説明

画像形成装置用の円筒状部材、画像形成装置用の円筒状部材の製造方法、円筒状部材張架装置、および画像形成装置

【課題】得られる画像における白抜けやトナーの飛び散りを抑制した画像形成装置用の円筒状部材を提供する。
【解決手段】少なくともポリアミドイミド樹脂および導電性材料を含有し、且つ内周面側の表面抵抗率(N)の外周面側の表面抵抗率(G)に対する比率(N/G)が1.0以上1.2以下である画像形成装置用の円筒状部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置用の円筒状部材、画像形成装置用の円筒状部材の製造方法、円筒状部材張架装置、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電複写方式を用いた画像形成装置は、光導電性感光体からなる像保持体上に電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像とする。
例えば、上記トナー像を中間転写体を介して静電的に転写することにより画像を得る場合の画像形成装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記の中間転写体方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写体材料としては、ポリアミドイミド樹脂を用いたものが提案されている。例えば、外周面側の表面抵抗率に対して、内周面側の表面抵抗率が0.1倍以上0.9倍以下の範囲である、芳香族ポリアミドイミドを用いた無端円筒状半導電性ポリアミドイミドフィルムが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−206567号公報
【特許文献2】特許第3218199号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、比率(N/G)が1.0未満または1.2を超える場合に比べ、得られる画像における白抜けやトナーの飛び散りを抑制した円筒状部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、
少なくともポリアミドイミド樹脂および導電性材料を含有し、
且つ内周面側の表面抵抗率(N)の外周面側の表面抵抗率(G)に対する比率(N/G)が1.0以上1.2以下である画像形成装置用の円筒状部材である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
外周面側における導電性材料領域の厚さが1.5μm以上3μm以下である請求項1に記載の画像形成装置用の円筒状部材である。
【0008】
請求項3に係る発明は、
少なくともポリアミドイミド樹脂、導電性材料および溶媒を含有する樹脂組成物を、芯材の外周面側に15℃以上35℃以下の温度にて塗布し、塗布膜を形成する塗布工程と、
前記塗布膜を乾燥させて乾燥膜を得る乾燥工程と
前記乾燥膜に対し、2段階以上に分けて段階的に昇温して加熱し、最初の段階における加熱の温度が、前記樹脂組成物に含まれる主溶媒の示唆熱走査型熱分析を用いた熱量変化測定に見られるピーク温度よりも低く、最後の段階における加熱の温度が、前記ピーク温度よりも高い加熱工程と、
を有する画像形成装置用の円筒状部材の製造方法である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置用の円筒状部材と、
前記円筒状部材を内周面側から回転自在に張架する複数の張架部材と、
を備える円筒状部材張架装置である。
【0010】
請求項5に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置用の円筒状部材を用いてなる中間転写用円筒状部材と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用円筒状部材に転写する一次転写装置と、
前記中間転写用円筒状部材に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、
を備える画像形成装置である。
【0011】
請求項6
に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置用の円筒状部材を用いてなる記録媒体搬送用円筒状部材と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記記録媒体搬送用円筒状部材によって搬送される記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、比率(N/G)が1.0未満または1.2を超える場合に比べ、得られる画像における白抜けやトナーの飛び散りが抑制される。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、導電性材料領域の厚さが1.5μm未満または3μmを超える場合に比べ、得られる画像における白抜けやトナーの飛び散りが抑制される。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、加熱工程における最初の段階の加熱の温度が主溶媒の熱量変化測定に見られるピーク温度以上である場合に比べ、得られる画像における白抜けやトナーの飛び散りが抑制される円筒状部材が容易に製造される。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、比率(N/G)が1.0未満または1.2を超える円筒状部材を備えない場合に比べ、得られる画像における白抜けやトナーの飛び散りが抑制される。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、比率(N/G)が1.0未満または1.2を超える円筒状部材を備えない場合に比べ、白抜けやトナーの飛び散りが抑制された画像が形成される。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、比率(N/G)が1.0未満または1.2を超える円筒状部材を備えない場合に比べ、白抜けやトナーの飛び散りが抑制された画像が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】顕微鏡によって撮影した本実施形態に係る円筒状部材の膜全体の断面画像と、内周面側の界面の拡大画像および外周面側の界面の拡大画像である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0020】
<円筒状部材>
本実施形態に係る画像形成装置用の円筒状部材は、少なくともポリアミドイミド樹脂および導電性材料を含有し、且つ内周面側の表面抵抗率(N)の外周面側の表面抵抗率(G)に対する比率(N/G)が1.0以上1.2以下であることを特徴とする。
【0021】
内周面側の表面抵抗率(N)の外周面側の表面抵抗率(G)に対する比率(N/G)が1.0未満である円筒状部材を画像形成装置に適用した場合、内周面側の表面抵抗率が低いためにニップ領域(例えば像保持体としての感光体と円筒状部材とが接触する領域)以外にも電流が流れ、その結果得られる画像にはトナーの飛び散りや線の中抜けといった画質不良が発生する。一方、比率(N/G)が1.2を超える場合、内周面側の表面抵抗率が高いためにニップ領域に電流が流れず、その結果得られる画像には白抜けや放電による画質不良が発生する。
これに対し、上記比率(N/G)が1.0以上1.2以下である本実施形態に係る円筒状部材を用いることにより、得られる画像における白抜けやトナーの飛び散りが抑制される。
【0022】
ここで、上記「導電性材料領域」とは、ポリアミドイミド樹脂、導電性材料および溶媒を含有する樹脂組成物を塗布した塗布層を乾燥し、さらに加熱することによって、外周面側の表面において溶剤が蒸発し、溶剤に溶解しないカーボンブラック等の導電性材料が該外周面側に析出することによって形成される領域をさす。即ち、外周面側において導電性材料が析出し、導電性材料が高濃度に存在する領域を表す。
尚、図1に、顕微鏡によって撮影した本実施形態に係る円筒状部材の膜全体の断面画像と、内周面側の界面の拡大画像および外周面側の界面の拡大画像を示す。図1に示すごとく、外周面側の界面には導電性材料が析出した導電性材料領域が形成されていることが確認される。
【0023】
−達成方法−
上記比率(N/G)の調整は、円筒状部材の外周面側に形成される導電性材料領域の厚さの制御によって成し得ることを、本発明者らは見出した。また、上記導電性材料領域の厚さが、加熱工程(焼成工程)を2段階以上に分けて段階的に昇温を行い、且つ最初の段階における加熱の温度を制御することによって成し得ることを見出した。
具体的には、最初の段階における加熱の温度を、前記樹脂組成物に含まれる主溶媒(溶媒として最も多く含有される溶媒(質量比))の揮発のピーク温度よりも低い温度で加熱することにより、外周面側の表面での乾燥が遅くなるために導電性材料が析出し導電性材料領域が厚くなり、その結果外周面側の表面抵抗率が高くなる。これにより、上記比率(N/G)が1.0以上1.2以下に調整される。
尚、従来においては、加熱工程(焼成工程)では溶媒を効率的に蒸発させるために加熱の温度を前記ピーク温度よりも高く設定することが常識であった。
【0024】
また、上記比率(N/G)の調整は、上述の加熱工程における最初の段階における温度の制御に加え、円筒状部材に添加される導電性材料の種類の選択や、導電性材料の添加量によっても行われる。
【0025】
−測定方法−
・熱量変化
樹脂組成物に含まれる主溶媒(溶媒として最も多く含有される溶媒(質量比))の示唆熱走査型熱分析を用いた熱量変化測定に見られるピーク温度の測定は、熱分析装置(島津製作所社製:DSC60)を用いて10℃/分の速度でポリアミドイミドワニスを加熱することによって分析される。
【0026】
・導電性材料領域の厚さ
あらかじめ、円筒状部材を樹脂に包埋した後、ミクロトームで包埋した樹脂ごと円筒状部材を切り出す。切り出した試料の断面に導電性の両面テープを貼りつけた後、静電除去した試料を準備する。該試料の表面に−4.0Vの測定電圧をかけながら、大気中で10×10μmの範囲を512×512の分解能でコンダクティングAFM測定(Digital Instruments製、NanoscopeIIIa+D3100)を行う。この際、プローブと導電性の両面テープに0.7pA以上流れる点を導電場所とし、この導電場所の表面からの距離を測定し、平均値を導電性材料領域の厚さとする。
【0027】
・表面抵抗率
円筒状部材の表面抵抗率(および後述の体積抵抗率)は、22℃、55%RHの環境下で、二重円筒式プローブ((株)ダイアインスツルメンツ製ハイレスターUPの「HRプローブ」)を用いて測定される。測定条件は、荷重2.0kg、装置の内円筒への印加電圧100V、チャージ時間10秒とする。表面抵抗率は絶縁板上にて上記プローブを用いて内円筒(外径16mm)と外円筒(内径30mm)の間を流れる電流量により計算される。一方、体積抵抗率の測定は、上記プローブを用いJIS−K6911(1995)に準拠して測定される。
本明細書に記載の数値は、上記方法によって測定したものである。
【0028】
−円筒状部材の組成−
次いで、本実施形態に係る円筒状部材の組成について説明する。
【0029】
(1)ポリアミドイミド樹脂
ポリアミドイミド樹脂は、分子中にイミド基とアミド基を有する樹脂であり、一般的に知られている構造のものが使用される。ポリアミドイミド樹脂の合成方法としては、酸クロライド法やイソシアネート法等が知られており、いずれも使用される。特にイソシアネート法が望ましい。
イソシアネート法は、無水カルボン酸化合物と、ジイソシアネート化合物とを反応させる方法であり、酸クロライド法は、カルボン酸クロライド化合物と、ジアミン化合物とを反応させる方法である。以降、前記無水カルボン酸化合物および前記カルボン酸クロライド化合物を「カルボン酸成分」と称する場合がある。
【0030】
前記無水カルボン酸化合物としては、トリメリット酸無水物またはその誘導体が望ましい。また、該トリメリット酸無水物またはその誘導体のほかに、イソシアネート基またはアミノ基と反応する無水カルボン酸化合物(例えば、ジカルボン酸無水物、テトラカルボン酸無水物など)を併用してもよい。
【0031】
前記ジイソシアネート化合物は、下記一般式(1)で示される化合物である。
O=C=N−R−N=C=O 一般式(1)
(一般式(1)中、Rは、2価の芳香族基または脂肪族基を表す。)
【0032】
ジイソシアネート化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。これらジイソシアネート化合物は、1種類を単独で、或いは2種以上の化合物を併用してもよい。
【0033】
【化1】



【0034】
前記カルボン酸クロライド化合物としては、トリメリット酸クロライドまたはその誘導体の塩化物が挙げられる。トリメリット酸クロライドまたはその誘導体の塩化物のほかに、ジカルボン酸クロライド、テトラカルボン酸クロライドなどを用いてもよく、またこれらを2種以上併用してもよい。
【0035】
前記ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられ、これらの中では4,4’−ジアミノジフェニルメタン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等が望ましい。
【0036】
イソシアネート化合物またはジアミン化合物と、カルボン酸成分との配合割合は、該酸成分のカルボキシル基および酸無水物基の総モル数に対するイソシアネート基またはアミノ基の総モル数比が、0.6以上1.4以下となるようにすることが望ましく、0.7以上1.3以下となるようにすることがより望ましく、0.8以上1.2以下となるようにすることが特に望ましい。
【0037】
イソシアネート法によるポリアミドイミド樹脂の製造方法としては、具体的には次の方法が挙げられる。
【0038】
1) イソシアネート成分とトリカルボン酸成分とを一度に使用し、反応させてポリアミドイミド樹脂を得る方法。
2) イソシアネート成分の過剰量と酸成分を反応させて末端にイソシアネート基を有するアミドイミドオリゴマーを合成した後、トリカルボン酸成分を追加し反応させてポリアミドイミド樹脂を得る方法。
3) トリカルボン酸成分の過剰量とイソシアネート成分を反応させて末端にカルボン酸または酸無水物基を有するアミドイミドオリゴマー合成した後、該酸成分とイソシアネート成分を追加し反応させてポリアミドイミド樹脂を得る方法。
【0039】
ポリアミドイミド樹脂の製造方法では、アミド化反応とイミド化反応とを共に行なってもよいし、アミド化反応終了後にイミド化反応させる方法でもよい。
【0040】
このようにして得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、20,000以上50,000以下とすることが望ましく、30,000以上40,000以下とすることがより望ましい。
【0041】
(2)導電性材料
導電性材料とは、本実施形態に係る円筒状部材に導電性を付与し得る材料を表し、即ち上記円筒状部材の内周面、外周面の表面抵抗率を1013以下に制御し得る材料を指す。
上記導電性材料としては、例えばカーボンブラック、または導電性高分子材料等が挙げられる。
【0042】
上記カーボンブラックとしては、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等の一般的なカーボンブラックが用いられる。より具体的には、三菱化学製の#3350B、#30、#3030B、東海カーボン製の#5500、電気化学(株)製の粒状アセチレンブラック、旭カーボン(株)製のHS−500、アサヒサーマルFT、アサヒサーマルMT、ライオンアグゾ(株)製のケッチェンブラック、キャボット(株)製のバルカンXC−72、キャボット社の「REGAL 400R」、「MONARCH 1300」、Degussa社の「Color Black FW200」、「SPECIAL BLACK 4」、「PRINTEX150T」、「PRINTEX140T」、「PRINTEX U」等が挙げられる。
これらの中でも、チャンネルブラックや酸化処理したカーボンブラックを用いることが望ましい。カーボンブラックは、1種類でなく複数種類配合してもよい。
【0043】
また、上記導電性高分子材料としては、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等が挙げられる。尚、上記導電性材料は単独で用いても混合して用いてもよい。
【0044】
本実施形態に用いられる導電性材料の添加量は、前記樹脂組成物の全固形分100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下が望ましく、15質量部以上40質量部以下が更に望ましい。
【0045】
導電性材料をポリアミドイミド樹脂中に分散する方法としては、セラミックビーズやボールといったメディアの衝突力を利用して粉砕するメディアミル、高圧で微小オリフィスを通過させ高せん断力をかけるとともに衝突させた際の衝撃力を利用する湿式ジェットミルやホモジナイザといった一般的に用いられる分散方法が用いられる。
【0046】
(3)その他の添加剤
本実施形態に係る円筒状部材には、上記のほかにも、樹脂の熱劣化を防止するための酸化防止剤や、流動性を向上させるための界面活性剤等、画像形成装置の円筒状部材として用いられるどの添加剤を用いてもよい。
【0047】
−円筒状部材の製造方法−
次に、本実施形態に係る円筒状部材の製造方法について説明する。
本実施形態に係る円筒状部材の製造方法は、少なくともポリアミドイミド樹脂、導電性材料および溶媒を含有する樹脂組成物を、芯材の外周面側に15℃以上35℃以下の温度にて塗布し、塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜を乾燥させて乾燥膜を得る乾燥工程と前記乾燥膜に対し、2段階以上に分けて段階的に昇温して加熱し、最初の段階における加熱の温度が、前記樹脂組成物に含まれる主溶媒の示唆熱走査型熱分析を用いた熱量変化測定に見られるピーク温度よりも低く、最後の段階における加熱の温度が、前記ピーク温度よりも高い加熱工程と、を有することを特徴とし、更に形成された円筒状部材を前記芯材から剥離する剥離工程を有する。
【0048】
(a)塗布工程
まず、塗布工程では、少なくともポリアミドイミド樹脂、導電性材料および溶媒を含有する樹脂組成物(ポリアミドイミド樹脂溶液)を調製する。
樹脂組成物としては、ポリアミドイミド樹脂が非プロトン系極性溶媒に溶解した溶液を調製する。ポリアミドイミド樹脂としては、前記列記した種々の組み合せのものが用いられる。また、ポリアミドイミド樹脂は、酸とアミンとを混合したポリアミドイミド樹脂前駆体、酸とアミンまたはイソシアネートを混合して樹脂組成物作製中あるいは塗布膜形成中に共重合してもよい。また、ポリアミドイミド樹脂を2種以上混合して用いてもよい。
【0049】
上記非プロトン系極性溶媒としては、例えば、n−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジグライム等が挙げられる。
【0050】
ポリアミドイミド樹脂は上述の溶媒に溶解することで、樹脂組成物として調製される。なお、この調製の際におけるポリアミドイミド前駆体またはポリアミドイミド樹脂の混合比、濃度、粘度等の選択は、調整して行われる。
【0051】
次に、芯材の外周面に前記樹脂組成物を塗布する。該塗布は、15℃以上35℃以下の温度にて行うことが望ましく、更には20℃以上30℃以下の温度にて行うことがより望ましい。
【0052】
尚、芯材としては、アルミニウムやステンレスが望ましく用いられ、特にステンレスを用いることが望ましい。また、形成された円筒状部材の芯材表面からの剥離を良好に行うため、芯材の表面には離型性が付与されていてもよい。離型性を付与するためには、芯材表面をクロムやニッケルでメッキしたり、フッ素系樹脂やシリコーン樹脂で表面を被覆したり、あるいは表面に離型剤を塗布することが有効である。
【0053】
芯材表面に樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、樹脂組成物をノズルから吐出させながら、回転する芯材を回転軸方向に移動させることによって、芯材の外周面に樹脂組成物を塗布する方法や、芯材を樹脂組成物に浸漬して引き上げる浸漬塗布法等が挙げられる。
【0054】
(b)乾燥工程
本実施形態に係る円筒状部材の製造方法では、前記塗布工程の後、形成した塗布膜を乾燥させる乾燥工程を行う。尚、乾燥工程とは、芯材表面に塗布された樹脂組成物の塗布膜の流動性を失わせることを目的として加熱が施される工程である。
前述のようにして芯材表面に形成された樹脂組成物による塗布膜を、芯材を回転させながら加熱して溶媒を蒸発させ、回転させなくても溶液が垂れ流れない状態にまで乾燥し、乾燥膜を形成する。前記乾燥膜中の残留溶媒量は、乾燥膜の全質量に対して50質量%以下であることが望ましく、40質量%以下であることがより望ましい。
尚、前記乾燥工程における乾燥条件としては、前記樹脂組成物に含まれる主溶媒の示唆熱走査型熱分析を用いた熱量変化測定に見られるピーク温度よりも低い温度であって、且つ80℃以上180℃以下の範囲の温度で10分間以上60分間以下とすることが望ましく、更に120℃以上150℃以下の範囲の温度で15分間以上30分間以下とすることがより望ましい。
【0055】
(c)加熱工程
本実施形態に係る円筒状部材の製造方法では、前記乾燥工程の後、形成した乾燥膜を更に高い温度で加熱する加熱工程(焼成工程)を行う。
更に高い温度で加熱することにより、ポリアミドイミド樹脂による乾燥膜では更に溶媒を揮発させ、またイミド転化を生じさせ、ポリアミドイミド樹脂を含んでなる樹脂皮膜を形成する。
【0056】
尚、本実施形態に係る円筒状部材の製造方法においては、上記加熱工程(焼成工程)を2段階以上に分けて段階的に昇温して加熱し、最初の段階における加熱の温度が、前記樹脂組成物に含まれる主溶媒の示唆熱走査型熱分析を用いた熱量変化測定に見られるピーク温度よりも低く、最後の段階における加熱の温度が、前記ピーク温度よりも高く設定されることが望ましい。当該方法によって円筒状部材を製造することにより、導電性材料領域の厚さが前述の範囲に調整される。
尚、「段階的に昇温して加熱」するとは、昇温して求められる温度に達した後その温度を定められた時間保ったまま加熱する操作を1つの段階とし、この段階を複数回施すことを表す。
【0057】
ここで例えば、4段階に分けて加熱を行う方法を一例にとって説明する。尚、用いる樹脂組成物は前記ピーク温度が150℃の主溶媒を含むものとする。まず、第一段階の温度130℃まで昇温して20分保持し、次いで第二段階の温度175℃まで昇温して20分保持し、更に第三段階の温度220℃まで昇温して20分保持し、最後に第四段階の温度250℃まで昇温して20分保持し、溶媒の除去を行って加熱工程が施される。上記のごとく段階的に昇温して加熱することにより、加熱工程を行うことが望ましい。
尚、ここでの加熱温度は、加熱装置の設定温度をさし、例えば加熱炉によって加熱を行う場合であれば該加熱炉の設定温度をさす。
【0058】
また、前記加熱工程の加熱条件としては、2段階以上に分けて昇温する内の少なくとも1つの段階における温度が、ポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも高いことが望ましく、該Tgよりも10℃以上50℃以下高い温度で加熱することがより望ましい。
【0059】
上記加熱工程での総加熱時間(最初の段階における昇温を開始する時から最後の段階での加熱を終了する時までの時間)は、20分間以上120分間以下とすることが望ましく、40分間以上90分間以下とすることがより望ましい。
【0060】
また、本実施形態に係る円筒状部材においては、上記塗布工程、乾燥工程、加熱工程を行った後、更に組成の異なる樹脂組成物を用いて塗布工程、乾燥工程、加熱工程を1回あるいは複数回行い、複数の層を積層した円筒状部材としてもよい。
【0061】
(d)剥離工程
このようにして得られた円筒状部材を、芯材と円筒状部材との間隙に空気を吹き込む等の公知の方法によって剥離する剥離工程を経ることによって、本実施形態に係る円筒状部材が製造される。
円筒状部材の厚さは0.05mm以上0.2mm以下であることが望ましく、0.06mm以上0.12mm以下であることが更に望ましい。
【0062】
なお、本実施形態に係る円筒状部材の製造方法は前記方法に限定されるものではなく、他の公知の方法によって形成してもよい。
【0063】
−円筒状部材の物性−
本実施形態に係る円筒状部材の表面抵抗率は、内周面側および外周面側共に、1×10Ω/□以上1×1013Ω/□以下であることが望ましく、1×10Ω/□以上1×1012Ω/□以下であることがより望ましい。
【0064】
また、本実施形態に係る円筒状部材の体積抵抗率は、10Ω・cm以上1012Ω・cm以下が望ましく、10Ω・cm以上1011Ω・cm以下がより望ましい。
【0065】
本実施形態に係る円筒状部材は、表面抵抗率のバラツキが少ないことが望ましい。表面抵抗率のバラツキ幅として、円筒状部材内の表面抵抗率の最大値を最小値で割った値の対数値は、1.0以内であることが望ましく、0.6以内であることがより望ましく、0.3以内であることが更に望ましい。
【0066】
本実施形態に係る円筒状部材は、ベルト状であっても、該ベルト状の円筒状部材を円筒状基体の表面に被覆したドラム状であってもよい。
【0067】
<画像形成装置>
上記本実施形態に係る円筒状部材は、電子写真方式の画像形成装置用の円筒状部材として好適に用いられ、特に中間転写用円筒状部材または記録媒体搬送用円筒状部材として好適に用いられる。即ち、上記本実施形態に係る円筒状部材を適用した望ましい画像形成装置の態様としては、以下の2態様が挙げられる。
【0068】
像保持体と、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、本実施形態に係る円筒状部材を用いてなる中間転写用円筒状部材と、前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用円筒状部材に転写する一次転写装置と、前記中間転写用円筒状部材に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、前記記録媒体上のトナー像を定着する定着装置と、を備える画像形成装置。
尚、円筒状部材を中間転写用円筒状部材として用いる場合には、該円筒状部材は表面抵抗率1×10Ω/□以上1×1012Ω/□以下の抵抗率を持つことが望ましい。
【0069】
像保持体と、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、本実施形態に係る円筒状部材を用いてなる記録媒体搬送用円筒状部材と、前記像保持体上の前記トナー像を前記記録媒体搬送用円筒状部材によって搬送される記録媒体に転写する転写装置と、前記記録媒体上のトナー像を定着する定着装置と、を備える画像形成装置。
尚、円筒状部材を記録媒体搬送用円筒状部材として用いる場合には、該円筒状部材は表面抵抗率1×10Ω/□以上1×1012Ω/□以下の抵抗率を持つことが望ましい。
【0070】
以下においては、本実施形態に係る円筒状部材を中間転写用円筒状部材(中間転写ベルト)として用いた実施形態について、図面を参照して説明する。
【0071】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の構成の一例(一実施形態)を示す概略図である。本実施形態に係る画像形成装置100は、いわゆるタンデム方式であり、電子写真感光体からなる4つの像保持体101a乃至101dの周囲に、その回転方向に沿って順次、帯電装置102a乃至102d、露光装置114a乃至114d、現像装置103a乃至103d、一次転写装置(一次転写ロール)105a乃至105d、像保持体クリーニング装置104a乃至104dが配置されている。尚、転写後の像保持体101a乃至101dの表面に残留している残留電位を除去するために除電器を備えていてもよい。
【0072】
また、中間転写ベルト107が、張架ロール106a乃至106d、駆動ロール111および対向ロール108に張架され、円筒状部材張架装置(ベルト張架装置)107bを形成している。これらの張架ロール106a乃至106d、駆動ロール111および対向ロール108により、中間転写ベルト107は、各像保持体101a乃至101dの表面に接触しながら各像保持体101a乃至101dと一次転写ロール105a乃至105dとを矢印Aの方向に移動し得る。一次転写ロール105a乃至105dが中間転写ベルト107を介して像保持体101a乃至101dに接触する部位が一次転写部となり、像保持体101a乃至101dと一次転写ロール105a乃至105dとの接触部には一次転写電圧が印加される。
【0073】
また、二次転写装置として、中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介して対向ロール108と二次転写ロール109が対向配置されている。紙等の記録媒体115が中間転写ベルト107の表面に接触しながら中間転写ベルト107と二次転写ロール109とで挟まれる領域を矢印Bの方向に移動し、その後、定着装置110を通過する。二次転写ロール109が中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介して対向ロール108に接触する部位が二次転写部となり、二次転写ロール109と対向ロール108との接触部には二次転写電圧が印加される。更に、転写後の中間転写ベルト107と接触するように、中間転写ベルトクリーニング装置112および113が配置されている。
【0074】
この構成の多色画像形成装置100では、像保持体101aが矢印Cの方向に回転するとともに、その表面が帯電装置102aによって帯電された後、レーザー光等の露光装置114aにより第1色目の静電潜像が形成される。形成された静電潜像はその色に対応するトナーを収容した現像装置103aにより、トナーで現像(顕像化)されてトナー像が形成される。なお、現像装置103a乃至103dには、各色の静電潜像に対応するトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)がそれぞれ収容されている。
【0075】
像保持体101a上に形成されたトナー像は、一次転写部を通過する際に、一次転写ロール105aによって中間転写ベルト107上に静電的に転写(一次転写)される。以降、第1色目のトナー像を保持した中間転写ベルト107上に、一次転写ロール105b乃至105dによって、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ね合わせられるよう一次転写され、最終的に多色の多重トナー像が得られる。
【0076】
中間転写ベルト107上に形成された多重トナー像は、二次転写部を通過する際に、記録媒体115に静電的に一括転写される。トナー像が転写された記録媒体115は、定着装置110に搬送され、加熱および/または加圧により定着処理された後、機外に排出される。
【0077】
一次転写後の像保持体101a乃至101dは、像保持体クリーニング装置104a乃至104dにより残留トナーが除去される。一方、二次転写後の中間転写ベルト107は、中間転写ベルトクリーニング装置112および113により残留トナーが除去され、次の画像形成プロセスに備える。
【0078】
〔像保持体〕
像保持体101a乃至101dとしては、公知の電子写真感光体が広く適用される。電子写真感光体としては、感光層が無機材料で構成される無機感光体や、感光層が有機材料で構成される有機感光体などが用いられる。有機感光体においては、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型有機感光体や、電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能を果たす単層型有機感光体が好適に用いられる。また、無機感光体においては、感光層がアモルファスシリコンにより構成されているものが、好適に用いられる。
【0079】
また、像保持体の形状には特に限定はなく、例えば、円筒ドラム状、シート状またはプレート状等、公知の形状が採用される。
【0080】
〔帯電装置〕
帯電装置102a乃至102dとしては、特に制限はなく、例えば、導電性(ここで、帯電装置における「導電性」とは例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する。)または半導電性(ここで、帯電装置における「半導電性」とは例えば体積抵抗率が10乃至1013Ωcmを意味する。)のローラ、ブラシ、フィルム、またはゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器など、公知の帯電器が広く適用される。これらの中でも接触型帯電器が望ましい。
【0081】
帯電装置102a乃至102dは、像保持体101a乃至101dに対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流を更に重畳させて印加してもよい。
【0082】
〔露光装置〕
露光装置114a乃至114dとしては、特に制限はなく、例えば、像保持体101a乃至101dの表面に、半導体レーザー光、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)光、または液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して定められた像様に露光し得る光学系機器など、公知の露光装置が広く適用される。
【0083】
〔現像装置〕
現像装置103a乃至103dとしては、目的に応じて選択され。例えば、一成分系現像剤または二成分系現像剤をブラシ、またはローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器などが挙げられる。
【0084】
本実施形態の画像形成装置100に用いるトナー(現像剤)は特に限定されず、例えば、結着樹脂と着色剤を含んで構成される。
【0085】
結着樹脂としては、スチレン類、モノオレフィン類、ビニルエステル類、α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルエーテル類、またはビニルケトン類等の単独重合体および共重合体が例示され、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、またはポリプロピレン等が挙げられる。更に、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、またはパラフィンワックス等も挙げられる。
【0086】
着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、またはC.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして挙げられる。
【0087】
トナーには、帯電制御剤、離型剤、他の無機粒子等の公知の添加剤を内添加処理や外添加処理してもよい。
【0088】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、またはキャンデリラワックス等を代表的なものとして挙げられる。
【0089】
帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、または極性基を含有するレジンタイプ等の帯電制御剤が用いられる。
【0090】
他の無機粒子としては、粉体流動性、帯電制御等の目的で、平均1次粒径が40nm以下の小径無機粒子を用い、更に、付着力低減の為、それより大径の無機或いは有機粒子を併用してもよい。これらの他の無機粒子は公知のものが使用される。
また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性をあげる効果が大きくなるため有効である。
【0091】
トナーの製造方法としては、高い形状制御性を得られることから、乳化重合凝集法や溶解懸濁法等などの重合法が望ましく用いられる。また、これらの方法で得られたトナーをコアにして、更に凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法を行ってもよい。
【0092】
なお、外添剤を添加する場合、トナーおよび外添剤をヘンシェルミキサー或いはVブレンダー等で混合することによって製造し得る。また、トナーを湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0093】
〔一次転写ロール〕
一次転写ロール105a乃至105dは単層或いは多層のいずれでもよい。例えば、単層構造の場合は、発泡または無発泡のシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。
【0094】
〔像保持体クリーニング装置〕
像保持体クリーニング装置104a乃至104dは、一次転写工程後の像保持体101a乃至101dの表面に付着する残存トナーを除去するためのものであり、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等が用いられる。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【0095】
〔二次転写ロール〕
二次転写ロール109の層構造は、特に限定されるものではないが、例えば、三層構造の場合、コア層と中間層とその表面を被覆するコーティング層により構成される。コア層は導電性粒子を分散したシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等の発泡体で、中間層はこれらの無発泡体で構成される。コーティング層の材料としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、またはパーフルオロアルコキシ樹脂などが挙げられる。二次転写ロール109の体積抵抗率は10Ωcm以下であることが望ましい。また、中間層を除いた2層構造としてもよい。
【0096】
〔対向ロール〕
対向ロール108は、二次転写ロール109の対向電極を形成する。対向ロール108の層構造は、単層或いは多層のいずれでもよい。例えば単層構造の場合は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。二層構造の場合は、上記のゴム材料で構成される弾性層の外周面を高抵抗層で被覆したロールから構成される。
【0097】
また、対向ロール108と二次転写ロール109のシャフトとには、通常1kV以上6kV以下の電圧が印加される。対向ロール108のシャフトへの電圧印加に代えて、対向ロール108に接触させた電気良導性の電極部材と二次転写ロール109とに電圧を印加してもよい。上記電極部材としては、金属ロール、導電性ゴムロール、導電性ブラシ、金属プレート、または導電性樹脂プレート等が挙げられる。
【0098】
〔定着装置〕
定着装置110としては、例えば、熱ローラ定着器、加圧ローラ定着器、またはフラッシュ定着器など公知の定着器が広く適用される。
【0099】
〔中間転写ベルトクリーニング装置〕
中間転写ベルトクリーニング装置112および113としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等が用いられる、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【0100】
上述した実施形態においては、像保持体が複数個で構成される所謂タンデム方式の画像形成装置を説明したが、像保持体が1個で、色数分だけ中間転写ベルトが回転・作像プロセスを行う所謂複数サイクル方式(例えば4サイクル方式等)の画像形成装置であっても良い。
【実施例】
【0101】
以下、実施例および比較例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準を表す。
【0102】
〔実施例1〕
溶剤可溶型ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業製HPC−9000、固形分率18%、溶剤:n−メチル−2−ピロリドン)にカーボンブラック(FW1、Degussa製、一次粒子径13nm)を50phr添加し、高圧衝突型分散機(ジーナス製)を用い200Mpaにてφ0.1mmのオリフィスを通過させるとともに2分割したスラリーを衝突させることを5回行い分散を行った。このものにカーボンブラックの配合質量が全体量100部に対して20部になるように高粘度のポリアミドイミドワニスを攪拌しながら加え、塗布液(A)とした。
この塗布液(A)の熱量変化を前述の方法にて測定したところ、熱量のピーク温度は150℃であった。
【0103】
この塗布液(A)をディップコートにてφ278のアルミ製パイプ外周面に塗布し(塗布工程)、120℃で20分回転乾燥を行った(乾燥工程)。このものに対し、第一段階温度を130℃20分とし、第二段階温度を175℃20分、第三段階温度を220℃20分、第四段階温度を250℃20分とした炉中で溶剤除去を行い(加熱工程)、樹脂皮膜(A)を形成した。この樹脂皮膜(A)を抜き取り(剥離工程)、定められた幅にすることで円筒状部材を得た。
この円筒状部材の膜厚は82μmであった。
【0104】
〔実施例2〕
溶剤可溶型ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業製HPC−9000、固形分率18%、溶剤はn−メチル−2−ピロリドン)にカーボンブラック(FW1、Degussa製、一次粒子径13nm)を50phr添加し、高圧衝突型分散機(ジーナス製)を用い200Mpaにてφ0.1mmのオリフィスを通過させるとともに2分割したスラリーを衝突させることを5回行い分散を行った。このものにカーボンブラックの配合質量が全体量100部に対して19.5部になるように高粘度のポリアミドイミドワニスを攪拌しながら加え、塗布液(B)とした。
この塗布液(B)の熱量変化を前述の方法にて測定したところ、熱量のピーク温度は150℃であった。
【0105】
この塗布液(B)をディップコートにてφ278のアルミ製パイプ外周面に塗布し(塗布工程)、120℃で20分回転乾燥を行った(乾燥工程)。このものに対し、第一段階温度を130℃20分とし、第二段階温度を175℃20分、第三段階温度を220℃20分、第四段階温度を250℃20分とした炉中で溶剤除去を行い(加熱工程)、樹脂皮膜(B)を形成した。
【0106】
さらに上記樹脂皮膜(B)上に、実施例1に示す塗布液(A)を用いて、上記樹脂皮膜(B)の形成と同様の方法で塗布工程/乾燥工程/加熱工程を行い、樹脂皮膜(B)上に樹脂皮膜(A)を積層した。この積層した樹脂皮膜を抜き取り(剥離工程)、定められた幅にすることで円筒状部材を得た。
この円筒状部材の樹脂皮膜(B)の膜厚は10μm、樹脂皮膜(A)の膜厚は71μm、総膜厚は81μmであった。
【0107】
〔実施例3〕
溶剤可溶型ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業製HPC−9000、固形分率18%、溶剤はn−メチル−2−ピロリドン)にカーボンブラック(FW1、Degussa製、一次粒子径13nm)を50phr添加し、高圧衝突型分散機(ジーナス製)を用い200Mpaにてφ0.1mmのオリフィスを通過させるとともに2分割したスラリーを衝突させることを5回行い分散を行った。このものにカーボンブラックの配合質量が全体量100部に対して20.2部になるように高粘度のポリアミドイミドワニスを攪拌しながら加え、塗布液(C)とした。
この塗布液(C)の熱量変化を前述の方法にて測定したところ、熱量のピーク温度は150℃であった。
【0108】
この塗布液(C)をディップコートにてφ278のアルミ製パイプ外周面に塗布し(塗布工程)、120℃で20分回転乾燥を行った(乾燥工程)。このものに対し、第一段階温度を130℃20分とし、第二段階温度を175℃20分、第三段階温度を220℃20分、第四段階温度を250℃20分とした炉中で溶剤除去を行い(加熱工程)、樹脂皮膜(C)を形成した。
【0109】
さらに上記樹脂皮膜(C)上に、実施例1に示す塗布液(A)を用いて、上記樹脂皮膜(C)の形成と同様の方法で塗布工程/乾燥工程/加熱工程を行い、樹脂皮膜(C)上に樹脂皮膜(A)を積層した。この積層した樹脂皮膜を抜き取り(剥離工程)、定められた幅にすることで円筒状部材を得た。
この円筒状部材の樹脂皮膜(C)の膜厚は10μm、樹脂皮膜(A)の膜厚は71μm、総膜厚は81μmであった。
【0110】
〔比較例1〕
溶剤可溶型ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業製HPC−9000、固形分率18%、溶剤はn−メチル−2−ピロリドン)にカーボンブラック(FW1、Degussa製、一次粒子径13nm)を50phr添加し、高圧衝突型分散機(ジーナス製)を用い200Mpaにてφ0.1mmのオリフィスを通過させるとともに2分割したスラリーを衝突させることを5回行い分散を行った。このものにカーボンブラックの配合質量が全体量100部に対して19部になるように高粘度のポリアミドイミドワニスを攪拌しながら加え、塗布液(D)とした。
この塗布液(D)の熱量変化を前述の方法にて測定したところ、熱量のピーク温度は150℃であった。
【0111】
この塗布液(D)をディップコートにてφ278のアルミ製パイプ外周面に塗布し(塗布工程)、120℃で20分回転乾燥を行った(乾燥工程)。このものに対し、第一段階温度を130℃20分とし、第二段階温度を175℃20分、第三段階温度を220℃20分、第四段階温度を250℃20分とした炉中で溶剤除去を行い(加熱工程)、樹脂皮膜(D)を形成した。
【0112】
さらに上記樹脂皮膜(D)上に、実施例1に示す塗布液(A)を用いて、上記樹脂皮膜(D)の形成と同様の方法で塗布工程/乾燥工程/加熱工程を行い、樹脂皮膜(D)上に樹脂皮膜(A)を積層した。この積層した樹脂皮膜を抜き取り(剥離工程)、定められた幅にすることで円筒状部材を得た。
この円筒状部材の樹脂皮膜(D)の膜厚は10μm、樹脂皮膜(A)の膜厚は70μm、総膜厚は80μmであった。
【0113】
〔比較例2〕
溶剤可溶型ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業製HPC−9000、固形分率18%、溶剤はn−メチル−2−ピロリドン)にカーボンブラック(FW1、Degussa製、一次粒子径13nm)を50phr添加し、高圧衝突型分散機(ジーナス製)を用い200Mpaにてφ0.1mmのオリフィスを通過させるとともに2分割したスラリーを衝突させることを5回行い分散を行った。このものにカーボンブラックの配合質量が全体量100部に対して20.5部になるように高粘度のポリアミドイミドワニスを攪拌しながら加え、塗布液(E)とした。
この塗布液(E)の熱量変化を前述の方法にて測定したところ、熱量のピーク温度は150℃であった。
【0114】
この塗布液(E)をディップコートにてφ278のアルミ製パイプ外周面に塗布し(塗布工程)、120℃で20分回転乾燥を行った(乾燥工程)。このものに対し、第一段階温度を130℃20分とし、第二段階温度を175℃20分、第三段階温度を220℃20分、第四段階温度を250℃20分とした炉中で溶剤除去を行い(加熱工程)、樹脂皮膜(E)を形成した。
【0115】
さらに上記樹脂皮膜(E)上に、実施例1に示す塗布液(A)を用いて、上記樹脂皮膜(E)の形成と同様の方法で塗布工程/乾燥工程/加熱工程を行い、樹脂皮膜(E)上に樹脂皮膜(A)を積層した。この積層した樹脂皮膜を抜き取り(剥離工程)、定められた幅にすることで円筒状部材を得た。
この円筒状部材の樹脂皮膜(E)の膜厚は9μm、樹脂皮膜(A)の膜厚は72μm、総膜厚は81μmであった。
【0116】
〔実施例4〕
実施例1の加熱工程において、第一段階温度を115℃20分とした以外は、実施例1と同様にして円筒状部材を得た。この円筒状部材の膜厚は80μmであった。
【0117】
〔実施例5〕
実施例1の加熱工程において、第一段階温度を145℃20分とした以外は、実施例1と同様にして円筒状部材を得た。この円筒状部材の膜厚は81μmであった。
【0118】
〔比較例3〕
実施例1の加熱工程において、第一段階温度を155℃20分とした以外は、実施例1と同様にして円筒状部材を得た。この円筒状部材の膜厚は81μmであった。
【0119】
〔比較例4〕
実施例1の加熱工程において、第一段階温度を110℃20分とし、第二段階温度を210℃20分とした以外は、実施例1と同様にして円筒状部材を得た。この円筒状部材の膜厚は81μmであった。
【0120】
〔実施例6〕
溶剤可溶型ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業製HPC−9000、固形分率18%、溶剤:ジメチルアセトアミド)にカーボンブラック(FW1、Degussa製、一次粒子径13nm)を50phr添加し、高圧衝突型分散機(ジーナス製)を用い200Mpaにてφ0.1mmのオリフィスを通過させるとともに2分割したスラリーを衝突させることを5回行い分散を行った。このものにカーボンブラックの配合質量が全体量100部に対して20部になるように高粘度のポリアミドイミドワニスを攪拌しながら加え、塗布液(F)とした。
この塗布液(F)の熱量変化を前述の方法にて測定したところ、熱量のピーク温度は130℃であった。
【0121】
この塗布液(F)をディップコートにてφ278のアルミ製パイプ外周面に塗布し(塗布工程)、110℃で20分回転乾燥を行った(乾燥工程)。このものに対し、第一段階温度を120℃20分とし、第二段階温度を175℃20分、第三段階温度を220℃20分、第四段階温度を250℃20分とした炉中で溶剤除去を行い(加熱工程)、樹脂皮膜(F)を形成した。この樹脂皮膜(F)を抜き取り(剥離工程)、定められた幅にすることで円筒状部材を得た。
この円筒状部材の膜厚は82μmであった。
【0122】
−画質の評価−
上記実施例および比較例にて得た円筒状部材を、富士ゼロックス社製のDocuPrint C2250の中間転写ベルトとして装着し、22℃55%RHの低温低湿環境下においてA3縦用紙にハーフートーン(マゼンタ30%)の画像を転写した。このときの2次転写電圧は5.6kVとした。得られたハーフトーン画像を目視により下記評価基準で「白抜け/トナー飛び散り画像」の判定を行った。
◎:白抜け/トナー飛び散りなし
○:わずかに白抜け/トナー飛び散りあり
△:白抜け/トナー飛び散りあり
×:ひどい白抜け/トナー飛び散りあり
【0123】
【表1】

【符号の説明】
【0124】
101a乃至101d 像保持体
102a乃至102d 帯電装置
103a乃至103d 現像装置
104a乃至104d 像保持体クリーニング装置
105a乃至105d 一次転写ロール
106a乃至106d 張架ロール
107 中間転写ベルト
107b 円筒状部材張架装置(ベルト張架装置)
108 対向ロール
109 二次転写ロール
110 定着装置
111 駆動ロール
112 中間転写ベルトクリーニングブレード
113 中間転写ベルトクリーニングブラシ
114a乃至114d 像露光装置
115 記録媒体
116 二次転写ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリアミドイミド樹脂および導電性材料を含有し、
且つ内周面側の表面抵抗率(N)の外周面側の表面抵抗率(G)に対する比率(N/G)が1.0以上1.2以下である画像形成装置用の円筒状部材。
【請求項2】
外周面側における導電性材料領域の厚さが1.5μm以上3μm以下である請求項1に記載の画像形成装置用の円筒状部材。
【請求項3】
少なくともポリアミドイミド樹脂、導電性材料および溶媒を含有する樹脂組成物を、芯材の外周面側に15℃以上35℃以下の温度にて塗布し、塗布膜を形成する塗布工程と、
前記塗布膜を乾燥させて乾燥膜を得る乾燥工程と
前記乾燥膜に対し、2段階以上に分けて段階的に昇温して加熱し、最初の段階における加熱の温度が、前記樹脂組成物に含まれる主溶媒の示唆熱走査型熱分析を用いた熱量変化測定に見られるピーク温度よりも低く、最後の段階における加熱の温度が、前記ピーク温度よりも高い加熱工程と、
を有する画像形成装置用の円筒状部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置用の円筒状部材と、
前記円筒状部材を内周面側から回転自在に張架する複数の張架部材と、
を備える円筒状部材張架装置。
【請求項5】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置用の円筒状部材を用いてなる中間転写用円筒状部材と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用円筒状部材に転写する一次転写装置と、
前記中間転写用円筒状部材に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項6】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置用の円筒状部材を用いてなる記録媒体搬送用円筒状部材と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記記録媒体搬送用円筒状部材によって搬送される記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−70004(P2011−70004A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221020(P2009−221020)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】