説明

画像形成装置

【課題】感光体から基板上にトナー画像を転写する際に、感光体と基板との間の間隙にて放電が生じることを防止し、感光体から基板上にトナー画像を精度よく転写する。
【解決手段】画像形成装置1では、転写部41によりガラス基板9の被転写面とは反対側の面に所定の転写電位が与えられ、感光体312からガラス基板9へのトナー画像の転写位置近傍において、感光体312の外周面との間の間隙に作用する電界がこの間隙の破壊電界以上となるガラス基板9上の被転写面の領域の少なくとも一部が、絶縁性を有する補助部材42により感光体312およびガラス基板9と非接触状態にて覆われる。これにより、転写位置近傍において、感光体312とガラス基板9との間の間隙にて放電が生じることが防止され、ガラス基板9上にトナー画像を精度よく転写することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にトナー画像または静電潜像を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
帯電した感光体を有する感光ドラムに画像形成用の光を照射して静電潜像を形成し、静電潜像にトナーを付与することによりトナー画像として顕在化させ、その後、印刷用紙に転写して印刷用紙上にトナー画像を形成する電子写真方式の印刷装置が従来より利用されている。このような印刷装置においてトナー画像を印刷用紙に転写する際には、所定の転写位置にて印刷用紙を感光ドラムの外周面に当接させつつ印刷用紙の感光ドラムとは反対側に電位を付与して電界を形成することにより、帯電した粒子(あるいは、液体中にて帯電した粒子)であるトナーを感光体上から印刷用紙に移動させる、いわゆる電界転写法が用いられる。
【0003】
ところで、トナー画像の転写の際に印刷用紙に付与される電位によっては、転写位置近傍において感光ドラムと印刷用紙との間の間隙にて電界が局所的に高くなることにより放電が生じ、トナー画像が乱れてしまうことが知られている。そこで、例えば非特許文献1および2では、転写位置の下流側にて印刷用紙の感光ドラムとは反対側にACコロナ放電器を設け、転写時に他のDCコロナ放電器から印刷用紙に付与された電荷を下流側にて除去することにより、感光ドラムと感光ドラムから分離直後の印刷用紙との間の間隙における放電の発生を抑制する技術が開示されている。また、転写位置近傍にて印刷用紙を小さな曲率にて湾曲させてその表面に沿って移動することにより、転写位置における感光ドラムの接線方向に沿って転写位置から離れるに従って感光ドラムと印刷用紙との間の間隙の幅を急激に増大させることにより放電の発生を抑制する技術も知られている。
【0004】
なお、電子写真方式の他に、複数のピン電極の集合であるマルチスタイラスを用いて誘電体層を有するドラムに静電潜像を形成する手法も知られている。
【非特許文献1】電子写真学会編,「電子写真技術の基礎と応用」,コロナ社,1988年,p.186−189
【非特許文献2】高原寛,「最近の電子写真プロセス技術と装置の最適設計・応用開発」,経営開発センター,平成元年6月30日,p.665
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、絶縁性を有し、かつ、印刷用紙に比べて厚いガラス基板に対して感光ドラムからのトナー画像の転写を行う技術の開発が進められている。所定の転写電位が付与される場合において、画像が転写される対象物の転写位置における被転写面の実際の電位は対象物のキャパシタンス(静電容量)に依存するため、ガラス基板において効率良く転写を行うには大きな転写電位を付与する必要がある。しかしながら、大きな転写電位を付与すると、転写位置近傍において感光ドラムとガラス基板との間の間隙にて電界が局所的に高くなって放電が発生し易くなってしまう。また、非特許文献1および2の手法では、ACコロナ放電器にて高電圧の交流電流が利用されるため、印刷装置内においてノイズが生じ易くなるという問題がある。ガラス基板ではその被転写面に沿って湾曲させることができないため、転写位置近傍にて対象物を小さな曲率にて湾曲させて移動する上記手法を利用することもできない。
【0006】
さらに、キャパシタンスの大きい平ベルト状の環状部材を中間転写体として設け、感光ドラムの外周に沿って設けられる他の環状部材である感光体上のトナー画像を、比較的低い転写電圧にて中間転写体に一旦転写し、その後、中間転写体からガラス基板に転写することも考えられるが、この場合においても、ガラス基板に転写する際には、比較的大きな転写電位が必要となって放電が生じ易くなってしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、トナー画像または静電潜像として画像が外周面に形成される環状部材から基板上に画像を転写する際に、転写位置近傍において環状部材と基板との間の間隙にて放電が生じることを防止し、環状部材から基板上に画像を精度よく転写することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板上にトナー画像または静電潜像を形成する画像形成装置であって、外周面上に転写前のトナー画像または静電潜像である元画像が形成される円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材を前記外周面に沿って循環移動する元画像保持部と、所定の転写位置において基板の被転写面を前記外周面に最も接近させつつ、前記基板を前記転写位置における前記環状部材の部位と同じ速度にて前記環状部材の前記部位と同じ方向であって前記被転写面に沿う進行方向に移動する移動機構と、前記外周面上の元画像を前記転写位置において基板上に転写する際に、所定の転写電位を前記基板の前記被転写面とは反対側の面に与える転写部と、前記転写位置の前記進行方向側または前記進行方向とは反対側において、前記外周面との間の間隙に作用する電界が前記間隙の破壊電界以上となる前記被転写面上の領域の少なくとも一部を、前記環状部材および前記基板と非接触状態にて覆うとともに絶縁性を有する補助部材とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置であって、前記補助部材の前記被転写面の法線方向の厚さが、前記進行方向に平行な方向に沿って前記転写位置から離れるに従って増大する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像形成装置であって、前記転写位置の前記補助部材とは反対側に配置されるとともに、前記補助部材と同様のもう1つの補助部材をさらに備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、基板上にトナー画像または静電潜像を形成する画像形成装置であって、外周面上に転写前のトナー画像または静電潜像である元画像が形成される円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材を前記外周面に沿って循環移動する元画像保持部と、所定の転写位置において基板の被転写面を前記外周面に最も接近させつつ、前記基板を前記転写位置における前記環状部材の部位と同じ速度にて前記環状部材の前記部位と同じ方向であって前記被転写面に沿う進行方向に移動する移動機構と、前記外周面上の元画像を前記転写位置において基板上に転写する際に、所定の転写電位を前記基板の前記被転写面とは反対側の面に与える転写部と、前記転写位置の前記進行方向側または前記進行方向とは反対側において、前記外周面との間の間隙に作用する電界が前記間隙の破壊電界以上となる前記被転写面上の領域の少なくとも一部を、前記環状部材および前記基板と非接触状態にて覆うとともに導電性または半導電性を有する補助部材と、前記補助部材に接続され、前記補助部材が前記転写位置の前記進行方向側に配置される場合に前記補助部材と前記基板との間の間隙に当該間隙の破壊電界より小さい電界を形成する電位を前記補助部材に付与し、前記転写位置の前記進行方向とは反対側に配置される場合に前記補助部材と前記環状部材との間の間隙に当該間隙の破壊電界より小さい電界を形成する電位を前記補助部材に付与する電位付与部とを備える。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成装置であって、前記電位付与部が、前記補助部材が前記転写位置の前記進行方向側に配置される場合に前記環状部材の表面電位よりも前記基板の前記被転写面の電位に近い電位を、また、前記転写位置の前記進行方向とは反対側に配置される場合に前記基板の前記被転写面の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い電位を前記補助部材に付与する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の画像形成装置であって、前記補助部材が、前記進行方向に垂直かつ前記被転写面に沿う方向に伸びる複数のワイヤの集合である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項4ないし6のいずれかに記載の画像形成装置であって、前記転写位置の前記補助部材とは反対側に配置されるとともに、前記補助部材と同様のもう1つの補助部材と、前記もう1つの補助部材に接続されるとともに前記電位付与部と同様のもう1つの電位付与部とをさらに備える。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置であって、前記元画像が前記外周面上の静電潜像に液体トナーが付与されて形成されたトナー画像である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1ないし3並びに8の発明では、転写位置近傍において環状部材と基板との間の間隙に絶縁性を有する補助部材を配置することにより放電が生じることを防止(抑制を含む。)し、環状部材から基板上に元画像を精度よく転写することができる。
【0017】
また、請求項2の発明では、転写位置近傍において放電が生じることをさらに防止することができ、請求項3の発明では、進行方向に平行な方向に関して転写位置の両側のそれぞれに補助部材を配置することにより、環状部材から基板上に元画像をより精度よく転写することができる。
【0018】
請求項4ないし8の発明では、転写位置近傍において環状部材と基板との間の間隙に導電性または半導電性を有するとともに電位が付与される補助部材を配置することにより放電が生じることを防止し、環状部材から基板上に元画像を精度よく転写することができる。
【0019】
また、請求項6の発明では、補助部材を容易に配置することができ、請求項7の発明では、進行方向に平行な方向に関して転写位置の両側のそれぞれに電位が付与される補助部材を配置することにより、環状部材から基板上に元画像をより精度よく転写することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置1の構成を示す図である。本実施の形態における画像形成装置1は電子写真法を用いてガラス基板上にトナーの画像を形成する印刷装置であり、トナー画像が下流の図示省略の定着装置を経由してガラス基板上に定着されることにより液晶表示装置等の平面表示装置用のカラーフィルタが製造される。なお、実際には、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色のトナーにそれぞれ対応する3つの画像形成装置1と定着装置とが一列に設けられる。
【0021】
画像形成装置1は、例えば、厚さ0.3〜0.7ミリメートル(mm)のガラス基板9の下面((−Z)側の主面)を平らな保持面にて吸引吸着にて保持するとともに金属等の導電性材料にて形成される保持部21、定盤11上に設けられるとともに図1中のY方向へと保持部21を水平に移動する基板移動機構22、保持部21に所定の転写電位を付与する転写部41、および、保持部21上のガラス基板9に対向するとともに電子写真法にて感光ドラム上にR、GまたはBの色のカラーのトナー画像を形成するプロセスユニット3を備える。
【0022】
プロセスユニット3は、図示省略のモータに減速機を介して接続される直径250mmの感光ドラム31を備え、感光ドラム31は図1中のX方向に平行な回転軸J1を中心に回転可能に支持される。感光ドラム31は、アルミニウム等の金属により形成されるとともに回転軸J1を中心とするドラム本体311を有し、ドラム本体311は電気的に接地される。ドラム本体311の外周面には、例えば、フタロシアニン顔料を有する単層型有機感光体(以下、単に「感光体312」という。)が一様に塗布される(または、蒸着される)。なお、感光ドラム31の直径は250mmには限定されないが、好ましくは200mm以上400mm以下とされる。また、感光体312はフタロシアニン顔料を有する単層型有機感光体以外に、例えば、アモルファスシリコン等の無機感光体により形成されてもよい。
【0023】
プロセスユニット3は、感光ドラム31に対向して設けられる帯電器32をさらに有し、帯電器32はイオンを発生して感光体312を帯電させる。また、感光ドラム31の周囲には帯電器32から時計回りに、画像形成用の光を出射して感光体312に静電潜像を形成する潜像形成部33、感光体312上に形成された静電潜像に液体トナー(例えば、イソパラフィン系の絶縁性の溶媒(キャリア液)に分散している湿式トナー)を付与して現像する現像部34、感光体312の表面をクリーニングするクリーナ35、並びに、光を出射して感光体312を除電する除電器36が配置される。なお、現像部34は現像液である液体トナーを供給するトナー供給部(図示省略)に接続される。
【0024】
また、保持部21上のガラス基板9は感光体312の部位の移動経路上において現像部34とクリーナ35との間にて感光体312の外周面に最も接近する。後述するように、感光体312の外周面上のトナーは感光体312とガラス基板9とが最も接近する位置にてガラス基板9の上面に転写されるため、以下の説明において、感光体312とガラス基板9とが最も接近する位置を転写位置と呼び、ガラス基板9の上面を被転写面と呼ぶ。転写位置はプロセスユニット3に対して相対的に固定された位置となる。
【0025】
転写位置の(+Y)側および(−Y)側のそれぞれには、絶縁性材料にて形成される補助部材42が設けられ、各補助部材42は感光ドラム31よりも(+X)側および(−X)側の双方から図示省略の支持部材により、感光ドラム31およびガラス基板9と電気的に接触することなく支持される。補助部材42は、転写位置からY方向に沿って離れるに従ってY方向に垂直な矩形断面(各辺がX方向またはZ方向に沿う矩形)のZ方向の長さが漸次増大する、いわゆるくさび形となっており、補助部材42の転写位置側の先端は転写位置の極近傍(例えば、転写位置からY方向に4〜8mm離れた位置)に位置する。
【0026】
図2は基板移動機構22の構成を示す図であり、図1中の(−Y)側から(+Y)方向を向いて基板移動機構22を見た場合の様子を示している。図2に示す基板移動機構22は、定盤11上において、X方向に並んで設けられるとともにそれぞれがY方向に伸びる2つのガイドレール231を有する。保持部21には、各ガイドレール231に対向する位置にスライダ232が設けられ、各スライダ232にエア供給部233から高圧のエアが供給されてスライダ232がガイドレール231に非接触にて係合し、保持部21がY方向に移動可能に支持される。また、基板移動機構22はリニアモータ24をさらに有し、リニアモータ24の固定体241は定盤11上に固定され、移動体242は保持部21に取り付けられる。そして、リニアモータ24を駆動することにより、保持部21がY方向に滑らかに移動する。
【0027】
図3は、画像形成装置1がガラス基板9上にトナー画像を形成する処理の流れを示す図である。なお、図3中のステップS12〜S15は感光体312の一部に注目した処理の流れを示しており、感光体312全体に対しては実際には時間的にほぼ並行して行われる。
【0028】
図1の画像形成装置1では、まず、感光ドラム31が回転軸J1を中心に時計回り(図1中の矢印71が示す回転方向)に一定の回転速度にて回転を開始するとともにガラス基板9も(+Y)方向へと一定の速度にて移動を開始する(ステップS11a,S11b)。プロセスユニット3では感光ドラム31の回転により、回転軸J1を中心とする円筒ドラム状の感光体312が、周囲に配置された各周辺構成(すなわち、帯電器32、潜像形成部33、現像部34、クリーナ35および除電器36)に対して連続的に移動し、これらの周辺構成による感光体312に対する処理が開始される。なお、本実施の形態におけるガラス基板9では、被転写面(すなわち、プロセスユニット3に対向する面)に格子状のブラックマトリクスが他の装置により予め形成されている。
【0029】
帯電器32では、対向する位置へと到達する感光体312の一部(以下、「対象部位」と呼ぶ。)に電荷が順次付与され、対象部位の表面を、例えば(+700)ボルト(V)にて一様に帯電させる(ステップS12)。帯電後の対象部位は潜像形成部33の光の照射位置へと連続的に移動する。潜像形成部33は、所定の波長の光を出射する複数の発光ダイオード(LED)が配列されたもの(LEDアレイ)を光源として有する。潜像形成部33には、カラーフィルタのパターンを示す画像から生成された各色成分の画像データのうち、このプロセスユニット3のトナーの色に対応する画像データが入力され、この画像データに応じて画像形成用の光が感光体312に向けて出射される。感光体312の対象部位において光が照射された部位は、表面に帯電した電荷が感光体312内に移動して除去される。また、光が照射されない部位は帯電状態がそのまま維持されるため、感光体312の表面には電荷の分布による画像(すなわち、静電潜像)が形成される(ステップS13)。潜像形成部33の光源は、必ずしもLEDである必要はなく、例えば、半導体レーザや、ランプと液晶シャッタとを組み合わせたもの等であってもよい。
【0030】
感光ドラム31において静電潜像が形成された部分(対象部位)は現像部34に対向する位置へと移動し、現像部34の現像ローラ341により液体トナー(溶媒中に分散されるとともに帯電しているトナー)が静電潜像に付与される(ステップS14)。このとき、感光体312の表面と同じ極性に帯電したトナーは感光体312上の対象部位において電荷が除去された部位にのみ付着して静電潜像が現像される。すなわち、感光体312の対象部位にトナー画像が形成される。なお、感光体312上の帯電した部位に帯電したトナーが付着するようにされてもよい。
【0031】
その後、対象部位はガラス基板9の被転写面に最も接近する転写位置へと到達し、転写位置では対象部位は感光ドラム31の回転速度に応じた速度(すなわち、感光ドラム31の外周面の回転軸J1に垂直な断面における接線方向の速度)にて正確に(+Y)方向へと移動する。また、基板移動機構22によりガラス基板9も転写位置における対象部位と同じ速度にて、対象部位の進む方向と同じ(+Y)方向を進行方向として被転写面に沿って移動しており、転写位置において感光体312の対象部位はガラス基板9の被転写面に当接する(必ずしも当接しなくてもよい。以下同様。)。このとき、ガラス基板9の被転写面とは反対側の主面(下面)に所定の転写電位(例えば、(−600)〜(−1000)V)が転写部41により保持部21を介して付与されており、これにより、ガラス基板9の被転写面はトナーとは反対の極性の電位となっている。その結果、感光体312の対象部位上のトナーがガラス基板9の被転写面へと移動する(ステップS15)。なお、ガラス基板9へのトナーの転写の際における補助部材42の役割については、画像形成装置1における全体動作の説明後に詳述する。
【0032】
対象部位は、クリーナ35の位置へと続けて移動し、クリーナ35により感光体312の対象部位に残留したトナー(すなわち、ガラス基板9に転写されなかったトナー)等の不要物が除去されて感光体312の表面がクリーニングされ、感光体312が機械的に初期状態に戻される。そして、ランプとフィルタとの組合せ、あるいは、LED等を有する除電器36により光が照射されて感光体312が除電され、電気的に初期状態に戻される。
【0033】
ステップS12〜S15の処理は感光体312上の各部位に対してほぼ並行して行われ、転写位置へと順次到達する感光体312の各部位に対しても連続的に処理が行われるため、最終的には感光体312の外周面上のトナー画像全体が転写位置においてガラス基板9の被転写面上に転写されることとなる。そして、ガラス基板9の全体への印刷が終了すると、感光ドラム31の回転が停止されるとともに、基板移動機構22が停止され、画像形成装置1による印刷処理が終了する(ステップS16a,S16b)。これにより、ガラス基板9の被転写面の全体に一の色のトナー画像が形成される。
【0034】
既述のように、実際には、R、G、Bの色にそれぞれ対応する3台の画像形成装置が準備され、一の色のトナー画像がガラス基板9上に形成されると、ガラス基板9が次の画像形成装置へと搬送されて次の色のトナー画像が形成される。これにより、3台の画像形成装置によりR、G、Bの色のトナー画像がガラス基板9上に形成され、最後に、定着装置にて加熱溶融されてガラス基板9に定着されることにより、カラーフィルタが完成する。
【0035】
次に、画像形成装置1において仮に補助部材42が設けられない場合に、転写位置近傍における感光体312の外周面とガラス基板9の被転写面との間の間隙(以下、「エア層」という。)に作用する電圧について述べる。一般的に、真空の間隙の誘電率をε、ある板状の部材の比誘電率をε、この部材の厚さをtとすると、この部材の単位面積当たりのキャパシタンスCは、(C=ε×ε/t)にて表される。画像形成装置1において仮に補助部材42が設けられない場合に、Y方向に関して転写位置近傍のある位置(以下、「注目位置」という。)に注目すると、感光体312、エア層およびガラス基板9のそれぞれの注目位置に作用する電圧は、転写部41により付与される転写電位とドラム本体311の接地電位との差を各部位のキャパシタンスの逆数の比にて分配した値となる。したがって、感光体312の比誘電率をε、厚さをt、エア層の比誘電率をεAir(ただし、εAirは1)、注目位置における厚さをtAir、ガラス基板9の比誘電率をε、厚さをtとすると、感光体312、エア層およびガラス基板9の注目位置に作用する電圧の分配比は、(t/ε):tAir:(t/ε)となる。実際には、感光体312の比誘電率ε、および、ガラス基板9の比誘電率εのそれぞれは1よりも大きく、感光体312の厚さt、および、ガラス基板9の厚さtのそれぞれは一定であるのに対して、エア層の厚さtAirは注目位置が転写位置からY方向に離れるに従って漸次増大する。よって、注目位置が転写位置からY方向に離れるに従ってエア層に作用する電圧も漸次増大することとなる。
【0036】
ここで、エア層において放電が生じる条件はパッシェンの法則によることが知られている。図4はパッシェンカーブを示す図であり、図4中の縦軸はエア層に作用する電圧を示し、横軸はエア層の厚さを示している。パッシェンカーブは、エア層において放電が生じる際のエア層の厚さに対する電圧のしきい値を示すものであり、図4中では符号81を付す二点鎖線にて示している。パッシェンの法則によれば、注目位置でのエア層に実際に作用する電圧およびエア層の厚さの組合せにより特定される図4のグラフ中の位置が、線81よりも上側の領域に含まれる場合には、注目位置にてエア層に放電が発生する。
【0037】
既述のように注目位置が転写位置からY方向に離れるに従ってエア層の厚さも漸次増大し、画像形成装置1において仮に補助部材42が設けられない場合に、転写部41により付与される転写電位が500V、1000V、1500Vとされるときには、エア層の厚さに対するエア層に作用する電圧の変化はそれぞれ図4中の線82,83,84に示すようになる。図4より、転写電位が500Vの場合にはエア層にて放電が生じる位置はなく、転写電位が1000Vの場合にはエア層の厚さがおよそ30μmから140μmまでとなるY方向の範囲にて放電が発生し、転写電位が1500Vの場合にはエア層の厚さがおよそ10μmから230μmまでとなるY方向の範囲にて放電が発生する。以下の説明において、転写電位に依存してエア層にて放電が生じるY方向の範囲を、放電発生範囲と呼ぶ。なお、放電発生範囲は転写位置の(+Y)側および(−Y)側のそれぞれにて転写位置から同じ距離の範囲となる。
【0038】
本実施の形態における画像形成装置1では、Y方向に関して理想的には放電発生範囲の全体と重なるように、補助部材42が転写位置の(+Y)側および(−Y)側のそれぞれに配置され、放電発生範囲においてエア層が感光体312の外周面と補助部材42との間の間隙の部分、および、補助部材42とガラス基板9の被転写面との間の間隙の部分に分離される。図4に示すパッシェンカーブよりエア層の厚さが小さいほどエア層の厚さに対する電圧のしきい値の比が大きくなるため、補助部材42の存在により、分離後のエア層のそれぞれにおいて放電の発生が防止(抑制を含む。)されるといえる。実際には、転写位置からY方向に離れるに従ってエア層の厚さが漸次増大するのに対し、補助部材42もガラス基板9の被転写面の法線方向(Z方向)の厚さが大きくなるため、一定の厚さの補助部材を設ける場合に比べて、感光体312の外周面と補助部材42との間の間隙、および、補助部材42とガラス基板9の被転写面との間の間隙のそれぞれの幅をY方向の広い範囲で狭くすることができ、転写位置近傍における放電の発生がさらに防止される。
【0039】
ところで、放電発生範囲は転写電位や感光ドラム31の直径等に依存するため、画像形成装置1におけるこれらの条件によっては、放電発生範囲内において転写位置からの距離が短い部分ではエア層の厚さが微小となり、補助部材42を配置することが困難となる。この場合、放電発生範囲内の転写位置から比較的離れた部分(例えば、エア層の厚さが80μm以上となる部分)においてのみ、補助部材42が感光体312の外周面とガラス基板9の被転写面との間に位置するように設けられる。この場合であっても、放電発生範囲内の補助部材42が配置されない部分(すなわち、転写位置の極近傍の部分)では、液体トナーのキャリア液が満たされるようにすることにより、感光体312の外周面とガラス基板9の被転写面との間にて放電が発生することが防止される(後述する図5および図6の画像形成装置1aにおいて同様。)。このような観点では、画像形成装置1にて形成されるトナー画像は、感光体312の外周面上の静電潜像に液体トナーを付与することにより形成されることが好ましいといえる。もちろん、転写電位や感光ドラム31の直径等によっては、粉体のトナー(すなわち、キャリア液に分散することなく帯電したトナー)が用いられてもよい。
【0040】
なお、図4のパッシェンカーブは、エア層において放電が生じる際のエア層の厚さに対する電圧のしきい値として表されるが、電圧のしきい値をエア層の厚さにて除することにより得られる電界のしきい値として表されてもよい。この場合、ある厚さのエア層に作用する電界が、線81においてこの厚さの場合における電圧から当該厚さを除することにより得られる電界(すなわち、破壊電界)以上となる場合に、エア層のこの厚さの部位において放電が発生することとなる。
【0041】
以上に説明したように、画像形成装置1では、転写位置の(+Y)側および(−Y)側のそれぞれにおいて、感光体312の外周面との間のエア層に作用する電界がエア層の破壊電界以上となる被転写面の領域の少なくとも一部が、絶縁性を有する補助部材42により感光体312およびガラス基板9と非接触状態にて覆われる。これにより、転写位置近傍において、感光体312とガラス基板9との間にて放電が生じて転写直前の感光体312の外周面上のトナー画像、または、転写直後のガラス基板9の被転写面上のトナー画像が乱されることを防止することができ、その結果、ガラス基板9上にトナー画像を精度よく転写することができる。
【0042】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置1aの転写位置近傍を示す図である。図5の画像形成装置1aでは、図1の画像形成装置1におけるくさび形の補助部材42に替えて、それぞれがX方向に伸びる複数のワイヤ431(例えば、直径50〜60μmのワイヤ)が配列して設けられる。本実施の形態では、転写位置の(−Y)側および(+Y)側のそれぞれにおいて、複数のワイヤ431の集合が補助部材(図5中では転写位置の(−Y)側の補助部材および(+Y)側の補助部材にそれぞれ符号43a,43bを付している。)とされる。各ワイヤ431は金属にて形成される芯部の周囲に樹脂コートを施すことにより形成され、ワイヤ431の全体では半導電性としての性質を示す。もちろん、ワイヤ431は半導電性の材料にて形成されてもよい。(−Y)側の補助部材43aに含まれる複数のワイヤ431には電位付与部44aが、(+Y)側の補助部材43bに含まれる複数のワイヤ431には電位付与部44bがそれぞれ電気的に接続され、各補助部材43a,43bに所定の電位が付与される。他の構成は図1の画像形成装置1と同様であり、同符号を付している。なお、各ワイヤ431としては、樹脂コートが省略された導電性を有するものが用いられてもよい。
【0043】
各補助部材43a,43bに含まれる複数のワイヤ431は、感光体312の外周面との間のエア層に作用する電界がエア層の破壊電界以上となる被転写面上の領域の少なくとも一部を覆うように感光ドラム31およびガラス基板9と非接触状態にておよそY方向に沿って並んでおり(正確には、転写位置からY方向に離れるに従ってガラス基板9から漸次離間するように(+Z)側に僅かに傾斜している。)、感光ドラム31よりも(+X)側および(−X)側の双方から図示省略の支持部材により支持される。なお、複数のワイヤ431は1本のワイヤを(+X)側および(−X)側のそれぞれの支持部材にて順次折り返されてもよい。
【0044】
画像形成装置1aでは、例えば、画像形成時における感光体312の帯電電位が(+700)V、転写部41(図1参照)により保持部21に付与される転写電位が(−600)〜(−1000)Vとされ、この場合、ガラス基板9の被転写面における電位は(−500)〜(−600)Vとなる。また、(−Y)側の補助部材43aに含まれる複数のワイヤ431には電位付与部44aより(+400)Vの電位が付与され、(+Y)側の補助部材43bに含まれる複数のワイヤ431には電位付与部44bより(−200)Vの電位が付与される。すなわち、転写位置からガラス基板9の進行方向((+Y)方向)とは反対側に配置される補助部材43aに対しては電位付与部44aによりガラス基板9の被転写面の電位よりも感光体312の表面電位に近い電位が付与され、転写位置からガラス基板9の進行方向側に配置される補助部材43bに対しては電位付与部44bにより感光体312の表面電位よりもガラス基板9の被転写面の電位に近い電位が付与される。
【0045】
本実施の形態において、上記と同様に感光体312の外周面上にトナー画像が形成された後、転写位置においてトナー画像をガラス基板9の被転写面上に転写する際には、転写位置の(−Y)側では、補助部材43aの各ワイヤ431には感光体312の表面電位と同極性(または、トナーと同極性)で僅かに小さい電位が付与されるため、各ワイヤ431と感光体312の外周面との間の間隙に転写部41による転写電位に依存しない小さな電圧が作用するのみとなり、当該間隙における放電の発生が防止される。その結果、転写直前における感光体312上のトナー画像が乱れることが防止される。なお、Y方向に関して互いに隣接する2つのワイヤ431の間のエア層の部分についても、ワイヤ431の存在により感光体312とガラス基板9との間で放電が発生することが防止される。
【0046】
そして、転写位置においてガラス基板9が感光体312の外周面と当接しつつ、この部位と同じ速度にて同じ(+Y)方向に被転写面に沿って移動して、感光体312上のトナー画像がガラス基板9の被転写面に転写される。また、転写位置の(+Y)側では、補助部材43bの各ワイヤ431にはガラス基板9の被転写面の電位と同極性で僅かに小さい電位が付与されるため、各ワイヤ431とガラス基板9の被転写面との間の間隙に感光体312の表面電位に依存しない小さな電圧が作用するのみとなり、当該間隙における放電の発生が防止され、転写直後のガラス基板9上のトナー画像が乱れることが防止される。
【0047】
このようにして、画像形成装置1aではガラス基板9の被転写面上に一の色のトナー画像が形成される。そして、他の色用の画像形成装置においても同様にガラス基板9上に当該色のトナー画像が形成され、定着装置を経由することにより、カラーフィルタが完成する。
【0048】
以上に説明したように、図5の画像形成装置1aでは転写位置の(−Y)側に配置される補助部材43aに対しては、補助部材43aと感光体312の外周面との間の間隙に当該間隙の破壊電界より小さい電界を形成するような電位が付与され、転写位置の(+Y)側に配置される補助部材43bに対しては、補助部材43bとガラス基板9の被転写面との間の間隙に当該間隙の破壊電界より小さい電界を形成するような電位が付与される。これにより、転写位置近傍のエア層において放電の発生が抑えられ、ガラス基板9上にトナー画像を精度よく転写することができる。
【0049】
また、画像形成装置1aでは、複数のワイヤ431の集合として設けられる補助部材43a,43bに替えて、図6に示すように薄い板状であって、半導電性(または、導電性)を有する補助部材(図6中では転写位置の(−Y)側の補助部材および(+Y)側の補助部材にそれぞれ符号45a,45bを付している。)が設けられてもよい。図6の補助部材45a,45bはそれぞれ電位付与部44a,44bにより上記の例と同様の電位が付与されることにより、(−Y)側の補助部材45aと感光体312との間の間隙に当該間隙の破壊電界よりも小さい電界をY方向に亘って確実に形成して放電が生じることを防止し、(+Y)側の補助部材45bとガラス基板9との間の間隙に当該間隙の破壊電界よりも小さい電界をY方向に亘って確実に形成して放電が生じることを防止することができる。
【0050】
ところで、図6の薄板状の補助部材45a,45bを転写位置の極近傍に配置するには、補助部材45a,45bを高精度に製作し、かつ、精度よく配置する必要がある。これに対し、図5の画像形成装置1aでは各補助部材43a,43bが、画像形成時におけるガラス基板9の進行方向(すなわち、(+Y)方向)に垂直かつガラス基板9の被転写面に沿う方向に伸びる複数のワイヤ431の集合とされるため、図6の薄板状の補助部材43a,43bに比べて容易に製作して転写位置の極近傍に配置することが可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0052】
上記第1および第2の実施の形態では、感光体312上のトナー画像がガラス基板9に直接転写されるが、感光体312上のトナー画像は間接的にガラス基板9に転写されてもよい。図7は他の例に係る画像形成装置1bの構成を示す図である。図7の画像形成装置1bでは、中間転写体251を有する中間転写部25が設けられ、感光ドラム31上のトナー画像は中間転写体251を介してガラス基板9上に転写される。具体的には、中間転写体251は誘電材料にて形成される平ベルト状の環状部材とされ、2つのローラ252a,252bに外接して設けられる。一方のローラ252aにはモータが接続され、モータが駆動することにより中間転写体251が感光ドラム31のトナー画像が形成された部位に当接しつつ外周面に沿って循環移動する。また、他方のローラ252bには直流電源253が接続される。図7の画像形成装置1bでは、潜像形成部33や現像部34等により感光体312上に形成されたトナー画像が、ローラ252bを介して付与される電位により循環移動する中間転写体251上に転写される。そして、トナー画像が形成された中間転写体251の部位はガラス基板9へと送られ、転写部41により中間転写体251とガラス基板9との間に電圧が付与され、補助部材42により転写位置近傍における放電を防止しつつ中間転写体251上のトナー画像がガラス基板9上に転写される。なお、図7の画像形成装置1bでは画像形成時にガラス基板9は図7中の(−Y)方向へと移動する。また、画像形成装置1,1a,1bでは現像部34が省略され、転写部41により静電潜像の電荷とは反対の極性の転写電位をガラス基板9に付与しつつ、感光体312上の静電潜像、または、感光体312から転写された中間転写体251上の静電潜像が、ガラス基板9上に転写されてもよい。
【0053】
以上のように、画像形成装置では、感光ドラム31または中間転写部25が、外周面上にガラス基板9への転写前のトナー画像または静電潜像である元画像が形成される円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材を外周面に沿って循環移動する元画像保持部としての動作を行うことにより、ガラス基板9への転写対象である元画像が転写位置へと送られてガラス基板9上に転写される。なお、複数のピン電極の集合であるマルチスタイラスを潜像形成部として設けるとともに、元画像保持部に誘電材料にて形成される環状部材を設け、環状部材の外周面と間隙を介して対向するピン電極に電圧を付与してピン電極の先端と環状部材との間にて放電を生じさせることにより、環状部材の外周面に電荷を付与して静電潜像が形成されてもよい。
【0054】
上記第1および第2の実施の形態では、画像形成時のガラス基板9の進行方向に平行なY方向に関して転写位置の両側のそれぞれに補助部材が設けられるが、転写位置の(+Y)側または(−Y)側のみに補助部材が設けられてもよい。ただし、感光体312からガラス基板9上にトナー画像をより精度よく転写するという観点では、転写位置に対して一方側の補助部材のみならず反対側にも同様のもう1つの補助部材を配置し、上記第1および第2の実施の形態のように、転写位置の(+Y)側および(−Y)側のそれぞれにて感光体312とガラス基板9との間の間隙における放電の発生を防止することが好ましい。
【0055】
また、基板移動機構22は、ガラス基板9を保持するステージである保持部21を移動するもの以外であってもよい。例えば、保持部21に替えて複数のローラに外接する環状ベルトが設けられ、いずれかのローラにモータが接続されて環状ベルトがこれらのローラの周囲を経由して循環移動することにより、環状ベルト上のガラス基板を感光体312の外周面に最も接近する転写位置にて環状の感光体312(または、中間転写体251)の接線方向に移動する移動機構が設けられてもよい。なお、画像形成装置の設計によってはガラス基板9を固定し、補助部材を含むプロセスユニットをガラス基板9に対してY方向に移動させてガラス基板9上にトナー画像を形成することも可能である。
【0056】
転写部41は、導電性の保持部21を介してガラス基板9の被転写面とは反対側の面のほぼ全体に転写電位を与える以外に、例えば、保持部を半導電性材料にて形成するとともに、保持部のガラス基板9とは反対側の面に接する導電性または半導電性のローラを転写位置に対応する位置に設け、このローラを介して保持部に電位を付与してガラス基板9に転写電位を与えるものであってもよい。すなわち、画像形成装置では、転写部41によりガラス基板9の被転写面とは反対側の面において少なくとも転写位置に最も近接する位置に転写電位が付与されることによりトナー画像の転写が実現される。
【0057】
画像形成装置はカラーフィルタの製造以外の用途に用いられてもよく、画像形成装置における処理の対象物は、ガラス基板9以外に半導体基板やプリント配線基板等の他の基板であってもよい。画像形成装置では、転写位置の近傍における放電の発生が防止されるため、厚いまたは比誘電率が小さい材料にて形成されるキャパシタンスが小さい基板であっても、高い転写電位を付与してトナー画像または静電潜像を基板上に精度よく転写して形成することができ、様々な材料にて形成される基板を処理対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】基板移動機構の構成を示す図である。
【図3】ガラス基板上にトナー画像を形成する処理の流れを示す図である。
【図4】パッシェンカーブを示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る画像形成装置の転写位置近傍を示す図である。
【図6】補助部材の他の例を示す図である。
【図7】画像形成装置の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1,1a,1b 画像形成装置
9 ガラス基板
22 基板移動機構
25 中間転写部
31 感光ドラム
41 転写部
42,43a,43b,45a,45b 補助部材
44a,44b 電位付与部
251 中間転写体
312 感光体
431 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にトナー画像または静電潜像を形成する画像形成装置であって、
外周面上に転写前のトナー画像または静電潜像である元画像が形成される円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材を前記外周面に沿って循環移動する元画像保持部と、
所定の転写位置において基板の被転写面を前記外周面に最も接近させつつ、前記基板を前記転写位置における前記環状部材の部位と同じ速度にて前記環状部材の前記部位と同じ方向であって前記被転写面に沿う進行方向に移動する移動機構と、
前記外周面上の元画像を前記転写位置において基板上に転写する際に、所定の転写電位を前記基板の前記被転写面とは反対側の面に与える転写部と、
前記転写位置の前記進行方向側または前記進行方向とは反対側において、前記外周面との間の間隙に作用する電界が前記間隙の破壊電界以上となる前記被転写面上の領域の少なくとも一部を、前記環状部材および前記基板と非接触状態にて覆うとともに絶縁性を有する補助部材と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記補助部材の前記被転写面の法線方向の厚さが、前記進行方向に平行な方向に沿って前記転写位置から離れるに従って増大することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置であって、
前記転写位置の前記補助部材とは反対側に配置されるとともに、前記補助部材と同様のもう1つの補助部材をさらに備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
基板上にトナー画像または静電潜像を形成する画像形成装置であって、
外周面上に転写前のトナー画像または静電潜像である元画像が形成される円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材を前記外周面に沿って循環移動する元画像保持部と、
所定の転写位置において基板の被転写面を前記外周面に最も接近させつつ、前記基板を前記転写位置における前記環状部材の部位と同じ速度にて前記環状部材の前記部位と同じ方向であって前記被転写面に沿う進行方向に移動する移動機構と、
前記外周面上の元画像を前記転写位置において基板上に転写する際に、所定の転写電位を前記基板の前記被転写面とは反対側の面に与える転写部と、
前記転写位置の前記進行方向側または前記進行方向とは反対側において、前記外周面との間の間隙に作用する電界が前記間隙の破壊電界以上となる前記被転写面上の領域の少なくとも一部を、前記環状部材および前記基板と非接触状態にて覆うとともに導電性または半導電性を有する補助部材と、
前記補助部材に接続され、前記補助部材が前記転写位置の前記進行方向側に配置される場合に前記補助部材と前記基板との間の間隙に当該間隙の破壊電界より小さい電界を形成する電位を前記補助部材に付与し、前記転写位置の前記進行方向とは反対側に配置される場合に前記補助部材と前記環状部材との間の間隙に当該間隙の破壊電界より小さい電界を形成する電位を前記補助部材に付与する電位付与部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置であって、
前記電位付与部が、前記補助部材が前記転写位置の前記進行方向側に配置される場合に前記環状部材の表面電位よりも前記基板の前記被転写面の電位に近い電位を、また、前記転写位置の前記進行方向とは反対側に配置される場合に前記基板の前記被転写面の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い電位を前記補助部材に付与することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の画像形成装置であって、
前記補助部材が、前記進行方向に垂直かつ前記被転写面に沿う方向に伸びる複数のワイヤの集合であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載の画像形成装置であって、
前記転写位置の前記補助部材とは反対側に配置されるとともに、前記補助部材と同様のもう1つの補助部材と、
前記もう1つの補助部材に接続されるとともに前記電位付与部と同様のもう1つの電位付与部と、
をさらに備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置であって、
前記元画像が前記外周面上の静電潜像に液体トナーが付与されて形成されたトナー画像であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−3881(P2007−3881A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184808(P2005−184808)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】