説明

画像形成装置

【課題】帯電器からの汚れの除去が容易であるとともにクリーニングブレードの反転現象を抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置100は、感光体ドラム31A、クリーニングブレード51A、帯電装置32A及びクリーニングローラ37Aを備える。クリーニングブレード51Aは、周面に感光体ドラム31Aの回転方向に対してカウンター方向に当接する。帯電装置32Aは、周面に接触するように配置される。クリーニングローラ37Aは、帯電装置32Aに付着した除去対象物を除去する。初期駆動時にクリーニングブレード51Aと周面との当接箇所に塗布されるクリーニングブレード51Aの反転抑制剤として、トナーと同様の成分からなる粉状物であって体積平均粒径3.0μm以上5.0μm以下の粉状物に対して3.0wt%以上9.0wt%以下の外添剤が添加されてなるパウダを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クリーニングブレードが像担持体の周面に像担持体の回転方向に対してカウンター方向に当接し、接触式の帯電器及びこの帯電器の汚れを除去するクリーニング部材を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像形成装置では、環境保護の観点からオゾン発生量が少ない接触式ローラ型の帯電器が用いられることが多い。接触式ローラ型の帯電器には、クリーニングブレードと感光体ドラムとの間を通り抜けたトナーが付着しやすい。トナーの粒径が小さい方がクリーニングブレードと感光体ドラムとの間を通り抜けやすいので、帯電器へのトナーの付着を防ぐためには、トナーの粒径は大きい方が好ましい。帯電器にトナーが付着する等して帯電器が汚れると、帯電性能が低下する。そこで、帯電器を清掃するクリーニング部材を備える画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。従来の画像形成装置では、帯電器からトナーを除去するためにはトナーの粒径が大きい方が好ましい。従来の画像形成装置では、粒径7.0μm程度のトナーが用いられている。
【0003】
ところで、従来の画像形成装置の中には、クリーニングブレードが感光体ドラムの周面に対してカウンター方向に当接しているものがある。このような画像形成装置では、新品装置の初期駆動時や、クリーニングブレード又は感光体ドラムの少なくともいずれか一方の部品交換後の初期駆動時といった、部品組み立て後の初期駆動時に、クリーニングブレードと感光体ドラムの周面との摩擦力が大きいために、クリーニングブレードの先端部が反り返る反転現象が発生することがあった。そこで、反転現象を抑制する反転抑制剤として、上述のような初期駆動時にクリーニングブレードと感光体ドラムの周面との当接箇所に、通称カイナーと呼ばれるポリフッ化ビニリデン粉体が塗布されている。
【特許文献1】特開平5−297690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、カイナーの体積平均粒径は2.0μmと小さいので、帯電器に付着しやすい上に、帯電器からカイナーを除去することが困難であり、除去に手間がかかる。一般的に、カイナーはトナーの3倍以上高価である。さらに、従来から、2回目以降の画像形成動作では、主に感光体ドラムの周面の残留トナーが、反転抑制剤の役割を果たすことが知られている。そこで、初期駆動時に用いられる反転抑制剤としても、カイナーに代えてトナーを用いることが考えられる。
【0005】
ところが、反転抑制剤としてカイナーに代えてトナーを用いた場合、トナーの粒径が従来のように7.0μmと大きい場合、トナー同士の凝集力が小さく、トナーがクリーニングブレードに馴染みにくい。このため、クリーニングブレードと感光体ドラムとの摩擦力がカイナーを用いた場合より大きくなり、反転現象を抑制できない。
【0006】
一般的に、トナーには、トナーの流動性を高めるための外添剤が添加されているが、トナーの外添剤の割合を一般的な2.0wt%から例えば9.0wt%へ増やした場合でも、トナーの粒径が7.0μmと大きいので、反転現象は抑制されない。
【0007】
この発明の目的は、帯電器からの汚れの除去が容易であるとともにクリーニングブレードの反転現象を抑制できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の画像形成装置は、像担持体、クリーニングブレード、帯電器、及びクリーニング部材を備える。像担持体は、周面にトナー像を担持する。クリーニングブレードは、周面に像担持体の回転方向に対してカウンター方向に当接し、周面に残留するトナーを含む除去対象物を周面から除去する。帯電器は、周面に接触するように配置され、周面を所定の電位に帯電させる。クリーニング部材は、帯電器に付着した除去対象物を帯電器から除去する。初期駆動時にクリーニングブレードと周面との当接箇所に塗布されるクリーニングブレードの反転抑制剤として、トナーと同様の成分からなる粉状物であって体積平均粒径3.0μm以上5.0μm以下の粉状物に対して3.0wt%以上9.0wt%以下の外添剤が添加されてなるパウダを用いる。
【0009】
この構成では、粉状物の粒径が一般的なトナーの粒径7.0μmより小さい上に、3.0wt%以上9.0wt%以下の外添剤が粉状物に添加されているので、パウダの流動性が向上し、パウダがクリーニングブレードに馴染みやすくなる。このため、クリーニングブレードと感光体ドラムとの摩擦力が小さくなり、反転現象が抑制される。また、粉状物の粒径がカイナーの体積平均粒径2.0μmより大きいので、パウダが帯電器に付着した場合でも、帯電器からのパウダの除去が容易である。
【0010】
外添剤は、シリカ、アルミナ、又はチタニアのうちのいずれかであることが好ましい。外添剤は、一般的に用いられるシリカに限定されず、アルミナやチタニアであっても、パウダの流動性を適度に高めることができるので、クリーニングブレードの反転現象を抑制することができる。
【0011】
クリーニングブレードは、ソリッドゴム製であることが好ましい。クリーニングブレードをソリッドゴム製にすることで、クリーニングブレードが適度な弾力性を有し、像担持体の周面に残留したトナーの除去効率が向上する。したがって、帯電器の汚れを抑制することができる。
【0012】
クリーニング部材は、ローラ型であることが好ましい。クリーニング部材をローラ型にすることで、パウダが帯電器に付着した場合でも、パウダを帯電器から容易に除去することができる。
【0013】
クリーニング部材は、樹脂発泡体からなることが好ましい。クリーニング部材が樹脂発泡体で構成されていれば、パウダが帯電器に付着した場合でも、パウダを帯電器からより容易に除去することができる。
【0014】
粉状物は、画像形成用トナーの製造時に、画像形成用トナーとの分級によって製造されるものであってもよい。トナーの製造時に行われる分級工程によって画像形成用トナーと分級された、一般的には廃棄されるトナーが、粉状物として用いられる。これによって、低コスト化、及び環境保護を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、クリーニングブレードの反転抑制剤として、トナーと同様の成分からなる粉状物であって体積平均粒径3.0μm以上5.0μm以下の粉状物に対して3.0wt%以上9.0wt%以下の外添剤が添加されてなるパウダを用いることで、粉状物の粒径が一般的なトナーの粒径より小さく、カイナーの粒径より大きい上、外添剤によって流動性を高められるので、帯電器からの汚れの除去が容易であるとともにクリーニングブレードの反転現象を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、この発明の実施形態に係る画像形成装置100の概略の正面断面図である。
【0017】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像剤を用いて画像を形成するタンデム方式のカラー画像形成装置である。画像形成装置100は、スキャナ等の原稿読取装置によって読み取られた画像データ、又は、図示しないネットワークを介して通信自在に接続されたPC(Personal Computer)等の端末装置から送信される画像データに基づいて、記録媒体である用紙Pに、カラー画像又はモノクロ画像を形成する。
【0018】
画像形成装置100は、給紙トレイ110、搬送装置120、画像形成ユニット130、及び定着装置140を備えている。
【0019】
給紙トレイ110は、画像を形成すべき多数の用紙Pを収容する。
【0020】
搬送装置120は、駆動ローラ121、従動ローラ122、及び搬送ベルト123を備えている。搬送ベルト123は、無端ベルトであって、駆動ローラ121と従動ローラ122との間に張架されている。搬送ベルト123は、回転することで、給紙トレイ110から供給された用紙Pを、定着装置140へ向けて搬送する。
【0021】
画像形成ユニット130は、感光体ドラム31A〜31D、帯電装置32A〜32D、露光ユニット33A〜33D、現像装置34A〜34D、転写ローラ35A〜35D、及びクリーニングユニット36A〜36Dを備えている。感光体ドラム31A〜31Dは、この発明の像担持体に相当する。
【0022】
画像形成ユニット130は、ブラック、並びに、カラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン、マゼンタ、及びイエローの4色の各色相に対応した画像データを用いて画像を形成する4個の画像形成部30A,30B,30C,30Dから構成されている。
【0023】
ブラック用の画像形成部30A、シアン用の画像形成部30B、マゼンタ用の画像形成部30C、及びイエロー用の画像形成部30Dは、搬送ベルト123に沿って、用紙搬送方向の下流側からこの順に、一列に並設されている。
【0024】
以下では、主としてブラック用の画像形成部30Aについて説明する。他の色相用の画像形成部30B〜30Dは、画像形成部30Aと同様に構成されている。
【0025】
画像形成部30Aは、図1において時計方向に回転する感光体ドラム31Aを備えている。感光体ドラム31Aの周囲には、感光体ドラム31Aの回転方向に沿って、帯電装置32A、露光ユニット33A、現像装置34A、転写ローラ35A、及びクリーニングユニット36Aが、この順に配置されている。転写ローラ35Aは、搬送ベルト123及び用紙Pを挟んで感光体ドラム31Aに対向する位置に配置されている。
【0026】
帯電装置32Aは、この発明の帯電器に相当し、感光体ドラム31Aの周面を、所定の電位に均一に帯電させる。帯電装置32Aとして、接触式のローラ型の帯電装置が用いられている。なお、帯電装置32Aは、接触式であればよく、特にローラ型に限定されるものではない。
【0027】
露光ユニット33Aは、図示しない半導体レーザ、ポリゴンミラー、第1fθレンズ、及び第2fθレンズを備えている。露光ユニット33Aは、ブラックの色相の画像データによって変調されたレーザビームを感光体ドラム31Aに照射する。感光体ドラム31A〜31Dのそれぞれには、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによる静電潜像が形成される。露光ユニット33Aとして、レーザスキャニングユニット(LSU)、又は、ELやLED等の発光素子をアレイ状に並べた書込み装置を用いることができる。
【0028】
現像装置34Aは、ブラックのトナーを収容しており、現像ローラ41Aを有している。現像ローラ41Aは、トナーが感光体ドラム31Aの周面へ移動し得る現像領域へ現像剤を搬送する。現像装置34Aは、感光体ドラム31Aの周面に形成された静電潜像にトナーを供給することで、静電潜像をトナー像に可視像化する。
【0029】
この実施形態では、画像形成用のトナーとして、体積平均粒径7.0μm、外添剤の添加量2.0wt%のトナーを用いている。
【0030】
現像装置34B〜34Dのそれぞれは、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相のトナーを収容しており、感光体ドラム31B〜31Dのそれぞれに形成された各色相の静電潜像をシアン、マゼンタ及びイエローの各色相のトナー像に可視像化する。
【0031】
この実施形態では、トナーは、感光体ドラム31Aの周面の電位と同極性に帯電している。感光体ドラム31Aの周面の電位の極性及びトナーの帯電極性は、ともにマイナスである。
【0032】
クリーニングユニット36Aは、現像及び画像転写後における感光体ドラム31Aの周面に残留したトナーを回収する。
【0033】
転写ローラ35Aには、感光体ドラム31Aの周面に担持されたトナー像を用紙Pに転写するために、トナーの帯電極性と逆極性(この実施形態では、プラス)の転写バイアス電圧が印加される。これによって、感光体ドラム31Aに形成されたブラックの色相のトナー像は、用紙P上で他の色相のトナー像と重なるように、用紙Pに転写される。各画像形成部30A〜30Dで、各色相のトナー像が用紙Pに重ねて転写されることで、用紙Pにフルカラーのトナー像が形成される。
【0034】
但し、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色相の一部のみの画像データが入力された場合は、4個の感光体ドラム30A〜30Dのうち、入力された画像データの色相に対応する一部のみにおいて静電潜像及びトナー像の形成が行われる。例えば、モノクロ印刷モード時には、ブラックの色相に対応した感光体ドラム31Aのみにおいて静電潜像の形成及びトナー像の形成が行われ、用紙Pにはブラックのトナー像のみが転写される。
【0035】
定着装置140は、加熱ローラ141及び加圧ローラ142を有している。トナー像が転写された用紙Pは、定着装置140へ導かれ、加熱ローラ141と加圧ローラ142との間を通過して加熱及び加圧される。これによって、トナー像が、用紙Pの表面に堅牢に定着する。トナー像が定着した用紙Pは、図示しない排紙トレイ上へ排出される。
【0036】
図2は、画像形成部30Aの正面断面図である。
【0037】
帯電装置32Aは、感光体ドラム31Aの軸方向の長さと同程度の長さを有し、感光体ドラム31Aの周面に接触するように感光体ドラム31Aと互いの軸が平行になるように配置されている。帯電装置32Aは、高圧電源61からDC電圧を給電されることによって、感光体ドラム31Aの周面を均一に帯電させる。帯電装置32Aは感光体ドラム31Aに従動回転する。
【0038】
帯電装置32Aは、導電性支持体である基体と、基体の外周面上に形成された弾性層と、弾性層上に形成された抵抗層と、を有している。この実施形態では、帯電装置32Aの外径は14mmである。基体としては、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属材料の丸棒が用いられる。なお、防錆や耐傷性付与のために、これらの金属表面にメッキ処理を施してもよい。ただし、導電性を損なわないことが必要である
弾性層は、被帯電体としての感光体ドラム31Aに対する給電や、帯電装置32Aの感光体ドラム31Aに対する良好な均一密着性を確保するために、適切な導電性と弾性とを有している。具体的には、弾性層として、例えば、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム、又はポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の弾性材料中に、カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物等の電子電導機構を有する導電剤、若しくはアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン電導機構を有する導電剤等を適宜添加したものを用いることができる。なお、帯電装置32Aと感光体ドラム31Aとの均一密着性を確保するためには、弾性層を研磨して、軸方向の中央部が一番太く、中央部から両端部に行くにつれて細くなる形状(所謂クラウン形状)に弾性層を形成することが好ましい。
【0039】
抵抗層は、弾性層に接して形成され、弾性層中に含有される軟化油や可塑剤等の帯電装置32A表面へのブリードアウトを防止するとともに、帯電装置32A全体の電気抵抗を調整する。抵抗層として、導電性または半導電性を有する材料が用いられる。
【0040】
抵抗層として、例えば、エピクロルヒドリンゴム、NBR、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等、若しくはこれらの混合材料、又は共重合体からなる材料に、電子電導機構を有する導電剤(例えば、導電性カーボン、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)、イオン電導機構を有する導電剤(例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等)を適宜添加したものが用いられる。この場合、所望の電気抵抗を得るために、上述の各種導電剤を2種以上併用してもよい。但し、環境変動や感光体ドラム31Aの汚染を考慮すると、電子電導機構を有する導電剤を用いることが好ましい。
【0041】
画像形成部30Aは、さらにクリーニングローラ37Aを備えている。クリーニングローラ37Aは、この発明のクリーニング部材に相当する。クリーニングローラ37Aは、帯電装置32Aの周面に接触するように配置され、帯電装置32Aの周面に付着したトナー、紙粉等の除去対象物を除去する。この実施形態では、クリーニングローラ37Aは、樹脂発砲体で形成されている。クリーニングローラ37Aが帯電装置32Aから除去対処物を除去することで、帯電不良や帯電ムラが抑制される。
【0042】
なお、クリーニングローラ37Aは、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ等の樹脂、又はIR,NBR,FPDM,ポリウレタン等の有機ゴムで形成することができる。クリーニングローラ37Aは、発泡体で形成される。この実施形態では、クリーニングローラ37Aは、外径12mm、軸径8mmのSUS304製のシャフト、及び、シャフトの周囲に設けられたウレタンフォーム製のローラ部を有する。ローラ部として、密度30(Kg/m)、アスカC硬度10度、セル径50μmのものを用いた。
【0043】
画像形成部30Aは、さらに離接機構38Aを有する。離接機構38Aは、クリーニングローラ37Aの位置を、必要に応じて、帯電装置32Aに当接する当接位置と、帯電装置32Aから離間する離間位置と、に切り替える。帯電装置32Aが回転する帯電動作中は離接機構38Aがクリーニングローラ37Aを当接位置へ配置することで、帯電装置32Aの周面に付着した除去対象物が除去される。また、帯電装置32Aが回転しない帯電休止中には離接機構38Aがクリーニングローラ37Aを離間位置へ配置することで、長時間圧縮されることによるクリーニングローラ37Aの歪みの発生が抑制され、クリーニングローラ37Aの長寿命化が図られる。
【0044】
クリーニングユニット36Aは、クリーニングブレード51A及びケース52Aを有する。ケース52Aは、感光体ドラム31Aの周面に対向する開口部を有する。クリーニングブレード51Aは、感光体ドラム31Aの軸方向を長手方向とする長尺状のゴム部材で形成されている。この実施形態では、クリーニングブレード51Aは、ソリッドゴム製である。クリーニングブレード51Aは、ウレタンゴム、シリコンゴム、クロロプレンゴム、又はブタジエンゴム等のゴム部材で形成されていてもよい。
【0045】
クリーニングブレード51Aは、一方の長辺側の端部がケース52Aの開口部における感光体ドラム31Aの回転方向の下流側縁部に取り付けられ、他方の長辺側の端部のエッジが感光体ドラム31Aの周面に当接するように配置されている。クリーニングブレード51Aは、図3に示すように、感光体ドラム31Aの回転方向において感光体ドラム31Aの周面との当接箇所より下流側の感光体ドラム31Aの周面に接する面との間でなす角度Kが鋭角となる方向、即ち感光体ドラム31Aの回転方向に対してカウンター方向、に当接している。
【0046】
クリーニングブレード51Aは、トナー像の転写処理後に感光体ドラム31Aの周面に残留するトナーを、感光体ドラム31Aの周面との当接箇所で堰き止め、掻き落として除去する。
【0047】
新品装置の初期駆動時や、クリーニングブレード51A又は感光体ドラム31Aの少なくともいずれか一方の部品交換後の初期駆動時といった、部品組み立て後の初期駆動時に、クリーニングブレード51Aと感光体ドラム31Aの周面との当接箇所に、パウダが塗布される。パウダは、クリーニングブレード51Aと感光体ドラム31Aの周面との摩擦力を低減し、クリーニングブレード51Aの先端部が反り返る反転現象の発生を抑制する反転抑制剤として用いられる。
【0048】
パウダは、トナーと同様の成分からなる粉状物であって体積平均粒径3.0μm以上5.0μm以下の粉状物に対して、3.0wt%以上9.0wt%以下の外添剤が添加されてなる。
【0049】
この実施形態では、クリーニングブレード51Aの反転抑制剤としてのパウダは、次のようにして製造される。ポリエステル樹脂100wt%に対して、シアン、マゼンタ、イエローの各色顔料を5%、ブラックについてはカーボンブラックを5%、さらに帯電制御剤1%、ワックス6%を配合、混練、及び粉砕し、分級により体積平均粒径6.5μm以上8.5μm以下の画像形成用のトナーが製造される。この際に、分級工程で微粉としてカットされ、従来は廃棄されていた体積平均粒径3.0μm以上5.0μm以下のトナーに対して、外添剤として個数平均粒径10nmのシリカ(日本アエロジル(株)製:製品名R8200)が3.0wt%〜9.0wt%外添される。
【0050】
画像形成用トナーの製造時に行われる分級工程によって画像形成用トナーと分級された、一般的には廃棄されるトナーを、粉状物として用ることによって、低コスト化、及び環境保護を図ることができる。
【0051】
バインダー樹脂として、ポリエステルの他に、スチレンアクリルブタジエン共重合体ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等を用いることもできる。また、外添剤用のシリカとして、R8200以外に、R972、R974、RX200、X24等を用いてもよい。
【0052】
トナーへの外添剤として、シリカに代えて、アルミナ(酸化アルミニウム:A12)や、チタニア(酸化チタン:TiO)を添加してもよい。外添剤の添加量が3.0wt%〜9.0wt%の範囲内であれは、使用する画像形成装置の構成やプロセス速度に応じて、外添剤を、単一使用又は混合使用することもできる。
【0053】
初期駆動時に、クリーニングブレード51Aと感光体ドラム31Aとの当接箇所に、パウダを塗布しておくことで、カイナーを塗布しておいた場合と同様に、クリーニングブレード51Aと感光体ドラム31Aとの摩擦力が低減され、高温高湿を含めた種々の画像形成装置100の使用環境において、クリーニングブレード51Aの反転現象が抑制される。
【0054】
また、パウダが帯電装置32Aに付着した場合でも、通常の画像形成用のトナーと同様に、クリーニングローラ37Aによって容易にパウダを除去することができる。このため、帯電不良や帯電ムラが抑制される。
【0055】
次に、実際の画像形成装置(シャープ製フルカラー複写機MX4500)を用いて以下の実験を実施した。
【0056】
この実験では、反転抑制剤としてのパウダを、幅337mmのクリーニングブレード51Aの先端部に約30mg付着させてクリーニングブレード51Aを感光体ドラム31Aに当接させた。また、パウダを、幅340mmの帯電装置32Aに約10mg付着させて、幅340mmのクリーニングローラ37Aを帯電装置32Aに当接させた。そして、画像形成を行わずに10秒間、感光体ドラム31Aを回転させた。帯電装置32Aは感光体ドラムに従動回転し、クリーニングローラ37Aは帯電装置32Aに従動回転するので、結局のところ、帯電装置32A及びクリーニングローラ37Aのそれぞれは、感光体ドラム31Aの回転に伴って従動回転する。
【0057】
パウダによる反転現象の抑制効果を、10秒間の回転におけるクリーニングブレード51Aの反転現象の有無で評価した。また、帯電装置32Aからの除去対象物(汚れ)の除去の容易性を、10秒間の回転後のハーフトーン画像の印刷における画像ムラで評価した。
【0058】
実施例1では、反転抑制剤であるパウダとして、体積平均粒径3.0μmのトナーと同様の成分の粉状物に、3.0wt%の外添剤を添加したものを用いた。
【0059】
実施例2では、パウダとして、体積平均粒径3.0μmのトナーと同様の成分の粉状物に、9.0wt%の外添剤を添加したものを用いた。
【0060】
実施例3では、パウダとして、体積平均粒径5.0μmのトナーと同様の成分の粉状物に、3.0wt%の外添剤を添加したものを用いた。
【0061】
実施例4では、パウダとして、体積平均粒径5.0μmのトナーと同様の成分の粉状物に、9.0wt%の外添剤を添加したものを用いた。
【0062】
比較例1では、パウダとして、体積平均粒径2.0μmのカイナーを用いた。
【0063】
比較例2では、体積平均粒径2.0μmのトナーと同様の成分の粉状物に、3.0wt%の外添剤を添加したものを用いた。
【0064】
比較例3では、体積平均粒径2.0μmのトナーと同様の成分の粉状物に、9.0wt%の外添剤を添加したものを用いた。
【0065】
比較例4では、体積平均粒径5.0μmのトナーと同様の成分の粉状物に、2.5wt%の外添剤を添加したものを用いた。
【0066】
比較例5では、体積平均粒径6.0μmのトナーと同様の成分の粉状物に、3.0wt%の外添剤を添加したものを用いた。
【0067】
比較例6では、体積平均粒径6.0μmのトナーと同様の成分の粉状物に、9.0wt%の外添剤を添加したものを用いた。
【0068】
図4(A)は実施例1〜4の実験結果を表す図であり、図4(B)は比較例1〜6の実験結果を表す図である。結果が良好であったものは○で表わし、不良であったものは×で表わしている。
【0069】
実施例1〜4では、反転現象の抑制効果、及び、帯電装置32Aからの汚れ除去の容易性ともに、良好であった。
【0070】
実施例1,2、及び比較例1〜3から、外添剤の添加量が3.0wt%以上9.0wt%以下であっても、粉状物の体積平均粒径が3.0μm未満であれば帯電装置32Aからの汚れ除去が困難となり、粉状物の体積平均粒径が3.0μm以上である場合に、帯電装置32Aからの汚れ除去が容易となることが分かる。
【0071】
実施例3,4、及び比較例5,6から、外添剤の添加量が3.0wt%以上9.0wt%以下であっても、粉状物の体積平均粒径が5.0μmを超えた場合は反転現象の抑制効果が不良となり、粉状物の体積平均粒径が5.0μm以下である場合は反転現象の抑制効果が良好となることが分かる。
【0072】
実施例1,3、及び比較例4から、粉状物の体積平均粒径が3.0μm以上5.0μm以下であっても、外添剤の添加量が3.0wt%未満であれば反転現象の抑制効果が不良となり、外添剤の添加量が3.0wt%以上である場合に、反転現象の抑制効果が良好となることが分かる。
【0073】
また、外添剤の添加量が9.0wt%を超えると、外添処理に要する時間が長期化することやコストアップといった不具合が生じる。外添剤の添加量は9.0wt%以下であれば、反転現象の抑制効果が良好であるとともに、外添処理に要する時間が短く、コストも抑制できる。
【0074】
これらの結果から、トナーと同様の成分からなる粉状物であって体積平均粒径3.0μm以上5.0μm以下の粉状物に対して3.0wt%以上9.0wt%以下の外添剤が添加されてなるパウダを用いることで、帯電装置32Aからの汚れの除去が容易となるとともにクリーニングブレード51Aの反転現象を抑制できることが分かる。
【0075】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】この発明の実施形態に係る画像形成装置の概略の正面断面図である。
【図2】画像形成部の正面断面図である。
【図3】感光体ドラムの回転方向に対するクリーニングブレードの当接方向を示す図である。
【図4】(A)は実施例の実験結果を表す図であり、(B)は比較例の実験結果を表す図である。
【符号の説明】
【0077】
30A〜30D 画像形成部
31A〜31D 感光体ドラム(像担持体)
32A〜32D 帯電装置(帯電器)
36A〜36D クリーニングユニット
37A クリーニングローラ(クリーニング部材)
51A クリーニングブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面にトナー像を担持する像担持体と、
前記周面に前記像担持体の回転方向に対してカウンター方向に当接し、前記周面に残留するトナーを含む除去対象物を前記周面から除去するクリーニングブレードと、
前記周面に接触するように配置され、前記周面を所定の電位に帯電させる帯電器と、
前記帯電器に付着した除去対象物を前記帯電器から除去するクリーニング部材と、を備え、
初期駆動時に前記クリーニングブレードと前記周面との当接箇所に塗布される前記クリーニングブレードの反転抑制剤として、トナーと同様の成分からなる粉状物であって体積平均粒径3.0μm以上5.0μm以下の粉状物に対して3.0wt%以上9.0wt%以下の外添剤が添加されてなるパウダを用いる画像形成装置。
【請求項2】
前記外添剤は、シリカ、アルミナ、又はチタニアのうちのいずれかである請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記クリーニングブレードは、ソリッドゴム製である請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記クリーニング部材は、ローラ型である請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリーニング部材は、樹脂発泡体からなる請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記粉状物は、画像形成用トナーの製造時に、画像形成用トナーとの分級によって製造される請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−192968(P2009−192968A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35621(P2008−35621)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】