画像形成装置
【課題】 記録液の残量については知ることができるものの、当該残量で印刷可能な枚数を知ることができず、利便性が悪い。
【解決手段】 1枚当たりの色材使用量の平均値Aと1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値Bから1枚当たりの色材使用量の標準偏差Cを算出し、1枚当たりの色材使用量の平均値Aと標準偏差Cから1枚当たりの色材使用量の下限値D及び上限値Eを算出し、次いで、色材残量Fから残りの色材で印刷可能な枚数の平均値F、上限値H、下限値Iをそれぞれ算出して、各色材のうち、最小値の平均値F、上限値H、下限値Iを印刷可能枚数の平均枚数、上限枚数、下限枚数として抽出し、この印刷可能枚数を応答する。
【解決手段】 1枚当たりの色材使用量の平均値Aと1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値Bから1枚当たりの色材使用量の標準偏差Cを算出し、1枚当たりの色材使用量の平均値Aと標準偏差Cから1枚当たりの色材使用量の下限値D及び上限値Eを算出し、次いで、色材残量Fから残りの色材で印刷可能な枚数の平均値F、上限値H、下限値Iをそれぞれ算出して、各色材のうち、最小値の平均値F、上限値H、下限値Iを印刷可能枚数の平均枚数、上限枚数、下限枚数として抽出し、この印刷可能枚数を応答する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に色材の残量に基づいて印刷可能枚数を応答可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの画像形成装置として、記録ヘッドから被記録媒体(以下、用紙というが材質を紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、また、記録媒体、記録紙などとも称されるものを含む。)に、色材であるインクを吐出して記録(印字、印写、印刷、画像形成なども同義で使用する。)を行うインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
このような画像形成装置において、記録ヘッドに対してインクを供給するインクカートリッジ或いはインクタンクと称されるインク収容手段は交換可能に装着され、インク収容手段の残量が少なくなったとき又はなくなったときなどにはその旨の警告を表示することが一般的に行なわれている。
【0004】
この画像形成装置の色材の残量管理に関しては、例えば、特許文献1に記載されているように、複数のインクジェット記録装置それぞれから伝送される、装着された記録ヘッドのインクタンクのインク消費量を、該当する記録ヘッドの予め保持していたインク残量から引いた値を新たなインク残量とするインク残量算出手段と、インク残量算出手段が算出した記録ヘッドそれぞれのインク残量から作成したインク残量情報を保持するインク残量情報保持手段と、インク残量保持手段が保持するインク残量情報をユーザーが見ることができるように出力するインク残量情報出力手段とを備えるホストコンピュータが知られている。
【特許文献1】特開2003−370382号公報
【0005】
また、特許文献2に記載されているように、インクカートリッジを装着可能な装着部を有するインクジェット記録装置に設けられ、該装着部に装着されたインクカートリッジのインク残量を、該インクカートリッジに設けられた被検出部位を利用して検出するインク残量検出装置が知られている。
【特許文献2】特開2005−22146号公報
【0006】
また、特許文献3に記載されているように、少なくとも一回の走査分の印字データを格納する印字バッファに展開された印字データから印字ドット数を計数する計数手段と、その計数値から印字に使用するインク量Aを算出する手段と、回復動作時に消費されるインク量Bを算出する手段と、インク量AとBとからインクタンク内の残量を算出する手段と、このインク残量に関するメッセージを表示する表示手段と、このインク残量を記憶する不揮発性記憶装置とを有するインクジェット記録装置が知られている。
【特許文献3】特開平9−11490号公報
【0007】
また、特許文献4に記載されているように、インクタンク内のインクの液面レベルの値に基づいてインク残量を検知し、このインク残量のインクタンク満タン時のインク量に対するパーセントをインク残量情報として、接続されているネットワーク上に報知するインク残量検知装置が知られている。
【特許文献4】特開平10−175312号公報
【0008】
また、特許文献6に記載されているように、画素計数手段と消費量記憶手段と処理手段及び残量演算手段とを有し、画素計数手段は、印刷する画像データのうち記録紙に実際に印刷するトナー又はインクを載せる画素数を計数し、消費量記憶手段は、以前に印刷した画像データの累積のトナー又はインクの消費量を記憶し、処理手段は、画素計数手段で計数した画素数と消費量記憶手段に記憶されている累積のトナー又はインクの消費量とを加算して消費量記憶手段の累積のトナー又はインク消費量の値を更新させ、残量検出手段は、消費量記憶手段に記憶した累積のトナー又はインクの消費量とあらかじめ搭載されているトナー又はインクの質量からトナー又はインクの残量を算出するプリンタコントローラが知られている。
【特許文献5】特開2003−107970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように従来の画像形成装置にあっては、色材のタンクの容量ないしはカートリッジの内の色材の容量を基にして色材のニアーエンド又はエンドを表示したり、色材残量を比率で表示したり、実際の色材残量の容積を表示するなどしている。
【0010】
しかしながら、このような色材残量検出では色材のタンクやカートリッジの交換時期を知ることはできるものの、残存している色材量でユーザーが使用するような原稿を印刷した場合にあと何枚印刷することができるかを印刷前に把握することができないという課題がある。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、利便性を向上した画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決して目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、色材の使用量と印刷枚数の統計データに基づいて色材の残量で印刷が可能な枚数に関する印刷可能枚数情報を応答する手段を備えている構成とした。
【0013】
ここで、印刷可能枚数情報とともに色材の残量に関する残量情報を応答する手段を備えていることが好ましい。また、印刷可能枚数情報は印刷可能な下限枚数、平均枚数及び上限枚数の内の少なくとも2つの情報を含むことが好ましい。さらに、色材の残量で印刷が可能な枚数は、色材の平均使用量に基づいて算出することが好ましい。あるいは、色材の残量で印刷が可能な枚数は、色材の平均使用量及び偏差に基づいて算出することが好ましい。また、統計データをユーザー毎に記憶し、各ユーザー毎に印刷可能枚数情報を応答する手段を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る画像形成装置によれば、色材の使用量と印刷枚数の統計データに基づいて色材の残量で印刷が可能な枚数に関する印刷可能枚数情報を応答する手段を備えているので、印刷に当って印刷可能な枚数を知ることができて利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置を前方側から見た斜視説明図である。
このインクジェット記録装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体1の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0016】
このカートリッジ装填部4には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液収容手段としての記録液カートリッジであるインクカートリッジ10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。また、インクカートリッジ10k、10c、10m、10yは縦置き状態で横方向に並べて装填する構成としている。
【0017】
また、操作/表示部5には、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部11k、11c、11m、11yを配置している。さらに、この操作/表示部5には、電源ボタン12、用紙送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14も配置している。
【0018】
次に、このインクジェット記録装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図3は同機構部の概要を示す側面模式的説明図、図4は同じく要部平面説明図である。
フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0019】
このキャリッジ33には、前述したようにイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド34を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0020】
記録ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0021】
この記録ヘッド34にはドライバICを搭載し、図示しない制御部との間でハーネス(フレキシブルプリントケーブル)22を介して接続している。
【0022】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34に各色のインクを供給するための各色のサブタンク35を搭載している。この各色のサブタンク35には各色のインク供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニット24が設けられ、また、インク供給チューブ36は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに係止部材25にて保持されている。
【0023】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0024】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0025】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。さらに、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。
【0026】
この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向に周回移動する。
【0027】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0028】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0029】
さらに、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。
【0030】
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a〜82d(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b〜82dは保湿用キャップとしている。
【0031】
そして、この維持回復機構81による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ82に排出されたインク、あるいはワイパーブレード83に付着してワイパークリーナ85で除去されたインク、空吐出受け94に空吐出されたインクは図示しない廃液タンクに排出されて収容される。
【0032】
また、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口89などを備えている。
【0033】
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0034】
このとき、後述する制御部のACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0035】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0036】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド34をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0037】
次に、インクカートリッジ10の一例について図4を参照して説明する。このインクカートリッジ10は、インクを充填したインク袋111と、このインク袋111を着脱可能に装着する筐体112を備えている。この筐体112は、少なくとも2分割可能な第1筐体112Aと第2筐体112Bとを備え、これらによってインク袋111の側面を保護する保護カバーとなる筐体部分を構成している。すなわち、筐体112はインク供給方向(インク排出方向)に平行な面でインク袋111を収納する第1筐体112Aと第2筐体112Bとに分割している。
【0038】
そして、インク袋111には装置本体1のカートリッジ装填部4に装填されたときに、カートリッジ装填部4の奥側に設けられて供給針と連結されるインク排出口部114が設けられている。
【0039】
また、筐体112のインク供給口部114側の面(背面)にはこのインクカートリッジ10に関する情報、例えば、インク色、インク種、使用期限、ID番号などに関する固有の情報を記憶した記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)115が設けられ、カートリッジ装填部4に装填されたときに、カートリッジ装填部4の奥側に設けられた装置本体1側の電極と電気的に接続されて、不揮発性メモリ115に記憶されている情報が装置本体1側の制御部に取り込まれる。
【0040】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部300は、この画像形成装置全体の制御を司る、本発明に係る印刷可能枚数に関する制御を司る手段を兼ねたマイクロコンピュータで構成した主制御部301及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部302とを備えている。
【0041】
そして、主制御部301は、プリンタドライバ401を搭載したパーソナルコンピュータ等のホスト400から通信回路101から入力される印刷データ等の情報に基づいて、用紙42に画像を形成するために、主走査モータ201や副走査モータ205を主走査モータ駆動回路303及び副走査モータ304を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行なう。
【0042】
また、主制御部301には、キャリッジ33の位置を検出するキャリッジ位置検出回路305からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいてキャリッジ33の移動位置及び移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えばキャリッジ33の走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ33に搭載されたフォトセンサで読み取って計数することで、キャリッジ33の位置を検出する。主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータ201を回転駆動させて、キャリッジ33を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0043】
また、主制御部301には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路306からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路306は、例えば搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送量に応じて副走査モータ205を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0044】
主制御部301は、給紙コロ駆動回路307に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ43を一回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路308を介してモータ191を回転駆動することにより、キャップ182(キャップ82)の昇降、ワイパーブレード183(ワイパーブレード83)の昇降を行なわせる。
【0045】
主制御部301は、インク供給モータ駆動回路311を介して供給ユニット24のポンプを駆動するためのインク供給モータを駆動制御し、カートリッジ装填部4に装填されたインクカートリッジ10からサブタンク35に対してインクを補充供給する。
【0046】
主制御部301には、サブタンク35が満タン状態にあることを検知するサブタンク満タンセンサ312からの検知信号、カートリッジ装填部4の前カバー6の開閉を検知するカートリッジカバーセンサ312からの検知信号などが入力される。
【0047】
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路314を通じて、カートリッジ装填部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ115k、115c、115m、115y(区別しない場合は「不揮発性メモリ115」という。)に記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行なって、本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)315に格納保持する。
【0048】
ここで、インクカートリッジ10の残量検出は、インクカートリッジ10の不揮発性メモリ115に記憶しているその時の残量情報を読み出して本体側の不揮発性メモリ315に一時格納保存するとともに、記録ヘッド34からの吐出滴数をカウントして、このカウント値に基づいて使用インク量を算出し、インク残量と使用インク量に基づいて得られる新たなインク残量を、印刷毎、インクカートリッジ10からサブタンク35に対するインク補給毎にインクカートリッジ10の不揮発性メモリ115に書き込む。そして、インクカートリッジ10の不揮発性メモリ115に格納されるインク残量を読み出してインクなし(インクエンド又はインクニアーエンド)を検出する。
【0049】
印刷制御部302は、主制御部301からの信号とキャリッジ位置検出回路305及び搬送量検出回路306などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド34(記録ヘッド134)の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成して、ヘッド駆動回路310に与える。
【0050】
ヘッド駆動回路310は、印刷制御部302からの印刷データに基づいて記録ヘッド34(記録ヘッド134)の圧力発生手段(ピエゾ型ヘッドであれば圧電素子)を駆動して、所要のノズルから液滴を吐出させる。
【0051】
さらに、主制御部301は、色材(インク)の使用量と印刷枚数を統計情報(統計データ)として不揮発性メモリ(例えばEEPROM)315に格納保持し、インクの残量と印刷枚数に基づいて、ホスト400のプリンタドライバ401を通じて印刷可能枚数の要求がなされたときには、現在のインク残量で印刷可能な枚数に関する印刷可能枚数情報及びインク残量に関する情報をホスト400側に応答する処理を行なう。この画像形成装置からの応答を受けてプリンタドライバ401はホスト400の印刷プロパティなどを通じて印刷可能枚数などを表示させる。
【0052】
そこで、このように構成した画像形成装置におけるインク残量と印刷可能枚数に関する処理の詳細について図6以降をも参照して説明する。
先ず、この画像形成装置においては、制御部のEEPROM315に各色材毎に残量と印刷枚数の関する統計情報(統計データ)をテーブル(以下「統計テーブル」という。)として格納保持している
【0053】
ここで、当統計テーブルの具体例について図6及び図7を参照して説明する。なお、図6はブラック及びシアンの各統計テーブルの例を、図7はマゼンタ及びイエローの各統計テーブルの例をそれぞれ示している。
【0054】
各統計テーブルには、ユーザー毎に、ユーザー識別子、印刷枚数(それまでの印刷枚数の累計)、1枚当たりの色材使用量の平均値A、1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値B、色材残量F、などを格納にし、これらの印刷枚数及び色材使用量に基づいて印刷可能枚数を算出する。
【0055】
具体的には、色材使用量の標準偏差Cを、1枚当たりの色材使用量の平均値A、1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値Bに基づいて、次の(1)式で算出することができる。なお、式中の記号「*」は乗算の意味である。
C=SQRT(B−A*A) ……(1)
【0056】
ここで、1枚当たり色材使用量の下限値Dは、標準偏差内とする場合、次の(2)式で算出される。
D=A−C ……(2)
【0057】
また、1枚あたりの色材使用量の上限値Eは、標準偏差内とする場合、次の(3)式で算出される。
E=A+C ……(3)
【0058】
そして、当該色材の残量Fで印刷可能な枚数の平均値(枚数)G、上限値(枚数)H、下限値(枚数)Iは、それぞれ、次の(4)、(5)、(6)式で算出できる。
G=F/A ……(4)
H=F/D ……(5)
I=F/E ……(6)
【0059】
このようにして得られる各色材の印刷可能枚数のうちの最小値を、それぞれ、平均枚数、下限枚数、上限枚数として、ホスト側400に応答する。
【0060】
ここで、図6及び図7の例では、ユーザー識別子が「hanako」、「taro」のユーザーについては、個別的(ユーザー毎)に、印刷枚数、1枚当たりの色材使用量の平均値A、1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値Bを格納し、ユーザー識別子がない場合にはユーザー全体の印刷枚数、1枚当たりの色材使用量の平均値A、1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値Bを格納している。
【0061】
このように、統計データをユーザー毎に記憶し、各ユーザー毎に印刷可能枚数情報を応答する手段を備えることにより、各ユーザーは、自身の利用状況に応じて、自身が使用した場合のより正確な印刷可能枚数(範囲と平均枚数)を把握することができる。
【0062】
次に、統計データの更新方法について図8を参照して説明する。
図8(a)に示すように、印刷が実行されるときの印刷ページ数がN、印刷したときの色材使用量の合計をPとし、同図(b)に示すように、統計テーブルの旧値(現在値)が、印刷枚数がM、1枚当たりの色材使用量の平均値AがAm、1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値BがBmであるとしたとき、印刷枚数は「M+N」の演算をして、1枚当たりの色材使用量の平均値Aは「(M*Am+P)/(M+N)」の演算をして、1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値Bは「(M*Bm+P+P/N)/(M+N)」の演算をしてそれぞれ演算結果を更新値として格納する。
【0063】
この統計データの更新の具体例を図9に示している。この例は、図9(a)に示すように、ユーザー識別子「taro」について、追加された印刷ページ数が8枚、印刷したときの色材の使用量合計が「45」であるときに、図9(b)に示すように、統計データは「旧値」から「更新値」に更新された例である。
【0064】
そこで、制御部による色材残量及び印刷可能枚数応答処理について図10を参照して説明する。
先ず、ホスト400のプリンタドライバ401から色材残量要求があると、ユーザー識別子から該当ユーザーが統計データテーブルにエントリされているか否かを判別する。そして、該当ユーザーが統計データテーブルにエントリされているときには、該当ユーザーのエントリを選択し、該当ユーザーが統計データテーブルにエントリされていないときにはユーザー全体のエントリを選択する。
【0065】
そして、1枚当たりの色材使用量の平均値Aと1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値Bから1枚当たりの色材使用量の標準偏差Cを算出する。その後、1枚当たりの色材使用量の平均値Aと標準偏差Cから1枚当たりの色材使用量の下限値D及び上限値Eを算出する。次いで、色材残量Fから残りの色材で印刷可能な枚数の平均値F、上限値H、下限値Iをそれぞれ算出する。
【0066】
これらの算出処理を全ての色材について行った(全色処理した)か否かを判別し、全色処理していなければ次の色の色材について上述した算出処理を繰り返し、全色処理したときには、各色材のうち、最小値の平均値F、上限値H、下限値Iを印刷可能枚数の平均枚数、上限枚数、下限枚数として抽出する。
【0067】
その後、色材残量と印刷可能枚数の平均枚数、上限枚数、下限枚数をホスト400側のプリンタドライバ401に応答する。これによって、プリンタドライバ401は受け取った色材残量と印刷可能枚数(平均枚数、上限枚数、下限枚数)を印刷プロパティなどで表示させる。
【0068】
このように、色材の使用量と印刷枚数の統計データに基づいて色材の残量で印刷が可能な枚数に関する印刷可能枚数情報を応答する手段を備えることにより、印刷に当って印刷可能な枚数を知ることができて利便性が向上する。
【0069】
ここで、印刷可能枚数情報とともに色材の残量に関する残量情報を応答する手段を備えることにより、残量に応じた印刷可能枚数を知ることができて更に利便性が向上する。また、印刷可能枚数情報として、印刷可能な下限枚数、平均枚数及び上限枚数の内の少なくとも2つの情報を含むことにより、印刷に当ってより詳しい印刷可能な枚数を知ることができて利便性が向上する。
【0070】
この場合、色材の残量で印刷が可能な枚数は、色材の平均使用量に基づいて算出することによって、平均的な印刷可能枚数を容易に知ることができる。また、色材の残量で印刷が可能な枚数は、色材の平均使用量及び偏差に基づいて算出することによって、より正確に印刷可能枚数を容易に知ることができる。つまり、一般的なプリンタの色材の使用量は、ユーザーが利用する原稿データや印刷設定等に応じて1枚当たりの使用量が多くなったり、少なくなったりするが、この使用量のばらつきは一般的なオフィス環境のような利用内容がほぼ一定の利用環境下では少ないこと、各ユーザー毎での使用量のばらつきは少ないことから、平均使用量を算出することで概ね正確な印刷可能枚数が得られる。
【0071】
次に、印刷時の統計データの更新処理について図11を参照して説明する。
先ず、印刷ジョブが投入されると、ユーザー識別子から該当ユーザーが統計データテーブルにエントリされているか否かを判別する。そして、該当ユーザーが統計データテーブルにエントリされているときには、該当ユーザーのエントリを選択して処理対象とし、該当ユーザーが統計データテーブルにエントリされていないときには新規ユーザーとしてエントリを追加して処理対象とする。
【0072】
その後、ページ印刷を開始し、ページ印刷完了した時点で、新規ユーザーの最初のページ(頁)か否かを判別する。このとき、新規ユーザーの最初のページであれば、1枚当たり使用量の平均値Aと1枚当たりの使用量の2乗の平均値Bを、最初のページの印刷ページ数と印刷に使用した色材の量で初期化する。また、新規ユーザーの最初のページであれば、該当ユーザーのエントリの1枚当たりの使用量の平均値Aと1枚当たりの使用量の2乗の平均値Bを前述した方法で、全色について更新する。
【0073】
その後、ユーザー全体のエントリの1枚当たりの使用量の平均値Aと1枚当たりの使用量の2乗の平均値Bを全色について更新する。
【0074】
そして、全ページの印刷が終了するまで上述したページ印刷開始からの処理を繰り返し、全ページの印刷が終了したときには、この印刷時の統計データの更新処理を終了する。
【0075】
このようにして印刷時に色材の使用量の統計データを更新しながら、前述したようにホスト400側から色材の残量要求があったときには、色材残量と印刷可能枚数を応答する処理を行う。
【0076】
なお、上記実施形態においては、K,C,Y,Mのインクを用いる例で説明したが、これらに加えて、ダークシアン、ダークマゼンタ、ライトシアン、ライトマゼンタ、レッド、ブルー、グリーンなど、他の色のインクを用いる場合にも同様に適用することができる。また、色材をインクに限らず、例えばトナーを用いる画像形成装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の前方側から見た斜視説明図である。
【図2】同装置の機構部の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【図3】同機構部の要部平面説明図である。
【図4】同装置のインクカートリッジの一例を示す斜視説明図である。
【図5】同装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図6】同制御部に格納する統計テーブルの具体例の説明に供する説明図である。
【図7】同制御部に格納する統計テーブルの具体例の説明に供する説明図である。
【図8】統計データの更新方法の説明に供する説明図である。
【図9】統計データの更新方法の具体例の説明に供する説明図である。
【図10】色材残量及び印刷可能枚数応答処理の説明に供するフロー図である。
【図11】統計データ更新処理の説明に供するフロー図である。
【符号の説明】
【0078】
1…装置本体
2…給紙トレイ
3…排紙トレイ
4…カートリッジ装填部
5…操作/表示部
10k、10c、10m、10y…インクカートリッジ
33…キャリッジ
34、134…記録ヘッド
35…サブタンク
36…インク供給チューブ
51…搬送ベルト
301…主制御部
315…不揮発性メモリ
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に色材の残量に基づいて印刷可能枚数を応答可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの画像形成装置として、記録ヘッドから被記録媒体(以下、用紙というが材質を紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、また、記録媒体、記録紙などとも称されるものを含む。)に、色材であるインクを吐出して記録(印字、印写、印刷、画像形成なども同義で使用する。)を行うインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
このような画像形成装置において、記録ヘッドに対してインクを供給するインクカートリッジ或いはインクタンクと称されるインク収容手段は交換可能に装着され、インク収容手段の残量が少なくなったとき又はなくなったときなどにはその旨の警告を表示することが一般的に行なわれている。
【0004】
この画像形成装置の色材の残量管理に関しては、例えば、特許文献1に記載されているように、複数のインクジェット記録装置それぞれから伝送される、装着された記録ヘッドのインクタンクのインク消費量を、該当する記録ヘッドの予め保持していたインク残量から引いた値を新たなインク残量とするインク残量算出手段と、インク残量算出手段が算出した記録ヘッドそれぞれのインク残量から作成したインク残量情報を保持するインク残量情報保持手段と、インク残量保持手段が保持するインク残量情報をユーザーが見ることができるように出力するインク残量情報出力手段とを備えるホストコンピュータが知られている。
【特許文献1】特開2003−370382号公報
【0005】
また、特許文献2に記載されているように、インクカートリッジを装着可能な装着部を有するインクジェット記録装置に設けられ、該装着部に装着されたインクカートリッジのインク残量を、該インクカートリッジに設けられた被検出部位を利用して検出するインク残量検出装置が知られている。
【特許文献2】特開2005−22146号公報
【0006】
また、特許文献3に記載されているように、少なくとも一回の走査分の印字データを格納する印字バッファに展開された印字データから印字ドット数を計数する計数手段と、その計数値から印字に使用するインク量Aを算出する手段と、回復動作時に消費されるインク量Bを算出する手段と、インク量AとBとからインクタンク内の残量を算出する手段と、このインク残量に関するメッセージを表示する表示手段と、このインク残量を記憶する不揮発性記憶装置とを有するインクジェット記録装置が知られている。
【特許文献3】特開平9−11490号公報
【0007】
また、特許文献4に記載されているように、インクタンク内のインクの液面レベルの値に基づいてインク残量を検知し、このインク残量のインクタンク満タン時のインク量に対するパーセントをインク残量情報として、接続されているネットワーク上に報知するインク残量検知装置が知られている。
【特許文献4】特開平10−175312号公報
【0008】
また、特許文献6に記載されているように、画素計数手段と消費量記憶手段と処理手段及び残量演算手段とを有し、画素計数手段は、印刷する画像データのうち記録紙に実際に印刷するトナー又はインクを載せる画素数を計数し、消費量記憶手段は、以前に印刷した画像データの累積のトナー又はインクの消費量を記憶し、処理手段は、画素計数手段で計数した画素数と消費量記憶手段に記憶されている累積のトナー又はインクの消費量とを加算して消費量記憶手段の累積のトナー又はインク消費量の値を更新させ、残量検出手段は、消費量記憶手段に記憶した累積のトナー又はインクの消費量とあらかじめ搭載されているトナー又はインクの質量からトナー又はインクの残量を算出するプリンタコントローラが知られている。
【特許文献5】特開2003−107970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように従来の画像形成装置にあっては、色材のタンクの容量ないしはカートリッジの内の色材の容量を基にして色材のニアーエンド又はエンドを表示したり、色材残量を比率で表示したり、実際の色材残量の容積を表示するなどしている。
【0010】
しかしながら、このような色材残量検出では色材のタンクやカートリッジの交換時期を知ることはできるものの、残存している色材量でユーザーが使用するような原稿を印刷した場合にあと何枚印刷することができるかを印刷前に把握することができないという課題がある。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、利便性を向上した画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決して目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、色材の使用量と印刷枚数の統計データに基づいて色材の残量で印刷が可能な枚数に関する印刷可能枚数情報を応答する手段を備えている構成とした。
【0013】
ここで、印刷可能枚数情報とともに色材の残量に関する残量情報を応答する手段を備えていることが好ましい。また、印刷可能枚数情報は印刷可能な下限枚数、平均枚数及び上限枚数の内の少なくとも2つの情報を含むことが好ましい。さらに、色材の残量で印刷が可能な枚数は、色材の平均使用量に基づいて算出することが好ましい。あるいは、色材の残量で印刷が可能な枚数は、色材の平均使用量及び偏差に基づいて算出することが好ましい。また、統計データをユーザー毎に記憶し、各ユーザー毎に印刷可能枚数情報を応答する手段を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る画像形成装置によれば、色材の使用量と印刷枚数の統計データに基づいて色材の残量で印刷が可能な枚数に関する印刷可能枚数情報を応答する手段を備えているので、印刷に当って印刷可能な枚数を知ることができて利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置を前方側から見た斜視説明図である。
このインクジェット記録装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体1の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0016】
このカートリッジ装填部4には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液収容手段としての記録液カートリッジであるインクカートリッジ10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。また、インクカートリッジ10k、10c、10m、10yは縦置き状態で横方向に並べて装填する構成としている。
【0017】
また、操作/表示部5には、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部11k、11c、11m、11yを配置している。さらに、この操作/表示部5には、電源ボタン12、用紙送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14も配置している。
【0018】
次に、このインクジェット記録装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図3は同機構部の概要を示す側面模式的説明図、図4は同じく要部平面説明図である。
フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0019】
このキャリッジ33には、前述したようにイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド34を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0020】
記録ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0021】
この記録ヘッド34にはドライバICを搭載し、図示しない制御部との間でハーネス(フレキシブルプリントケーブル)22を介して接続している。
【0022】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34に各色のインクを供給するための各色のサブタンク35を搭載している。この各色のサブタンク35には各色のインク供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニット24が設けられ、また、インク供給チューブ36は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに係止部材25にて保持されている。
【0023】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0024】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0025】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。さらに、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。
【0026】
この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向に周回移動する。
【0027】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0028】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0029】
さらに、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。
【0030】
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a〜82d(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b〜82dは保湿用キャップとしている。
【0031】
そして、この維持回復機構81による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ82に排出されたインク、あるいはワイパーブレード83に付着してワイパークリーナ85で除去されたインク、空吐出受け94に空吐出されたインクは図示しない廃液タンクに排出されて収容される。
【0032】
また、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口89などを備えている。
【0033】
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0034】
このとき、後述する制御部のACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0035】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0036】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド34をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0037】
次に、インクカートリッジ10の一例について図4を参照して説明する。このインクカートリッジ10は、インクを充填したインク袋111と、このインク袋111を着脱可能に装着する筐体112を備えている。この筐体112は、少なくとも2分割可能な第1筐体112Aと第2筐体112Bとを備え、これらによってインク袋111の側面を保護する保護カバーとなる筐体部分を構成している。すなわち、筐体112はインク供給方向(インク排出方向)に平行な面でインク袋111を収納する第1筐体112Aと第2筐体112Bとに分割している。
【0038】
そして、インク袋111には装置本体1のカートリッジ装填部4に装填されたときに、カートリッジ装填部4の奥側に設けられて供給針と連結されるインク排出口部114が設けられている。
【0039】
また、筐体112のインク供給口部114側の面(背面)にはこのインクカートリッジ10に関する情報、例えば、インク色、インク種、使用期限、ID番号などに関する固有の情報を記憶した記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)115が設けられ、カートリッジ装填部4に装填されたときに、カートリッジ装填部4の奥側に設けられた装置本体1側の電極と電気的に接続されて、不揮発性メモリ115に記憶されている情報が装置本体1側の制御部に取り込まれる。
【0040】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部300は、この画像形成装置全体の制御を司る、本発明に係る印刷可能枚数に関する制御を司る手段を兼ねたマイクロコンピュータで構成した主制御部301及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部302とを備えている。
【0041】
そして、主制御部301は、プリンタドライバ401を搭載したパーソナルコンピュータ等のホスト400から通信回路101から入力される印刷データ等の情報に基づいて、用紙42に画像を形成するために、主走査モータ201や副走査モータ205を主走査モータ駆動回路303及び副走査モータ304を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行なう。
【0042】
また、主制御部301には、キャリッジ33の位置を検出するキャリッジ位置検出回路305からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいてキャリッジ33の移動位置及び移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えばキャリッジ33の走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ33に搭載されたフォトセンサで読み取って計数することで、キャリッジ33の位置を検出する。主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータ201を回転駆動させて、キャリッジ33を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0043】
また、主制御部301には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路306からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路306は、例えば搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送量に応じて副走査モータ205を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0044】
主制御部301は、給紙コロ駆動回路307に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ43を一回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路308を介してモータ191を回転駆動することにより、キャップ182(キャップ82)の昇降、ワイパーブレード183(ワイパーブレード83)の昇降を行なわせる。
【0045】
主制御部301は、インク供給モータ駆動回路311を介して供給ユニット24のポンプを駆動するためのインク供給モータを駆動制御し、カートリッジ装填部4に装填されたインクカートリッジ10からサブタンク35に対してインクを補充供給する。
【0046】
主制御部301には、サブタンク35が満タン状態にあることを検知するサブタンク満タンセンサ312からの検知信号、カートリッジ装填部4の前カバー6の開閉を検知するカートリッジカバーセンサ312からの検知信号などが入力される。
【0047】
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路314を通じて、カートリッジ装填部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ115k、115c、115m、115y(区別しない場合は「不揮発性メモリ115」という。)に記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行なって、本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)315に格納保持する。
【0048】
ここで、インクカートリッジ10の残量検出は、インクカートリッジ10の不揮発性メモリ115に記憶しているその時の残量情報を読み出して本体側の不揮発性メモリ315に一時格納保存するとともに、記録ヘッド34からの吐出滴数をカウントして、このカウント値に基づいて使用インク量を算出し、インク残量と使用インク量に基づいて得られる新たなインク残量を、印刷毎、インクカートリッジ10からサブタンク35に対するインク補給毎にインクカートリッジ10の不揮発性メモリ115に書き込む。そして、インクカートリッジ10の不揮発性メモリ115に格納されるインク残量を読み出してインクなし(インクエンド又はインクニアーエンド)を検出する。
【0049】
印刷制御部302は、主制御部301からの信号とキャリッジ位置検出回路305及び搬送量検出回路306などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド34(記録ヘッド134)の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成して、ヘッド駆動回路310に与える。
【0050】
ヘッド駆動回路310は、印刷制御部302からの印刷データに基づいて記録ヘッド34(記録ヘッド134)の圧力発生手段(ピエゾ型ヘッドであれば圧電素子)を駆動して、所要のノズルから液滴を吐出させる。
【0051】
さらに、主制御部301は、色材(インク)の使用量と印刷枚数を統計情報(統計データ)として不揮発性メモリ(例えばEEPROM)315に格納保持し、インクの残量と印刷枚数に基づいて、ホスト400のプリンタドライバ401を通じて印刷可能枚数の要求がなされたときには、現在のインク残量で印刷可能な枚数に関する印刷可能枚数情報及びインク残量に関する情報をホスト400側に応答する処理を行なう。この画像形成装置からの応答を受けてプリンタドライバ401はホスト400の印刷プロパティなどを通じて印刷可能枚数などを表示させる。
【0052】
そこで、このように構成した画像形成装置におけるインク残量と印刷可能枚数に関する処理の詳細について図6以降をも参照して説明する。
先ず、この画像形成装置においては、制御部のEEPROM315に各色材毎に残量と印刷枚数の関する統計情報(統計データ)をテーブル(以下「統計テーブル」という。)として格納保持している
【0053】
ここで、当統計テーブルの具体例について図6及び図7を参照して説明する。なお、図6はブラック及びシアンの各統計テーブルの例を、図7はマゼンタ及びイエローの各統計テーブルの例をそれぞれ示している。
【0054】
各統計テーブルには、ユーザー毎に、ユーザー識別子、印刷枚数(それまでの印刷枚数の累計)、1枚当たりの色材使用量の平均値A、1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値B、色材残量F、などを格納にし、これらの印刷枚数及び色材使用量に基づいて印刷可能枚数を算出する。
【0055】
具体的には、色材使用量の標準偏差Cを、1枚当たりの色材使用量の平均値A、1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値Bに基づいて、次の(1)式で算出することができる。なお、式中の記号「*」は乗算の意味である。
C=SQRT(B−A*A) ……(1)
【0056】
ここで、1枚当たり色材使用量の下限値Dは、標準偏差内とする場合、次の(2)式で算出される。
D=A−C ……(2)
【0057】
また、1枚あたりの色材使用量の上限値Eは、標準偏差内とする場合、次の(3)式で算出される。
E=A+C ……(3)
【0058】
そして、当該色材の残量Fで印刷可能な枚数の平均値(枚数)G、上限値(枚数)H、下限値(枚数)Iは、それぞれ、次の(4)、(5)、(6)式で算出できる。
G=F/A ……(4)
H=F/D ……(5)
I=F/E ……(6)
【0059】
このようにして得られる各色材の印刷可能枚数のうちの最小値を、それぞれ、平均枚数、下限枚数、上限枚数として、ホスト側400に応答する。
【0060】
ここで、図6及び図7の例では、ユーザー識別子が「hanako」、「taro」のユーザーについては、個別的(ユーザー毎)に、印刷枚数、1枚当たりの色材使用量の平均値A、1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値Bを格納し、ユーザー識別子がない場合にはユーザー全体の印刷枚数、1枚当たりの色材使用量の平均値A、1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値Bを格納している。
【0061】
このように、統計データをユーザー毎に記憶し、各ユーザー毎に印刷可能枚数情報を応答する手段を備えることにより、各ユーザーは、自身の利用状況に応じて、自身が使用した場合のより正確な印刷可能枚数(範囲と平均枚数)を把握することができる。
【0062】
次に、統計データの更新方法について図8を参照して説明する。
図8(a)に示すように、印刷が実行されるときの印刷ページ数がN、印刷したときの色材使用量の合計をPとし、同図(b)に示すように、統計テーブルの旧値(現在値)が、印刷枚数がM、1枚当たりの色材使用量の平均値AがAm、1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値BがBmであるとしたとき、印刷枚数は「M+N」の演算をして、1枚当たりの色材使用量の平均値Aは「(M*Am+P)/(M+N)」の演算をして、1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値Bは「(M*Bm+P+P/N)/(M+N)」の演算をしてそれぞれ演算結果を更新値として格納する。
【0063】
この統計データの更新の具体例を図9に示している。この例は、図9(a)に示すように、ユーザー識別子「taro」について、追加された印刷ページ数が8枚、印刷したときの色材の使用量合計が「45」であるときに、図9(b)に示すように、統計データは「旧値」から「更新値」に更新された例である。
【0064】
そこで、制御部による色材残量及び印刷可能枚数応答処理について図10を参照して説明する。
先ず、ホスト400のプリンタドライバ401から色材残量要求があると、ユーザー識別子から該当ユーザーが統計データテーブルにエントリされているか否かを判別する。そして、該当ユーザーが統計データテーブルにエントリされているときには、該当ユーザーのエントリを選択し、該当ユーザーが統計データテーブルにエントリされていないときにはユーザー全体のエントリを選択する。
【0065】
そして、1枚当たりの色材使用量の平均値Aと1枚当たりの色材使用量の2乗の平均値Bから1枚当たりの色材使用量の標準偏差Cを算出する。その後、1枚当たりの色材使用量の平均値Aと標準偏差Cから1枚当たりの色材使用量の下限値D及び上限値Eを算出する。次いで、色材残量Fから残りの色材で印刷可能な枚数の平均値F、上限値H、下限値Iをそれぞれ算出する。
【0066】
これらの算出処理を全ての色材について行った(全色処理した)か否かを判別し、全色処理していなければ次の色の色材について上述した算出処理を繰り返し、全色処理したときには、各色材のうち、最小値の平均値F、上限値H、下限値Iを印刷可能枚数の平均枚数、上限枚数、下限枚数として抽出する。
【0067】
その後、色材残量と印刷可能枚数の平均枚数、上限枚数、下限枚数をホスト400側のプリンタドライバ401に応答する。これによって、プリンタドライバ401は受け取った色材残量と印刷可能枚数(平均枚数、上限枚数、下限枚数)を印刷プロパティなどで表示させる。
【0068】
このように、色材の使用量と印刷枚数の統計データに基づいて色材の残量で印刷が可能な枚数に関する印刷可能枚数情報を応答する手段を備えることにより、印刷に当って印刷可能な枚数を知ることができて利便性が向上する。
【0069】
ここで、印刷可能枚数情報とともに色材の残量に関する残量情報を応答する手段を備えることにより、残量に応じた印刷可能枚数を知ることができて更に利便性が向上する。また、印刷可能枚数情報として、印刷可能な下限枚数、平均枚数及び上限枚数の内の少なくとも2つの情報を含むことにより、印刷に当ってより詳しい印刷可能な枚数を知ることができて利便性が向上する。
【0070】
この場合、色材の残量で印刷が可能な枚数は、色材の平均使用量に基づいて算出することによって、平均的な印刷可能枚数を容易に知ることができる。また、色材の残量で印刷が可能な枚数は、色材の平均使用量及び偏差に基づいて算出することによって、より正確に印刷可能枚数を容易に知ることができる。つまり、一般的なプリンタの色材の使用量は、ユーザーが利用する原稿データや印刷設定等に応じて1枚当たりの使用量が多くなったり、少なくなったりするが、この使用量のばらつきは一般的なオフィス環境のような利用内容がほぼ一定の利用環境下では少ないこと、各ユーザー毎での使用量のばらつきは少ないことから、平均使用量を算出することで概ね正確な印刷可能枚数が得られる。
【0071】
次に、印刷時の統計データの更新処理について図11を参照して説明する。
先ず、印刷ジョブが投入されると、ユーザー識別子から該当ユーザーが統計データテーブルにエントリされているか否かを判別する。そして、該当ユーザーが統計データテーブルにエントリされているときには、該当ユーザーのエントリを選択して処理対象とし、該当ユーザーが統計データテーブルにエントリされていないときには新規ユーザーとしてエントリを追加して処理対象とする。
【0072】
その後、ページ印刷を開始し、ページ印刷完了した時点で、新規ユーザーの最初のページ(頁)か否かを判別する。このとき、新規ユーザーの最初のページであれば、1枚当たり使用量の平均値Aと1枚当たりの使用量の2乗の平均値Bを、最初のページの印刷ページ数と印刷に使用した色材の量で初期化する。また、新規ユーザーの最初のページであれば、該当ユーザーのエントリの1枚当たりの使用量の平均値Aと1枚当たりの使用量の2乗の平均値Bを前述した方法で、全色について更新する。
【0073】
その後、ユーザー全体のエントリの1枚当たりの使用量の平均値Aと1枚当たりの使用量の2乗の平均値Bを全色について更新する。
【0074】
そして、全ページの印刷が終了するまで上述したページ印刷開始からの処理を繰り返し、全ページの印刷が終了したときには、この印刷時の統計データの更新処理を終了する。
【0075】
このようにして印刷時に色材の使用量の統計データを更新しながら、前述したようにホスト400側から色材の残量要求があったときには、色材残量と印刷可能枚数を応答する処理を行う。
【0076】
なお、上記実施形態においては、K,C,Y,Mのインクを用いる例で説明したが、これらに加えて、ダークシアン、ダークマゼンタ、ライトシアン、ライトマゼンタ、レッド、ブルー、グリーンなど、他の色のインクを用いる場合にも同様に適用することができる。また、色材をインクに限らず、例えばトナーを用いる画像形成装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の前方側から見た斜視説明図である。
【図2】同装置の機構部の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【図3】同機構部の要部平面説明図である。
【図4】同装置のインクカートリッジの一例を示す斜視説明図である。
【図5】同装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図6】同制御部に格納する統計テーブルの具体例の説明に供する説明図である。
【図7】同制御部に格納する統計テーブルの具体例の説明に供する説明図である。
【図8】統計データの更新方法の説明に供する説明図である。
【図9】統計データの更新方法の具体例の説明に供する説明図である。
【図10】色材残量及び印刷可能枚数応答処理の説明に供するフロー図である。
【図11】統計データ更新処理の説明に供するフロー図である。
【符号の説明】
【0078】
1…装置本体
2…給紙トレイ
3…排紙トレイ
4…カートリッジ装填部
5…操作/表示部
10k、10c、10m、10y…インクカートリッジ
33…キャリッジ
34、134…記録ヘッド
35…サブタンク
36…インク供給チューブ
51…搬送ベルト
301…主制御部
315…不揮発性メモリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各色の色材を使用して画像を形成する画像形成装置において、前記色材の使用量と印刷枚数の統計データに基づいて前記色材の残量で印刷が可能な枚数に関する印刷可能枚数情報を応答する手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記印刷可能枚数情報とともに前記色材の残量に関する残量情報を応答する手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記印刷可能枚数情報は印刷可能な下限枚数、平均枚数及び上限枚数の内の少なくとも2つの情報を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記色材の残量で印刷が可能な枚数は、前記色材の平均使用量に基づいて算出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記色材の残量で印刷が可能な枚数は、前記色材の平均使用量及び偏差に基づいて算出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記統計データをユーザー毎に記憶し、各ユーザー毎に前記印刷可能枚数情報を応答する手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
各色の色材を使用して画像を形成する画像形成装置において、前記色材の使用量と印刷枚数の統計データに基づいて前記色材の残量で印刷が可能な枚数に関する印刷可能枚数情報を応答する手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記印刷可能枚数情報とともに前記色材の残量に関する残量情報を応答する手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記印刷可能枚数情報は印刷可能な下限枚数、平均枚数及び上限枚数の内の少なくとも2つの情報を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記色材の残量で印刷が可能な枚数は、前記色材の平均使用量に基づいて算出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記色材の残量で印刷が可能な枚数は、前記色材の平均使用量及び偏差に基づいて算出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記統計データをユーザー毎に記憶し、各ユーザー毎に前記印刷可能枚数情報を応答する手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−335043(P2006−335043A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165965(P2005−165965)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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