説明

画像形成装置

【課題】像担持体駆動用ギアと回転伝動ギアを歯面中央部で噛み合わせて回転伝達誤差を低減し、画像の品質を向上できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体2と、像担持体駆動軸600と、像担持体駆動軸600に平行な出力軸611を有するモータ610と、像担持体駆動軸600に固定される樹脂製の像担持体駆動用ギア620と、モータ610の出力軸611又は中間軸630に固定され、像担持体駆動用ギア620に噛み合う回転伝動用ギア640と、を備える。像担持体2は、モータ610の出力軸611の回転が回転伝動用ギア640から像担持体駆動用ギア620に伝達されて駆動回転され、像担持体駆動用ギア620は、回転伝達トルクに対する回転伝達誤差が0.8μm以下になるように、該像担持体駆動用ギア620の歯面622を歯筋方向に沿って0.0075±0.0035mmのクラウニング量を有するクラウニング形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プリンタやコピー機等のように、感光体ドラム等の像担持体と、ギアの噛み合いにより像担持体を駆動する駆動機構と、を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体ドラム等の像担持体を駆動する像担持体駆動用ギアとしては、ギアの噛み合いにより発生する微小振動による像担持体の回転ムラ、ひいては、画像上に現れるピッチムラを抑制するために、樹脂から形成された大口径の樹脂ギアを用いるのが一般的である。
【0003】
そして、大口径の像担持体駆動用ギアと、モータの出力軸又は該出力軸に連動する中間軸に固定される回転伝動ギアとの歯幅中央部における噛み合いの安定化を図るため、像担持体駆動用ギアの歯面を、歯筋方向に沿ってクラウニング形状に形成したものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−258353号公報
【特許文献2】特開2005−292634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、像担持体に接続される像担持体駆動軸と、モータの出力軸又は中間軸とは、像担持体の組み付け誤差やモータの出力軸の振れ等の累積によって、軸平行度が保てない(出ない)場合がある。軸平行度が保てなかった場合、ギア同士は、傾いた状態で噛み合うことになって、歯面の端部で片当たりする。その結果、回転伝達誤差を発生しやすく、画像にジッタ(微小な範囲内で画像信号が揺れ動くこと)が生じ、画像の品質の低下を招きやすい。
【0006】
本発明は、軸平行度が保てなかったとしても、像担持体駆動用ギアと回転伝動ギアとを歯面中央部において噛み合わせて回転伝達誤差を低減し、画像の品質を向上させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、像担持体と、前記像担持体に接続される像担持体駆動軸と、前記像担持体駆動軸に平行な出力軸を有するモータと、樹脂から形成され、前記像担持体駆動軸に固定される像担持体駆動用ギアと、前記モータの出力軸又は該出力軸に連動する中間軸に固定され、前記像担持体駆動用ギアに噛み合う回転伝動用ギアと、を備え、前記像担持体は、前記モータの出力軸の回転が前記回転伝動用ギアから前記像担持体駆動用ギアに伝達されて、駆動回転させるように構成され、前記像担持体駆動用ギアは、回転伝達トルクに対する最大回転伝達誤差が0.8μm以下になるように、該像担持体駆動用ギアの歯面を歯筋方向に沿って0.0075±0.0035mmのクラウニング量を有するクラウニング形状に形成している画像形成装置に関する。
【0008】
また、前記クラウニング量は、0.0075±0.0025mmであることが好ましい。
【0009】
また、前記回転伝達トルクは、5kgf・cm以下に設定されていることが好ましい。
【0010】
また、前記像担持体駆動用ギアは、射出圧縮成型により形成されたものであることが好ましい。
【0011】
また、前記回転伝動用ギアは、金属材料から形成された金属ギアからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軸平行度が保てなかったとしても、像担持体駆動用ギアと回転伝動ギアとを歯面中央部において噛み合わせて回転伝達誤差を低減し、画像の品質を向上させることができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における画像形成装置としてのプリンタ1の各構成要素の配置を説明するための図である。
【図2】本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム2の回転駆動部の概略構成を説明する縦断面図である。
【図3】本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム2の回転駆動部の要部の構成を示す斜視図である。
【図4】本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム2の回転駆動部の要部を取り出して示す斜視図である。
【図5】本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム2の回転駆動部の主要素である感光体ドラム駆動用ギアを拡大して示す斜視図である。
【図6】本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム駆動用ギア620の歯部の成型初期の形状を説明する拡大斜視図である。
【図7】本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム駆動用ギア620の歯部の最終形状を説明する拡大斜視図である。
【図8】本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム駆動用ギア620の歯部の最終形状を説明する拡大平面図である。
【図9】軸平行度が0°の場合の比較例1の実験結果を示すグラフである。
【図10】軸平行度が0°の場合の実施例1の実験結果を示すグラフである。
【図11】軸平行度が0°の場合の実施例2の実験結果を示すグラフである。
【図12】軸平行度が0°の場合の比較例2の実験結果を示すグラフである。
【図13】軸平行度が0°の場合の比較例3の結果を示すグラフである。
【図14】軸平行度が0.1°の場合の比較例1の実験結果を示すグラフである。
【図15】軸平行度が0.1°の場合の実施例1の実験結果を示すグラフである。
【図16】軸平行度が0.1°の場合の実施例2の実験結果を示すグラフである。
【図17】軸平行度が0.1°の場合の比較例2の実験結果を示すグラフである。
【図18】軸平行度が0.1°の場合の比較例3の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1により、本実施形態における画像形成装置としてのプリンタ1における全体構造を説明する。図1は、プリンタ1の各構成要素の配置を説明するための図である。
【0015】
図1に示すように、画像形成装置としてのプリンタ1は、装置本体Mと、所定の画像情報に基づいてシート状の被転写材としての用紙Tに所定のトナー画像を形成する画像形成部GKと、用紙Tを画像形成部GKに給紙すると共にトナー画像が形成された用紙Tを排紙する給排紙部KHとを有する。
装置本体Mにおける外形は、筐体としてのケース体BDにより構成される。
【0016】
図1に示すように、画像形成部GKは、像担持体(感光体)としての感光体ドラム2と、帯電部10と、露光ユニットとしてのレーザスキャナユニット4と、現像器16と、トナーカートリッジ5と、トナー供給部6と、ドラムクリーニング部11と、除電器12と、転写ローラ8と、定着部9とを備える。
【0017】
図1に示すように、給排紙部KHは、給紙カセット52と、手差し給紙部64と、用紙Tの搬送路Lと、レジストローラ対80と、排紙部50とを備える。
【0018】
以下、画像形成部GK及び給排紙部KHの各構成について詳細に説明する。
まず、画像形成部GKについて説明する。
画像形成部GKにおいては、感光体ドラム2の表面に沿って順に、上流側から下流側に順に、帯電部10による帯電、レーザスキャナユニット4による露光、現像器16による現像、転写ローラ8による転写、除電器12による除電、及びドラムクリーニング部11によるクリーニングが行われる。
【0019】
感光体ドラム2は、円筒形状の部材からなり、感光体又は像担持体として機能する。感光体ドラム2は、搬送路Lにおける用紙Tの搬送方向に対して直交する方向に延びる機軸を中心に、矢印の方向に回転可能に配置される。感光体ドラム2の表面には、静電潜像が形成され得る。
感光体ドラム2の回転駆動部の構成については、後で詳しく説明する。
【0020】
帯電部10は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。帯電部10は、感光体ドラム2の表面を一様に負(マイナス極性)又は正(プラス極性)に帯電させる。
【0021】
レーザスキャナユニット4は、露光ユニットとして機能するものであり、感光体ドラム2の表面から離間して配置される。レーザスキャナユニット4は、不図示のレーザ光源、ポリゴンミラー、ポリゴンミラー駆動用モータ等を有して構成される。
【0022】
レーザスキャナユニット4は、PC(パーソナルコンピュータ)等の外部機器から入力された画像情報に基づいて、感光体ドラム2の表面を走査露光する。レーザスキャナユニット4により走査露光されることで、感光体ドラム2の表面の露光された部分の電荷が除去される。これにより、感光体ドラム2の表面に静電潜像が形成される。
【0023】
現像器16は、感光体ドラム2に対応して設けられ、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。現像器16は、感光体ドラム2に形成された静電潜像に単色(通常はブラック)のトナーを付着させて、単色のトナー画像を感光体ドラム2の表面に形成する。現像器16は、感光体ドラム2の表面に対向配置された現像ローラ17、トナー攪拌用の攪拌ローラ18等を有して構成される。
【0024】
トナーカートリッジ5は、現像器16に対応して設けられており、現像器16に対して供給されるトナーを収容する。
【0025】
トナー供給部6は、トナーカートリッジ5及び現像器16に対応して設けられており、トナーカートリッジ5に収容されたトナーを現像器16に対して供給する。トナー供給部6と現像器16とは、不図示のトナー供給路により結ばれている。
【0026】
転写ローラ8は、感光体ドラム2の表面に現像されたトナー画像を用紙Tに転写させる。転写ローラ8には、不図示の転写バイアス印加部により、感光体ドラム2に形成されたトナー画像を用紙Tに転写させるための転写バイアスが印加される。転写ローラ8は、感光体ドラム2に対して当接した状態で回転可能に構成される。
【0027】
感光体ドラム2と転写ローラ8との間で、搬送路Lを搬送される用紙Tが挟み込まれる。挟み込まれた用紙Tは、感光体ドラム2の表面に押し当てられる。感光体ドラム2と転写ローラ8との間で、転写ニップNが形成される。転写ニップNにおいて、感光体ドラム2に現像されたトナー画像が用紙Tに転写される。
【0028】
除電器12は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。除電器12は、感光体ドラム2の表面に光を照射することにより、転写が行われた後の感光体ドラム2の表面を除電する(電荷を除去する)。
【0029】
ドラムクリーニング部11は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。ドラムクリーニング部11は、感光体ドラム2の表面に残存したトナーや付着物を除去すると共に、除去されたトナー等を所定の回収機構へ搬送して、回収させる。
【0030】
定着部9は、用紙Tに転写されたトナー画像を構成するトナーを溶融及び加圧して、用紙Tに定着させる。定着部9は、ヒータにより加熱される加熱回転体9aと、加熱回転体9aに圧接される加圧回転体9bと、を備える。加熱回転体9aと加圧回転体9bとは、トナー画像が転写された用紙Tを挟み込んで加圧すると共に、搬送する。加熱回転体9aと加圧回転体9bとの間に挟み込まれた状態で用紙Tが搬送されることで、用紙Tに転写されたトナーは、溶融及び加圧され、用紙Tに定着される。
【0031】
次に、給排紙部KHについて説明する。
図1に示すように、装置本体Mの下部には、用紙Tを収容する1個の給紙カセット52が配置される。給紙カセット52は、装置本体Mの右側(図1における右側)から水平方向に引き出し可能に構成される。給紙カセット52には、用紙Tが載置される載置板60が配置される。給紙カセット52には、用紙Tが載置板60の上に積層された状態で収容される。載置板60に載置された用紙Tは、給紙カセット52における用紙送り出し側の端部(図1において右側の端部)に配置されるカセット給紙部51により搬送路Lに送り出される。カセット給紙部51は、載置板60上の用紙Tを取り出すための前送りコロ61と、用紙Tを1枚ずつ搬送路Lに送り出すための給紙ローラ対63とからなる重送防止機構を備える。
【0032】
装置本体Mの右側(図1において右側)には、手差し給紙部64が設けられる。手差し給紙部64は、給紙カセット52にセットされる用紙Tとは異なる大きさや種類の用紙Tを装置本体Mに供給することを主目的として設けられる。手差し給紙部64は、閉状態において装置本体Mの前面の一部を構成する手差しトレイ65と、給紙コロ66とを備える。手差しトレイ65は、その下端が給紙コロ66の近傍に回動自在(開閉自在)に取り付けられる。開状態の手差しトレイ65には、用紙Tが載置される。給紙コロ66は、開状態の手差しトレイ65に載置された用紙Tを手差し搬送路Laに給紙する。
【0033】
装置本体Mにおける上方側には、排紙部50が設けられる。排紙部50は、第3ローラ対53により用紙Tを装置本体Mの外部に排紙する。排紙部50の詳細については後述する。
【0034】
用紙Tを搬送する搬送路Lは、カセット給紙部51から転写ニップNまでの第1搬送路L1と、転写ニップNから定着部9までの第2搬送路L2と、定着部9から排紙部50までの第3搬送路L3と、手差し給紙部64から供給される用紙を第1搬送路L1に合流させる手差し搬送路Laと、第3搬送路L3を下流側から上流側へ搬送する用紙を、表裏反転させて第1搬送路L1に戻す戻り搬送路Lbとを備える。
【0035】
また、第1搬送路L1の途中には、第1合流部P1及び第2合流部P2が設けられている。第3搬送路L3の途中には、第1分岐部Q1が設けられている。
第1合流部P1は、手差し搬送路Laが第1搬送路L1に合流する合流部である。第2合流部P2は、戻り搬送路Lbが第1搬送路L1に合流する合流部である。
第1分岐部Q1は、戻り搬送路Lbが第3搬送路L3から分岐する分岐部で、第1ローラ対54a及び第2ローラ対54bを有する。第1ローラ対54aの一方のローラと第2ローラ対54bの一方のローラとは兼用される。
【0036】
第1搬送路L1の途中(詳細には、第2合流部P2と転写ローラ8との間)には、用紙Tを検出するためのセンサと、用紙Tのスキュー(斜め給紙)補正や画像形成部GKにおけるトナー画像の形成とタイミングを合わせるためのレジストローラ対80とが配置される。センサは、用紙Tの搬送方向におけるレジストローラ対80の直前(搬送方向における上流側)に配置される。レジストローラ対80は、センサからの検出信号情報に基づいて上述の補正やタイミング調整をして用紙Tを搬送する。
【0037】
戻し搬送路Lbは、用紙Tに両面印刷を行う際に、既に印刷されている面とは反対面(未印刷面)を感光体ドラム2に対向させるために設けられる搬送路である。
戻し搬送路Lbによれば、第1分岐部Q1から第1ローラ対54aにより排紙部50側に搬送された用紙Tを表裏反転させて第2ローラ対54bにより第1搬送路L1に戻して、転写ローラ8の上流側に配置されたレジストローラ対80の上流側に搬送させることができる。戻し搬送路Lbにより表裏反転された用紙Tには、転写ニップNにおいて未印刷面に対して所定のトナー画像が転写される。
【0038】
第3搬送路L3における端部には、排紙部50が形成される。排紙部50は、装置本体Mにおける上方側に配置される。排紙部50は、装置本体Mの右側(図1において右側、手差し給紙部64側)に向けて開口している。排紙部50は、第3搬送路L3を搬送される用紙Tを第3ローラ対53により装置本体Mの外部に排紙する。
【0039】
排紙部50における開口側には、排紙集積部M1が形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面(外面)に形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面が下方に窪んで形成された部分である。排紙集積部M1の底面は、装置本体Mにおける上面の一部を構成する。排紙集積部M1には、所定のトナー画像が形成され排紙部50から排紙された用紙Tが積層して集積される。
なお、各搬送路の所定位置には用紙検出用のセンサが配置される。
【0040】
次に、図1を参照して、本実施形態のプリンタ1の動作について、簡単に説明する。
まず、給紙カセット52に収容された用紙Tに片面印刷を行う場合について説明する。
給紙カセット52に収容された用紙Tは、前送りコロ61及び給紙ローラ対63によって第1搬送路L1に送り出され、その後、第1合流部P1及び第1搬送路L1を介してレジストローラ対80に搬送される。
レジストローラ対80においては、用紙Tのスキュー補正や、トナー画像とのタイミング調整が行われる。
【0041】
レジストローラ対80から排出された用紙Tは、第1搬送路L1を介して感光体ドラム2と転写ローラ8との間(転写ニップN)に導入される。そして、用紙Tには、感光体ドラム2と転写ローラ8との間において、トナー画像が転写される。
その後、用紙Tは、感光体ドラム2と転写ローラ8との間から排出され、第2搬送路L2を介して、定着部9における加熱回転体9aと加圧回転体9bとの間の定着ニップに導入される。そして、定着ニップにおいてトナーTNが溶融し、トナーTNが用紙Tに定着される。
【0042】
次いで、用紙Tは、第1ローラ対54aにより第3搬送路L3を通して排紙部50に搬送され、第3ローラ対53により排紙部50から排紙集積部M1に排出される。
このようにして、給紙カセット52に収容された用紙Tの片面印刷が完了する。
【0043】
手差しトレイ65に載置された用紙Tに片面印刷を行う場合には、手差しトレイ65に載置された用紙Tは、給紙コロ66によって手差し搬送路Laに送り出され、その後、第1合流部P1及び第1搬送路L1を介して、レジストローラ対80に搬送される。それ以降の動作は、前述した、給紙カセット52に収容された用紙Tの片面印刷の動作と同様であり、説明を省略する。
【0044】
次に、両面印刷を行う場合のプリンタ1の動作について説明する。
片面印刷の場合には、前述した通り、片面印刷がされた用紙Tが、排紙部50から排紙集積部M1に排出されて印刷動作が完了する。
これに対し、両面印刷を行う場合には、片面印刷がされた用紙Tが、戻し搬送路Lbを介して、片面印刷時とは表裏反転して、レジストローラ対80に再度搬送されることにより、用紙Tに両面印刷が施される。
【0045】
詳述すると、片面印刷がされた用紙Tが第3ローラ対53により排紙部50から排出されるまでは、前述した片面印刷の動作と同様である。而して、両面印刷の場合には、片面印刷がされた用紙Tが第3ローラ対53により保持されている状態において、第3ローラ対53の回転を停止させ、逆方向に回転させる。このように第3ローラ対53を逆方向に回転させると、第3ローラ対53に保持されている用紙Tは、第3搬送路L3を逆方向(排紙部50から第1分岐部Q1に向かう方向)に搬送される。
【0046】
前述したように、用紙Tが、第3搬送路L3を逆方向に搬送されると、(第1ローラ対54aではなく、)第2ローラ対54bに導入される。そして、用紙Tは、戻し搬送路Lb及び第2合流部P2を介して、第1搬送路L1に合流する。ここで、用紙Tは、片面印刷時とは表裏反転している。
【0047】
更に、用紙Tは、レジストローラ対80により前記補正又は前記調整が行われ、第1搬送路L1を介して、感光体ドラム2と転写ローラ8との間に導入される。用紙Tは、戻し搬送路Lbを経由することにより、未印刷面が感光体ドラム2に対向するので、未印刷面にトナー画像が転写され、その結果、両面印刷が施される。
【0048】
次に、図2から図8により、本発明の特徴部分である感光体ドラム2の回転駆動部の構成の詳細について説明する。
図2は、本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム2の回転駆動部の概略構成を説明する縦断面図である。図3は、本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム2の回転駆動部の要部の構成を示す斜視図である。図4は、本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム2の回転駆動部の要部を取り出して示す斜視図である。
【0049】
図5は、本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム2の回転駆動部の主要素である感光体ドラム駆動用ギアを拡大して示す斜視図である。図6は、本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム駆動用ギア620の歯部の成型初期の形状を説明する拡大斜視図である。図7は、本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム駆動用ギア620の歯部の最終形状を説明する拡大斜視図である。図8は、本実施形態のプリンタ1における感光体ドラム駆動用ギア620の歯部の最終形状を説明する拡大平面図である。
【0050】
図2に示すように、感光体ドラム2の回転駆動部200は、感光体ドラム2に接続される感光体ドラム駆動軸600と、感光体ドラム駆動軸600に平行な出力軸611を有するモータ610と、感光体ドラム駆動軸600に固定される感光体ドラム駆動用ギア620と、モータ610の出力軸611に連動する中間軸630と、中間軸630に固定され且つ感光体ドラム駆動用ギア620に噛み合う回転伝動用ギア640と、駆動部フレーム650と、を備えている。
【0051】
図2及び図3に示すように、モータ610は、駆動部フレーム650の外面に固定される。感光体ドラム駆動軸600は、軸方向の一端側において、軸受651を介して駆動部フレーム650に回転可能に支持される。感光体ドラム駆動軸600は、軸方向の他端側において、カップリング670を介してドラム貫通軸680に接続(直結)される。
【0052】
図4に示すように、ドラム貫通軸680は、感光体ドラム2の筒軸方向の端部に位置決め固定されたフランジ681を介して感光体ドラム2と一体的に回転するように、感光体ドラム2に固定されている。
【0053】
上記のように構成された回転駆動部200においては、モータ610の出力軸611の回転は、回転伝動用ギア640から感光体ドラム駆動用ギア620に伝達される。これにより、感光体ドラム駆動軸600は駆動回転される。この感光体ドラム駆動軸600の回転がカップリング670を介してドラム貫通軸680に伝達されることにより、感光体ドラム2は、フランジ681と一体的に駆動回転される。
【0054】
回転伝動用ギア640は、炭素鋼等の金属材料から形成された金属ギアからなる。
一方、図5に示す感光体ドラム駆動用ギア620は、樹脂の射出圧縮成型により形成される樹脂ギアからなる。射出圧縮成型により感光体ドラム駆動用ギア620を形成するにあたっては、まず、複数の歯部621のそれぞれにおいて、図6に示すように、歯筋方向x1−x2に沿った両側の歯面622、622が互いに平行又は略平行な形状であって、歯先(ピッチ円から上の歯の高さ)の面622a,622aが歯先に向けて互いに近づくように、歯元(ピッチ円から下の歯の高さ)の面622bに対して傾斜した形状に成型する。
【0055】
上述のように射出圧縮成型された感光体ドラム駆動用ギア620では、射出圧縮成型後の冷却により、各歯部621における両側の歯面622,622のうち、特に、歯先の面622aには、歯筋方向x1−x2に沿って、歯幅方向の中央部におけるヒケ(凹み)によって、歯幅方向の両端部が凸になるような形状誤差を生じている。
【0056】
そこで、図6に示すような初期形状に射出圧縮成型された後の各歯部621それぞれにおいて、両側の歯面622における歯先の面622aを、図7及び図8に示すように、歯筋方向x1−x2に沿って、歯幅方向の中央部が膨らみを有するクラウニング形状に形成(二次加工)する。
【0057】
クラウニング方法としては、例えば、逆クラウニング形状に形成された歯部を有する総形砥石(図示せず)を、感光体ドラム駆動用ギア620の各歯部621に噛み合わせた状態で、総形砥石を回転させると共に、軸方向にオシレーションさせることにより、各歯部621を所定のクラウニング形状に研削する方法等が採用される。
【0058】
具体的には、回転伝動用ギア640から感光体ドラム駆動用ギア620への回転伝達トルクが5kgf・cm以下に設定(本実施形態のプリンタ1においては、1から3kgf程度に設定)して用いられる条件下において、その設定回転伝達トルク(最大5kgf・cm)に対する回転伝達誤差が最大0.8μm以下に収まるように、クラウニング形状を形成する。クラウニング形状は、感光体ドラム駆動用ギア620の各歯部621における歯先の面622aを、歯筋方向x1−x2に沿って、歯幅方向の中央部の噛み合い領域bにおけるクラウニング量Cが0.0075±0.0035mmとなるような形状である。特に、クラウニング量Cは、0.0075±0.0025mmであることが好ましい。
【0059】
また、各歯部621における歯先の面622aのうち、歯幅方向の両端部の0.8×h(全歯丈寸法)に相当する領域b1は、歯部621の噛み合いを逃がすように僅かに肉厚を減少させる、いわゆるエンドレリービングされている。
なお、クラウニング量と回転伝達誤差との関係(効果)等については、後の実施例で詳しく説明する。
【0060】
本実施形態によれば、例えば、次の効果が奏される。
本実施形態のプリンタ1は、感光体ドラム2と、感光体ドラム2に接続される感光体ドラム駆動軸600と、感光体ドラム駆動軸600に平行な出力軸611を有するモータ610と、樹脂から形成され、感光体ドラム駆動軸600に固定される感光体ドラム駆動用ギア620と、モータ610の出力軸611に連動する中間軸630に固定され、感光体ドラム駆動用ギア620に噛み合う回転伝動用ギア640と、を備える。また、本実施形態においては、感光体ドラム2は、モータ610の出力軸611の回転が回転伝動用ギア640から感光体ドラム駆動用ギア620に伝達されて、駆動回転させるように構成され、感光体ドラム駆動用ギア620は、回転伝達トルクに対する最大回転伝達誤差が0.8μm以下になるように、感光体ドラム駆動用ギア620の歯面622(歯先の面622a)を歯筋方向に沿って0.0075±0.0035mmのクラウニング量を有するクラウニング形状に形成している。
【0061】
そのため、回転伝動用ギア640と感光体ドラム駆動用ギア620との歯幅中央部における噛み合いの安定化を図ることができる。また、感光体ドラム2の組み付け誤差やモータ610の出力軸611の振れ等の累積によって、モータ610の出力軸611と感光体ドラム駆動軸600との平行度が保てず、両ギア640、620同士が傾いた状態で噛み合うことになったとしても、歯面622の端部が片当たりすることを抑制することができる。そのため、回転伝動用ギア640から感光体ドラム駆動用ギア620への回転トルク伝達時における最大回転伝達誤差を、0.8μm以下に低減することができる。従って、微小な範囲内で画像信号が揺れ動くジッタの発生を抑制し、画像の品質を向上することができる。
【0062】
また、本実施形態においては、クラウニング量を、0.0075±0.0025mmに設定している。
そのため、回転伝動用ギア640から感光体ドラム駆動用ギア620への回転トルクの伝達時における回転伝達誤差を、より一層低減することができる。
【0063】
また、本実施形態においては、前記回転伝達トルクは、5kgf・cm以下に設定されている。
そのため、画像形成装置において一般的に採用される5kgf・cm以下の回転伝達トルクという動作条件下での回転伝達誤差を0.8μm以下に抑えることができ、実用上の有効性を発揮できる。
【0064】
更に、本実施形態においては、感光体ドラム駆動用ギア620は、射出圧縮成型により形成さている。
そのため、射出圧縮成型時に歯筋方向の中央部でのヒケ等によって、感光体ドラム駆動用ギア620の歯面622に生じやすい形状誤差を、歯面622を歯筋方向に沿ってクラウニングすることにより、吸収し、除去することができる。従って、回転伝達誤差を一層低減することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例(実施例1、2)及び比較例(比較例1から3)を用いて、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものでない。
【0066】
〔供試体〕
実施例1:樹脂の射出圧縮成型により形成された大口径ギアの歯面を、歯筋方向に沿って、5μmのクラウニング量を有するクラウニング形状に形成したもの。
実施例2:樹脂の射出圧縮成型により形成された大口径ギアの歯面を、歯筋方向に沿って、10μmのクラウニング量を有するクラウニング形状に形成したもの。
比較例1:樹脂の射出圧縮成型により形成された大口径ギアの歯面を、歯筋方向に沿ってクラウニングを施さない(クラウニング量が0μm)もの。
比較例2:樹脂の射出圧縮成型により形成された大口径ギアの歯面を、歯筋方向に沿って、20μmのクラウニング量を有するクラウニング形状に形成したもの。
比較例3:樹脂の射出圧縮成型により形成された大口径ギアの歯面を、歯筋方向に沿って、25μmのクラウニング量を有するクラウニング形状に形成したもの。
【0067】
〔実験の目的〕
実施例1、2及び比較例1から3のそれぞれにおけるクラウニングによる効果の有無、並びに大口径ギアに最適なクラウニング量を把握する。
〔実験方法〕
片歯面試験機を用いて、大口径ギア(本実施形態の感光体ドラム駆動用ギア620に相当する)とモータの出力軸に固定のギア(本実施形態の回転伝動用ギア640に相当する)とを噛み合わせる。そして、二軸(本実施形態の感光体ドラム駆動軸600と中間軸630とに相当)の軸平行度が0°の場合及び軸平行度が0.1°の場合において、モータ側のギアに、1kgf・cm毎に5分割した0から5kgf・cm範囲の回転伝達トルクを順次加える。そのときの軸間ピッチ(本実施形態の感光体ドラム駆動軸600と中間軸630との軸心間ピッチに相当)に対する回転伝達誤差を測定する。
【0068】
回転伝達誤差は、大片歯面試験機の出力側及び入力側にエンコーダを取り付け、これら両エンコーダからの出力信号により角度(単位は「°」)の誤差を算出し、その算出された角度の誤差を、大口径ギアが駆動を伝える回転体(本実施形態の感光体ドラム2)の直径(単位は「cm」)に整合させるように「μm」に変換したもので示す。
【0069】
〔実験結果〕
図9から図18により、それぞれの実験結果を説明する。図9は、軸平行度が0°の場合の比較例1の実験結果を示すグラフである。図10は、軸平行度が0°の場合の実施例1の実験結果を示すグラフである。図11は、軸平行度が0°の場合の実施例2の実験結果を示すグラフである。図12は、軸平行度が0°の場合の比較例2の実験結果を示すグラフである。
【0070】
図13は、軸平行度が0°の場合の比較例3の結果を示すグラフである。図14は、軸平行度が0.1°の場合の比較例1の実験結果を示すグラフである。図15は、軸平行度が0.1°の場合の実施例1の実験結果を示すグラフである。図16は、軸平行度が0.1°の場合の実施例2の実験結果を示すグラフである。図17は、軸平行度が0.1°の場合の比較例2の実験結果を示すグラフである。図18は、軸平行度が0.1°の場合の比較例3の実験結果を示すグラフである。
【0071】
〔実験結果の考察〕
軸平行度が0°の場合、つまり、二軸が平行な場合、クラウニング量が0μmの比較例1に比べて、クラウニング量が5μmの実施例1及びクラウニング量が10μmの実施例2では、0から5kgf・cm範囲の回転伝達トルクにおいても、回転伝達誤差の減少がみられる。一方、クラウニング量が20μmの比較例2及びクラウニング量が25μmの比較例3では、いずれも回転伝達誤差の増加がみられた。
これは、クラウニング量が大き過ぎると、クラウニング形状の歯面の歯幅方向の中央部のみで歯面同士が接触するため、歯面全体での接触幅が減少し、その分だけ噛み合い率が低下するためであると推察される。
【0072】
また、軸平行度が0.1°の場合、クラウニング量が0μmの比較例1では、回転伝達トルクが小さいときの回転伝達誤差が明らかに増加している。一方、クラウニング量が5μmの実施例1及びクラウニング量が10μmの実施例2では、軸平行度の変化による回転伝達誤差への影響は小さい。
これは、ギア同士の傾きによる片当たりの影響がクラウニングにより低減されているためと推察される。
【0073】
〔結論〕
感光体ドラム2にモータ610の駆動回転を伝達する大口径の感光体ドラム駆動用ギア620において、各歯部621の歯面622をクラウニング形状に形成することは、回転伝達誤差の減少に効果があることが確認できた。
感光体ドラム2にモータ610の駆動回転を伝達する大口径の感光体ドラム駆動用ギア620の各歯部621の歯面622の歯筋方向に沿う好適なクラウニング量は、5μmから10μm(0.0075±0.0035mm)であることが確認できた。また、最適なクラウニング量は、0.0075mm±0.0025mmであることが確認できた。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、回転伝動用ギア640は、前記実施形態においては、モータ610の出力軸611に連動する中間軸630に固定されているが、これに制限されず、モータ610の出力軸611に直接固定されていてもよい。
本実施形態において、画像形成装置としてモノクロプリンタについて説明しているが、これに限定されず、カラープリンタ、コピー機、ファクシミリ又はこれらの複合機等であってもよい。
【0075】
また、前記の実施形態では、感光体ドラム駆動用ギア620を樹脂の射出圧縮成型により形成するにあたり、図6のような形状に初期成型をした後、総形砥石等により所定のクラウニング形状に二次的に形成するものについて説明したが、これに制限されない。例えば、射出圧縮成型のみによってクラウニング形状の歯部を有する感光体ドラム駆動用ギア620を形成してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1……プリンタ(画像形成装置)、2……感光体ドラム(像担持体)、600……感光体ドラム駆動軸(像担持体駆動軸)、610……モータ、611……出力軸、620……感光体ドラム駆動用ギア(像担持体駆動用ギア)、630……中間軸、640……回転伝動用ギア、621……歯部、622……歯面、x1−x2……歯筋方向、C……クラウニング量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体に接続される像担持体駆動軸と、
前記像担持体駆動軸に平行な出力軸を有するモータと、
樹脂から形成され、前記像担持体駆動軸に固定される像担持体駆動用ギアと、
前記モータの出力軸又は該出力軸に連動する中間軸に固定され、前記像担持体駆動用ギアに噛み合う回転伝動用ギアと、を備え、
前記像担持体は、前記モータの出力軸の回転が前記回転伝動用ギアから前記像担持体駆動用ギアに伝達されて、駆動回転させるように構成され、
前記像担持体駆動用ギアは、回転伝達トルクに対する最大回転伝達誤差が0.8μm以下になるように、該像担持体駆動用ギアの歯面を歯筋方向に沿って0.0075±0.0035mmのクラウニング量を有するクラウニング形状に形成している
画像形成装置。
【請求項2】
前記クラウニング量は、0.0075±0.0025mmである
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記回転伝達トルクは、5kgf・cm以下に設定されている
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体駆動用ギアは、射出圧縮成型により形成されたものである
請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記回転伝動用ギアは、金属材料から形成された金属ギアからなる
請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−197027(P2011−197027A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60349(P2010−60349)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】