説明

画像形成装置

【課題】排紙部に排出される用紙のカールを抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置10の定着装置80は、用紙に転写された現像剤像を加熱する加熱ローラ81及び加熱ローラ81との間に用紙を挟んで加熱ローラ81に圧接する加圧ローラ82を有し、現像剤像を用紙に定着させる。カール矯正部は、用紙搬送方向において定着装置80の下流側に配置され、加熱ローラ81と加圧ローラ82とを結ぶ方向において用紙を加熱ローラ81側へ凸となる方向に湾曲させる第1の位置と用紙を湾曲させない第2の位置とに変位自在である。検出部60は、用紙搬送方向においてカール矯正部より上流側に配置され、用紙の表裏の配置状態を検出する。制御部70は、検出部60の検出結果に基づいてカール矯正部を変位させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、用紙に現像剤像を転写する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、静電潜像担持体の周面に形成した現像剤像を、用紙に転写し、定着部で定着させることで、画像が形成される。現像剤像が定着した用紙は、排紙部へ排出される。定着部は、例えば、加熱ローラ、及び加熱ローラに圧接する加圧ローラを備える。用紙が定着部を通過する際は、現像剤像が転写された側の面が加熱ローラに圧接するように用紙が搬送され、加熱ローラと加圧ローラとの間で、用紙に転写された現像剤像が加熱及び加圧されることで、現像剤像が用紙に定着する。このように、定着部として、用紙の一方面側のみから用紙を加熱する装置が多く用いられている。
【0003】
また、用紙には、抄紙製造機による製造方法に起因して、フェルト面とも呼ばれる平滑性に優れた表面と、ワイヤ面とも呼ばれ表面よりも平滑性に劣る裏面とが形成される。このため、用紙は、表面と裏面とで、加熱されて乾燥した際の縮む度合いが異なるという性質を有している。具体的には、表面は縮む度合いが小さく、裏面は縮む度合いが大きい。
【0004】
したがって、用紙が定着部を通過すると、現像剤像が用紙の何れの面に定着したかに関らず、用紙が本来持っている性質によって用紙は裏面側へカールする。しかし、定着部が用紙の一方面側のみから用紙を加熱する場合、表面と裏面とでは供給される熱量が異なるので、表面に現像剤像が定着した場合は用紙のカールは小さく、裏面に現像剤像が定着した場合は用紙のカールは大きくなる。
【0005】
用紙がカールすると、排紙部に用紙がカールした状態で積層されるので、カールしていない用紙が排紙部に排紙された場合に比べて、少ない枚数で、排紙部への排紙時に用紙詰まりが発生しやすくなる。
【0006】
そこで、用紙がカールすることによる用紙詰まりを抑制する技術として、用紙のカール状態を検出し、検出結果に基づいて排紙部の適正収容枚数を判定して、画像形成処理を続行又は停止させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−91399公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述の従来技術は、用紙詰まりの抑制を期待することはできるが、用紙がカールすること自体を抑制することはできない。このため、カールした用紙が排紙部に積層することで、排紙部に収容できる用紙の適正枚数が低下する。したがって、大量印刷を行う場合は、排紙部上の用紙を頻繁に取り除く必要がある。
【0009】
この発明の目的は、排紙部に排出される用紙のカールを抑制できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の画像形成装置は、用紙に電子写真方式の画像形成処理を行う画像形成装置であって、収容部、画像形成部、定着部、カール矯正部、検出部、及び制御部を備える。収容部は、用紙を収容する。画像形成部は、収容部から搬送された用紙に現像剤像を転写する。定着部は、用紙に転写された現像剤像を加熱する加熱部及び加熱部との間に用紙を挟んで加熱部に圧接する加圧部を有し、現像剤像を用紙に定着させる。カール矯正部は、用紙搬送方向において定着部の下流側に配置され、前記加熱部と前記加圧部とを結ぶ方向において用紙を前記加熱部側へ凸となる方向に湾曲させる第1の位置と用紙を湾曲させない第2の位置とに変位自在である。検出部は、用紙搬送方向においてカール矯正部より上流側に配置され、用紙の表裏の配置状態を検出する。制御部は、検出部の検出結果に基づいてカール矯正部を変位させる。
【0011】
この構成では、用紙の表裏の配置状態を検出することで、定着部において用紙がいずれの面から加熱されたのかを判定することができる。用紙が加熱されて乾燥した際の縮む度合いは表面より裏面の方が大きいので、定着部を通過して現像剤像が定着した用紙は、裏面側へカールする。しかし、定着部において用紙がいずれの面から加熱されたかによって表面と裏面とでは供給される熱量が異なるので、本発明のカール矯正部が無ければ、用紙が表面から加熱された場合即ち表面に現像剤像が定着した場合は用紙のカールは小さく、用紙が裏面から加熱された場合即ち裏面に現像剤像が定着した場合は用紙のカールは大きくなる。そこで、裏面に現像剤像が定着した場合は、カール矯正部を第1の位置へ変位させることで用紙をカールの方向と反対方向へ湾曲させるので、排紙部に排出される用紙のカールを抑制することができる。また、これによって、排紙部に収容できる用紙の適正枚数を増加させることができる。
【0012】
上述の構成において、制御部は、用紙の裏面に現像剤像を定着させる場合に、カール矯正部を第1の位置へ変位させるように構成することができる。これによって、定着部を通過した用紙のカールが大きい場合は、カールを矯正する方向に用紙を湾曲させるので、排紙部へ排出される用紙のカールを抑制することができる。
【0013】
また、カール矯正部は、用紙搬送方向における定着部の下流側の用紙搬送経路の加熱部側の壁面を構成する用紙案内部材であって用紙搬送方向における用紙案内部材の中間部において用紙搬送経路が加熱部と加圧部とを結ぶ方向に拡大するように湾曲した用紙案内部材と、第1の位置と第2の位置とに変位自在な変位部であって第1の位置において定着部から排出された用紙が用紙案内部材に沿って搬送されるように用紙を案内する変位部と、を有するように構成することができる。裏面に現像剤像が定着した場合は変位部を第1の位置へ変位させることで、用紙を用紙案内部材に沿って搬送させることができる。用紙案内部材は用紙搬送方向における用紙案内部材の中間部において用紙搬送経路が加熱部と加圧部とを結ぶ方向に拡大するように湾曲していること即ち用紙のカールの方向と反対方向に凸となるように湾曲していること、及び、用紙が用紙案内部材に沿って搬送されると搬送力によって用紙は用紙案内部材に押し当てられることから、用紙のカールが矯正される。したがって、排紙部へ排出される用紙のカールを抑制することができる。
【0014】
さらに、変位部は、開放端部が用紙案内部材に離接する方向に揺動自在な揺動部を有するように構成することができる。揺動部を有することで、定着部から排出された用紙のカールの大きさに応じて、加熱部と加圧部とを結ぶ方向において用紙を加熱部側へ凸となる方向に湾曲させる第1の位置と湾曲させない第2の位置とに容易に変位させることができる。
【0015】
また、制御部は、定着部から排出された用紙の先端部を開放端部が用紙案内部材へ向けて押すタイミングで変位部を第1の位置へ変位させ、用紙が変位部を通過した後に変位部を第2の位置へ戻すように構成することができる。定着部から排出された用紙の先端部を揺動部の開放端部が用紙案内部材へ向けて押すことで、用紙を用紙案内部材に沿って搬送することができる。変位部を所定のタイミングで第1の位置へ変位させ、用紙が変位部を通過した後に変位部を第2の位置へ戻すことで、省電力化が可能となる。
【0016】
さらに、用紙搬送方向においてカール矯正部より下流側に配置され、現像剤像が定着した用紙を互いのローラ間で圧接しながら用紙搬送方向の下流側へ搬送する搬送ローラ対をさらに備え、揺動部は、第2の位置において、定着部から排出された用紙を搬送ローラ対へ向けて直線状に案内するように構成することができる。揺動部が第2の位置に配置された場合に、搬送ローラ対へ向けて直線状に用紙を案内するガイド部材の役割を揺動部が果たすので、部品点数を抑え、製造コストを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、排紙部に排出される用紙のカールを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態に係る画像形成装置の概略の断面図である。
【図2】検出部近傍の部分拡大断面図である。
【図3】カール矯正部の構成図であって、用紙の表面に現像剤像を定着させた状態を示す図である。
【図4】カール矯正部の構成図であって、用紙の裏面に現像剤像を定着させた状態を示す図である。
【図5】用紙の表面に現像剤像を定着させた場合の用紙のカール状態を示す図であって、(A)は、用紙の長手方向が加熱ローラの回転軸と直交する方向に用紙を搬送した場合を示し、(B)は、用紙の長手方向が加熱ローラの回転軸と平行となる方向に用紙を搬送した場合を示している。
【図6】用紙の裏面に現像剤像を定着させた場合の用紙のカール状態を示す図であって、(A)は、用紙の長手方向が加熱ローラの回転軸と直交する方向に用紙を搬送した場合を示し、(B)は、用紙の長手方向が加熱ローラの回転軸と平行となる方向に用紙を搬送した場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、この発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。図1は、この発明の実施形態に係る画像形成装置の概略の断面を示す。
【0020】
画像形成装置10は、画像形成ユニット20、及び給紙ユニット30を備えている。
【0021】
画像形成ユニット20は、画像形成部40、排紙トレイ(排紙部)50、検出部60、及び制御部70を備えている。
【0022】
画像形成部40は、感光体ドラム41、帯電装置42、露光ユニット43、現像装置44、転写装置45、クリーニングユニット46、及び定着装置(定着部)80を備え、電子写真方式の画像形成処理を行う。
【0023】
感光体ドラム41は、静電潜像担持体であって、導電性基体、及び感光層を有している。導電性基体として、例えば円筒形又は円柱形のアルミニウム製素管が用いられる。アルミニウム製素管の直径は、例えば30mmである。感光層は、導電性基体の周面に形成されており、例えば、電荷発生物質を含む電荷発生層、及び電荷輸送物質を含み電荷発生層に積層された電荷輸送層を含む有機感光層である。有機感光層の層厚は、例えば30μmである。
【0024】
帯電装置42は、感光体ドラム41の周面を所定の電位に均一に帯電させる。帯電装置42として、例えば帯電ローラが用いられる。帯電装置として、ブラシ型帯電装置、チャージャー型帯電装置、スコロトロン等のコロナ帯電装置を用いることもできる。
【0025】
露光ユニット43は、帯電した感光体ドラム41の周面を画像データに応じて露光することによって、感光体ドラム41の周面に画像データに応じた静電潜像を形成する。画像データは、制御部70から入力される。露光ユニット43として、例えばレーザ出射部及び反射ミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)が用いられる。
【0026】
現像装置44は、感光体ドラム41の周面に形成された静電潜像を、トナー等の現像剤で顕像化し、現像剤像を形成する。
【0027】
転写装置45は、感光体ドラム41の周面に圧接している。転写装置45は、感光体ドラム41の周面に形成された現像剤像を、転写装置45と感光体ドラム41の周面との間の転写位置47に搬送されてきた用紙に、転写する。
【0028】
クリーニングユニット46は、現像剤像が用紙に転写された後の感光体ドラム41の周面に残留した現像剤を、除去及び回収する。
【0029】
定着装置80は、加熱ローラ(加熱部)81及び加圧ローラ(加圧部)82を有している。加圧ローラ82は、所定の圧力で加熱ローラ81に圧接している。定着装置80は、未定着の現像剤像が転写された用紙を、加熱ローラ81と加圧ローラ82との間に挟持しながら搬送することで、現像剤像を加熱及び加圧して用紙に定着させる。
【0030】
用紙搬送方向において、定着装置80の下流側に、搬送ローラ対90が配置されている。搬送ローラ対90は、定着装置80を通過して現像剤像が定着した用紙を、互いのローラ間で圧接しながら排紙トレイ50へ向けて搬送する。排紙トレイ50は、画像形成ユニット20の上面に配置されている。排紙トレイ50には、現像剤像が定着した用紙が排出される。
【0031】
給紙ユニット30は、用紙の収容部である複数の用紙カセット31,32,33,34を備えている。用紙カセット31〜34のそれぞれに収容された用紙は、第1用紙搬送路(用紙搬送経路)35、又は第2用紙搬送路36を通って、画像形成部40の転写位置47へ搬送される。第1用紙搬送路35は、給紙ユニット30から画像形成部40を経由して排紙トレイ50まで垂直方向に配設されている。第2用紙搬送路36は、給紙ユニット30内で水平方向に延びた後に、第1用紙搬送路35に合流している。
【0032】
用紙搬送方向において転写位置47の上流側に、レジストローラ48が配置されている。第1用紙搬送路35を搬送される用紙は、停止した状態のレジストローラ48に突き当てられることで傾斜が補正される。レジストローラ48は、感光体ドラム41の周面に担持された静電潜像と用紙とが転写位置47において合致する所定のタイミングで、用紙を転写位置47へ搬送する。
【0033】
用紙搬送方向において、定着装置80の下流側からレジストローラ48の上流側にかけて、第3用紙搬送路37が配設されている。第3用紙搬送路37は、用紙の両面に画像を形成する場合に用いられる。
【0034】
制御部70は、画像形成装置10の全体を統括的に制御している。
【0035】
図2は、検出部60近傍の部分拡大断面を示す。
【0036】
検出部60は、用紙搬送方向において、定着装置80より上流側であって、給紙カセット31〜34とレジストローラ48との間に配置されている。検出部60は、用紙の光沢度に基づいて用紙の表裏の配置状態を検出し、検出結果を制御部70へ出力する。検出部60として、光センサが用いられる。例えば、検出部60として、ニチコン株式会社製「ZHPA3000」が用いられる。
【0037】
この実施形態では、検出部60は、2個の光センサ61,62を備えている。光センサ61,62のそれぞれは、現像剤像が転写される前の状態の用紙に光を照射し、反射光の光量を検出して、検出結果を制御部70へ出力する。光センサ61と光センサ62とは、用紙の表裏それぞれの面の反射光の光量を検出できるように、第1用紙搬送路35を挟んで対向するように配置されている。
【0038】
制御部70は、検出部60から入力した検出結果に基づいて、光センサ61の受光光量と光センサ62の受光光量とを比較し、受光光量が大きい方の光センサに対向する面が用紙の表面であり、受光光量が小さい方の光センサに対向する面が用紙の裏面であると判定する。2個の光センサ61,62の受光光量を比較することで、容易かつ正確に用紙の表裏の配置状態を検出することができる。
【0039】
検出部60が用紙カセット31〜34とレジストローラ48との間に配置されているので、現像剤像が転写されていない状態の用紙について表裏の配置状態を検出することができる。このため、より正確な検出を行うことができる。また、レジストローラ48は用紙の搬送方向において転写位置47の上流側近傍に配置されるので、検出部60がレジストローラ48と転写位置47との間に配置された場合より、用紙カセット31〜34とレジストローラ48との間に配置された場合の方が、検出部60の現像剤による汚損をより防止することができるとともに、現像剤によって汚損されていない状態の用紙を検出することができる。したがって、より正確な検出を行うことができる。
【0040】
図3及び図4は、カール矯正部110の構成を示す。図3は、用紙99の表面に現像剤像を定着させた状態を示し、図4は、用紙99の裏面に現像剤像を定着させた状態を示す。
【0041】
定着装置80は、加熱ローラ81、加圧ローラ82、第1用紙剥離爪83、第2用紙剥離爪84、及び温度センサ85を備えている。
【0042】
加熱ローラ81は、図示しない駆動源によって図3において時計方向に回転可能である。加熱ローラ81は、内部にヒータランプ811,812を有している。
【0043】
加熱ローラ81は、例えば、円筒状のアルミニウム製素管813、及びアルミニウム製素管813の表面に形成されるフッ素樹脂を含む被覆層814を用いて構成される。ヒータランプ811,812は、アルミニウム製素管813の内部に配置される。駆動源として、例えば駆動速度を変更可能なモータを用いることで、加熱ローラ81の回転速度を変更できる。
【0044】
加圧ローラ82は、加熱ローラ81に圧接し、回転自在に配置されている。加圧ローラ82は、加熱ローラ81の回転に従動して回転する。加圧ローラ82は、例えば、アルミニウム製素管821、及びアルミニウム製素管821の表面に形成される弾性体層822を用いて構成される。
【0045】
弾性体層822を構成する弾性体として、特に制限はないが、シリコーンゴムが好ましい。弾性体層822を構成する弾性体としてシリコーンゴムを用いることによって、次のような利点が得られる。即ち、加熱ローラ81の表面層の硬度が高い一方、加圧ローラ82の表面層である弾性体層822を構成するシリコーンゴムは弾性に富むので、加熱ローラ81と加圧ローラ82とが圧接するニップ部86において、加圧ローラ82の表面層が変形し、用紙99が加熱ローラ81の周面に少し巻き付くような状態になり、現像剤像の用紙99への定着がより確実となる。また、ニップ部86の面積が大きくなり、用紙99に対する加熱容量が高まる。さらに、柔軟性のある加圧ローラ82で加圧することで、現像剤の形状を変形させることなく定着させることができる。なお、加熱ローラ81に巻き付いた用紙99は、第1用紙剥離爪83によって容易に加熱ローラ81の周面から剥離することができる。
【0046】
用紙搬送方向において加熱ローラ81と加圧ローラ82とのニップ部86の上流側には、ニップ部86へ用紙99を案内する入紙案内板が配置されている。現像剤像を担持した用紙99は、入紙案内板を経由してニップ部86へ搬送される。第1用紙搬送路35に対して加熱ローラ81と感光体ドラム41とは同じ側に配置されているので、用紙99がニップ部86へ搬送される際、用紙99の現像剤像担持面は、加熱ローラ81の周面に接触する。用紙搬送方向においてニップ部86の下流側には、用紙99を搬送ローラ対90へ向けて案内する出紙案内板87が配置されている。
【0047】
加熱ローラ81と加圧ローラ82とが互いに圧接した状態で回転し、現像剤像を担持した用紙99がニップ部86を経由することで、現像剤像が加熱されるとともに用紙99に加圧され、現像剤像が用紙99に定着する。
【0048】
第1用紙剥離爪83は、加熱ローラ81の回転方向において、ニップ部86の下流側で加熱ローラ81の周面に先端部が軽く接触するように配置されている。第1用紙剥離爪83は、この実施形態では加熱ローラ81の回転軸に沿って複数個設けられるが、1個だけ設けることもできる。第1用紙剥離爪83は、加熱ローラ81の周面に巻き付く用紙99を、加熱ローラ81の周面から剥離する。第1用紙剥離爪83の材料として、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド等の合成樹脂が挙げられる。また、第1用紙剥離爪83の少なくとも先端部に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂を被覆することができる。
【0049】
第2用紙剥離爪84は、加熱ローラ81の回転に従動する加圧ローラ82の回転方向において、ニップ部86の下流側で加圧ローラ82の周面に軽く接触するように配置されている。第2用紙剥離爪84は、加圧ローラ82の周面に巻き付く用紙99を、加圧ローラ82の周面から剥離する。第2用紙剥離爪84は、第1用紙剥離爪83と同様の材料で構成される。
【0050】
温度センサ85は、加熱ローラ81を挟んでニップ部86の反対側近傍に配置され、加熱ローラ81の周面温度を検出し、温度データを制御部70へ出力する。制御部70は、温度センサ85から入力した温度データに基づいて、ヒータランプ811,812に電圧を印加する図示しない電源を制御することで、加熱ローラ81の周面温度を予め設定された所定温度に近付けるようにヒータランプ811,812の発熱温度を制御する。温度センサ85として、例えば、サーミスタが用いられる。
【0051】
搬送ローラ対90は、上述のように、用紙搬送方向において定着装置80の下流側に配置されている。搬送ローラ対90は、第1ローラ91及び第2ローラ92を有している。第1ローラ91の外径と第2ローラ92の外径とは、同じである。例えば、第1ローラ91は駆動ローラであって、第2ローラ92は従動ローラである。第2ローラ92は、第1ローラ91に圧接している。搬送ローラ対90は、定着装置80を通過して現像剤像が定着した用紙99を、第1ローラ91と第2ローラ92との間で圧接しながら排紙トレイ50へ向けて搬送する。
【0052】
カール矯正部110は、用紙搬送方向において定着装置80の下流側であって搬送ローラ対90の上流側に配置されている。カール矯正部110は、加熱ローラ81と加圧ローラ82とを結ぶ方向において用紙99を加熱ローラ81側へ凸となる方向に湾曲させる第1の位置と用紙99を湾曲させない第2の位置とに変位自在である。カール矯正部110は、用紙案内部材120、及び変位部130を備えている。
【0053】
用紙案内部材120は、第1用紙搬送路35に対して加熱ローラ81と同じ側に配置されている。用紙案内部材120は、用紙搬送方向において定着装置80の下流側であって搬送ローラ対90の上流側の第1用紙搬送路35の加熱ローラ81側の壁面を構成している。用紙案内部材120は、用紙搬送方向における用紙案内部材120の中間部において第1用紙搬送路35が加熱ローラ81と加圧ローラ82とを結ぶ方向に拡大するように湾曲している。即ち、用紙案内部材120は、定着装置80から排出された用紙99のカールの方向と反対方向に凸となるように湾曲している。加熱ローラ81の回転軸方向における用紙案内部材120の寸法は、画像形成装置10で使用される最大サイズの用紙の幅と略同サイズであることが好ましい。
【0054】
変位部130は、用紙搬送方向において定着装置80と出紙案内板87との間であって、第1用紙搬送路35を挟んで用紙案内部材120と対向するように配置されている。変位部130は、第1の位置と第2の位置とに変位自在であって、第1の位置において定着装置80から排出された用紙99が用紙案内部材120に沿って搬送されるように用紙を案内する。
【0055】
変位部130は、揺動部131、支軸132、ソレノイド133、スプリング134、及び基板135を備えている。
【0056】
基板135は、画像形成装置10の所定位置に固定されている。支軸132、ソレノイド133、及びスプリング134は、基板135に固定されている。
【0057】
揺動部131は、例えば棒状であって、支軸132によって中間部を軸支されている。これによって、揺動部131は、支軸132による軸支点132Aを軸として、揺動自在である。この実施形態では、揺動部131は、用紙搬送方向において開放端部131Aが軸支点132Aより上流側になるように配置されている。開放端部131Aは、用紙搬送方向において用紙案内部材120の上流側端部近傍に配置されている。
【0058】
軸支点132Aを挟んで開放端部131Aの反端側端部である基端部131Bは、ソレノイド133に固定されている。ソレノイド133は、制御部70によって、オンオフ制御される。また、揺動部131の軸支点132Aより開放端部131A側に、スプリング134の一端部が固定され、スプリング134の他端部は、基板135に固定されている。スプリング134は、揺動部131を第1用紙搬送路35から離間する方向へ付勢する。
【0059】
図3に示すように、ソレノイド133がオフの状態では、揺動部131は第2の位置に配置されている。揺動部131は、第2の位置において、用紙搬送方向の下流側端部(この実施形態では基端部131B)が出紙案内板87の近傍に配置され、用紙搬送方向の下流側へ若干登り傾斜するように配置される。これによって、定着装置80から排出された用紙99は、揺動部131の上面に円滑に搬送され、揺動部131及び出紙案内板87によって、搬送ローラ対90へ向けて直線状に案内される。揺動部131は、第2の位置において、加熱ローラ81と加圧ローラ82とのニップ部86と、搬送ローラ対90のニップ部とを結ぶ方向に平行となるように配置することもできる。
【0060】
図4に示すように、ソレノイド133がオンの状態では、ソレノイド133が、揺動部131の基端部131Bを第1用紙搬送路35から離間する方向へ引き続ける。これによって、揺動部131は、開放端部131Aが用紙案内部材120に接近する方向へ揺動し、第1の位置に配置される。ソレノイド133がオフされると、揺動部131は、スプリング134の付勢力によって、開放端部131Aが用紙案内部材120から離間する方向へ揺動し、図3に示すように第2の位置へ戻る。
【0061】
用紙99には、抄紙製造機による製造方法に起因して、フェルト面とも呼ばれる平滑性に優れた表面と、ワイヤ面とも呼ばれ表面よりも平滑性に劣る裏面とがある。用紙99が加熱されて乾燥した際、表面は縮む度合いが小さく、裏面は縮む度合いが大きい。このため、用紙99が定着装置80を通過すると、用紙99は一般的に裏面側へカールする。
【0062】
また、用紙99の表面に現像剤像が定着する場合即ち表面が現像剤像担持面である場合は、表面が加熱ローラ81に接触するので、裏面より表面に多くの熱量が供給される。一方、用紙99の裏面に現像剤像が定着する場合即ち裏面が現像剤像担持面である場合は、裏面が加熱ローラ81に接触するので、表面より裏面に多くの熱量が供給される。このため、本発明のカール矯正部110が無ければ、定着装置80を通過した後の用紙99のカールの度合いは、図5(A)及び図5(B)に示すように表面が現像剤像担持面である場合は小さく、図6(A)及び図6(B)に示すように裏面が現像剤像担持面である場合は大きくなる。なお、図5(A)及び図6(A)は、用紙99の長手方向が加熱ローラ81の回転軸と直交する方向に用紙99を搬送した場合を示し、図5(B)及び図6(B)は、用紙99の長手方向が加熱ローラ81の回転軸と平行となる方向に用紙99を搬送した場合を示している。
【0063】
検出部60は、用紙搬送方向において、カール矯正部110より上流側に配置されている。制御部70は、検出部60による検出結果に基づいて、用紙99の表面が加熱ローラ81側に配置されていると判定した場合即ち表面が現像剤像担持面であると判定した場合は、ソレノイド133をオフする。これによって、表面に現像剤像が定着した場合は搬送ローラ対90へ向けて用紙99を直線状に搬送することができる。
【0064】
また、制御部は、検出部60による検出結果に基づいて、裏面が加熱ローラ81側に配置されていると判定した場合即ち裏面が現像剤像担持面であると判定した場合は、定着装置80から排出された用紙99の先端部を揺動部131の開放端部131Aが用紙案内部材120へ向けて押す所定のタイミングでソレノイド133をオンする。制御部70は、用紙99が変位部130を通過し終わった後にソレノイド133をオフする。
【0065】
これによって、裏面に現像剤像が定着した場合は、用紙99を用紙案内部材120に沿って搬送させることができる。用紙案内部材120は用紙搬送方向における用紙案内部材120の中間部において第1用紙搬送路35が加熱ローラ81と加圧ローラ82とを結ぶ方向に拡大するように湾曲していること即ち用紙99のカールの方向と反対方向に凸となるように湾曲していること、及び、用紙99が用紙案内部材120に沿って搬送されると搬送力によって用紙99は用紙案内部材120に押し当てられることから、用紙99はカールの方向と反対方向へ湾曲し、用紙99のカールが矯正される。このため、排紙トレイ50へ排出される用紙のカールを抑制することができる。したがって、排紙トレイ50に収容できる用紙99の適正枚数を増加させることができる。
【0066】
また、変位部130を所定のタイミングで第1の位置へ変位させ、用紙99が変位部130を通過した後に変位部130を第2の位置へ戻すことで、省電力化が可能となる。
【0067】
さらに、揺動部131が第2の位置に配置された場合に、揺動部131が、定着装置80から搬送ローラ対90へ向けて直線状に用紙99を案内するガイド部材の役割を果たすので、部品点数を抑え、製造コストを抑制することができる。
【0068】
制御部70は、排紙トレイ50に排出された用紙99が所定枚数を超えると、画像形成処理を停止させるように構成されている。排紙トレイ50に排出された用紙99が所定枚数を超えると画像形成処理が停止することで、排紙トレイ50に収容された用紙99にカールが残っている場合でも、排紙トレイ50近傍における用紙詰まりを防止することができる。また、排紙トレイ50から用紙を取り除くことで、画像形成処理を継続できるように構成することもできる。
【0069】
なお、加熱ローラ81の回転軸方向における揺動部131の寸法は、画像形成装置10で使用される最大サイズの用紙の幅と略同じに構成することもできる。
【0070】
用紙案内部材120は、用紙搬送方向において定着装置80と搬送ローラ対90との間の少なくとも一部の第1用紙搬送路35の加熱ローラ81側の壁面を構成するように構成することができる。
【0071】
変位部130は、用紙搬送方向において揺動部131の開放端部131Aが軸支点132Aより下流側になるように配置することもできる。これによれば、揺動部131が第1の位置へ変位した状態で用紙99を揺動部131の上面の傾斜に沿って搬送することができるので、揺動部131を第2の位置から第1の位置へ変位させるタイミングのズレの許容度が大きくなる。
【0072】
また、それぞれ異なる色相の現像剤を用いて画像を形成する複数の画像形成部を備えたカラー画像形成装置に、本発明を適用することもできる。
【0073】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
10 画像形成装置
20 画像形成ユニット
30 給紙ユニット
31〜34 給紙カセット(収容部)
35 第1用紙搬送路(用紙搬送経路)
40 画像形成部
48 レジストローラ
50 排紙トレイ
60 検出部
70 制御部
80 定着装置(定着部)
81 加熱ローラ(加熱部)
82 加圧ローラ(加圧部)
90 搬送ローラ対
99 用紙
110 カール矯正部
120 用紙案内部材
130 変位部
131 揺動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に電子写真方式の画像形成処理を行う画像形成装置であって、
用紙を収容する収容部と、
前記収容部から搬送された用紙に現像剤像を転写する画像形成部と、
用紙に転写された現像剤像を加熱する加熱部及び前記加熱部との間に用紙を挟んで前記加熱部に圧接する加圧部を有し、現像剤像を用紙に定着させる定着部と、
用紙搬送方向において前記定着部の下流側に配置され、前記加熱部と前記加圧部とを結ぶ方向において用紙を前記加熱部側へ凸となる方向に湾曲させる第1の位置と用紙を湾曲させない第2の位置とに変位自在であるカール矯正部と、
前記用紙搬送方向において前記カール矯正部より上流側に配置され、用紙の表裏の配置状態を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記カール矯正部を変位させる制御部と、を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、用紙の裏面に現像剤像を定着させる場合に、前記カール矯正部を前記第1の位置へ変位させる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記カール矯正部は、
前記用紙搬送方向における前記定着部の下流側の用紙搬送経路の前記加熱部側の壁面を構成する用紙案内部材であって前記用紙搬送方向における前記用紙案内部材の中間部において前記用紙搬送経路が前記加熱部と前記加圧部とを結ぶ方向に拡大するように湾曲した用紙案内部材と、
前記第1の位置と前記第2の位置とに変位自在な変位部であって前記第1の位置において前記定着部から排出された用紙が前記用紙案内部材に沿って搬送されるように用紙を案内する変位部と、を有する請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記変位部は、開放端部が前記用紙案内部材に離接する方向に揺動自在な揺動部を有する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記定着部から排出された用紙の先端部を前記開放端部が前記用紙案内部材へ向けて押すタイミングで前記変位部を前記第1の位置へ変位させ、用紙が前記変位部を通過した後に前記変位部を前記第2の位置へ戻す請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記用紙搬送方向において前記カール矯正部より下流側に配置され、現像剤像が定着した用紙を互いのローラ間で圧接しながら前記用紙搬送方向の下流側へ搬送する搬送ローラ対をさらに備え、
前記揺動部は、前記第2の位置において、前記定着部から排出された用紙を前記搬送ローラ対へ向けて直線状に案内する請求項4又は5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−208744(P2010−208744A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54728(P2009−54728)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】