画像形成装置
【課題】維持回復動作に要する時間を短縮できるようにする。
【解決手段】1つのヘッドモジュール51を構成する5個のヘッド101a〜101eに対して5個のキャップ部材62a〜62eを有し、キャップ部材62a〜62eにそれぞれ連通する個別流路64a〜64eを接続し、個別流路64a〜64eを1つに集約して、個別流路64a〜64eに連通する共通流路65を設け、さらに共通流路65には2つの第1、第2圧力室66a、66bを並列に接続し、これらの圧力室66a、66bは共通の吸引ポンプ63に接続し、圧力室66a、66bと共通流路65との間には開閉弁67a、68aを介装し、圧力室66a、66bと吸引ポンプ63との間には開閉弁67b、68bを介装している。
【解決手段】1つのヘッドモジュール51を構成する5個のヘッド101a〜101eに対して5個のキャップ部材62a〜62eを有し、キャップ部材62a〜62eにそれぞれ連通する個別流路64a〜64eを接続し、個別流路64a〜64eを1つに集約して、個別流路64a〜64eに連通する共通流路65を設け、さらに共通流路65には2つの第1、第2圧力室66a、66bを並列に接続し、これらの圧力室66a、66bは共通の吸引ポンプ63に接続し、圧力室66a、66bと共通流路65との間には開閉弁67a、68aを介装し、圧力室66a、66bと吸引ポンプ63との間には開閉弁67b、68bを介装している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0004】
このような液体吐出方式の画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)においては、記録ヘッドのノズルを良好な状態に維持するために、記録ヘッドのノズル面をキャップ部材でキャッピング(封止)し、キャップ部材に接続された吸引ポンプなどの吸引手段で吸引することによって、記録ヘッドのノズルから増粘したインクを強制的に吸引排出する(これを「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)維持回復動作を行えるようにしている。
【0005】
従来、特許文献1に記載されているように、単位ヘッドに対応し、インク滴を収容可能なキャップ手段を備え、それぞれのキャップ手段は、排インク流路を介して吸引手段に接続され、流路には、小室、この小室の前後にキャップ手段側開閉弁及び吸引手段側開閉弁を備え、吸引手段によって小室内を負圧状態にして、開閉弁を開くことでキャップ手段内を負圧にすることが知られている。また、特許文献2には1つの吸引手段による吸引経路を切替え弁などで切替えるようにすることも知られている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−35117号公報
【特許文献2】特開平9−131882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、インクを吸引する時間を短縮してヘッドの維持回復に要する時間を短縮するために、キャップ部材の下流側に圧力室を設け、事前に、この圧力室を減圧して負圧状態にし、キャップ手段と圧力室の間には開閉弁を設け、負圧形成された状態でこの開閉弁を開放することで、記録ヘッドから瞬時にインクを吸引する構成にあっては、圧力室は記録ヘッドから圧力室前の容積より大きい必要があり、この容積を減圧するための時間がかかるという課題がある。この場合、減圧時間を短縮させるために吸引手段の能力を上げると、大型な吸引手段となってしまい小型化、低コスト化を図ることができなくなる。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、維持回復動作に要する時間を短縮できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有する複数のヘッドを配列した記録ヘッドと、
前記複数のヘッドのノズル面をそれぞれ封止する複数のキャップ部材と、
前記複数のキャップ部材に連通する複数の個別流路と、
前記複数の個別流路が1つの流路に集約された共通流路と、
前記共通流路に並列に接続された複数の圧力室と、
前記複数の圧力室にそれぞれ接続され、前記圧力室を負圧状態にする吸引手段と、
前記複数の圧力室と前記共通流路との間及び前記前記複数の圧力室と前記吸引手段との間を開閉する開閉弁と、を備えている
構成とした。
【0010】
ここで、前記吸引手段は前記複数の圧力室毎に設けられている構成とできる。
【0011】
また、前記複数の圧力室を交互に負圧状態にする制御を行う手段を備えている構成とできる。
【0012】
また、前記複数の圧力室を同時に負圧状態にする制御を行う手段を備えている構成とすることができる。
【0013】
また、前記複数の個別流路をそれぞれ開閉する複数の開閉弁を備えている構成とできる。
【0014】
また、前記複数の圧力室にはそれぞれ廃液タンクが接続されている構成とできる。
【0015】
また、前記複数の圧力室にはそれぞれ大気開放を行う開閉弁が設けられている構成とできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像形成装置によれば、複数のキャップ部材に連通する複数の個別流路と、複数の個別流路が1つの流路に集約された共通流路と、共通流路に並列に接続された複数の圧力室と、複数の圧力室にそれぞれ接続され、圧力室を負圧状態にする吸引手段と、複数の圧力室と共通流路との間及び複数の圧力室と吸引手段との間を開閉する開閉弁とを備えている構成としたので、事前に複数の圧力室を負圧状態にして、この複数の圧力室の負圧をキャップ部材に作用させることができて維持回復動作に要する時間を短縮でき、あるいは、交互に負圧状態にする圧力室を切替えて、次回の維持回復動作のために待機させることができて維持回復動作に要する時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する概略構成図、図2は同装置の模式的平面説明図である。
【0018】
この画像形成装置はライン型画像形成装置であり、装置本体1と、用紙Pを積載し給紙する給紙トレイ2と、印刷された用紙Pを排紙積載する排紙トレイ3と、用紙Pを給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送ユニット4と、搬送ユニット4によって搬送される用紙Pに液滴を吐出し印字する記録ヘッドを構成するヘッドモジュール51を含む画像形成ユニット5と、印刷終了後又は所要のタイミングで画像形成ユニット5の各記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構であるヘッドクリーニング装置6と、ヘッドクリーニング装置6を開閉する搬送ガイド部7と、画像形成ユニット5のヘッドモジュール51にインクを供給するサブタンクで構成されるインクタンクユニット8と、インクタンクユニット8にインクを供給するメインタンクユニット9とを備えている。
【0019】
装置本体1は、図示しない前後側板及びステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙Pは、分離ローラ21及び給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙される。
【0020】
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bと、これらのローラ41A、41B間に掛け回された無端状の搬送ベルト43とを備えている。この搬送ベルト43の表面には複数の図示しない穴が形成されており、搬送ベルト43の下部には用紙Pを吸引する吸引ファン44が配置されている。また、搬送駆動ローラ41A、搬送従動ローラ41B上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42A、42Bが図示しないガイドに保持されて、自重にてベルト43に当接している。
【0021】
搬送ベルト43は、搬送駆動ローラ41Aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Pは搬送ベルト43上に吸引ファン44により吸い付けられ、搬送ベルト43の周回移動によって搬送される。なお、搬送従動ローラ41B、搬送ガイドローラ42A、42Bは搬送ベルト43に従動して回転する。
【0022】
搬送ユニット4の上部には用紙Pに印字する液滴を吐出する複数のヘッドモジュール51で構成される画像形成ユニット5が矢示A方向(及び逆方向)に移動可能に配置されている。この画像形成ユニット5は、維持回復動作時(クリーニング時)にはクリーニング装置6上方まで移動され、画像形成時には図1の位置に戻される。
【0023】
画像形成ユニット5は、図3及び図4に示すように、液滴を吐出する複数のノズル102をノズル面104に2列配列した複数のヘッド101を一列に配列し、各ヘッド101にインクを分配供給する分岐部材54とともに一体化したヘッドモジュール(記録ヘッドユニット)51A、51B、51C、51Dが、用紙搬送方向に沿って並べてラインベース部材52に取付けられて配置されている。
【0024】
ここでは、ヘッドモジュール51A、51Bの2つのノズル列の一方でイエロー(Y)の液滴を、他方でマゼンタ(M)の液滴を吐出し、また、ヘッドモジュール51C、51Dの2つのノズル列の一方でシアン(C)の液滴を、他方でブラック(K)の液滴を吐出する。つまり、この画像形成ユニット5は、同じ色の液滴を吐出する2つのヘッドモジュール51が用紙搬送方向に並べて配置され、2つのヘッドモジュール51で用紙幅相当の1列分のノズル列が構成されている構成としている。
【0025】
この画像形成ユニット5の上流側にはインクタンクユニット8のインクタンク(サブタンク81(図示の都合上1つのインクタンクのみ符号を付している。)が配置され、供給チューブ82を介してサブタンク81からインクが各ヘッドモジュール51の分岐部材54に供給され、インクタンク81とヘッドモジュール51との水頭差によりヘッドモジュール51の各ヘッドに対する負圧が形成される。このインクタンクユニット8は画像形成ユニット5とともに矢示A方向に移動可能に配置されている。なお、インクタンク81からヘッドモジュール51に対する供給チューブ82は分かり易くするためヘッドモジュール51の上方から接続して状態で図示しているが、実際はヘッドモジュール51の長手方向(用紙搬送方向と直交する方向)の端部に接続される。
【0026】
さらに、インクタンク81の上流側にはメインタンクユニット9が配置され、メインタンク(インクカートリッジ)91から供給チューブ92を介してインクがサブタンク81に供給される。
【0027】
搬送ユニット4の下流側には用紙Pを排紙トレイ3に排紙する搬送ガイド部7が設けられている。搬送ガイド部7にて案内されて搬送される用紙Pは排紙トレイ3に排紙される。排紙トレイ3は、用紙Pの幅方向を規制する対のサイドフェンス31と用紙Pの先端を規制するエンドフェンス32を備えている。
【0028】
維持回復機構(ヘッドクリーニング装置)6は、画像形成ユニット5の各ヘッドモジュール51に対応して、4列分のクリーニング手段61A〜61Dが配置され、1つのクリーニング手段61はヘッドモジュール51の各ヘッドに対応するキャップ部材62及び図示しないがワイパ部材などで構成されている。なお、各クリーニング手段61のキャップ部材62は、各列毎に独立して上下動させることができる構成としている。さらに、クリーニング手段61の下方には、キャップ部材62でヘッドモジュール51のノズル面をキャッピングした状態でノズルからインクを吸引(ヘッド吸引又はノズル吸引という。)するための吸引手段である吸引ポンプ63A〜63Dが配置されている。
【0029】
また、この画像形成装置においては、印刷終了後、液滴を吐出するヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面をクリーニング手段61でキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する場合、あるいは、ヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面に付着したインクをワイピング部材で清掃する場合は、図1にも示すように、印刷停止後、搬送ユニット4全体が搬送従動ローラ41Bを支点に矢印B方向に回動し、画像形成ユニット5との間の空間を画像形成時よりも大きくすることで、画像形成ユニット5の移動スペースを確保するようにしている。このとき、ヘッドクリーニング装置6上部に配置されている搬送ガイド部7の搬送ガイド板71も支点72にて矢印C方向上方に回動され、ヘッドクリーニング装置6の上方が開放される。
【0030】
そして、搬送ユニット4と搬送ガイド部7がそれぞれ解放(解除)された後に、画像形成ユニット5が用紙通紙方向(矢示A方向)に移動し、ヘッドクリーニング装置6上方で停止され、クリーニング手段61が上昇して各ヘッドモジュール51のクリーニング動作(維持回復動作)に移行する。
【0031】
次に、本発明の第1実施形態について図5をも参照して説明する。なお、図5は同実施形態における1つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)に対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
このヘッドクリーニング装置6は、1つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)51を構成する複数(この例では5個)のヘッド101a〜101eに対して、複数(この例では5個)のキャップ部材62a〜62eを有している。そして、複数のキャップ部材62a〜62eにそれぞれ連通する個別流路64a〜64e(個別流路を形成する部材を「個別流路部材」という。)を接続し、これらの個別流路64a〜64eを1つに集約して、個別流路64a〜64eに連通する共通流路65(共通流路を形成する部材を「共通流路部材」又は「集合流路部材」という。)を設けている。
【0032】
この共通流路65には、複数(この例では2つ)の第1、第2圧力室66a、66bを並列に接続し、これらの圧力室66a、66bは共通の吸引手段である吸引ポンプ63に接続している。そして、圧力室66a、66bと共通流路65との間には開閉弁67a、68aを介装し、圧力室66a、66bと吸引ポンプ63との間には開閉弁67b、68bを介装している。
【0033】
なお、個別流路64a〜64e、共通流路65及び圧力室66a、66b、吸引ポンプ64間を接続する各流路部材は、チューブ、パイプなどインクを送液できるものであれば特に限定されるものではない。
【0034】
また、吸引ポンプ63としては、回転体によってチューブを押しつぶし、そのチューブの復元力を用いて送液するチュービングポンプや、ダイアフラムポンプなど吸引可能なポンプであれば限定されない。
【0035】
また、開閉弁67a、67b、68a、68bは電気的な信号で開閉制御できる電磁弁などがあるが、流路を直接押しつぶし遮断する構成、曲げ潰して遮断する構成などでもよい。吸引手段に経路を遮断できる機構を有するものであれば、吸引手段側の開閉弁を特に配置する必要はない。例えば、上記チュービングポンプのようにチューブをローラ等で押しつぶしながら回転させ、液体を送液するポンプでは、ポンプ停止時にはローラはチューブを押しつぶした状態で停止となり、チューブを封止し流路を遮断する。即ち、開閉弁の働きを有している。
【0036】
また、圧力室66a、66bは、吸引手段によって吸引され負圧形成されるため、剛体が好ましく、ガラス容器、プラスチックなど材質は限定されない。圧力室66a、66b内の圧力状態を開閉弁67a、67b、68a、68b、吸引ポンプ63によってそれぞれ独立して制御することができる。
【0037】
このヘッドクリーニング装置6では、キャップ部材62a〜62eをヘッド101のノズル面104に密着させた状態で、吸引ポンプ63によって圧力室66a、66b内を吸引することで圧力室66a、66b内を適切な負圧状態にすることができる。そして、この負圧を開閉弁67a、67bの開閉制御によってキャップ部材62a〜62eに作用させて、ヘッド101のノズル102からインクを瞬時に吸引することができる。また、1度の吸引時には1つの圧力室66a又は66b内の負圧で十分にインクを吸引することができ、他方の圧力室66b又は66aも負圧状態に維持しておくことで、次回の吸引動作に瞬時に対応することができる。
【0038】
次に、このヘッドクリーニング装置の制御に関わる制御部の概要について図6に示すブロック説明図を参照して説明する。
次に、制御部の概要について図5のブロック説明図を参照して説明する。
この制御部500は、この画像形成装置全体の制御を司る本発明に係る制御手段を兼ねるマイクロコンピュータ、画像メモリ、通信インタフェースなどで構成した主制御部(システムコントローラ)501を備えている。主制御部501は、外部の情報処理装置(ホスト側)などから転送される画像データ及び各種コマンド情報に基づいて用紙に画像を形成するために、印刷制御部502に印刷用データを送出する。
【0039】
印刷制御部502は、主制御部501からの受領する印刷データ信号に基づいて、ヘッドモジュール51から液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成し、このデータの転送及び転送の確定などに必要な各種信号などをヘッドドライバ503に転送するとともに、駆動波形データ格納手段である記憶部、駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器や電流増幅器等で構成される駆動波形生成部、ヘッドドライバ503に与える駆動波形を選択する選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ503に出力して、ヘッドモジュール(記録ヘッド)51の各ヘッド101を駆動制御する。
【0040】
また、主制御部501は、モータドライバ504を介して、搬送ベルト43を周回移動させる用紙送りモータ505、キャップ部材62を含むクリーニング手段61を昇降させる昇降機構506を駆動する昇降モータ507、吸引ポンプ63を駆動するポンプモータ508を駆動制御し、ドライバ509を介して開閉弁67a、67b、68a、68bの開閉制御を行う。
【0041】
また、主制御部501は、各種センサを含むセンサ群510からの検出信号が入力され、また、操作部511との間で各種情報の入出力及び表示情報のやり取りを行う。
【0042】
次に、この実施形態における吸引動作の制御について説明する。
この実施形態では、図7に示すように、少なくとも2つの圧力室を交互に負圧状態にする交互モードと、図示しないが、2つ以上の圧力室を同時に負圧状態にする同時モードを有している。
【0043】
交互モードでは、一方の圧力室66a(図では圧力室(1)と表記)内を負圧にし、この一方の圧力室66aの負圧をキャップ部材に作用させている間に他方の圧力室66b(図では圧力室(2)と表記)内を負圧にし、他方の圧力室66b内の負圧をキャップ部材に作用させている間に一方の圧力室66a内を負圧にするというように、2つの圧力室66a、66bを交互に負圧状態にする。このように、それぞれの圧力室を交互に使用する交互モードでは、交互に負圧を形成することで、吸引動作時間を短縮することができる。
【0044】
図7に示す例では、初めに圧力室(1)を使用することとする。1回目の負圧作用では、圧力室(1)を負圧形成し、キャップ部材内に負圧を作用させる。その最中に、圧力室(2)を負圧形成し維持待機させておく。1回目の吸引が終了し、2回目に移行する場合、維持待機していた圧力室(2)を使用しキャップ部材内に圧力室(2)の負圧を作用させる。このとき、圧力室(1)は負圧を形成し、維持待機しておく。このように3回目、4回目と圧力室を交互に使用し負圧を作用させる。通常の記録ヘッドのノズル抜けが発生してしまった場合、この交互モードを使用しクリーニング動作を実施する。
【0045】
同時モードでは、2つの圧力室66a、66b内を同時に負圧にし、同時にキャップ部材に作用させる。この同時モードでは、圧力室の容積が実質的に倍増することで、吸引時にキャップ部材内に作用する負圧時間が長くなり、ヘッドから高い流速でインクを吸引する時間を長くすることができ、確実にヘッドの維持回復を行うことができる。
【0046】
つまり、前述した交互モードでノズル吸引を行っても記録ヘッドが回復しない場合、あるいは、記録ヘッドのノズルがダウンしてしまった場合(例えば、全ノズルダウン)には、ノズルからの吸引量を多くする必要があるため、圧力室の負圧を長時間維持する必要があり、その場合は、複数の圧力室を同時に使用して負圧維持時間を延ばし、吸引量を多くする。これにより、確実にヘッドの回復を行うことができる。
【0047】
そこで、まず交互モードの吸引動作制御について図8に示すフロー図を参照して説明する。なお、ここでは、初めに圧力室66aから減圧する例で説明するが、必ずしも圧力室66aから減圧する必要はない。
まず、圧力室66aのキャップ側開閉弁67aを閉じ、圧力室66bのキャップ側開閉弁67bを閉じ、最初に減圧する圧力室66aの吸引側(吸引ポンプ側)開閉弁68aを開き、最初に減圧しない圧力室66bの吸引側開閉弁68bを閉じる。
【0048】
そして、吸引ポンプ63を駆動することで、圧力室66a内を吸引して圧力室66aに所定の負圧を形成する(所定の値の負圧状態にする)。圧力室66aが所定の負圧まで到達したときに、圧力室66aの吸引側開閉弁68aを閉じた後、吸引ポンプ63を停止(OF)する。これにより、圧力室66aは閉じた状態となって負圧状態が保持される。
【0049】
なお、圧力室66aが所定の負圧になったか否かの検知は、圧力室66a内の圧力を検知する図示しない圧力センサなどを設け、設定した負圧値に到達したことを検知し、その信号に基づいて吸引側開閉弁67aを閉じる制御とすることができる。あるいは、圧力室66aの容積は一定であるため、予め所定の負圧に到達する吸引ポンプ63の稼動時間を求めておき、吸引ポンプ63の稼働時間が設定時間に到達したときに吸引側開閉弁68aの閉動作及び吸引ポンプ63の停止を行うようにすることもできる。いずれにしても、適正な負圧を形成することができるため、吸引量を調整することが可能である。
【0050】
次いで、画像形成ユニット5をヘッドクリーニング装置6の上方に移動させた状態(事前に移動している)で、キャップ部材62a〜62eを上昇させ、ヘッド101a〜101eをキャッピングする。なお、このキャップ部材62a〜62eの上昇は、キャップ側開閉弁67aが閉じている状態であればキャップ部材62a〜62eに圧力室66aの負圧が作用することはないので、圧力室66aを吸引する前から実施することもできる。
【0051】
その後、キャップ側開閉弁67aを開放する。これにより、圧力室66a内の負圧がキャップ部材62a〜62eに作用するので、ヘッド101a〜101eのノズル102からインクが瞬時にキャップ部材62a〜62e内に吸引排出される。圧力室66aの容積が大きければ負圧値はある時間保持することができ、インクを吸引し続けることができる。また、キャップ側開閉弁67aをある周期で開閉させることで、吸引する動作としては脈動させるような吸引を行うこともでき、圧力室66aの負圧を保持したまま、キャップ側開閉弁67aの制御によって種々の吸引動作をすることができる。
【0052】
そして、所定時間吸引したときに、キャップ側開閉弁67aを閉じて吸引終了となる。
【0053】
ここで、圧力室66aによるキャップ部材内吸引中に、もう一方の圧力室66b内を吸引して負圧状態にする。つまり、吸引側開閉弁68bを開いて吸引ポンプ63を駆動し、圧力室66bが所定の負圧に達したときに、吸引側開閉弁68bを閉じて吸引ポンプ63を閉じて待機する。これにより、次回吸引時に、初回に実施した圧力室66aではなく、もうすでに所定の負圧となっている圧力室66bを使用することで、すぐに吸引動作を実施することができる。
【0054】
このように、圧力室内を吸引手段で吸引し負圧を形成することで、記録ヘッド内のインクを短時間に吸引することができる。また、事前に圧力室を負圧状態に保持することで、吸引動作信号は入ったときに瞬時に吸引動作に移行でき、維持回復動作の時間を短縮することができる。さらに、一方の圧力室によって吸引している間に、他方の圧力室内を負圧状態にすることで、一方の圧力室の使用後、次の吸引動作信号が入ったとき、他方の圧力室を使用して吸引を行うことができて、吸引動作の時間短縮を図れる。さらには、クリーニング動作終了後、クリーニング装置が退避し、記録ヘッドによる画像形成中にそれぞれの圧力室内を吸引手段で吸引して負圧を形成保持しておくこともできる。
【0055】
次に、同時モードの吸引動作制御について図9を参照して説明する。
まず、キャップ側開閉弁67a、67bの両方を閉じて、吸引側開閉弁68a、68bの両方を開放し、吸引ポンプ63を駆動して、圧力室66a、66b内を負圧状態に形成する。圧力室66a、66bが所定の負圧値に到達したときに、吸引側開閉弁68a、68bを閉じて、吸引ポンプ63を停止させる。この状態で圧力室66aと圧力室66b内は所定の負圧状態に形成されて保持される。
【0056】
次いで、画像形成ユニット5をヘッドクリーニング装置6の上方に移動させた状態(事前に移動している)で、キャップ部材62a〜62eを上昇させる。なお、このキャップ部材62a〜62eの上昇は、キャップ側開閉弁67a、67bが閉じている状態であればキャップ部材62a〜62eに圧力室66a、66bの負圧が作用することはないので、圧力室66a、66bを吸引する前から実施することもできる。
【0057】
その後、キャップ側開閉弁67a、67bを開放する。これにより、圧力室66a、66b内の負圧がほぼ同時にキャップ部材62a〜62eに作用するので、ヘッド101のノズル102からインクが瞬時にキャップ部材62a〜62e内に吸引排出される。ここで、2つの圧力室66a、66bを使用していることにより、1つの圧力室以上に負圧作用時間を多くすることができ、高い流速のまま長時間吸引することができ、ヘッド101のノズル102からのインク吸引を効果的に行うことができる。そして、所定の吸引時間に到達したときに、キャップ側開閉弁67a、67bを閉じて吸引動作が終了となる。
【0058】
このように、複数のキャップ部材に連通する複数の個別流路と、複数の個別流路が1つの流路に集約された共通流路と、共通流路に並列に接続された複数の圧力室と、複数の圧力室にそれぞれ接続され、圧力室を負圧状態にする吸引手段と、複数の圧力室と共通流路との間及び複数の圧力室と吸引手段との間を開閉する開閉弁とを備えている構成とすることで、事前に複数の圧力室を負圧状態にして、この複数の圧力室の負圧をキャップ部材に作用させることができて維持回復動作に要する時間を短縮でき、あるいは、交互に負圧状態にする圧力室を切替えて、次回の維持回復動作のために待機させることができて維持回復動作に要する時間を短縮できる。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態について図10を参照して説明する。なお、図10は同実施形態における1つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)に対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
ここでは、各圧力室66a、66bに対応して2つの吸引ポンプ63a、63bを接続し、個々の吸引ポンプ63a、63bでそれぞれ対応する圧力室66a、66bの吸引を行うことができるようにしている。
【0060】
特に、前述した同時モードで圧力室66aと圧力室66b内を同時に負圧状態にする場合、第1実施形態のように1つの吸引ポンプで吸引すると吸引ポンプの能力次第ではあるが、圧力室の総容積が増倍している分、吸引時間がかかることになる。そこで、それぞれ個別の吸引手段(吸引ポンプ)を備えることで、より短時間に圧力室内を負圧にすることができる。
【0061】
次に、本発明の第3実施形態について図11を参照して説明する。なお、図11は同実施形態における1つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)に対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
ここでは、第1実施形態において、各キャップ部材62a〜62eの個別流路64a〜64eに開閉弁161a〜161eを介装している。これにより、それぞれの開閉弁161a〜161eを個別に開閉制御することで、ノズル吸引を行うヘッド101を個別に選択することができる。
【0062】
例えば、ヘッド101aが吐出不良となりヘッド101aのみを吸引したい場合、ヘッド101aの開閉弁161aを開放し、他の開閉弁161b〜161eは閉じた状態にする。この状態で、前記第1実施形態と同様にして、圧力室66a、66bの前後に配置されたキャップ側開閉弁67a、67b及び吸引側開閉弁68a、68b、吸引ポンプ63の動作制御を行うことで、ヘッド101aのみノズル吸引が行われる。これにより、より必要最小限のインク吸引量でヘッドの回復を行うことができる。
【0063】
なお、開閉弁161a〜161eのうちの複数を同時に開くことで複数個のヘッド101を吸引することもでき、同時に全ての開閉弁161a〜161eを開くことですべてのヘッド101からノズル吸引を行うこともできる。
【0064】
次に、本発明の第4実施形態について図12を参照して説明する。なお、図12は同実施形態における1つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)に対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
ここでは、前記第1実施形態において、各圧力室66a、66bに廃液開閉弁163a、163bを介して廃液タンク162a、162bを接続している。
【0065】
圧力室66a、66b内を吸引ポンプ63によって吸引するときは、廃液開閉弁163a、163bを閉じた状態にしておき、前記第1実施形態と同様な吸引動作において、キャップ部材62a〜62eに排出されたインクの廃液を圧力室66a、66b内に送液した後、圧力室66a、66b内に収容された廃液を排出するため、廃液開閉弁163a、163bを開放し、廃液タンク162a、162bへ廃液を排出する。
【0066】
これにより、圧力室66a、66bが廃液で満たされることがなく、次回圧力室66a、66b内を吸引する容積を確保することができる。この排出された廃液は吸引されたインクに対して同じものであれば(混色していなければ)、再度、記録ヘッド内へ供給できるようにしても構わない。
【0067】
なお、ここでは、圧力室66a、66b毎に廃液タンク162a、162bを配置しているが、廃液タンクを1つとして廃液タンクへつながる流路を集合させることもできる。
【0068】
次に、本発明の第5実施形態について図13を参照して説明する。なお、図13は同実施形態における1つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)に対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
ここでは、上記第4実施形態において、圧力室66a、66bに大気と連通する大気連通路165a、165bと、これを開閉する大気開放弁166a、166bを設けている。
【0069】
大気開放弁166a、166bは通常は閉じた状態にしておき、圧力室66a、66bが廃液で満たされた場合、廃液タンク161a、161bへ排出するときに、大気開放弁166a、166bを開放し、大気と連通することで、圧力室66a、66b内の廃液をスムーズに廃液タンク161a、161bへと排出することができる。
【0070】
次に、本発明の第6実施形態について図14を参照して説明する。なお、図14は同実施形態における4つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)に対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
ここでは、4つのヘッドモジュール51に合計8つの圧力室66a、66bに共通の1つの廃液タンク162を備えている。
【0071】
なお、上記実施形態ではライン型画像形成装置に適用した例で説明しているが、シリアル型画像形成装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の全体構成を説明する正面概略説明図である。
【図2】同じく要部平面説明図である。
【図3】記録ヘッドの平面説明図である。
【図4】ヘッドの平面説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態における1つのヘッドモジュールに対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
【図6】同実施形態の制御部の概要を説明する機能ブロック図である。
【図7】同実施形態の吸引動作モードの説明に供する説明図である。
【図8】同じく交互モードの吸引動作の説明に供するフロー図である。
【図9】同じく同時モードの吸引動作の説明に供するフロー図である。
【図10】本発明の第2実施形態における1つのヘッドモジュールに対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
【図11】本発明の第3実施形態における1つのヘッドモジュールに対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
【図12】本発明の第4実施形態における1つのヘッドモジュールに対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
【図13】本発明の第5実施形態における1つのヘッドモジュールに対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
【図14】本発明の第6実施形態における1つのヘッドモジュールに対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
【符号の説明】
【0073】
1…装置本体
4…搬送ユニット(搬送部)
5…画像形成ユニット
6…クリーニング装置(維持回復機構)
7…搬送ガイド部
8…インクタンクユニット(サブタンクユニット)
9…メインタンクユニット
51…ヘッドモジュール(記録ヘッド)
54…分岐部材(ディストリビュータ)
62A〜62D、62a〜62e…キャップ部材
63、63a、63b…吸引ポンプ
64a〜64e…個別流路
65…共通流路
66a、66b…圧力室
67a、67b、68a、68b、161a〜161e、163a、163b…開閉弁
101…ヘッド
102…ノズル
162、162a,162b…廃液タンク
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0004】
このような液体吐出方式の画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)においては、記録ヘッドのノズルを良好な状態に維持するために、記録ヘッドのノズル面をキャップ部材でキャッピング(封止)し、キャップ部材に接続された吸引ポンプなどの吸引手段で吸引することによって、記録ヘッドのノズルから増粘したインクを強制的に吸引排出する(これを「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)維持回復動作を行えるようにしている。
【0005】
従来、特許文献1に記載されているように、単位ヘッドに対応し、インク滴を収容可能なキャップ手段を備え、それぞれのキャップ手段は、排インク流路を介して吸引手段に接続され、流路には、小室、この小室の前後にキャップ手段側開閉弁及び吸引手段側開閉弁を備え、吸引手段によって小室内を負圧状態にして、開閉弁を開くことでキャップ手段内を負圧にすることが知られている。また、特許文献2には1つの吸引手段による吸引経路を切替え弁などで切替えるようにすることも知られている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−35117号公報
【特許文献2】特開平9−131882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、インクを吸引する時間を短縮してヘッドの維持回復に要する時間を短縮するために、キャップ部材の下流側に圧力室を設け、事前に、この圧力室を減圧して負圧状態にし、キャップ手段と圧力室の間には開閉弁を設け、負圧形成された状態でこの開閉弁を開放することで、記録ヘッドから瞬時にインクを吸引する構成にあっては、圧力室は記録ヘッドから圧力室前の容積より大きい必要があり、この容積を減圧するための時間がかかるという課題がある。この場合、減圧時間を短縮させるために吸引手段の能力を上げると、大型な吸引手段となってしまい小型化、低コスト化を図ることができなくなる。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、維持回復動作に要する時間を短縮できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有する複数のヘッドを配列した記録ヘッドと、
前記複数のヘッドのノズル面をそれぞれ封止する複数のキャップ部材と、
前記複数のキャップ部材に連通する複数の個別流路と、
前記複数の個別流路が1つの流路に集約された共通流路と、
前記共通流路に並列に接続された複数の圧力室と、
前記複数の圧力室にそれぞれ接続され、前記圧力室を負圧状態にする吸引手段と、
前記複数の圧力室と前記共通流路との間及び前記前記複数の圧力室と前記吸引手段との間を開閉する開閉弁と、を備えている
構成とした。
【0010】
ここで、前記吸引手段は前記複数の圧力室毎に設けられている構成とできる。
【0011】
また、前記複数の圧力室を交互に負圧状態にする制御を行う手段を備えている構成とできる。
【0012】
また、前記複数の圧力室を同時に負圧状態にする制御を行う手段を備えている構成とすることができる。
【0013】
また、前記複数の個別流路をそれぞれ開閉する複数の開閉弁を備えている構成とできる。
【0014】
また、前記複数の圧力室にはそれぞれ廃液タンクが接続されている構成とできる。
【0015】
また、前記複数の圧力室にはそれぞれ大気開放を行う開閉弁が設けられている構成とできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像形成装置によれば、複数のキャップ部材に連通する複数の個別流路と、複数の個別流路が1つの流路に集約された共通流路と、共通流路に並列に接続された複数の圧力室と、複数の圧力室にそれぞれ接続され、圧力室を負圧状態にする吸引手段と、複数の圧力室と共通流路との間及び複数の圧力室と吸引手段との間を開閉する開閉弁とを備えている構成としたので、事前に複数の圧力室を負圧状態にして、この複数の圧力室の負圧をキャップ部材に作用させることができて維持回復動作に要する時間を短縮でき、あるいは、交互に負圧状態にする圧力室を切替えて、次回の維持回復動作のために待機させることができて維持回復動作に要する時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する概略構成図、図2は同装置の模式的平面説明図である。
【0018】
この画像形成装置はライン型画像形成装置であり、装置本体1と、用紙Pを積載し給紙する給紙トレイ2と、印刷された用紙Pを排紙積載する排紙トレイ3と、用紙Pを給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送ユニット4と、搬送ユニット4によって搬送される用紙Pに液滴を吐出し印字する記録ヘッドを構成するヘッドモジュール51を含む画像形成ユニット5と、印刷終了後又は所要のタイミングで画像形成ユニット5の各記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構であるヘッドクリーニング装置6と、ヘッドクリーニング装置6を開閉する搬送ガイド部7と、画像形成ユニット5のヘッドモジュール51にインクを供給するサブタンクで構成されるインクタンクユニット8と、インクタンクユニット8にインクを供給するメインタンクユニット9とを備えている。
【0019】
装置本体1は、図示しない前後側板及びステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙Pは、分離ローラ21及び給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙される。
【0020】
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bと、これらのローラ41A、41B間に掛け回された無端状の搬送ベルト43とを備えている。この搬送ベルト43の表面には複数の図示しない穴が形成されており、搬送ベルト43の下部には用紙Pを吸引する吸引ファン44が配置されている。また、搬送駆動ローラ41A、搬送従動ローラ41B上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42A、42Bが図示しないガイドに保持されて、自重にてベルト43に当接している。
【0021】
搬送ベルト43は、搬送駆動ローラ41Aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Pは搬送ベルト43上に吸引ファン44により吸い付けられ、搬送ベルト43の周回移動によって搬送される。なお、搬送従動ローラ41B、搬送ガイドローラ42A、42Bは搬送ベルト43に従動して回転する。
【0022】
搬送ユニット4の上部には用紙Pに印字する液滴を吐出する複数のヘッドモジュール51で構成される画像形成ユニット5が矢示A方向(及び逆方向)に移動可能に配置されている。この画像形成ユニット5は、維持回復動作時(クリーニング時)にはクリーニング装置6上方まで移動され、画像形成時には図1の位置に戻される。
【0023】
画像形成ユニット5は、図3及び図4に示すように、液滴を吐出する複数のノズル102をノズル面104に2列配列した複数のヘッド101を一列に配列し、各ヘッド101にインクを分配供給する分岐部材54とともに一体化したヘッドモジュール(記録ヘッドユニット)51A、51B、51C、51Dが、用紙搬送方向に沿って並べてラインベース部材52に取付けられて配置されている。
【0024】
ここでは、ヘッドモジュール51A、51Bの2つのノズル列の一方でイエロー(Y)の液滴を、他方でマゼンタ(M)の液滴を吐出し、また、ヘッドモジュール51C、51Dの2つのノズル列の一方でシアン(C)の液滴を、他方でブラック(K)の液滴を吐出する。つまり、この画像形成ユニット5は、同じ色の液滴を吐出する2つのヘッドモジュール51が用紙搬送方向に並べて配置され、2つのヘッドモジュール51で用紙幅相当の1列分のノズル列が構成されている構成としている。
【0025】
この画像形成ユニット5の上流側にはインクタンクユニット8のインクタンク(サブタンク81(図示の都合上1つのインクタンクのみ符号を付している。)が配置され、供給チューブ82を介してサブタンク81からインクが各ヘッドモジュール51の分岐部材54に供給され、インクタンク81とヘッドモジュール51との水頭差によりヘッドモジュール51の各ヘッドに対する負圧が形成される。このインクタンクユニット8は画像形成ユニット5とともに矢示A方向に移動可能に配置されている。なお、インクタンク81からヘッドモジュール51に対する供給チューブ82は分かり易くするためヘッドモジュール51の上方から接続して状態で図示しているが、実際はヘッドモジュール51の長手方向(用紙搬送方向と直交する方向)の端部に接続される。
【0026】
さらに、インクタンク81の上流側にはメインタンクユニット9が配置され、メインタンク(インクカートリッジ)91から供給チューブ92を介してインクがサブタンク81に供給される。
【0027】
搬送ユニット4の下流側には用紙Pを排紙トレイ3に排紙する搬送ガイド部7が設けられている。搬送ガイド部7にて案内されて搬送される用紙Pは排紙トレイ3に排紙される。排紙トレイ3は、用紙Pの幅方向を規制する対のサイドフェンス31と用紙Pの先端を規制するエンドフェンス32を備えている。
【0028】
維持回復機構(ヘッドクリーニング装置)6は、画像形成ユニット5の各ヘッドモジュール51に対応して、4列分のクリーニング手段61A〜61Dが配置され、1つのクリーニング手段61はヘッドモジュール51の各ヘッドに対応するキャップ部材62及び図示しないがワイパ部材などで構成されている。なお、各クリーニング手段61のキャップ部材62は、各列毎に独立して上下動させることができる構成としている。さらに、クリーニング手段61の下方には、キャップ部材62でヘッドモジュール51のノズル面をキャッピングした状態でノズルからインクを吸引(ヘッド吸引又はノズル吸引という。)するための吸引手段である吸引ポンプ63A〜63Dが配置されている。
【0029】
また、この画像形成装置においては、印刷終了後、液滴を吐出するヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面をクリーニング手段61でキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する場合、あるいは、ヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面に付着したインクをワイピング部材で清掃する場合は、図1にも示すように、印刷停止後、搬送ユニット4全体が搬送従動ローラ41Bを支点に矢印B方向に回動し、画像形成ユニット5との間の空間を画像形成時よりも大きくすることで、画像形成ユニット5の移動スペースを確保するようにしている。このとき、ヘッドクリーニング装置6上部に配置されている搬送ガイド部7の搬送ガイド板71も支点72にて矢印C方向上方に回動され、ヘッドクリーニング装置6の上方が開放される。
【0030】
そして、搬送ユニット4と搬送ガイド部7がそれぞれ解放(解除)された後に、画像形成ユニット5が用紙通紙方向(矢示A方向)に移動し、ヘッドクリーニング装置6上方で停止され、クリーニング手段61が上昇して各ヘッドモジュール51のクリーニング動作(維持回復動作)に移行する。
【0031】
次に、本発明の第1実施形態について図5をも参照して説明する。なお、図5は同実施形態における1つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)に対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
このヘッドクリーニング装置6は、1つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)51を構成する複数(この例では5個)のヘッド101a〜101eに対して、複数(この例では5個)のキャップ部材62a〜62eを有している。そして、複数のキャップ部材62a〜62eにそれぞれ連通する個別流路64a〜64e(個別流路を形成する部材を「個別流路部材」という。)を接続し、これらの個別流路64a〜64eを1つに集約して、個別流路64a〜64eに連通する共通流路65(共通流路を形成する部材を「共通流路部材」又は「集合流路部材」という。)を設けている。
【0032】
この共通流路65には、複数(この例では2つ)の第1、第2圧力室66a、66bを並列に接続し、これらの圧力室66a、66bは共通の吸引手段である吸引ポンプ63に接続している。そして、圧力室66a、66bと共通流路65との間には開閉弁67a、68aを介装し、圧力室66a、66bと吸引ポンプ63との間には開閉弁67b、68bを介装している。
【0033】
なお、個別流路64a〜64e、共通流路65及び圧力室66a、66b、吸引ポンプ64間を接続する各流路部材は、チューブ、パイプなどインクを送液できるものであれば特に限定されるものではない。
【0034】
また、吸引ポンプ63としては、回転体によってチューブを押しつぶし、そのチューブの復元力を用いて送液するチュービングポンプや、ダイアフラムポンプなど吸引可能なポンプであれば限定されない。
【0035】
また、開閉弁67a、67b、68a、68bは電気的な信号で開閉制御できる電磁弁などがあるが、流路を直接押しつぶし遮断する構成、曲げ潰して遮断する構成などでもよい。吸引手段に経路を遮断できる機構を有するものであれば、吸引手段側の開閉弁を特に配置する必要はない。例えば、上記チュービングポンプのようにチューブをローラ等で押しつぶしながら回転させ、液体を送液するポンプでは、ポンプ停止時にはローラはチューブを押しつぶした状態で停止となり、チューブを封止し流路を遮断する。即ち、開閉弁の働きを有している。
【0036】
また、圧力室66a、66bは、吸引手段によって吸引され負圧形成されるため、剛体が好ましく、ガラス容器、プラスチックなど材質は限定されない。圧力室66a、66b内の圧力状態を開閉弁67a、67b、68a、68b、吸引ポンプ63によってそれぞれ独立して制御することができる。
【0037】
このヘッドクリーニング装置6では、キャップ部材62a〜62eをヘッド101のノズル面104に密着させた状態で、吸引ポンプ63によって圧力室66a、66b内を吸引することで圧力室66a、66b内を適切な負圧状態にすることができる。そして、この負圧を開閉弁67a、67bの開閉制御によってキャップ部材62a〜62eに作用させて、ヘッド101のノズル102からインクを瞬時に吸引することができる。また、1度の吸引時には1つの圧力室66a又は66b内の負圧で十分にインクを吸引することができ、他方の圧力室66b又は66aも負圧状態に維持しておくことで、次回の吸引動作に瞬時に対応することができる。
【0038】
次に、このヘッドクリーニング装置の制御に関わる制御部の概要について図6に示すブロック説明図を参照して説明する。
次に、制御部の概要について図5のブロック説明図を参照して説明する。
この制御部500は、この画像形成装置全体の制御を司る本発明に係る制御手段を兼ねるマイクロコンピュータ、画像メモリ、通信インタフェースなどで構成した主制御部(システムコントローラ)501を備えている。主制御部501は、外部の情報処理装置(ホスト側)などから転送される画像データ及び各種コマンド情報に基づいて用紙に画像を形成するために、印刷制御部502に印刷用データを送出する。
【0039】
印刷制御部502は、主制御部501からの受領する印刷データ信号に基づいて、ヘッドモジュール51から液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成し、このデータの転送及び転送の確定などに必要な各種信号などをヘッドドライバ503に転送するとともに、駆動波形データ格納手段である記憶部、駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器や電流増幅器等で構成される駆動波形生成部、ヘッドドライバ503に与える駆動波形を選択する選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ503に出力して、ヘッドモジュール(記録ヘッド)51の各ヘッド101を駆動制御する。
【0040】
また、主制御部501は、モータドライバ504を介して、搬送ベルト43を周回移動させる用紙送りモータ505、キャップ部材62を含むクリーニング手段61を昇降させる昇降機構506を駆動する昇降モータ507、吸引ポンプ63を駆動するポンプモータ508を駆動制御し、ドライバ509を介して開閉弁67a、67b、68a、68bの開閉制御を行う。
【0041】
また、主制御部501は、各種センサを含むセンサ群510からの検出信号が入力され、また、操作部511との間で各種情報の入出力及び表示情報のやり取りを行う。
【0042】
次に、この実施形態における吸引動作の制御について説明する。
この実施形態では、図7に示すように、少なくとも2つの圧力室を交互に負圧状態にする交互モードと、図示しないが、2つ以上の圧力室を同時に負圧状態にする同時モードを有している。
【0043】
交互モードでは、一方の圧力室66a(図では圧力室(1)と表記)内を負圧にし、この一方の圧力室66aの負圧をキャップ部材に作用させている間に他方の圧力室66b(図では圧力室(2)と表記)内を負圧にし、他方の圧力室66b内の負圧をキャップ部材に作用させている間に一方の圧力室66a内を負圧にするというように、2つの圧力室66a、66bを交互に負圧状態にする。このように、それぞれの圧力室を交互に使用する交互モードでは、交互に負圧を形成することで、吸引動作時間を短縮することができる。
【0044】
図7に示す例では、初めに圧力室(1)を使用することとする。1回目の負圧作用では、圧力室(1)を負圧形成し、キャップ部材内に負圧を作用させる。その最中に、圧力室(2)を負圧形成し維持待機させておく。1回目の吸引が終了し、2回目に移行する場合、維持待機していた圧力室(2)を使用しキャップ部材内に圧力室(2)の負圧を作用させる。このとき、圧力室(1)は負圧を形成し、維持待機しておく。このように3回目、4回目と圧力室を交互に使用し負圧を作用させる。通常の記録ヘッドのノズル抜けが発生してしまった場合、この交互モードを使用しクリーニング動作を実施する。
【0045】
同時モードでは、2つの圧力室66a、66b内を同時に負圧にし、同時にキャップ部材に作用させる。この同時モードでは、圧力室の容積が実質的に倍増することで、吸引時にキャップ部材内に作用する負圧時間が長くなり、ヘッドから高い流速でインクを吸引する時間を長くすることができ、確実にヘッドの維持回復を行うことができる。
【0046】
つまり、前述した交互モードでノズル吸引を行っても記録ヘッドが回復しない場合、あるいは、記録ヘッドのノズルがダウンしてしまった場合(例えば、全ノズルダウン)には、ノズルからの吸引量を多くする必要があるため、圧力室の負圧を長時間維持する必要があり、その場合は、複数の圧力室を同時に使用して負圧維持時間を延ばし、吸引量を多くする。これにより、確実にヘッドの回復を行うことができる。
【0047】
そこで、まず交互モードの吸引動作制御について図8に示すフロー図を参照して説明する。なお、ここでは、初めに圧力室66aから減圧する例で説明するが、必ずしも圧力室66aから減圧する必要はない。
まず、圧力室66aのキャップ側開閉弁67aを閉じ、圧力室66bのキャップ側開閉弁67bを閉じ、最初に減圧する圧力室66aの吸引側(吸引ポンプ側)開閉弁68aを開き、最初に減圧しない圧力室66bの吸引側開閉弁68bを閉じる。
【0048】
そして、吸引ポンプ63を駆動することで、圧力室66a内を吸引して圧力室66aに所定の負圧を形成する(所定の値の負圧状態にする)。圧力室66aが所定の負圧まで到達したときに、圧力室66aの吸引側開閉弁68aを閉じた後、吸引ポンプ63を停止(OF)する。これにより、圧力室66aは閉じた状態となって負圧状態が保持される。
【0049】
なお、圧力室66aが所定の負圧になったか否かの検知は、圧力室66a内の圧力を検知する図示しない圧力センサなどを設け、設定した負圧値に到達したことを検知し、その信号に基づいて吸引側開閉弁67aを閉じる制御とすることができる。あるいは、圧力室66aの容積は一定であるため、予め所定の負圧に到達する吸引ポンプ63の稼動時間を求めておき、吸引ポンプ63の稼働時間が設定時間に到達したときに吸引側開閉弁68aの閉動作及び吸引ポンプ63の停止を行うようにすることもできる。いずれにしても、適正な負圧を形成することができるため、吸引量を調整することが可能である。
【0050】
次いで、画像形成ユニット5をヘッドクリーニング装置6の上方に移動させた状態(事前に移動している)で、キャップ部材62a〜62eを上昇させ、ヘッド101a〜101eをキャッピングする。なお、このキャップ部材62a〜62eの上昇は、キャップ側開閉弁67aが閉じている状態であればキャップ部材62a〜62eに圧力室66aの負圧が作用することはないので、圧力室66aを吸引する前から実施することもできる。
【0051】
その後、キャップ側開閉弁67aを開放する。これにより、圧力室66a内の負圧がキャップ部材62a〜62eに作用するので、ヘッド101a〜101eのノズル102からインクが瞬時にキャップ部材62a〜62e内に吸引排出される。圧力室66aの容積が大きければ負圧値はある時間保持することができ、インクを吸引し続けることができる。また、キャップ側開閉弁67aをある周期で開閉させることで、吸引する動作としては脈動させるような吸引を行うこともでき、圧力室66aの負圧を保持したまま、キャップ側開閉弁67aの制御によって種々の吸引動作をすることができる。
【0052】
そして、所定時間吸引したときに、キャップ側開閉弁67aを閉じて吸引終了となる。
【0053】
ここで、圧力室66aによるキャップ部材内吸引中に、もう一方の圧力室66b内を吸引して負圧状態にする。つまり、吸引側開閉弁68bを開いて吸引ポンプ63を駆動し、圧力室66bが所定の負圧に達したときに、吸引側開閉弁68bを閉じて吸引ポンプ63を閉じて待機する。これにより、次回吸引時に、初回に実施した圧力室66aではなく、もうすでに所定の負圧となっている圧力室66bを使用することで、すぐに吸引動作を実施することができる。
【0054】
このように、圧力室内を吸引手段で吸引し負圧を形成することで、記録ヘッド内のインクを短時間に吸引することができる。また、事前に圧力室を負圧状態に保持することで、吸引動作信号は入ったときに瞬時に吸引動作に移行でき、維持回復動作の時間を短縮することができる。さらに、一方の圧力室によって吸引している間に、他方の圧力室内を負圧状態にすることで、一方の圧力室の使用後、次の吸引動作信号が入ったとき、他方の圧力室を使用して吸引を行うことができて、吸引動作の時間短縮を図れる。さらには、クリーニング動作終了後、クリーニング装置が退避し、記録ヘッドによる画像形成中にそれぞれの圧力室内を吸引手段で吸引して負圧を形成保持しておくこともできる。
【0055】
次に、同時モードの吸引動作制御について図9を参照して説明する。
まず、キャップ側開閉弁67a、67bの両方を閉じて、吸引側開閉弁68a、68bの両方を開放し、吸引ポンプ63を駆動して、圧力室66a、66b内を負圧状態に形成する。圧力室66a、66bが所定の負圧値に到達したときに、吸引側開閉弁68a、68bを閉じて、吸引ポンプ63を停止させる。この状態で圧力室66aと圧力室66b内は所定の負圧状態に形成されて保持される。
【0056】
次いで、画像形成ユニット5をヘッドクリーニング装置6の上方に移動させた状態(事前に移動している)で、キャップ部材62a〜62eを上昇させる。なお、このキャップ部材62a〜62eの上昇は、キャップ側開閉弁67a、67bが閉じている状態であればキャップ部材62a〜62eに圧力室66a、66bの負圧が作用することはないので、圧力室66a、66bを吸引する前から実施することもできる。
【0057】
その後、キャップ側開閉弁67a、67bを開放する。これにより、圧力室66a、66b内の負圧がほぼ同時にキャップ部材62a〜62eに作用するので、ヘッド101のノズル102からインクが瞬時にキャップ部材62a〜62e内に吸引排出される。ここで、2つの圧力室66a、66bを使用していることにより、1つの圧力室以上に負圧作用時間を多くすることができ、高い流速のまま長時間吸引することができ、ヘッド101のノズル102からのインク吸引を効果的に行うことができる。そして、所定の吸引時間に到達したときに、キャップ側開閉弁67a、67bを閉じて吸引動作が終了となる。
【0058】
このように、複数のキャップ部材に連通する複数の個別流路と、複数の個別流路が1つの流路に集約された共通流路と、共通流路に並列に接続された複数の圧力室と、複数の圧力室にそれぞれ接続され、圧力室を負圧状態にする吸引手段と、複数の圧力室と共通流路との間及び複数の圧力室と吸引手段との間を開閉する開閉弁とを備えている構成とすることで、事前に複数の圧力室を負圧状態にして、この複数の圧力室の負圧をキャップ部材に作用させることができて維持回復動作に要する時間を短縮でき、あるいは、交互に負圧状態にする圧力室を切替えて、次回の維持回復動作のために待機させることができて維持回復動作に要する時間を短縮できる。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態について図10を参照して説明する。なお、図10は同実施形態における1つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)に対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
ここでは、各圧力室66a、66bに対応して2つの吸引ポンプ63a、63bを接続し、個々の吸引ポンプ63a、63bでそれぞれ対応する圧力室66a、66bの吸引を行うことができるようにしている。
【0060】
特に、前述した同時モードで圧力室66aと圧力室66b内を同時に負圧状態にする場合、第1実施形態のように1つの吸引ポンプで吸引すると吸引ポンプの能力次第ではあるが、圧力室の総容積が増倍している分、吸引時間がかかることになる。そこで、それぞれ個別の吸引手段(吸引ポンプ)を備えることで、より短時間に圧力室内を負圧にすることができる。
【0061】
次に、本発明の第3実施形態について図11を参照して説明する。なお、図11は同実施形態における1つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)に対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
ここでは、第1実施形態において、各キャップ部材62a〜62eの個別流路64a〜64eに開閉弁161a〜161eを介装している。これにより、それぞれの開閉弁161a〜161eを個別に開閉制御することで、ノズル吸引を行うヘッド101を個別に選択することができる。
【0062】
例えば、ヘッド101aが吐出不良となりヘッド101aのみを吸引したい場合、ヘッド101aの開閉弁161aを開放し、他の開閉弁161b〜161eは閉じた状態にする。この状態で、前記第1実施形態と同様にして、圧力室66a、66bの前後に配置されたキャップ側開閉弁67a、67b及び吸引側開閉弁68a、68b、吸引ポンプ63の動作制御を行うことで、ヘッド101aのみノズル吸引が行われる。これにより、より必要最小限のインク吸引量でヘッドの回復を行うことができる。
【0063】
なお、開閉弁161a〜161eのうちの複数を同時に開くことで複数個のヘッド101を吸引することもでき、同時に全ての開閉弁161a〜161eを開くことですべてのヘッド101からノズル吸引を行うこともできる。
【0064】
次に、本発明の第4実施形態について図12を参照して説明する。なお、図12は同実施形態における1つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)に対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
ここでは、前記第1実施形態において、各圧力室66a、66bに廃液開閉弁163a、163bを介して廃液タンク162a、162bを接続している。
【0065】
圧力室66a、66b内を吸引ポンプ63によって吸引するときは、廃液開閉弁163a、163bを閉じた状態にしておき、前記第1実施形態と同様な吸引動作において、キャップ部材62a〜62eに排出されたインクの廃液を圧力室66a、66b内に送液した後、圧力室66a、66b内に収容された廃液を排出するため、廃液開閉弁163a、163bを開放し、廃液タンク162a、162bへ廃液を排出する。
【0066】
これにより、圧力室66a、66bが廃液で満たされることがなく、次回圧力室66a、66b内を吸引する容積を確保することができる。この排出された廃液は吸引されたインクに対して同じものであれば(混色していなければ)、再度、記録ヘッド内へ供給できるようにしても構わない。
【0067】
なお、ここでは、圧力室66a、66b毎に廃液タンク162a、162bを配置しているが、廃液タンクを1つとして廃液タンクへつながる流路を集合させることもできる。
【0068】
次に、本発明の第5実施形態について図13を参照して説明する。なお、図13は同実施形態における1つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)に対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
ここでは、上記第4実施形態において、圧力室66a、66bに大気と連通する大気連通路165a、165bと、これを開閉する大気開放弁166a、166bを設けている。
【0069】
大気開放弁166a、166bは通常は閉じた状態にしておき、圧力室66a、66bが廃液で満たされた場合、廃液タンク161a、161bへ排出するときに、大気開放弁166a、166bを開放し、大気と連通することで、圧力室66a、66b内の廃液をスムーズに廃液タンク161a、161bへと排出することができる。
【0070】
次に、本発明の第6実施形態について図14を参照して説明する。なお、図14は同実施形態における4つの記録ヘッド(ヘッドモジュール)に対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
ここでは、4つのヘッドモジュール51に合計8つの圧力室66a、66bに共通の1つの廃液タンク162を備えている。
【0071】
なお、上記実施形態ではライン型画像形成装置に適用した例で説明しているが、シリアル型画像形成装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の全体構成を説明する正面概略説明図である。
【図2】同じく要部平面説明図である。
【図3】記録ヘッドの平面説明図である。
【図4】ヘッドの平面説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態における1つのヘッドモジュールに対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
【図6】同実施形態の制御部の概要を説明する機能ブロック図である。
【図7】同実施形態の吸引動作モードの説明に供する説明図である。
【図8】同じく交互モードの吸引動作の説明に供するフロー図である。
【図9】同じく同時モードの吸引動作の説明に供するフロー図である。
【図10】本発明の第2実施形態における1つのヘッドモジュールに対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
【図11】本発明の第3実施形態における1つのヘッドモジュールに対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
【図12】本発明の第4実施形態における1つのヘッドモジュールに対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
【図13】本発明の第5実施形態における1つのヘッドモジュールに対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
【図14】本発明の第6実施形態における1つのヘッドモジュールに対応するヘッドクリーニング装置を示す模式的説明図である。
【符号の説明】
【0073】
1…装置本体
4…搬送ユニット(搬送部)
5…画像形成ユニット
6…クリーニング装置(維持回復機構)
7…搬送ガイド部
8…インクタンクユニット(サブタンクユニット)
9…メインタンクユニット
51…ヘッドモジュール(記録ヘッド)
54…分岐部材(ディストリビュータ)
62A〜62D、62a〜62e…キャップ部材
63、63a、63b…吸引ポンプ
64a〜64e…個別流路
65…共通流路
66a、66b…圧力室
67a、67b、68a、68b、161a〜161e、163a、163b…開閉弁
101…ヘッド
102…ノズル
162、162a,162b…廃液タンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する複数のヘッドを配列した記録ヘッドと、
前記複数のヘッドのノズル面をそれぞれ封止する複数のキャップ部材と、
前記複数のキャップ部材に連通する複数の個別流路と、
前記複数の個別流路が1つの流路に集約された共通流路と、
前記共通流路に並列に接続された複数の圧力室と、
前記複数の圧力室にそれぞれ接続され、前記圧力室を負圧状態にする吸引手段と、
前記複数の圧力室と前記共通流路との間及び前記前記複数の圧力室と前記吸引手段との間を開閉する開閉弁と、を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記吸引手段は前記複数の圧力室毎に設けられていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数の圧力室を交互に負圧状態にする制御を行う手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の圧力室を同時に負圧状態にする制御を行う手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記複数の個別流路をそれぞれ開閉する複数の開閉弁を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記複数の圧力室にはそれぞれ廃液タンクが接続されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに画像形成装置。
【請求項7】
前記複数の圧力室にはそれぞれ大気開放を行う開閉弁が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する複数のヘッドを配列した記録ヘッドと、
前記複数のヘッドのノズル面をそれぞれ封止する複数のキャップ部材と、
前記複数のキャップ部材に連通する複数の個別流路と、
前記複数の個別流路が1つの流路に集約された共通流路と、
前記共通流路に並列に接続された複数の圧力室と、
前記複数の圧力室にそれぞれ接続され、前記圧力室を負圧状態にする吸引手段と、
前記複数の圧力室と前記共通流路との間及び前記前記複数の圧力室と前記吸引手段との間を開閉する開閉弁と、を備えている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記吸引手段は前記複数の圧力室毎に設けられていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数の圧力室を交互に負圧状態にする制御を行う手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の圧力室を同時に負圧状態にする制御を行う手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記複数の個別流路をそれぞれ開閉する複数の開閉弁を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記複数の圧力室にはそれぞれ廃液タンクが接続されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに画像形成装置。
【請求項7】
前記複数の圧力室にはそれぞれ大気開放を行う開閉弁が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−105297(P2010−105297A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280654(P2008−280654)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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