画像形成装置
【課題】シートが薄い場合でも、シートを安定して搬送することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】第1搬送ローラ対100の駆動ローラ100Aの、シャフト101の軸方向に移動可能に設けたゴムローラ103a,103bを、コロ107a,107bと共にシートを挟持した状態でシャフト101の回転に伴ってシャフト101の軸方向の中央側にシートを撓ませながら移動させ、シートが第2搬送ローラ対200に達するときにはシートの撓みを減少させた状態で移動前の初期位置に戻るように往復動作させる。
【解決手段】第1搬送ローラ対100の駆動ローラ100Aの、シャフト101の軸方向に移動可能に設けたゴムローラ103a,103bを、コロ107a,107bと共にシートを挟持した状態でシャフト101の回転に伴ってシャフト101の軸方向の中央側にシートを撓ませながら移動させ、シートが第2搬送ローラ対200に達するときにはシートの撓みを減少させた状態で移動前の初期位置に戻るように往復動作させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に画像が形成されたシートを、腰を付けて搬送するようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷機、複写機、FAX、プリンタ等の画像形成装置においては、電子写真方式によりシートに画像を形成するようにしたものがある。このような画像形成装置では、シートに画像を形成する場合、まず画像情報に応じて感光体ドラムを露光して感光体ドラム上に静電気的な潜像を形成させる。次に、この静電気的な潜像を現像器においてトナーによって現像することにより、トナー像として顕像化させ、このトナー像を転写部において給紙部から給送されたシートに転写するようにしている。そして、この後、シートを定着部に設けられた定着ローラと加圧ローラとの定着ニップに搬送し、トナー像を永久画像としてシートに定着させるようにしている。
【0003】
また、従来の画像形成装置においては、画像形成装置本体にシート収納部である給紙カセットを着脱自在に装着している。そして、画像形成時には、給紙カセットに収納されたシートをシート給送ローラにより送り出した後、シート搬送装置により、画像形成部に搬送するようにしている。
【0004】
ところで、近年、版を作らないメリットを生かし、小部数の印刷市場向けとして上述の画像形成装置が提供されてきているが、この軽印刷市場では、多種のシートに対応することが要求される。特に、坪量が60g/m2以下の薄いシートは1枚あたりの単価及び配送時のコストメリットにより、特に使用頻度が高い。しかし、シートは搬送ガイドに案内されながら搬送ローラにより搬送されるが、シートを搬送する際、ガイドとの間の微小な摩擦抵抗や、微小な静電気により、シートがガイドに貼り付く場合がある。特に、薄いシートは剛度(剛性)が小さいため、わずかにガイドに貼り付いた場合でも、座屈を生じ、ジャムが発生することがある。
【0005】
一方、搬送ガイドを設けることなく、搬送ローラのみでシートを搬送するようにすると、薄いシートの場合、剛度が小さいため、搬送する際、シートの先端が下方に撓むようになる。このため、薄いシートを搬送する場合には、搬送ローラの間隔を薄紙が座屈しない距離で配置しなければならない。通常は、搬送ローラの間隔を最小サイズのシートの長さより若干短く配置しているが、薄いシートを搬送する装置では、通常よりも短い間隔で搬送ローラを配置しなければならず、搬送ローラの数が増えてしまう。
【0006】
そこで、従来は、薄いシートを搬送する際に、シートをシート搬送方向に対し直交する幅方向に撓ませることにより、シートの実質的な剛度を高めて(腰付けをして)搬送を行う装置が考案されている。このような装置としては、例えば胴体部分の両側部にフランジ部を設けたローラとコロとを備えており、ローラとコロとによりシートを挟持して搬送する際、フランジ部によりシートを幅方向で撓ませる(特許文献1参照)。
【0007】
また、多種のマテリアルに対応するために、シートの実質的な剛度を高めるための腰付け部を弾性体にて構成するものもある。このような構成のものとしては、例えばローラ本体部の軸方向の一端部に腰付けローラを周方向に沿って突出して設けると共に、この腰付けローラを、柔軟性を有する素材で形成している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−110260号公報
【特許文献2】特開2005−272111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、シートを撓ませることにより腰付して搬送する従来の画像形成装置においては、シート搬送の際、フランジ部での屈曲により、シートに軽微な折れが発生する場合がある。なお、フランジ部や腰付けローラを弾性体で形成し、屈曲を軽微にした場合でも、常にシートの幅方向の同一位置には圧力が大きく掛かるため、シートが折れなくとも、画像が転写された後のシートを搬送する際、画像上にスジ状の光沢ムラが生じることがある。
【0010】
なお、光沢ムラの原因としては、ローラ部とフランジ部の周速の違いによる摺擦跡がある。また、定着後にトナーが完全に固まっていない状態では、微少な圧の違いでも、画像表面の表面粗さが異なってしまうため、光沢ムラとして視認されてしまう。
【0011】
また、シートを撓ませて波形状にした状態で搬送する場合、波形状となった状態でシートが下流に配置されている搬送ローラに達するようになる。しかし、搬送中の波形状は安定しないため、シートが搬送ローラに達し、この後、搬送ローラによりシートが挟持されるとき、シート先端の折れが発生することがある。
【0012】
図12の(a)は腰付けローラ801にシートSが挟持され始めた状態を表すものであり、図12の(b)は搬送中にシートSの先端波形状が安定しない例を表す図である。図12の(c)は、シート先端波形状が不安定な状態で、下流の搬送ローラに達した状態を示す図であり、このときシートは波形状により、奥側は上コロ802に当接しながら、手前側は搬送ローラ803に当接しながらローラニップに案内される。そして、このような状態で挟持される場合、ローラニップの奥及び手前側において、シートSの進入挙動が異なるため、シート先端に折れが発生することがある。
【0013】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、シートの剛度が低い場合でも、シートを安定して搬送することのできる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、シートを搬送する搬送ローラ対と、前記搬送ローラ対のシート搬送方向下流側に設けられた下流側搬送ローラ対とを備えた画像形成装置において、前記搬送ローラ対は、複数の駆動ローラを有し、前記複数の駆動ローラの少なくとも一つの駆動ローラをローラ軸の軸方向に移動可能に設けた駆動ローラ部と、前記複数の駆動ローラのそれぞれに圧接する従動ローラと、移動可能な前記駆動ローラを、ローラ軸の軸方向に往復動作させる往復機構と、を備え、前記往復機構は、前記駆動ローラを前記従動ローラとによりシートを挟持した状態で初期位置から前記ローラ軸の軸方向に移動させて搬送するシートを撓ませ、シートが前記下流側搬送ローラ対に達するときにはシートに形成された撓みを減少させるように前記ローラを往復動作させることを特徴とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のように、駆動ローラを、シートを撓ませながら移動させ、シートが下流側搬送ローラ対に達するときにはシートの撓みを減少させた状態に戻すことにより、シートの剛度が低い場合でも、シートを安定して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるカラー画像形成装置の概略構成を示す図。
【図2】上記カラー画像形成装置の両面搬送装置に設けられた第1ローラユニットの斜視図。
【図3】上記第1ローラユニットを構成する第1搬送ローラ対の構成を説明する断面図。
【図4】上記カラー画像形成装置の制御ブロック図。
【図5】上記第1ローラユニットのシート搬送動作を説明する第1の図。
【図6】上記第1ローラユニットのシート搬送動作を説明する第2の図。
【図7】シート先端位置と上記第1搬送ローラのゴムローラのスラスト方向の移動量(=シートの湾曲量)の関係を表す図。
【図8】上記第1ローラユニットのシート搬送動作を説明する第3の図。
【図9】上記第1ローラユニットの厚いシートを搬送するときの状態を説明する図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置に設けられたローラユニットの構成を説明する斜視図。
【図11】上記ローラユニットの構成を説明する上視図。
【図12】従来の画像形成装置のシート搬送動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるカラー画像形成装置の概略構成を示す図である。図1において、1はカラー画像形成装置であり、1Aはカラー画像形成装置本体(以下、装置本体という)である。
【0018】
装置本体1Aには、画像形成部1Bと、シートSを搬送するシート給送部1Cと、画像形成部1Bで形成されたトナー画像をシート給送部1Cにより給送されたシートSに転写する転写部1Dとが設けられている。また、装置本体1Aには、シートを搬送するシート搬送装置1Eが設けられている。画像形成部1Bは、それぞれ感光体ドラム91、露光装置93、現像器92、一次転写装置45、帯電手段99及びクリーナ95等を備えたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の画像形成ユニット90,96〜98を備えている。なお、各画像形成ユニット90,96〜98の形成する色は、これら4色に限定されるものではなく、また色の並び順もこの限りではない。
【0019】
シート給送部1Cは、シートSをリフトアップ装置11の上に積載する形で収納するシート収納部10と、シート収納部10に収納されたシートSを送り出すシート給送手段12とを備えている。なお、このシート給送手段12としては給紙ローラ等による摩擦分離を利用する方式や、エアによる分離吸着を利用する方式等が挙げられるが、本実施の形態においては、エアによる給紙方式を例に挙げている。また、転写部1Dは、駆動ローラ42、テンションローラ41及び二次転写内ローラ43等のローラ類によって張架され、図中矢印Bの方向へと搬送駆動される中間転写ベルト40を備えている。ここで、この中間転写ベルト40は、一次転写装置45により与えられる所定の加圧力及び静電的負荷バイアスにより、感光体ドラム上に形成されたトナー像が転写されるものである。また、この中間転写ベルト40は、略対向する二次転写内ローラ43及び二次転写外ローラ44により形成される二次転写部において所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えることでシートSへ未定着画像を吸着させるものである。
【0020】
シート搬送装置1Eは、搬送ユニット20、斜行補正装置30、定着前シート搬送部51、分岐搬送装置60、反転搬送装置70、両面搬送装置80等から構成されている。なお、定着前シート搬送部51は、二次転写部でトナー像が転写されたシートを、定着装置50の定着ニップに搬送するものである。
【0021】
そして、このような構成のカラー画像形成装置1において、画像を形成する際には、まず、感光体ドラム91を図中矢印の方向に回転させ、予め帯電手段99により感光体ドラム表面を一様に帯電させる。この後、回転する感光体ドラム91に対し、送られてきた画像情報の信号に基づいて露光装置93が発光し、この光を反射手段94等を適宜経由して照射することにより感光体ドラム91上に潜像が形成される。
【0022】
次に、このようにして感光体ドラム91上に形成された静電潜像に対して、現像装置92によるトナー現像が行われ、感光体ドラム上にトナー像が形成される。この後、一次転写装置45により所定の加圧力及び静電的負荷バイアスが与えられ、中間転写ベルト40上にトナー像が転写される。なお、画像形成部1BのY、M、C及びBkの各画像形成ユニットに90,96〜98よる画像形成は、中間転写ベルト上に一次転写された上流のトナー像に重ね合わせるタイミングで行われる。この結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト40上に形成される。なお、感光体ドラム91上に僅かに残った転写残トナーはクリーナ99により回収され、再び次の画像形成に備える。
【0023】
また、シートSは、シート給送手段12により画像形成部1Bの画像形成タイミングに合わせて送り出される。この後、シートSは搬送ユニット20に設けられた搬送パス20aを通過して搬送中のシートの位置ズレ及び斜行を補正するための斜行補正装置30に搬送される。そして、斜行補正装置30により位置ズレ及び斜行が補正された後、シートSは、二次転写内ローラ43及び二次転写外ローラ44により形成される二次転写部へと搬送され、二次転写部において中間転写ベルト40上のフルカラーのトナー像が二次転写される。なお、中間転写ベルト401上に僅かに残った転写残トナーはクリーナ46により回収され、再び次の画像形成に備える。
【0024】
次に、このようにトナー像が二次転写されたシートSは定着前搬送部51により定着装置50へと搬送される。そして、この定着装置50において所定の加圧力と、一般的にはヒータ等の熱源による加熱効果を加えることにより、シートS上のトナーをシートS上に溶融固着させる。次に、このようにして得られた定着画像を有するシートSは分岐搬送装置60により、そのまま排紙トレー61上に排出される。なお、シートSの両面に画像を形成する場合には、不図示の切替部材の切替により、この後、反転搬送装置70へと搬送される。
【0025】
ここで、このように反転搬送装置70へと搬送されると、シートSはスイッチバック動作を行うことで先後端を入れ替え、両面搬送装置80に設けられた再搬送通路Rへと搬送される。この後、シート給送部1Cから搬送されてくる後続ジョブのシートとのタイミングを合わせてシート搬送装置20が有する再給紙パス20bから合流し、同様に二次転写部へと送られる。画像形成プロセスに関しては1面目と同様なので省略する。
【0026】
ところで、本実施の形態において、両面搬送装置80には、例えば同様の構成の2つのローラユニット80A,80Bが連続して、配置されている。ここで、第1ローラユニット80Aは、図2に示すように、搬送ローラ対である第1搬送ローラ対100と、第1搬送ローラ対100のシート搬送方向下流側に設けられた下流側搬送ローラ対である第2搬送ローラ対200とを備えている。
【0027】
第1搬送ローラ対100は、駆動ローラ部100Aと、従動ローラ100Bとを備えている。駆動ローラ部100Aは、シャフト101と、シャフト101に対しスラスト方向(軸方向)方向に移動可能に設けられたカムフランジ102a,102bと、カムフランジ102a,102bが固着されたゴムローラ103a,103bとを備えている。なお、この駆動ローラ部100Aの駆動ローラであるゴムローラ103a,103bには、それぞれ従動ローラ100Bを構成するコロ107a,107bが圧接している。
【0028】
カムフランジ102a,102bは、付勢部材である、ばね104a,104bにより、各々シャフト101の両端側に付勢されている。シャフト101の端部には第2搬送ローラ対200と同一の駆動源であるステッピングモータ106が連結されている。そして、ステッピングモータ106が回転すると、シャフト101と共にゴムローラ103a,103bが回転し、ゴムローラ103a,103bの対向に配置されたコロ107a,107bとの挟持力によりシートSを搬送する。
【0029】
また、図3に示すように、シャフト101にはピン105a,105bが圧入されており、カムフランジ102a,102bには、このピン105a,105bが嵌合される溝1020a,1020bが形成されている。そして、シャフト101のピン105a,105bをカムフランジ102a,102bの溝1020a,1020bに嵌合することにより、カムフランジ102a,102bはシャフト101と共に回転すると共に、スラスト方向にも移動可能となる。
【0030】
ここで、図2に示すように、カムであるカムフランジ102a,102bの、シャフト101の軸方向に対して直交する方向の側面には、円筒を斜めにカットした形状のカム面102cが形成されている。また、両面搬送装置80(装置本体)の不図示のフレームには、弾性体である板バネ114a,114bが設けられている。そして、この支持部である板バネ114a,114bに、ばね104a,104bにより付勢されたカムフランジ102a,102bのカム面102cに当接する当接部である突き当て部材113a,113bが弾性的に支持されている。
【0031】
そして、突き当て部材113a,113bに、カムフランジ102a,102bのカム面102cが突き当たることにより、シャフト101が回転すると、ゴムローラ103a,103bがカムフランジ102a,102bと一体にスラスト方向に移動する。なお、2つのカムフランジ102a,102bのカム位相は、ピン105a,105bの位相を合わせることにより一致している。
【0032】
第2搬送ローラ対200は、駆動ローラ部200Aと、従動ローラ200Bとを備えている。駆動ローラ部200Aは、シャフト201と、シャフト201に対しスラスト方向に移動可能に設けられたカムフランジ202a,202bと、カムフランジ202a,202bが固着された駆動ローラであるゴムローラ203a,203bとを備えている。なお、このカムフランジ202a,202bは、ばね204a,204bにより、各々シャフト201の両端側に付勢されている。また、カムフランジ202a,202bのカム面202cに、板バネ114a,114bにより弾性的に支持されている突き当て部材113a,113bが突き当たっている。
【0033】
ここで、このシャフト201には、ステッピングモータ106がプーリ108,208、タイミングベルト109を介して連結されており、これによりステッピングモータ106が回転すると、このシャフト201も回転駆動される。そして、シャフト201が回転すると、ゴムローラ203a,203bがカムフランジ202a,202bと一体にスラスト方向に移動する。
【0034】
また、シャフト201が回転すると、シャフト201と共にゴムローラ203a,203bが回転し、ゴムローラ203a,203bの対向に配置されたコロ207a,207bとの挟持力によりシートSを搬送する。なお、2つのプーリ108,208は同一部品であるため、第1及び第2搬送ローラ対100,200の位相及びカムフランジ202,202のカム位相を同じにすることができる。
【0035】
なお、図2において、110はシャフト101に固定されているスリット板であり、このスリット板110には検知孔110hが形成されている。111はホームポジションセンサであり、ホームポジションセンサ111によってスリット板110の検知孔110hを検知することにより、第1搬送ローラ対100の位相を、後述する図4に示す装置本体内のコントローラ500で判断する。
【0036】
また、112は第1搬送ローラ対100のシート搬送方向上流に設けられ、シートの有無を検知するシート検知センサであり、このシート検知センサ112によりコントローラ500は、第1ローラユニット80Aに搬送されたシートの有無を判断している。また、搬送ローラ対100及び搬送ローラ対200の間にはシートを案内する不図示のガイドがシートSを挟むように配置されている。
【0037】
図4は、画像形成装置1の制御ブロック図である。図4において、500は画像読取装置全体を制御する制御部であるコントローラであり、このコントローラ500は、CPU501、プログラム格納用ROM503、データの一時保管用RAM502、通信用I/O504から構成されている。そして、CPU501は、ROM503に格納された制御プログラムにより動作する。また、CPU501には、AD変換部505を介し、ホームポジションセンサ111、シート検知センサ112の信号を認識し、ドライバ506を介してステッピングモータ106の回転動作を制御している。
【0038】
次に、第1ローラユニット80Aのシート搬送動作について説明する。図5はシートSが第1搬送ローラ対100に到達する直前の状態を示す図である。ここで、薄いシートSが反転搬送装置70より第1搬送ローラ対100に搬送されてくるが、この際、第1搬送ローラ対100は停止している。
【0039】
そして、このとき図5の(a)及び(b)に示すように、カムフランジ102a,102bと一体のゴムローラ103a,103bは、最も両者の間隔が開いた状態となっている。なお、このように両者の間隔が開いた状態となる初期位置であるゴムローラ103a,103bのスラスト位置はホームポジションセンサ111により検知可能である。したがって、CPU501は、ホームポジションセンサ111からの検知信号に基づいてステッピングモータ106を停止させることにより、予めゴムローラ103a,103bを、最も両者の間隔が開いた状態にすることができる。
【0040】
次に、シートSの先端をシート検知センサ112が検知すると、CPU501は、第1搬送ローラ対100にシートが到達するタイミングに合わせてステッピングモータ106を回転させる。これにより、カムフランジ102a,102bがゴムローラ103a,103bと共に、かつ突き当て部材113a,113bに突き当たりながら回転する。
【0041】
この結果、ゴムローラ103a,103bは、ばね104a,104bに抗しながら、カムフランジ102a,102bのカム面102cの形状に応じて図6の矢印に示すように、シャフト101の幅方向の中央側に移動する。そして、このようにゴムローラ103a,103bが移動すると、シートSのゴムローラ103a,103bと当接している部分が、ゴムローラ103a,103bとの間の摩擦により、シャフト101の中央側に移動する。これにより、シートSが幅方向に撓む(湾曲する)。
【0042】
図7はシート先端位置とゴムローラ103a,103bのスラスト方向の移動量(=シートの湾曲量)の関係を表す図である。なお、図7において、横軸で示す第1搬送ローラ対100と第2搬送ローラ対200の間隔は、ゴムローラ103a,103bの周長に設定している。したがって、実線で示すように、シート先端が第1搬送ローラ対100と第2搬送ローラ対200の中間地点にあるとき、ゴムローラ103a,103bは最大に移動して最も接近し、シートSの湾曲量(撓み量)も大きくなる。
【0043】
一方、シート先端が第2搬送ローラ対200に到達する時には、ゴムローラ103a,103bはカムフランジ102a,102bのカム面102cの形状に応じてホームポジションに戻る。これにより、湾曲状態(撓み状態)が減少、若しくは消滅して、シートSは平坦化する。この場合、ローラとシートとのスリップにより、湾曲状態が消滅しない場合があるが、シートの先端が折れるほどの大きさの湾曲が残らないようにゴムローラの摩擦係数を設定すればよい。なお、本実施の形態では、第1搬送ローラ対100と第2搬送ローラ対200の中間地点で最も湾曲が大きくなる例を示したが、シートSの湾曲状態は、なるべく第2搬送ローラ対200に到達する直前まで維持した方がシートSの座屈に対して有利である。このため、カムフランジ102a,102bのカム面102cの形状は、点線で示すように最大湾曲位置が搬送ローラ対200に近づくように形成しても良い。
【0044】
次に、一旦平坦化されたシートSの先端は、図8の(a)及び(b)に示すように、第2搬送ローラ対200に到達し、この後、第2搬送ローラ対200により搬送される。なお、シートSが第2搬送ローラ対200に到達したとき、シートSの先端は平坦化されているので、シートSは第2搬送ローラ対200に引っ掛かることなく第2搬送ローラ対200のニップ部に進入し、この後、第2搬送ローラ対200により挟持搬送される。また、シートSが搬送されてくる際、第2搬送ローラ対200の、カムフランジ202a,202bと一体のゴムローラ203a,203bは、最も両者の間隔が開いた状態となっている。
【0045】
この後、ゴムローラ203a,203bが回転すると共に、ゴムローラ203a,203bと一体にカムフランジ202a,202bのカム面202cが、突き当て部材113a,113bに突き当たりながら回転する。これにより、ゴムローラ203a,203bは、ばね204a,204bに抗しながら、シャフト201の中央側に移動する。そして、ゴムローラ203a,203bがシャフト201の中央側に移動すると、ゴムローラ203a,203bとの間の摩擦により、シートSのゴムローラ203a,203bと当接している部分がシャフト201の中央側に移動する。これにより、シートSが幅方向に湾曲する。
【0046】
また、このとき第1搬送ローラ対100のゴムローラ103a,103bも、第2搬送ローラ対200のゴムローラ203a,203bと同期して動作する。これにより、シートSが第1搬送ローラ対100と第2搬送ローラ対200によって挟持搬送される際、シートSは、第1搬送ローラ対100と第2搬送ローラ対200によって同じ幅方向の位置で同じ大きさだけ幅方向に湾曲する。
【0047】
次に、一旦平坦化されたシートSの先端は、シート搬送方向下流側の第2ローラユニット80B(図1参照)に到達し、この後、第2ローラユニット80Bにより搬送される。そして、この後、シートSは第2ローラユニット80Bにより、湾曲及び平坦化を繰り返し、やがて下流側の搬送ローラ対である搬送ユニット20の搬送ローラ対20Aに先端が平坦化した状態で達する。
【0048】
一方、シートの先端が第2ローラユニット80Bに達すると、この後、シートSの後端が第1ローラユニット80Aの第1搬送ローラ対100を抜ける。そして、シートSの後端が第1搬送ローラ対100を抜けたことをシート検知センサ112からの検知信号により検知すると、CPU501は、ステッピングモータ106の停止動作に入る。
【0049】
ここで、シートSの後端が第1搬送ローラ対100を抜けたとき、シートのサイズによっては、第1搬送ローラ対100が、最もゴムローラ間隔が開いた次のシートに備えるためのホームポジションで停止しない場合がある。この場合、ゴムローラ103a,103bは初期位置よりも軸方向中央側に位置するので、この後、第1搬送ローラ対100が回転すると、既述した図7に示す曲線がずれてしまう。
【0050】
この場合は、湾曲が消滅することなくシートが第2搬送ローラ対200に達するようになる。そこで、CPU501は、シート後端が第1搬送ローラ対100を抜けたことを検知すると、検知部であるホームポジションセンサ111からの信号に基づいてステッピングモータ106を停止させる。これにより、第1搬送ローラ対100にシートが達する前に、シャフト101の周方向の位相を、ゴムローラ103a,103bの周方向の位相を初期位置で停止させるような位相に合わせることができる。この結果、第1搬送ローラ対100をホームポジションで停止させることができる。なお、この際、第2搬送ローラ対200においても、同様な位相合わせが行われる。
【0051】
ところで、厚いシートは剛度(剛性)が大きいので、厚いシートを搬送する時にはシートを湾曲させる必要もなく、逆に湾曲させる場合には、非常に大きな力が必要となり、駆動負荷が増大することによる駆動源や伝達機構のコストアップを招く。また、湾曲させた場合、湾曲部が不図示の搬送ガイドと接触する場合があり、この場合には搬送ガイドとの間に大きな摺擦力が生じ、シートに傷が生じたり、あるいはジャムを発生したりすることがある。
【0052】
このため、厚いシートを搬送する場合には、シートが湾曲しないように構成する必要がある。そこで、本実施の形態においては、既述したように、突き当て部材113a,113bを板バネ114a,114bで支持すると共に、板バネ114a,114bのバネ力を、厚紙の剛度よりも弱く設定している。この結果、図9に示すように厚いシートを搬送する時にはカム面102c,202cに押圧されて板バネ114a,114bがシャフト101,201の軸方向の両端側にそれぞれ変形するだけで、ゴムローラ103a,103b,203a,203bは移動しない。
【0053】
このように、カムフランジ102a,102b,202a,202bが回転してもシートSの剛度によりゴムローラ103a,103b,203a,203bが移動しない場合がある。この場合は、突き当て部材113a,113bが板バネ114a,114bと一体に軸方向の端部側に移動する。そして、このように構成することにより、厚いシートを搬送する場合には、厚いシートが湾曲しないようにすることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態においては、シートを搬送する際、ゴムローラ103a,103b,203a,203bを、シートを撓ませながら移動させるようにしている。また、シートが第2搬送ローラ対200、あるいは搬送ユニット20の搬送ローラ対20Aに達するときにはシートの撓みを減少、若しくは消滅させた状態で移動前の初期位置に戻るように往復動作させるようにしている。
【0055】
これにより、シートが薄く剛度が低い場合でも、シート先端が折れることなくシートを安定して搬送することができる。また、上流と下流との搬送ローラの間隔を狭くする必要がないため、搬送ローラの個数を減らし、コスト上昇を抑えることができる。さらに、フランジを用いてシートに腰付けを行う構成ではないので、シート搬送の際、フランジ部での屈曲が発生することがない。このため、シートの腰付けによる光沢スジなどの画像欠陥を軽減し、多種のマテリアルにも対応が可能となる。
【0056】
なお、本実施の形態では、ゴムローラ103a,103b及びゴムローラ203a,203bがホームポジションに戻った時に第2搬送ローラ対200及び搬送ユニット20の搬送ローラ対20Aに到達するように設定している。しかし、シートの先端に折れが生じない程度であれば、シートに小さい湾曲が生じている状態で第2搬送ローラ対200及び搬送ユニット20の搬送ローラ対20Aに到達するようにゴムローラがホームポジションに戻るタイミングをずらしても良い。
【0057】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図10は、本実施の形態に係る画像形成装置に設けられたローラユニットの構成を説明する図である。なお、図10において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示し、詳細な説明は省略する。
【0058】
図10において、301a、301bは、第1搬送ローラ対100のシャフト101の、ゴムローラ103a,103bの近傍位置に固着された第1かさ歯車である小かさ歯車である。302a、302bは、両面搬送装置80の不図示のフレームに設けられ、小かさ歯車301a、301bと噛合してシャフト101と平行に回転する第2かさ歯車である大かさ歯車である。なお、304a、304bは、ゴムローラ103a,103bの側面に固着されたローラフランジである。
【0059】
なお、大かさ歯車302a,302bの上面には、図11に示すように偏心カム303a,303bが一体に形成されている。そして、この偏心カム303a,303bにはゴムローラ103a,103bのローラフランジ304a,304bが、ばね104a,104bにより付勢されて圧接している。なお、第2搬送ローラ対200も同様の構成となっている。
【0060】
ここで、本実施の形態において、小かさ歯車301a,301bと大かさ歯車302a,302bのギア(歯数)比は1:2となっている。これにより、第1搬送ローラ対100が2回転すると、小かさ歯車301a,301bと大かさ歯車302a,302bのギア比により大かさ歯車302a,302bが1回転する。そして、このように大かさ歯車302a,302bが1回転すると、偏心カム303a,303bの作用により、ゴムローラ103a,103bがローラ軸であるシャフト101の軸方向に一往復する。
【0061】
このように、本実施の形態において、ゴムローラ103a,103bを往復動作させる往復機構は、小かさ歯車301a,301b、大かさ歯車302a,302b、偏心カム303a,303b及びばね104a,104bにより構成される。また、この往復機構により、第1搬送ローラ対100が2回転することにより、ゴムローラ103a,103bがシャフト101の軸方向に一往復する。つまり、本実施の形態においては、小かさ歯車301a,301bと大かさ歯車302a,302bとにより、シャフト101が2回回転(複数回転)すると、偏心カム303a,303bが1回転する駆動伝達部が構成される。
【0062】
ここで、既述した第1の実施の形態においては、ゴムローラ103の周長と、第1搬送ローラ対100と第2搬送ローラ対200間の距離を同一にしている。この場合、ローラ間距離を伸ばしたいときには、ローラ径を大きくする必要が生じてしまう。しかし、本実施の形態のように第1搬送100が2回転すると、ゴムローラ103a,103bが1回移動するように構成することにより、同一のローラ径でも搬送ローラ間隔を2倍にすることができる。なお、大かさ歯車302a,302bの歯数を、小かさ歯車301a,301bの歯数の整数倍とすることにより、搬送ローラ間隔を整数倍に拡げることができる。
【0063】
このように、本実施の形態においても、既述した第1の実施の形態と同じ作用、効果を奏するものであり、シートが薄く剛度が低い場合でも、シート先端が折れることなくシートを安定して搬送することができる。
【0064】
ところで、これまで述べた第1及び第2の実施の形態では、ゴムローラを両方とも移動させたが、少なくとも一つのゴムローラを往復動作させるようにすれば良く、またゴムローラの数は2個に限る必要はない。また、これまでの説明においては、ゴムローラを往復動作させる往復機構として、カム機構を例に説明したが、本発明は、これに限らない。往復機構として、例えばモータやソレノイドなどの専用アクチュエータを用いてゴムローラを移動させるようにしても良い。さらに、シートの厚さ等の剛度を検知する手段によって専用アクチュエータによるゴムローラ移動量を制御することにより、シートの湾曲量を細かく調整することが可能である。
【0065】
また、これまでの説明においては、両面搬送装置80に設けられた搬送ローラ対に本発明を適用した例を述べたが、比較的屈曲の少ない場所に設けられる搬送ローラ対にも本発明を適用可能である。さらに、これまでは電子写真方式を用いた画像形成装置に対して本発明を適用した例について説明したが、インクジェット方式や熱転写方式等その他の画像形成方式の画像形成装置について、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…カラー画像形成装置、1A…カラー画像形成装置本体、1B…画像形成部、1E…シート搬送装置、20A…搬送ローラ対、80…両面搬送装置、80A,80B…ローラユニット、100…第1搬送ローラ対、100A…駆動ローラ部、100B…従動ローラ、101…シャフト、102a,102b…カムフランジ、102c…カム面、103a,103b…ゴムローラ、104a,104b…ばね、106…ステッピングモータ、107a,107b…コロ、111…ホームポジションセンサ、113a,113b…突き当て部材、114a,114b…板バネ、200…第2搬送ローラ対、200A…駆動ローラ部、200B…従動ローラ、201…シャフト、202a,202b…カムフランジ、202c…カム面、203a,203b…ゴムローラ、204a,204b…ばね、301a,301b…小かさ歯車、302a,302b…大かさ歯車、303a,303b…偏心カム、304a,304b…ローラフランジ、500…コントローラ、S…シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に画像が形成されたシートを、腰を付けて搬送するようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷機、複写機、FAX、プリンタ等の画像形成装置においては、電子写真方式によりシートに画像を形成するようにしたものがある。このような画像形成装置では、シートに画像を形成する場合、まず画像情報に応じて感光体ドラムを露光して感光体ドラム上に静電気的な潜像を形成させる。次に、この静電気的な潜像を現像器においてトナーによって現像することにより、トナー像として顕像化させ、このトナー像を転写部において給紙部から給送されたシートに転写するようにしている。そして、この後、シートを定着部に設けられた定着ローラと加圧ローラとの定着ニップに搬送し、トナー像を永久画像としてシートに定着させるようにしている。
【0003】
また、従来の画像形成装置においては、画像形成装置本体にシート収納部である給紙カセットを着脱自在に装着している。そして、画像形成時には、給紙カセットに収納されたシートをシート給送ローラにより送り出した後、シート搬送装置により、画像形成部に搬送するようにしている。
【0004】
ところで、近年、版を作らないメリットを生かし、小部数の印刷市場向けとして上述の画像形成装置が提供されてきているが、この軽印刷市場では、多種のシートに対応することが要求される。特に、坪量が60g/m2以下の薄いシートは1枚あたりの単価及び配送時のコストメリットにより、特に使用頻度が高い。しかし、シートは搬送ガイドに案内されながら搬送ローラにより搬送されるが、シートを搬送する際、ガイドとの間の微小な摩擦抵抗や、微小な静電気により、シートがガイドに貼り付く場合がある。特に、薄いシートは剛度(剛性)が小さいため、わずかにガイドに貼り付いた場合でも、座屈を生じ、ジャムが発生することがある。
【0005】
一方、搬送ガイドを設けることなく、搬送ローラのみでシートを搬送するようにすると、薄いシートの場合、剛度が小さいため、搬送する際、シートの先端が下方に撓むようになる。このため、薄いシートを搬送する場合には、搬送ローラの間隔を薄紙が座屈しない距離で配置しなければならない。通常は、搬送ローラの間隔を最小サイズのシートの長さより若干短く配置しているが、薄いシートを搬送する装置では、通常よりも短い間隔で搬送ローラを配置しなければならず、搬送ローラの数が増えてしまう。
【0006】
そこで、従来は、薄いシートを搬送する際に、シートをシート搬送方向に対し直交する幅方向に撓ませることにより、シートの実質的な剛度を高めて(腰付けをして)搬送を行う装置が考案されている。このような装置としては、例えば胴体部分の両側部にフランジ部を設けたローラとコロとを備えており、ローラとコロとによりシートを挟持して搬送する際、フランジ部によりシートを幅方向で撓ませる(特許文献1参照)。
【0007】
また、多種のマテリアルに対応するために、シートの実質的な剛度を高めるための腰付け部を弾性体にて構成するものもある。このような構成のものとしては、例えばローラ本体部の軸方向の一端部に腰付けローラを周方向に沿って突出して設けると共に、この腰付けローラを、柔軟性を有する素材で形成している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−110260号公報
【特許文献2】特開2005−272111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、シートを撓ませることにより腰付して搬送する従来の画像形成装置においては、シート搬送の際、フランジ部での屈曲により、シートに軽微な折れが発生する場合がある。なお、フランジ部や腰付けローラを弾性体で形成し、屈曲を軽微にした場合でも、常にシートの幅方向の同一位置には圧力が大きく掛かるため、シートが折れなくとも、画像が転写された後のシートを搬送する際、画像上にスジ状の光沢ムラが生じることがある。
【0010】
なお、光沢ムラの原因としては、ローラ部とフランジ部の周速の違いによる摺擦跡がある。また、定着後にトナーが完全に固まっていない状態では、微少な圧の違いでも、画像表面の表面粗さが異なってしまうため、光沢ムラとして視認されてしまう。
【0011】
また、シートを撓ませて波形状にした状態で搬送する場合、波形状となった状態でシートが下流に配置されている搬送ローラに達するようになる。しかし、搬送中の波形状は安定しないため、シートが搬送ローラに達し、この後、搬送ローラによりシートが挟持されるとき、シート先端の折れが発生することがある。
【0012】
図12の(a)は腰付けローラ801にシートSが挟持され始めた状態を表すものであり、図12の(b)は搬送中にシートSの先端波形状が安定しない例を表す図である。図12の(c)は、シート先端波形状が不安定な状態で、下流の搬送ローラに達した状態を示す図であり、このときシートは波形状により、奥側は上コロ802に当接しながら、手前側は搬送ローラ803に当接しながらローラニップに案内される。そして、このような状態で挟持される場合、ローラニップの奥及び手前側において、シートSの進入挙動が異なるため、シート先端に折れが発生することがある。
【0013】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、シートの剛度が低い場合でも、シートを安定して搬送することのできる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、シートを搬送する搬送ローラ対と、前記搬送ローラ対のシート搬送方向下流側に設けられた下流側搬送ローラ対とを備えた画像形成装置において、前記搬送ローラ対は、複数の駆動ローラを有し、前記複数の駆動ローラの少なくとも一つの駆動ローラをローラ軸の軸方向に移動可能に設けた駆動ローラ部と、前記複数の駆動ローラのそれぞれに圧接する従動ローラと、移動可能な前記駆動ローラを、ローラ軸の軸方向に往復動作させる往復機構と、を備え、前記往復機構は、前記駆動ローラを前記従動ローラとによりシートを挟持した状態で初期位置から前記ローラ軸の軸方向に移動させて搬送するシートを撓ませ、シートが前記下流側搬送ローラ対に達するときにはシートに形成された撓みを減少させるように前記ローラを往復動作させることを特徴とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のように、駆動ローラを、シートを撓ませながら移動させ、シートが下流側搬送ローラ対に達するときにはシートの撓みを減少させた状態に戻すことにより、シートの剛度が低い場合でも、シートを安定して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるカラー画像形成装置の概略構成を示す図。
【図2】上記カラー画像形成装置の両面搬送装置に設けられた第1ローラユニットの斜視図。
【図3】上記第1ローラユニットを構成する第1搬送ローラ対の構成を説明する断面図。
【図4】上記カラー画像形成装置の制御ブロック図。
【図5】上記第1ローラユニットのシート搬送動作を説明する第1の図。
【図6】上記第1ローラユニットのシート搬送動作を説明する第2の図。
【図7】シート先端位置と上記第1搬送ローラのゴムローラのスラスト方向の移動量(=シートの湾曲量)の関係を表す図。
【図8】上記第1ローラユニットのシート搬送動作を説明する第3の図。
【図9】上記第1ローラユニットの厚いシートを搬送するときの状態を説明する図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置に設けられたローラユニットの構成を説明する斜視図。
【図11】上記ローラユニットの構成を説明する上視図。
【図12】従来の画像形成装置のシート搬送動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるカラー画像形成装置の概略構成を示す図である。図1において、1はカラー画像形成装置であり、1Aはカラー画像形成装置本体(以下、装置本体という)である。
【0018】
装置本体1Aには、画像形成部1Bと、シートSを搬送するシート給送部1Cと、画像形成部1Bで形成されたトナー画像をシート給送部1Cにより給送されたシートSに転写する転写部1Dとが設けられている。また、装置本体1Aには、シートを搬送するシート搬送装置1Eが設けられている。画像形成部1Bは、それぞれ感光体ドラム91、露光装置93、現像器92、一次転写装置45、帯電手段99及びクリーナ95等を備えたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の画像形成ユニット90,96〜98を備えている。なお、各画像形成ユニット90,96〜98の形成する色は、これら4色に限定されるものではなく、また色の並び順もこの限りではない。
【0019】
シート給送部1Cは、シートSをリフトアップ装置11の上に積載する形で収納するシート収納部10と、シート収納部10に収納されたシートSを送り出すシート給送手段12とを備えている。なお、このシート給送手段12としては給紙ローラ等による摩擦分離を利用する方式や、エアによる分離吸着を利用する方式等が挙げられるが、本実施の形態においては、エアによる給紙方式を例に挙げている。また、転写部1Dは、駆動ローラ42、テンションローラ41及び二次転写内ローラ43等のローラ類によって張架され、図中矢印Bの方向へと搬送駆動される中間転写ベルト40を備えている。ここで、この中間転写ベルト40は、一次転写装置45により与えられる所定の加圧力及び静電的負荷バイアスにより、感光体ドラム上に形成されたトナー像が転写されるものである。また、この中間転写ベルト40は、略対向する二次転写内ローラ43及び二次転写外ローラ44により形成される二次転写部において所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えることでシートSへ未定着画像を吸着させるものである。
【0020】
シート搬送装置1Eは、搬送ユニット20、斜行補正装置30、定着前シート搬送部51、分岐搬送装置60、反転搬送装置70、両面搬送装置80等から構成されている。なお、定着前シート搬送部51は、二次転写部でトナー像が転写されたシートを、定着装置50の定着ニップに搬送するものである。
【0021】
そして、このような構成のカラー画像形成装置1において、画像を形成する際には、まず、感光体ドラム91を図中矢印の方向に回転させ、予め帯電手段99により感光体ドラム表面を一様に帯電させる。この後、回転する感光体ドラム91に対し、送られてきた画像情報の信号に基づいて露光装置93が発光し、この光を反射手段94等を適宜経由して照射することにより感光体ドラム91上に潜像が形成される。
【0022】
次に、このようにして感光体ドラム91上に形成された静電潜像に対して、現像装置92によるトナー現像が行われ、感光体ドラム上にトナー像が形成される。この後、一次転写装置45により所定の加圧力及び静電的負荷バイアスが与えられ、中間転写ベルト40上にトナー像が転写される。なお、画像形成部1BのY、M、C及びBkの各画像形成ユニットに90,96〜98よる画像形成は、中間転写ベルト上に一次転写された上流のトナー像に重ね合わせるタイミングで行われる。この結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト40上に形成される。なお、感光体ドラム91上に僅かに残った転写残トナーはクリーナ99により回収され、再び次の画像形成に備える。
【0023】
また、シートSは、シート給送手段12により画像形成部1Bの画像形成タイミングに合わせて送り出される。この後、シートSは搬送ユニット20に設けられた搬送パス20aを通過して搬送中のシートの位置ズレ及び斜行を補正するための斜行補正装置30に搬送される。そして、斜行補正装置30により位置ズレ及び斜行が補正された後、シートSは、二次転写内ローラ43及び二次転写外ローラ44により形成される二次転写部へと搬送され、二次転写部において中間転写ベルト40上のフルカラーのトナー像が二次転写される。なお、中間転写ベルト401上に僅かに残った転写残トナーはクリーナ46により回収され、再び次の画像形成に備える。
【0024】
次に、このようにトナー像が二次転写されたシートSは定着前搬送部51により定着装置50へと搬送される。そして、この定着装置50において所定の加圧力と、一般的にはヒータ等の熱源による加熱効果を加えることにより、シートS上のトナーをシートS上に溶融固着させる。次に、このようにして得られた定着画像を有するシートSは分岐搬送装置60により、そのまま排紙トレー61上に排出される。なお、シートSの両面に画像を形成する場合には、不図示の切替部材の切替により、この後、反転搬送装置70へと搬送される。
【0025】
ここで、このように反転搬送装置70へと搬送されると、シートSはスイッチバック動作を行うことで先後端を入れ替え、両面搬送装置80に設けられた再搬送通路Rへと搬送される。この後、シート給送部1Cから搬送されてくる後続ジョブのシートとのタイミングを合わせてシート搬送装置20が有する再給紙パス20bから合流し、同様に二次転写部へと送られる。画像形成プロセスに関しては1面目と同様なので省略する。
【0026】
ところで、本実施の形態において、両面搬送装置80には、例えば同様の構成の2つのローラユニット80A,80Bが連続して、配置されている。ここで、第1ローラユニット80Aは、図2に示すように、搬送ローラ対である第1搬送ローラ対100と、第1搬送ローラ対100のシート搬送方向下流側に設けられた下流側搬送ローラ対である第2搬送ローラ対200とを備えている。
【0027】
第1搬送ローラ対100は、駆動ローラ部100Aと、従動ローラ100Bとを備えている。駆動ローラ部100Aは、シャフト101と、シャフト101に対しスラスト方向(軸方向)方向に移動可能に設けられたカムフランジ102a,102bと、カムフランジ102a,102bが固着されたゴムローラ103a,103bとを備えている。なお、この駆動ローラ部100Aの駆動ローラであるゴムローラ103a,103bには、それぞれ従動ローラ100Bを構成するコロ107a,107bが圧接している。
【0028】
カムフランジ102a,102bは、付勢部材である、ばね104a,104bにより、各々シャフト101の両端側に付勢されている。シャフト101の端部には第2搬送ローラ対200と同一の駆動源であるステッピングモータ106が連結されている。そして、ステッピングモータ106が回転すると、シャフト101と共にゴムローラ103a,103bが回転し、ゴムローラ103a,103bの対向に配置されたコロ107a,107bとの挟持力によりシートSを搬送する。
【0029】
また、図3に示すように、シャフト101にはピン105a,105bが圧入されており、カムフランジ102a,102bには、このピン105a,105bが嵌合される溝1020a,1020bが形成されている。そして、シャフト101のピン105a,105bをカムフランジ102a,102bの溝1020a,1020bに嵌合することにより、カムフランジ102a,102bはシャフト101と共に回転すると共に、スラスト方向にも移動可能となる。
【0030】
ここで、図2に示すように、カムであるカムフランジ102a,102bの、シャフト101の軸方向に対して直交する方向の側面には、円筒を斜めにカットした形状のカム面102cが形成されている。また、両面搬送装置80(装置本体)の不図示のフレームには、弾性体である板バネ114a,114bが設けられている。そして、この支持部である板バネ114a,114bに、ばね104a,104bにより付勢されたカムフランジ102a,102bのカム面102cに当接する当接部である突き当て部材113a,113bが弾性的に支持されている。
【0031】
そして、突き当て部材113a,113bに、カムフランジ102a,102bのカム面102cが突き当たることにより、シャフト101が回転すると、ゴムローラ103a,103bがカムフランジ102a,102bと一体にスラスト方向に移動する。なお、2つのカムフランジ102a,102bのカム位相は、ピン105a,105bの位相を合わせることにより一致している。
【0032】
第2搬送ローラ対200は、駆動ローラ部200Aと、従動ローラ200Bとを備えている。駆動ローラ部200Aは、シャフト201と、シャフト201に対しスラスト方向に移動可能に設けられたカムフランジ202a,202bと、カムフランジ202a,202bが固着された駆動ローラであるゴムローラ203a,203bとを備えている。なお、このカムフランジ202a,202bは、ばね204a,204bにより、各々シャフト201の両端側に付勢されている。また、カムフランジ202a,202bのカム面202cに、板バネ114a,114bにより弾性的に支持されている突き当て部材113a,113bが突き当たっている。
【0033】
ここで、このシャフト201には、ステッピングモータ106がプーリ108,208、タイミングベルト109を介して連結されており、これによりステッピングモータ106が回転すると、このシャフト201も回転駆動される。そして、シャフト201が回転すると、ゴムローラ203a,203bがカムフランジ202a,202bと一体にスラスト方向に移動する。
【0034】
また、シャフト201が回転すると、シャフト201と共にゴムローラ203a,203bが回転し、ゴムローラ203a,203bの対向に配置されたコロ207a,207bとの挟持力によりシートSを搬送する。なお、2つのプーリ108,208は同一部品であるため、第1及び第2搬送ローラ対100,200の位相及びカムフランジ202,202のカム位相を同じにすることができる。
【0035】
なお、図2において、110はシャフト101に固定されているスリット板であり、このスリット板110には検知孔110hが形成されている。111はホームポジションセンサであり、ホームポジションセンサ111によってスリット板110の検知孔110hを検知することにより、第1搬送ローラ対100の位相を、後述する図4に示す装置本体内のコントローラ500で判断する。
【0036】
また、112は第1搬送ローラ対100のシート搬送方向上流に設けられ、シートの有無を検知するシート検知センサであり、このシート検知センサ112によりコントローラ500は、第1ローラユニット80Aに搬送されたシートの有無を判断している。また、搬送ローラ対100及び搬送ローラ対200の間にはシートを案内する不図示のガイドがシートSを挟むように配置されている。
【0037】
図4は、画像形成装置1の制御ブロック図である。図4において、500は画像読取装置全体を制御する制御部であるコントローラであり、このコントローラ500は、CPU501、プログラム格納用ROM503、データの一時保管用RAM502、通信用I/O504から構成されている。そして、CPU501は、ROM503に格納された制御プログラムにより動作する。また、CPU501には、AD変換部505を介し、ホームポジションセンサ111、シート検知センサ112の信号を認識し、ドライバ506を介してステッピングモータ106の回転動作を制御している。
【0038】
次に、第1ローラユニット80Aのシート搬送動作について説明する。図5はシートSが第1搬送ローラ対100に到達する直前の状態を示す図である。ここで、薄いシートSが反転搬送装置70より第1搬送ローラ対100に搬送されてくるが、この際、第1搬送ローラ対100は停止している。
【0039】
そして、このとき図5の(a)及び(b)に示すように、カムフランジ102a,102bと一体のゴムローラ103a,103bは、最も両者の間隔が開いた状態となっている。なお、このように両者の間隔が開いた状態となる初期位置であるゴムローラ103a,103bのスラスト位置はホームポジションセンサ111により検知可能である。したがって、CPU501は、ホームポジションセンサ111からの検知信号に基づいてステッピングモータ106を停止させることにより、予めゴムローラ103a,103bを、最も両者の間隔が開いた状態にすることができる。
【0040】
次に、シートSの先端をシート検知センサ112が検知すると、CPU501は、第1搬送ローラ対100にシートが到達するタイミングに合わせてステッピングモータ106を回転させる。これにより、カムフランジ102a,102bがゴムローラ103a,103bと共に、かつ突き当て部材113a,113bに突き当たりながら回転する。
【0041】
この結果、ゴムローラ103a,103bは、ばね104a,104bに抗しながら、カムフランジ102a,102bのカム面102cの形状に応じて図6の矢印に示すように、シャフト101の幅方向の中央側に移動する。そして、このようにゴムローラ103a,103bが移動すると、シートSのゴムローラ103a,103bと当接している部分が、ゴムローラ103a,103bとの間の摩擦により、シャフト101の中央側に移動する。これにより、シートSが幅方向に撓む(湾曲する)。
【0042】
図7はシート先端位置とゴムローラ103a,103bのスラスト方向の移動量(=シートの湾曲量)の関係を表す図である。なお、図7において、横軸で示す第1搬送ローラ対100と第2搬送ローラ対200の間隔は、ゴムローラ103a,103bの周長に設定している。したがって、実線で示すように、シート先端が第1搬送ローラ対100と第2搬送ローラ対200の中間地点にあるとき、ゴムローラ103a,103bは最大に移動して最も接近し、シートSの湾曲量(撓み量)も大きくなる。
【0043】
一方、シート先端が第2搬送ローラ対200に到達する時には、ゴムローラ103a,103bはカムフランジ102a,102bのカム面102cの形状に応じてホームポジションに戻る。これにより、湾曲状態(撓み状態)が減少、若しくは消滅して、シートSは平坦化する。この場合、ローラとシートとのスリップにより、湾曲状態が消滅しない場合があるが、シートの先端が折れるほどの大きさの湾曲が残らないようにゴムローラの摩擦係数を設定すればよい。なお、本実施の形態では、第1搬送ローラ対100と第2搬送ローラ対200の中間地点で最も湾曲が大きくなる例を示したが、シートSの湾曲状態は、なるべく第2搬送ローラ対200に到達する直前まで維持した方がシートSの座屈に対して有利である。このため、カムフランジ102a,102bのカム面102cの形状は、点線で示すように最大湾曲位置が搬送ローラ対200に近づくように形成しても良い。
【0044】
次に、一旦平坦化されたシートSの先端は、図8の(a)及び(b)に示すように、第2搬送ローラ対200に到達し、この後、第2搬送ローラ対200により搬送される。なお、シートSが第2搬送ローラ対200に到達したとき、シートSの先端は平坦化されているので、シートSは第2搬送ローラ対200に引っ掛かることなく第2搬送ローラ対200のニップ部に進入し、この後、第2搬送ローラ対200により挟持搬送される。また、シートSが搬送されてくる際、第2搬送ローラ対200の、カムフランジ202a,202bと一体のゴムローラ203a,203bは、最も両者の間隔が開いた状態となっている。
【0045】
この後、ゴムローラ203a,203bが回転すると共に、ゴムローラ203a,203bと一体にカムフランジ202a,202bのカム面202cが、突き当て部材113a,113bに突き当たりながら回転する。これにより、ゴムローラ203a,203bは、ばね204a,204bに抗しながら、シャフト201の中央側に移動する。そして、ゴムローラ203a,203bがシャフト201の中央側に移動すると、ゴムローラ203a,203bとの間の摩擦により、シートSのゴムローラ203a,203bと当接している部分がシャフト201の中央側に移動する。これにより、シートSが幅方向に湾曲する。
【0046】
また、このとき第1搬送ローラ対100のゴムローラ103a,103bも、第2搬送ローラ対200のゴムローラ203a,203bと同期して動作する。これにより、シートSが第1搬送ローラ対100と第2搬送ローラ対200によって挟持搬送される際、シートSは、第1搬送ローラ対100と第2搬送ローラ対200によって同じ幅方向の位置で同じ大きさだけ幅方向に湾曲する。
【0047】
次に、一旦平坦化されたシートSの先端は、シート搬送方向下流側の第2ローラユニット80B(図1参照)に到達し、この後、第2ローラユニット80Bにより搬送される。そして、この後、シートSは第2ローラユニット80Bにより、湾曲及び平坦化を繰り返し、やがて下流側の搬送ローラ対である搬送ユニット20の搬送ローラ対20Aに先端が平坦化した状態で達する。
【0048】
一方、シートの先端が第2ローラユニット80Bに達すると、この後、シートSの後端が第1ローラユニット80Aの第1搬送ローラ対100を抜ける。そして、シートSの後端が第1搬送ローラ対100を抜けたことをシート検知センサ112からの検知信号により検知すると、CPU501は、ステッピングモータ106の停止動作に入る。
【0049】
ここで、シートSの後端が第1搬送ローラ対100を抜けたとき、シートのサイズによっては、第1搬送ローラ対100が、最もゴムローラ間隔が開いた次のシートに備えるためのホームポジションで停止しない場合がある。この場合、ゴムローラ103a,103bは初期位置よりも軸方向中央側に位置するので、この後、第1搬送ローラ対100が回転すると、既述した図7に示す曲線がずれてしまう。
【0050】
この場合は、湾曲が消滅することなくシートが第2搬送ローラ対200に達するようになる。そこで、CPU501は、シート後端が第1搬送ローラ対100を抜けたことを検知すると、検知部であるホームポジションセンサ111からの信号に基づいてステッピングモータ106を停止させる。これにより、第1搬送ローラ対100にシートが達する前に、シャフト101の周方向の位相を、ゴムローラ103a,103bの周方向の位相を初期位置で停止させるような位相に合わせることができる。この結果、第1搬送ローラ対100をホームポジションで停止させることができる。なお、この際、第2搬送ローラ対200においても、同様な位相合わせが行われる。
【0051】
ところで、厚いシートは剛度(剛性)が大きいので、厚いシートを搬送する時にはシートを湾曲させる必要もなく、逆に湾曲させる場合には、非常に大きな力が必要となり、駆動負荷が増大することによる駆動源や伝達機構のコストアップを招く。また、湾曲させた場合、湾曲部が不図示の搬送ガイドと接触する場合があり、この場合には搬送ガイドとの間に大きな摺擦力が生じ、シートに傷が生じたり、あるいはジャムを発生したりすることがある。
【0052】
このため、厚いシートを搬送する場合には、シートが湾曲しないように構成する必要がある。そこで、本実施の形態においては、既述したように、突き当て部材113a,113bを板バネ114a,114bで支持すると共に、板バネ114a,114bのバネ力を、厚紙の剛度よりも弱く設定している。この結果、図9に示すように厚いシートを搬送する時にはカム面102c,202cに押圧されて板バネ114a,114bがシャフト101,201の軸方向の両端側にそれぞれ変形するだけで、ゴムローラ103a,103b,203a,203bは移動しない。
【0053】
このように、カムフランジ102a,102b,202a,202bが回転してもシートSの剛度によりゴムローラ103a,103b,203a,203bが移動しない場合がある。この場合は、突き当て部材113a,113bが板バネ114a,114bと一体に軸方向の端部側に移動する。そして、このように構成することにより、厚いシートを搬送する場合には、厚いシートが湾曲しないようにすることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態においては、シートを搬送する際、ゴムローラ103a,103b,203a,203bを、シートを撓ませながら移動させるようにしている。また、シートが第2搬送ローラ対200、あるいは搬送ユニット20の搬送ローラ対20Aに達するときにはシートの撓みを減少、若しくは消滅させた状態で移動前の初期位置に戻るように往復動作させるようにしている。
【0055】
これにより、シートが薄く剛度が低い場合でも、シート先端が折れることなくシートを安定して搬送することができる。また、上流と下流との搬送ローラの間隔を狭くする必要がないため、搬送ローラの個数を減らし、コスト上昇を抑えることができる。さらに、フランジを用いてシートに腰付けを行う構成ではないので、シート搬送の際、フランジ部での屈曲が発生することがない。このため、シートの腰付けによる光沢スジなどの画像欠陥を軽減し、多種のマテリアルにも対応が可能となる。
【0056】
なお、本実施の形態では、ゴムローラ103a,103b及びゴムローラ203a,203bがホームポジションに戻った時に第2搬送ローラ対200及び搬送ユニット20の搬送ローラ対20Aに到達するように設定している。しかし、シートの先端に折れが生じない程度であれば、シートに小さい湾曲が生じている状態で第2搬送ローラ対200及び搬送ユニット20の搬送ローラ対20Aに到達するようにゴムローラがホームポジションに戻るタイミングをずらしても良い。
【0057】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図10は、本実施の形態に係る画像形成装置に設けられたローラユニットの構成を説明する図である。なお、図10において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示し、詳細な説明は省略する。
【0058】
図10において、301a、301bは、第1搬送ローラ対100のシャフト101の、ゴムローラ103a,103bの近傍位置に固着された第1かさ歯車である小かさ歯車である。302a、302bは、両面搬送装置80の不図示のフレームに設けられ、小かさ歯車301a、301bと噛合してシャフト101と平行に回転する第2かさ歯車である大かさ歯車である。なお、304a、304bは、ゴムローラ103a,103bの側面に固着されたローラフランジである。
【0059】
なお、大かさ歯車302a,302bの上面には、図11に示すように偏心カム303a,303bが一体に形成されている。そして、この偏心カム303a,303bにはゴムローラ103a,103bのローラフランジ304a,304bが、ばね104a,104bにより付勢されて圧接している。なお、第2搬送ローラ対200も同様の構成となっている。
【0060】
ここで、本実施の形態において、小かさ歯車301a,301bと大かさ歯車302a,302bのギア(歯数)比は1:2となっている。これにより、第1搬送ローラ対100が2回転すると、小かさ歯車301a,301bと大かさ歯車302a,302bのギア比により大かさ歯車302a,302bが1回転する。そして、このように大かさ歯車302a,302bが1回転すると、偏心カム303a,303bの作用により、ゴムローラ103a,103bがローラ軸であるシャフト101の軸方向に一往復する。
【0061】
このように、本実施の形態において、ゴムローラ103a,103bを往復動作させる往復機構は、小かさ歯車301a,301b、大かさ歯車302a,302b、偏心カム303a,303b及びばね104a,104bにより構成される。また、この往復機構により、第1搬送ローラ対100が2回転することにより、ゴムローラ103a,103bがシャフト101の軸方向に一往復する。つまり、本実施の形態においては、小かさ歯車301a,301bと大かさ歯車302a,302bとにより、シャフト101が2回回転(複数回転)すると、偏心カム303a,303bが1回転する駆動伝達部が構成される。
【0062】
ここで、既述した第1の実施の形態においては、ゴムローラ103の周長と、第1搬送ローラ対100と第2搬送ローラ対200間の距離を同一にしている。この場合、ローラ間距離を伸ばしたいときには、ローラ径を大きくする必要が生じてしまう。しかし、本実施の形態のように第1搬送100が2回転すると、ゴムローラ103a,103bが1回移動するように構成することにより、同一のローラ径でも搬送ローラ間隔を2倍にすることができる。なお、大かさ歯車302a,302bの歯数を、小かさ歯車301a,301bの歯数の整数倍とすることにより、搬送ローラ間隔を整数倍に拡げることができる。
【0063】
このように、本実施の形態においても、既述した第1の実施の形態と同じ作用、効果を奏するものであり、シートが薄く剛度が低い場合でも、シート先端が折れることなくシートを安定して搬送することができる。
【0064】
ところで、これまで述べた第1及び第2の実施の形態では、ゴムローラを両方とも移動させたが、少なくとも一つのゴムローラを往復動作させるようにすれば良く、またゴムローラの数は2個に限る必要はない。また、これまでの説明においては、ゴムローラを往復動作させる往復機構として、カム機構を例に説明したが、本発明は、これに限らない。往復機構として、例えばモータやソレノイドなどの専用アクチュエータを用いてゴムローラを移動させるようにしても良い。さらに、シートの厚さ等の剛度を検知する手段によって専用アクチュエータによるゴムローラ移動量を制御することにより、シートの湾曲量を細かく調整することが可能である。
【0065】
また、これまでの説明においては、両面搬送装置80に設けられた搬送ローラ対に本発明を適用した例を述べたが、比較的屈曲の少ない場所に設けられる搬送ローラ対にも本発明を適用可能である。さらに、これまでは電子写真方式を用いた画像形成装置に対して本発明を適用した例について説明したが、インクジェット方式や熱転写方式等その他の画像形成方式の画像形成装置について、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…カラー画像形成装置、1A…カラー画像形成装置本体、1B…画像形成部、1E…シート搬送装置、20A…搬送ローラ対、80…両面搬送装置、80A,80B…ローラユニット、100…第1搬送ローラ対、100A…駆動ローラ部、100B…従動ローラ、101…シャフト、102a,102b…カムフランジ、102c…カム面、103a,103b…ゴムローラ、104a,104b…ばね、106…ステッピングモータ、107a,107b…コロ、111…ホームポジションセンサ、113a,113b…突き当て部材、114a,114b…板バネ、200…第2搬送ローラ対、200A…駆動ローラ部、200B…従動ローラ、201…シャフト、202a,202b…カムフランジ、202c…カム面、203a,203b…ゴムローラ、204a,204b…ばね、301a,301b…小かさ歯車、302a,302b…大かさ歯車、303a,303b…偏心カム、304a,304b…ローラフランジ、500…コントローラ、S…シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送ローラ対と、前記搬送ローラ対のシート搬送方向下流側に設けられた下流側搬送ローラ対とを備えた画像形成装置において、
前記搬送ローラ対は、
複数の駆動ローラを有し、前記複数の駆動ローラの少なくとも一つの駆動ローラをローラ軸の軸方向に移動可能に設けた駆動ローラ部と、
前記複数の駆動ローラのそれぞれに圧接する従動ローラと、
移動可能な前記駆動ローラを、ローラ軸の軸方向に往復動作させる往復機構と、
を備え、
前記往復機構は、前記駆動ローラを前記従動ローラとによりシートを挟持した状態で初期位置から前記ローラ軸の軸方向に移動させて搬送するシートを撓ませ、シートが前記下流側搬送ローラ対に達するときにはシートに形成された撓みを減少させるように前記ローラを往復動作させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記往復機構は、前記移動可能な駆動ローラに設けられ、前記ローラ軸と共に回転するカムと、装置本体に設けられ、前記カムと当接する当接部と、前記カムを前記当接部に圧接するように付勢する付勢部材と、を備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記カムのカム面の形状を、前記移動可能な駆動ローラが前記初期位置から最大に移動したとき、シートの先端が前記搬送ローラ対と前記下流側搬送ローラ対の間の中間よりもシート搬送方向下流側となるような形状とすることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記当接部を弾性的に支持する支持部を備え、
前記カムが回転しても、シートの剛度により前記移動可能な駆動ローラが移動しない場合には、前記カムにより押圧されて前記当接部が前記ローラ軸の軸方向の端部側に移動するようにすることを特徴とする請求項2又は3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記カムの周長を、前記搬送ローラ対と前記下流側搬送ローラ対との間の距離の整数倍とすることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記往復機構は、前記ローラ軸と共に回転する第1かさ歯車と、装置本体に設けられ、前記第1かさ歯車と噛合して前記ローラ軸と平行に回転する第2かさ歯車と、前記第2かさ歯車に設けられ、前記移動可能な駆動ローラに当接するカムと、前記移動可能な駆動ローラを前記カムに圧接するように付勢する付勢部材と、を備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2かさ歯車の歯数を、前記第1かさ歯車の歯数の整数倍とすることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ローラ軸の周方向の位相を検知する検知部を備え、
前記検知部からの信号に基づき、前記下流側搬送ローラ対にシートが達する前に、前記移動可能な駆動ローラを前記初期位置で停止させるように前記ローラ軸の周方向の位相を合わせることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項1】
シートを搬送する搬送ローラ対と、前記搬送ローラ対のシート搬送方向下流側に設けられた下流側搬送ローラ対とを備えた画像形成装置において、
前記搬送ローラ対は、
複数の駆動ローラを有し、前記複数の駆動ローラの少なくとも一つの駆動ローラをローラ軸の軸方向に移動可能に設けた駆動ローラ部と、
前記複数の駆動ローラのそれぞれに圧接する従動ローラと、
移動可能な前記駆動ローラを、ローラ軸の軸方向に往復動作させる往復機構と、
を備え、
前記往復機構は、前記駆動ローラを前記従動ローラとによりシートを挟持した状態で初期位置から前記ローラ軸の軸方向に移動させて搬送するシートを撓ませ、シートが前記下流側搬送ローラ対に達するときにはシートに形成された撓みを減少させるように前記ローラを往復動作させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記往復機構は、前記移動可能な駆動ローラに設けられ、前記ローラ軸と共に回転するカムと、装置本体に設けられ、前記カムと当接する当接部と、前記カムを前記当接部に圧接するように付勢する付勢部材と、を備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記カムのカム面の形状を、前記移動可能な駆動ローラが前記初期位置から最大に移動したとき、シートの先端が前記搬送ローラ対と前記下流側搬送ローラ対の間の中間よりもシート搬送方向下流側となるような形状とすることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記当接部を弾性的に支持する支持部を備え、
前記カムが回転しても、シートの剛度により前記移動可能な駆動ローラが移動しない場合には、前記カムにより押圧されて前記当接部が前記ローラ軸の軸方向の端部側に移動するようにすることを特徴とする請求項2又は3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記カムの周長を、前記搬送ローラ対と前記下流側搬送ローラ対との間の距離の整数倍とすることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記往復機構は、前記ローラ軸と共に回転する第1かさ歯車と、装置本体に設けられ、前記第1かさ歯車と噛合して前記ローラ軸と平行に回転する第2かさ歯車と、前記第2かさ歯車に設けられ、前記移動可能な駆動ローラに当接するカムと、前記移動可能な駆動ローラを前記カムに圧接するように付勢する付勢部材と、を備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2かさ歯車の歯数を、前記第1かさ歯車の歯数の整数倍とすることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ローラ軸の周方向の位相を検知する検知部を備え、
前記検知部からの信号に基づき、前記下流側搬送ローラ対にシートが達する前に、前記移動可能な駆動ローラを前記初期位置で停止させるように前記ローラ軸の周方向の位相を合わせることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−143995(P2011−143995A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5392(P2010−5392)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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