説明

画像形成装置等のワイヤーハーネス支持構造

【課題】スペースを要することなく簡単な作業でワイヤーハーネスを確実に固定支持することができる画像形成装置等のワイヤーハーネス支持構造を提供すること。
【解決手段】ソレノイド12やPIセンサ13(電気部品等)に導通するワイヤーハーネス16を本体部(樹脂部材)10Aに形成された溝15に沿って配索して成る画像形成装置の前記ワイヤーハーネス16の支持構造であって、前記本体部10Aに形成された溝15に嵌合して前記ワイヤーハーネス16を押さえて保持する保持部材17a〜17dと、該保持部材17a〜17dを固定して前記溝15からの脱落を防ぐ固定手段を設ける。ここで、前記固定手段を、前記本体部10Aに対向する開閉可能なカバー14に突設された突起及び前記保持部材17dの上を跨いで張設されたバネ19によって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品等に導通するワイヤーハーネスを樹脂部材に形成された溝に沿って配索して成る画像形成装置等の前記ワイヤーハーネスの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
用紙に画像を形成する複写機やプリンタ等の画像形成装置及びその周辺機器(以下、「画像形成装置等」と称する)においては、各種電気部品等に導通するワイヤーハーネスを樹脂部材に形成された溝に沿って配索する構成が採用されている。
【0003】
ところで、樹脂部材に形成された溝に沿って配索されたワイヤーハーネスには、これに或る程度の外力が加わっても溝から脱落しないことが求められ、そのための処理が従来から種々なされている。例えば、ワイヤーサドルやスナップ付きバンド等の処理部材によってワイヤーハーネスを支持する第1の方法、ワイヤーハーネスが配索される樹脂部材にフックを形成し、このフックでワイヤーハーネスを支持する第2の方法、ワイヤーハーネスの上からフィルム等を貼り付ける第3の方法、ワイヤーハーネスが配索される樹脂部材に形成された溝に保持部材を圧入する第4の方法等が実施されている。
【0004】
ところで、画像形成装置におけるワイヤーハーネスの配線構造に関して、例えば特許文献1には、ワイヤーハーネスの一部を保持する保持部材を当該ワイヤーハーネスの一部に張力を付与又は解除する方向に移動自在に取り付けるとともに、画像形成装置の可動部材に連動して前記保持部材をワイヤーハーネスの一部に張力を付与又は解除する方向に移動させる連動手段を設けることによって、作業手順に限定を受けることなくワイヤーハーネスの配線を操作性良く行うとともに、ワイヤーハーネスに弛みが発生するのを防ぐことができる配線構造が提案されている。
【0005】
又、特許文献2には、画像形成装置の筐体部に凹部と支持穴を設け、支持穴には、これに折曲片が差し込まれることによって揺動可能な取付部材を設け、該取付部材とこれに対向する前記凹部とでフラットケーブルを保持することによって、コストアップを招くことなくフラットケーブルを確実に保持することができるとともに、フラットケーブルから発生する電磁波の影響を他の電子部品に及ぼすことのないケーブル支持構造が提案されている。
【特許文献1】特開平9−289382号公報
【特許文献2】特開2002−240393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、配線処理に関する前記第1の方法のようにワイヤーサドルやスナップ付きバンド等の処理部材によってワイヤーハーネスを支持する構成では、ワイヤーハーネスを配索する樹脂部材の裏面に処理部材の足が飛び出してしまうため、余分なスペースが必要となるという問題がある。
【0007】
又、ワイヤーハーネスが配索される樹脂部材にフックを形成し、このフックでワイヤーハーネスを支持する前記第2の方法では、金型の構成上、フック部に孔があいてしまう他、処理作業に時間が掛かり、作業時にワイヤーハーネスを傷付ける可能性がある。
【0008】
更に、ワイヤーハーネスの上からフィルム等を貼り付ける前記第3の方法ではフィルムが剥がれる可能性があり、ワイヤーハーネスが配索される樹脂部材に形成された溝に保持部材を圧入する前記第4の方法では保持部材が外れる可能性がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、スペースを要することなく簡単な作業でワイヤーハーネスを確実に固定支持することができる画像形成装置等のワイヤーハーネス支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、電気部品等に導通するワイヤーハーネスを樹脂部材に形成された溝に沿って配索して成る画像形成装置等の前記ワイヤーハーネスの支持構造であって、前記樹脂部材に形成された溝に嵌合して前記ワイヤーハーネスを押さえて保持する保持部材と、該保持部材を固定して前記溝からの脱落を防ぐ固定手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記固定手段を、前記樹脂部材に対向する開閉可能なカバーに突設された突起によって構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記固定手段を、前記保持部材の上を跨いで張設されたバネによって構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、樹脂部材に形成された溝に嵌合してワイヤーハーネスを押さえて保持する保持部材を固定手段によって固定することによって、保持部材の前記溝からの脱落を防ぐようにしたため、スペースを要することなく簡単な作業でワイヤーハーネスを確実に固定支持することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、カバーを閉じることによって該カバーに突設された突起によって保持部材を押さえることができ、カバーを閉じるという簡単な作業で保持部材の溝からの脱落を防ぐことができ、特別なスペースを要することなくワイヤーハーネスを確実に固定支持することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、保持部材の上を跨いで張設されたバネによって保持部材の溝からの脱落を防ぐことができ、スペースを要することなく簡単な作業でワイヤーハーネスを確実に固定支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係るワイヤーハーネス支持構造を備えた画像形成装置の外観斜視図であり、図示の画像形成装置1は、コピー機能とプリンタ機能及びファクス機能を兼備した複合機であって、その画像形成装置本体2の上部には自動原稿搬送装置3が設置され、その下方には原稿読取装置4が配置され、その前側には操作表示部5が設けられている。又、画像形成装置本体2の内部には不図示のプリント部が収容されており、同画像形成装置本体2の左側面上部には排紙トレイ6が配され、前面には用紙を収容した上下4段の給紙カセット7a,7b,7c,7dが前面側(手前側)に引き出し可能に設けられている。
【0018】
而して、上記のように構成された画像形成装置1において自動原稿搬送装置3の原稿トレイ8上に積載された原稿Pを自動で連続的に読み取る場合には、原稿Pは、画像形成装置本体2に上面に設けられたプラテンガラス等の不図示の原稿載置部へと1枚ずつ送り込まれ、その画像が原稿読取装置4によって読み取られた後に排紙トレイ9上へと排出される。
【0019】
又、原稿Pを1枚ずつ手動で読み取る場合には、自動原稿搬送装置3をその後端部を中心として上方へ回動させて原稿載置部を開き、原稿Pを原稿載置部に載置した後に自動原稿搬送装置3をその後端部を中心として下方へ回動させて原稿載置部を閉じ、操作表示部5をキー操作して原稿Pの画像を画像読取装置4によって読み取る。
【0020】
上述のようにして原稿Pの画像が原稿読取装置4によって読み取られると、画像形成装置本体2に内蔵されたプリント部は、読み取られた画像データに基づいてトナー画像を形成し、給紙カセット7a〜7dの何れかから送り出された用紙にトナー画像を転写する。そして、用紙上に転写されたトナー画像は、不図示の定着装置によって加熱及び加圧されて用紙上に定着され、トナー画像が定着された用紙は、排紙トレイ6へと排出されて一連の画像形成動作が終了する。尚、以上は画像形成装置1が複写機として機能する場合の動作について説明したが、プリント部がパソコンやファクシミリ装置から送信されてくる画像データに基づいて用紙上に画像を形成することによって画像形成装置1はプリンタ機能及びファクシミリ機能を果たすこともできる。
【0021】
ここで、自動原稿搬送装置3の詳細を図2〜図5に基づいて説明する。図2は自動原稿搬送装置の斜視図、図3は同自動原稿搬送装置要部のカバーを取り外した状態を示す斜視図、図4は図3の要部拡大詳細図、図5は同自動原稿搬送装置要部のカバーを取り外した状態を示す平面図(配線図)である。
【0022】
図2に示す自動原稿搬送装置3は、原稿トレイ8上に積載された原稿Pを画像形成装置本体2上の原稿載置部に1枚ずつ自動搬送するものであって、原稿Pを載置するための前記原稿トレイ8と、該原稿トレイ8に載置された原稿を横U字状の搬送経路に沿って搬送する原稿搬送部10と、原稿トレイ8の下方に配置された前記排紙トレイ9を備えている。ここで、原稿搬送部10は、図2に示すように、樹脂製の本体部10Aに搬送ローラ11や電気部品であるソレノイド12、PIセンサ13等を配設し、この本体部10Aの上部を開閉可能な樹脂製のカバー14で覆って構成されている。
【0023】
ところで、図4に示すように、原稿搬送部10の樹脂製の本体部10Aには直角に屈曲する横断面矩形の溝15が形成されており、この溝15には、前記ソレノイド12やPIセンサ13に導通するワイヤーハーネス16が配索されている。そして、ワイヤーハーネス16が配索された本体部10Aの溝15には、ワイヤーハーネス16を上方から押さえてこれを保持する4つの保持部材17a,17b,17c,17dが嵌合している。ここで、各保持部材17a〜17dはスポンジ等の弾性体で矩形ブロック状に成形されており、その幅寸法は溝15の幅寸法よりも若干大きく設定されており、これを圧縮した状態で溝15に嵌め込むことによって該保持部材17a〜17dが溝15に圧入される。
【0024】
他方、図3に示すように、前記カバー14の裏面の3つの保持部材17a,17b,17cに対応する箇所には円柱状の突起18a,18b,18cが下方に向かって一体に突設されている。尚、各突起18a〜18cは、カバー14を原稿搬送部10の本体部10Aに上から被せて取り付けると、その先端が各保持部材17a〜17cに当接してこれらの溝15からの脱落を防ぐための固定手段として構成されている。
【0025】
又、残る1つの保持部材17dは、図3〜図5に示すように、その上を跨いで張設されたバネ19によって溝15からの脱落が防がれており、このバネ19が保持部材17dの固定手段を構成している。尚、前記PIセンサ13は、板金製の2つの接点端子20,21とこれらの間に張設されたバネ22及び前記バネ19を介して板金部材23に導通することによってアース取りがなされている。
【0026】
以上のように、本実施の形態では、カバー14を閉じることによって該カバー14に突設された突起18a〜18cによって保持部材17a〜17cを押さえることができ、カバー14を閉じるという簡単な作業で保持部材17a〜17cの溝15からの脱落を確実に防ぐことができる。又、保持部材17dの上を跨いで張設された既設のバネ19によって該保持部材17dを上から押さえることができる。従って、本実施の形態によれば、特別なスペースを要することなく簡単な作業でワイヤーハーネス16を確実に固定支持することができるという効果が得られる。
【0027】
尚、以上は本発明を画像形成装置に備えられた自動原稿搬送装置に適用した形態について説明したが、本発明は、画像形成装置の他の部位に配索されるワイヤーハーネスの支持構造、或いは画像形成装置とは独立に構成される自動原稿搬送装置等の周辺機器のワイヤーハーネス支持構造に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るワイヤーハーネス支持構造を備えた画像形成装置の外観斜視図である。
【図2】自動原稿搬送装置の斜視図である。
【図3】自動原稿搬送装置要部のカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】図3の要部拡大詳細図である。
【図5】自動原稿搬送装置要部のカバーを取り外した状態を示す平面図(配線図)である。
【符号の説明】
【0029】
1 画像形成装置
2 画像形成装置本体
3 自動原稿搬送装置
4 原稿読取装置
5 操作表示部
6 排紙トレイ
7a〜7d 給紙カセット
8 原稿トレイ
9 排紙トレイ
10 原稿搬送部
10A 原稿搬送部の本体部
11 搬送ローラ
12 ソレノイド(電気部品)
13 PIセンサ(電気部品)
14 カバー
15 溝
16 ワイヤーハーネス
17a〜17d 保持部材
18a〜18c カバーの突起(固定手段)
19 バネ(固定手段)
20,21 接点端子
22 バネ
23 板金部材
P 原稿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品等に導通するワイヤーハーネスを樹脂部材に形成された溝に沿って配索して成る画像形成装置等の前記ワイヤーハーネスの支持構造であって、
前記樹脂部材に形成された溝に嵌合して前記ワイヤーハーネスを押さえて保持する保持部材と、該保持部材を固定して前記溝からの脱落を防ぐ固定手段を設けたことを特徴とする画像形成装置等のワイヤーハーネス支持構造。
【請求項2】
前記固定手段を、前記樹脂部材に対向する開閉可能なカバーに突設された突起によって構成したことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置等のワイヤーハーネス支持構造。
【請求項3】
前記固定手段を、前記保持部材の上を跨いで張設されたバネによって構成したことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置等のワイヤーハーネス支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−56352(P2010−56352A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220618(P2008−220618)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】