説明

画像形成装置

【課題】未使用状態に近い感光体ドラムの帯電特性の劣化状態を速やかに解消できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体ドラム(18)の表面に帯電や露光を経て形成された潜像をトナーで現像してトナー像を形成する画像形成装置(1)であって、感光体ドラムの表面に対峙した転写面を有し、このトナー像が転写される転写ベルト(12)と、この転写ベルトに施されており、当該転写ベルトの転写面に研磨剤を供給して感光体ドラムの磨耗を促進させ、この感光体ドラムの未使用時点の表面性に起因した帯電特性の劣化状態を解消させるV字現象解消手段(70,93)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー像を感光体ドラムから中間転写体を経て用紙に出力する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では電子写真方式が用いられており、帯電器が感光体ドラムを予め帯電し、露光部が感光体ドラムの表面に光を照射すると、この表面には静電潜像が形成される。また、現像器はトナーを担持しており、トナーが静電潜像に付着してトナー像を形成する。そして、このトナー像を中間転写体に1次転写し、次いで用紙に2次転写して定着させる。
【0003】
ここで、感光体ドラムの表面には、微量のトナーが用紙に転写されずに残ることがあり、次回の画像形成までに除去する必要がある。このため、研磨剤を利用して感光体ドラムの表面をクリーニングブレードで清掃する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−129450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、初期ドラム、詳しくは、未使用状態に近い感光体ドラムでは帯電特性が劣化する。この現象は、感光体ドラムの表面電位を縦軸、印字枚数を横軸にとれば、帯電から所望の電圧を感光体ドラムに付与しているにも拘わらず、その表面電位がアルファベットの略V字の如くのカーブ形状で現れる(以下、V字現象と称する)。
【0006】
これは、感光体ドラムの表面は、その未使用状態では表面平滑性が高いために磨耗の進行が遅いので付着物が除去されにくい。そして、付着物があることによりさらに磨耗の進行の妨げになって感光体ドラムをさらに削れ難くするからである。
このように、感光体ドラムが未使用状態から脱するまでは表面電位が著しく低下するので、当該V字現象を鑑みた運転条件などの調整が必要になるが、上記従来の技術では、クリーニングブレードのエッジがドラムに接触するのみである。
【0007】
つまり、このクリーニングブレードのエッジ近傍の研磨剤は、現像器からのトナーや当該クリーニングブレードで掻き取られた残留トナーに付着して回収され易いので、このエッジ近傍に滞留し難く、これでは未使用状態に近い感光体ドラムの磨耗を積極的に促進できないとの問題がある。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、未使用状態に近い感光体ドラムの帯電特性の劣化状態を速やかに解消できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の発明は、感光体ドラムの表面に帯電や露光を経て形成された潜像をトナーで現像してトナー像を形成する画像形成装置に適用される。
そして、感光体ドラムの表面に対峙した転写面を有し、このトナー像が転写される転写ベルトと、この転写ベルトに施されており、当該転写ベルトの転写面に研磨剤を供給して感光体ドラムの磨耗を促進させ、この感光体ドラムの未使用時点の表面性に起因した帯電特性の劣化状態を解消させるV字現象解消手段とを具備する。
【0009】
第1の発明によれば、感光体ドラムの駆動によって感光体ドラムの表面には、その潜像をトナーで現像したトナー像が形成され、このトナー像が転写ベルトの転写面に1次転写される。そして、トナー像はこの転写面で重ね合わされて用紙に2次転写される。
ここで、本発明は、未使用状態に近い感光体ドラムでは帯電特性が劣化するV字現象に着目したものである。
【0010】
そして、本発明によれば、V字現象解消手段が転写ベルトに施されており、この転写ベルトの転写面に研磨剤を供給して未使用状態に近い初期ドラムの磨耗を積極的に促進させる。これにより、転写ベルトと感光体ドラムとの線速差も相俟って、この感光体ドラムの表面の磨耗が進行し、帯電特性の劣化状態を速やかに解消させる。この結果、速やかに未使用時点から耐刷されて表面電位の低下が無くなったドラム(以下、耐久ドラムと称す。)に近い状態になり、所望の表面電位を得ることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の構成において、V字現象解消手段は、未使用状態の転写ベルトに対し、その転写面に研磨剤を供給することを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、未使用状態の転写ベルトの研磨作用を改善することができる。転写ベルトが使用状態にある場合には、その転写面に研磨剤が多く付着しており、この研磨剤で感光体ドラムの表面を研磨できる。一方、初期ベルトの状態、例えば、転写ベルトが新たに交換された場合など、未使用状態の転写ベルトでは、この研磨剤の付着を期待できず、感光体ドラムの表面の磨耗を促進できない懸念がある。しかしながら、V字現象解消手段が、未使用状態の転写ベルトに対してその転写面に研磨剤を供給すれば当該懸念もない。
【0012】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、V字現象解消手段は、転写ベルトへの研磨剤の供給を、感光体ドラムの帯電特性が劣化する初期状態から帯電特性が回復する耐久状態に移行するに伴って禁止することを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、転写ベルトへの研磨剤の供給は、初期ドラムの状態では実施するのに対し、耐久ドラムの状態では禁止され、この耐久ドラムの磨耗の進行は遅くされている。よって、感光体ドラムの長寿命化を達成でき、良好な画像形成を長期間に亘って行える。
【0013】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明の構成において、研磨剤は、金属酸化物であることを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、金属酸化物の研磨剤を用いれば、初期ドラムの磨耗は確実に速くなる。
【0014】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明の構成において、感光体ドラムは、その表面に有機系の感光層を有した感光体ドラムであることを特徴とする。
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、有機系の感光層を有した感光体ドラムを組み合わせることで、有効な研磨作用を発揮することができる。また、有機系の感光層を有した感光体ドラムは安価で大量生産が容易である。しかし、その表面は極めて平滑であり、その表面平滑性が初期ドラムに大きな影響を及ぼす一方、特に削られ易く、その磨耗が耐久ドラムに大きな影響を及ぼす懸念があるが、上記V字現象解消手段を備えれば、この感光体ドラムの特性を長期間に亘って維持可能になり、特に顕著な効果を奏する。
【0015】
第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明の構成において、感光体ドラムの表面に接触して帯電させる帯電器をさらに具備することを特徴とする。
第6の発明によれば、第1から第5の発明の作用に加えてさらに、接触帯電式の帯電器を使用した場合においてより効果的である。接触帯電式の帯電器は、コロナ放電式の帯電器による場合に比してオゾンや窒素酸化物が生じないため、画像品質の向上を図ることができるものの、初期ドラムの帯電特性が顕著に劣化する。しかし、上述したV字現象解消手段を備えれば、接触帯電式の帯電器を用いても所望の表面電位を得ることができ、画像形成時における帯電電流の補正も不要になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、転写ベルトの転写面に研磨剤を供給して感光体ドラムの磨耗を積極的に促進させており、未使用状態に近い感光体ドラムを耐久ドラムの状態へ速やかに移行できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例のプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のプリンタのコントローラを含めた構成図である。
【図3】図1の画像形成ユニット周辺の断面図である。
【図4】図2のコントローラによる磨耗促進制御のフローチャートである。
【図5】感光体ドラムの表面電位と印字枚数とに関する実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、画像形成装置の一例であるカラー印刷可能なプリンタ1の構造が概略的に示されている。同図に示された断面はプリンタ1の左側面からみたものである。このため、プリンタ1の前面は同図中の右側に、背面は左側にそれぞれ位置する。
【0019】
同図に示されるように、プリンタ1の装置本体2の上方には排紙トレイ36が設けられ、この排紙トレイ36の近傍には、使用者の各種操作に供される複数の操作キーや、各種情報を表示する画面を配置したフロントカバー5が設けられている。
また、この装置本体2の下方には給紙カセット4が配置され、その収容部40には、枚葉の用紙が積層された状態で収納されている。同図でみて収容部40の右上方には給紙ローラ46が設けられる。
【0020】
そして、用紙は、同図において給紙カセット4の右上方に向けて送出され、この送出された用紙は、装置本体2の内部でプリンタ1の前面に沿って上方に向けて搬送される。
また、給紙カセット4は、プリンタ1の前面側、つまり、図1において右方向に向けて引き出し可能に構成されており、この引き出した状態にて、収容部40に新たな用紙を補充したり、用紙を別の種類の用紙に入れ替え可能となる。
【0021】
装置本体2の内部には、給紙カセット4からの用紙搬送方向でみて下流側に搬送ローラ10、レジストローラ14、画像形成部16及び2次転写部30が順番に配置されている。
画像形成部16には4個の画像形成ユニット17が並設され、各ユニット17には感光体ドラム18がそれぞれ設けられている(図1,3)。この感光体ドラム18は回転自在に設置され、図示しない駆動モータによって図1,3の時計回りにそれぞれ駆動する。
【0022】
本実施例の感光体ドラム18は、例えばφ30mmの直径で形成され、その表面に有機系の感光層を有した単層OPCドラムである(OPC:Organic Photoconductor)。
また、この感光体ドラム18と給紙カセット4との間には露光部15が備えられており(図1)、この露光部15からは、レーザ光が各感光体ドラム18に向けてそれぞれ照射される。そして、これら図1,3に示されるように、各感光体ドラム18の周囲の適宜位置には、帯電器20、現像器24、中間転写ローラ13やクリーニング部50がそれぞれ設けられている。
【0023】
この帯電器20は、図3にも示される如く画像形成ユニット17の下部に位置し、感光体ドラム18に接する帯電ローラ21、及び帯電ローラ21の表面を研磨摺擦にて清掃するブラシを備えた摺擦ローラ22を有し、感光体ドラム18の表面を帯電させる。なお、帯電ローラ21は、例えばエピクロルヒドリンゴム製であり、例えばφ12mmの直径で形成されている。
【0024】
また、現像器24は画像形成ユニット17の左方に配置され、感光体ドラム18に対峙する現像ローラ25を有する。この現像ローラ25は図示しない駆動モータによって同図の反時計回りに駆動する。
なお、この図3の参照符号26はギャップ規制コロである。当該ギャップ規制コロ26は、現像ローラ25の両端に設けられており、感光体ドラム18に連れ回って現像ローラ25と感光体ドラム18とのギャップを設定する。
【0025】
画像形成部16は例えばゴム製の中間転写ベルト(転写ベルト)12を有し、当該中間転写ベルト12は各感光体ドラム18の上方に配置され、この中間転写ベルト12と排紙トレイ36との間には4個のトナーコンテナ23が配設されている(図1)。これら各トナーコンテナ23は、プリンタ1の背面側から前面側に向けて、マゼンタ用、シアン用、イエロー用、そして、ブラック用の順に配設され、このブラック用のトナーコンテナの容量が最も大きく構成される。
【0026】
2次転写部30には2次転写ローラ31が備えられ、この転写ローラ31は転写ベルト12に対して斜め下方から圧接可能に構成されている。これら転写ベルト12と2次転写ローラ31とは、トナー像を用紙に転写するためのニップ部を形成する。
また、用紙搬送方向でみて2次転写部30の下流側には、定着部32、排出分岐部34及び排紙トレイ36が順番に配置されている。
【0027】
本実施例では、2次転写部30と手差しトレイ3との間に両面印刷搬送路38が形成されている。この両面印刷搬送路38は、排出分岐部34から装置本体2の前面側で分岐して下方に向けて延び、レジストローラ14の上流側に連結している。
ここで、本実施例のトナーには、微量の研磨剤(酸化チタン、シリカ、アルミナなどの金属酸化物)が添加されている。上記のクリーニング部50は、図3に示されるように、感光体ドラム18の回転方向でみて中間転写ローラ13との転写位置の下流側にて、この感光体ドラム18に向けて開口したハウジング51を備えており、このハウジング51の適宜位置に、クリーニングブレード52やトナー回収部80を有している。
【0028】
具体的には、クリーニングブレード52は、ハウジング51の下端に固定される亜鉛鋼板の本体や、この本体に溶着されたポリウレタンゴム製のブレード部からなり、このブレード部のエッジが感光体ドラム18の回転軸線に沿って延びている。そして、当該エッジが感光体ドラム18の回転軸線よりも低い位置にてカウンタ方向で接し、感光体ドラム18の表面に付着した研磨剤を含む残留トナーや放電生成物などを掻き取っている。
【0029】
このクリーニングブレード52によって感光体ドラム18の表面から掻き取られた残留トナー等は、トナー回収部80から回収される。
詳しくは、トナー回収部80は、ハウジング51の底面近傍にスクリュー88を有する。このスクリュー88は、図3でみてクリーニングブレード52の右側に設置されており、感光体ドラム18の回転軸線方向に沿って延び、その先端が図示しない駆動モータに連結されている。そして、この駆動モータが駆動すると、ハウジング51内の残留トナー等は、スクリュー88を経由して回収容器に集められる。
【0030】
一方、上述した中間転写ベルト12はクリーニング部(V字現象解消手段)70で清掃される。
本実施例のクリーニング部70は、中間転写ベルト12と2次転写ローラ31との圧接位置とは反対側に設けられている(図1)。
より具体的には、このクリーニング部70は、転写ベルト12の走行方向でみてプリンタ1の背面側に配置されたマゼンタ用の画像形成ユニット17の上流側に設けられ、クリーニングローラやスクレーパ等を有する。
【0031】
当該クリーニングローラは、例えば導電性ナイロンのブラシで形成されており、図示しない駆動モータによって回転し、上記ゴム製の転写ベルト12の転写面に接触して清掃する。
これにより、このクリーニングローラは、転写ベルト12の転写面に付着した研磨剤を含む残留トナーや用紙から出た紙粉などを除去し、この転写ベルト12の転写面を清掃する。また、当該スクレーパはクリーニングローラに接触して掻き取っており、このクリーニングローラから掻き取られたトナーなどは、例えば送りローラを用いて別の回収容器に集められる。
【0032】
ところで、上記感光体ドラム18の表面は、その使用状態に応じて積極的な磨耗促進や磨耗抑制が図られる。
本実施例では、クリーニング部70の上記クリーニングローラ近傍に、研磨剤補給部71が設置されており、この研磨剤補給部71の容器は、上記研磨剤をクリーニングローラの周壁に供給可能な開口を有している。
【0033】
そして、このクリーニングローラへの研磨剤の供給を感光体ドラム18の使用状態や転写ベルト12の使用状態に応じて使い分けており、これは、図2に示されたコントローラ90からの駆動信号によって実施される。
詳しくは、コントローラ90は、初期状態判定部92や研磨実行部(V字現象解消手段)93を有する。
【0034】
初期状態判定部92は、初期ドラムであるか否か、及び、初期ベルトであるか否かを判別し、その判定結果を研磨実行部93に出力する。そして、この研磨実行部93は、初期ドラムに対する中間転写ベルト12の研磨レートを引き上げる場合に、研磨剤を供給する。
図4を参照すると、コントローラ90による磨耗促進制御のフローチャートが示されている。以下、プリンタ1の本発明に係る作用について説明する。
【0035】
図4のステップS401では、初期状態判定部92が初期ドラムであるか否か、例えば、その感光体ドラム18の表面電位が所望の電圧に達しておらず、帯電特性が劣化している感光体ドラム18であると擬制可能な基準所定枚数(例えば計10,000枚)等に達したか否かを判別する。
そして、例えば計5,000枚分の出力が終了した旨を判定した場合には、感光体ドラム18の表面電位が下降して帯電特性が劣化しつつある初期ドラムと擬制できるため、YESと判定してステップS402に進む。
【0036】
次に、このステップS402では、初期状態判定部92が初期ベルトであるか否か、具体的には、感光体ドラム18との接触期間が短く、中間転写ベルト12で感光体ドラム18の表面を十分には研磨できない未使用状態にあるか否かを判別する。
そして、初期状態判定部92は、初期ベルト、例えば新たな中間転写ベルト12に交換されて間もない場合であり、当該状態の中間転写ベルト12が感光体ドラム18に接触してもその表面電位を低下させるときにはYESと判定してステップS403に進み、研磨実行部93は磨耗促進制御を実行する。
【0037】
詳しくは、このステップS403における研磨実行部93は、上述したクリーニング部70に対し、その研磨剤補給部71の容器を開放させる駆動信号を出力する。これにより、当該容器から研磨剤が上記クリーニングローラに供給されて中間転写ベルト12の転写面に付着する。そして、感光体ドラム18の表面はその新たに供給された研磨剤を用いて転写ベルト12との接触で研磨されて一連のルーチンを抜ける。
【0038】
一方、上記ステップS402にて、中間転写ベルト12が初期ベルトでない耐久ベルトの場合、例えば新たな中間転写ベルト12に交換されてから相当の期間が経過したとき、若しくは、プリンタ1の印字モードが高濃度に設定されて感光体ドラム18の研磨を行う研磨剤が多いとき、又は、その印字モードが低濃度の設定であっても、現像器24の内部で劣化したトナーを排出し、このトナーをクリーニング部50に回収させるトナー吐き出しモードに設定されているとき等、当該状態の中間転写ベルト12が感光体ドラム18に接触すればその表面電位を同値で保持、又は上昇できるときにはステップS404に進み、研磨実行部93は磨耗促進制御をやはり実行する。
【0039】
しかし、このステップS404における研磨実行部93は、上述したクリーニング部70に対して研磨剤補給部71の容器を開放する駆動信号を出力しない。この場合には、現像器24からのトナーに含まれる研磨剤が中間転写ベルト12の転写面に付着し得るからである。そして、感光体ドラム18の表面は、転写ベルト12の転写面に既に付着している研磨剤を用い、転写ベルト12との接触で研磨されて一連のルーチンを抜ける。
【0040】
また、上述したステップS401において、上述した帯電特性が劣化している感光体ドラム18であると擬制可能な基準所定枚数(例えば計10,000枚分)の出力が終了した旨を判定した場合には、感光体ドラム18の表面電位は上昇に転じた耐久ドラムの状態と擬制できる。そこで、研磨実行部93は磨耗抑制制御、詳しくは、仮に上記研磨剤容器からの研磨剤がそのクリーニングローラに供給されていたときには、この研磨剤の供給を禁止して一連のルーチンを速やかに抜ける。
【0041】
再び図1に戻り、上記プリンタ1が印刷を行う際は、給紙ローラ46によって給紙カセット4から用紙が1枚ずつ分離して送出される。送出された用紙はレジストローラ14に到達する。このレジストローラ14は、用紙の斜め送りを矯正しつつ、画像形成部16で形成されるトナー像との画像転写タイミングを計りながら、用紙を所定の給紙タイミングにて2次転写部30へと送出する。
【0042】
一方、図2の入力ポート91は、印刷の元になる画像データが外部から受信可能に構成されている。この画像データは、文字や符号、図形、記号、線図、模様等の各種の画像がデータ化されたものである。そして、このデータに基づき、コントローラ90では光の照射などを制御する。
詳しくは、各感光体ドラム18に対し、イレーサランプ19が点灯し(図3)、帯電器20が感光体ドラム18の表面をそれぞれ帯電する。
【0043】
次いで、露光部15が感光体ドラム18の表面にレーザ光をそれぞれ照射すると、各感光体ドラム18の表面には静電潜像が作られ、この静電潜像から各色のトナー像が形成される。
各トナー像は中間転写ベルト12に重ね合わされ(1次転写)、2次転写部30にて用紙に2次転写される。なお、感光体ドラム18の表面に残留したトナーはクリーニング部50で除去され、また、中間転写ベルト12の転写面に残留したトナーは上述したクリーニング部70で除去される。
【0044】
続いて、用紙は未定着トナー像を担持した状態で定着部32に向けて送られ、この定着部32にて加熱及び加圧され、トナー像が定着される。その後、定着部32から送出された用紙は排出ローラ35を介して排紙トレイ36に排出され、高さ方向に積層される。
この片面印刷に対し、両面印刷を行う場合には、定着部32から排出された用紙は、排出分岐部34でその搬送方向が切り替えられる。
【0045】
つまり、片面に印刷された用紙は装置本体2内に引き戻され、両面印刷搬送路38に搬送される。続いて、この用紙はレジストローラ14の上流側に向けて送出され、2次転写部30に向けて再び送られる。これにより、用紙の未だ印刷がされていない面にトナー像が転写される。
ところで、上述の初期状態判定部92では、印字枚数を計測して感光体ドラム18の使用状態を判別しているが、必ずしもこの例に限定されるものでなく、例えば、感光体ドラム18の表面電位をモニタしておき、この検出結果に基づいて初期ドラムの状態や耐久ドラムの状態を判別することもできる。
【0046】
一方、上記実施例では、粉体の研磨剤を想定して説明しているが、棒状に成型された研磨剤を、研磨実行部93からの駆動信号に基づいて中間転写ベルト12の転写面に接触及び離間させても良い。また、中間転写ベルトに対して研磨機能を有するローラが配置されている場合には、棒状に成型された研磨剤を研磨ローラに接触及び離間させても良い。
【0047】
以上のように、本実施例によれば、感光体ドラム18の駆動によって感光体ドラム18の表面には、その潜像をトナーで現像したトナー像が形成され、このトナー像が中間転写ベルト12の転写面に1次転写される。そして、トナー像はこの転写面で重ね合わされて用紙に2次転写される。
ここで、仮にシリコン化合物を添加し、少ない印字枚数で磨耗し易い性質を有した単層のOPCドラムを選択しても、従前の中間転写ベルト12のみでは、印字枚数が約20,000枚に達するまでは感光体ドラム18の表面、より具体的には、帯電の際に生じたガスに曝され、酸化劣化する極表層部分は削れ難い。
【0048】
そして、初期ドラムでは帯電特性が劣化する。この現象は、図5の1点鎖線で示されるように、感光体ドラム18の表面電位を縦軸、印字枚数を横軸にとれば、帯電から所望の電圧を感光体ドラム18に付与しているにも拘わらず、その表面電位がアルファベットの略V字の如くのカーブ形状で現れる(V字現象)。
【0049】
なお、同図の破線はコロナ放電式の帯電器による場合である。表面電位の低下傾向は感光体ドラム18に直接に接触する帯電器20と同様である。しかし、本実施例で示した接触式の帯電器20はコロナ放電式よりもV字現象が顕著に現れることが分かる。
より具体的には、感光体ドラム18の想定される使用期間(耐久保証)の約1/10程度の期間が経過、例えば印字枚数が約10,000枚に達するまで、若しくは、この感光体ドラム18の表面が約1〜2μm(1μm=1×10−6m)ほど磨耗するまでは、その表面電位が低下し続けて最小値に達する。これが初期ドラムの特徴である。その後、この表面電位は上昇に転じてこの初期ドラムから耐久ドラムの状態に移行する。続いて、その表面電位がさらに上昇して例えば印字枚数が約50,000枚に達すると所望の値に回復する。
【0050】
そこで、本実施例では、V字現象解消手段が中間転写ベルト12に施されており、この転写ベルト12の転写面に研磨剤を供給して初期ドラムの磨耗を積極的に促進させる。これにより、転写ベルト12と感光体ドラム18との線速差も相俟って、この感光体ドラム18の表面の磨耗が進行し、帯電特性の劣化状態を速やかに解消させる。この結果、未使用時点から速やかに耐久ドラムに近い状態になり、所望の表面電位を得ることができる。
【0051】
この点について詳述する。クリーニング部70の研磨剤補給部71の容器から研磨剤を供給すると、図5の実線で示されるように、印字枚数が約10,000枚に達するまでに感光体ドラム18の磨耗が進み、感光体ドラム18の表面電位が上昇に転ずる。次いで、約20,000枚に達するまでにはその表面電位がさらに上昇し、感光体ドラム18の表面電位の大きな低下を抑制できた。
【0052】
また、中間転写ベルト12が初期ベルトでない、つまり、この転写ベルト12が使用状態にある場合には、その転写面に研磨剤が多く付着しており、この研磨剤で感光体ドラム18の表面を研磨できる。一方、初期ベルトの状態、例えば、転写ベルト12が新たに交換された場合など、未使用状態の転写ベルト12では、この研磨剤の付着を期待できず、感光体ドラム18の表面の磨耗を促進できない懸念がある。しかし、研磨実行部93が、未使用状態の転写ベルト12に対してその転写面に研磨剤を供給する信号を出力すれば当該懸念もない。
【0053】
さらに、中間転写ベルト12への研磨剤の供給は、初期ドラムの状態では実施するのに対し、耐久ドラムの状態では禁止され、この耐久ドラムの磨耗の進行は遅くされている。よって、感光体ドラム18の長寿命化を達成でき、良好な画像形成を長期間に亘って行え、プリンタ1の信頼性が向上する。
さらにまた、酸化チタン等の研磨剤を用いれば、初期ドラムの磨耗は確実に速くなる。
【0054】
また、有機系の感光層を有したOPCドラム18は安価で大量生産が容易である。しかし、その表面は極めて平滑であり、その表面平滑性が初期ドラムに大きな影響を及ぼす一方、特に削られ易く、その磨耗が耐久ドラムに大きな影響を及ぼす懸念があるが、上記V字現象解消手段を備えれば、このOPCドラム18の特性を長期間に亘って維持可能になり、特に顕著な効果を奏する。
【0055】
さらに、接触帯電式の帯電器20は、コロナ放電式の帯電器による場合に比してオゾンや窒素酸化物が生じないため、画像品質の向上を図ることができるものの、初期ドラムの帯電特性が顕著に劣化する。しかし、上述したV字現象解消手段を備えれば、接触帯電式の帯電器20を用いても所望の表面電位を得ることができ、画像形成時における帯電電流の補正も不要になる。
【0056】
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施例では、画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているが、本発明の画像形成装置は、複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
【0057】
そして、この場合にも上記と同様に、未使用状態に近い感光体ドラムの帯電特性の劣化状態を速やかに解消できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0058】
1 プリンタ(画像形成装置)
12 中間転写ベルト(転写ベルト)
18 感光体ドラム
20 帯電器
70 クリーニング部(V字現象解消手段)
93 研磨実行部(V字現象解消手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムの表面に帯電や露光を経て形成された潜像をトナーで現像してトナー像を形成する画像形成装置であって、
前記感光体ドラムの表面に対峙した転写面を有し、前記トナー像が転写される転写ベルトと、
この転写ベルトに施されており、当該転写ベルトの転写面に研磨剤を供給して前記感光体ドラムの磨耗を促進させ、この感光体ドラムの未使用時点の表面性に起因した帯電特性の劣化状態を解消させるV字現象解消手段と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記V字現象解消手段は、未使用状態の転写ベルトに対し、その転写面に研磨剤を供給することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置であって、
前記V字現象解消手段は、前記転写ベルトへの研磨剤の供給を、前記帯電特性が劣化する初期状態から前記帯電特性が回復する耐久状態に移行するに伴って禁止することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記研磨剤は、金属酸化物であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記感光体ドラムは、その表面に有機系の感光層を有した感光体ドラムであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記感光体ドラムの表面に接触して帯電させる帯電器をさらに具備することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−112820(P2011−112820A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268384(P2009−268384)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】