説明

画像形成装置

【課題】
定着ローラの表面温度値が所望の温度値に達するまでの時間を短くすることで、ウォームアップにかかる時間を短縮することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】
現像剤画像が転写された画像記録媒体を加熱定着する画像形成装置であって、熱源と、熱源により加熱される定着部と、定着部に対向して配置されると共に、定着部を押圧する加圧部と、定着部の媒体通紙領域に配置されると共に、定着部の温度値を検出する温度検出部と、定着部と加圧部との回転を制御する回転制御部と、を備え、回転制御部は、温度検出部により検出された定着部の検出温度が、予め設定された待機温度から所定温度値だけ低い温度値に到達したときに定着部と加圧部との回転を停止させること、を特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンタ、ファクシミリ装置、複写機などの画像形成工程において、熱定着を有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、プリンタ、ファクシミリ装置、複写機などの画像形成装置、例えば、プリンタにおいては、像担持体としての感光体ドラムの表面を帯電ローラ等の帯電部材で一様均一に帯電させた後、画像データに基づく光をLED(Light Emitting Diode)ヘッド等の露光装置を用いて照射することでその表面に静電潜像を形成させる。
【0003】
そして、感光体ドラム表面に形成された静電潜像には、現像ローラ等の現像剤供給部材により現像剤としてのトナーが静電的に付着されることにより、トナー画像が反転現像される。感光体ドラム表面に形成されたトナー画像は、転写ローラ等の転写部材により所定のタイミングで搬送された記録媒体上に転写される。その後、トナー画像が転写された記録媒体は定着部に搬送され、熱及び圧力が付与されることにより、トナー画像は記録媒体に定着されることになる。トナー画像が定着された記録媒体はプリンタ外部に排出され、一連の画像形成は終了する。
【0004】
このような構成を有するプリンタにおいて、一般的に、定着部は加熱体を備えた熱付与体としての定着ローラと、当該定着ローラを押圧するように配設された圧力付与体としての加圧ローラと、を備える。定着ローラと加圧ローラとは互いに圧接した状態に維持されており、回転する定着ローラと加圧ローラとで形成されたニップ部を記録媒体が通過するタイミングにあわせて熱及び圧力が付与される。なお、定着ローラの表面近傍には、当該定着ローラの表面温度値を検出する、例えば、サーミスタ等の温度検出部が設けられている。そして、当該温度検出部によって検出された温度値に基づき、加熱体をオン/オフさせることで、定着ローラの表面温度は制御されている。
【0005】
このような、定着ローラの回転、加熱体のオン/オフを伴う定着ローラの表面温度の制御は、主にプリンタの電源投入時から実行され、ウォームアップを経て、プリンタが画像形成可能な状態、つまり、定着ローラの表面温度値が所望の温度値となるまで実行される(例えば、特許文献1参照)。そして、画像形成中においては、定着ローラの表面温度値は画像形成に最も適した至適温度に維持される。
【0006】
【特許文献1】特開2007−271935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の画像形成装置においては、定着ローラの表面温度が所望の温度値に達するまでに非常に長い時間を必要とし、その結果、ウォームアップにかかる時間が長くなるといった問題があった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、定着ローラの表面温度値が所望の温度値に達するまでの時間を短くすることで、ウォームアップにかかる時間を短縮することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる画像形成装置は、現像剤画像が転写された画像記録媒体を加熱定着する画像形成装置であって、熱源と、熱源により加熱される定着部と、定着部に対向して配置されると共に、定着部を押圧する加圧部と、定着部の媒体通紙領域に配置されると共に、定着部の温度値を検出する温度検出部と、定着部と加圧部との回転を制御する回転制御部と、を備え、回転制御部は、温度検出部により検出された定着部の検出温度が、予め設定された待機温度から所定温度値だけ低い温度値に到達したときに定着部と加圧部との回転を停止させること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる画像形成装置は、現像剤画像が転写された画像記録媒体を加熱定着する画像形成装置であって、熱源と、熱源への通電を制御する通電制御部と、通電制御部による制御に基づき熱源により加熱される定着部と、定着部の媒体通紙領域に配置されると共に、定着部の温度値を検出する温度検出部と、定着部の回転を制御する回転制御部と、を備え、温度検出部による定着部の温度値の検出結果に基づき、第1の温度以上第2の温度値未満では、通電制御部は定着部へ通電させるように熱源を制御すると共に、回転制御部は定着部を回転させるように制御し、第2の温度値以上第3の温度値未満では、通電制御部は定着部へ通電させるように熱源を制御すると共に、回転制御部は定着部の回転を停止させるように制御すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成装置によれば、定着ローラの表面温度値が所望の温度値に達するまでの時間を短くすることで、ウォームアップにかかる時間を短縮することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0013】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の説明においては、本発明にかかる画像形成装置としてのプリンタ1の構成について説明する。
【0014】
図1は、プリンタ1の要部構成を説明するための側面断面図である。プリンタ1は、例えば、ホストコンピュータ等の外部装置から入力された画像データに基づく画像を記録媒体に形成可能な電子写真方式の画像形成装置である。
【0015】
プリンタ1は、記録媒体2が載置される媒体カセット3と、記録媒体2を矢印60方向に繰り出すピックアップローラ40と、ピックアップローラ40により繰り出された記録媒体2を矢印61方向に搬送するピックアップローラ41,レジストローラ42と、記録媒体2の斜行を矯正すると共に、記録媒体2を矢印62方向に搬送する搬送ローラ43,44と、各色に対応した現像剤画像を記録媒体2上に形成する電子写真プロセスユニットとしてのプロセスユニット11,12,13,14と、記録媒体2を静電吸着して搬送する転写ベルト20を介して各プロセスユニット11,12,13,14が備える図示せぬ感光体ドラムに当接するように配置された転写ローラ21,22,23,24と、現像剤画像が転写された記録媒体2に熱及び圧力を付与する定着ユニット30と、定着ユニット30を通過し矢印64方向に搬送された記録媒体2を矢印65方向のプリンタ1外部に排出する排出ローラ47,48と、記録媒体2の通過を認識する媒体通過センサ51,52,53と、を備える。
【0016】
媒体カセット3は、内部に記録媒体2を積層した状態で収納し、プリンタ1の下部に着脱自在に装着されている。そして、媒体カセット3の上部には、記録媒体2を1枚ずつ分離し繰り出すピックアップローラ40が配設されている。
【0017】
ピックアップローラ41,レジストローラ42は互いに圧接した状態で設けられ、図示せぬ駆動源から伝達された駆動力により回転し、媒体カセット3から繰り出された記録媒体2を矢印61に搬送する。
【0018】
搬送ローラ43,44は互いに圧接した状態で設けられ、記録媒体2の斜行を矯正すると共に、図示せぬ駆動源から伝達された駆動力により回転し、記録媒体2を矢印62方向、つまりプロセスユニット11,12,13,14に搬送する。
【0019】
プロセスユニット11,12,13,14は、それぞれシアン,マゼンタ,イエロー,ブラックの4色に対応した現像剤としてのトナーを収納し、入力された画像データに基づく現像剤画像、つまりトナー画像を図示せぬ感光体ドラム上に形成する。また、各プロセスユニット11,12,13,14は転写ベルト20に沿ってプリンタ1から着脱自在に装着されている。
【0020】
転写ベルト20は、記録媒体2を静電吸着して搬送する無端のベルト部材である。そして、転写ローラ21,22,23,24は、各プロセスユニット11,12,13,14の感光体ドラム上に形成されたトナー画像を記録媒体2に転写する転写部材である。転写ローラ21,22,23,24には、トナーと逆極性のバイアス電圧を印加する図示せぬ転写ローラ用電源が接続されており、転写ローラ用電源から印加されたバイアス電圧により、感光体ドラム上に形成されたトナー画像が記録媒体2に転写される。
【0021】
定着ユニット30は、定着部としての定着ローラ46と、加圧部としての加圧ローラ45と、第1の温度検出素子であり、定着部温度検出素子としてのローラ温度検出素子102と、を備える。定着ローラ46は、例えば、アルミニウム等からなる中空円筒状の芯金にシリコーンゴム等の耐熱弾性層を被覆し、その上にPFA(テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを被覆することで形成されている。そして、その芯金内には、例えば、ハロゲンランプ等の加熱体としてのヒータが配設されている。また、加圧ローラ45は定着ローラ46と略同一の構成を有しており、定着ローラ46を押圧するように配設されている。この定着ローラ46と加圧ローラ45とにより形成されるニップ部をトナー画像が転写された記録媒体2が通過することにより、熱及び圧力が付与され、トナー画像は記録媒体2上に定着される。また、ローラ温度検出素子102は、定着ローラ46の表面温度を検出するための温度検出素子であり、例えば、サーミスタ等を用いることができる。また、第2の温度検出素子としての加圧部温度検出素子162は、加圧ローラ45の表面温度を検出するための温度検出素子であり、例えば、サーミスタ等を用いることができる。
【0022】
なお、図1においては、定着ユニット30を構成する部材として、定着ローラ46と加圧ローラ45とを用いた構成例について説明したが、定着ユニット30の構成はこれに限定されるものではない。例えば、図2及び図3に示すように、ヒータ104を有する定着ローラ101と、加圧ローラ45の代わりにローラ161を内蔵する無端形状ベルト105を用いて定着ユニット30を構成してもよいし、定着ローラ及び加圧ローラの両ローラの代わりに無端形状ベルトを用いた構成としても構わない。この場合、トナー画像が転写された記録媒体2は、図中、矢印方向に搬送され、定着ローラ101と無端形状ベルト105とから形成されるニップ部を通過するタイミングにおいて、熱及び圧力が付与される。また、ローラ温度検出素子102は、図4に示すように、最小用紙幅(例えば、A6サイズ_105mm)の幅で定着ローラ101においける通紙領域の間に配設されており、定着ローラ101の表面の温度、すなわち、定着部の表面の温度を検出する。
【0023】
排出ローラ47,48は、互いに圧接した状態で設けられ、図示せぬ駆動源から伝達された駆動力により回転し、定着ユニット30においてトナー画像が定着された記録媒体2を矢印65方向のプリンタ1外部に排出する。
【0024】
媒体通過センサ51,52,53は、記録媒体2がセンサ上を通過したか否かの情報を出力する部材であり、機械的な動きで記録媒体2を検出できるセンサでも、光学的な光の反射や透過を利用したセンサでもよい。
【0025】
次に、図5を用いてプリンタ1の機能構成について説明する。制御部106はプリンタ1全体の動作を統括的に制御し、ROM(Read Only Memory)108に格納された制御プログラムを実行することによってプリンタ1の機能を実現するCPU(Central Processing Unit)107と、前述した制御プログラムや設定データ等を格納する不揮発性記憶媒体であるROM108と、CPU107のワーキングエリアとして利用されると共に、画像データ等のデータを一次的に格納する、例えば、RAM(Random Access Memory)等のメモリ109と、時間を検出するタイマ110と、例えば、ヒータ制御部112等のプリンタ1が内蔵する各制御部との制御信号の双方向通信を制御する外部インタフェース111と、ホストコンピュータ151等の外部接続機器とのデータの双方向通信を制御するホストI/F150と、温度値又は湿度値を検出する環境センサ167から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部166と、を備える。
【0026】
そして、外部インタフェース111には、前述したヒータ制御部112と、モータ駆動制御部113と、第1の温度検出部としての定着部温度検出部115と、操作パネル制御部117と、媒体通過センサ121と、第2の温度検出部としての加圧部温度検出部165が接続されており、制御部106は外部インタフェース111を介してこれらの制御部を統括的に制御することでプリンタ1の機能を実現する。
【0027】
ヒータ制御部112は、接続コネクタ130を介してヒータ104と接続されており、定着部温度検出部115が検出した温度値に基づいてヒータ104のオン/オフを制御する。
【0028】
モータ駆動制御部113は、駆動伝達部172を介して定着ローラ101やローラ161を内蔵する無端形状ベルト105の回転機構である定着部回転機構173を制御する。
【0029】
定着部温度検出部115は、接続コネクタ130を介して接続されたローラ温度検出素子102の出力を元に定着ローラ101の表面温度値を検出すると共に、検出した表面温度値を制御部106に出力する。なお、ローラ温度検出素子102は、定着ローラ101に接触していても、接触していなくてもどちらでもよい。
【0030】
操作パネル制御部117は、例えば、タッチパネル等から構成される操作パネル118やLCD(Liquid Crystal Display)等から構成される表示部119を制御し、ユーザによる設定の入力を操作パネル18を介して受付けたり、プリンタ1の装置状況を表示部119を介して表示させる。
【0031】
媒体通過センサ121は、前述した媒体通過センサ52に相当するものであり、図4に示すように、定着ローラ101と無端形状ベルト105から形成されるニップ部を通過後のトナー画像123が定着された記録媒体2を検出する
【0032】
加圧部温度検出部165は、接続コネクタ130を介して接続された加圧部温度検出素子162の出力を元にローラ161の表面温度値を検出すると共に、検出した表面温度値を制御部106に出力する。
【0033】
次に、図6を用いてプリンタ1の処理ブロックについて詳細に説明する。
【0034】
加圧部温度検出部165は、温度検出素子162が検出した温度値情報を元に温度値を検出し、当該温度値を制御部106及び温度比較部116に出力する。温度値が入力された温度比較部116は、予めメモリ109に格納された所定の温度値と、加圧部温度検出部165から入力された温度値と、を比較しその結果を制御部106に出力する。同様に、定着部温度検出部115は、ローラ温度検出素子102が検出した温度値情報を元に温度値を検出し、当該温度値を制御部106及び温度比較部116に出力する。温度値が入力された温度比較部116は、予めメモリ109に格納された所定の温度値と、定着部温度検出部115から入力された温度値と、を比較し、その結果を制御部106に出力する。そして、温度比較部116から入力された比較結果に基づき、制御部106はヒータ制御部112及び操作パネル制御部117を制御する。
【0035】
ヒータ制御部112は、制御部106から制御信号が入力されると、ヒータ104のオン/オフを制御するための制御信号を電源部180に出力する。電源部180はヒータ制御部112から入力された制御信号に基づき、ヒータ104へ電源を供給する。なお、電源部180はヒータ104の電源であり、プリンタ1本体の電源でもある。
【0036】
操作パネル制御部117は、制御部106から制御信号が入力されると、操作パネル118や表示部119を制御する。さらに、操作パネル制御部117は、操作パネル118を介してユーザにより入力された各設定情報を制御部106に出力する。
【0037】
モータ駆動制御部113は、制御部106から入力された制御信号に基づき、モータ131を駆動させたり、停止させたりする。モータ131の駆動力は、駆動伝達部172を経由して定着部回転機構173に伝達される。
【0038】
また、制御部106は定着制御部141を有しており、当該定着制御部141は、モータ駆動制御部113に対してモータ131の回転方向や回転数等の制御信号を出力する。
【0039】
次に、図7、図8、図9を用いてプリンタ1の処理動作について説明する。図7は、プリンタ1の一連の処理動作を説明するフローチャートである。また、図8は温度差Nを決定するためのリストの一例を示すものであり、温度差Nは、予め予測された定着ローラの回転停止に伴う温度上昇そのものを示している。さらに、図9−Aはプリンタ1の電源投入時の環境温度値が20℃以上の場合の温度シーケンスを説明する図であり、図9−Bはプリンタ1の電源投入時の環境温度値が20℃未満の場合の温度シーケンスを説明する図である。
【0040】
まず、ステップS101において、プリンタ1の電源が投入されると、制御部106は、プリンタ1のイニシャル処理を実行する(ステップS102)。イニシャル処理とは、CPU107、メモリ109、又はタイマ110等を含む制御部106の初期化を表す。
【0041】
次に、ステップS103において、制御部106は環境センサ167から入力された温度値情報を読み出すと共に、読み出された温度値情報に基づく温度値が20℃以上であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0042】
ここで、温度値が20℃以上である場合(ステップS104 Yes)、制御部106は、図8に示したリストを参照し、温度差Nの値をN1(例えば、20℃)とし、当該N1をメモリ109に格納させる(ステップS105)。一方、温度値が20℃未満である場合(ステップS104 No)、制御部106は、図8に示したリストを参照し、温度差Nの値をN2(例えば、30℃)とし、当該N2をメモリ109に格納させる(ステップS106)。なお、本実施形態においては、20℃を境目に温度差Nを決定する形態としているが、これに限定されるものではない。例えば、環境センサ167から入力される温度値情報を1℃刻みや2℃刻みなど、さらに細かく分割して温度差Nを決定してもよいし、温度差Nを環境センサ167から入力される温度値情報の関数として、温度差Nを決定してもよい。
【0043】
次に、制御部106は、式:Te(Te2)=Tg(Tg2)−Nから定着ローラ回転停止温度値Te(Te2)を決定する(ステップS107)。なお、Tg(Tg2)はプリンタ1の待機時の制御目標温度値(以下、単に待機温度値とも称す)であり、記録媒体2や印刷速度、さらには定着ローラ101が有する熱容量によって変更可能な温度値である。温度差Nは、ステップS105又はステップS106において決定され、メモリ109に格納された温度差である。
【0044】
次に、制御部106は決定した定着ローラ回転停止温度値Te(Te2)に基づき、ヒータ104のオン/オフを制御するようヒータ制御部112に指示を与える。指示を受けたヒータ制御部112は、電源部180を介してヒータ104のオン/オフを制御することで、定着ローラ101の表面温度を制御する(ステップS108)。
【0045】
なお、ヒータ制御部112による制御方法は、待機温度値Tg(Tg2)を制御目標とし、この待機温度値Tg(Tg2)と現在の定着ローラ101の表面温度値との温度差情報を所定時間間隔で逐次読み出し、当該温度差情報に基づきヒータ104のオン時間/オフ時間を制御するフィードバック制御である。このフィードバック制御は、待機温度値Tg(Tg2)と現在の定着ローラ101の表面温度値との温度差成分をP、現在の温度差と1処理ステップ前の温度差との勾配成分をD、現在から所定時間過去の温度差の累積成分をIとし、当該P,D,Iの値と各々の値に掛け合わせる定数Kp,Kd,Kiから計算された値(Kp*P+Kd*D+Ki*I)と所定の閾値との比較結果から、ヒータ104のオン時間とオフ時間とを決定する制御方法である。定数Kp,Kd,Kiは、定着ローラ101の物理的な熱容量、ヒータ104の容量、定着ローラ101の回転量など、様々なパラメータから決定される値であり、当該値は常時固定ではなく、制御の用途によって適宜設定可能な値である。
【0046】
ここで、図9−A及び図9−Bに示す温度シーケンスについて説明する。図9−A及び図9−Bに示すt0,t0’はプリンタ1の主電源が投入された時刻を表す。また、t1,t1’はヒータ104の制御(ヒータオン)開始の時刻、t2,t2’は定着ローラ101の表面温度値が第1の温度値である定着ローラ回転開始温度値Tr,Tr2に到達し、定着ローラ101の回転が開始される時刻、t3,t3’は定着ローラ101の表面温度値が第2の温度値である定着ローラ回転停止温度値Te,Te2に到達し、定着ローラ101の回転が停止される時刻、t4,t4’は定着ローラ101の表面温度値が第3の温度値である待機温度値Tg,Tg2に到達する時刻を表す。
【0047】
第1のウォームアップ制御区間としての区間A,A’(t1−t2,t1’−t2’)は、定着ローラ101の回転は停止しており、ヒータは連続的にオン状態である。また、同様に第1のウォームアップ制御区間としての区間B,B’(t2−t3,t2’−t3’)は、定着ローラ101回転を開始しており、ヒータは連続的にオン状態である。
【0048】
第2のウォームアップ制御区間としての区間C,C’(t3−t4,t3’−t4’)は、定着ローラ101の回転は停止しており、ヒータは断続的にオン状態である。また、待機制御区間としての区間D,D’(t4以降,t4’以降)は、定着ローラ101の回転は停止しており、ヒータは断続的にオン状態である。表1は、上記の時刻とウォームアップ制御区間とをまとめたものである。
【0049】
【表1】

【0050】
なお、本実施形態においては、「第1のウォームアップ制御区間」は、ヒータは連続的にオン状態、「第2のウォームアップ制御区間」では、ヒータは断続的にオン/オフが繰り返される形態として説明したが、これに限らず、「第1のウォームアップ制御区間」もヒータが断続的にオン/オフが繰り返される形態としてもかまわない。ただし、この場合、「第1のウォームアップ制御区間」に比べ、ヒータがオンされるduty比が高い、すなわち、ヒータがオフされる比率よりもオンにされる比率が高い方が好ましい。
【0051】
そして、図9−A及び図9−Bによれば、ウォームアップ開始のタイミングは20℃近傍であり、本実施形態で制御目標としている待機温度値Tg(Tg2)を170℃とすると、ステップS108におけるヒータ104の制御開始時においては、約150℃の温度差がある。したがって、制御部106はヒータ104をオンにするようヒータ制御部112に指示を与える。ヒータ制御部112の制御に基づき、ヒータ104がオンされると、定着ローラ101の表面温度値は図9−A及び図9−Bに示すように、上昇を開始する。
【0052】
次に、ステップS109において、制御部106は上昇を開始した定着ローラ101の表面温度値が定着ローラ101回転開始温度値であるTr(Tr2)に到達したか否かを判定する。ここで、定着ローラ101の表面温度値がTr(Tr2)に到達してない場合(ステップS109 No)、制御部106は判定を繰り返す。一方、定着ローラ101の表面温度値がTr(Tr2)に到達した場合(ステップS109 Yes)、定着制御部141は、モータ駆動制御部113に対して定着部回転機構173が回転を開始するよう指示を与える。指示を受けたモータ駆動制御部113は、モータ131に対して回転開始信号を出力し、モータ131は回転を開始する。モータ131の回転は駆動伝達部172を経由して定着部回転機構173に伝達され、定着ローラ101は回転を開始する(ステップS110)。
【0053】
次に、制御部106は定着ローラ101の表面温度値が定着ローラ回転停止温度値であるTe(Te2)に到達したか否かを判定する(ステップS111)。ここで、定着ローラ101の表面温度値がTe(Te2)に到達してない場合(ステップS111 No)、制御部106は判定を繰り返す。一方、定着ローラ101の表面温度値がTe(Te2)に到達した場合(ステップS111 Yes)、定着制御部141は、モータ駆動制御部113に対して定着部回転機構173が回転を停止するよう指示を与える。指示を受けたモータ駆動制御部113は、モータ131に対して回転停止信号を出力し、モータ131は回転を停止する。モータ131の回転の停止により、定着ローラ101は回転を停止する(ステップS112)。
【0054】
一般的に、定着ローラ101の回転が停止すると、定着ローラ101の表面温度値はオーバーシュートする。ここで、一般的なオーバーシュートについて説明する。オーバーシュートとは、定着ローラ101が停止されるまで、定着ローラ101やローラ161に対して、ヒータ104によって供給された熱エネルギーにより定着ローラ101やローラ161が加熱され、定着ローラ101の表面温度の温度上昇を維持するために必要なエネルギーが、定着ローラ101が停止することにより過剰になる。この過剰なエネルギーが外部に放出される現象であり、定着ローラ101の表面温度の上昇となって現れる。
【0055】
例えば、図10に示すように、ヒータ制御開始時A地点からヒータ制御が開始されると、制御目標温度値Eを目指して定着ローラの表面温度値が上昇する。定着ローラの表面温度値が所定の温度値に到達した時点で(ローラ回転開始Bの時点)、定着ローラの回転を開始させる。そして、定着ローラの表面温度値が制御目標温度に到達した時点で(ローラ回転停止Cの時点)、定着ローラの回転を停止させる。すると、定着ローラの表面温度は急激に上昇する。そして、定着ローラが回転を開始すると、例えば、加圧ローラに熱が奪われ、温度上昇の勾配が少し小さくなると共に、一定の勾配が継続される。これは、前述したように、定着ローラの表面温度の上昇を維持するためにヒータが付与した熱エネルギーが定着ローラの回転停止によって過剰となり、外部に放出され、定着ローラの表面温度の急激な温度上昇を誘発するためである。
【0056】
このようなオーバーシュートによる温度上昇は、定着ローラが回転しているときの温度上昇の勾配とは違い、急激な温度上昇であり、一般的に「オーバーシュートによる温度上昇勾配」>「定着ローラが回転しているときの温度上昇勾配」の関係が成立する。
【0057】
本発明においては、上記のオーバーシュートを利用すると共に、さらに、定着ローラの回転停止後直後からヒータのオン/オフを制御することで、定着ローラの表面温度値が待機温度値Tgに達するまでの時間を短くし、ウォームアップにかかる時間を短縮することができる。なお、以下の説明においては、一般的なオーバーシュートとの混同を避けるために、この定着ローラの回転停止後からのヒータ制御による定着ローラの表面温度の上昇をオーバーシュートとは別に定着ローラの回転停止に伴う温度上昇と表現する。
【0058】
ここで、図7のフローチャートに戻り、ステップS113からの処理について説明する。ステップS113において、制御部106は定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg(Tg2)に到達したか否かを判定する。ここで、定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg(Tg2)に到達していない場合(ステップS113 No)、制御部106は、定着ローラ101の表面温度値と待機温度値Tg(Tg2)との温度差に基づいて、ヒータ104のオン/オフを制御するようヒータ制御部112に指示を与える。指示を受けたヒータ制御部112は、電源部180を介してヒータ104のオン/オフを制御し、定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg(Tg2)に到達するまで、定着ローラ101の表面温度を制御する(ステップS115)。一方、定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg(Tg2)に到達している場合、制御部106は、定着ローラ101の表面温度値を待機温度値Tg(Tg2)に保つようヒータ制御部112に指示を与える。指示を受けたヒータ制御部112は、定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg(Tg2)に保たれるようにヒータ104のオン/オフを制御する(ステップS114)。なお、ステップS113〜ステップS115にかかる処理は、ステップS108の処理で説明したフィードバック処理が実行されている。つまり、ステップS112において、ヒータ104は強制的にオフにされているのではなく、定着ローラ101の表面温度値と待機温度値Tg(Tg2)との温度差に基づき、ヒータ104のオン/オフの制御を行うことで、定着ローラ101の表面温度値が待機温度値T(Tg2)gに達するまでの時間を短くし、ウォームアップにかかる時間を短縮する。
【0059】
図9−Aに示すように、区間Cにおいて、上記ステップS113〜ステップS115にかかるフィードバック制御を行うことにより、定着ローラ温度(T1)で表される定着ローラの回転停止に伴う温度上昇は、定着ローラ温度(T11)で表される定着ローラの回転を停止させずに回転を継続させた場合の温度上昇に比べて、定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tgに到達するまでの時間が短くなる。同様に、図9−Bに示すように、区間C’において、上記ステップS113〜ステップS115にかかるフィードバック制御を行うことにより、定着ローラ温度(T2)で表される定着ローラの回転停止に伴う温度上昇は、定着ローラ温度(T21)で表される定着ローラの回転を停止させずに回転を継続させた場合の温度上昇に比べて、定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg2に到達するまでの時間が短くなる。
【0060】
定着ローラの回転停止に伴う温度上昇量の大小は、定着ローラ101の熱容量や回転速度、ウォームグアップ開始からローラ回転停止までの間にヒータをオンにした時間によって決定され、ステップS105又はステップS106で決定した温度差Nはこれらの条件を考慮して予測した定着ローラの回転停止に伴う温度上昇値である。一般的に、プリンタ1が設置される環境温度値に応じて、ウォームアップ時間が異なる。これは、環境温度値が低い場合、ヒータ制御開始の温度から定着ローラの回転が停止されるま温度に到達するまでの時間が長くなるためである。そのため、本発明においては、図9−A及び図9−Bに示すように、20℃を閾値として、環境温度値が20℃以上であれば、N1、20℃未満であれば、N2とし、N1とN2との関係はN1<N2の関係となる。そして、N1とN2との温度差は定着ローラの物理条件、例えば、定着ローラの熱容量によっても温度差の大小関係が生じる。
【0061】
また、待機温度値Tgは、印刷に供する記録媒体の厚みや装置が設置されている環境によって異なる。記録媒体に関しては、一般にオフィスで使用される普通紙(坪量 64g/m〜80g/m)の場合、待機温度値Tgは170℃程度であり、厚紙(坪量 120g/m〜200g/m)の場合、待機温度値Tgは160℃程度である。厚紙の場合、待機温度値Tgはプロセス速度が普通紙に比べ、50%程度であるために、普通紙よりも待機温度値Tgを低く設定することが可能である。そして、環境に関しては、例えば、環境温度値10℃において印刷する場合の待機温度値Tgと、環境温度値28℃において印刷する場合の待機温度値Tgと、では、環境温度値10℃の場合の待機温度値Tgが高く設定される。これは、使用する記録媒体も環境と同じ温度値に馴染んでいるため、記録媒体が定着ローラを通過する差異、通過する記録媒体は定着ローラの熱を奪うため、定着ローラの表面温度値の低下が、環境温度値28℃に馴染んだ記録媒体と比べて大きいためである。
【0062】
以上のように、第1の実施形態によれば、環境センサから入力された温度値情報に基づく温度値から、温度差N(=定着ローラの回転停止に伴う温度上昇量)を設定し、待機温度値よりも低い温度でウォームアップを終了させることで、ウォームアップ時間を短縮することができる。また、ヒータをオンさせる時間がウォームアップ時間の短縮により、消費電力を抑える効果もある。さらに、定着ローラの表面温度値が規定以上の温度値に到達する機会が減少するので、定着ローラの寿命を延ばす効果も得ることも可能である。
【0063】
[第2の実施形態]
第2の実施形態にかかるプリンタ1’の構成は、第1の実施形態にかかるプリンタ1の構成と略同一である。したがって、第2の実施形態にかかるプリンタ1’の説明においては、第1の実施形態にかかるプリンタ1と同一な箇所には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる箇所について説明する。
【0064】
図11は、第2の実施形態におけるプリンタ1’の処理ブロックを説明する図である。第2の実施形態にかかる制御部106’は、第1の実施形態にかかる構成に加えて媒体情報部142を備える。
【0065】
媒体情報部142は、記録媒体2の媒体情報を保持する。この媒体情報の設定方法は、ユーザが操作パネル118を介して行う。具体的には、ユーザは、表示部119に表示された、例えば、図12に示すような媒体情報のリストからプリンタ1’の媒体カセット3に収納された記録媒体2がどのようなメディアウェイトなのかを記録媒体2の坪量から選択し入力する。ユーザにより操作パネル118を介して入力された媒体情報は操作パネル制御部117を介して、媒体情報部142に保持される。なお、このメディアウェイト情報は、例えば、図5に示すホストコンピュータ151等の外部接続機器から入力されてもよい。
【0066】
次に、図13、図14を用いてプリンタ1’の処理動作について説明する。図13は、プリンタ1’の一連の処理動作を説明するフローチャートである。また、図14−Aはプリンタ1’の媒体カセット3に収納された記録媒体2が普通紙の場合の温度シーケンスを説明する図であり、図14−Bはプリンタ1’の媒体カセット3に収納された記録媒体2が厚紙の場合の温度シーケンスを説明する図である。
【0067】
まず、ステップS201において、プリンタ1’の電源が投入されると、制御部106’は、プリンタ1’のイニシャル処理を実行する(ステップS202)。イニシャル処理とは、CPU107、メモリ109、又はタイマ110等を含む制御部106の初期化を表す。
【0068】
次に、ステップS203において、制御部106’はユーザにより操作パネル118を介して入力された媒体情報を保持する媒体情報部142から媒体情報を読み出す。
【0069】
そして、制御部106’は媒体情報部142から読み出した媒体情報に基づき、温度差Nを決定し(ステップS204)、次いで、待機温度値Tgを決定する(ステップS205)。
【0070】
次に、制御部106’は、ステップS204で決定した温度差N及びステップS205で決定した待機温度値Tgをメモリ109に格納させる(ステップS206)。
【0071】
そして、制御部106’は、式:Te3(Te4)=Tg3(Tg4)−Nから定着ローラ回転停止温度値Te3(Te4)を決定する(ステップS207)。なお、Tg3(Tg4)はプリンタ1’の待機時の制御目標温度値(以下、単に待機温度値とも称す)であり、記録媒体2や印刷速度、さらには定着ローラ101が有する熱容量によって変更可能な温度値である。温度差Nは、ステップS204において決定され、メモリ109に格納された温度差である。
【0072】
次に、制御部106’は決定した定着ローラ回転停止温度値Te3(Te4)に基づき、ヒータ104のオン/オフを制御するようヒータ制御部112に指示を与える。指示を受けたヒータ制御部112は、電源部180を介してヒータ104のオン/オフを制御することで、定着ローラ101の表面温度を制御する(ステップS208)。
【0073】
なお、ヒータ制御部112による制御方法は、待機温度値Tg3(Tg4)を制御目標とし、この待機温度値Tg3(Tg4)と現在の定着ローラ101の表面温度値との温度差情報を所定時間間隔で逐次読み出し、当該温度差情報に基づきヒータ104のオン時間/オフ時間を制御するフィードバック制御である。このフィードバック制御は、待機温度値Tg3(Tg4)と現在の定着ローラ101の表面温度値との温度差成分をP、現在の温度差と1処理ステップ前の温度差との勾配成分をD、現在から所定時間過去の温度差の累積成分をIとし、当該P,D,Iの値と各々の値に掛け合わせる定数Kp,Kd,Kiから計算された値(Kp*P+Kd*D+Ki*I)と所定の閾値との比較結果から、ヒータ104のオン時間とオフ時間とを決定する制御方法である。定数Kp,Kd,Kiは、定着ローラ101の物理的な熱容量、ヒータ104の容量、定着ローラ101の回転量など、様々なパラメータから決定される値であり、当該値は常時固定ではなく、制御の用途によって適宜設定可能な値である。
【0074】
ここで、図14−A及び図14−Bに示す温度シーケンスについて説明する。図14−A及び図14−Bに示すt0’’,t0’’’はプリンタ1’の主電源が投入された時刻を表す。また、t’’1,t1’’’はヒータ104の制御(ヒータオン)開始の時刻、t2’’,t2’’’は定着ローラ101の表面温度値が定着ローラ回転開始温度値Tr3,Tr4に到達し、定着ローラ101の回転が開始される時刻、t3’’,t3’’’は定着ローラ101の表面温度値が定着ローラ回転停止温度値Te3,Te4に到達し、定着ローラ101の回転が停止される時刻、t’’4,t4’’’は定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg3,Tg4に到達する時刻を表す。
【0075】
第1のウォームアップ制御区間としての区間A’’,A’’’(t1’’−t2’’,t1’’’−t2’’’)は、定着ローラ101の回転は停止しており、ヒータは連続的にオン状態である。また、同様に第1のウォームアップ制御区間としての区間B’’,B’’’(t2’’−t3’’,t2’’’−t3’’’)は、定着ローラ101回転を開始しており、ヒータは連続的にオン状態である。
【0076】
第2のウォームアップ制御区間としての区間C’’,C’’’(t3’’−t4’’,t3’’’−t4’’’)は、定着ローラ101の回転は停止しており、ヒータは断続的にオン状態である。また、待機制御区間としての区間D’’,D’’’(t4’’以降,t4’’’以降)は、定着ローラ101の回転は停止しており、ヒータは断続的にオン状態である。
【0077】
そして、図14−A及び図14−Bによれば、ウォームアップ開始のタイミングは20℃近傍であり、本実施形態で制御目標としている待機温度値Tg3,Tg4を170℃とすると、ステップS208におけるヒータ104の制御開始時においては、約150℃の温度差がある。したがって、制御部106’はヒータ104をオンにするようヒータ制御部112に指示を与える。ヒータ制御部112の制御に基づき、ヒータ104がオンされると、定着ローラ101の表面温度値は図14−A及び図14−Bに示すように、上昇を開始する。
【0078】
次に、ステップS209において、制御部106’は上昇を開始した定着ローラ101の表面温度値が定着ローラ101回転開始温度値であるTr3(Tr4)に到達したか否かを判定する。ここで、定着ローラ101の表面温度値がTr3(Tr4)に到達してない場合(ステップS209 No)、制御部106’は判定を繰り返す。一方、定着ローラ101の表面温度値がTr3(Tr4)に到達した場合(ステップS209 Yes)、定着制御部141は、モータ駆動制御部113に対して定着部回転機構173が回転を開始するよう指示を与える。指示を受けたモータ駆動制御部113は、モータ131に対して回転開始信号を出力し、モータ131は回転を開始する。モータ131の回転は駆動伝達部172を経由して定着部回転機構173に伝達され、定着ローラ101は回転を開始する(ステップS210)。
【0079】
次に、制御部106’は定着ローラ101の表面温度値が定着ローラ回転停止温度値であるTe3(Te4)に到達したか否かを判定する(ステップS211)。ここで、定着ローラ101の表面温度値がTe3(Te4)に到達してない場合(ステップS211 No)、制御部106’は判定を繰り返す。一方、定着ローラ101の表面温度値がTe3(Te4)に到達した場合(ステップS211 Yes)、定着制御部141は、モータ駆動制御部113に対して定着部回転機構173が回転を停止するよう指示を与える。指示を受けたモータ駆動制御部113は、モータ131に対して回転停止信号を出力し、モータ131は回転を停止する。モータ131の回転の停止により、定着ローラ101は回転を停止する(ステップS212)。
【0080】
そして、ステップS213において、制御部106’は定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg3(Tg4)に到達したか否かを判定する。ここで、定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg3(Tg4)に到達していない場合(ステップS213 No)、制御部106’は、定着ローラ101の表面温度値と待機温度値Tg3(Tg4)との温度差に基づいて、ヒータ104のオン/オフを制御するようヒータ制御部112に指示を与える。指示を受けたヒータ制御部112は、電源部180を介してヒータ104のオン/オフを制御し、定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg3(Tg4)に到達するまで、定着ローラ101の表面温度を制御する(ステップS215)。一方、定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg3(Tg4)に到達している場合、制御部106’は、定着ローラ101の表面温度値を待機温度値Tg3(Tg4)に保つようヒータ制御部112に指示を与える。指示を受けたヒータ制御部112は、定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg3(Tg4)に保たれるようにヒータ104のオン/オフを制御する(ステップS214)。なお、ステップS213〜ステップS215にかかる処理は、ステップS208の処理で説明したフィードバック処理が実行されている。つまり、ステップS212において、ヒータ104は強制的にオフにされているのではなく、定着ローラ101の表面温度値と待機温度値Tg3(Tg4)との温度差に基づき、ヒータ104のオン/オフの制御を行うことで、定着ローラ101の表面温度値が待機温度値Tg3(Tg4)に達するまでの時間を短くし、ウォームアップにかかる時間を短縮する。
【0081】
第1の実施形態において説明したが、定着ローラの回転停止に伴う温度上昇量の大小は、定着ローラ101の回転速度やウォームアップ開始からローラ回転停止までの間にヒータをオンにした時間によって決定される。したがって、メディアウェイトが「普通紙」で「待機温度値Tg=170℃」の場合と、メディアウェイトが「厚紙」で「待機温度値Tg=160℃」の場合と、では制御目標として設定した待機温度値Tgがそれぞれ異なるため、ウォームアップ開始からローラ回転停止までの時間が異なる。一般的に、印刷に用いられる記録媒体の種類、例えば、紙厚が厚い記録媒体などでは、定着に必要な熱量が多く必要とされる。つまり、定着ローラ101の回転速度が一定である場合は、紙厚が厚い記録媒体などでは高い定着温度が必要とされる。しかし、高い定着温度を実現するためには、多くの電力量が必要とされ、そのため消費電力が多くなってしまうといった問題がある。そのため、紙厚が厚い記録媒体においては、定着ローラ101の回転速度を遅くする場合があり、その際、定着温度が低めに設定されることもある。この場合、待機温度値Tgも低く設定されるため、ヒータがオンとされる時間も短くなる。そのため、定着ローラ101の回転速度を遅くし、かつ、待機温度を低めとなる設定の下では、ローラ回転停止温度が低めとされる。このようなことから、図14−A、図14−Bに示した温度差NのN1とN2には、N1>N2の関係を持たせており、温度差NのN1、N2は、ステップS204において、ウォームアップ終了後に発生を予測した定着ローラの回転停止に伴う温度上昇量である。
【0082】
なお、本実施形態においては、待機温度値Tgと温度差Nをユーザにより入力されたメディアウェイト情報に基づいて設定しているが、第1の実施形態でも説明した通り、装置が設置されている環境温度値によって待機温度値Tgを任意に変更することができるため、メディアウェイト情報と環境温度値によって、様々な待機温度値Tgと温度差Nを設定することが可能である。
【0083】
以上のように、第2の実施形態によれば、媒体トレイに収納している記録媒体の情報に基づき、制御目標としての待機温度値を設定することができるため、印刷に供する記録媒体ごとに、ウォームアップ時間を短縮することが可能である。また、ウォームアップ時間を短縮することにより、ヒータをオンさせる時間を短くすることができるため、消費電力を抑えることもできる。さらに、定着ローラの表面温度値が規定以上の温度値に到達する機会が減少するので、定着ローラの寿命を延ばす効果も得ることも可能である。
【0084】
本発明にかかる実施形態においては、画像形成装置として、プリンタを一例として説明したが、プリンタ以外にも、例えば、MFP(Multi Function Peripheral)、ファクシミリ、複写装置等にも本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】プリンタの要部構成を説明する側面断面図である。
【図2】定着ユニットを説明する図である。
【図3】定着ユニットを説明する図である。
【図4】ローラ温度検出素子の配設例を説明する図である。
【図5】プリンタの機能構成を説明するブロック図である。
【図6】プリンタの処理ブロックを説明する図である。
【図7】プリンタの一連の処理動作を説明するフローチャートである。
【図8】温度差Nを決定するためのリストの一例である。
【図9−A】温度シーケンスを説明する図である。
【図9−B】温度シーケンスを説明する図である。
【図10】オーバーシュートを説明する図である。
【図11】プリンタの処理ブロックを説明する図である。
【図12】媒体情報のリストの一例である。
【図13】プリンタの一連の処理動作を説明するフローチャートである。
【図14−A】温度シーケンスを説明する図である。
【図14−B】温度シーケンスを説明する図である。
【符号の説明】
【0086】
1,1’ プリンタ
2 記録媒体
3 媒体カセット
11,12,13,14 プロセスユニット
20 転写ベルト
21,22,23,24 転写ローラ
30 定着ユニット
40,41 ピックアップローラ
42 レジストローラ
43,44 搬送ローラ
45 加圧ローラ
46 定着ローラ
47,48 排出ローラ
51,52,53 媒体通過センサ
101 定着ローラ
102 ローラ温度検出素子
104 ヒータ
105 無端形状ベルト
106,106’ 制御部
107 CPU
108 ROM
109 メモリ
110 タイマ
111 外部インタフェース
112 ヒータ制御部
113 モータ駆動制御部
115 定着部温度検出部
116 温度比較部
117 操作パネル制御部
118 操作パネル
119 表示部
121 媒体通過センサ
130 接続コネクタ
131 モータ
141 定着制御部
142 媒体情報部
150 I/F
151 ホストコンピュータ
161 ローラ
162 温度検出素子
165 加圧部温度検出部
166 A/D変換部
167 環境センサ
172 駆動伝達部
173 定着部回転機構
180 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤画像が転写された画像記録媒体を加熱定着する画像形成装置であって、
熱源と、
前記熱源により加熱される定着部と、
前記定着部に対向して配置されると共に、前記定着部を押圧する加圧部と、
前記定着部の媒体通紙領域に配置されると共に、前記定着部の温度値を検出する温度検出部と、
前記定着部と前記加圧部との回転を制御する回転制御部と、
を備え、
前記回転制御部は、
前記温度検出部により検出された前記定着部の検出温度値が、予め設定された待機温度値から所定温度値だけ低い温度値に到達したときに前記定着部と前記加圧部との回転を停止させること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
環境温度値を検出する環境温度検出部を備え、
前記所定温度値は、
前記環境温度検出部による前記環境温度値の検出結果に基づき変更されること、
を特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
入力された媒体情報を保持する媒体情報保持部を備え、
前記待機温度値と前記所定温度値とは、
前記媒体情報保持部に保持された前記媒体情報に基づき変更されること、
を特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
現像剤画像が転写された画像記録媒体を加熱定着する画像形成装置であって、
熱源と、
前記熱源への通電を制御する通電制御部と、
前記通電制御部による制御に基づき前記熱源により加熱される定着部と、
前記定着部の媒体通紙領域に配置されると共に、前記定着部の温度値を検出する温度検出部と、
前記定着部の回転を制御する回転制御部と、
を備え、
前記温度検出部による前記定着部の温度値の検出結果に基づき、
第1の温度値以上第2の温度値未満では、前記通電制御部は前記定着部へ通電させるように前記熱源を制御すると共に、前記回転制御部は前記定着部を回転させるように制御し、
第2の温度値以上第3の温度値未満では、前記通電制御部は前記定着部へ通電させるように前記熱源を制御すると共に、前記回転制御部は前記定着部の回転を停止させるように制御すること、
を特徴とる画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の温度値は、
前記回転制御部が前記定着部の回転を開始させるタイミングの指標となる設定温度値であること、
を特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2の温度値は、
前記回転制御部が前記定着部の回転を停止させるタイミングの指標となる設定温度値であること、
を特徴とする請求項4又は5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第3の温度値は、
前記現像剤画像が転写された前記画像記録媒体の加熱定着を開始するタイミングの指標となる設定温度値であること、
を特徴とする請求項4乃至6の何れに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1の温度値に到達するまでは、
前記通電制御部は前記定着部へ通電させるように前記熱源を制御すると共に、前記回転制御部は前記定着部の回転を停止させるように制御すること、
を特徴とする請求項4乃至7の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第2の温度値と前記第3の温度値との温度差は、
環境温度に基づいて設定されること、
を特徴とする請求項4乃至7の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第2の温度値と前記第3の温度値との温度差は、
前記環境温度が低いほど大きく設定されること、
を特徴とする請求項9記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−A】
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【図9−B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−A】
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【図14−B】
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【公開番号】特開2010−102210(P2010−102210A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275060(P2008−275060)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】