説明

画像形成装置

【課題】コストを上昇させることなくコイル等の磁場発生部の状態を確認(認識)する。
【解決手段】磁場による誘導加熱によって、トナーを記録媒体に加熱定着させる発熱部材20d、及び磁場を発生するコイル20cによって発生された磁場の影響を受ける部位に配置されると共に磁場の影響を受けた場合には磁場によるノイズを含んだ検出信号を出力するセンサ20aを備えた加熱定着器20と、センサ20aから出力された検出信号と、コイル20cが磁気を発生している稼働状態である場合の予め定められた信号パターンAとを比較して、検出信号と信号パターンAとが一致する場合には、コイル20cが稼働状態であることを示す情報を報知するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱方式(電磁誘導加熱方式、IH方式)を用いた定着装置を備えた画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1、2、3、4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−182526号公報
【特許文献2】特開2007−065030号公報
【特許文献3】特開2007−078825号公報
【特許文献4】特開2007−093917号公報
【特許文献5】特開2007−140330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、既存のセンサを用いることによりコストを上昇させることなくコイル等の磁場発生部の状態を確認(認識)することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の画像形成装置は、磁場を発生する磁場発生部、前記磁場発生部によって発生された磁場による誘導加熱によって、画像情報に基づいた画像を形成するための材料を記録媒体に加熱定着させる発熱部、及び前記磁場発生部によって発生された磁場の影響を受ける部位に配置されると共に磁場の影響を受けた場合には磁場によるノイズを含んだ検出信号を出力する検出部を備えた加熱定着手段と、前記検出部から出力された検出信号と、前記磁場発生部が磁気を発生している稼働状態である場合の予め定められた信号パターンとを比較して、該検出信号と該信号パターンとが一致するか、または該検出信号と該信号パターンとの類似度が予め定められた閾値以上である場合には、前記磁場発生部が稼働状態であることを示す情報を報知するように制御する制御手段とを含んで構成されている。
【0006】
請求項2記載の発明の画像形成装置は、前記検出部を、前記記録媒体の有無を検出するセンサ、または前記発熱部の温度を検出するセンサとしたものである。
【0007】
請求項3記載の発明の画像形成装置は、前記制御手段を、前記検出信号と前記信号パターンとが一致するか、または前記検出信号と前記信号パターンとの類似度が予め定められた閾値以上である場合には、視覚で確認できるように、前記磁場発生部が稼働状態であることを示す情報を報知するように制御するようにしたものである。
【0008】
請求項4記載の発明の画像形成装置は、請求項3記載の発明の画像形成装置において、前記制御手段を、前記検出信号と前記信号パターンとが一致するか、または前記検出信号と前記信号パターンとの類似度が予め定められた閾値以上である場合には、前記磁場発生部が稼働状態であることを示す文字列を表示装置に表示するように制御するか、またはランプを点灯させるように制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、及び請求項2に記載の各発明によれば、既存のセンサを用いることによりコストを上昇させることなくコイル等の磁場発生部の状態を確認(認識)することができる、という効果を有する。
【0010】
請求項3、及び請求項4に記載の各発明によれば、磁場発生部が可動状態であることを、警報などの音による報知ではなく、視覚で確認できるため、ユーザやメンテナンスの作業者などにとって煩わしくならない、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態の画像形成装置が実行する稼働状態検出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を画像形成装置に適用した場合の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態における画像形成装置10の概略構成図である。なお、本実施の形態では、本発明の主要な部分について説明する。
【0014】
図1に示すように、画像形成装置10は、メインコントローラユニット(MCU)12、誘導加熱方式(IH方式)の加熱定着部(Fuser Unit)20を含むプリントエンジン(画像形成部)14、ヒータ制御部16、表示部18を備えている。
【0015】
メインコントローラユニット12は、画像形成装置10全体を制御するための主制御部としての機能を有する。メインコントローラユニット12は、CPU(Central Processing Unit)12a、ROM(Read Only Memory)12b、RAM(Random Access Memory)12c、I/O(入出力)ポート12d、FPGA(Field Programmable Gate Array)12e、及び通信インタフェース(通信I/F)12fを備えている。これらCPU12a、ROM12b、RAM12c、I/Oポート12d、FPGA12e、及び通信I/F12fは互いにバス12gで接続されている。ROM12bにはOS等の基本プログラム、及び画像形成を行うための画像形成制御処理を実行するためのプログラムが記憶されている。CPU12aは、プログラムをROM12bから読み出して実行する。RAM12cには、各種データが一時的に記憶される。I/Oポートには、詳細を以下で説明する温度検知用センサ20a、及び用紙検知用センサ20bが接続されている。
【0016】
CPU12aは、例えば、外部端末(図示せず)から画像情報(画像データ)が入力されると、プリントエンジン14に画像情報を出力すると共に、加熱定着部20への電力供給(より具体的には、加熱定着部20のコイル20cへの電力の供給)の指示をヒータ制御部16へ出力する。これにより、プリントエンジン14によって、当該画像情報に基づいた画像が用紙(記録媒体)に形成されて出力される。このとき、プリントエンジン14の加熱定着部20は、画像情報に基づいた画像を形成するための材料(例えば、トナー)を用紙に加熱定着する。
【0017】
また、CPU12aは、詳細を以下で説明する稼働状態検出処理を実行する指示をFPGA12eに出力する。例えば、画像形成装置10のメンテナンスを行う作業者が、図示しない操作受付手段(例えばU/I)から加熱定着部20の稼働状態(磁場発生状況)を確認したい場合に、稼働状態検出処理を実行する指示をCPU12aに入力したタイミングで、CPU12aは、稼働状態検出処理を実行する指示をFPGA12eに出力する。
【0018】
FPGA12eは、CPU12aから稼働状態検出処理を実行する指示を受け付けると、詳細を以下で説明する稼働状態検出処理を実行する。
【0019】
ヒータ制御部16は、メインコントローラユニット12から加熱定着部20への電力供給の指示を受け付けると、加熱定着部14のコイル14aから当該指示に応じた磁場が発生するようにコイル14aへ電力を供給する。
【0020】
表示部18は、入力された情報に基づいた表示を行うLCD(Liquid Crystal Display)を備えている。すなわち、表示部18は、入力された情報に基づいた表示を行う。
【0021】
加熱定着部20は、温度検知用センサ20a、用紙検知用センサ20b、コイル20c、及び発熱部材20dを備えている。なお、加熱定着部20dは加熱定着手段に対応する。
【0022】
コイル20cは、流れる電流(交流電流)の大きさに応じた磁場を発生する。すなわち、コイル20cは、供給された電力に応じて磁場を発生する。なお、コイル20cは磁場発生部に対応する。
【0023】
発熱部材20dは、コイル20cによって発生された磁場によって渦電流が流れ、ジュール熱が発生する。このジュール熱によって、画像情報に基づいた画像を形成するための材料(例えば、トナー)を記録媒体としての用紙に加熱定着させる。すなわち、発熱部材20dは、コイル20dによって発生された磁場による誘導加熱によって、画像情報に基づいた画像を形成するための材料(例えば、トナー)を記録媒体としての用紙に加熱定着させる。なお、発熱部材20dは発熱部に対応する。
【0024】
温度検知用センサ20aは、コイル20cによって発生された磁場の影響を受ける部位(場所)に配置されており、発熱部材20dの温度を検知(検出)して、検知した温度を示す検出信号を出力する。
【0025】
用紙検知用センサ20bは、コイル20cによって発生された磁場の影響を受ける部位(場所)に配置されており、用紙の有無を検知(検出)して、検知した用紙の有無を示す検出信号を出力する。
【0026】
なお、温度検知用センサ20a及び用紙検知用センサ20bは、磁場の影響を受けた場合には、磁場によるノイズを含んだ検出信号を出力する。ここで、ノイズを含む原因としては、例えば、磁場の影響による電磁誘導などが考えられる。但し、ノイズレベルとしては、本来の目的に対し誤動作を誘発しないレベルに、あらかじめ調整されているものとする。
【0027】
ここで、本実施の形態では、実験によって、コイル20cが磁気を発生している稼働状態である場合に、温度検知用センサ20aから出力された検出信号の状態を信号パターンAとして取得しておく。そして、ROM12bには、取得された信号パターンAが予め記憶されている。また、本実施の形態では、実験によって、コイル20cが磁気を発生している稼働状態である場合に、用紙検知用センサ20bから出力された検出信号の状態を信号パターンBとして取得しておく。そして、ROM12bには、取得された信号パターンBが予め記憶されている。
【0028】
温度検知用センサ20aから出力された検出信号と、信号パターンAとを比較して、温度検知用センサ20aから出力された検出信号(信号の状態)とこの信号パターンAとが一致する場合、または温度検知用センサ20aから出力された検出信号と信号パターンAとの類似度を演算し、演算された類似度が所定の閾値α以上である場合には、コイル20cが磁気を発生している稼働状態であると判断される。なお、本実施の形態では、コイル20cが磁気を発生している稼働状態である場合における上記類似度を予め複数個実験的に求めておき、実験的に求められた類似度のうち、コイル20cが稼働状態であると判断できる信頼性の高い類似度を、この閾値αとして設定しておく。
【0029】
また、用紙検知用センサ20bから出力された検出信号と、信号パターンBとを比較して、用紙検知用センサ20bから出力された検出信号(信号の状態)とこの信号パターンBとが一致する場合、または用紙検知用センサ20bから出力された検出信号と信号パターンBとの類似度を演算し、演算された類似度が所定の閾値β以上である場合には、コイル20cが磁気を発生している稼働状態であると判断される。なお、本実施の形態では、コイル20cが磁気を発生している稼働状態である場合における上記類似度を予め複数個実験的に求めておき、実験的に求められた類似度のうち、コイル20cが稼働状態であると判断できる信頼性の高い類似度を、この閾値βとして設定しておく。
【0030】
なお、温度検知用センサ20a及び用紙検知用センサ20bは検出部に対応する。
【0031】
次に、本実施の形態のFPGA12eが実行する稼働状態検出処理について説明する。
【0032】
まず、ステップ100では、温度検知用センサ20aからの検出信号を取込むと共に、用紙検知用センサ20bからの検出信号を取込む。なお、ステップ100で取込む検出信号は、以下で詳細を説明するステップ104で信号パターンA及び信号パターンBと比較可能な信号とする。
【0033】
次のステップ102では、ROM12bから信号パターンA及び信号パターンBを取得する。
【0034】
次のステップ104では、上記ステップ100で取込んだ温度検知用センサ20aからの検出信号と、上記ステップ102で読み込んだ信号パターンAとを比較して、温度検知用センサ20aからの検出信号と信号パターンAとが一致するか否かを判定すると共に、上記ステップ100で取込んだ用紙検知用センサ20bからの検出信号と、上記ステップ102で読み込んだ信号パターンBとを比較して、用紙検知用センサ20bからの検出信号と信号パターンBとが一致するか否かを判定する。
【0035】
ステップ104で、温度検知用センサ20aからの検出信号と信号パターンAとが一致すると判定された場合、または、用紙検知用センサ20bからの検出信号と信号パターンBとが一致すると判定された場合には、次のステップ106へ進む。
【0036】
一方、ステップ104で、温度検知用センサ20aからの検出信号と信号パターンAとが一致しないと判定され、かつ、用紙検知用センサ20bからの検出信号と信号パターンBとが一致しないと判定された場合には、稼働状態検出処理を終了する。
【0037】
なお、ステップ104で、上記ステップ100で取込んだ温度検知用センサ20aからの検出信号と、上記ステップ102で読み込んだ信号パターンAとを比較して、温度検知用センサ20aからの検出信号と信号パターンAとの類似度を演算し、演算された類似度が予め定められた閾値α以上であるか否かを判定すると共に、上記ステップ100で取込んだ用紙検知用センサ20bからの検出信号と、上記ステップ102で読み込んだ信号パターンBとを比較して、用紙検知用センサ20bからの検出信号と信号パターンBとの類似度を演算し、演算された類似度が予め定められた閾値β以上であるか否かを判定するようにしてもよい。この場合には、ステップ104で、温度検知用センサ20aからの検出信号と信号パターンAとの類似度が閾値α以上であると判定された場合、または、用紙検知用センサ20bからの検出信号と信号パターンBとの類似度が閾値β以上であると判定された場合には、次のステップ106へ進む。一方、ステップ104で、温度検知用センサ20aからの検出信号と信号パターンAとの類似度が閾値α未満と判定され、かつ、用紙検知用センサ20bからの検出信号と信号パターンBとの類似度が閾値β未満と判定された場合には、稼働状態検出処理を終了する。
【0038】
ステップ106では、コイル20cが稼働状態であることを示す情報を報知するように、コイル20cが稼働状態であることを示す情報を報知する指示をCPU12aに出力する。例えば、ステップ106では、作業者などが視覚的に確認できるように、コイル20cが稼働状態であることを示す文字列(例えば、「加熱定着器のコイルが稼働しています」のメッセージ)を表示装置18に表示させる指示をCPU12aに出力する。これにより、CPU12aは、作業者などが視覚的に確認できるように、コイル20cが稼働状態であることを示す文字列(例えば、「加熱定着器のコイルが稼働しています」のメッセージ)を表示装置18に表示するように制御して、表示装置18には、コイル20cが稼働状態であることを示す文字列が表示されるようになる。
【0039】
なお、ランプを設けておき、ステップ106で、作業者などが視覚的に確認できるように、コイル20cが稼働状態であることを示す情報としてランプを点灯させる指示をCPU12aに出力するようにしてもよい。これにより、CPU12aは、作業者などが視覚的に確認できるように、ランプを点灯させるように制御して、ランプが点灯されるようになる。
【0040】
以上、本実施の形態の画像形成装置10について説明した。本実施の形態では、2つのセンサ20a、20bを用いた場合について説明したが、3つ以上のセンサを用いて同様の処理を行ってもよい。また、1つのセンサを用いて、ステップ104で、このセンサから出力された信号と、対応する信号パターンとを比較するようにしてもよい。この場合には、センサから出力された信号と対応する信号パターンとが一致するか否か、または、センサから出力された信号と対応する信号パターンとの類似度が予め定められた閾値以上であるか否かを判定し、肯定判定された場合にはステップ106へ進み、否定判定された場合には稼働状態検出処理を終了するようにすればよい。
【符号の説明】
【0041】
10 画像形成装置
12 メインコントローラユニット
12e FPGA
14 プリンタエンジン
18 表示部
20 加熱定着器
20a 温度検知センサ
20b 用紙検知センサ
20c コイル
20d 発熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を発生する磁場発生部、前記磁場発生部によって発生された磁場による誘導加熱によって、画像情報に基づいた画像を形成するための材料を記録媒体に加熱定着させる発熱部、及び前記磁場発生部によって発生された磁場の影響を受ける部位に配置されると共に磁場の影響を受けた場合には磁場によるノイズを含んだ検出信号を出力する検出部を備えた加熱定着手段と、
前記検出部から出力された検出信号と、前記磁場発生部が磁気を発生している稼働状態である場合の予め定められた信号パターンとを比較して、該検出信号と該信号パターンとが一致するか、または該検出信号と該信号パターンとの類似度が予め定められた閾値以上である場合には、前記磁場発生部が稼働状態であることを示す情報を報知するように制御する制御手段と、
を含む画像形成装置。
【請求項2】
前記検出部を、前記記録媒体の有無を検出するセンサ、または前記発熱部の温度を検出するセンサとした請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検出信号と前記信号パターンとが一致するか、または前記検出信号と前記信号パターンとの類似度が予め定められた閾値以上である場合には、視覚で確認できるように、前記磁場発生部が稼働状態であることを示す情報を報知するように制御する請求項1または請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記検出信号と前記信号パターンとが一致するか、または前記検出信号と前記信号パターンとの類似度が予め定められた閾値以上である場合には、前記磁場発生部が稼働状態であることを示す文字列を表示装置に表示するように制御するか、またはランプを点灯させるように制御する請求項3記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−181617(P2010−181617A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24885(P2009−24885)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】