説明

画像形成装置

【課題】 清掃部材がへたっても放電生成物による像流れが抑制される画像形成装置を提供する。
【解決手段】 表面に像が形成され、該像を該表面に保持する像保持体;前記像保持体表面に像を形成する像形成部;前記像保持体表面に形成された像を記録媒体上に転写し定着させる転写定着部;前記像保持体表面に接触して該表面から付着物を除去する部材本体と、前記部材本体に接触して該部材本体の歪みに応じた信号を出力するセンサ部とを有する清掃部材;および前記センサ部からの信号に基づいて前記像保持体の少なくとも表面を加熱する加熱部;を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、像保持体上にトナー像を形成し、そのトナー像を記録媒体上に転写し定着させる画像形成装置が知られている。このような画像形成装置には、像保持体上の付着物を除去するクリーニングブレードを備えたものが存在する。
【0003】
特許文献1には、クリーニングブレードと像保持体との双方に導電層を設け、クリーニングブレードがめくれ上がるとこれら導電層が接触することで、クリーニングブレードのめくれを検出する技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、クリーニングブレードが像保持体に接触している状態で、光弾性法により、そのクリーニングブレードにかかる内部歪みを動的に観察する技術が提案されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、クリーニングブレードに貼り付けられた磁性体をソレノイドコイルにより引き付けることで、そのクリーニングブレードの歪みを補正する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−067583号公報
【特許文献2】特開2003−005580号公報
【特許文献3】特開2003−005597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、清掃部材がへたっても放電生成物による像流れが抑制される画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る画像形成装置は、
表面に像が形成され、この像をこの表面に保持する像保持体;
上記像保持体表面に像を形成する像形成部;
上記像保持体表面に形成された像を記録媒体上に転写し定着させる転写定着部;
上記像保持体表面に接触してこの表面から付着物を除去する部材本体と、上記部材本体に接触してこの部材本体の歪みに応じた信号を出力するセンサ部とを有する清掃部材;および
上記センサ部からの信号に基づいて上記像保持体の少なくとも表面を加熱する加熱部;
を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る画像形成装置は、
上記加熱部は、上記センサ部からの信号が、上記付着部の除去に必要な歪みに対する実際の歪みの不足を表している場合に上記像保持体の表面を加熱するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る画像形成装置は、
上記加熱部が、上記像保持体の内部に配備された発熱体又はこの像保持体に対向して配備された発熱体のうちの少なくともいずれか一方であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る画像形成装置は、
上記転写定着部が、熱によって上記像を記録媒体上に定着させるものであり、
上記加熱部が、上記転写定着部から排出される熱で熱せされた空気を上記像保持体に吹き付ける吹付装置であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る画像形成装置は、
上記清掃部材が、上記部材本体と、この部材本体が上記像保持体に接触する箇所を避けた箇所に付けられた金属膜からなるセンサ部とを有するものであることを特徴とす。
【0013】
請求項6に係る画像形成装置は、
上記清掃部材が、上記部材本体と、この部材本体が上記像保持体に接触する箇所を避けた箇所に蒸着された金属膜からなるセンサ部とを有するものであることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る画像形成装置は、
上記像保持体が、アモルファスシリコンおよびフェノール樹脂のうちの少なくともいずれか一方を含有するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る画像形成装置によれば、清掃部材がへたっても放電生成物による像流れが抑制される。
【0016】
請求項2に係る画像形成装置によれば、単純な制御であっても放電生成物による像流れが抑制される。
【0017】
請求項3および請求項4に係る画像形成装置によれば、単純な構成であっても放電生成物による像流れが抑制される。
【0018】
請求項5に係る画像形成装置によれば、センサ部が部材本体に付いていても部材本体の変形を妨げない。
【0019】
請求項6に係る画像形成装置によれば、蒸着された金属膜でないセンサ部を有する場合と比べて部材本体に対するセンサ部の追随性が高い。
【0020】
請求項7に係る画像形成装置によれば、装置寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】プリンタの概略構成図である。
【図2】新品のクリーニングブレードの先端と感光体ロールとの接触部分の様子を示す図である。
【図3】長期間使用されたクリーニングブレードの先端と感光体ロールとの接触部分の様子を示す図である。
【図4】本実施形態におけるクリーニングブレードの外観斜視図である。
【図5】歪みゲージの詳細を示す図である。
【図6】歪みゲージの抵抗値の変化を示すグラフ図である。
【図7】図1にも示される加熱制御部の内部ブロック図である。
【図8】図7に示されるホイートストンブリッジ回路の詳細構成図である。
【図9】クリーニングブレードの表裏面に1つずつ配備された歪みゲージの抵抗値の変化を示すグラフ図である。
【図10】第2実施形態のプリンタの概略構成図である。
【図11】第2実施形態のプリンタの加熱装置を示す図である。
【図12】第3実施形態のプリンタの概略構成図である。
【図13】第3実施形態のプリンタのファンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の画像形成装置の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、プリンタの概略構成図である。
【0024】
図1に示されるプリンタ1は、表面層にアモルファスシリコンを含有する高硬度の感光体ロール10と、この感光体ロール10の表面に電荷を付与する帯電ロール11と、外部から送信されてきた画像信号に基づいたレーザ露光光を生成し感光体ロール10に向けて照射するレーザ露光器12と、トナーを含む現像剤を収容する現像器13と、記録用紙を収容する用紙カセット16と、用紙カセット16から記録用紙を引き出して搬送する用紙搬送装置17と、感光体ロール10の表面に保持されたトナー像を、矢印B方向に搬送されてきた記録用紙上に転写する転写ロール14と、記録用紙上のトナー像を加熱および加圧することで記録用紙上にトナー像を定着させる定着器15と、感光体ロール10の表面をクリーニングするクリーニング装置20と、感光体ロール10の表面を加熱する加熱装置30と、この加熱装置30の動作を制御する加熱制御部100とを有している。現像器13は、回転しながら現像剤を感光体ロール10との間の領域に搬送する現像ロール131を有している。加熱装置30は、感光体ロール10の回転方向Aにおける帯電ロール14よりも下流側かつクリーニング装置20よりも上流側に配備されている。プリンタ1が、本発明の画像形成装置の第1実施形態である。また、感光体ロール10が、本発明にいう像保持体の一例に相当し、帯電ロール11、レーザー露光器12、および現像器13を併せたものが、本発明にいう像形成部の一例に相当する。さらに、転写ロール14および定着器15を併せたものが、本発明にいう転写定着部の一例に相当する。また、加熱装置30と加熱制御部100とを併せたものが、本発明にいう加熱部の一例に相当する。尚、このプリンタ1は単色画像専用機であるが、本発明はカラー画像機に適用されてもよい。
【0025】
このプリンタ1における画像形成動作の流れを簡単に説明する。
【0026】
図1に示されるプリンタ1では、矢印A方向に回転する感光体ロール10の表面に帯電ロール11により電荷が付与され、電荷が付与された感光体ロール10の表面に、外部から送信されてきた画像信号に基づいたレーザー露光光がレーザー露光器12から照射されることでこの表面には静電的な潜像が形成される。現像器13に収容されている現像剤は現像ロール131の表面に供給され、現像ロール131と感光体ロール10との間の領域に運ばれ、運ばれた現像剤中のトナーにより、感光体ロール10の表面の静電的な潜像が現像される。この現像により得られたトナー像が、矢印B方向に搬送されてきた記録用紙上に転写ロール14により転写される。その後、トナー像を加熱および加圧する定着器15により記録用紙上のトナー像が溶融されて記録用紙上に定着される。感光体ロール10の、トナー像の転写を終えた部分に付着した付着物は、矢印Aの向きの回転おける転写ロール14よりも下流側、かつ帯電ロール11よりも上流側で感光体ロール10の回転中心に沿った全幅にわたって先端が接触したクリーニングブレード21により除去され、除去された付着物は付着物収容箱23に収容される。詳しくは後述するが、このクリーニングブレード21には、金属膜からなる歪みゲージ22が蒸着されており、この歪みゲージ22の抵抗値は、クリーニングブレード21の歪みに応じて変化する。クリーニングブレード21が本発明にいう部材本体の一例に相当し、歪みゲージ22が本発明にいうセンサ部の一例に相当する。これらクリーニングブレード21と歪みゲージ22を併せたものが本発明にいう清掃部材の一例に相当する。
【0027】
ところで、被クリーニング体である感光体ロール表面に対するクリーニングブレードによるクリーニングは、感光体ロール表面に接触したクリーニングブレードとこの感光体ロール表面との間で「スティックスリップ現象」と呼ばれる現象が引き起こされることでなされる。
【0028】
このスティックスリップ現象は、「スティック状態」と「スリップ状態」とを繰り返す現象で、「スティック状態」とは、回転する感光体ロール表面に先端が接触したクリーニングブレードによって感光体ロール表面のトナーなどの付着物が除去され、これら除去された付着物が感光体ロール表面とクリーニングブレード先端との接触部分に堆積するにつれてクリーニングブレード先端を巻き込もうとする力が次第に強くなり、これに伴いクリーニングブレードに発生する応力も次第に大きくなっていく状態をいう。また、「スリップ状態」とは、感光体ロール表面とクリーニングブレード先端との接触部分に堆積した付着物がある程度以上の量になると、この堆積した付着物がクリーニングブレードによって崩され、クリーニングブレード先端を巻き込もうとする力が急減した状態をいう。感光体ロール表面とクリーニングブレード先端との接触部分では、クリーニングブレードが感光体ロール表面から除去した付着物の堆積(「スティック状態」)と崩壊(「スリップ状態」)が繰り返されることで発生するクリーニングブレード先端の挙動によってクリーニングが行われる。
【0029】
ところが、この「スティック状態」における、クリーニングブレード先端を巻き込もうとする力が強くなるにつれて、クリーニングブレードに発生する応力も次第に大きくなって行くという相乗関係は、経時劣化等によるクリーニングブレードのへたりによって、弾性変形ではなく塑性変形を起こすようになる。このため、クリーニングブレードがへたるにつれてクリーニングブレードに発生する応力も抜けるために、クリーニングブレード先端を巻き込もうとする力も大きくならず、クリーニングに欠かせない「スティックスリップ現象」が機能しなくなる。その結果、クリーニングブレードによるクリーニング性能は低下する。
【0030】
図2は、新品のクリーニングブレードの先端と感光体ロールとの接触部分の様子を示す図である。
【0031】
図2には、へたりのないクリーニングブレードの先端が感光体ロールに接触し、適切な「スティック状態」が生じているため、クリーニングブレード先端と感光体ロールとの間の摩擦力が増大し、クリーニングブレードが充分に歪んでいる様子が示されている。
【0032】
図3は、長期間使用されたクリーニングブレードの先端と感光体ロールとの接触部分の様子を示す図である。
【0033】
図3には、クリーニングブレードがへたっていることで適切な「スティック状態」が生じないためにクリーニングブレード先端と感光体ロールとの間の摩擦力が増大せずクリーニングブレードの歪みが図2に比べて少なくなっている様子が示されている。
【0034】
この様に、感光体ロールに対するクリーニング性能は、クリーニングブレードのへたり具合に依存したものであるため、クリーニングブレードがへたっていくにつれて、クリーニングブレード先端と感光体ロールとの間の摩擦力も小さくなる。その結果、スティックスリップ現象が生じにくくなり、感光体ロール表面に付着した付着物のクリーニングブレードによるクリーニング性能は低下して、感光体ロール表面に付着した付着物に起因する像流れ等の画質低下が引き起こされることとなる。
【0035】
そこで、本実施形態のプリンタ1では、歪みに応じて抵抗値が変化する歪みゲージ22をクリーニングブレード21に付け、メカニズムについては後述するが、付けた歪みゲージ22の抵抗値の大きさを表す信号をリアルタイムで検出し、ブレード先端の感光体ロール表面に対する摩擦力の大きさの推定を通じてクリーニングブレードのへたり具合を推定している。
【0036】
図4は、本実施形態におけるクリーニングブレードの外観斜視図である。
【0037】
図4には、図1にも示される歪みゲージ22が、クリーニングブレード21の表面211の中央部分に付されている様子が示されている。
【0038】
ここで、クリーニングブレード21に付けた歪みゲージ22の詳細、および、クリーニングブレード21の歪みと歪みゲージ22の抵抗値との関係についてまず説明する。
【0039】
図5は、歪みゲージの詳細を示す図である。
【0040】
図5に示される歪みゲージ22は、つづら折り状に繋がった幅の細いパターンからなるゲージパターン部221と、このゲージパターン部221の両端にそれぞれ接続されたゲージタブ部222とからなる金属膜であり、これらゲージパターン部221とゲージタブ部222は、クリーニングブレード21に蒸着で付されている。このため、歪みゲージ22は、クリーニングブレード21の表面211から剥がれ難く、また、クリーニングブレード21の表面211に対する追随性が高い。
【0041】
クリーニングブレード21は、図4に示される矢印Aの向きに感光体ロール10が回転すると、先端210側が図5における手前側に隆起するように湾曲するため(図2参照)、ゲージパターン部221はL方向に縮む。これにより、ゲージパターン部221の断面積は大きくなるとともに距離がわずかながら短縮されるため、歪みゲージ22の抵抗値は小さくなる。
【0042】
また、図5に示される歪みゲージ22は、クリーニングブレード全体の歪みに大きな影響をあたえる先端210の歪みを妨げないように、クリーニングブレード21の先端210から距離を空けて蒸着されている。
【0043】
ゲージタブ部222は、ゲージリード223の接続でゲージパターン部221の伸び縮みに影響が生じないように、ゲージパターン部221よりも幅の広いパターンからなる。
【0044】
ゲージパターン部221のゲージ長Lは、0.2mm〜5mmの範囲内であることが好ましい。また、ゲージパターン部221のゲージ幅Wは、0.5mm〜5mmの範囲内であることが好ましい。この範囲より小さいと、高い精度での加工が必要になり、また信号に対するノイズが多くなる。一方、この範囲よりも大きいと、クリーニングブレード21の表面212に占める割合が大きくなるために、クリーニングブレード21の歪みに対する抵抗値の追随性が低下する。尚、ゲージタブ部222は、ゲージリード223によって加熱制御部100と繋がっている。また、金属膜の材料としては、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、バナジウム、クロム、タンタル、鉄、マンガン、シリコン、およびそれらの合金、酸化物、窒化物、ケイ化物からなる群から選択された材料が挙げられる。
【0045】
図6は、歪みゲージの抵抗値の変化を示すグラフ図である。
【0046】
図6には、クリーニングブレード21の表面211の蒸着された歪みゲージ22の抵抗値の変化が示されている。
【0047】
図6における実線は、クリーニングブレード21が未だへたっていない適正状態にあることで、ブレード先端210と感光体ロール10との間の強い摩擦力によりクリーニングベルト21に強い応力が生じた場合の歪みゲージ22の抵抗値の変化を示しており、図6における点線は、クリーニングブレード21がへたった非適正状態にあることで、クリーニングブレード21に強い応力が生じていない場合の歪みゲージ22の抵抗値の変化を示している。
【0048】
図6には、上述した適正状態にある場合、感光体ロール10の停止中は歪みゲージ22の抵抗値RvはRv0であったのが、感光体ロール10の回転中はRv1まで大幅に低下する様子が示されている。一方、上述した非適正状態にある場合、感光体ロール10の停止中は歪みゲージ22の抵抗値Rvは適正状態と同様にRv0であったのが、感光体ロール10の回転中は、適正状態と比べてクリーニングブレード21の先端210と感光体ロール10との間の摩擦力が小さくクリーニングブレード21の歪みも小さいために、適正状態にある場合のRv1よりも大きいRv2までしか低下しない。この様に、歪みゲージ22の抵抗値は、クリーニングブレードのへたり具合いを反映したものとなる。
【0049】
次に、歪みゲージ22の抵抗値の大きさを表す信号の検出方法について説明する。
【0050】
図7は、図1にも示される加熱制御部の内部ブロック図である。
【0051】
図7に示される加熱制御部100は、ホイートストンブリッジ回路101、検出部102、判定部103、および加熱指示部104を備えている。
【0052】
図7には、加熱指示部104に接続され、この加熱指示濡104からのオン指示を受けて、感光体ロール10の表面を加熱する、感光体ロール10の近傍に配置された加熱装置30も示されている。
【0053】
図8は、図7に示されるホイートストンブリッジ回路の詳細構成図である。
【0054】
図8に示されるホイートストンブリッジ回路101は、抵抗値R1の第1抵抗素子1011、抵抗値R2の第2抵抗素子1012、抵抗値R3の第3抵抗素子1013、および直流電源1010を備え、ホイートストンブリッジ回路101では、4つ目の抵抗素子として、抵抗値Rvが変化する歪みゲージ22が用いられている。
【0055】
歪みゲージ22と第3抵抗素子1013の間の第1接続点Aと、第1抵抗素子1011と第2抵抗素子1012の間の第2接続点Bとには、直流電源1011が繋がれている。また、第1抵抗素子1011と歪みゲージ22の間の第3接続点Cと、第2抵抗素子1012と第3抵抗素子1013の間の第4接続点Dとには、図7にも示される検出部102が接続されている。尚、検出部102は内部に抵抗を備えている。
【0056】
ここで、以下の式(1)が成立するときには、第3接続点Cと第4接続点Dとの間の電位差は零となり、検出部102で検出される電流はゼロとなる。
【0057】
Rv/R1=R3/R2…(1)
このホイートストンブリッジ回路101では、クリーニングブレード21が図3に示される様に歪みが殆ど無い状態にある場合の歪みゲージ22の抵抗値Rv0にあわせて上記の式(1)が成立するように、すなわちRv0/R1=R3/R2が成立するようにその他の抵抗値R1、R2、R3が設定されている。したがって、クリーニングブレード21が図3に示されるような歪みが殆ど無い状態から図2に示される様な歪んだ状態に変化すると、歪みゲージ22の抵抗値Rvは、前述したRv0よりも小さいRv1となる。そうなると、第4接続点Dの電位は第3接続点Cの電位よりも高くなるために、これら第4接続点Dと第3接続点Cとの間の検出部102には、第4接続点Dから第3接続点Cへ向かう向きの電流が流れる。したがって、歪みゲージ22の抵抗値Rvが低下するほど、すなわちクリーニングブレード21の歪みが大きくなるほど検出部102を流れる電流は大きくなる。したがって、上述の適正状態から非適正状態に変化するに従い、検出部102で検出される電流値は減少していくこととなる。
【0058】
検出部102では、検出した電流値の大きさに応じた信号、すなわち検出した電流値が大きいほど高レベルの信号を、図7に示される判定部103にリアルタイムで送信する。
【0059】
判定部103では、検出部102から送信されてくる信号のレベルが、予め設定されている基準レベルを下回るか否かを監視し、基準レベルを下回るレベルの信号が送信されてきた場合には、クリーニングブレード21が予め設定した基準よりもへたったとして加熱指示部104に加熱開始を指示する信号を送信する。次に、クリーニングブレードのへたりと感光体ロール表面の加熱との関係について説明する。
【0060】
帯電ロールの放電作用によって電荷が付与される感光体ロールの場合、その放電に伴って感光体ロールの表面付近には窒素酸化物が発生する。この窒素酸化物は、空気中の物質と結合して硝酸化合物などのいわゆる放電生成物となって感光体ロールの表面に付着する。このとき、感光体ロールの表面付近に水分が存在すると、感光体ロールの表面に付着している放電生成物は水分と結びついて自身が付着している感光体ロール10の表面部分の抵抗を低下させる。これにより、抵抗が低下した部分に形成された像に、像ボケなどの画像欠陥が発生するおそれがある。このため、感光体ロールの表面に付着したトナー等と共に、表面に付着した放電生成物をも除去する目的でブレードタイプのクリーニング装置が採用されている。しかしながら、クリーニングブレードを使用していても、上述したように、クリーニングブレードがへたってくると狙い通りのクリーニング性が得られなくなってくる。そこで、このプリンタ1では、判定部103において、クリーニングブレード21が基準よりもへたったと判定すると、感光体ロール10の表面に付着した放電生成物と水分との結合の阻止、すなわち感光体ロール10の表面を加熱し、感光体ロール10の表面付近の水分を除去することで画質の低下を抑制する。予め設定した基準よりもクリーニングブレード21がへたったと判定部103において判定され、加熱開始を指示する信号が判定部103から加熱指示部104に送信されると、加熱指示部104は加熱装置30をオンにする。これにより、感光体ロール10の表面が加熱装置30によって暖められ、感光体ロール10の表面の水分は除去され、感光体ロール10の表面に付着した放電生成物と水分との結合は阻止される。
【0061】
また、この感光体ロール10が表面層にアモルファスシリコンを含有した高硬度の感光体であると、この様な感光体ロール10に接触し、スティックスリップ現象を繰り返しながらこの感光体ロール10の表面をクリーニングするクリーニングブレード21のへたりは、表面層の硬度がそれほど高くない感光体に比べて早くなる。このため、クリーニングブレード21が基準よりもへたったと判定した場合に、感光体ロール10の表面の加熱が行われるこのプリンタ1では、画質の低下がいち早く抑制される。尚、クリーニングブレード21のへたりは回復する見込みはないため、判定部103から加熱指示部104に対する加熱指示が一旦出されると、それ以降、感光体ロール10の回転時には常に加熱装置30はオンされる。
【0062】
また、このプリンタ1では、クリーニングブレード21の表面211と裏面のうちの表面211にのみ歪みゲージ22を蒸着しているが、以下に説明するように、クリーニングブレード21の表面211と裏面との双方にセンサを蒸着してもよい。
【0063】
図9は、クリーニングブレードの表裏面に1つずつ配備された歪みゲージの抵抗値の変化を示すグラフ図である。
【0064】
図9に示されるグラフのうち、上段に示される方は、図6に示されるグラフと同じグラフ、すなわちクリーニングブレード21の表面211に配置された歪みゲージ22の抵抗値の変化を表している。一方、下段に示されている方は、同じクリーニングブレード21の裏面に配置された歪みゲージ22の抵抗値の変化を表している。
【0065】
図9には、クリーニングブレード21の表面211に配置されている歪みゲージ22の抵抗値は、クリーニングブレード21の先端210が歪んでいる場合の方が歪んでいない場合よりも低下するのに対し、クリーニングブレード21の裏面に配置されている歪みゲージ22の抵抗値は、クリーニングブレードの表面と裏面では湾曲の向きが逆向きとなるため、クリーニングブレード21の先端210が歪んでいる場合の方が歪んでいない場合よりも上昇する様子が示されている。
【0066】
この様に、歪みゲージ22の抵抗値は、クリーニングブレード21の表面211であれ裏面であれ、クリーニングブレード21のへたり具合を反映したものとなることから、歪みゲージ22の配置位置は、クリーニングブレード21の裏面のみであってもよく、さらには、表裏面の双方に配置されてもよい。
【0067】
また、以上では、歪みゲージとしての金属膜をクリーニングブレードに蒸着した例を挙げたが、本発明では、歪みゲージとしての金属膜をクリーニングブレードに接着剤で貼り付けてもよい。以下、金属膜を接着剤で貼りつけた場合について説明する。
【0068】
この場合、金属薄膜の長さ(ゲージ長)Lと幅(ゲージ幅)W、および材料は、図2に示す歪みゲージ22のものと同じである。また、膜厚は、特に限定されるものではないが、生産性を高めるためには数μmの厚さのものを用いるのがよい。また、クリーニングブレードの歪みを高精度に検出するためには、0.1μm〜2.0μmの厚さのものを用いるのがよい。さらに、接着剤としては、熱硬化性のものと液型のものとがある。熱硬化性の接着剤としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂などが用いられる。また、液型の接着剤としては、シアノアクリレート系の接着剤、エポキシ系、フェノールエポキシなどが用いられる。
【0069】
この様に金属膜を接着剤で接着した場合、金属膜を蒸着した場合と較べて、接着剤の分だけ応答性が劣るため、接着剤は可能な限り薄く用いる必要がある。
【0070】
次に、本発明の画像形成装置の第2実施形態について説明する。
【0071】
図10は、第2実施形態のプリンタの概略構成図である。尚、図10に示されている部材で図1に示されている部材と同じ部材には、図1に付されている符号と同じ符号が付されている。
【0072】
図10に示される第2実施形態のプリンタ2と図1に示される第1実施形態のプリンタ1の相違点は、感光体ロール10を加熱する加熱装置だけであるので、以下ではこの相違点についてのみ説明する。
【0073】
第1実施形態のプリンタ1では、感光体ロール10の表面を加熱するのに、感光体ロール10の回転方向Aにおける帯電ロール14よりも下流側かつクリーニング装置20よりも上流側に配備された加熱装置30をオンしているのに対し、第2実施形態のプリンタ2では、感光体ロール10の内部に配備された加熱装置31をオンすることによって感光体ロール10の表面を加熱している。
【0074】
図11は、第2実施形態のプリンタの加熱装置を示す図である。
【0075】
図11には、感光体ロール10の内部に加熱装置31が配備されている様子が示されている。
【0076】
この加熱装置31は、加熱指示部104からのオン指示を受けて、感光体ロール10の内部で発熱することで感光体ロール10の表面を加熱する。
【0077】
最後に、本発明の画像形成装置の第3実施形態について説明する。
【0078】
図12は、第3実施形態のプリンタの概略構成図である。尚、図12に示されている部材で図1に示されている部材と同じ部材には、図1に付されている符号と同じ符号が付されている。
【0079】
図12に示される第3実施形態のプリンタ3と図1に示される第1実施形態のプリンタ1の相違点は、感光体ロール10の表面を加熱する加熱装置だけであるので、以下ではこの相違点についてのみ説明する。
【0080】
第1実施形態のプリンタ1では、感光体ロール10の表面を加熱するのに、感光体ロール10の回転方向Aにおける帯電ロール14よりも下流側かつクリーニング装置20よりも上流側に配備された加熱装置30をオンしているのに対し、第3実施形態のプリンタ3では、定着装置15から放出された熱により暖められた空気を、定着装置15の上方に配備されたファン40によって感光体ロール10に向けて送ることで感光体ロール10の表面を加熱している。
【0081】
図13は、第3実施形態のプリンタのファンを示す図である。
【0082】
図13には、定着装置15の上方にファン40が配備されている様子が示されている。
【0083】
このファン40は、加熱指示部104からのオン指示を受けて、定着装置15の上方の暖められた空気を感光体ロール10に向けて送る。これにより、感光体ロール10が加熱される。
【0084】
尚、以上では、本発明にいう画像形成装置としてプリンタを例に挙げて説明したが、本発明にいう画像形成装置は、複写機はもとよりファクシミリ等でもよい。
【0085】
さらに、本発明にいう画像形成装置として、搬送されてきた記録用紙に、転写ロールを用いて感光体ロール上の現像像を直接転写する直接転写方式プリンタを例に挙げて説明したが、本発明にいう画像形成装置は、転写ベルトを介して現像像を記録用紙に転写する間接転写方式の画像形成装置であってもよい。
【0086】
また、本発明にいう像保持体として、表面層にアモルファスシリコンを含有した感光体を例に挙げて説明したが、本発明にいう像保持体が、表面層にフェノール樹脂を含有するものであってもよく、さらには、表面層にアモルファスシリコンやフェノール樹脂を含有する高硬度タイプの感光体でなくてもよい。
【0087】
さらに、本発明にいう像保持体として、ロール方式を採用した感光体ロールを例に挙げて説明したが、本発明にいう像保持体は、循環ベルト方式を採用した感光体ベルトであってもよい。
【0088】
また、本発明にいう転写定着部として、転写ロールで転写した後定着器で定着する例で説明したが、本発明にいう転写定着部は、転写と定着とを同時に行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 プリンタ
10 感光体ロール
100 加熱制御部
101 ホイートストンブリッジ回路
102 検出部
103 判定部
104 加熱指示部
11 帯電ロール
12 レーザー露光器
13 現像器
14 転写ロール
15 定着器
16 用紙カセット
17 用紙搬送装置
20 クリーニング装置
21 クリーニングブレード
210 先端
211 表面
22 歪みゲージ
221 ゲージパターン部
222 ゲージタブ部
223 ゲージリード
30、31 加熱装置
40 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に像が形成され、該像を該表面に保持する像保持体;
前記像保持体表面に像を形成する像形成部;
前記像保持体表面に形成された像を記録媒体上に転写し定着させる転写定着部;
前記像保持体表面に接触して該表面から付着物を除去する部材本体と、前記部材本体に接触して該部材本体の歪みに応じた信号を出力するセンサ部とを有する清掃部材;および
前記センサ部からの信号に基づいて前記像保持体の少なくとも表面を加熱する加熱部;
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記センサ部からの信号が、前記付着部の除去に必要な歪みに対する実際の歪みの不足を表している場合に前記像保持体の表面を加熱するものであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記加熱部が、前記像保持体の内部に配備された発熱体又は該像保持体に対向して配備された発熱体のうちの少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写定着部が、熱によって前記像を記録媒体上に定着させるものであり、
前記加熱部が、前記転写定着部から排出される熱で熱せされた空気を前記像保持体に吹き付ける吹付装置であることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記清掃部材が、前記部材本体と、該部材本体が前記像保持体に接触する箇所を避けた箇所に付けられた金属膜からなるセンサ部とを有するものであることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記清掃部材が、前記部材本体と、該部材本体が前記像保持体に接触する箇所を避けた箇所に蒸着された金属膜からなるセンサ部とを有するものであることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記像保持体が、アモルファスシリコンおよびフェノール樹脂のうちの少なくともいずれか一方を含有するものであることを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−224274(P2010−224274A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72086(P2009−72086)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】