説明

画像形成装置

【課題】省エネルギー性と利便性とを両立させることのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明の課題は、画像形成要求なしに移行時間Tが経過すると低電力モードに移行する画像形成装置において、期間A(低電力モード開始後の経過時間がt1未満の期間)内に画像形成が要求された場合は次回の低電力モードへの移行時間T’をTより短くし、期間B(上記経過時間がt1以上t2未満の期間)内に画像形成が要求された場合は移行時間T’をTと同一とし、期間C(上記経過時間がt2以上の期間)内に画像形成が要求された場合は移行時間T’をTより長くする移行時間設定部を設けることで達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、又はファクシミリ装置等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の機器において省エネルギー化が図られており、画像形成装置においても消費電力の削減が試みられている。代表的な消費電力の削減方法として、非画像形成中に表示部又はヒ−タ等への電力供給を低減することで、消費電力を待機モードよりもさらに削減する低電力モ−ドで画像形成装置を動作させる技術が挙げられる。
【0003】
例えば特許文献1の発明は、消費電力算出機能によりユーザが使用端末の消費電力値を把握することができる画像形成装置を提供することを目的としており、次のような構成となっている。すなわち、この画像形成装置では、電源投入後、各部のイニシャライズが終わると、タイマがカウントを開始して待機状態の消費電力値が算出され、待機状態中に省エネルギーモードへの移行条件を検知すると、省エネルギーモードに移行して不必要な電源系を遮断する。
【特許文献1】特開2002−225395号公報(2002年8月14日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術では、ユーザ自身が省エネルギーモードへ移行するための条件設定はユーザが行うようになっている。そのため、省エネルギー効果を高めるか、立ち上げを速くして利便性を良くするかはユーザが個々に判断することになる。また、ユーザにとってはこのような条件設定を行うことは負担となるため、一旦設定した条件を変更することは少ない。それゆえ、設定された条件によっては、期待される程の省エネルギー効果が得られない、又は逆に利便性に著しく劣るという問題が起きることがあった。
【0005】
このような問題点に鑑み、本発明は、省エネルギー効果と利便性とを両立させることのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、画像形成要求に応じて画像形成を実行する画像形成装置であって、外部から画像形成要求を受け付ける受付部と、画像形成後、上記受付部が画像形成要求を受け付けずに所定の移行時間が経過したときに、画像形成装置全体における消費電力を待機状態より低減させる低電力モードを実行する電力制御部と、移行時間Tによって低電力モードを開始後、最初の画像形成要求を受け付けるまでの経過時間を測定するタイマと、上記経過時間が所定の範囲未満であれば、次の低電力モード移行時の上記移行時間T’をTより長く設定し、上記経過時間が上記所定の範囲内であれば上記移行時間T’をTと同一とし、上記経過時間が上記所定の範囲を超えれば上記移行時間T’をTより短く設定する移行時間設定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記画像形成装置は、移行時間設定部によって、低電力モードに移行してから最初の画像形成要求までの時間が一定時間より短ければ、移行時間T’を長くすることで、次回の低電力モードへの移行を遅らせることができる。こうすることで、頻繁に画像形成動作が要求される場合には低電力モードからの復帰電力を低減することができると共に、立ち上がりにかかる時間を短くして、利便性を高めることができる。また逆に、低電力モードへ移行してから最初の画像形成要求までの時間が一定時間よりも長ければ、移行時間T’を短く設定することで、待機時間を短くし、待機状態にて消費する電力消費を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態について、以下、図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明で特に言及しない構成については、従来公知の技術を好適に利用することができる。
【0009】
〔1.複合機〕
図1は、本発明の実施の一形態である複合機(画像形成装置)1の要部構成を示すブロック図である。本実施形態では、画像形成装置の一例としてプリンタ、ファクシミリ、コピー機として機能し得る複合機を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の画像形成装置として実施可能である。
【0010】
図1に示すように、この複合機1は、ユーザによる入力を受け付ける操作盤2、ネットワークを介して外部コンピュータと画像データ等を授受するためのインターフェイス3、外部ファクシミリと画像データ等を授受するための通信部4を備えることで、外部から画像形成要求を受け付けることができる。さらに、複合機1は、液晶表示素子等で形成され、画像処理についての情報等をユーザに示すための表示部5、画像形成及びスキャナ機能等を備えたプリンタ部6、複合機1内の各部材を制御するための制御装置7、タイマ群8等を備える。操作盤2、インターフェイス3、通信部4は、外部から画像形成要求を受け付けることができる受付部として機能することができる。
【0011】
制御装置7は、CPU,RAM,ROM,各種ドライバ及び各種IOを含むマイクロコンピュータシステム等で構成されており、移行時間設定部72、及び電力制御部73を備える。
【0012】
電力制御部73は、移行時間設定部72によって設定された移行時間に応じて複合機1内の各部材を制御することで、後述するように待機モード及び低電力モードを実行することができる。移行時間設定部72は、複合機1が低電力モードに移行してから、操作盤2、I/F3、通信部4等が新たな画像形成要求を受け付けるまでの経過時間に基づいて、移行時間を設定可能である。移行時間設定方法については後述する。
【0013】
タイマ群8は、後述のタイマa、タイマbを含み、電力制御部73による待機モードから低電力モードへの切り替えや、移行時間制御部72による移行時間の設定等に利用される。
【0014】
複合機1の更に具体的な構成について、図2を参照して説明する。図2は、プリンタ部6を中心とした複合機1の要部構成を示す正面図である。
【0015】
図2に示すように、複合機1は、排出部80及び本体90を備えると共に、プリンタ部6として、画像形成部61(61Y、61M、61C、61K)、転写ユニット62、定着装置63、給紙搬送部64、図示しないスキャナ及び内部インターフェイス部等を備える。
【0016】
画像形成部61は電子写真法を採用しており、回転可能な感光体ドラム611を備えると共に、感光体ドラム611の回転方向に沿ってクリーニング部612、帯電部613、レーザユニット614、現像部をそれぞれ備える。現像部は、感光体ドラム1上にトナーを搬送する現像ローラ616、現像ローラ616にトナーを供給する供給ローラ617、各色のトナーを収容するトナー収容部619を備える。
【0017】
画像形成時には、帯電部613が感光体ドラム611を一様に帯電させた後、レーザユニット614が光による除電で静電潜像を描いて、現像部が静電潜像を各色のトナーで現像する。そして、転写ユニット62による転写の後、クリーニング部612が感光体ドラム611から転写後の残トナーを除去する。
【0018】
現像部によって現像された画像は、転写ユニット62によって用紙上に転写される。転写ユニット62は、転写ベルト621、駆動ローラ622、転写部623を含む、転写ベルトをこの転写ベルトユニット26は、転写ベルト621及び駆動ローラ622によって、給紙搬送部64によって搬送された用紙を吸着し、各感光体ドラム611に接触する位置にタイミング良く搬送する。そして、感光体ドラム611上のトナー画像を転写部623によって用紙上に転写する。
【0019】
定着装置63は、ヒートローラ631による熱圧着によって、トナー画像を用紙上に定着させる。定着装置63には、ヒートローラ631の温度を制御する制御回路90が接続されている。
【0020】
こうしてトナー画像が定着された用紙は、給紙搬送部64によって画像形成装置本体90の外部に設けられた排出部80まで搬送され、印刷が終了する。
【0021】
〔2.待機モード・低電力モード〕
待機モード及び低電力モードについて、図3を参照して説明する。図3は複合機1のモード切替についての処理動作を示すフローチャートである。
【0022】
電源が投入されると、複合機1において初期設定等の起動動作が行われる(S1)。
【0023】
起動後の複合機1は待機モードに入る(S2)。待機モードとは、各部を画像形成要求に迅速に対応できるような状態に保持するものである。待機モードの具体的な動作は限定されないが、例えば用紙搬送部64等は停止させつつ、ヒートローラ631の温度は画像形成時と同一、又はそれより低いが容易に画像形成時の温度にまで復帰できるような温度に保持してもよい。また、表示部5は印刷可能である旨画面を表示した状態で保持されてもよい。
【0024】
待機状態になると共に、タイマaによる待機時間のカウントが開始される(S3)。画像要求が受け付けられるか(S4でYes)、待機時間がTに達するか(S7でYes)、操作盤2等を介して電源OFFの指示を受け付ける(S13でYes)まで、複合機1は待機状態を継続し、かつタイマaによる待機時間のカウントも継続される。
【0025】
画像形成要求が受け付けられると(S4でYes)、タイマaのカウントはリセットされ(S5)、プリンタ部6による画像形成動作が実行される(S6)。その後、複合機1は再び待機モードに入る。
【0026】
一方、画像形成要求がないまま待機時間がTに達すると(S4でNo、S7でYes)、タイマaのカウントはリセットされ(S8)、複合機1は低電力モードに移行する(S9)。低電力モードは、画像形成要求があるか(S10でYes)、電源OFFの指示がある(S10でNoかつS12でYes)まで継続される。低電力モードとは、待機モードよりさらに消費電力を低減させるモードである。具体的な動作は限定されないが、電力制御部73により複合機1内の各部、特にプリンタ部6及び表示部5への電力供給回路の一部を、遮断又は他の回路に切り替えればよい。さらに具体的には、電力制御部73は、通信部4等の外部からの画像形成要求を受け取る最小限の部材のみ通電状態とし、表示部5、プリンタ部6、特に制御回路90を介したヒートローラ631への電力供給を遮断する等の処理を行うことができる。
【0027】
画像形成指示があれば、電力制御部73はプリンタ部6及び表示部5等、画像形成動作に必要な部材への電力供給を再開する(復帰動作、S11)。なお、表示部5等、画像形成以外にも関与する部材については、画像形成要求に限らず、操作盤2、インターフェイス3、通信部4のいずれかが入力を受け付ければ復帰するようになっていてもよい。
【0028】
復帰後、画像形成動作(S6)を終了すると、複合機1は再びステップS2から同様の動作を繰り返す。
【0029】
図4は、複合機1の消費電力の変化の一例を示すグラフであり、横軸が時間、縦軸が消費電力を表す。図4に示すように、低電力モードからの復帰時には起動時と同程度の大きな電力を要する。それに対して、待機モードから画像形成動作を行うには、それほど大きな電力を要しない。しかし、待機モード中の消費電力は低電力モードの消費電力より大きくなる。
【0030】
〔3.移行時間の設定方法〕
複合機1では、待機モード開始から低電力モード開始までの移行時間Tが可変になっている。複合機1は、移行時間Tを設定するために、図5に示す処理動作を行うことができる。図5の処理動作は、ステップS101〜S103処理ステップを加えた以外は図3の処理動作と同様である。そのため、同じステップについては同符号を付すか、図示を適宜省略する。
【0031】
上述したように、待機時間が移行時間Tに達すると、低電力モードへの移行が実行される(S9)。低電力モードに移行してからの経過時間は、タイマbによってカウントされる(S101)。画像形成要求があると(S10でYes)、カウントされた時間に基づいて、移行時間設定部72によって新たな移行時間T’を設定する(S102)。そしてタイマbはリセットされ(S103)、電力制御部73は複合機1の電力状態を復帰させる(S11)。後の動作については図3で説明した通りである。
【0032】
ステップS102の移行時間設定についてより具体的に説明する。タイマbのカウント結果は、低電力モード開始から画像形成要求受付までの経過時間である。移行時間設定部72は、この経過時間と所定範囲との差に応じて、次の低電力モードへの移行時間を変更することができる。この所定範囲を、図4に期間B(経過時間がt1以上t2未満の期間)として示す。なお、「所定範囲」とは、任意に設定可能な範囲であって、本発明の目的を達成可能な範囲であれは特に限定されるものではない。例えばt2は、ヒートローラ631の温度が充分に低下する時間とすることができる。
【0033】
移行時間設定部72によって新たに設定される移行時間T’は、前回の移行時間Tを用いてT’=T+ΔTと表すことができる。移行時間設定部72は、低電力モード開始(経過時間0)後、画像形成動作が要求されるまでの経過時間が所定範囲に満たない場合、すなわち期間A(経過時間が0以上t1未満の期間)内に画像形成要求が受け付けられた場合には、ΔT>0として移行時間Tより長い移行時間T’を新たに設定する(図6)。また、上記経過時間が所定範囲内であった場合、すなわち画像形成要求が期間B内に受け付けられた場合は、T=0として移行時間Tを維持する(図7)。そして、上記経過時間が所定範囲より長い場合、すなわち期間C(経過時間がt2以上の期間)内に画像形成要求が受け付けられた場合は、ΔT<0として移行時間Tより短い移行時間T’を新たに設定する(図8)ことができる。
【0034】
より具体的には、例えば、上記経過時間とΔTとを対応付けたテーブルが制御装置7内に予め記憶されていて、移行時間設定部72はこのテーブルから経過時間に応じたΔTを選択するようになっていてもよい。このとき、ΔTの絶対値は、上記経過時間が期間Bの範囲から離れるほど大きくなるように設定されていることが好ましい。また、移行時間設定部72は、上記経過時間と期間Bの範囲との差に定数(経過時間に対するTの増加率)を乗じて得られた数をΔTとすることもできる。上述のテーブル及びこの定数は、予め製造過程で設定されていてもよいし、ユーザにより設定可能とすることもできる。
【0035】
このような移行時間変更動作は、常に行うものであってもよいし、表示部6及び操作盤2を介してユーザに「移行時間変更モード」等の特定のモードを選択させ、このモードが選択された場合にのみ行うようにしてもよい。
【0036】
また、移行時間設定部72によって設定変更を行うまでは、移行時間は初期設定値とすればよい。この初期設定値は、製造時に予め制御装置7に組み込まれている場合もあれば、ユーザが設定可能な場合もある。
【0037】
以上に述べたように、本実施形態の複合機1は、タイマbによって画像形成終了後の次の画像形成要求(低電力モード中の復帰要求)の発生時間を測定し、この発生時間から使用頻度が高いと判断される場合には、移行時間設定部72によって移行時間を長く、使用頻度が低いと判断される場合には移行時間を短く設定することができる。こうして、移行時間設定部72は、複合機1の使用状況に合わせて移行時間を設定することができるので、省エネルギーと利便性とを両立させることができる。また、複合機1は移行時間設定を自動的に行うことができるので、ユーザによる詳細な移行時間設定を必要とせず、ユーザにとっては利便性が非常に高い。
【0038】
以上の実施形態において、異なる実施形態として述べた技術は、それぞれ組み合わせて使用することができ、さらにこれらの技術に公知の技術を組み合わせて得られる技術範囲についても、本発明に含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の一形態である画像形成装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】上記画像形成装置のプリンタ部及びその周辺の部材を示す正面図。
【図3】上記画像形成装置における待機モード及び低電力モード実行動作を表すフローチャート。
【図4】上記画像形成装置における経過時間に対する消費電力量を表すグラフ。
【図5】待機モードから低電力モードへの移行時間設定時における画像形成動作要求状況の集計動作を表すフローチャート。
【図6】ΔT>0の場合、移行時間TをT’に変更したときの消費電力量を示すグラフ。
【図7】ΔT=0の場合、移行時間TをT’に変更したときの消費電力量を示すグラフ。
【図8】ΔT<0の場合、移行時間TをT’に変更したときの消費電力量を示すグラフ。
【符号の説明】
【0040】
1 複合機(画像形成装置)
2 操作盤(受付部)
3 インターフェイス(受付部)
4 通信部(受付部)
5 表示部
6 プリンタ部
7 制御装置
72 移行時間設定部
73 電力制御部
8 タイマ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成要求に応じて画像形成を実行する画像形成装置であって、
外部から画像形成要求を受け付ける受付部と、
画像形成後、上記受付部が画像形成要求を受け付けずに所定の移行時間が経過したときに、画像形成装置全体における消費電力を待機状態より低減させる低電力モードを実行する電力制御部と、
移行時間Tによって低電力モードを開始後、最初の画像形成要求を受け付けるまでの経過時間を測定するタイマと、
上記経過時間が所定の範囲未満であれば、次の低電力モード移行時の上記移行時間T’をTより長く設定し、上記経過時間が上記所定の範囲内であれば上記移行時間T’をTと同一とし、上記経過時間が上記所定の範囲を超えれば上記移行時間T’をTより短く設定する移行時間設定部と、を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−46516(P2008−46516A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223833(P2006−223833)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】