説明

画像形成装置

【課題】液体現像剤中における硬化性化合物の量を少なくしても、液体現像剤の溶媒に起因する定着強度の低下が抑制される画像形成装置を提供すること。
【解決手段】感光体10と、感光体の表面に潜像を形成する露光装置14と、感光体10の表面に形成された潜像を、トナー粒子及び溶媒を含む液体現像剤16により現像してトナー像18を形成する現像器20と、感光体10の表面に形成されたトナー像18を記録媒体30上に転写する転写ロール40と、記録媒体30に転写されたトナー像18を記録媒体30に定着させて定着画像32を形成する定着装置40と、トナー像18及び定着画像32の少なくとも1つに、硬化性化合物26を付与する硬化性化合物付与手段28と、トナー像18及び定着画像32の少なくとも1つに、重合促進剤36を付与する重合促進剤付与手段38と、を備えた、画像形成装置100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体現像剤を用いた画像形成において、定着前に未定着のトナー画像から、液体現像剤に含まれる溶媒(キャリアオイル)を除去しようとする技術が開示されている。
特許文献2には、キャリア溶媒として不飽和脂肪酸トリグリセリド(植物油)を有する液体現像剤が開示されている。
【0003】
特許文献3から特許文献6には、架橋剤又は反応性不飽和基を持ったモノマー、及び光重合開始剤を含有する液体現像剤が開示されている。
特許文献7及び特許文献8には、キャリアオイルに不飽和脂肪酸を含有させ、定着ローラから酸化重合促進剤を供給する定着装置が開示されている。
特許文献9及び特許文献10には、キャリアオイルに反応性不飽和基を持った不飽和脂肪酸あるいは半乾性油を含有する現像剤を用い、熱定着と紫外線照射により硬化させる技術が開示されている。
【0004】
特許文献11には、ヨウ素価130以上の油脂を含有することを特徴とする静電潜像現像用液体トナ−が開示されている。
特許文献12には、反応性基を有する分散促進物質が現像剤に含有され、該分散促進物質中の反応性基と反応する物質を記録媒体上の未定着画像に塗布する塗布手段を有する画像定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−167456公報
【特許文献2】特開2006−276787公報
【特許文献3】特開2006−056946公報
【特許文献4】特開2002−251040公報
【特許文献5】特開2003−057883公報
【特許文献6】特開2009−175242公報
【特許文献7】特開2007−139829公報
【特許文献8】特開2007−139994公報
【特許文献9】特開2007−188024公報
【特許文献10】特開2007−188025公報
【特許文献11】特開平8−272153号公報
【特許文献12】特開2005−265933公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、液体現像剤の溶媒に起因する定着強度の低下が抑制される画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
潜像保持体と、
前記潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記潜像を、トナー粒子及び溶媒を含む液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着手段と、
前記トナー像及び前記定着画像の少なくとも一方に、硬化性化合物を付与する硬化性化合物付与手段と、
前記トナー像及び前記定着画像の少なくとも一方に、重合促進剤を付与する重合促進剤付与手段と、を備えた、画像形成装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記重合促進剤付与手段は、前記記録媒体上に転写された前記トナー像及び前記定着画像の少なくとも1つに、直接かつ非接触で、重合促進剤を付与する手段である、請求項1に記載の画像形成装置である。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記硬化性化合物は乾性油である、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、硬化性化合物付与手段を備えていない場合に比較して、定着強度の低下が抑制される。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、重合促進剤付与手段が、記録媒体上に転写されたトナー像及び定着画像の少なくとも一方に接触して重合促進剤を付与する部材を有する場合に比較して、画像濃度むらが抑制される。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、硬化性化合物付与手段を備えずに硬化性化合物として乾性油を含む液体現像剤を用いる形態に比較して、画像濃度むらが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】第2実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図3】第3実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明の主旨を変更しない範囲において、以下の実施形態の具体的な実施内容については、適宜変更を行うことができる。なお、同一の作用・機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略することがある。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。第1実施形態の画像形成装置は、液体現像剤用いた画像形成装置において、硬化性化合物を中間転写ロール上のトナー像に直接付与し、重合促進剤を定着前における記録媒体上のトナー像に直接付与する、単色画像形成用の画像形成装置である。
【0016】
画像形成装置100は、感光体10(静電潜像保持体)と、感光体10の表面を帯電する帯電装置12と、感光体10の表面を露光し静電潜像(潜像)を形成する露光装置14(帯電装置12及び露光装置14が潜像形成手段の一例)と、感光体10の表面に形成された潜像を、トナー粒子16A及び溶媒16Bを含む液体現像剤16により現像し、トナー像18を形成する現像器20(現像手段)と、現像器20により形成されたトナー像18が感光体10から転写される中間転写ロール22と、感光体10に付着したトナーやゴミ等を除去する感光体清掃部材24と、感光体10を除電する除電装置46と、を含んでいる。
また画像形成装置100は、中間転写ロール22上のトナー像18に硬化性化合物26を付与する硬化性化合物付与装置28(硬化性化合物付与手段)と、硬化性化合物26を付与されたトナー像18を記録媒体30に転写する転写ロール34(転写手段)と、記録媒体30上のトナー像18に重合促進剤36を付与する重合促進剤付与装置38(重合促進剤付与手段)と、重合促進剤36を付与されたトナー像18を記録媒体30に定着させる定着装置40(定着手段)と、を含んで構成されている。
【0017】
具体的には、画像形成装置100においては、感光体10の周囲に、時計回り方向に、帯電装置12、露光装置14、現像器20、中間転写ロール22、感光体清掃部材24、及び除電装置46が配置されている。
そして、中間転写ロール22の周囲には、反時計回り方向に、硬化性化合物付与装置28及び転写ロール34が配置されており、中間転写ロール22と転写ロール34とで挟まれる位置を通るように、記録媒体30を矢印E方向(搬送方向)に搬送する搬送ベルト42が配置されている。すなわち、中間転写ロール22上のトナー像18が記録媒体30に転写されるときには、例えば、中間転写ロール22が、記録媒体30及び搬送ベルト42を介して転写ロール34に接触する。
【0018】
また、搬送ベルト42の搬送方向下流側には定着装置40が配置されている。定着装置40は、定着ロール41と加圧ロール43とで構成されており、定着ロール41と加圧ロール43とで搬送ベルト42を挟む構成となっている。すなわち、定着装置40によってトナー像18が記録媒体30に定着されるときには、例えば、定着ロール41が記録媒体30上のトナー像18に直接接し、加圧ロール43が搬送ベルト42に直接接するとともに、加圧ロール43が搬送ベルト42及びトナー像18を介して定着ロール41に圧力をかける。
【0019】
以上のように、搬送ベルト42の中間転写ロール22側には、矢印E方向に、中間転写ロール22、重合促進剤付与装置38、及び定着装置40の定着ロール41(定着部材)が配置されている。そして、搬送ベルト42の定着ロール41と反対側には加圧ロール43が配置され、搬送ベルト42及び記録媒体30が定着ロール41と加圧ロール43とに挟まれた状態で配置されている。
【0020】
感光体10としては、例えば、単層構造又は多層構造の感光体ドラムが挙げられるが、これに限られず、例えば感光体ベルト等をもちいてもよい。感光体ドラムとしては、例えば、セレンやアモルファスシリコン等の無機感光体、又は有機感光体等が挙げられる。
帯電装置12としては、本実施形態のように非接触式の帯電装置に限られず、感光体10に接触して帯電する方式のものでもよい。帯電装置12の具体例としては、例えば、帯電ロール、コロトロン等が挙げられる。
露光装置14は、感光体10の表面に光を照射して像を書き込むものであり、例えば、レーザー発生装置によって発生したレーザービームをポリゴンミラーでスキャンする方式、有機電界発光素子又は発光ダイオードを用いた方式等の露光装置が挙げられる。
【0021】
現像器20は、図1に示すように、例えば、現像ロール20Aと、現像剤貯蔵容器20Bと、規制部材20C、を含んで構成されている。また、現像ロール20Aは、例えば、表面の一部が感光体10の表面に対向しており、かつ、表面の他の一部が現像剤貯蔵容器20B内に収容されたトナー粒子16A及び溶媒16Bを含む液体現像剤16に浸るように、配置されている。そして規制部材20Cは、例えば、現像ロール20Aの表面に付着する液体現像剤16の量を制御するように設けられている。なお現像器20は、感光体10の表面が現像されるものであれば、上記形態に限られず、例えば規制部材20Cが設けられていないものでもよい。
【0022】
中間転写ロール22及び転写ロール34としては、例えば、金属芯にゴム等の弾性層を設けたもの、又は金属芯の表面に直接若しくは金属芯に弾性層を設けたものに樹脂被覆又は金属めっきを施したもの等が挙げられる。
なお、本実施形態では中間転写体として中間転写ロール22を用い、転写装置として転写ロール34を用いているが、これに限られず、例えば中間転写ロール22の代わりに中間転写ベルトを用いる形態でもよく、転写ロール34の代わりに転写ベルトを用いる形態でもよい。また本実施形態では、中間転写ロール22が感光体10と接触して感光体10から中間転写ロール22にトナー像18が転写される方式であるが、これに限られず、非接触でトナー像18が転写される方式でもよい。さらに、本実施形態では、転写ロール34が、搬送ベルト42及び記録媒体30を介して中間転写ロール22に接触して、トナー像18が中間転写ロール22から記録媒体30に転写される方式であるが、これに限られず、非接触でトナー像18が転写される方式でもよい。
【0023】
感光体清掃部材24としては、例えば、クリーニングブレード又はクリーニングブラシ等が挙げられるが、これに限られず、感光体清掃部材24を備えていない形態であってもよい。
除電装置46は、感光体10の表面に残留した電位を除去するものであれば特に限定されず、除電装置46を備えていない形態であってもよい。
【0024】
定着装置40は、上記の通り、定着ロール41と加圧ロール43とで構成されている。定着ロール41及び加圧ロール43の具体例は、上記中間転写ロール22の具体例と同様である。また定着ロール41は、例えば図示しない加熱部材(例えばハロゲンランプ等)が備えられており、トナー像18に接触しながら、加熱部材から発生した熱をトナー像18に伝えて加熱を行う。加熱の温度としては、例えば80℃以上180℃以下の範囲が挙げられる。一方加圧ロール43は、上記の通り定着ロール41に圧力をかけ、上記圧力としては例えば0.05MPa以上10MPa以下の範囲が挙げられる。
【0025】
なお本実施形態では、定着装置40として、定着ロール41がトナー像18に直接接触する方式を用いているが、これに限られず、非接触でトナー像18を定着させる方式(例えば、光照射による方式等)の定着装置でもよい。また、トナー像18に直接接触する方式の定着装置の中でも、本実施形態では定着ロール41及び加圧ロール43を用いているが、これに限られず、例えば定着ロール41の代わりに定着ベルトを用いる形態でもよく、加圧ロール43の代わりに加圧ベルトを用いる形態でもよい。
【0026】
硬化性化合物付与装置28及び重合促進剤付与装置38は、非接触でトナー像18に、それぞれ硬化性化合物26及び重合促進剤36を付与する形態である。具体的には、例えば、スプレー方式やインクジェット方式で、トナー像18に硬化性化合物26又は重合促進剤36を付与する装置が挙げられる。
また硬化性化合物付与装置28及び重合促進剤付与装置38は、上記形態に限られず、トナー像18に接触して付与する形態であってもよい。トナー像18に接触して付与する形態としては、例えば、硬化性化合物26又は重合促進剤36を付与する付与部材(例えばロール状の部材、又はベルト状の部材等)を備え、前記付与部材をトナー像18に直接接触させる形態(すなわち、前記付与部材を介して間接的に、トナー像18に付与する形態)が挙げられる。付与部材を用いる形態においては、例えば、付与部材の表面に付着した硬化性化合物26又は重合促進剤36を除去する清掃手段を別途設けてもよい。
なお、前記付与部材の劣化等による画質欠陥を抑制する観点からは、付与部材を用いる形態よりも、非接触の形態が好ましい。すなわち、硬化性化合物26又は重合促進剤36をトナー像18又は定着画像32に直接かつ非接触で付与する形態の方がよい。
液体現像剤16、硬化性化合物26、及び重合促進剤36の詳細については後述する。
【0027】
次に、画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
感光体10は、例えば不図示の駆動装置により駆動させ、矢印B方向に回転させ、それに伴って中間転写ロール22が矢印C方向に回転する。
そして、まず感光体10は、例えば非接触の帯電装置12によって表面が帯電される。その後、露光装置14が、図示しない情報機器から得られた画像データに基づいて、感光体10の側面上を走査しながら露光することによって、感光体10の表面に静電潜像を形成する。
【0028】
次に、感光体10表面に形成された潜像は、現像器20に収容された液体現像剤16により現像され、トナー像18が形成される。具体的には、例えば、現像剤貯蔵容器20B内に貯蔵された液体現像剤16が図示しない撹拌部材によって撹拌され、溶媒16B内にトナー粒子16Aが分散される。また、例えば、液体現像剤16に一部が浸った現像ロール20Aが反時計回り方向(矢印A方向)に回転し、現像ロール20Aに付着した液体現像剤16が、規制部材20Cによって供給量が制御された状態で感光体10表面の潜像に供給され、潜像が顕像化されてトナー像18となる。
【0029】
トナー像18は、時計回り方向(矢印B方向)に回転する感光体10によって搬送され、例えば、感光体10の回転に伴って反時計回り方向(矢印C方向)に回転する中間転写ロール22に接触して転写される。
次いで、中間転写ロール22により矢印C方向に搬送されたトナー像18は、硬化性化合物付与装置28によって、非接触で硬化性化合物26が付与されたのち、記録媒体30と接触する位置まで搬送される。一方、記録媒体30を乗せた搬送ベルト42が矢印E方向に移動して、記録媒体30が中間転写ロール22と転写ロール34とに挟まれた位置まで搬送され、記録媒体30に中間転写ロール22上のトナー像18が転写される。
【0030】
そして、記録媒体30に転写されたトナー像18は、重合促進剤付与装置38によって重合促進剤が付与された後、定着装置40によって記録媒体30に定着される。定着装置40では、定着ロール41が記録媒体30上のトナー像18に接触し、定着ロール41に備えられた図示しない加熱部材によってトナー像18及び記録媒体30を加熱することにより、トナー像18が記録媒体30に定着されて定着画像32が形成される。
【0031】
一方、中間転写ロール22にトナー像18を転写した感光体10では、転写残トナー44が、感光体10と感光体清掃部材24との接触位置まで運ばれ、感光体清掃部材24によって回収される。そして感光体清掃部材24によって転写残トナー44が除去された感光体10は、除電装置46によって潜像が消去される。
本実施形態の画像形成装置100では、以上の動作を繰り返して、連続的に画像が形成される。
【0032】
ここで、トナー粒子16A及び溶媒16Bを含む液体現像剤16を用いる場合、トナー像18や定着画像32にも溶媒16Bが含まれている場合がある。
しかしながら本実施形態の画像形成装置100は、硬化性化合物付与装置28及び重合促進剤付与装置38を備えている。そしてトナー像18は、硬化性化合物付与装置28により硬化性化合物26が付与され、重合促進剤付与装置38により重合促進剤36が付与されることで、トナー像18に付与された硬化性化合物26が硬化する。
【0033】
そのため、トナー像18に溶媒16Bが残存しても、定着画像32においては、溶媒16Bも硬化性化合物26と一緒に硬化する。つまり、本実施形態の画像形成装置100では、硬化性化合物付与装置28を備えていない画像形成装置に比べて、溶媒16Bに起因する定着強度の低下が抑制される。
【0034】
また、定着ロール41をトナー像18に接触させてトナー像18を記録媒体30に定着させる形態である場合、定着ロール41の表面状態が定着画像32の画質に影響を与えるものと考えられる。
しかしながら本実施形態の画像形成装置100では、重合促進剤付与装置38が、記録媒体30上のトナー像18に、直接かつ非接触で重合促進剤36を付与する形態である。そのため、例えば重合促進剤36を定着ロール41に付与して定着ロール41をトナー像18に接触させる形態(すなわち定着ロール41を介して間接的に重合促進剤36をトナー像18に付与する形態)に比べて、重合促進剤36に起因する定着ロール41の表面における劣化が抑制され、劣化等に起因する画像濃度むらが抑制される。
【0035】
また本実施形態の画像形成装置100では、硬化性化合物付与装置28を備えているため、液体現像剤16に硬化性化合物26を含有させなくてもよい。そのため、硬化性化合物26として乾性油を用いても、硬化性化合物付与装置28を備えず硬化性化合物26として乾性油を含有する液体現像剤16を用いる場合に比べて、液体現像剤16の粘度上昇に起因する画像濃度むらが抑制される。
【0036】
ここで「乾性油」は、ヨウ素価が130以上の油のことであり、具体例等の詳細は後述するが、空気中の酸素と化学的に反応して硬化する硬化性化合物である。そして乾性油の硬化反応は、熱や触媒によって促進される。
本実施形態のように硬化性化合物26として乾性油を用いると、トナー像18に硬化性化合物26及び触媒である重合促進剤36が付与されることによって、トナー像18内における硬化性化合物26の硬化反応が促進され、乾性油を用いない場合に比べて定着強度の高い定着画像32が形成される。さらに本実施形態では、トナー像18に硬化性化合物26が付与された後、定着ロール41からトナー像18に熱が与えられるため、トナー像18内における硬化性化合物26の硬化反応がさらに促進される。
【0037】
一方、上記乾性油の硬化反応は、熱や触媒を付与しなくても徐々に進行する。つまり、硬化性化合物26を液体現像剤16にあらかじめ含有させる形態では、硬化性化合物26として乾性油を用いることにより、液体現像剤16中で乾性油の硬化反応が徐々に進行し、液体現像剤16の粘度が上昇する場合がある。
しかしながら、本実施形態では上記のように硬化性化合物付与装置28を備えているため、液体現像剤16に硬化性化合物26を含有させる必要が無く、硬化性化合物26として乾性油を用いても、上記液体現像剤の粘度上昇が避けられる。すなわち本実施形態では、用いる硬化性化合物26の種類が限定されず、硬化性化合物26として乾性油を用いても、液体現像剤の粘度上昇に起因する画像濃度むらが抑制される。
【0038】
また本実施形態では、トナー像18に硬化性化合物26が付与された後にトナー像18が定着ロール41により加熱される形態であるため、硬化性化合物26の硬化反応が加熱によって促進される。また同様に,本実施形態では、トナー像18に重合促進剤36が付与された後にトナー像18が定着ロール41により加熱される形態であるため、重合促進剤36における硬化性化合物26の硬化反応促進作用が加熱によって向上する。そのため、例えば定着画像32に硬化性化合物26が付与される形態や、又は定着画像32に重合促進剤36が付与される形態等に比べて、さらに定着強度の低下が抑制される。
【0039】
なお、本実施形態において、定着画像32に硬化性化合物26を付与する形態に変更しても良い。この場合、硬化性化合物26を付与されたトナー像18が定着ロール41に接触して定着ロール41の表面に硬化性化合物26が付着することにより定着ロール41の表面が劣化又は汚染されることに起因する画像欠陥が抑制される。
【0040】
また、本実施形態において、定着画像32に重合促進剤36を付与する形態に変更しても良い。この場合、重合促進剤36を付与されたトナー像18が定着ロール41に接触して定着ロール41の表面に硬化性化合物26が付着し、定着ロール41の表面が劣化又は汚染されることに起因する画像欠陥を抑制される。
【0041】
<第2実施形態>
図2は、第2実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。第2実施形態の画像形成装置は、4種類の液体現像剤用い、液体現像剤の種類ごとに構成された画像形成ユニットが並列して配置されたカラーの画像形成装置である。また第2実施形態の画像形成装置では、上記画像形成ユニットのうち1つのみにおいて、中間転写ロール上のトナー像に硬化性化合物を直接付与する硬化性化合物付与装置を有する。また第2実施形態の画像形成装置では、記録媒体上のトナー像に重合促進剤を直接付与する重合促進剤付与装置を有している。
【0042】
画像形成装置101は、図2に示すように、4つの色(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つの画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110BKが、画像形成装置101内において水平方向に直列に配置されている。
画像形成ユニット110Yは、第1実施形態の画像形成装置100と同様の構成となっているため、それぞれの画像形成ユニット内の構成については説明を省略する。すなわち、画像形成ユニット110Yにおける感光体111Y、帯電装置112Y、露光装置114Y、現像器120Y、中間転写ロール122Y、感光体清掃部材124Y、除電装置146Y、転写ロール134Y,及び硬化性化合物付与装置128は、それぞれ第1実施形態の画像形成装置100における感光体10、帯電装置12、露光装置14、現像器20、中間転写ロール22、感光体清掃部材24、除電装置46、転写ロール34,及び硬化性化合物付与装置28と同様である。
また画像形成ユニット110M、110C、及び110BKは、液体現像剤の種類(色)と、硬化性化合物付与装置28が設けられていないことと、を除いて、画像形成ユニット110Yと同様である。
【0043】
そして、4つの画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110BKにおける中間転写ロール122Y、122M、122C、及び122BKと、それぞれ転写ロール134Y、134M、134C、及び134BKとの間を通るように、搬送ベルト142が設けられている。すなわち、4つの画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110BKは、搬送ベルト142に沿って順に、搬送ベルト142の搬送方向(矢印方向)における上流側から下流側に向かって、配置されている。
【0044】
さらに、画像形成ユニット110BKよりも搬送ベルト142の搬送方向における下流側には、搬送ベルト142に対向するように、中間転写ロール122BK側に重合促進剤付与装置138が配置されている。そして、重合促進剤付与装置138よりも搬送ベルト142の搬送方向における下流側には、定着装置140が配置されており、具体的には、定着ロール141と加圧ロール143とで搬送ベルト142を挟みこむように、定着装置140が配置されている。
【0045】
次に、図2に示す画像形成装置101を用いた画像形成方法について説明する。
トナー像の形成は、各画像形成ユニットにおいて行なわれる。まず、画像形成ユニット110Yにおいて、上記第1実施形態の画像形成装置100と同様の方法でイエローのトナー像が形成され、中間転写ロール122Yに転写された後、硬化性化合物付与装置128によってトナー像に硬化性化合物が付与される。
一方、搬送ベルト142が記録媒体を乗せて搬送方向に移動することにより、記録媒体が搬送方向上流側から下流側に移動する。そして、記録媒体が画像形成ユニット110Yにおける中間転写ロール122Yと転写ロール134Yとの間を通過するときに、硬化性化合物が付与されたイエローのトナー像が中間転写ロール122Yから記録媒体に転写される。
【0046】
画像形成ユニット110M、110C、及び110BKにおいても、トナー像に硬化性化合物が付与されないこと以外は、画像形成ユニット110Yと同様にして、それぞれマゼンタ、シアン、及びブラックのトナー像が形成され、それぞれ中間転写ロール122M、122C、及び122BKに転写される。そして、イエローのトナー像が転写された記録媒体が画像形成ユニット110Mにおける中間転写ロール122Mと転写ロール134Mとの間を通過するときに、マゼンタのトナー像が中間転写ロール122Mから記録媒体に転写され、続いて、シアンのトナー像及びブラックのトナー像が、それぞれ中間転写ロール122C及び122BKから記録媒体に転写される。すなわち、例えばイエロー及びマゼンタを用いた色の画像を形成する場合は、記録媒体上において、硬化性化合物が付与されたイエローのトナー像の上に、マゼンタのトナー像が重ねて転写され、硬化性化合物を含んだイエロー及びマゼンタのトナー像となる。
【0047】
トナー像が転写された記録媒体は、搬送ベルト142によってさらに搬送方向に搬送され、重合促進剤付与装置138が配置されている位置で、記録媒体上のトナー像に重合促進剤が付与される。その後、トナー像に重合促進剤が付与された記録媒体はさらに搬送方向に搬送され、定着装置140の定着ロール141がトナー像に直接接触して熱及び圧力を与えることにより、トナー像が記録媒体に定着され、カラーの定着画像が形成される。
以上のようにして、画像形成装置101によるカラー画像の形成が行われる。
【0048】
本実施形態の画像形成装置101では、トナー像に硬化性化合物を付与する硬化性化合物付与装置128と、トナー像に重合促進剤を付与する重合促進剤付与装置138とが備えられている。具体的には、画像形成ユニット110Yの中間転写ロール122Y上においてトナー像に硬化性化合物が付与され、全色のトナー像が記録媒体に転写された後、硬化性化合物を含むトナー像に重合促進剤が付与される。
そのため、例えば、記録媒体上に転写されたイエローのトナー像に、硬化性化合物を含まないマゼンタのトナー像が重ねて転写された場合でも、イエローのトナー像に付与された硬化性化合物の硬化反応により、イエローのトナー像に含まれた液体現像剤の溶媒だけでなく、マゼンタのトナー像に含まれた液体現像剤の溶媒も一緒に硬化する。
したがって本実施形態では、液体現像剤を用いて画像形成を行い、定着画像に液体現像剤の溶媒が残存していても、記録媒体上の画像部全体にわたってイエローのトナー像を形成することで、液体現像剤の溶媒に起因する定着強度の低下が抑制される。
【0049】
また本実施形態の画像形成装置101は、上記実施形態の画像形成装置100と同様に、記録媒体上のトナー像に重合促進剤付与装置138から直接かつ非接触で重合促進剤を付与する形態である。
そのため、定着ロール141をトナー像に直接接触させてトナー像を記録媒体に定着させても、重合促進剤に起因する定着ロール141の表面における劣化や硬化物の付着が抑制され、上記定着ロール141の表面における劣化等に起因する画像欠陥が抑制される。
また本実施形態の画像形成装置101においても、上記実施形態の画像形成装置100と同様に、硬化性化合物付与装置128を備えているため、液体現像剤に硬化性化合物を含有させなくてもよい。そのため、硬化性化合物として乾性油を用いた場合でも、液体現像剤に硬化性化合物を含有させる従来の形態に比べて、液体現像剤の粘度上昇に起因する画像濃度むらが抑制される。
【0050】
なお本実施形態では、画像形成ユニット110Yのみに硬化性化合物付与装置128が備えられているが、これに限られず、硬化性化合物付与装置128が、他の画像形成ユニットに設けられていてもよく、複数の画像形成ユニットに設けられていてもよい。また、硬化性化合物付与装置128が、画像形成ユニット以外の箇所に設けられた形態(例えば、記録媒体上のトナー像に硬化性化合物を付与する形態や、定着画像に硬化性化合物を付与する形態)でもよい。
また、重合促進剤付与装置138についても、すべてのトナー像が記録媒体上に転写された後に重合促進剤を付与する形態に限られず、画像形成ユニット間(すなわち、一部のトナー像が転写される前)における記録媒体上のトナー像に重合促進剤を付与する形態でもよく、画像形成ユニット内(例えば中間転写ロール122BK上)のトナー像に重合促進剤を付与する形態でもよい。
【0051】
また本実施形態では、記録媒体上に、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックトナー像を順に形成する形態であるが、これに限られず、異なる順番にトナー像が形成される形態であってもよく、液体現像剤の種類や数も必要に応じて選択され、上記形態に限られない。
【0052】
<第3実施形態>
図3は、第3実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。第3実施形態の画像形成装置は、第2実施形態と同様に、4種類の液体現像剤用い、液体現像剤の種類ごとに構成された画像形成ユニットが並列して配置されたカラーの画像形成装置である。ただし本実施形態は、それぞれの画像形成ユニットにおいて、感光体の表面上に形成されたトナー像が、中間転写ロールを介さず、直接記録媒体に転写される形態(すなわち、中間転写体を用いない形態)である。
また第3実施形態の画像形成装置では、すべてのトナー像が記録媒体に転写された後、記録媒体上のトナー像に硬化性化合物を付与する硬化性化合物付与装置を有し、定着された後の定着画像に重合促進剤を付与する重合促進剤付与装置を有している。
【0053】
図3に示す画像形成装置102は、上記第2実施形態の画像形成装置101と同様に、4つの画像形成ユニット210Y、210M、210C、及び210BKが、画像形成装置102内において水平方向に直列に配置されている。
画像形成ユニット210Y、210M、210C、及び210BKは、中間転写ロール及び硬化性化合物付与手段を有していないこと以外は、第2実施形態の画像形成装置101における画像形成ユニット110Y、110M、110C、及び110BKと同様の構成であるため、説明を省略する。具体的には、例えば、画像形成ユニット210Yにおける感光体211Y、帯電装置212Y、露光装置214Y、現像装置220Y、感光体清掃部材224Y、除電装置246Y、及び転写ロール234Yは、それぞれ第2実施形態における画像形成ユニット110Yにおける感光体111Y、帯電装置112Y、露光装置114Y、現像器120Y、感光体清掃部材124Y、除電装置146Y、及び転写ロール134Yと同様であり、画像形成ユニット210M、210C、及び210BKについても同様である。
【0054】
そして搬送ベルト242は、感光体211Y、211M、211C、及び211BKと、それぞれ転写ロール234Y、234M、234C、及び234BKとの間を通るように設けられている。
また、画像形成ユニット210BKよりも搬送ベルト242の搬送方向における下流側には、感光体211BK側に、硬化性化合物付与手段228、定着ロール241、及び重合促進剤付与装置238が順に配置されている。さらに、搬送ベルト242における定着ロール241の反対側には、加圧ロール243が配置され、定着ロール241と加圧ロール243とで定着装置240を構成している。
【0055】
次に、図3に示す画像形成装置102を用いた画像形成方法について説明する。
上記第2実施形態の画像形成装置101と同様に、トナー像の形成は、各画像形成ユニットにおいて行なわれる。具体的には、の画像形成ユニット210Y、210M、210C、及び210BKにおいて、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー画像が、それぞれ感光体211Y、211M、211C、及び211BK上に形成される。
そして、記録媒体が搬送ベルト242に載って搬送方向に移動し、順に感光体211Y、211M、211C、及び211BKから記録媒体にトナー像が転写された後、硬化性化合物付与装置228によってトナー像に硬化性化合物が付与される。
その後、定着装置240の定着ロール241が記録媒体上のトナー像に直接接触して熱及び圧力を与えて定着画像が形成され、重合促進剤付与装置238によって定着画像に重合促進剤が付与される。
以上のようにして、画像形成装置102によるカラー画像の形成が行われる。
【0056】
本実施形態の画像形成装置102では、トナー像に硬化性化合物を付与する硬化性化合物付与装置228と、定着画像に重合促進剤を付与する重合促進剤付与装置238と、が備えられている。そのため、液体現像剤を用いて画像形成を行い、定着画像に液体現像剤の溶媒が残存していても、硬化性化合物の硬化により、液体現像剤の溶媒に起因する定着強度の低下が抑制される。
【0057】
また本実施形態の画像形成装置102は、定着装置240によって形成された定着画像に重合促進剤付与装置238から直接かつ非接触で重合促進剤を付与する形態である。そのため、定着ロール241をトナー像に直接接触させてトナー像を記録媒体に定着させても、重合促進剤が定着ロール241に付着することがなく、定着ロール241の表面における重合促進剤に起因する劣化等による画像欠陥が抑制される。
また本実施形態の画像形成装置102においても、上記実施形態の画像形成装置100と同様に、硬化性化合物付与装置228を備えるため、液体現像剤に硬化性化合物を含有させなくてもよい。そのため、硬化性化合物として乾性油を用いた場合でも、液体現像剤に硬化性化合物を含有させる従来の形態に比べて、液体現像剤の粘度上昇に起因する画像濃度むらが抑制される。
その他の採りうる形態については、上記実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
<液体現像剤>
以下、液体現像剤について説明する。
液体現像剤は、上記の通りトナー粒子及び溶媒を含み、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。また、本実施形態では上記の通り、硬化性化合物付与手段を別途備えているため、液体現像剤に硬化性化合物を添加する必要はない。そして、液体現像剤の粘度上昇を抑制する観点からは、液体現像剤に硬化性化合物が含まれていないことがよく、含まれていたとしても液体現像剤全体に対して0.1質量%以下であることがよい。
【0059】
液体現像剤に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、樹脂と好適に分散する必要性があることおよび静電潜像保持のために高電気抵抗1.012以上の溶媒が好ましく、例えば、脂肪族炭化水素、シリコーン系溶媒、フッ素系溶媒等が挙げられる。
溶媒として、さらに具体的には、例えば、脂肪酸飽和炭化水素、分岐鎖を有するエーテル類、分岐鎖を有するエステル系油類、ホワイトオイル(流動パラフィン)、鉱油、スピンドル油、ポリα−オレフィン油系、エクソン社製のアイソパーH、L、M等の石油系溶剤、ジメチルポリシロキサン等のシリコン油、パーフルオロポリエーテル等のフッ素油分散媒等が挙げられる。
溶媒は、用いる硬化性化合物に応じて、選択(例えば硬化性化合物と親和性の高い溶媒を選択)してもよい。
【0060】
トナー粒子は、少なくとも結着樹脂を含み、必要に応じて着色剤や離型剤等の成分を含む。
結着樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられるが、特に限定されず、形成する画像に求められる特性等に応じて選択される。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン、フタロシアニン顔料、縮合多環系顔料等が挙げられるが、特に限定されず、形成する画像の色等に応じて選択される。
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス、天然ワックス、合成或いは鉱物・石油系ワックス、エステル系ワックス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
トナー粒子は、上記成分の他に、例えば紫外線硬化樹脂を含んでもよい。紫外線硬化樹脂を含んだトナー粒子を用いた液体現像剤で画像形成を行う場合は、例えば定着画像に紫外線を照射し、さらに定着強度の高い定着画像を形成してもよい。
【0061】
<硬化性化合物>
以下、硬化性化合物について説明する。
硬化性化合物としては、上記の通り、例えば乾性油が挙げられる。
乾性油としては、具体的には、例えば、分子内に少なくとも1つ以上の炭素−炭素二重結合を有するエステル化合物を示し、炭素原子数が3以上60以下であり、且つ二重結合を少なくとも1つ以上有する不飽和酸(例えばアクリル酸、ブテン酸、ヘキセン酸、オクテン酸、ドデセン酸、リシノール酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等)と、ヒドロキシル基を少なくとも2つ以上有する多価アルコール(例えばヘキサンジオールなどのアルキルジオール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等)とのエステル化合物、上記不飽和酸及び飽和酸の混合物と上記多価アルコールとのエステル化合物である合成脂肪油、又は天然脂肪油等が挙げられる。
【0062】
天然脂肪油として代表的な化合物としては、例えば、シナキリ油、アマニ油、大豆油、サフラワー油、キリ油などが挙げられ、その他にアマニ油を重合したアマニ油スタンド油、ヒマシ油を脱水して得られる脱水ヒマシ油、脂肪油(例えばキリ油)を無水マレイン酸で変性して得られるマレイン化油、前記乾性油とスチレン(またはビニルトルエンなど)とが共重合して得られるスチレン化油(またはビニルトルエン化油)等の合成乾性油等が挙げられる。
また、乾性油以外の硬化性化合物としては、例えば光硬化性化合物が挙げられ、具体的には、例えば、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレートなどの炭素―炭素二重結合を有するラジカル重合性化合物であるアクリレート化合物や、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、オキセタン化合物に代表されるカチオン重合性化合物等が挙げられる。
【0063】
トナー像又は定着画像に硬化性化合物を添加する量としては、特に限定されないが、例えば0.1g/m以上10g/m以下の範囲が挙げられ、0.1g/m以上3g/m以下の範囲であってもよい。
硬化性化合物は、例えばそのままトナー像又は定着画像に付与してもよいし、硬化性化合物に紫外線硬化樹脂を分散させたものをトナー像又は定着画像に付与してもよい。
【0064】
<重合促進剤>
以下、重合促進剤について説明する。
重合促進剤は、用いる硬化性化合物に応じて選択されるものであるが、乾性油等の熱重合性化合物に用いる熱重合開始剤としては、例えば、液状もしくはペースト状の金属ドライヤー(金属乾燥剤)であるオクチル酸金属又はナフテン酸金属等が挙げられる。前記オクチル酸金属及びナフテン酸金属の金属としては特に限定されないが、例えば、コバルト、マンガン、バリウム、ジルコニウム、カルシウム、鉄、カリウムなどが挙げられる。また、前記オクチル酸金属及びナフテン酸金属に含まれる金属の量としては特に限定されないが、例えば、酸成分(すなわち、オクチル酸又はナフテン酸)に対して1質量%以上30質量%以下の範囲が挙げられる。
重合促進剤の添加量としては、特に限定されないが、例えば硬化性化合物として乾性油を用いる場合、乾性油の二重結合100質量部に対して、例えば0.01質量部以上3質量部以下の範囲が挙げられ、0.1質量部以上2質量部以下の範囲であってもよい。
【0065】
また、重合促進剤としては、上記熱重合促進剤の他に、光重合促進剤(すなわち光照射による光硬化性化合物の硬化を促進する重合促進剤)が挙げられる。光重合促進剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイル安息香酸メチル、ベンジル、4−クロロベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェンン、4p−トリチオベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2、2−ジメチルアセトフェノン、2、2−ジエトキシアセトフェノン、2、4、6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、BASF社のルシリンTPOやルシリンTPO−L、チバスペシャルティーケミカルズのイルガキュアー1850、イルガキュアー1700、イルガキュアー819等が挙げられる。
その中でも特にその構造中にリンを含む2、4、6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイドなどの光重合開始剤は、硬化性化合物における硬化を促進させる働きが強く、黄変がないため好適である。
また、上記BASF社のルシリンTPOやルシリンTPO−L、チバスペシャルティーケミカルズのイルガキュアー1850、イルガキュアー1700、イルガキュアー819等の開始剤と、2、4−ジエチルチオキサントン2−クロロチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤と、を併用することにより、硬化性化合物における硬化を促進させる働きがさらに高まる。
【0066】
また、重合促進剤として水素引抜き型のベンゾフェノン系光重合開始剤を用いる場合は、さらにアミン系の増感剤を併用してもよい。それにより、アミン系の増感剤がベンゾフェノン系光重合開始剤に水素を供給することで水素引抜き作用が促進されるとともに、空気中の酸素による水素引き抜き作用の反応阻害が抑制され、硬化性化合物の硬化促進作用が高まる。
アミン系の増感剤の添加量は、上記ベンゾフェノン系光重合開始剤100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下、望ましくは3質量部以上8質量部以下の範囲が挙げられる。
アミン系の増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4、4−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアシル等が挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0068】
[実施例1]
<液体現像剤の作製>
ポリエステル樹脂(花王(株)製)60質量部にシアン顔料C.I.ピグメントブルー15:3(クラリアント(株)製)40質量部を加え、加圧ニーダーで混練した。この混練物を粗粉砕して、シアン顔料マスターバッチを作製した。
【0069】
次に以下の組成の混合物をボールミルで24時間溶解分散した。
・ポリエステル樹脂(花王(株)製品):60質量部
・上記シアン顔料マスターバッチ:25質量部
・ポリエステルポリオール(DIC(株)製品):5質量部
・酢酸エチル:100質量部
【0070】
一方、塩化ナトリウム(和光純薬(株)製)20質量部をイオン交換水135質量部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、ルミナス)20質量部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体170質量部に分散した前記混合物100質量部を投入して、乳化装置(エスエムテー社製IKA社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZERウルトラタラックスT−25)にて8000rpm24000rpmで1分間乳化し、懸濁液を得た。
【0071】
撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、上記懸濁液を入れ、窒素導入管より窒素を導入しながら、60℃で3時間撹拌し、酢酸エチルを除去した。その後冷却し、反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1Lのイオン交換水で3回繰り返して洗浄を行った後、得られた粒子を40℃で真空乾燥して、シアントナー粒子を得た。
【0072】
乾燥したシアントナー粒子35質量部に、ホワイトオイル(松村石油(株)製モレスコホワイトP−40)103質量部、及びソルスパース13240(日本ルーブリゾール社製)1.5質量部を加えた混合物を、ボールミルで微粉砕して平均粒径1.0μmのシアン液体現像剤を得た。
【0073】
また、シアン顔料の代わりに、マゼンタ顔料、イエロー顔料、及びブラック顔料を用いた以外は、上記シアントナー粒子と同様にして、それぞれマゼンタトナー粒子、イエロートナー粒子、及びブラックトナー粒子を得た。またシアントナー粒子の代わりに、マゼンタトナー粒子、イエロートナー粒子、及びブラックトナー粒子を用いた以外は、上記シアン液体現像剤と同様にして、それぞれマゼンタ液体現像剤、イエロー液体現像剤、及びブラック液体現像剤を得た。
【0074】
<定着画像の形成>
得られた液体現像剤のうちシアン液体現像剤を用いて、上記第1実施形態の画像形成装置100(図1)により定着画像の形成を行った。記録媒体30としては、富士ゼロックスオフィスサプライ社製(J紙)を用い、画像濃度が4.0g/mとなるように画像を形成した。
また、硬化性化合物26としては亜麻仁油を用い、非接触(スプレー方式)の硬化性化合物付与装置28によって、中間転写ロール22上のトナー像18に硬化性化合物26をそのまま付与し、硬化性化合物26の層が2μmとなるように付与した。
また、重合促進剤36としてナフテン酸コバルトを用い、非接触(スプレー方式)の重合促進剤付与装置38によって、記録媒体30上のトナー像18に重合促進剤36をそのまま付与し、重合促進剤36の層が1μmとなるように付与した。
【0075】
定着装置40においては、定着ロール41をトナー像18に直接接触させ、硬化性化合物26及び重合促進剤36が付与されたトナー像18を記録媒体30に定着させた。定着条件は、加熱温度:180℃、面圧:3.3kgf/cm、定着ロール41と加圧ロール43とが接触している領域を通過する時間:30msecとした。
【0076】
<評価>
(液体現像剤における粘度変化の評価)
得られた液体現像剤を用いて粘度変化の評価を行った。具体的には、液体現像剤5gを、ガラス製サンプル瓶(10ml)に入れ密栓した。これを温度50℃湿度30%RHの環境下に24時間静置保存した。保存前における液体現像剤の粘度(Va)と、保存後における液体現像剤の粘度(Vb)を、回転式粘度計ビスメトロンVGA−L型(芝浦システム社製)にて測定し、変化率(%)=(Vb−Va)×100/Vaを求めて評価した。結果を表1に示す。
【0077】
(定着画像における定着強度の評価)
上記紫外線照射後における定着画像の定着強度の評価を、テープ剥離試験法により行った。具体的には、定着画像に18mm幅で粘着テープ(ニチバン社製:セロハンテープ)を貼り、粘着テープの上に円柱ブロックを円周方向に転がして300g/cmの線圧にて該テープを画像面に密着させ、その後、該テープを引き剥がし、前後の画像の光学濃度比を定着率とした。具体的には、テープ貼り付け前における光学濃度(OD)と、テープ引き剥がし後における光学濃度(OD)とから、下式を用いて定着率を求める。なお、光学濃度の測定は、分光色度計(X−rite938、X−rite社製)を用いて行った。評価基準は下記の通りである。結果を表2に示す。
式:定着率(%)=OD×100/OD
【0078】
−定着率の評価基準−
○:定着率90%以上
△:定着率80%以上90%未満
×:定着率80%未満
【0079】
(定着画像における画像濃度むらの評価)
上記紫外線照射後における定着画像を目視にて観察し、画像濃度むらの評価を行った。評価基準は以下の通りである。結果を表2に示す。
【0080】
−画像濃度むらの評価基準−
○:画像濃度むらが全く確認されなかった。
△:画像濃度むらがわずかに確認されたが、許容範囲であった。
×:画像濃度むらが顕著に確認され、許容範囲を超えていた。
【0081】
[実施例2]
<液体現像剤の作製>
ボールミルで分散する混合物として、以下の組成の混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、シアン液体現像剤2を得た。
・ポリエステル樹脂(花王(株)製品):60質量部
・上記シアン顔料マスターバッチ:25質量部
・ポリエステルポリオール(DIC(株)製品):5質量部
・酢酸エチル:100質量部
・ポリエチレングリコールジメタクリレート(光硬化性樹脂、アルドリッチ社製):10質量部
【0082】
<光重合促進剤の溶液の作製>
ベンゾイル安息香酸メチル5質量部と、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル5質量部とを、溶剤(オルトキシレン(和光純薬社製)90質量部に溶解させて、光重合促進剤の溶液を作製した。
【0083】
<定着画像の形成、評価>
液体現像剤として、シアン液体現像剤2を用いた以外は、実施例1と同様にして、定着画像を形成した。
次に、定着装置40によって形成された定着画像32に、得られた光重合促進剤の溶液を非接触(スプレー方式)で付与した。なお、光重合促進剤の溶液は、3μmの膜厚となるように塗布した。
光重合促進剤の溶液が付与された定着画像32に、浜松フォトニクス社製UVランプ(LC8)を用いて、1.0W/cmの照度で積算光量が120mJ/cmとなるよう紫外線を照射した。
実施例1と同様にして、定着強度の評価及び画像濃度むらの評価を行った。結果を表2に示す。
【0084】
[実施例3]
硬化性化合物26として、亜麻仁油の代わりに、乾性油以外の硬化性化合物であるポリエチレングリコールジメタクリレート(アルドリッチ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして定着画像を形成し、定着強度の評価及び画像濃度むらの評価を行った。結果を表2に示す。
【0085】
[実施例4]
上記第1実施形態の画像形成装置100(図1)の重合促進剤付与装置38を、定着装置40の定着ロール41に重合促進剤36を付与する形態に改造した以外は、実施例1と同様にして定着画像の形成を行い、定着強度の評価及び画像濃度むらの評価を行った。結果を表2に示す。
【0086】
[比較例1]
上記第1実施形態の画像形成装置100(図1)の硬化性化合物付与装置28を除去した以外は、実施例1と同様にして定着画像の形成を行い、定着強度の評価及び画像濃度むらの評価を行った。結果を表2に示す。
【0087】
[比較例2]
<液体現像剤の製造>
エポキシ樹脂(エピコート1004、ジャパンエポキシレジン社製)80質量部と、シアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3)20質量部とを、20L型のヘンシェルミキサーによって混合して混合物を得た。
次に、上記混合物を、2軸混練押出機を用いて混練し、2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却機により冷却した。この冷却された混練物を粉砕して、比較シアン顔料マスターバッチを作製した。
【0088】
次に以下の組成の混合物をボールミルで200時間溶解分散した。
・上記比較シアン顔料マスターバッチ:100質量部
・オレイン酸メチル:100質量部
・ソルスパース11200(日本ルーブリゾール社製):10質量部
・ナフテン酸マンガン:1.4質量部
【0089】
次に、上記分散した混合物100質量部と、サフラワー油(日清オイリオ社製)400質量部とを混合し、比較シアン液体現像剤1を得た。
【0090】
<定着画像の形成>
シアン液体現像剤の代わりに、得られた比較シアン液体現像剤1を用いた以外は、比較例1と同様にして定着画像の形成を行った。
<評価>
得られた比較シアン液体現像剤1について、実施例1と同様にして、粘度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
また得られた定着画像について、実施例1と同様にして、定着強度の評価及び画像濃度むらの評価を行った。結果を表2に示す。
【0091】
[比較例3]
<液体現像剤の製造>
実施例1と同様にして、シアントナー粒子を作製した。
乾燥したシアントナー粒子35質量部に、ホワイトオイル(松村石油(株)製モレスコホワイトP−40)103質量部、ソルスパース13240(日本ルーブリゾール社製)1.5質量部、及び亜麻仁油10質量部を加えた混合物を、ボールミルで微粉砕して平均粒径1.0μmの比較シアン液体現像剤2を得た。
【0092】
<定着画像の形成>
シアン液体現像剤の代わりに、得られた比較シアン液体現像剤2を用いた以外は、比較例1と同様にして定着画像の形成を行った。
<評価>
得られた比較シアン液体現像剤2について、実施例1と同様にして、粘度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
また得られた定着画像について、実施例1と同様にして、定着強度の評価及び画像濃度むらの評価を行った。結果を表2に示す。
【0093】
【表1】



【0094】
【表2】



【0095】
以上の結果から、実施例では、比較例1に比べ定着強度が高く、比較例2及び比較例3に比べ画像濃度むらが抑制されていることが分かる。また実施例1では、実施例4に比べ、画像濃度むらが抑制されていることが分かる。
【符号の説明】
【0096】
10、111Y、111M、111C、111BK、211Y、211M、211C、211BK 感光体(潜像保持体)
12、112Y、112M、112C、112BK、212Y、212M、212C、212BK 帯電装置(潜像形成手段)
14、114Y、114M、114C、114BK、214Y、214M、214C、214BK 露光装置(潜像形成手段)
16 液体現像剤
16A トナー粒子
16B 溶媒
18 トナー像
20、120Y、120M、120C、120BK、220Y、220M、220C、220BK 現像器(現像手段)
22、122Y、122M、122C、122BK 中間転写ロール
26 硬化性化合物
28、128、228 硬化性化合物付与装置(硬化性化合物付与手段)
30 記録媒体
32 定着画像
34、134Y、134M、134C、134BK、234Y、234M、234C、234BK 転写ロール
36 重合促進剤
38、138、238 重合促進剤付与装置(重合促進剤付与手段)
40、140、240 定着装置(定着手段)
41、141、241 定着ロール(定着部材)
100、101、102 画像形成装置
110Y、110M、110C、110BK、210Y、210M、210C、210BK 画像形成ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像保持体と、
前記潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記潜像を、トナー粒子及び溶媒を含む液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着手段と、
前記トナー像及び前記定着画像の少なくとも一方に、硬化性化合物を付与する硬化性化合物付与手段と、
前記トナー像及び前記定着画像の少なくとも一方に、重合促進剤を付与する重合促進剤付与手段と、を備えた、画像形成装置。
【請求項2】
前記重合促進剤付与手段は、前記記録媒体上に転写された前記トナー像及び前記定着画像の少なくとも1つに、直接かつ非接触で、重合促進剤を付与する手段である、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記硬化性化合物は乾性油である、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−197317(P2011−197317A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63225(P2010−63225)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】