説明

画像形成装置

【課題】ファンを用いることなく,排紙トレイ周辺の温度上昇を防止するとともに,トナー容器に熱が伝達されることを防止することのできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明のプリンタ1は,トナーを用いて媒体に画像を形成する画像形成部12と,画像形成部12で画像の形成を受けた媒体上のトナー像を定着する定着部13とを有する画像形成装置であって,装置下部に吸気口22を,装置上部に排気口26を有する連通路を有し,連通路の一部である箱体25の上面が,定着部13を通過した媒体を載置する排紙トレイ24となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成装置に関する。さらに詳細には,加熱により定着処理を行う定着装置を有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では,シート上に転写されたトナー像を定着するために加熱加圧式の定着装置を有するものが多い。従来一般に,加熱された定着装置により,その周辺部材に熱の影響が及ぶことを防止するために,温度上昇防止用のファンが設けられていた。しかし,ファンによる強制対流による温度上昇防止方法では,ファンによる騒音が発生したり,消費電力が増大する等の問題があった。
【0003】
これに対し,特許文献1には,ファンを用いることなく,ダクトを設けて自然対流を促すことにより排熱する排熱装置を有する画像形成装置が開示されている。本文献の装置によれば,ダクトの吸気口を熱源部の両側に開口させ,排気口を装置上部に開口させることにより,自然対流が促進されるとされている。
【特許文献1】特開2000−259064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の画像形成装置では,熱源部(例えば定着装置)からの排熱が考慮されているのみである。しかしながら,このような定着装置を通過した用紙は,トナー像が定着されるとともに,用紙自身も加熱されて温度の高い状態となる。さらに,一般に,定着装置を通過した用紙はそのまま排紙トレイに排出される。そのため,排紙トレイ上には,比較的温度の高い状態の用紙が積載される。そして,排紙トレイ周辺が高温となるという問題点があった。
【0005】
その場合,熱により用紙上のトナーが溶けて,用紙同士が貼り付くおそれがあった。また,定着装置や排紙トレイからの熱がトナー容器に伝達されると,その内部に収容されているトナーが固着するおそれがあるという問題点があった。
【0006】
本発明は,前記した従来の画像形成装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,ファンを用いることなく,排紙トレイ周辺の温度上昇を防止するとともに,トナー容器に熱が伝達されることを防止することのできる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,トナーを用いて媒体に画像を形成する画像形成部と,画像形成部で画像の形成を受けた媒体上のトナー像を定着する定着部とを有する画像形成装置であって,装置下部と装置上部とに通気口を有する通気流路部材を有し,通気流路部材の上面が,定着部を通過した媒体を載置する排紙トレイとなっているものである。
【0008】
本発明の画像形成装置によれば,定着部は,トナー像を定着するために,媒体を加熱する。そのため,定着部と排出されたばかりの媒体とは温度の高い状態である。そして,定着部を通過した媒体が載置される排紙トレイもその媒体によって加熱される。本発明では,その上面が排紙トレイとなっている通気流路部材を有しているので,通気流路部材中の空気は排紙トレイの熱によって加熱される。さらに,通気流路部材は,装置上部と装置下部とに通気口を有するので,その途中で加熱された空気は上昇して,装置上部の通気口から外部へ流出する。従って,装置下部の通気口から装置上部の通気口へと至る空気の流れができるので,加熱されていない空気を内部に導き,排紙トレイ周辺へと流すことができる。これにより,ファンを用いることなく,排紙トレイ周辺の温度上昇を防止することができる。ここで,装置下部とは画像形成部より下方のことであり,装置上部とは画像形成部より上方のことである。さらに,装置上部の通気口は,排紙トレイと同じかそれより上方であることが望ましい。
【0009】
本発明ではさらに,排紙トレイの少なくとも一部が,通気流路部材のうち排紙トレイ以外の部分の材質よりも,高熱伝導性の材質で形成されていることが望ましい。
このようなものであれば,排紙トレイに載置された用紙の熱は通気流路部材の内部の空気に容易に伝達される。一方,通路流路部材のうち排紙トレイ以外の部分はそれほど高熱伝導性ではないので,周囲の部材への熱の伝達は防止される。
【0010】
本発明ではさらに,画像形成部に供するトナーを収容するトナーカートリッジを有し,トナーカートリッジの上方に通気流路部材の一部が配置されており,通気流路部材のうち,トナーカートリッジの上方の部分の上面が排紙トレイとなっていることが望ましい。
このようになっていれば,排紙トレイとトナーカートリッジとの間に通気流路部材の内部の空気が配置されることとなる。従って,排紙トレイが加熱された場合でも,その熱がそのままトナーカートリッジに伝達されることはない。
【0011】
本発明ではさらに,装置上部から装置下部まで貫通する中空の柱を有し,柱の少なくとも一部が通気流路部材の一部分をなしていることが望ましい。
このようになっていれば,柱に装置を支える役目と通気流路の役目とをともに担わせることができる。
【0012】
本発明ではさらに,通気流路部材の一部が,画像形成部と定着部との間を通って配置されていることが望ましい。
このようになっていれば,定着部の熱が画像形成部にそのまま伝達されることを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置によれば,ファンを用いることなく,排紙トレイ周辺の温度上昇を防止するとともに,トナー容器に熱が伝達されることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,電子写真方式によってカラー印刷可能なプリンタに本発明を適用したものである。
【0015】
本形態のプリンタ1は,図1にその概略を示すように,筐体10の内部に給紙部11,画像形成部12,定着部13等を有している。定着部13は,加熱加圧方式の定着装置を使用している。定着部13として図中に示す2本のローラは,それらの間を通る用紙に対して加熱と加圧とを同時に行うための部材である。なお,図1では,給紙部11及び画像形成部12については,その内部構成の詳細は省略して示しているが,いずれも一般的な公知のものである。例えば,図2に示すようなものとすることができる。図2は,図1を手前側から見た断面図である。図2中の左右が,図1中に矢印で示した左右方向に相当している。
【0016】
本形態の画像形成部12は,中間転写ベルト上に4色のトナー像を順に重ねて転写するいわゆるタンデム方式の画像形成装置である。このトナー像を用紙等の媒体に転写し,定着部13によって定着させることによりカラー画像を形成することができる。本形態では,各色のトナーを収容するトナー容器14を有し,これらは,画像形成部12のうち上部に配置されている。また,トナー容器14と定着部13とは,ほぼ同じ高さ位置に並んで配置されている。なお,図1中では,トナー容器14を,4本の四角柱の形状で示している。
【0017】
本形態のプリンタ1では,給紙部11から給紙される用紙に,画像形成部12において画像データに基づいたトナー像を形成する。そして,用紙に載置されたトナーを定着部13によって加熱加圧し,画像を形成する。すなわち,定着部13は発熱装置である。また,本形態で使用する各色のトナーは,加熱されることで溶融するものである。そのため,トナー容器14がある程度以上加熱されることは,内部に収容されている使用前のトナーに影響を及ぼすため,好ましくない。従って,トナー容器14は,温度上昇を防止したい箇所である。
【0018】
本形態のプリンタ1では,図1中右手前の角と右奥の角とにそれぞれ,プリンタ1の全体を支えるために,図中縦方向にプリンタ1を貫く柱21を有している。さらに図中左側にも設けられていることもある。この柱21は,中空の四角柱形状であり,最上面と最下面とはいずれも筐体10によって閉止されている。また,四角柱の各側面のうち,プリンタ1の外部に向いている面(右手前の柱21では手前面と右面)は,筐体10の一部と共通であっても良い。
【0019】
そして,それぞれの柱21の図1中下部の側面には,複数の貫通穴からなる吸気口22が設けられている。ここでは,縦長のスリット形状の貫通穴が複数形成されている。なお,この吸気口22は筐体10をも貫通して,外部に開口している。また,図では手前面のみに吸気口22を示しているが,図中右面に形成されていても良いし,両方に形成されていても良い。また,上下方向には,できるだけ下方に設けられることが望ましいが,画像形成部12より低い位置であればよい。
【0020】
さらに,柱21の中央部から分岐して,中空の分岐路23が設けられている。柱21の内部空間と分岐路23の内部空間とは,その分岐箇所Dで連通されている。この分岐箇所Dの位置は,定着部13の高さ位置よりやや下方で,吸気口22より上方である。この分岐箇所Dは,両方の柱21で同じ高さ位置にあっても良いし,他の部材の配置などとの関係で多少異なる位置となっても構わない。
【0021】
さらに本形態のプリンタ1は,トナー容器14の上部に,中空の箱体25が配置されている。箱体25は,図3に示すように,分岐路23と連通されている。さらに,箱体25の上面は外部に露出され,その一部が,画像形成された用紙を載置するための排紙トレイ24となっている。さらに,箱体25の先端部(図1中左方)に,多数の排気口26が設けられている。排気口26は,プリンタ1の上面と左面とにおいて,外部に開口している。なお,排気口26の配置は,プリンタ1の上面と左面とのうちのいずれかのみとしてもよい。この排気口26は,トナー容器14よりも高い位置にある。
【0022】
このようになっていることから,図1に示すように,柱21(主に吸気口22から分岐路23との分岐箇所Dまで),分岐路23,箱体25の内部は全て連通され,その空間全体を連通路と呼ぶ。この連通路が,通気流路部材に相当する。すなわち,本形態のプリンタ1では,図1と図3に破線の矢印で示すように,
外部→吸気口22→柱21→分岐路23→箱体25→排気口26→外部
と連通されている。この連通路は,吸気口22と排気口26とでのみ外部と連通されているため,内部の空気は,吸気口22と排気口26だけからしか出入りできない。そして,連通路のうち,最も低い位置に吸気口22が,最も高い位置には排気口26が,それぞれ形成されている。
【0023】
なお,分岐路23は,図1と図3に示すように,定着部13の軸方向端部の外側から,定着部13と画像形成部12との間を通り,箱体25へと至る。このとき分岐路23は,定着部13からあまり遠くない位置を通る。特に,分岐路23の一部によって,定着部13とトナー容器14との間が塞がれるように配置されている。また,箱体25がトナー容器14より上部に配置され,その上面が排紙トレイ24であるので,排紙トレイ24とトナー容器14との間に箱体25の内部の空気があることになる。
【0024】
本形態のプリンタ1では,主な発熱源は定着部13と,定着部13から排出されたばかりの用紙Pである。用紙Pは,加熱されて定着された後そのまま排出されるので,排出された直後はある程度高温の状態となっている。従って,定着部13の周囲や排紙トレイ24は,これらの発熱源によって加熱される。定着部13から発生した熱は,主に分岐路23中の空気を加熱する。加熱された空気は上昇するので,箱体25を通って排気口26から外部へ排気される。このとき,連通路には吸気口22から,比較的低温の外部の空気が供給される。
【0025】
そして,定着部13とトナー容器14との間を遮るように,分岐路23が設けられているので,定着部13からの熱がトナー容器14に直接伝達されることはない。定着部13の熱によって加熱された連通路の内部の空気は,すぐに排気口26へ向かって移動するので,その空気の熱がトナー容器14に伝達されることもない。すなわち,定着部13の熱によってトナー容器14が加熱されることは防止されている。さらに,トナー容器14の上部に箱体25が配置されているので,トナー容器14が,排紙トレイ24上に載置された用紙の熱を直接受けることはない。
【0026】
さらに本形態では,連通路のうち,排紙トレイ24は高熱伝導性の材質によって形成されている。例えば,金属が用いられる。あるいは,合成樹脂のうち高熱伝導性といわれる種類のものでもよい。このようになっているので,排紙トレイ24上に排紙された用紙Pの熱は,排紙トレイ24を介して,すばやく連通路内の空気に伝達される。一方,箱体25のその他の壁面や柱21,分岐路23等は,一般的な合成樹脂等の低熱伝導性の部材である。そのため,連通路の内部の空気から他の部材,例えば,トナー容器14への熱の伝達速度は遅い。
【0027】
また,本形態のプリンタ1では,排気口26は,箱体25の先端部に形成されている。この位置は,通常は用紙Pが載らない箇所であり,用紙Pによって塞がれることはない。従って,多数の用紙が排出された後でも,連通路からの空気の排出は確保されている。これにより,連通路には確実に空気が流される。また,排気口26から排出される空気によって,用紙Pがばたつくこともない。
【0028】
以上詳細に説明したように,本形態のプリンタ1では,装置下部に設けられた吸気口22と装置上部に設けられた排気口26とこれらを連通する連通路とを有しているので,連通路の内部の空気が加熱されたとき,吸気口22から排気口26へと至る空気の流れが自動的に形成される。従って,定着部13または排紙された用紙Pによる熱がトナー容器14に伝わることが防止されている。これにより,ファンを用いることなく,排紙トレイ周辺の温度上昇を防止することができる。従って,ファンによる騒音がなく,ファンの駆動のために電力を消費することもない。
【0029】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,高熱伝導性の部材とするのは排紙トレイ24の一部のみでも良い。例えば,排紙トレイ24のうち小サイズの用紙が載置される部分のみとしてもよい。またあるいは,サーマルビアとすることもできる。
【0030】
また例えば,柱を有していない機種の場合では,連通路のためのダクトを設ければよい。柱21は2本であるとしたが,1本でも良いし,3本以上であっても良い。また,分岐路23の配置は一例であり,これに限るものではない。また例えば,吸気口22や排気口26の各貫通孔の形状は,図示のような長方形に限らず,円孔や長丸でもその他の形状でも良い。また,カラープリンタに限らず,モノクロプリンタやコピー機,FAX等の画像形成装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本形態に係るプリンタを示す透視斜視図である。
【図2】本形態に係るプリンタを示す断面図である。
【図3】本形態に係るプリンタを示す平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 プリンタ
12 画像形成部
13 定着部
21 柱
22 吸気口
24 排紙トレイ
25 箱体
26 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを用いて媒体に画像を形成する画像形成部と,前記画像形成部で画像の形成を受けた媒体上のトナー像を定着する定着部とを有する画像形成装置において,
装置下部と装置上部とに通気口を有する通気流路部材を有し,
前記通気流路部材の上面の一部が,前記定着部を通過した媒体を載置する排紙トレイとなっていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記排紙トレイの少なくとも一部が,前記通気流路部材のうち前記排紙トレイ以外の部分の材質よりも,高熱伝導性の材質で形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において,
前記画像形成部に供するトナーを収容するトナーカートリッジを有し,
前記トナーカートリッジの上方に前記通気流路部材の一部が配置されており,前記通気流路部材のうち,前記トナーカートリッジの上方の部分の上面が前記排紙トレイとなっていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
装置上部から装置下部まで貫通する中空の柱を有し,
前記柱の少なくとも一部が前記通気流路部材の一部分をなしていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記通気流路部材の一部が,前記画像形成部と前記定着部との間を通って配置されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−310103(P2008−310103A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158374(P2007−158374)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】