインを印字する。
【0070】
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0071】
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0072】
〔インク供給系の構成〕
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。すなわち、図6のインクタンク60は、図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0073】
図6に示したように、インクタンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下とすることが好ましい。図6には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0074】
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニット(回復手段)は、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
【0075】
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aをキャップ64で覆う。
【0076】
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド50のノズル面50A(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板表面にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取る。
【0077】
印字中又は待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ64(インク受けとして兼用)に向かって予備吐出が行われる。
【0078】
ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(アクチュエータ58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かってアクチュエータ58を動作させ、粘度上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーによってノズル板表面の汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
【0079】
その一方で、ノズル51や圧力室52に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなる。このような場合、ヘッド50のノズル面50Aに吸引手段たるキャップ64を当接させて、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク又は増粘インク)を吸引する。かかる吸引動作によって吸引除去されたインクは回収タンク68へ送られる。回収タンク68に集められたインクは、再利用してもよいし、再利用不能な場合は廃棄してもよい。
【0080】
上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きいため、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、上記の吸引動作は、ヘッド50へのインク初期装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われる。
【0081】
〔電極ユニットの構造〕
図7は、図1で説明した電極ユニット28の電極配置構造の一例を示す平面図である。図7に示したように、電極ユニット28は、メディア20の搬送方向(矢印S方向)と直交する方向に略平行な棒状の正電極72及び負電極74がメディア搬送方向に所定の電極間距離wp の間隔で交互に多数配置された構造を成す。なお、図7では、作図便宜上、電極の本数を減らして模式的に示したが、実際には多数本の電極が密に配置されている。
【0082】
棒状の正電極72及び負電極74は、メディア20上の着弾インクに一様な電界を与えるために、それぞれメディア20の幅寸法Wm よりも長い寸法WL で形成されている。
【0083】
図1でも説明したとおり、電極ユニット28は、第1の電極領域28A乃至第4の電極領域28Dに対応して4つの独立した電極群に分割されている。すなわち、各電極領域(28A〜28D)はそれぞれ正負の電極パターン対72-j, 74-j(j=1,2,3,4)を有し、スイッチSWj1, SWj2を介して直流高圧発生器と接続され、電極領域単位で電圧の印加(ON)/非印加(OFF)を制御できるように構成されている。
【0084】
第1の電極領域28Aは、複数の棒状正電極72-1aの一端(図7において上端)が共通の基端電極部72-1bに接続された櫛歯状を成す正電極パターン72-1と、複数の棒状負電極74-1aの一端(図7において上端)が共通の基端電極部74-1bに接続された櫛歯状を成す負電極パターン74-1とから構成されている。正電極パターン72-1と負電極パターン74-1は、互いに櫛歯状に開いた棒状電極部側を向かい合わせて配置されている。正の基端電極部72-1bはスイッチSW11を介して直流高圧発生器78の正極に接続される。負の基端電極部74-1bはスイッチSW12を介して直流高圧発生器78の負極に接続される。
【0085】
第2の電極領域28B〜第4の電極領域28Dについてもそれぞれの電極配置構造は、概ね第1の電極領域28Aと同様であり、第1の電極領域28Aと比較して、棒状正電極72-2a及び棒状負電極74-2aの本数が異なるのみである。なお、図7では、簡略化して示したが、実際には、第2の電極領域28B〜第4の電極領域28Dについても、櫛歯状を成す正負の電極パターン対によって構成されている。
【0086】
また、図示のとおり、第2の電極領域28Bにおける正の基端電極部72-2bはスイッチSW21を介して直流高圧発生器78の正極に接続され、負の基端電極部74-2bはスイッチSW22を介して直流高圧発生器78の負極に接続される。
【0087】
同様に、第3の電極領域28Cにおける正の基端電極部72-3bはスイッチSW31を介して直流高圧発生器78の正極に接続され、負の基端電極部74-3bはスイッチSW32を介して直流高圧発生器78の負極に接続される。
【0088】
第4の電極領域28Cにおける正の基端電極部72-4bはスイッチSW41を介して直流高圧発生器78の正極に接続され、負の基端電極部74-4bはスイッチSW42を介して直流高圧発生器78の負極に接続される。
【0089】
図7中の8−8線に沿う断面図を図8に示す。図8に示すように、メディア20を支持する微導電性ベルト43の下に電極ユニット28が配置される。電極ユニット28は、絶縁性の支持層80の上に電極層82を配置した層構造を成す。電極層82には、図7で説明した正負の各電極72,74が同一平面内に形成される。また、電極層82における各電極72,74の間は絶縁材料84で満たされ、電気的に絶縁されている。
【0090】
微導電性ベルト43は、電極ユニット28の上層を覆い、且つメディア20の裏面と接する。微導電性ベルト43の電気抵抗率は10の8乗〜10の12乗Ωcm程度であることが好ましい。また、微導電性ベルト43の厚さは、0.01mm〜10mm程度であることが好ましい。
【0091】
微導電性ベルト43は、電極層82のメディア20側の表面を覆っているので、正負の各電極72,74を保護する役割を果たすとともに、感電等の人体に対する危害を防止する。また、微導電性ベルト43は、電源オフ時等のように印字動作が行われない場合に、ベルトが帯電状態のまま維持されることを防止する。
【0092】
図7に示した直流高圧発生器78から電極72、74間に所定の電圧が印加されると、図8に示したように、隣り合う電極72,74間に電界が発生する。このとき発生する電界の電気力線86を図8中二点鎖線で示した。図示のように、互いに隣接する電極72,74間に形成される電界の電気力線86は略円弧状を成し、メディア20の印字面より上側にも電界が生じる。これにより、メディア20上の着弾インク88に電界が付与される。このとき、メディア20上の着弾インク88内には微導電性ベルト43及びメディア20を介して微小電流が流れる。こうして、メディア20上の着弾インク88に電気粘性効果が発現し、着弾インク88の粘度が上昇する。電界を付与し続けている期間、上記の電気粘性効果による増粘状態が維持される。これにより、着弾インク88は略半球形状の液状態に維持され、着弾干渉、浸透滲み、色間滲み等が抑制される。
【0093】
本実施形態では、メディア20上に印加される電界の強度は、隣接して配置される正の電極72と、負の電極74との電極間距離Wp 、電極間の印加電圧に依存する。印加電圧が一定ならば、電極間距離Wp が小さいほどメディア20上の電界強度が大きくなる。したがって、印加電圧を低く抑えるという観点からすれば、電極間距離Wp は小さいことが好ましく、0.1〜20mm程度であることがより好ましい。
【0094】
また、各電極72,74の太さ(電極幅)Ws は細いほど、メディア20上に形成される電界の強度分布が略一様(略均一)となる。したがって、電極幅Ws は細いことが好ましく、0.01mm〜10mm程度であることがより好ましい。
【0095】
実験によれば、メディア20上に印加される電界の強度は、0.1kV/mm〜10kV/mmの範囲であるときが、メディア20上の着弾インク滴に対する電気粘性効果が大きい。したがって、メディア20上に印加される電界の強度が0.1kV/mm〜10kV/mmの範囲になるように、電極間距離Wp 、電極幅Ws 、印加電圧を設定することが好ましい。
【0096】
〔制御系の説明〕
図9はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース100、システムコントローラ102、画像メモリ104、ROM106、メディア種検出部108、インク量判定部110、モータドライバ116、ヒータドライバ118、電界制御部120、光源制御部122、プリント制御部130、画像バッファメモリ132、ヘッドドライバ134等を備えている。
【0097】
通信インターフェース100は、ホストコンピュータ136から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース100にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0098】
ホストコンピュータ136から送出された画像データは通信インターフェース100を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ104に記憶される。画像メモリ104は、通信インターフェース100を介して入力された画像を一時的に格納する記憶手段であり、システムコントローラ102を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ104は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0099】
システムコントローラ102は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。
【0100】
すなわち、システムコントローラ102は、通信インターフェース100、画像メモリ104、モータドライバ116、ヒータドライバ118、電界制御部120、光源制御部122、プリント制御部130等の各部を制御する制御部であり、ホストコンピュータ136との間の通信制御、画像メモリ104の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ138やヒータ139等を制御する制御信号を生成する。
【0101】
ROM106には、システムコントローラ102のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM106は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ104は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0102】
メディア種検出部108は、メディア種に関する情報を取得する手段であり、メディア20の紙種や濡れ性、サイズなどを検出する手段を含む。例えば、図1で説明したメディア供給部22のマガジン32に付されたバーコード等の情報を読み込む手段、用紙搬送路中の適当な場所に配置されたセンサ(用紙幅検出センサ、用紙の厚みを検出するセンサ、用紙の光学反射率を検出するセンサなど)が用いられ、これらの適宜の組み合わせも可能である。また、これら自動検出の手段に代えて、若しくはこれと併用して、所定のユーザインターフェースからの入力によって紙種や濡れ性、サイズ等の情報を指定する構成も可能である。
【0103】
インク量判定部110は、打滴インク量を判定する手段である。インク量判定部110は、プリントすべき画像データに基づいてプリント制御部130で生成されたドットデータから所定の画像領域中に吐出されるインクの液滴量を判定する。また、インク種などの情報も付加してもよい。インク種等の情報を取得する手段としては、例えば、インクタンク60(図6参照)のカートリッジの形状(インク種を識別可能な特定の形状)、或いはカートリッジに組み込まれたバーコードやICチップなどからインクの物性情報を読み取る手段を用いることができる。その他、ユーザインターフェースを利用してオペレータが必要な情報を入力してもよい。
【0104】
図9に示したメディア種検出部108及びインク量判定部110から得られた情報はシステムコントローラ102に送られる。システムコントローラ102は、メディア種検出部108及びインク量判定部110から得られる情報及び印刷用の画像データに基づいて電界付与の制御目標値やUV光照射の制御目標値等を算出し、その演算結果に従って電界制御部120及び光源制御部122を制御する。
【0105】
モータドライバ116は、システムコントローラ102からの指示に従ってモータ138を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ118は、システムコントローラ102からの指示に従って加熱ドラム34その他各部のヒータ139を駆動するドライバである。
【0106】
電界制御部120は、システムコントローラ102からの指示に従って直流高圧発生器78の発生電圧を制御するとともに、図7で説明したスイッチSWj1, SWj2(j =1 〜4 )のON/OFFを切り換える制御信号を出力し、電極ユニット28の電界発生エリアを制御する。
【0107】
光源制御部122は、UV光源16の点灯(ON)/消灯(OFF)並びに点灯位置、点灯時の発光量等を制御する光源制御回路を含んで構成される。光源制御部122は、システムコントローラ102からの指令に従ってUV光源16の発光を制御する。
【0108】
プリント制御部130は、システムコントローラ102の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号(ドットデータ)を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成したドットデータをヘッドドライバ134に供給する制御部である。プリント制御部130において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ134を介して各色ヘッド50からのインクの吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0109】
プリント制御部130には画像バッファメモリ132が備えられており、プリント制御部130における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ132に一時的に格納される。なお、図9において画像バッファメモリ132はプリント制御部130に付随する態様で示されているが、画像メモリ104と兼用することも可能である。また、プリント制御部130とシステムコントローラ102とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0110】
ヘッドドライバ134はプリント制御部130から与えられるドットデータに基づいて各ヘッド50の吐出駆動用アクチュエータ58を駆動する。ヘッドドライバ134にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0111】
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース100を介して外部から入力され、画像メモリ104に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ104に記憶される。画像メモリ104に蓄えられた画像データは、システムコントローラ102を介してプリント制御部130に送られ、該プリント制御部130において既知のディザ法、誤差拡散法などの手法によりインク色ごとのドットデータに変換される。
【0112】
こうして、プリント制御部130で生成されたドットデータに基づいてヘッド50が駆動制御され、ヘッド50からインクが吐出される。メディア20の搬送速度に同期してヘッド50からのインク吐出を制御することにより、メディア20上に画像が形成される。
【0113】
ところで、電極ユニット28など外部から電界を印加された電気粘性流体(例えば、分散系)は、外部から加える応力τがある一定の値τy (降伏応力)を超えない限り流動しないという性質を持つ。また、この降伏応力τy の値は電気粘性流体の性能及び電気粘性流体への印加電界の強さにより決定される。つまり、この降伏応力τy の値を適切に設定することにより、メディア20着弾後のインク液滴の流動を停止させ、印刷品質の改善効果を得ることができる。
【0114】
例えば、インクの滲み、拡がりに関しては、
(インク−メディア間の毛細管力)<(インクの降伏応力τy )… [条件1]
の関係を満たすように降伏応力τy 設定する。
【0115】
また、同色及び異色のインク滴同士のメディア上での干渉、液の移動に関しては、
(インク滴同士の凝集力)<(インクの降伏応力τy )… [条件2]
の関係を満たすように降伏応力τy を設定する。
【0116】
更に、上述の [条件1] 及び [条件2] の両者を同時に満たすように降伏応力τy を設定し、それに対応する電界強度を印加することにより、インクの滲み、拡がり、同色及び異色のインク滴同士のメディア20上での干渉、液の移動を同時に回避することができる。
【0117】
次に、上記の如く構成されたインクジェット記録装置10の動作について説明する。図10は、着弾インクの挙動を示す説明図である。図10の左側に示したように、着弾インク88に電界を付与すると(電界ON)、電気粘性効果が発現して液の粘度が上昇し、略半球形状の液滴形状が保持される。この状態では、インクの滲み、拡がりが抑制されるとともに、同色或いは異色の隣接するインク滴同士のメディア20上での干渉、液の移動等が抑制される。
【0118】
その後、電界の印加を解除すると(電界OFF)、液の流動性が高まり、図10の右側に示したように、インク表面(印字面)が平滑化される。
【0119】
インクこのような状態で定着促進手段たるUV光源16(図1参照)から光を照射することにより、インク表面が平滑化された状態でインクを硬化・定着させることができる。平滑化に要する時間はインク量(インクの体積)に依存し、インク量が多いほど平滑化に要する時間は長くなる傾向にある。また、メディア種によってインクの浸透し易さ(メディア上におけるインク液滴の保持性)も異なる。したがって、本例のインクジェット記録装置10では、メディア20の種類とインクの種類、並びに打滴されるインクの量に応じて、電界OFFタイミングとUV光照射タイミングとの相対的関係を制御し、適切な平滑化状態を得ている。
【0120】
本発明は、図10のように、非浸透性媒体或いは低浸透性媒体を用いてインクをメディア表面上に残した状態で硬化・定着させるものについて特に有効な技術である。
【0121】
図11は、本実施形態に係るインクジェット記録装置10における電界OFFタイミング及びUV光照射タイミングの制御手順を示したフローチャートである。
【0122】
同図に示すとおり、まず、メディア種の判定処理を行う(ステップS10)。この判定方式には、例えば、メディア20の光学反射率検出等による自動検出、マガジン検出、ユーザインターフェースによるメニュー指定等が用いられる。
【0123】
ステップS10のメディア種判定結果に基づき、使用されるメディア20の種類に対応した判定値=Aを確定する(ステップS12)。インクジェット記録装置10内には、メディア種と判定値とを対応付けたメディア種テーブルのデータを格納した情報記憶手段(内部メモリ又は外部メモリ)を備えており、このメディア種テーブルを参照して判定値が決定される。
【0124】
その一方、メディア20上の所定領域内に打滴される液滴量の判定を行う(ステップS14)。この処理では、プリントすべき画像の画像データを解析して、所定の画像領域領域中に吐出されるインクの液滴量が判定される。「所定の画像領域」は、1画像内で設定される主走査方向の複数ライン分のエリアであってもよいし、1画像全体でもよい。
【0125】
ステップS14で求めた液滴量の判定結果に基づき、当該液滴量に対応した判定値=Bを確定する(ステップS16)。続いて、判定値=A,B並びに所定の係数α1 ,β1 を用いて電界OFFタイミング判定式(α1 ×A)+(β1 ×B)を計算する(ステップS20)。そして、ステップS24の判定式の結果に基づき、当該判定式結果に対応した電界OFFタイミングT1 を確定する(ステップS22)。判定式の計算結果と電界OFFタイミングT1 とを対応付けるテーブルは、装置内の情報記憶手段(内部メモリ又は外部メモリ)に格納されており、当該テーブルを参照して電界OFFタイミングT1 が確定される。
【0126】
また、ステップS12,S16で求めた判定値=A,B並びに係数α2 ,β2 を用いてUV光照射タイミング判定式(α2 ×A)+(β2 ×B)を計算する(ステップS30)。そして、ステップS30の判定式の結果に基づき、当該判定式結果に対応したUV光照射タイミングT2 を確定する(ステップS32)。判定式の計算結果とUV光照射タイミングT2 とを対応付けるテーブルは、装置内の情報記憶手段(内部メモリ又は外部メモリ)に格納されており、当該テーブルを参照してUV光照射タイミングT2 が確定される。
【0127】
こうしてステップS22,S32で得られた結果に基づいて、電極ユニット28の電界発生エリアを調整して、着弾インクに対する電界OFFタイミングT1 とUV光照射タイミングT2 とを制御する。
【0128】
図12は、1つの着弾インク滴に注目したときの電界のON/OFFタイミング(実線)と、UV光照射のON/OFFタイミング(破線)の例を示したタイミング図である。同図において、時刻t0 は着弾インク滴に電界が付与されるタイミング(電界ONタイミング)を示し、時刻t1 は電界が解除されるタイミグ(電界OFFタイミング)を示す。時刻t2 は、着弾インク滴にUV光が照射されるタイミング(UV光照射ONタイミング)を示す。
【0129】
すなわち、時刻t0 を基準として時間T1 のタイミングで電界がOFFされ、時間T2 のタイミングでUV光が照射される。図1で説明した電極ユニット28による電界発生エリアを可変することによって、図12における電界OFFタイミング(時刻t1 )が変更される。その結果、電界OFFタイミングとUV光照射ONタイミングとの相対的な関係(時間差)が変更される。
【0130】
具体的には、例えば下記に示す制御方法がある。
【0131】
(制御方法例1)濡れ性がよく浸透の速いメディアを使用する場合、又は打滴量(液滴量)が少ない場合、若しくはこれらの組み合わせの場合には、制御の傾向として、電界OFFタイミングを遅く(T1 を長く)し、UV光照射のタイミングを早く(T2 を短く)する。
【0132】
(制御方法例2)逆に、濡れ性が悪く浸透が遅いメディアを使用する場合、又は打滴量(液滴量)が多い場合、若しくはこれらの組み合わせの場合には、制御の傾向として、電界OFFタイミングを早くする(T1 を短く)し、UV光照射のタイミングを遅く(T2 を長く)する。
【0133】
なお、図12では、電界OFF後にUV光を照射する例が示されているが(T1 <T2 )、本発明の実施に際しては、電界ON期間中にUV光の照射を開始し、UV光の照射中に電界をOFFするという制御態様(T1 >T2 )もあり得る。
【0134】
上述の実施形態では、微導電性ベルト43の内側に電界発生エリアを制御可能な電極ユニット28を配置した構造例を述べたが、本発明の実施に際して、電界OFFタイミング及びUV光照射タイミングを調整する具体的な手段はこの例に限定されない。
【0135】
例えば、図1及び図7〜図8で説明した搬送部26に代えて、電界発生用の電極対を埋め込んだ無端状のベルトを用いる構成も可能である。この場合、例えば、ベルトの断面構造は図8と同様の構造とすることができる。また、ベルト内に埋設した電極対への電圧印加領域を可変する機構(例えば、直流高圧発生器78との導通範囲を可変する摺動接点構造)を設け、電圧印加領域を制御することで電界発生エリアを調整する。
【0136】
また、搬送部26については、ベルト搬送機構に代えて、メディアを保持するテーブルを搬送する構造(テーブル搬送機構)を用いることもできる。
【0137】
上記実施形態では、UV光照射位置を固定して電界発生エリア(すなわち、電界OFFの位置)を制御する構成を述べたが、本発明の実施に際しては、電界OFFタイミングとUV光照射タイミングとの相対的関係が制御できればよいため、電界発生エリアを固定してUV光照射位置を可変する構成も可能である。
【0138】
〔他の実施形態〕
図13は本発明の他の実施形態を示す構成図であり、図14はその要部ブロック図である。図13及び図14中、図1及び図9と同一又は類似の部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0139】
図13に示した例は、電極ユニット28が固定ゾーン(28A)のみの構成であり、電界発生エリアは変化しない。その一方で、UV光源16は、光源移動機構170によってメディア搬送方向に沿って移動可能に支持されている。
【0140】
UV光源16を移動させるための手段は、特に限定されないが、例えば、光源移動機構170は、UV光源16が固定される可動台172と、可動台172をメディア搬送方向に沿って走行させるガイド部材174と、可動台172を駆動するモータ(図中不図示、図14において符号176として記載)等を含んで構成される。
【0141】
図14に示したように、光源制御部122は、光源移動機構170の動力源たるモータ(例えば、ステッピングモータ)176を駆動するドライバを含み、システムコントローラ102の指令に基づいてUV光源16の位置(UV光照射位置)を制御する。
【0142】
図13においてUV光源16を印字部12に近づけるとUV光照射タイミングが早まり、逆にUV光源16を印字部12から遠ざけるとUV光照射タイミングが遅くなる。このように、UV光源16の位置を変えることによって、電界OFFタイミングとUV光照射タイミングとの相対的な関係を調整することができる。図11で説明したフローチャートに従い、メディア種やインク種並びにインク量に応じて電界OFFタイミング(T1 )とUV光照射タイミング(T2 )が決定され、その決定に基づいてUV光源16の位置が制御される。なお、UV光源16の可動範囲を電極ユニット28による電界発生範囲の一部とオーバーラップさせることによって、UV光照射タイミングを電界OFFタイミングよりも早めることが可能となる。
【0143】
また、図1及び図7〜図9で説明した電界発生エリアを制御する構成と、図13及び図14で説明したUV光照射位置を制御する構成とを組み合わせる態様も可能である。電界発生エリアとUV光照射位置とを両方制御することによって、一層細かな条件を実現することが可能となり、電界の印加及びUV光照射の条件の最適化を図ることができる。
【0144】
上述の説明では、紫外線硬化型インクを使用する例を述べたが、本発明の実施に際しては、紫外線硬化型インクに代表される光硬化型インクに限らず、電子線、X線などによって硬化する他の放射線硬化型インクを用いることが可能であり、使用されるインクに応じてその硬化剤を活性化させる(重合を活性化させる)のに適した放射線発生源を用いた定着促進処理部が設けられる。
【0145】
また、上記各実施形態では、メディア(記録媒体)の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッドを用いたインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、短尺の記録ヘッドを往復移動させながら画像記録を行うシャトルヘッドを用いるインクジェット記録装置についても本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示すインクジェット記録装置の全体構成図
【図2】ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図3】フルライン型インクジェットヘッドの他の構成例を示す平面透視図
【図4】液滴吐出素子(各ノズルに対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図
【図5】図2に示したヘッドのノズル配列を示す拡大図
【図6】本例のインクジェット記録装置におけるインク供給系の構成を示した概要図
【図7】電極ユニットの電極配置構造の一例を示す平面模式図
【図8】図7中の8−8線に沿う断面図
【図9】本例のインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図10】着弾インクの挙動を示す説明図
【図11】電界OFFタイミングとUV光照射タイミングの制御アルゴリズム例を示したフローチャート
【図12】1つの着弾インク液滴に注目したときの電界のON/OFFタイミング(実線)とUV光照射のON/OFFタイミング(破線)の例を示したタイミング図
【図13】本発明の他の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図14】図13に示したインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【符号の説明】
【0147】
10…インクジェット記録装置(画像形成装置に相当)、12K,12M,12C,12Y…ヘッド(吐出ヘッドに相当)、14…インク貯蔵/装填部、16…UV光源(定着促進手段に相当)、20…メディア(記録媒体に相当)、22…メディア供給部、26…搬送部、28…電極ユニット(電界付与手段に相当)、28A…第1の電極領域、28B…第2の電極領域、28C…第3の電極領域、28D…第4の電極領域、32…マガジン、43…微導電性ベルト(電界付与手段に相当)、50…ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、58…アクチュエータ、72…正電極、72-1〜72-4…正電極パターン、74…負電極、74-1〜74-4…負電極パターン、78…直流高圧発生器、102…システムコントローラ(タイミング制御手段、電界強度制御手段、定着強度制御手段に相当)、108…メディア種検出部、110…インク量判定部、120…電界制御部(タイミング制御手段、電界強度制御手段に相当)、122…光源制御部(タイミング制御手段、定着強度制御手段に相当)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気粘性効果を有するインクを記録媒体に向けて吐出する吐出ヘッドと、
前記記録媒体上に着弾した液滴状のインクに電界を付与する電界付与手段と、
前記記録媒体上のインクの定着を促進する処理を行う定着促進手段と、
前記記録媒体上のインクに対する前記電界付与手段による電界の印加を解除するタイミングと前記定着促進手段による処理のタイミングとの時間差を制御するタイミング制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記録媒体の種類を検出する記録媒体種検出手段を備え、
前記タイミング制御手段は、前記記録媒体種検出手段で得た情報に基づいて、前記電界付与手段による電界の印加解除タイミング及び前記定着促進手段による処理タイミングを決定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
描画すべき画像の画像情報からインク量を判定するインク量判定手段を備え、
前記タイミング制御手段は、前記インク量判定手段で判定したインク量に基づいて、前記電界付与手段による電界の印加解除タイミング及び前記定着促進手段による処理タイミングを決定することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記インクは放射線硬化型インクであり、前記定着促進手段は、当該インクを硬化させる放射線を照射する放射線照射手段を含んで構成されることを特徴とする請求項1、2又は3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記吐出ヘッド及び記録媒体のうち少なくとも一方を一定の方向に搬送して前記吐出ヘッドと前記記録媒体を相対移動させる搬送手段を備え、
前記電界付与手段は、前記相対移動の方向に沿って並ぶように複数の電極領域に分割され、各電極領域に第1の電極及び第2の電極から成る電極対が配置された構造を有し、
前記タイミング制御手段は、前記各電極領域の電極対への電圧の印加/非印加を制御することで電界の発生領域を可変することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記録媒体に着弾した液滴上のインクが所定の粘度となるように電界強度を制御する電界強度制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記定着促進手段による処理の強度を制御する定着強度制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記電界付与手段は、前記記録媒体を静電吸着によって保持する静電吸着手段として機能することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項9】
電気粘性効果を有するインクを吐出ヘッドから記録媒体に向けて吐出するインク吐出工程と、
前記記録媒体上に着弾した液滴状のインクに電界を付与する電界付与工程と、
前記記録媒体上のインクの定着を促進する処理を行う定着促進工程と、
前記記録媒体上のインクに対する前記電界付与工程による電界の印加を解除するタイミングと前記定着促進工程による処理のタイミングとの時間差を制御するタイミング制御工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−88474(P2006−88474A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275852(P2004−275852)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】