説明

画像形成装置

【課題】高温な部位を有する定着部でジャムが発生した場合、定着部を冷却するファンを十分に回転させ、定着部の温度を低下させ、ジャム処理での使用者の安全性を高める。
【解決手段】画像形成装置は、トナー像を形成し用紙Pに転写する画像形成部6と、熱により用紙Pに転写されたトナー像を定着させる定着部7と、給紙部4から機外に画像形成済みの用紙Pを排出するまでの搬送路5と、定着部7を冷却するファン9と、定着部7の温度を検出するための温度センサTSと、搬送路5に沿って複数設けられ、用紙Pの存在を検出するための用紙検出センサと、温度センサTSと用紙検出センサの出力に基き、定着部7の温度とジャム発生を検出し、ファン9の制御を行う制御部8を有し、制御部8は、ジャム発生時、定着部7の温度が高いほど、ファン9の回転数を上げる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙にトナー像を転写し、そのトナー像を加熱して定着する複合機、複写機、プリンタ、FAX装置などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複合機、複写機等の画像形成装置には、トナー像を形成し、そのトナー像を用紙に転写し、用紙上のトナー像を定着部により加熱・加圧して定着させるものが存在する。この定着部の温度は、低すぎれば十分にトナー像が用紙に定着せず、一方、温度が高すぎても、溶融したトナーの定着部の部材への付着などが生じる。従って、印刷時の定着部の温度は、使用するトナーに適した温度(例えば、180〜200°C程度)で維持される。そこで、特許文献1に記載のように、定着部の温度が上昇しすぎた場合、冷却を行うためのファンを備える画像形成装置が存在する。
【0003】
具体的に、特許文献1には、画像情報を転写された用紙の定着を行う熱定着手段と、熱定着手段等を冷却する冷却ファンと記熱定着手段の温度を検知する温度検知手段と、冷却ファンの回転数を可変制御する回転制御手段とを有し、温度検知手段で検知した熱定着手段の温度変化に応じ、回転制御手段により冷却ファンの回転数を可変制御する画像形成装置が記載されている。この構成により、熱定着装置の温度をほぼ一定に保とうとする(特許文献1:請求項1、段落[0004]等参照)。
【特許文献1】特開平4−299368号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、定着部での用紙のジャム(詰まり)発生や、画像形成装置内の他の部位でのジャム発生により、画像形成装置が停止した際、定着部に用紙が残留する場合がある。そして、ジャム発生時に定着部で用紙が存在すれば、使用者は、用紙を定着部から取り除くジャム処理を行う必要がある。しかし、定着部には、トナー像の定着のため、使用者が触れるべきではない高温部位がある。従って、定着部のジャム処理に関し、使用者の注意を十分に喚起し、又、使用者の安全性を確保すべきであるという問題がある。
【0005】
尚、特許文献1記載の発明を見ると、特許文献1記載の発明は、熱定着手段の温度を保つものであって、定着部でジャム処理に関する記載はない。又、熱定着手段の冷却用のファンは有するものの、温度維持の観点から見れば、ジャム処理時にはファンを動作させない畏れがあり、使用者の安全性を確保すべきという問題に対応できない。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ジャム発生時、高温な部位を有する定着部で、定着部を冷却するファンを十分に回転させ、定着部の温度を低下させ、十分に注意を喚起し、ジャム処理での安全性を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る画像形成装置は、トナー像を形成し、用紙に転写する画像形成部と、発熱体を備え、熱により用紙に転写されたトナー像を定着させる定着部と、用紙の供給を行う給紙部から前記画像形成部、前記定着部を経て機外に用紙を排出するまでの搬送路と、前記定着部を冷却するファンと、前記定着部の温度を検出するための温度検出体と、前記搬送路に沿って複数設けられ、用紙の存在を検出するための用紙検出体と、前記温度検出体と前記用紙検出体の出力に基き、前記定着部の温度とジャム発生を検出するとともに、前記ファンの制御を行う制御部を有し、前記制御部は、ジャム発生時、前記定着部の温度が高いほど、前記ファンの回転数を上げる制御を行うこととした。
【0008】
この構成によれば、制御部は、定着部でのジャム発生時、定着部の温度が高いほど、ファンの回転数を上げる制御を行うので、ジャム発生時、迅速に定着部の温度を下げ、ジャム処理時での安全性を高めることができる。一方、温度低下に伴い、ファンの回転数が下がるので、省エネ、低騒音化を図ることができる。又、定着部の温度が下がり過ぎないので、ジャム処理後の再印刷の際、定着部での再加熱による定着を行える温度までの復帰に要する時間は長くならず、使用者の利便性が確保される。
【0009】
又、請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記制御部は、ジャム発生時に前記定着部に用紙が存在する場合にのみ、前記ファンにより前記定着部の冷却を行わせることとした。この構成によれば、制御部は、ジャム発生時に定着部に用紙が存在する場合のみ、ファンにより定着部の冷却を行わせるので、ジャム処理で使用者が定着部に触れない場合、定着部の冷却を行わない。従って、ジャム処理後の再印刷の際に定着部を暖め直す必要がほとんど無く、復帰までの時間を短縮することができる。
【0010】
又、請求項3に係る発明は、請求項1又は2の発明において、使用者に対し、メッセージを伝達するための表示部を有し、前記制御部は、ジャム発生時、前記表示部に現在の前記定着部の温度を表示させることとした。この構成によれば、制御部は、定着部でのジャム発生時、表示部に現在の定着部の温度を表示させるので、使用者は、定着部の現在の温度を認識することができ、高温であればうかつに定着部の高温となる部材に触れるべきでは無いことを認識させることができる。従って、ジャム処理における安全性が向上する。
【0011】
又、請求項4に係る発明は、請求項3の発明において、前記制御部は、前記定着部でのジャム処理を行うにあたり、前記ファンの冷却により、印刷時の定着部の温度よりも低く設定される所定温度に達するまでの時間を演算し、その演算結果を前記表示部に表示させることとした。この構成によれば、制御部は、定着部でのジャム発生時、ファンの冷却で安全にジャム処理を行える所定温度に達するまでの時間を演算し、その演算結果を表示部に表示させるので、使用者は、定着部の温度が下がるまでの時間を知り、その時間経過まで待てばよいと認識できる。従って、ジャム処理における安全性が向上する。
【0012】
又、請求項5に係る発明は、請求項4の発明において、前記制御部は、前記定着部の温度が前記所定温度に近づくに従い、前記ファンの回転数を下げる制御を行うこととした。この構成によれば、制御部は、所定温度に近づくに従い、ファンの回転数を下げる制御を行うので、所定温度まで定着部は迅速、確実に冷却されるとともに、定着部の温度が所定温度以下に下がり難くなり、ジャム処理後に、定着部の温度を定着可能な温度にまでの復帰に要する時間が短くなる。
【0013】
又、請求項6に係る発明は、請求項3乃至5の発明において、前記制御部は、ジャム発生時に前記定着部に用紙が存在する場合、前記ファンの冷却により前記所定温度に達した後に、ジャム処理手順を前記表示部に表示させることとした。この構成によれば、制御部は、定着部でのジャム発生時、ファンの冷却により、所定温度に達した後に、ジャム処理手順を表示部に表示させるので、ジャム発生直後など、定着部の温度が未だ高い状態で、使用者がジャム処理作業を開始しないように仕向けることができる。従って、ジャム処理における安全性が向上する。
【0014】
又、請求項7に係る発明は、請求項3乃至6の発明において、前記制御部は、ジャム発生時に前記定着部以外でも用紙の存在が確認された場合、前記表示部に前記定着部以外の場所のジャム処理手順を表示させ、前記定着部でのジャム処理手順の表示を後回しにすることとした。近年の画像形成装置では、連続印刷を行う場合、印刷速度向上のため、通常、機内の搬送路には複数枚の用紙が搬送されているところ、この構成によれば、ジャム発生時に定着部以外でも用紙の存在が確認された場合、表示部に定着部以外の場所のジャム処理手順を表示させ、定着部でのジャム処理手順の表示を後回しにするので、先に定着部以外でのジャム処理作業を行うように使用者を導くことができる。そして、定着部以外でのジャム処理中に、ファンで定着部を冷ますことで、定着部のジャム処理を行う時点で、定着部の温度を確実に下げておくことができ、定着部の温度が下がるまでの使用者の待ち時間を実質的になくすことができる。従って、ジャム処理における安全性が向上する。
【0015】
又、請求項8に係る発明は、請求項4乃至7の発明において、ジャム処理を行うため、装置の筺体を開閉可能するカバーと、前記制御部に接続され、前記カバーの開閉を検出するためのスイッチが設けられ、ジャム発生時、前記所定温度に達する前に、前記カバーが開けられたことを前記制御部が認識した場合、前記制御部は、前記定着部の温度が下がっていない旨を前記表示部に表示させることとした。この構成によれば、所定温度に達する前に、カバーが開けられたことを制御部が認識した場合、制御部は、定着部の温度が下がっていない旨を表示部に表示させるので、使用者が定着部の温度低下前にジャム処理作業を開始しても、定着部が未だ高温状態であることを使用者に伝達することができる。従って、ジャム処理における安全性が向上する。
【0016】
又、請求項9に係る発明は、請求項4乃至7の発明において、ジャム処理を行うため、装置の筺体に、開閉可能なカバーと、前記制御部に接続され、前記カバーの開閉を検出するためのスイッチと、前記制御部の指示に基き音を発する音源とを有し、ジャム発生時、前記所定温度に達する前に、前記カバーが開けられたことを前記制御部が認識した場合、前記制御部は、前記音源に警告音を生じさせることとした。この構成によれば、所定温度に達する前に、カバーが開けられたことを制御部が認識した場合、制御部は、音源に警告音を生じさせるので、定着部が未だ高温状態であることを、音により使用者に伝達することができる。従って、ジャム処理における安全性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明によれば、ジャム発生時、定着部に用紙が存在すれば、ファンで冷却を行うので、使用者の安全性を高めることができる。更に、使用者に注意を喚起する各種の表示を行うので、尚更のこと、使用者の安全性は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図1〜図10を参照しつつ説明する。但し、各実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0019】
(画像形成装置の概略構成)
まず、図1を用いて、本発明の実施形態における複写機1(画像形成装置に相当)の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る複写機1の概略構成を示す正面から見た模型的断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の複写機1は、正面前方に操作パネル2(表示部に相当)を有し、最上部に原稿カバー1aを有し、その下部に画像読取部3を有する。又、複写機1の内部に、給紙部4、搬送路5、画像形成部6、定着部7を主構成として有する。
【0021】
操作パネル2(破線で図示)は、使用者に対するメッセージやメニュー画面を表示し、タッチパネルにより機能の設定入力が可能な液晶表示部21や、複写機1の動作開始を指示するスタートキー22や、数字、記号等の入力用のテンキー部23等が設けられる。従って、使用者は、複写機1の状態確認や、動作設定入力を行うことができる。
【0022】
前記画像読取部3は、上面にコンタクトガラス31を備え、コピー時やスキャン時、コンタクトガラス31に載置された原稿を読み取る。そして、画像読取部3内に、露光ランプ、ミラー、レンズ、イメージセンサ(例えば、CCD)等(いずれも不図示)が配され、原稿に光を照射し、その反射光をイメージセンサに導き、イメージセンサの出力をA/D変換して原稿の画像データを得る。本複写機1は、この画像データに基づき印刷を行って複写する(コピー機能)。尚、原稿カバー1aは、図1の紙面奥側に支点を有し上下に開閉可能であり、コンタクトガラス31上の原稿を押さえる。
【0023】
まず、給紙部4は、複写機1の最下部に設けられ、画像形成部6に向けて、例えば、プリンタ用紙、ラベル用紙、厚紙等の用紙Pを送り出す。そして、給紙部4は、2つのカセット41(本実施形態の複写機1は2つ具備。図1では、上段のものを41a、下段のものを41bとして図示)で構成される。各カセット41は、各サイズ(A3、A4、B4、B5等)の用紙Pを積載可能で、本体から引き出して脱着可能である。
【0024】
そして、各カセット41の用紙搬送方向下流側上部(図1における左上方位置)に給紙ローラ42(本実施形態の複写機1は2本具備。図1では上段のものを42a、下段のものを42bとして図示)が設けられ、最上位の用紙Pが各給紙ローラ42に当接する。画像形成の際、給紙ローラ42は、搬送モータM4(図3参照)の駆動が伝達され、所定の方向(図1では時計方向)に回転駆動し、用紙Pを1枚ずつ搬送路5に送り出す。
【0025】
搬送路5は、本実施形態では、複写機1内を上下方向に貫いて形成され、複写機1内で用紙Pを搬送し、給紙部4から、画像形成部6、定着部7を経て、排出部51を通じて機外まで用紙Pを搬送する。そして、搬送路5には、搬送モータM4等の駆動機構により回転駆動して用紙Pを挟持して搬送する搬送ローラ対52a、52bやレジストローラ対53、その他、用紙Pを案内するガイド(不図示)等が設けられる。レジストローラ対53は、画像形成部6の用紙搬送方向上流側の手前に設けられ、一旦、搬送されてきた用紙Pを止め、転写のため所定のタイミングと速度で用紙Pを画像形成部6に向けて送り出す。又、排出部51には、用紙Pの排出のため、搬送モータM4の駆動が伝達され回転駆動する排出ローラ対54が設けられる。
【0026】
画像形成部6は、図1において、複写機1内の中央左方の位置に配され、画像読取部3で読み取られた原稿の画像データや、ユーザ端末100等から複写機1に入力された画像データ等に基づき、形成すべき画像のトナー像を形成し、用紙Pに転写を行う。そして、画像形成部6は、像担持体としての感光体ドラム61、帯電装置62、露光装置63、現像装置64、転写ローラ65、清掃装置66等で構成される。
【0027】
感光体ドラム61は、画像形成部6の略中央に配され、メインモータM6(図3参照)等で構成される駆動装置で所定の方向(図1では時計方向)に回転駆動し、例えば、アルミ製のドラムの外周面上にOPCやアモルファスシリコン等の感光層を有する。
【0028】
帯電装置62は、図1において感光体ドラム61の右斜め上方に対向して配され、所定の電位で感光体ドラム61の周面を帯電させる。本実施形態では、帯電装置62にコロナ帯電器を用いるが、感光体ドラム61表面を所定の電位に帯電できればよく、帯電ローラや帯電ブラシによるものでもよい。
【0029】
露光装置63は、図1における感光体ドラム61及び帯電装置62の右側方に配され、一様に帯電された感光体ドラム61の周面に、形成すべき画像の画像データに基づき光を感光体ドラム61に対し照射し、感光体ドラム61の周面を走査・露光する。これにより、感光体ドラム61の周面上に静電潜像が形成される。
【0030】
現像装置64は、感光体ドラム61の下方に設けられ、トナーを収容し、トナーを所定の電位に帯電させ、そのトナーを感光体ドラム61の周面上に形成された静電潜像に向けて供給する。具体的には、現像装置64に、周面にトナーを担持する現像ローラ64aが設けられ、現像ローラ64aからトナーが感光体ドラム61に供給される。
【0031】
転写ローラ65は、図1において、感光体ドラム61の左斜め下方に回転可能に支持され、感光体ドラム61上に形成されたトナー像を用紙Pに転写する。そのため、転写ローラ65は、感光体ドラム61に当接し、ニップを形成する。そして、このニップにトナー像と用紙Pが同期して進入し、転写ローラ65にトナーの帯電極性と逆の極性の電圧が印加され、トナー像の用紙Pへの転写がなされる。尚、感光体ドラム61と転写ローラ65により用紙Pが定着部7方向に搬送されるので、感光体ドラム61と転写ローラ65は、用紙Pを搬送する部材としても機能する。清掃装置66は、図1に示すように感光体ドラム61の上方に配され、感光体ドラム61の周面上の残トナー等を除去、回収する。
【0032】
定着部7は、本実施形態では、発熱体H(例えば、ハロゲンヒータ)を内蔵する加熱ローラ71、加圧ローラ72等を有し、用紙Pに転写されたトナー像を加圧・加熱し、用紙Pに定着させる。発熱体Hは、トナー溶融可能温度にまで加熱ローラ71を暖める。加圧ローラ72は、加熱ローラ71に圧接してニップを形成し、このニップにトナー像の転写された用紙Pが進入し、トナーの定着が行われる。尚、加熱ローラ71と加圧ローラ72の一方又は両方に、定着モータM7が接続され(図3参照)、この定着モータM7により加熱ローラ71と加圧ローラ72は回転駆動するので、加熱ローラ71と加圧ローラ72は、用紙Pを搬送する部材としても機能する。又、定着完了後の用紙Pは、排出部51の側方に設けられる排出トレイ55に向けて搬送され、排出される。
【0033】
(カバー開閉機構とカセット41の脱着機構)
次に、図1及び図2に基づき、本発明の実施形態に係る複写機1のカバー開閉機構と、カセット41の脱着機構を説明する。図2(a)は、本発明の実施形態に係る複写機1の側面カバーの開閉を示す、後方から見た斜視図であり、(b)は、複写機1のカセット41部分に注目した斜視図である。
【0034】
まず、図1及び図2に示すように、本実施形態の複写機1の左側面の筐体(カバー)は開閉可能となっている。具体的に、複写機1の左側面におけるカバーは、下方の側面カバー(以下、「下方側面カバーC1」という。)と、上方の側面カバー(以下、「上方側面カバーC2」という。)の2つが開閉可能となっている。
【0035】
図2では、下方側面カバーC1は、閉じた状態を示しているが、下方側面カバーC1のほぼ中央部のレバーC1aを操作すれば、下方側面カバーC1は開く。ジャム発生時、この下方側面カバーC1は、主として、各カセット41から、レジストローラ対53あたりまでで詰まった、若しくは、留まる用紙Pを除去する際に開閉される。
【0036】
一方、図2では、上方側面カバーC2は、開状態を示し、上方側面カバーC2に設けられる把持部(図2では不可視)の操作等により、上方側面カバーC2は開く。この上方側面カバーC2を開くと、画像形成部6や定着部7や排出部51等が露出される。従って、ジャム発生時、上方側面カバーC2は、主として、レジストローラ対53から排出部51にかけて詰まった、若しくは、留まる用紙Pを除去する際に開閉される。
【0037】
尚、図2に示すように、複写機1の後方には、複数の開口部が設けられた通風カバーC3が取り付けられる。この通風カバーC3の内部には、定着部7(加熱ローラ71等)を冷却するためのファン9(詳細は後述)が取り付けられる。例えば、ファン9は、定着部7の各回転体の軸線方向から空気を吹き付ける。この通風カバーC3は、ファン9の羽部分の回転でのけが防止や、複写機1内部にホコリが入ることを防ぐ機能を有する。
【0038】
又、図2(b)に示すように、本実施形態の複写機1では、各カセット41は、引き出して脱着可能であり、ジャム発生時、各カセット41部分で用紙Pが詰まり、又は、留まる場合、使用者は、カセット41を引き出して、用紙Pを取り除くジャム処理を行う。
【0039】
(複写機1のハードウェア構成)
次に、図3に基づき、本発明の実施形態に係る複写機1のハードウェア構成の一例を説明する。図3は、本発明の実施形態に係る複写機1の一例を示すブロック図である。
【0040】
図3に示すように、本実施形態に係る複写機1は、機内に適宜配される制御基板上に設けられる制御部8を有する。制御部8は、複写機1の動作を制御し、例えば、CPU81、記憶部82、計時部83等を備える。又、この制御部8には、インターフェイス(不図示)及びネットワーク等を介し、ユーザ端末100(例えば、パーソナルコンピュータ)が接続される。そして、複写機1は、ユーザ端末100からの画像データに基づき印刷可能である(プリンタ機能)
【0041】
CPU81は、中央演算処理装置であって、記憶部82に格納され、展開される制御プログラムに基づき複写機1の各部の制御や演算を行う。そして、各種制御を行うための記憶装置として、ROM、RAM、HDD等で構成される記憶部82が設けられる。
【0042】
記憶部82のROMは、複写機1の制御用プログラム、制御用データを記憶し、CPU81が制御用プログラムを読み出す場合などに用いられる。RAMは、制御用プログラム等を一時的に展開する場合や、画像形成を行う画像データや複写機1の状態情報を一時的に保存しておく場合などに用いられる。HDDは、大容量の記憶装置であって、制御用プログラムや制御用データ、画像データの保存や、使用者による複写機1の設定情報を保存する場合などに使用される。尚、HDDの変わりに、フラッシュROM等の他の記憶媒体を用いても良い。計時部83は、いわゆるタイマであり、複写機1の制御に必要となる各種時間を計測するが、制御との具体的な兼ね合いは、後述する。
【0043】
そして、本発明の実施に関し、詳細は後述するが、制御部8には、搬送路5に沿って複数設けられ、搬送路5内での用紙Pの存在を検出し、用紙搬送状況の確認やジャム発生を検出するための用紙検出センサ(具体的には、給紙センサS1、S2、レジストセンサS3、定着センサS4、EXITセンサS5の計4種、用紙検出体に相当)や、定着部7(加熱ローラ71)の温度を検出するための温度センサTS(温度検出体に相当)や、上方側面カバーC2及び下方側面カバーC1の開閉を確認するためのスイッチSW1、SW2や、定着部7の加熱ローラ71を冷却するファン9の回転を制御する回転制御回路91が接続され、制御部8は、各センサの出力を受けて、ジャム発生や温度やカバー開閉の検出を行い、ファン9の回転数の回転を制御する。
【0044】
又、制御部8には、操作パネル2が接続され、操作パネル2への指示入力が制御部8に伝達され、制御部8は複写機1を使用者の指示に合わせて動作させる。又、制御部8は、ジャム発生時等、複写機1の状態通知等のメッセージを操作パネル2の液晶表示部21に表示させる。更に、制御部8には音源SGが接続される。音源SGは、例えば、ビープ音や音声を発し、制御部8の指示を受け使用者に対する警告音を発する(詳細は後述)。
【0045】
又、制御部8は、複写機1を構成する画像形成部6、定着部7等と接続され、RAM等に展開される制御プログラムやデータに基づき、例えば、定着部7の発熱体Hへの電力供給を制御し加熱ローラ71の温度をほぼ一定に保つなど、適切に画像形成が行われるように各部の動作を制御する。又、制御部8は、用紙搬送の制御も行い、搬送モータM4や、メインモータM6や、定着モータM7の電力供給のON/OFFを行って、各モータの駆動の制御を行う。尚、各モータの電力供給のON/OFFのタイミングは、計時部83による計時と、用紙搬送速度、画像形成枚数等から、CPU81が算出する。
【0046】
(ジャム発生検出)
次に、図1、3、4に基づき、本実施形態の複写機1におけるジャム発生検出を説明する。図4は、本発明の実施形態に係る用紙検出センサの構成の一例を示す斜視図である。
【0047】
まず、ジャム発生原因を説明する。図1で示すように、複写機1のような画像形成装置では、用紙Pの搬送経路に沿い、給紙ローラ42、搬送ローラ対52a、52b、レジストローラ対53、感光体ドラム61と転写ローラ65のニップ、定着部7、排出ローラ対54等の搬送機能を有する部材が設けられる。そして、用紙搬送では、用紙Pが帯びる静電気や、カセット41内での用紙Pの載置ずれや、溶融トナーの粘着性による加熱ローラ71への巻き付きや、搬送ローラ対52a、52b等の異常や、用紙Pの搬送路5内での斜行など、多種多様な理由のため、用紙Pのジャム(詰まり)が発生し得る。
【0048】
そして、ジャム発生時、そのまま画像形成を続けても、搬送路5で用紙Pが次々にジャムを起こし、状況は悪化するのみなので、制御部8は、展開している制御プログラムに対し、割り込みをかけ、各モータへの電力供給停止等により、画像形成動作を停止させ、例えば、操作パネル2にジャム発生のエラー表示を行う。この表示と、動作停止を受けて、使用者は、ジャム発生を認識し、ジャム処理を行うことになる。そして、使用者によるジャム処理で、詰まった用紙Pや搬送経路に残った用紙Pを全て取り除けば、再度画像形成可能な状態となり、複写機1は、再印刷を開始する。
【0049】
次に、図1を参照しつつ、ジャム発生検出に用いられる用紙検出センサの設置箇所を説明する。用紙搬送状況を確認し、ジャム発生を検出に用いられる用紙検出センサは、搬送路5に沿って複数設けられる。そして、本実施形態の複写機1では、用紙検出センサが例えば、4種設けられる。具体的には、用紙Pが搬送路5に進入を開始する位置である給紙ローラ42の近傍に、用紙供給を検出するための給紙センサS1、S2が、レジストローラ対53の近傍に用紙Pがレジストローラ対53まで到達したことを検出するためのレジストセンサS3が、定着部7への入口(出口でもよい)部分に、定着部7に用紙Pが到達したことを検出するための定着センサS4が、排出ローラ対54の近傍に、用紙Pの排出が行われていることを検出するためのEXITセンサS5が設けられる。
【0050】
次に、図4に基づき、本発明の実施形態に係る用紙検出センサの構成を説明する。図4に示すように、各用紙検出センサ(即ち、給紙センサS1、S2、レジストセンサS3、定着センサS4、EXITセンサS5)は、発光部10と、受光部11と、遮光板12等で構成される。例えば、発光部10と受光部11は、図2の配置では用紙Pの下方に位置し、発光部10は、受光部11に向けて光を発し(例えば、発光ダイオードを具備)、受光部11は、例えば、フォトダイオードを備え、発光部10からの光の到達状態の変化を検出する。遮光板12は、図4に示すように、例えば、扇形板状であり、発光部10と受光部11に挟まれるように配され、その上部に回動軸12aが設けられ、その回動方向は用紙搬送方向と平行である。又、図4に示すように、遮光板12は、用紙Pの搬送経路上に配置され、用紙Pが存在していない状態では、遮光板12は発光部10の発する光を遮光する位置となる。一方、用紙Pが存在する(通過する)状態となると遮光板12と用紙Pが当接して遮光板12が回動し、受光部11が発光部10の光を受光する状態となる。
【0051】
このように本実施形態では、透過型光センサを用いて用紙Pを検出するが、例えば、用紙Pを挟む方向で発光部10と受光部11を設け(図4で言えば上下方向)、用紙Pが存在する状態では用紙自体で遮光状態とされ、用紙Pが存在しない状態では、受光部11が受光するようにし、用紙Pの存在、通過が検出されるようにしてもよい。又、用紙検出センサは、光センサに限られず、用紙Pの存在を検出できるセンサであればよい。
【0052】
そして、各用紙検出センサ(給紙センサS1、S2、レジストセンサS3、定着センサS4、EXITセンサS5)は、制御部8に接続され、制御部8は、各用紙検出センサの出力を監視し、ジャム発生を検出する。例えば、制御部8は、用紙Pの存在を検出しないタイミングなのに用紙Pが存在する旨の入力を各用紙検出センサから受けた場合(例えば既に用紙Pは通過しているはずなのに通過を検出できない)、及び、用紙Pが存在すべきタイミングで存在を検出しない場合に用紙Pのジャムが発生していると判定する。尚、用紙Pが存在すべき、若しくは、存在すべきでないタイミングか否かは、用紙Pを搬送する各モータの周速度(=用紙Pの搬送速度)や、用紙Pのサイズや、各用紙検出センサ間の距離や、計時部83の計時から、CPU81の演算等により判断される。
【0053】
ここで、制御部8は、ジャム発生により画像形成動作を停止させた際、各用紙検出センサの出力から、複写機1内のどの部分で用紙Pが留まっているか(存在するか)を認識でき、その位置等を操作パネル2の液晶表示部21等に表示させる(図7参照)。例えば、画像形成動作停止の際、定着センサS4が用紙Pの存在を検出すれば、制御部は、定着部7の用紙Pを取り除くべき旨の表示や、ジャム処理手順を操作パネル2に表示できる。
【0054】
(ジャム処理)
次に、図1乃至図4に基づき、本実施形態の複写機1のジャム処理の概略を説明する。
【0055】
ジャム発生時、図2に示すように、複写機1の上方側面カバーC2や、下方側面カバーC1は、開閉可能であり、各カセット41は脱着可能となっている。そして、例えば、使用者は、上方側面カバーC2や側面カバーを開け、複写機1内の搬送路5を露出させ用紙Pを取り除いてジャム処理を行う。そして、使用者がジャム処理中に、搬送ローラ対52a、52b等、上記の用紙搬送機能を有する部材が回転等すれば、使用者が負傷したり、ジャム処理が困難となったりするので、画像形成動作の停止状態は、ジャム処理完了を制御部8が認識するまで維持される。
【0056】
このような上方側面カバーC2や下方側面カバーC1の開閉状態を検出し、各モータへの電力供給のON/OFF機能を持たせるため、例えば、図1に示すように、各カバーの開状態でOFF状態、閉状態ではON状態となるスイッチSW1、SW2(例えば、インターロックスイッチ)が複写機1に設けられる。このスイッチSW1、SW2は、図3に示すように制御部8に接続され、制御部8は、各カバーの開閉状態を認識する。
【0057】
そして、制御部8は、上方側面カバーC2と下方側面カバーC1が開けられ、そして、その後閉じられたことを確認し、その際、各用紙検出センサの出力から、搬送経路上の用紙Pが全て取り除かれたことを確認できれば、ジャム処理は完了したと判断し、画像形成動作の停止状態は解除され、再印刷がなされる。
【0058】
ここで、本実施形態の複写機1では、ジャム発生時に定着部7に用紙Pが存在すれば、ファン9により定着部7の温度を低下させ、使用者のジャム処理時の安全性を高める点に特徴がある。そこで、その具体的な内容について、以下、説明する。
【0059】
(ジャム発生時の具体的な制御)
図5乃至図10を用いて、複写機1にジャム発生が発生した場合の制御の流れの詳細を説明する。図5は、本発明の実施形態に係る複写機1のジャム発生と処理の制御の流れの一例を示すフローチャートである。図6は、本発明の実施形態に係る定着部7の温度センサTSとファン9の回転数制御の一例を示す説明図である。図7は、本発明の実施形態に係るジャム処理時の液晶表示部21の表示の一例である。図8は、本発明の実施形態に係る定着部7のジャム処理手順の表示の一例である。図9(a)は、カセット41部分での用紙Pの除去手順を示す表示の一例であり、(b)は、排出部51での用紙Pの除去手順を示す表示の一例である。図10は、所定温度に下がっていないのに上方側面カバーC2が開かれた際の液晶表示部21の表示の一例である。
【0060】
まず、図5に示すスタートは、印刷が開始された後、ジャム発生が発生した時点である(スタート)。そして、何らかの理由により、ジャム発生を制御部8が検出した場合、制御部8は、画像形成動作を中断・停止させる(ステップ♯1)。
【0061】
次に、制御部8は、定着センサS4の出力を確認し、定着部7に用紙Pが存在するか確認する(ステップ♯2)。言い換えると、加熱ローラ71と加圧ローラ72のニップに用紙Pが存在する等、定着部7付近で用紙Pが留まっているかを確認する。もし、定着部7に用紙Pがなければ(ステップ♯2のNo)、制御部8は、操作パネル2の液晶表示部21に定着部7以外でのジャム発生や処理手順を表示させる(ステップ♯3、図9参照)。一方、ジャム発生時、定着部7に用紙Pが存在すれば、制御部8は、温度センサTSの出力を確認し、定着部7(加熱ローラ71)の温度を測定(検出)する(ステップ♯4)。
【0062】
ここで、図1、図3、図6(a)を用いて、温度センサTSを説明する。温度センサTSは、例えば、サーミスタTMを用いて構成され、図1に示すように、定着部7の加熱ローラ71の周面に接触するように配される(例えば、加熱ローラ71の軸線方向の中央部に接触。尚、非接触型でもよい)。そして、図6(a)に示すように、例えば、温度センサTSは、サーミスタTMと抵抗R1で構成され、電源Vcc(不図示の複写機1内の電源装置が電力供給)とグランドに接続される。そして、図3に示すように、温度センサTSは、制御部8に接続され、より具体的には、図6(a)に示すように、抵抗R1とサーミスタTMの間のアナログ電圧Vaが制御部8のCPU81に入力され、これをCPU81は、A/D変換を行う内部回路により、電圧値を把握する。
【0063】
そして、温度に応じサーミスタTMの抵抗値は変化するので、サーミスタTMと抵抗R1の分圧で定まる電圧Vaは温度に応じて変化し、CPU81は、この電圧Vaの値に基づき定着部7(加熱ローラ71)の温度を把握する。例えば、予め温度に応じた電圧Vaを測定し、その測定結果を記憶部82にテーブルとして記憶しておき、CPU81は、記憶部82のテーブルを参照し、加熱ローラ71の温度を認識、把握する。
【0064】
図5に戻り説明を続ける。温度検出の後(ステップ♯4)、制御部8は、加熱ローラ71の温度に応じ、ファン9の回転数を決定し、その回転数でファン9を回転させる(ステップ♯5)。従って、制御部8は、ジャム発生時に定着部7に用紙Pが存在する場合にのみ、ファン9により定着部7の冷却を行わせる。この場合、加熱ローラ71の温度が高ければ高いほどファン9を高速で回転させ、低くなるに従い、ファン9の回転数を下げる。この加熱ローラ71の温度と、ファン9の回転数の関係は、例えば、記憶部82に、加熱ローラ71の温度に対して回転数を定めたテーブルTB1(図6(b)に一例を図示)を記憶しておき、制御部8(CPU81)がテーブルTB1を参照して回転数を定めても良い。又、加熱ローラ71の温度を変数としてファン9の回転数を定める関数(例えば、1次関数や2次関数やその定義域)を記憶部82に記憶しておき、その関数を利用して、加熱ローラ71の温度からファン9の回転数を決定しても良い。
【0065】
更に、図6を用いて、ファン9の回転数制御を説明する。図6(a)に示すように、CPU81は、ファン9の回転数を制御するための回転制御回路91と接続され、回転制御回路91に指示を与えてファン9の回転数を制御する。例えば、回転制御回路91は、n型トランジスタを有し、トランジスタのベースにCPU81が有するD/A変換ポートからの出力が入力され、ファン9が、トランジスタのコレクタやエミッタに接続される。これにより、CPU81のD/A変換ポートからの出力に応じ、ファン9に供給される電流量が変化し、ファン9の回転数制御が行われる。尚、回転制御回路91の構成は、これに限らず、ファン9のモータ形式やCPU81の機能等に合わせ、適宜定めれば良い。
【0066】
そして、CPU81は、記憶部82に記憶される、例えば、図6(b)に示すようなテーブルTB1に基づき、ジャム処理時のファン9の回転数を決定する。そして、図6(b)に示すテーブルTB1によれば、ファン9の回転数は、10段階で変化する。尚、段階数を減らしても良いし、更に段階数を増やしても良い。
【0067】
そして、テーブルTB1の左欄のTは、温度センサTSに基づき検出された加熱ローラ71の温度である。そして、T0〜T7と所定温度(詳細は後述)は、各段階における閾値としての温度である。このT0〜T7と所定温度は、用いるトナーやファン9の冷却能力に合わせて適宜設定される。尚、T0〜T7と所定温度は、「T0>T1>T2>T3>T4>T5>T6>T7>所定温度」という関係がある。又、温度における閾値T0〜T7のそれぞれの差は均等であっても良いし、均等でなくても良い。
【0068】
そして、テーブルTB1の右欄は、加熱ローラ71の温度Tに対するファン9の回転数である。そして、X0〜X9には、「X0>X1>X2>X3>X4>X5>X6>X7>X8>X9>0」という関係がある。そして、このX0〜X9は、ファン9の冷却能力や、ファン9の回転可能な上限の速度等により定まる(例えば、X0は、回転可能な上限値)。即ち、制御部8は、ジャム発生時、定着部7の温度が高いほど、ファン9の回転数を上げる制御を行い、定着部7の温度が、所定温度に近づくに従い、ファン9の回転数を下げる制御を行う。尚、このテーブルTB1では、所定温度未満であれば、ファン9の回転数を抑えるか、若しくは、ファン9を停止させることを示す。
【0069】
この制御部8の制御により、ファン9は温度に応じて回転数が決定され、加熱ローラ71に対し、送風又は吸気を行って冷却を行う。尚、図2に示すように、通風カバーC3の内部にファン9が設けられ、使用者に温風が当たることや、通風カバーC3が高温になることを避けるため、加熱ローラ71に向けて外気の送風を行う方が好ましい。
【0070】
図5に戻り、説明を続けると、ファン9により定着部7の冷却動作(ステップ♯5)とともに、制御部8は、操作パネル2の液晶表示部21に、各用紙検出センサの出力から、用紙Pの存在が確認できた部位を表示させ、合わせて現在の定着部7の温度を表示する(ステップ♯6)。そこで、ステップ♯6の液晶表示部21での表示の一例を図7に示す。
【0071】
図7に示すように、例えば、制御部8は、液晶表示部21の左側部分に、ジャムが発生した旨と、複写機1の模式図と、丸印にて用紙Pが存在が確認できた部分を表示させる。この図7では、カセット41から排出部51までの搬送経路にかけての用紙検出センサで用紙Pの存在が確認され、各用紙Pをジャム処理で取り除く必要があることを示す。
【0072】
そして、図7に示すように、制御部8は、液晶表示部21の右側に、現在の定着部7(加熱ローラ71)の温度を操作パネル2の液晶表示部21に表示させる。更に、制御部8は、定着部7のジャム処理を行う上で推奨する加熱ローラ71の温度である所定温度にまで、ファン9による冷却に要する時間を表示する。尚、図7(a)は、ジャム発生直後の一例を示し、図7(b)は、ある程度、定着部7の冷却が進み、表示の更新がなされ(例えば、1〜数秒に1回の更新)、所定温度到達までの時間が短くなっていくことを示す。例えば、所定温度到達までの時間は、最初は、予め定められた時間を表示し、その後は、単位時間(例えば1秒から数秒)あたりの温度下降率に基づき、CPU81が演算により求めた結果を更新表示しても良い。このように、複写機1は、使用者に対し、メッセージを伝達するための操作パネル2を有し、制御部8は、ジャム発生時、現在の定着部7の温度を表示させ、又、制御部8は、定着部7でのジャム処理を行うにあたり、ファン9の冷却により、印刷時の定着部7の温度よりも低く設定される所定温度に達するまでの時間を演算し、その演算結果を操作パネル2に表示させる。
【0073】
尚、ここで、予め定められる所定温度は、例えば、室温以上、加熱ローラ71の定着時の温度(例えば、180〜200°C)以下の範囲で適宜設定される。より好ましくは、例えば、80〜140°C、より好ましくは、100°C〜120°Cの範囲で設定できる。安全性の観点では、所定温度は、室温に近いほど良いが、そうすると、ジャム処理後の再印刷で、定着部7の温度を定着可能温度に高めるまでの待ち時間が長くなり、使用者の利便性が悪くなる。そこで、安全性と利便性との兼ね合いで、例えば、所定温度を100°C〜120°Cの範囲で設定できる。尚、80°C以下としても構わない。
【0074】
図5に戻り、説明を続けると、ステップ♯6の後、制御部8は、加熱ローラ71の温度が、所定温度にまで下がったかを確認する(ステップ♯7)。もし、加熱ローラ71の温度が所定温度に下がっていれば(ステップ♯7のYes)、制御部8は、定着部7に存在する用紙Pの除去手順を液晶表示部21に表示させる(ステップ♯8)。即ち、制御部8は、ジャム発生時に定着部7に用紙Pが存在する場合、ファン9の冷却により所定温度に達した後に、ジャム処理手順を操作パネル2に表示させる。尚、図8は、定着部7の用紙Pの除去手順を示す液晶表示部21の表示の一例である。尚、図8の表示でも、使用者に注意を喚起するため、定着部7の部材には触れるべきではない旨を表示する。
【0075】
一方、加熱ローラ71が所定温度に下がっていなければ(ステップ♯7のNo)、制御部8は、搬送経路上の定着部7以外の箇所での用紙Pの存在を確認する(ステップ♯9)。例えば、1枚のみの印刷中に定着部7でジャム発生であれば、定着部7以外の箇所での用紙Pの存在は確認できないが、連続印刷の途中でのジャム発生であれば定着部7以外の箇所での用紙Pの存在は、確認される。
【0076】
もし、定着部7以外の箇所に用紙Pがあれば(ステップ♯9のYes)、制御部8は、液晶表示部21に、その定着部7以外の箇所のジャム処理手順を表示させる(ステップ♯10)。即ち、制御部8は、ジャム発生時に定着部7以外でも用紙Pの存在が確認された場合、操作パネル2に定着部7以外の場所のジャム処理手順を表示させ、定着部7でのジャム処理手順の表示を後回しにする。そして、定着部7以外の箇所として、図9(a)がカセット41部分での用紙Pの除去手順を示す表示の一例であり、(b)は排出部51での用紙Pの除去手順を示す表示の一例である。尚、排出部51の用紙除去では、定着部7を露出させる上方側面カバーC2が開けられるので、カセット41部分の用紙除去の必要性があれば、カセット41部分での用紙Pの除去手順を先に表示することが好ましい。
【0077】
そして、定着部7以外の箇所に用紙Pがない場合(ステップ♯9のNo)、及び、ステップ♯10の後、所定温度に達していないのに、上方側面カバーC2が開かれたことを制御部8は、スイッチSW2を利用して確認する(ステップ♯11)。上方側面カバーC2が閉じていれば(ステップ♯11のNo)、ステップ♯2に戻る。一方、上方側面カバーC2が開かれた場合(ステップ♯11のYes)、所定温度にまで加熱ローラ71の温度が下がっていないことを警告する(ステップ♯12)。
【0078】
この警告の方法としては、図10に示すように、制御部8は、液晶表示部21に所定温度にまで加熱ローラ71の温度が下がっていないことを表示させても良いし、制御部8は、音源SGに警告音を出させても良い。即ち、複写機1には、ジャム処理を行うため、装置の筺体を開閉可能する上方側面カバーC2と、制御部8に接続され、上方側面カバーC2の開閉を検出するためのスイッチSW2が設けられ、ジャム発生時、所定温度に達する前に、上方側面カバーC2が開けられたことを制御部8が認識した場合、制御部8は、定着部7の温度が下がっていない旨を操作パネル2に表示させる。あるいは、制御部8は、音源SGに警告音を生じさせる。
【0079】
ステップ♯12の後、制御部8は、上方側面カバーC2が閉じられたかを確認する(ステップ♯13)。上方側面カバーC2が閉じられるまで、確認状態は続き(ステップ♯13のNo)、上方側面カバーC2が閉じられれば(ステップ♯13のYes)、制御部8は、各用紙検出センサの出力を確認し、全ての用紙Pが搬送路5から取り除かれ、ジャム処理が完了したかを確認する(ステップ♯14)。もし、ジャム処理完了を確認すれば(ステップ♯14のYes)、制御部8は、ジャム処理に関する制御を完了し(エンド)、画像形成できなかった用紙Pの再印刷制御に移行する。尚、発熱体Hを動作させ、定着部7を定着可能な温度にまで暖めた後、再印刷は、実行される。一方、ジャム処理完了が確認できなければ(ステップ♯14のNo)、ステップ♯2に戻る。
【0080】
尚、ステップ♯3とステップ♯8の後、制御部8は、上方側面カバーC2又は下方側面カバーC1の開閉の有無を確認し(ステップ♯15)、開閉が確認されなければ、確認作業を続け(ステップ♯15のNo)、確認されれば、ステップ♯14に移行する。
【0081】
このようにして、本実施形態に示す本発明によれば、制御部8は、定着部7でのジャム発生時、定着部7の温度が高いほど、ファン9の回転数を上げる制御を行うので、ジャム発生時、迅速に定着部7の温度を下げ、ジャム処理時での安全性を高めることができる。一方、温度が下がるに従って、ファン9の回転数が下がるので、省エネ、低騒音化を図ることができ、又、定着部7の温度が下がりすぎることもない。又、定着部7の温度は、下がりすぎないので、ジャム処理後の再印刷の際、定着部7での再加熱による定着を行える温度までの復帰に要する時間は長くならず、使用者の利便性が確保される。
【0082】
又、制御部8は、ジャム発生時に定着部7に用紙Pが存在する場合にのみ、ファン9により定着部7の冷却を行わせるので、ジャム処理により使用者が定着部7に触れることがない場合、定着部7の冷却を行わない。従って、ジャム処理後の再印刷の際に定着部7を暖め直す必要がほとんど無く、復帰までの時間が短縮される。又、制御部8は、定着部7でのジャム発生時、表示部(例えば、操作パネル2)に現在の定着部7の温度を表示させるので、使用者は、定着部7の現在の温度を認識することができ、高温であればうかつに定着部7の高温となる部材に触れるべきでは無いことを認識させることができる。
【0083】
又、制御部8は、定着部7でのジャム発生時、ファン9の冷却により、安全にジャム処理を行える所定温度に達するまでの時間を演算し、その演算結果を表示部に表示させるので、使用者は、定着部7の温度がある程度下がるまでの時間を認識でき、その時間の経過まで待てばよいと認識できる。又、制御部8は、所定温度に近づくに従い、ファン9の回転数を下げる制御を行うので、所定温度まで定着部7は迅速、確実に冷却されるとともに、定着部7の温度が所定温度以下に下がり難くなり、ジャム処理後に、定着部7の温度を定着可能な温度にまでの復帰に要する時間が短くなる。
【0084】
又、制御部8は、定着部7でのジャム発生時、ファン9の冷却により、所定温度に達した後に、ジャム処理手順を表示部に表示させるので、ジャム発生後直ぐの定着部7の温度が下がっていない状態で、使用者がジャム処理作業を開始しないように仕向けることができる。従って、ジャム処理における安全性が向上する。又、近年の画像形成装置(例えば複写機1)では、複数枚の用紙Pに印刷を行う場合、印刷速度向上のため、画像形成中、通常、機内の搬送路5には複数枚の用紙Pが連続的に搬送されているところ、この構成によれば、ジャム発生時に定着部7以外でも用紙Pの存在が確認された場合、表示部に定着部7以外の場所のジャム処理手順を表示させ、定着部7でのジャム処理手順の表示を後回しにするので、先に定着部7以外でのジャム処理作業を行うように使用者を導くことができる。そして、定着部7以外でのジャム処理中に、ファン9で定着部7を冷ますことにより、定着部7のジャム処理を行う時点で、定着部7の温度を確実に下げておくことができ、定着部7の温度が下がるまでの使用者の待ち時間を実質的になくすことができる。
【0085】
又、所定温度に達する前に、カバーが開けられたことを制御部8が認識した場合、制御部8は、定着部7の温度が下がっていない旨を表示部に表示させ、又、音源SGに警告音を生じさせるので、使用者が定着部7の温度が下がる前に、ジャム処理作業を開始した際に、定着部7の温度が未だ高温状態であることを使用者に伝達することができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、用紙を搬送路に沿って搬送し、加熱により定着を行う定着部を有する画像形成装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施形態に係る複写機の概略構成を示す正面から見た模型的断面図である。
【図2】(a)は、実施形態に係る複写機の側面カバーの開閉を示す、後方から見た斜視図であり、(b)は、複写機のカセット部分に注目した斜視図である。
【図3】実施形態に係る複写機の一例を示すブロック図である。
【図4】実施形態に係る用紙検出センサの構成の一例を示す斜視図である。
【図5】実施形態に係る複写機のジャム発生と処理の制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【図6】実施形態に係る定着部の温度センサとファンの回転数制御の一例を示す説明図である。
【図7】実施形態に係るジャム処理時の液晶表示部の表示の一例である。
【図8】実施形態に係る定着部のジャム処理手順の表示の一例である。
【図9】(a)はカセット部分での用紙の除去手順を示す表示の一例であり、(b)は排出部での用紙の除去手順を示す表示の一例である。
【図10】所定温度に下がっていないのに上方側面カバーが開かれた際の液晶表示部の表示の一例である。
【符号の説明】
【0089】
1 複写機(画像形成装置) 2 操作パネル(表示部)
21 液晶表示部 4 給紙部
5 搬送路 51 排出部
6 画像形成部 7 定着部
71 加熱ローラ(定着部7の一部) 8 制御部
9 ファン H 発熱体
P 用紙 C1 下方側面カバー(カバーの1種)
C2 上方側面カバー(カバーの1種)
S1、S2 給紙センサ(用紙検出体の1つ)
S3 レジストセンサ(用紙検出体の1つ) S4 定着センサ(用紙検出体の1つ)
S5 EXITセンサ(用紙検出体の1つ) SG 音源
SW1、SW2 スイッチ TS 温度センサ(温度検出体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成し、用紙に転写する画像形成部と、
発熱体を備え、熱により用紙に転写されたトナー像を定着させる定着部と、
用紙の供給を行う給紙部から前記画像形成部、前記定着部を経て機外に用紙を排出するまでの搬送路と、
前記定着部を冷却するファンと、
前記定着部の温度を検出するための温度検出体と、
前記搬送路に沿って複数設けられ、用紙の存在を検出するための用紙検出体と、
前記温度検出体と前記用紙検出体の出力に基き、前記定着部の温度とジャム発生を検出するとともに、前記ファンの制御を行う制御部を有し、
前記制御部は、ジャム発生時、前記定着部の温度が高いほど、前記ファンの回転数を上げる制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、ジャム発生時に前記定着部に用紙が存在する場合にのみ、前記ファンにより前記定着部の冷却を行わせることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
使用者に対し、メッセージを伝達するための表示部を有し、
前記制御部は、ジャム発生時、前記表示部に現在の前記定着部の温度を表示させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記定着部でのジャム処理を行うにあたり、前記ファンの冷却により、印刷時の定着部の温度よりも低く設定される所定温度に達するまでの時間を演算し、その演算結果を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記定着部の温度が、前記所定温度に近づくに従い、前記ファンの回転数を下げる制御を行うことを特徴とする請求項4記載の画像形成装置
【請求項6】
前記制御部は、ジャム発生時に前記定着部に用紙が存在する場合、前記ファンの冷却により前記所定温度に達した後に、ジャム処理手順を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、ジャム発生時に前記定着部以外でも用紙の存在が確認された場合、前記表示部に前記定着部以外の場所のジャム処理手順を表示させ、前記定着部でのジャム処理手順の表示を後回しにすることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
ジャム処理を行うため、装置の筺体を開閉可能するカバーと、
前記制御部に接続され、前記カバーの開閉を検出するためのスイッチが設けられ、
ジャム発生時、前記所定温度に達する前に、前記カバーが開けられたことを前記制御部が認識した場合、前記制御部は、前記定着部の温度が下がっていない旨を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
ジャム処理を行うため、装置の筺体に、開閉可能なカバーと、
前記制御部に接続され、前記カバーの開閉を検出するためのスイッチと、
前記制御部の指示に基き音を発する音源とを有し、
ジャム発生時、前記所定温度に達する前に、前記カバーが開けられたことを前記制御部が認識した場合、前記制御部は、前記音源に警告音を生じさせることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−66500(P2010−66500A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232515(P2008−232515)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】