画像形成装置
【課題】装置を小型化した場合にもレジストレーションロールから転写ロール間の用紙搬送性を安定させる画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体上に生成されたトナー像を中間転写体に一次転写し、中間転写体上のトナー像を転写材に二次転写して画像を形成する装置であって、中間転写体上のトナー像の転写位置に転写材を搬送する搬送経路に、転写材をガイドするガイド部材が設けられる。ガイド部材は、転写材を中間転写体に案内する第1のガイド部と、転写材トレイから搬送された転写材の搬送方向を第1のガイド部側へ変化させる突出部を有する第2のガイド部と、第1のガイド部により中間転写体に沿って搬送される転写材を転写位置に案内する第3のガイド部と、からなり、第3のガイド部の上方先端位置が、第2のガイド部の突出部と第1のガイドの上方先端位置とを結んだ直線と中間転写体との交点より上方に位置する。
【解決手段】本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体上に生成されたトナー像を中間転写体に一次転写し、中間転写体上のトナー像を転写材に二次転写して画像を形成する装置であって、中間転写体上のトナー像の転写位置に転写材を搬送する搬送経路に、転写材をガイドするガイド部材が設けられる。ガイド部材は、転写材を中間転写体に案内する第1のガイド部と、転写材トレイから搬送された転写材の搬送方向を第1のガイド部側へ変化させる突出部を有する第2のガイド部と、第1のガイド部により中間転写体に沿って搬送される転写材を転写位置に案内する第3のガイド部と、からなり、第3のガイド部の上方先端位置が、第2のガイド部の突出部と第1のガイドの上方先端位置とを結んだ直線と中間転写体との交点より上方に位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関し、より詳細には、画像形成装置の用紙搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特に小型化の画像形成装置において、用紙を、給紙トレイからほぼ最短距離で上方に搬送し、画像の転写を行った後定着器に導き、装置上方の排出トレイへ排出する構成が採用されている。これは、用紙の搬送経路を短くすることができるため、装置の小型化やスループットの向上が達成できることによる。
【0003】
給紙トレイから供給された用紙は、まず、レジストレーションロール(以下、「レジロール」とも称する。)により、用紙の姿勢が制御された後、上方に搬送されて、転写器の転写ニップ位置に搬送される。転写ニップ位置に用紙を搬送する際、用紙の挙動や帯電を安定させ、トナーの飛散や画質低下を防止するため、用紙を像担持体側に沿わせて搬送することが必要である。このため、転写ニップ位置の近傍において、用紙をガイドするガイド部材を設け、用紙の転写ニップ位置への突入姿勢を制御することが行われている(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
この部分においては、重力的な影響を極力小さくし、安定的な搬送を実現するために、転写ニップ位置に対して略垂直に用紙を搬送することが提案されている。ただし、レジロールから転写ロール間では、転写ニップ位置での用紙のスリップを防止するために、用紙に適切な撓みを付ける必要があり、ガイド部材の手前側で用紙の撓みスペースを設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−123848号公報
【特許文献2】特開2007−15845号公報
【特許文献3】特許第4208495号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
用紙の撓みの効果を利用する場合には、レジロールと転写ロールとの間に用紙が撓むことが可能なだけの十分な距離が必要である。このため、垂直搬送を前提としたシステムでは、レジロールと転写ロールとの垂直距離を大きくする必要があり、装置の小型化への障害となる。
【0007】
また、特に中間転写体を用いた場合、装置の小型化、省スペースの観点から、ドライブロールを転写ロールのバックアップロールとして用いることが多い。このドライブロールを小径化した場合には、ドライブロールにラップさせるベルト量を確保するために、ベルトの進入角度がベルトに対して急となり、用紙の先端がベルトに当接したときの衝撃により、形成された画像の乱れが生じたり、用紙や部材へのダメージにつながる恐れが生じたりする。したがって、用紙をベルトに沿わせて曲げる必要がある。このとき、用紙は重力の影響を受けやすくなるため複雑な挙動をしてしまい、用紙の撓みだけでは全くその挙動を制御することができない。また、用紙の垂直搬送を前提とした用紙ガイドでは、その制御は不十分である。このような問題は、例えば両面印字の場合等、用紙の先端カールが大きくなった場合にさらに顕著となる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、装置を小型化した場合にもレジストレーションロールから転写ロール間の用紙搬送性を安定させることが可能な、新規かつ改良された画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、静電潜像担持体上の静電潜像を現像して生成されたトナー像を中間転写体に一次転写して、中間転写体に一次転写されたトナー像を転写材トレイより搬送される転写材に二次転写して、転写材に画像を形成する画像形成装置が提供される。かかる画像形成装置は、中間転写体上のトナー像の転写位置に転写材を搬送する搬送経路に、転写材をガイドするガイド部材が設けられ、ガイド部材は、転写材を中間転写体に案内する第1のガイド部と、転写材トレイから搬送された転写材の搬送方向を第1のガイド部側へ変化させる突出部を有する第2のガイド部と、第1のガイド部により中間転写体に沿って搬送される転写材を転写位置に案内する第3のガイド部と、からなり、第3のガイド部の上方先端位置が、第2のガイド部の突出部と第1のガイドの上方先端位置とを結んだ直線と中間転写体との交点より上方に位置することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、転写材トレイから搬送され、第2のガイド部の突出部により第1のガイド部側に案内された転写材は、その先端が第1のガイド部に沿って中間転写体まで案内される。そして、中間転写体に当接した転写材は、重力等により一旦中間転写体から離れる。そして、転写材の先端は、第3のガイド部に保持される。その後、転写材は第3のガイド部により再び中間転写体に案内され、さらに転写位置まで案内される。このように構成することにより、装置が小型化した場合にも転写材の搬送性を安定させることができる。
【0011】
ここで、ガイド部材は、垂直方向に対する転写位置へ進入する中間転写体の角度が40°以上であり、第1のガイド部と転写位置へ進入する中間転写体とのなす角度は30°以下となるように構成することができる。
【0012】
また、第1のガイド部の上方先端は、転写位置から所定距離以上離隔されるようにする。
【0013】
さらに、少なくとも第1のガイド部は、画像装置本体側に設けられ、第3のガイド部は、中間転写体上のトナー像を転写材に転写する転写ユニットに設けられるようにしてもよい。
【0014】
また、第2のガイド部と第3のガイド部とは一体に形成することもできる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、装置を小型化した場合にもレジストレーションロールから転写ロール間の用紙搬送性を安定させることが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す概略説明図である。
【図2】同実施形態に係る用紙搬送機構の構成を示す説明図である。
【図3】同実施形態に係る用紙搬送機構の構成を示す説明図である。
【図4】従来の画像形成装置における低温低湿環境下での放電抜け発生レベルを示すグラフである。
【図5】同実施形態に係る画像形成装置における低温低湿環境下での放電抜け発生レベルを示すグラフである。
【図6】衝突バンディング発生レベルを示すグラフである。
【図7A】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7B】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7C】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7D】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7E】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7F】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7G】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7H】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る用紙搬送機構の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.第1の実施形態>
[画像形成装置の構成]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置100の概略構成について説明する。なお、図1は、本実施形態に係る画像形成装置100の概略構成を示す概略説明図である。
【0019】
本実施形態にかかる画像形成装置100は、例えばレーザプリンタや複写機、ファクシミリ等である。画像形成装置100の一例として、図1に、4つのローラ152a、152b、152c、152dによって懸架される転写ベルト150上に一次転写されたトナー像を用紙Pに対して二次転写して画像を得る方式の画像形成装置100を示す。かかる画像形成装置100は、用紙供給ユニット110と、画像形成ユニット120と、定着ユニット(図示せず。)とを備える。
【0020】
用紙供給ユニット110は、後述する画像形成ユニット120により形成されたトナー像を転写させる用紙Pをスタックし、用紙Pを転写ローラ170へ出力するユニットである。
【0021】
画像形成ユニット120は、用紙Pに転写するトナー像を形成するユニットであり、例えば4色(ブラック、シアン、イエロー、マゼンタ)のトナー像を形成するため4つの画像形成ユニット120B、120C、120Y、120Mを有する。
【0022】
画像形成ユニット120B、120C、120Y、120Mはそれぞれ、静電潜像が形成される感光体121と、感光体121の周面を帯電する帯電ローラ122と、帯電された感光体121の周面を露光して静電潜像を形成する露光装置123とを備える。さらに、画像形成ユニット120は、現像剤であるトナーを攪拌する攪拌器124と、攪拌器124から供給されたトナーを感光体121に形成された静電潜像に付着させて、トナー像を形成する現像ローラ125と、トナー像を転写ベルト150に転写した後、感光体121上に残存したトナーを除去するクリーニングブレード126とを備える。また、トナー像を転写ベルト150に転写させるための転写ローラ140が、転写ベルト150を介して感光体121と対向して配置される。
【0023】
かかる画像形成装置100は、画像データに応じて画像形成ユニット120により各色のトナー像を生成して、中間転写体である転写ベルト150に順次転写させて重ね合わせることによりフルカラートナー像を生成する。フルカラートナー像は、転写ローラ170とローラ152aとにより構成される二次転写部にて、用紙供給ユニット110から搬出された用紙Pに一括して転写される。フルカラートナー像が転写された用紙Pは、定着ユニットへ搬送される。定着ユニットにおいて、熱や圧力などの手段によって用紙Pにフルカラートナー像が固定される。一方、転写ベルト150は、二次転写部にてフルカラートナー像を用紙Pへ転写した後、クリーナー(図示せず。)により転写ベルト150上に残存するトナーを除去される。
【0024】
以上、本実施形態にかかる画像形成装置100の構成について説明した。本実施形態に画像形成装置100では、装置の小型化を可能にするとともに、用紙や部材へのダメージを低減するために、用紙供給ユニット100から供給された用紙Pの姿勢を制御するレジストレーションロール(図2の符号180a、180b)と転写ロール170との間に用紙ガイドを設けている。以下、図2〜図7Hに基づいて、用紙ガイドを用いた本実施形態に係る用紙搬送機構について詳細に説明する。
【0025】
なお、図2および図3は、本実施形態に係る用紙搬送機構の構成を示す説明図である。図4は、従来の画像形成装置における低温低湿環境下での放電抜け発生レベルを示すグラフである。図5は、本実施形態に係る画像形成装置における低温低湿環境下での放電抜け発生レベルを示すグラフである。図6は、衝突バンディング発生レベルを示すグラフである。図7A〜図7Hは、本実施形態に係る用紙ガイド191、192により形成された用紙搬送経路を通過する用紙Pの挙動を示す説明図である。
【0026】
[用紙搬送機構の構成]
レジロールから転写ロール170へ用紙Pを搬送する本実施形態の用紙搬送機構は、図2に示すような用紙ガイド191、192により構成される。用紙ガイド191、192は対向して設けられ、用紙供給ユニット110から排出された用紙Pは、レジロール180a、180bを通過後、用紙ガイド191、192の間(用紙搬送経路)を通過し、転写ロール170へ導かれる。
【0027】
第1の用紙ガイド191は、用紙Pの先端を転写ベルト150に用紙Pを導く部材である。第1の用紙ガイド191は、画像形成装置100本体に設けられている。第2の用紙ガイド192は、レジロール180a、180bにより姿勢が制御された用紙Pの先端を第1の用紙ガイド192へ導き、第1の用紙ガイド191で折り返された用紙Pの先端を転写ロール170へ導く部材である。第2の用紙ガイド192は、転写ロール170等を備える転写ユニット側に設けられている。図2の二点鎖線は転写ユニットの外形を表している。
【0028】
(用紙ガイドの構成要件)
このような本実施形態の用紙ガイド191、192は、以下の構成要件を満たすように構成されている。まず、図2に示す点A、B、C、Xを以下のように定義する。
点A:第2の用紙ガイド192の用紙搬送経路における突出点
点B:第1の用紙ガイド191の先端位置
点C:第2の用紙ガイド192の先端位置
点X:点Aと点Bとを結んだ直線と、転写ベルト150との交点
また、ローラ152d、152a間の転写ベルト150について、以下の角度を設定する。
θ1:垂直方向に対するローラ152d、152a間の転写ベルト150の角度
θ2:第1の用紙ガイド191とローラ152d、152a間の転写ベルト150とのなす角
【0029】
このとき、用紙ガイド191、192は、
要件(1):θ1≧40°
要件(2):θ2≦30°
要件(3):垂直方向における点Xの位置≦垂直方向における点Cの位置
を満たすように構成される。これは、以下の理由により決定されている。
【0030】
まず、θ1について、要件(1)は、図4および図5に示す低温低湿環境下での放電抜け発生レベルに基づき設定される。図4および図5は、転写ロール170における転写電圧を変化させていったとき、画像抜けの発生レベルを官能評価によって判定した結果を示すグラフである。官能評価グレードは、数値が小さいほど良好であることを示している。ここで、転写ロール170における転写電圧の設定範囲は、画像上の不具合によって決定される。通常、転写電圧の下限値は転写不良に基づいて規定され、上限値はリトランスファーと呼ばれる逆転写や、細かな白点の発生に基づき規定される。
【0031】
画像形成ユニット120において形成された画像を転写ローラ170で用紙Pに転写させる際、低温低湿環境においては、用紙Pが転写ロール170に接触することにより放電が発生する。そうすると、形成された画像が飛散して、画像に抜けが生じてしまう。これを画像抜けという。画像抜けが発生すると画質が低下することから、画像抜けが発生しないようにすることが望ましい。しかし、図4に示すように、従来の用紙搬送機構を用いて転写ロールに印加する印加電圧を変化させていくと、約1500Vを超えたあたりから画像抜けが発生し始め、発生レベルが許容値(図4および図5の例では、2.5)を超えると、許容可能な画像を提供できなくなる。θ1が40°を超える範囲では、むしろ放電抜けの発生によって規定される値が上限値となってしまい、適切な転写電圧が確保できない。
【0032】
これに対して、図5に示すように、本実施形態に係る用紙搬送機構を用いて転写ロール170に印加する印加電圧を変化させても、約3750Vを超えるまで画像抜けの発生は見られず、転写電圧の設定範囲(約2500〜3500V)においては画像抜けの発生はほとんどないものと考えられる。そこで、図4および図5に示す結果より、従来の用紙搬送機構と本実施形態に係る用紙搬送機構とを比較して、垂直方向に対するローラ152d、152a間の転写ベルト150の角度θ1によって画像抜けの発生レベルが大きく変化する40°を閾値として規定する。本実施形態に係る用紙搬送機構を用いれば、角度θ1≧40°であるときの画像抜けの発生を抑制し、画質の低下を防止することが可能となる。なお、角度θ1を大きくし過ぎると画像抜けの発生が増加する傾向にあるが、基本的に発生レベルは許容値内に収まる。
【0033】
次に、θ2について、要件(2)は、用紙Pの先端が転写ベルト150に衝突したときの衝撃により発生する衝突バンディングと呼ばれる横筋の発生レベルに基づいて規定する。図6に、θ1に20°、30°、40°、50°のいずれかを設定し、それぞれについてθ2を変化させて衝突バンディングの発生レベルを官能評価により判定した結果を示す。図6の官能評価グレードも、数値が小さいほど良好であることを示している。図6より、θ2を大きくしていくと衝突バンディングの発生レベルが悪くなっている。放電抜け発生レベルに基づき設定されたθ1≧40°以上の条件においては、衝突バンディングの発生レベルが許容値以下となるためには、θ2を30°以下とすることが望ましいことがわかる。
【0034】
以上より、θ1およびθ2の条件を決定することができる。そして、要件(3)は、用紙搬送経路を通る用紙Pの挙動に基づき設定される。以下、図2、3および図7A〜図7Hに基づき、用紙搬送経路における用紙Pの挙動とともに、用紙ガイド191、192の構成について説明する。
【0035】
まず、用紙供給ユニット110から搬送されてきた用紙Pは、レジロール180a、180bにより垂直方向に姿勢を整えられた後、用紙ガイド191、192による用紙搬送経路に進入する。第2の用紙ガイド192には、図7Aに示すように、例えば中央付近に第1の用紙ガイド191に向かって突出する突出部(点A)が形成されている。これにより、図7Bに示すように、突出部(点A)付近で用紙を大きく曲げて、かつ用紙Pを曲げの外側に用紙が膨らむ空間が形成される。したがって、垂直方向に距離を十分に確保できない場合においても、十分に用紙Pを撓ませるだけのスペースを確保することができる。このとき、用紙Pの裏面が突出部(点A)に沿うように、用紙Pの先端は第1の用紙ガイド191に当接する。
【0036】
さらに用紙Pが搬送されると、先端が第1の用紙ガイド191に当接した用紙Pは、図7C、図7Dに示すように先端が第1の用紙ガイド191に保持されながら第1の用紙ガイド191の先端(点B)まで進み、そして図7Eに示すように転写ベルト150へ導かれる。その後、用紙Pの先端は、重力等の影響により一旦転写ベルト150から離れ、図7Fに示すように第2の用紙ガイド192に当接される。なお、第1の用紙ガイド191の先端(点B)と、転写ロール170と対向ロール152aとにより形成される転写ニップ部との距離は、第1の用紙ガイド191から転写ベルト150に案内された用紙Pが重力等の影響によって撓み、自然に第2の用紙ガイド192によって保持されるために必要な所定距離だけ離隔させるようにする。
【0037】
ここで、本実施形態に係る用紙ガイド191、192は、第2の用紙ガイド192の突出点(点A)と第1の用紙ガイド191の先端位置(点B)とを結んだ直線と、転写ベルト150との交点である点Xの高さが、第2の用紙ガイド192の先端位置(点C)の高さよりも低くなるように構成されている。このため、用紙Pが転写ベルト150から一旦離れても、用紙Pの先端は、図7Fに示すように第2の用紙ガイド192により確実に支持される。これにより、用紙Pを再び転写ベルト150側へ導くことができる。
【0038】
そして、用紙Pの搬送が進むと、用紙Pの先端は、図7Gに示すように、転写ベルト150を介した転写ロール170とロール152aとの接触部分(転写ニップ部)近傍の転写ベルト150へ導かれ、図7Hに示すように転写ニップ部に突入する。その後は、第2の用紙ガイド192の先端(点C)と突出部(点A)との保持によって、用紙Pは自然な撓みを生じ、安定して搬送される。このとき、用紙Pの後端の跳ね上がりは、第1の用紙ガイド191によって抑制される。
【0039】
このように用紙Pをレジロール180a、180bから転写ロール170へ上方に向かって搬送する場合において、装置を小型化した場合であっても、本実施形態の用紙ガイド191、192を設けることにより、レジロール180a、180bから転写ロール170間の用紙搬送性を安定させ、ほぼ最短距離で用紙Pを排出トレイへ排出させることができる。また、転写ベルト150の、転写ニップ上流部分の角度を大きく設定できるため、転写ロール170と対向する対向ロール152aを小径化することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、構成要件(1)〜(3)のすべてを満たすように用紙搬送機構を構成したが、少なくとも構成要件(3)を満たすことにより、装置を小型化した場合にも用紙Pの搬送性を安定させることが可能である。さらに構成要件(1)、(2)を満たすことにより、形成される画質も高めることができる。
【0041】
<2.第2の実施形態>
次に、図8に基づいて、本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の用紙搬送機構について説明する。上述した第1の実施形態に係る用紙搬送機構では、第1の用紙ガイド191は画像形成装置100本体に設けられ、第2の用紙ガイド192は、転写ユニットに設けられていた。ここで、転写ユニットはユーザにより頻繁に開閉されるため、転写ユニットに設けられる第2の用紙ガイド192は、開閉の動作に応じてその設置位置が僅かにずれることがある。第2の用紙ガイド192の設置位置の精度が低ければ、用紙Pを確実に転写ロール170へ案内できなくなる可能性もある。
【0042】
そこで、本実施形態では、図8に示すように、第3の用紙ガイド193を画像形成装置100本体に設け、レジロール180a、180bから搬送されてきた用紙Pを第1の用紙ガイド191へ案内するガイド部材として用いる。一方、第1の実施形態において、レジロール180a、180bから搬送されてきた用紙Pを第1の用紙ガイド191へ案内し、転写ベルト150から一旦離れた用紙Pを再び転写ベルト150側へ案内するガイド部材として機能していた第2の用紙ガイド192は、本実施形態では転写ベルト150から一旦離れた用紙Pを再び転写ベルト150側へ案内するガイド部材としてのみ機能する。第2の用紙ガイド192は、第1の実施形態と同様、転写ユニット側に設けられるとする。
【0043】
このように用紙ガイドを構成することにより、用紙供給ユニット110から搬送されてきた用紙Pは、レジロール180a、180bにより垂直方向に姿勢を整えられた後、用紙搬送経路に進入する。用紙Pは、第3の用紙ガイド193に形成された、第1の用紙ガイド191に向かって突出する突出部(点A)付近で用紙を大きく曲げられる。そして、用紙Pは、撓み、裏面が突出部(点A)に沿うように搬送され、その後先端が第1の用紙ガイド191に当接する。
【0044】
さらに用紙Pが搬送されると、先端が第1の用紙ガイド191に当接した用紙Pは、先端が第1の用紙ガイド191に保持されながら第1の用紙ガイド191の先端(点B)まで進み、転写ベルト150へ導かれる。その後、用紙Pの先端は、重力等の影響により一旦転写ベルト150から離れ、第2の用紙ガイド192に当接される。本実施形態においても、用紙ガイド191、192および193は、第3の用紙ガイド193の突出点(点A)と第1の用紙ガイド191の先端位置(点B)とを結んだ直線と、転写ベルト150との交点である点Xの高さが、第2の用紙ガイド192の先端位置(点C)の高さよりも低くなるように構成されている。このため、用紙Pが転写ベルト150から一旦離れても、用紙Pの先端は、第2の用紙ガイド192により確実に支持される。これにより、用紙Pを再び転写ベルト150側へ導くことができる。
【0045】
そして、用紙Pの搬送が進むと、用紙Pの先端は、転写ベルト150を介した転写ロール170とロール152aとの接触部分(転写ニップ部)近傍の転写ベルト150へ導かれ、転写ニップ部に突入する。その後は、第2の用紙ガイド192の先端(点C)と突出部(点A)との保持によって、用紙Pは自然な撓みを生じ、安定して搬送される。
【0046】
このように、本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態では、用紙Pを第1の用紙ガイド191へ導く突出部を装置本体に設けたことにより、ほとんど動かない装置本体側で用紙Pの姿勢を制御できるので、用紙搬送性がより安定される。また、装置本体側に設けられた用紙ガイドは転写ユニットの位置決め部材としても活用することができるので、各部材の位置精度を向上させることができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0048】
例えば、上記実施形態では、用紙ガイド191、192および193は中央部が湾曲した形状に構成したが、本発明はかかる例に限定されない。上記の構成要件を満たせば他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
100 画像形成装置
110 用紙供給ユニット
120 画像形成ユニット
150 転写ベルト
170 転写ロール
180a、180b レジストレーションロール(レジロール)
191、192、193 用紙ガイド
P 用紙
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関し、より詳細には、画像形成装置の用紙搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特に小型化の画像形成装置において、用紙を、給紙トレイからほぼ最短距離で上方に搬送し、画像の転写を行った後定着器に導き、装置上方の排出トレイへ排出する構成が採用されている。これは、用紙の搬送経路を短くすることができるため、装置の小型化やスループットの向上が達成できることによる。
【0003】
給紙トレイから供給された用紙は、まず、レジストレーションロール(以下、「レジロール」とも称する。)により、用紙の姿勢が制御された後、上方に搬送されて、転写器の転写ニップ位置に搬送される。転写ニップ位置に用紙を搬送する際、用紙の挙動や帯電を安定させ、トナーの飛散や画質低下を防止するため、用紙を像担持体側に沿わせて搬送することが必要である。このため、転写ニップ位置の近傍において、用紙をガイドするガイド部材を設け、用紙の転写ニップ位置への突入姿勢を制御することが行われている(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
この部分においては、重力的な影響を極力小さくし、安定的な搬送を実現するために、転写ニップ位置に対して略垂直に用紙を搬送することが提案されている。ただし、レジロールから転写ロール間では、転写ニップ位置での用紙のスリップを防止するために、用紙に適切な撓みを付ける必要があり、ガイド部材の手前側で用紙の撓みスペースを設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−123848号公報
【特許文献2】特開2007−15845号公報
【特許文献3】特許第4208495号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
用紙の撓みの効果を利用する場合には、レジロールと転写ロールとの間に用紙が撓むことが可能なだけの十分な距離が必要である。このため、垂直搬送を前提としたシステムでは、レジロールと転写ロールとの垂直距離を大きくする必要があり、装置の小型化への障害となる。
【0007】
また、特に中間転写体を用いた場合、装置の小型化、省スペースの観点から、ドライブロールを転写ロールのバックアップロールとして用いることが多い。このドライブロールを小径化した場合には、ドライブロールにラップさせるベルト量を確保するために、ベルトの進入角度がベルトに対して急となり、用紙の先端がベルトに当接したときの衝撃により、形成された画像の乱れが生じたり、用紙や部材へのダメージにつながる恐れが生じたりする。したがって、用紙をベルトに沿わせて曲げる必要がある。このとき、用紙は重力の影響を受けやすくなるため複雑な挙動をしてしまい、用紙の撓みだけでは全くその挙動を制御することができない。また、用紙の垂直搬送を前提とした用紙ガイドでは、その制御は不十分である。このような問題は、例えば両面印字の場合等、用紙の先端カールが大きくなった場合にさらに顕著となる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、装置を小型化した場合にもレジストレーションロールから転写ロール間の用紙搬送性を安定させることが可能な、新規かつ改良された画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、静電潜像担持体上の静電潜像を現像して生成されたトナー像を中間転写体に一次転写して、中間転写体に一次転写されたトナー像を転写材トレイより搬送される転写材に二次転写して、転写材に画像を形成する画像形成装置が提供される。かかる画像形成装置は、中間転写体上のトナー像の転写位置に転写材を搬送する搬送経路に、転写材をガイドするガイド部材が設けられ、ガイド部材は、転写材を中間転写体に案内する第1のガイド部と、転写材トレイから搬送された転写材の搬送方向を第1のガイド部側へ変化させる突出部を有する第2のガイド部と、第1のガイド部により中間転写体に沿って搬送される転写材を転写位置に案内する第3のガイド部と、からなり、第3のガイド部の上方先端位置が、第2のガイド部の突出部と第1のガイドの上方先端位置とを結んだ直線と中間転写体との交点より上方に位置することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、転写材トレイから搬送され、第2のガイド部の突出部により第1のガイド部側に案内された転写材は、その先端が第1のガイド部に沿って中間転写体まで案内される。そして、中間転写体に当接した転写材は、重力等により一旦中間転写体から離れる。そして、転写材の先端は、第3のガイド部に保持される。その後、転写材は第3のガイド部により再び中間転写体に案内され、さらに転写位置まで案内される。このように構成することにより、装置が小型化した場合にも転写材の搬送性を安定させることができる。
【0011】
ここで、ガイド部材は、垂直方向に対する転写位置へ進入する中間転写体の角度が40°以上であり、第1のガイド部と転写位置へ進入する中間転写体とのなす角度は30°以下となるように構成することができる。
【0012】
また、第1のガイド部の上方先端は、転写位置から所定距離以上離隔されるようにする。
【0013】
さらに、少なくとも第1のガイド部は、画像装置本体側に設けられ、第3のガイド部は、中間転写体上のトナー像を転写材に転写する転写ユニットに設けられるようにしてもよい。
【0014】
また、第2のガイド部と第3のガイド部とは一体に形成することもできる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、装置を小型化した場合にもレジストレーションロールから転写ロール間の用紙搬送性を安定させることが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す概略説明図である。
【図2】同実施形態に係る用紙搬送機構の構成を示す説明図である。
【図3】同実施形態に係る用紙搬送機構の構成を示す説明図である。
【図4】従来の画像形成装置における低温低湿環境下での放電抜け発生レベルを示すグラフである。
【図5】同実施形態に係る画像形成装置における低温低湿環境下での放電抜け発生レベルを示すグラフである。
【図6】衝突バンディング発生レベルを示すグラフである。
【図7A】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7B】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7C】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7D】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7E】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7F】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7G】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図7H】同実施形態に係る用紙ガイドにより形成された用紙搬送経路を通過する用紙の挙動を示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る用紙搬送機構の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.第1の実施形態>
[画像形成装置の構成]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置100の概略構成について説明する。なお、図1は、本実施形態に係る画像形成装置100の概略構成を示す概略説明図である。
【0019】
本実施形態にかかる画像形成装置100は、例えばレーザプリンタや複写機、ファクシミリ等である。画像形成装置100の一例として、図1に、4つのローラ152a、152b、152c、152dによって懸架される転写ベルト150上に一次転写されたトナー像を用紙Pに対して二次転写して画像を得る方式の画像形成装置100を示す。かかる画像形成装置100は、用紙供給ユニット110と、画像形成ユニット120と、定着ユニット(図示せず。)とを備える。
【0020】
用紙供給ユニット110は、後述する画像形成ユニット120により形成されたトナー像を転写させる用紙Pをスタックし、用紙Pを転写ローラ170へ出力するユニットである。
【0021】
画像形成ユニット120は、用紙Pに転写するトナー像を形成するユニットであり、例えば4色(ブラック、シアン、イエロー、マゼンタ)のトナー像を形成するため4つの画像形成ユニット120B、120C、120Y、120Mを有する。
【0022】
画像形成ユニット120B、120C、120Y、120Mはそれぞれ、静電潜像が形成される感光体121と、感光体121の周面を帯電する帯電ローラ122と、帯電された感光体121の周面を露光して静電潜像を形成する露光装置123とを備える。さらに、画像形成ユニット120は、現像剤であるトナーを攪拌する攪拌器124と、攪拌器124から供給されたトナーを感光体121に形成された静電潜像に付着させて、トナー像を形成する現像ローラ125と、トナー像を転写ベルト150に転写した後、感光体121上に残存したトナーを除去するクリーニングブレード126とを備える。また、トナー像を転写ベルト150に転写させるための転写ローラ140が、転写ベルト150を介して感光体121と対向して配置される。
【0023】
かかる画像形成装置100は、画像データに応じて画像形成ユニット120により各色のトナー像を生成して、中間転写体である転写ベルト150に順次転写させて重ね合わせることによりフルカラートナー像を生成する。フルカラートナー像は、転写ローラ170とローラ152aとにより構成される二次転写部にて、用紙供給ユニット110から搬出された用紙Pに一括して転写される。フルカラートナー像が転写された用紙Pは、定着ユニットへ搬送される。定着ユニットにおいて、熱や圧力などの手段によって用紙Pにフルカラートナー像が固定される。一方、転写ベルト150は、二次転写部にてフルカラートナー像を用紙Pへ転写した後、クリーナー(図示せず。)により転写ベルト150上に残存するトナーを除去される。
【0024】
以上、本実施形態にかかる画像形成装置100の構成について説明した。本実施形態に画像形成装置100では、装置の小型化を可能にするとともに、用紙や部材へのダメージを低減するために、用紙供給ユニット100から供給された用紙Pの姿勢を制御するレジストレーションロール(図2の符号180a、180b)と転写ロール170との間に用紙ガイドを設けている。以下、図2〜図7Hに基づいて、用紙ガイドを用いた本実施形態に係る用紙搬送機構について詳細に説明する。
【0025】
なお、図2および図3は、本実施形態に係る用紙搬送機構の構成を示す説明図である。図4は、従来の画像形成装置における低温低湿環境下での放電抜け発生レベルを示すグラフである。図5は、本実施形態に係る画像形成装置における低温低湿環境下での放電抜け発生レベルを示すグラフである。図6は、衝突バンディング発生レベルを示すグラフである。図7A〜図7Hは、本実施形態に係る用紙ガイド191、192により形成された用紙搬送経路を通過する用紙Pの挙動を示す説明図である。
【0026】
[用紙搬送機構の構成]
レジロールから転写ロール170へ用紙Pを搬送する本実施形態の用紙搬送機構は、図2に示すような用紙ガイド191、192により構成される。用紙ガイド191、192は対向して設けられ、用紙供給ユニット110から排出された用紙Pは、レジロール180a、180bを通過後、用紙ガイド191、192の間(用紙搬送経路)を通過し、転写ロール170へ導かれる。
【0027】
第1の用紙ガイド191は、用紙Pの先端を転写ベルト150に用紙Pを導く部材である。第1の用紙ガイド191は、画像形成装置100本体に設けられている。第2の用紙ガイド192は、レジロール180a、180bにより姿勢が制御された用紙Pの先端を第1の用紙ガイド192へ導き、第1の用紙ガイド191で折り返された用紙Pの先端を転写ロール170へ導く部材である。第2の用紙ガイド192は、転写ロール170等を備える転写ユニット側に設けられている。図2の二点鎖線は転写ユニットの外形を表している。
【0028】
(用紙ガイドの構成要件)
このような本実施形態の用紙ガイド191、192は、以下の構成要件を満たすように構成されている。まず、図2に示す点A、B、C、Xを以下のように定義する。
点A:第2の用紙ガイド192の用紙搬送経路における突出点
点B:第1の用紙ガイド191の先端位置
点C:第2の用紙ガイド192の先端位置
点X:点Aと点Bとを結んだ直線と、転写ベルト150との交点
また、ローラ152d、152a間の転写ベルト150について、以下の角度を設定する。
θ1:垂直方向に対するローラ152d、152a間の転写ベルト150の角度
θ2:第1の用紙ガイド191とローラ152d、152a間の転写ベルト150とのなす角
【0029】
このとき、用紙ガイド191、192は、
要件(1):θ1≧40°
要件(2):θ2≦30°
要件(3):垂直方向における点Xの位置≦垂直方向における点Cの位置
を満たすように構成される。これは、以下の理由により決定されている。
【0030】
まず、θ1について、要件(1)は、図4および図5に示す低温低湿環境下での放電抜け発生レベルに基づき設定される。図4および図5は、転写ロール170における転写電圧を変化させていったとき、画像抜けの発生レベルを官能評価によって判定した結果を示すグラフである。官能評価グレードは、数値が小さいほど良好であることを示している。ここで、転写ロール170における転写電圧の設定範囲は、画像上の不具合によって決定される。通常、転写電圧の下限値は転写不良に基づいて規定され、上限値はリトランスファーと呼ばれる逆転写や、細かな白点の発生に基づき規定される。
【0031】
画像形成ユニット120において形成された画像を転写ローラ170で用紙Pに転写させる際、低温低湿環境においては、用紙Pが転写ロール170に接触することにより放電が発生する。そうすると、形成された画像が飛散して、画像に抜けが生じてしまう。これを画像抜けという。画像抜けが発生すると画質が低下することから、画像抜けが発生しないようにすることが望ましい。しかし、図4に示すように、従来の用紙搬送機構を用いて転写ロールに印加する印加電圧を変化させていくと、約1500Vを超えたあたりから画像抜けが発生し始め、発生レベルが許容値(図4および図5の例では、2.5)を超えると、許容可能な画像を提供できなくなる。θ1が40°を超える範囲では、むしろ放電抜けの発生によって規定される値が上限値となってしまい、適切な転写電圧が確保できない。
【0032】
これに対して、図5に示すように、本実施形態に係る用紙搬送機構を用いて転写ロール170に印加する印加電圧を変化させても、約3750Vを超えるまで画像抜けの発生は見られず、転写電圧の設定範囲(約2500〜3500V)においては画像抜けの発生はほとんどないものと考えられる。そこで、図4および図5に示す結果より、従来の用紙搬送機構と本実施形態に係る用紙搬送機構とを比較して、垂直方向に対するローラ152d、152a間の転写ベルト150の角度θ1によって画像抜けの発生レベルが大きく変化する40°を閾値として規定する。本実施形態に係る用紙搬送機構を用いれば、角度θ1≧40°であるときの画像抜けの発生を抑制し、画質の低下を防止することが可能となる。なお、角度θ1を大きくし過ぎると画像抜けの発生が増加する傾向にあるが、基本的に発生レベルは許容値内に収まる。
【0033】
次に、θ2について、要件(2)は、用紙Pの先端が転写ベルト150に衝突したときの衝撃により発生する衝突バンディングと呼ばれる横筋の発生レベルに基づいて規定する。図6に、θ1に20°、30°、40°、50°のいずれかを設定し、それぞれについてθ2を変化させて衝突バンディングの発生レベルを官能評価により判定した結果を示す。図6の官能評価グレードも、数値が小さいほど良好であることを示している。図6より、θ2を大きくしていくと衝突バンディングの発生レベルが悪くなっている。放電抜け発生レベルに基づき設定されたθ1≧40°以上の条件においては、衝突バンディングの発生レベルが許容値以下となるためには、θ2を30°以下とすることが望ましいことがわかる。
【0034】
以上より、θ1およびθ2の条件を決定することができる。そして、要件(3)は、用紙搬送経路を通る用紙Pの挙動に基づき設定される。以下、図2、3および図7A〜図7Hに基づき、用紙搬送経路における用紙Pの挙動とともに、用紙ガイド191、192の構成について説明する。
【0035】
まず、用紙供給ユニット110から搬送されてきた用紙Pは、レジロール180a、180bにより垂直方向に姿勢を整えられた後、用紙ガイド191、192による用紙搬送経路に進入する。第2の用紙ガイド192には、図7Aに示すように、例えば中央付近に第1の用紙ガイド191に向かって突出する突出部(点A)が形成されている。これにより、図7Bに示すように、突出部(点A)付近で用紙を大きく曲げて、かつ用紙Pを曲げの外側に用紙が膨らむ空間が形成される。したがって、垂直方向に距離を十分に確保できない場合においても、十分に用紙Pを撓ませるだけのスペースを確保することができる。このとき、用紙Pの裏面が突出部(点A)に沿うように、用紙Pの先端は第1の用紙ガイド191に当接する。
【0036】
さらに用紙Pが搬送されると、先端が第1の用紙ガイド191に当接した用紙Pは、図7C、図7Dに示すように先端が第1の用紙ガイド191に保持されながら第1の用紙ガイド191の先端(点B)まで進み、そして図7Eに示すように転写ベルト150へ導かれる。その後、用紙Pの先端は、重力等の影響により一旦転写ベルト150から離れ、図7Fに示すように第2の用紙ガイド192に当接される。なお、第1の用紙ガイド191の先端(点B)と、転写ロール170と対向ロール152aとにより形成される転写ニップ部との距離は、第1の用紙ガイド191から転写ベルト150に案内された用紙Pが重力等の影響によって撓み、自然に第2の用紙ガイド192によって保持されるために必要な所定距離だけ離隔させるようにする。
【0037】
ここで、本実施形態に係る用紙ガイド191、192は、第2の用紙ガイド192の突出点(点A)と第1の用紙ガイド191の先端位置(点B)とを結んだ直線と、転写ベルト150との交点である点Xの高さが、第2の用紙ガイド192の先端位置(点C)の高さよりも低くなるように構成されている。このため、用紙Pが転写ベルト150から一旦離れても、用紙Pの先端は、図7Fに示すように第2の用紙ガイド192により確実に支持される。これにより、用紙Pを再び転写ベルト150側へ導くことができる。
【0038】
そして、用紙Pの搬送が進むと、用紙Pの先端は、図7Gに示すように、転写ベルト150を介した転写ロール170とロール152aとの接触部分(転写ニップ部)近傍の転写ベルト150へ導かれ、図7Hに示すように転写ニップ部に突入する。その後は、第2の用紙ガイド192の先端(点C)と突出部(点A)との保持によって、用紙Pは自然な撓みを生じ、安定して搬送される。このとき、用紙Pの後端の跳ね上がりは、第1の用紙ガイド191によって抑制される。
【0039】
このように用紙Pをレジロール180a、180bから転写ロール170へ上方に向かって搬送する場合において、装置を小型化した場合であっても、本実施形態の用紙ガイド191、192を設けることにより、レジロール180a、180bから転写ロール170間の用紙搬送性を安定させ、ほぼ最短距離で用紙Pを排出トレイへ排出させることができる。また、転写ベルト150の、転写ニップ上流部分の角度を大きく設定できるため、転写ロール170と対向する対向ロール152aを小径化することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、構成要件(1)〜(3)のすべてを満たすように用紙搬送機構を構成したが、少なくとも構成要件(3)を満たすことにより、装置を小型化した場合にも用紙Pの搬送性を安定させることが可能である。さらに構成要件(1)、(2)を満たすことにより、形成される画質も高めることができる。
【0041】
<2.第2の実施形態>
次に、図8に基づいて、本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の用紙搬送機構について説明する。上述した第1の実施形態に係る用紙搬送機構では、第1の用紙ガイド191は画像形成装置100本体に設けられ、第2の用紙ガイド192は、転写ユニットに設けられていた。ここで、転写ユニットはユーザにより頻繁に開閉されるため、転写ユニットに設けられる第2の用紙ガイド192は、開閉の動作に応じてその設置位置が僅かにずれることがある。第2の用紙ガイド192の設置位置の精度が低ければ、用紙Pを確実に転写ロール170へ案内できなくなる可能性もある。
【0042】
そこで、本実施形態では、図8に示すように、第3の用紙ガイド193を画像形成装置100本体に設け、レジロール180a、180bから搬送されてきた用紙Pを第1の用紙ガイド191へ案内するガイド部材として用いる。一方、第1の実施形態において、レジロール180a、180bから搬送されてきた用紙Pを第1の用紙ガイド191へ案内し、転写ベルト150から一旦離れた用紙Pを再び転写ベルト150側へ案内するガイド部材として機能していた第2の用紙ガイド192は、本実施形態では転写ベルト150から一旦離れた用紙Pを再び転写ベルト150側へ案内するガイド部材としてのみ機能する。第2の用紙ガイド192は、第1の実施形態と同様、転写ユニット側に設けられるとする。
【0043】
このように用紙ガイドを構成することにより、用紙供給ユニット110から搬送されてきた用紙Pは、レジロール180a、180bにより垂直方向に姿勢を整えられた後、用紙搬送経路に進入する。用紙Pは、第3の用紙ガイド193に形成された、第1の用紙ガイド191に向かって突出する突出部(点A)付近で用紙を大きく曲げられる。そして、用紙Pは、撓み、裏面が突出部(点A)に沿うように搬送され、その後先端が第1の用紙ガイド191に当接する。
【0044】
さらに用紙Pが搬送されると、先端が第1の用紙ガイド191に当接した用紙Pは、先端が第1の用紙ガイド191に保持されながら第1の用紙ガイド191の先端(点B)まで進み、転写ベルト150へ導かれる。その後、用紙Pの先端は、重力等の影響により一旦転写ベルト150から離れ、第2の用紙ガイド192に当接される。本実施形態においても、用紙ガイド191、192および193は、第3の用紙ガイド193の突出点(点A)と第1の用紙ガイド191の先端位置(点B)とを結んだ直線と、転写ベルト150との交点である点Xの高さが、第2の用紙ガイド192の先端位置(点C)の高さよりも低くなるように構成されている。このため、用紙Pが転写ベルト150から一旦離れても、用紙Pの先端は、第2の用紙ガイド192により確実に支持される。これにより、用紙Pを再び転写ベルト150側へ導くことができる。
【0045】
そして、用紙Pの搬送が進むと、用紙Pの先端は、転写ベルト150を介した転写ロール170とロール152aとの接触部分(転写ニップ部)近傍の転写ベルト150へ導かれ、転写ニップ部に突入する。その後は、第2の用紙ガイド192の先端(点C)と突出部(点A)との保持によって、用紙Pは自然な撓みを生じ、安定して搬送される。
【0046】
このように、本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態では、用紙Pを第1の用紙ガイド191へ導く突出部を装置本体に設けたことにより、ほとんど動かない装置本体側で用紙Pの姿勢を制御できるので、用紙搬送性がより安定される。また、装置本体側に設けられた用紙ガイドは転写ユニットの位置決め部材としても活用することができるので、各部材の位置精度を向上させることができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0048】
例えば、上記実施形態では、用紙ガイド191、192および193は中央部が湾曲した形状に構成したが、本発明はかかる例に限定されない。上記の構成要件を満たせば他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
100 画像形成装置
110 用紙供給ユニット
120 画像形成ユニット
150 転写ベルト
170 転写ロール
180a、180b レジストレーションロール(レジロール)
191、192、193 用紙ガイド
P 用紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体上の静電潜像を現像して生成されたトナー像を中間転写体に一次転写して、前記中間転写体に一次転写された前記トナー像を転写材トレイより搬送される転写材に二次転写して、前記転写材に画像を形成する画像形成装置であって、
前記中間転写体上のトナー像の転写位置に前記転写材を搬送する搬送経路に、前記転写材をガイドするガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、
前記転写材を前記中間転写体に案内する第1のガイド部と、
前記転写材トレイから搬送された前記転写材の搬送方向を前記第1のガイド部側へ変化させる突出部を有する第2のガイド部と、
前記第1のガイド部により前記中間転写体に沿って搬送される前記転写材を前記転写位置に案内する第3のガイド部と、
からなり、
前記第3のガイド部の上方先端位置が、前記第2のガイド部の前記突出部と前記第1のガイドの上方先端位置とを結んだ直線と前記中間転写体との交点より上方に位置することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、
垂直方向に対する前記転写位置へ進入する前記中間転写体の角度が40°以上であり、
前記第1のガイド部と前記転写位置へ進入する前記中間転写体とのなす角度は30°以下となるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1のガイド部の上方先端は、前記転写位置から所定距離以上離隔されることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1のガイド部は、前記画像装置本体側に設けられ、
前記第3のガイド部は、前記中間転写体上のトナー像を前記転写材に転写する転写ユニットに設けられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2のガイド部と前記第3のガイド部とは一体に形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
静電潜像担持体上の静電潜像を現像して生成されたトナー像を中間転写体に一次転写して、前記中間転写体に一次転写された前記トナー像を転写材トレイより搬送される転写材に二次転写して、前記転写材に画像を形成する画像形成装置であって、
前記中間転写体上のトナー像の転写位置に前記転写材を搬送する搬送経路に、前記転写材をガイドするガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、
前記転写材を前記中間転写体に案内する第1のガイド部と、
前記転写材トレイから搬送された前記転写材の搬送方向を前記第1のガイド部側へ変化させる突出部を有する第2のガイド部と、
前記第1のガイド部により前記中間転写体に沿って搬送される前記転写材を前記転写位置に案内する第3のガイド部と、
からなり、
前記第3のガイド部の上方先端位置が、前記第2のガイド部の前記突出部と前記第1のガイドの上方先端位置とを結んだ直線と前記中間転写体との交点より上方に位置することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、
垂直方向に対する前記転写位置へ進入する前記中間転写体の角度が40°以上であり、
前記第1のガイド部と前記転写位置へ進入する前記中間転写体とのなす角度は30°以下となるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1のガイド部の上方先端は、前記転写位置から所定距離以上離隔されることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1のガイド部は、前記画像装置本体側に設けられ、
前記第3のガイド部は、前記中間転写体上のトナー像を前記転写材に転写する転写ユニットに設けられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2のガイド部と前記第3のガイド部とは一体に形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8】
【公開番号】特開2011−137866(P2011−137866A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295934(P2009−295934)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】
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