説明

画像形成装置

【課題】除電光量の低下による感光体ドラムの帯電性能の変化を抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】非晶質シリコン系の表面層を有し、その回転駆動によって表面層に帯電や露光を経て形成したトナー像を転写材に転写させる感光体ドラム(18)と、感光体ドラムを帯電させる帯電器(20)と、感光体ドラムの回転軸線に沿って複数の駆動回路(72C,72L,72R)に分割され、これら駆動回路毎に駆動電流を付与してそれぞれ発光可能な光源(70C,70L,70R)を有し、これら各光源が帯電に至る前に表面層に除電光を照射して転写を経た後のこの表面層に残された電荷を除去する除電ユニット(19)と、帯電器に付与する帯電電流を駆動回路毎にそれぞれ計測し、各光源からの除電光の光量が略等しくなるように、駆動電流を制御する制御手段(92)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラムのトナー像を中間転写体や用紙に出力する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では電子写真方式が用いられており、帯電器が感光体ドラムを予め帯電し、露光部が感光体ドラムの表面層に光を照射すると、この表面層には静電潜像が形成される。また、現像器はトナーを担持しており、現像バイアス電圧を印加すると、トナーが励起して静電潜像に付着し、トナー像が感光体ドラムの表面層に形成される。そして、この可視化されたトナー像を用紙に、或いは中間転写体を介して用紙に転写して定着させる。
【0003】
ここで、感光体ドラムの表面層に除電光を照射する構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。感光体ドラムの露光履歴を解消しておかなければ、メモリー画像が発生するからである。そこで、除電ユニットの光源が帯電に至る前に除電光を照射し、転写後の感光体ドラムの表面層に残された電荷(残留電荷)を除去する。
【0004】
また、感光体ドラムの表面層の膜減りが生じたり、その使用環境が変化すると、感光体ドラムの帯電性能を維持できない。そのため、各文献1,2の技術では、感光体ドラムの使用期間や感光体ドラムの温度・湿度、或いは、感光体ドラムの回転周期に応じて除電光量を調整し、感光体ドラムの帯電性能を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−158024号公報
【特許文献2】特開2002−72796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、感光体ドラムには、上述した膜減りの生じやすい有機系の表面層を有したOPC感光体や、非晶質シリコン系の表面層を有した長寿命の構造がある。つまり、この感光体ドラムによれば、非晶質シリコン系の表面層の膜減りは生じないし、また、使用環境が変化しても感光体ドラムの帯電性能はほとんど変わらないことから、感光体ドラムの使用期間や温度・湿度、或いは、感光体ドラムの回転周期に応じた除電光量の調整は不要である。
【0007】
しかしながら、感光体ドラムの帯電性能は、光源からの除電光量の低下によって維持困難になるとの問題がある。表面層への除電光量が低下すると、上述の如くメモリー画像が発生するからである。
しかも、この光源が感光体ドラムの回転軸線に沿って複数配置されている場合には、各光源からの除電光量のバラツキが、感光体ドラムの表面電位のバラツキとして現れるので、やはり帯電性能が変化してしまう。
【0008】
このように、非晶質シリコン系の表面層を有した感光体ドラムにおいて、除電光量の低下によるその帯電性能の変化を抑えるためには、この光源自体に着目、換言すれば、各光源の配置を考慮して除電光量の低下分を補う必要があるが、感光体ドラムのみを考慮して単に除電光量を調整する上記各従来の技術では、この点については依然として課題が残されている。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、除電光量の低下による感光体ドラムの帯電性能の変化を抑制できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための第1の発明は、非晶質シリコン系の表面層を有し、その回転駆動によって表面層に帯電や露光を経て形成したトナー像を転写材に転写させる感光体ドラムと、感光体ドラムを帯電させる帯電器と、感光体ドラムの回転軸線に沿って複数の駆動回路に分割され、これら駆動回路毎に駆動電流を付与してそれぞれ発光可能な光源を有し、これら各光源が帯電に至る前に表面層に除電光を照射して転写を経た後のこの表面層に残された電荷を除去する除電ユニットと、帯電器に付与する帯電電流を駆動回路毎にそれぞれ計測し、各光源からの除電光の光量が略等しくなるように、駆動電流を制御する制御手段とを具備する。
【0011】
第1の発明によれば、除電ユニットは、感光体ドラムの回転軸線に沿って配列された複数の光源を有し、これら各光源が感光体ドラムの表面層に除電光を照射することにより、感光体ドラムの前回の露光履歴を解消する。
ここで、これら各光源からの除電光量にバラツキが生ずると、非晶質シリコン系の表面層を有した感光体ドラムでは、この表面層の硬度が高く、高感度の表面層で形成されていることから、除電光量のバラツキが感光体ドラムの表面電位のバラツキとして現れ、安定した画像形成性能を得ることが困難になる。
【0012】
また、この非晶質シリコン系の表面層を有した感光体ドラムでは、この表面層の硬度が高くその表面層の膜減りがほとんど起こらないため、各光源がこの表面層を照射する除電光量と帯電器に付与する帯電電流、つまり、帯電器から感光体ドラムへの帯電電流(=流れ込み電流、以下同じ)との関係は、ほぼ一定になる。
詳しくは、除電光量が多くなると、この除電光量の変化に対して帯電電流の変化が小さくなる。表面層で発生するキャリア量が次第に飽和するので、帯電器から感光体ドラムに流れ込む電流量も次第に飽和するからである。一方、除電光量が少ない場合には、この除電光量の変化に対して帯電電流は大きく変化する。
【0013】
すなわち、各光源による除電光量が多い場合には、感光体ドラムへの帯電電流の差が小さいので、この除電光量のバラツキを認識することは難しくなるのに対し、各光源による除電光量が少ない場合には、感光体ドラムへの帯電電流の差が大きくなるため、この除電光量のバラツキを容易に認識することができる。
【0014】
そこで、本発明では、除電ユニットの光源毎に駆動回路を設け、各駆動回路が、その担当する光源に対して別個に駆動電流を供給できる構成を採用する。そして、制御手段が、帯電器から感光体ドラムへの帯電電流を駆動回路毎にそれぞれ計測し、感光体ドラムの回転軸線に沿って配置された各光源からの除電光量が略等しくなるように、各駆動回路の駆動電流を制御している。よって、この軸線方向の除電光量は均一になり、感光体ドラムの帯電性能を維持可能になる。この結果、安定した画像形成性能を得ることができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明の構成において、制御手段は、駆動回路を切り換えて光源毎に発光させる回路切換部と、帯電電流をこの切り換えられた駆動回路毎にそれぞれ計測する帯電電流計測部とを備えることを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、制御手段が回路切換部及び帯電電流計測部を備えており、この回路切換部が除電光量のバラツキを確実に認識させ、また、帯電電流計測部は、回路切換部による切換タイミングで感光体ドラムへの帯電電流を計測しており、帯電電流値と各駆動回路との対応を明確にし、除電光量が低下した光源を確実に特定できる。よって、軸線方向の除電光量をより均一できる。
【0016】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、制御手段は、計測された駆動回路毎の帯電電流から各光源の除電の光量を予測し、低い除電光量が予測された帯電電流を、最も高い除電光量が予測された帯電電流に一致させるように、各駆動回路の駆動電流を制御する光源駆動電流調整部を備えることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、制御手段は光源駆動電流調整部を備え、この光源駆動電流調整部が、複数の駆動回路毎に計測された感光体ドラムへの帯電電流の結果から各光源の除電光量を予測する。そして、この予測された除電光量を比較して各駆動回路の駆動電流を調整し、帯電電流を最大の除電光量が予測された帯電電流に合わせている。これにより、少ない除電光量が予測された帯電電流を確実に増やすことができ、この軸線方向の除電光量はより一層均一になる。
【0017】
第4の発明は、第1から第3の発明の構成において、帯電器は、感光体ドラムの表面層に接触して帯電させる帯電ローラを有することを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、接触帯電式の帯電器は、コロナ放電式の帯電器による場合に比してオゾンや窒素酸化物が生じないため、昨今の環境意識の高まりに対応できるが、感光体ドラムの表面層に直接に接触する帯電ローラは、その駆動時間や印刷パターン、使用環境等によって帯電特性が変動する。
【0018】
より具体的には、これら各光源からの除電光量にバラツキが生ずると、上述した感光体ドラムの帯電特性の他、次の画像形成時に必要な表面電位に高める際に帯電電流にもバラツキが生じ、帯電電位の安定化を図ることは難しくなる。
しかし、上述した制御手段を用いれば、軸線方向の除電光量が均一になることから、帯電電位は長期間に亘って安定し、この点も安定した画像形成性能の獲得に寄与する。
【0019】
第5の発明は、第1から第4の発明の構成において、各光源は、感光体ドラムの回転軸線に沿って駆動回路毎に配置された複数のLEDチップの集合体であることを特徴とする。
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、光源がLEDチップの集合体である場合には、各LEDチップは、同じ発光特性を備えるように製造されていても、その光量の大きさには違いあり、これらLEDチップを感光体ドラムの回転軸線に沿って並べると、除電光量にバラツキが生じてしまう。しかしながら、上述した制御手段を用いれば除電光量低下分を補って除電光量の均一化を図るため、感光体ドラム及び帯電器の帯電特性の変化に確実に対応できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光源毎に駆動回路を設け、その駆動電流を調整して各光源からの除電光量を略等しくするため、除電光量が低下しても感光体ドラムの帯電性能を維持できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例のプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のプリンタのコントローラを含めた構成図である。
【図3】図1の画像形成ユニット周辺の断面図である。
【図4】図2の除電光量制御部の説明図である。
【図5】図3のイレーサの正面図である。
【図6】図3のイレーサを駆動する回路図である。
【図7】図5のイレーサによる発光状態の説明図である。
【図8】除電光量と感光体ドラムの表面電位との関係を説明する図である。
【図9】除電光量と帯電電流との関係を説明する図である。
【図10】除電光量と帯電電流との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、画像形成装置の一例であるカラー印刷可能なプリンタ1の構造が概略的に示されている。同図に示された断面はプリンタ1の左側面からみたものである。このため、プリンタ1の前面は同図中の右側に、背面は左側にそれぞれ位置する。
【0023】
図1に示されるように、プリンタ1の装置本体2の上方には排紙トレイ36が設けられ、この排紙トレイ36の近傍には、使用者の各種操作に供される複数の操作キーや、各種情報を表示する画面を配置したフロントカバー5が設けられている。
また、この装置本体2の下方には給紙カセット4が配置され、その収容部40には、枚葉の用紙が積層された状態で収納されている。同図でみて収容部40の右上方には給紙ローラ46が設けられる。
【0024】
そして、用紙は、図1において給紙カセット4の右上方に向けて送出され、この送出された用紙は、装置本体2の内部でプリンタ1の前面に沿って上方に向けて搬送される。
また、給紙カセット4は、プリンタ1の前面側、つまり、図1において右方向に向けて引き出し可能に構成されており、この引き出した状態にて、収容部40に新たな用紙を補充したり、用紙を別の種類の用紙に入れ替え可能となる。
【0025】
装置本体2の内部には、給紙カセット4からの用紙搬送方向でみて下流側に搬送ローラ10、レジストローラ14、画像形成部16及び2次転写部30が順番に配置されている。
画像形成部16には4個の画像形成ユニット17が並設され、各画像形成ユニット17には感光体ドラム18がそれぞれ設けられている(図1及び図3)。この感光体ドラム18は回転自在に設置され、図示しない駆動モータによって図1及び図3の時計回りにそれぞれ駆動する。
【0026】
本実施例の感光体ドラム18は、例えばφ30mmの直径で形成され、その表面に非晶質シリコン系の表面層を有したa−Siドラムである。
また、この感光体ドラム18と給紙カセット4との間には露光部15が備えられており(図1)、この露光部15からは、レーザ光が各感光体ドラム18に向けてそれぞれ照射される。そして、これら図1及び図3に示されるように、各感光体ドラム18の周囲の適宜位置には、帯電器20、現像器24、中間転写ローラ13、クリーニング部50やイレーサ(除電ユニット)19がそれぞれ設けられている。
【0027】
この帯電器20は、図3にも示される如く画像形成ユニット17の下部に位置し、感光体ドラム18に接する帯電ローラ21、及び帯電ローラ21の表面を研磨摺擦にて清掃するブラシを備えた摺擦ローラ22を有し、感光体ドラム18の表面層に直接に接触して帯電させる。なお、帯電ローラ21は、例えばエピクロルヒドリンゴム製であり、例えばφ12mmの直径で形成されている。
【0028】
また、現像器24は図1及び図3において画像形成ユニット17の左方に配置され、感光体ドラム18に対峙する現像ローラ25を有する。この現像ローラ25は図示しない駆動モータによって図1及び図3の反時計回りに駆動する。
画像形成部16は中間転写ベルト(転写材)12を有し、当該中間転写ベルト12は各感光体ドラム18の上方に配置され、この中間転写ベルト12と排紙トレイ36との間には4個のトナーコンテナ23が配設されている(図1)。これら各トナーコンテナ23は、プリンタ1の背面側から前面側に向けて、マゼンタ用、シアン用、イエロー用、そして、ブラック用の順に配設され、このブラック用のトナーコンテナの容量が最も大きく構成される。
【0029】
2次転写部30には2次転写ローラ31が備えられ、この2次転写ローラ31は中間転写ベルト12に対して斜め下方から圧接可能に構成されている。これら中間転写ベルト12と2次転写ローラ31とは、トナー像を用紙に転写するためのニップ部を形成する。
また、用紙搬送方向でみて2次転写部30の下流側には、定着部32、排出分岐部34及び排紙トレイ36が順番に配置されている。
【0030】
本実施例では、2次転写部30と手差しトレイ3との間に両面印刷搬送路38が形成されている。この両面印刷搬送路38は、排出分岐部34から装置本体2の前面側で分岐して下方に向けて延び、レジストローラ14の上流側に連結している。
上記のクリーニング部50は、図3に示されるように、感光体ドラム18の回転方向でみて中間転写ローラ(1次転写ローラ)13との転写位置の下流側にて、クリーニングブレード52、摺擦ローラ56やトナー回収部80を有している。
【0031】
具体的には、摺擦ローラ56は、図示しない駆動モータによって図3の反時計回りに駆動し、トナー像が転写された後の感光体ドラム18の表面層をトレール方向で摺擦研磨する。これにより、この摺擦ローラ56は、非晶質シリコン系の表面層に付着する残留トナーなどを除去する。
クリーニングブレード52は、ハウジング51の下端に固定される亜鉛鋼板の本体や、この本体に溶着されたポリウレタンゴム製のブレード部からなり、このブレード部のエッジが感光体ドラム18にカウンタ方向で接し、上記表面層に付着した残留トナーなどを掻き取っている。
【0032】
これらクリーニングブレード52や摺擦ローラ56によって感光体ドラム18の表面層から掻き取られた残留トナーは、ハウジング51内に溜まり、感光体ドラム18の回転軸線方向に沿って延びたスクリュー88によって搬送され、図示しない回収容器に集められる。
上述のイレーサ19は、感光体ドラム18の回転方向でみて帯電器20の上流側、具体的には、クリーニング部50の上流側に位置するハウジング51の上端に配置されており、転写を経ると直ちにその除電光を感光体ドラム18の表面層に照射し、この除電から次の帯電までの間に、クリーニングユニット50によるクリーニング工程を挟んで感光体ドラム18の表面層に残された電荷(残留電荷)を除去する。
【0033】
詳しくは、イレーサ19は、感光体ドラム18の回転軸線方向に沿って延びたイレース基板19aを有し(図5)、イレース基板19aには、複数のLEDチップ74を有した光源70C,70L,70Rがそれぞれ設けられている。
より具体的には、本実施例の光源70C,70L,70Rは感光体ドラム18の回転軸線に沿って3個に分割され、光源70Cが感光体ドラム18の軸線方向の中央部分に、光源70Rがこの中央部分よりも右側に、光源70Lがこの中央部分よりも左側にそれぞれ配置される。そして、光源70C,70L,70Rは対応の第1〜第3駆動回路72C,72L,72Rを備えている(図6)。
【0034】
つまり、図6の第1駆動回路72Cは光源70Cに、第2駆動回路72Lは光源70Lに、第3駆動回路72Rは光源70Rに駆動電流をそれぞれ与え、各光源70C,70L,70RのLEDチップ74を独自に発光可能に構成されている。
各LEDチップ74は透明樹脂に封入され、感光体ドラム18の回転軸線方向に沿って略等間隔でイレース基板19aに配置されており、光源70C,70L,70R毎に分けられた第1〜第3駆動回路72C,72L,72Rからの駆動電流でそれぞれ発光する。
【0035】
ところで、これら各LEDチップ74は、同一の発光特性を有するように設計して製造されるが、実際には略同等程度の発光特性を有し、各LEDチップ74の除電光量にはバラツキが存在する(発光特性のバラツキ)。なお、イレーサ19の経年変化によって除電光量が低下し(光源の劣化)、また、プリンタ1内の温度が上昇した場合にも、この温度が低下するまでは一時的に除電光量が低下する(環境温度の上昇)。
【0036】
そこで、本実施例では、これら発光特性のバラツキ等を原因としたLEDチップ74の除電光量低下分を補っており、これは、図2に示されたコントローラ90からの駆動信号によって実施される。
なお、当該LEDチップ74の除電光量低下分を補正する原理については、後に図8〜図10を用いて改めて詳述し、ここでは、図2及び図4によるコントローラ90の構成を中心に説明する。
【0037】
コントローラ90は除電光量制御部(制御手段)92を備え(図2)、光源70C,70L,70Rからの除電光量が上記軸線方向で略等しくなるように、LEDチップ74を発光させる駆動電流の大きさを制御する。より具体的には、図4に示される如く、本実施例の除電光量制御部92は回路切換部94、帯電電流計測部96及び入力電流調整部(光源駆動電流調整部)98を有する。
【0038】
この回路切換部94は、上述した駆動回路72C,72L,72Rを切り換え、光源70C,70L,70R毎にLEDチップ74を発光させ、この切換結果を帯電電流計測部96に出力する。
帯電電流計測部96は、この切り換えられた第1〜第3駆動回路72C,72L,72R毎に、帯電電流をそれぞれ計測し、この計測結果を入力電流調整部98に出力する。
【0039】
これは、LEDチップ74からの除電光量Eを光量測定装置で測定すると、後述のように、a−Siドラム18では、除電光量Eと帯電ローラ21に付与する帯電電流Iとの関係がほぼ一定になる点に着目したものである。
この除電光量Eは第1〜第3駆動回路72C,72L,72Rに入力される駆動電流Iledの大きさで求めることができる。帯電電流Iは、帯電ローラ21からa−Siドラム18の表面層への帯電電流を、例えばa−Siドラム18の一周分計測した平均値から求めることができる。
【0040】
詳しくは、まず、回路切換部94が第1駆動回路72Cのみに駆動電流を流し、光源70CのLEDチップ74だけを発光させる(図7(a))。帯電電流計測部96は、この光源70CのLEDチップ74だけが発光した場合のa−Siドラム18の表面層への帯電電流I1を計測する。
次に、回路切換部94は第2駆動回路72Lのみに駆動電流を流し、光源70LのLEDチップ74だけを発光させ(図7(b))、帯電電流計測部96は、この光源70LのLEDチップ74だけが発光した場合のa−Siドラム18の表面層への帯電電流I2を計測する。
【0041】
続いて、回路切換部94は第3駆動回路72Rのみに駆動電流を流し、光源70RのLEDチップ74だけを発光させ(図7(c))、帯電電流計測部96は、この光源70RのLEDチップ74だけが発光した場合のa−Siドラム18の表面層への帯電電流I3を計測する。
そして、入力電流調整部98は、これら計測された帯電電流I1,I2,I3から予測される各光源70C,70L,70Rの除電光量Eを比較し、第1〜第3駆動回路72C,72L,72Rのうち、低い除電光量Eが予測された帯電電流Iを、最も高い除電光量Eが予測された帯電電流Iに一致させる。
【0042】
つまり、帯電電流I1〜I3の計測結果が、仮に、中央の光源70Cに関する帯電電流I1が帯電電流I2,I3よりも高い値であり、また、帯電電流I2が帯電電流I3よりも高い値であった場合には、光源70Cの除電光量E1が最も大きく、次いで、光源70Lの除電光量E2が光源70Rの除電光量E3よりも大きくなると予測できる。そこで、入力電流調整部98は、光源70Cの第1駆動回路72Cに流す駆動電流Iledを維持する一方、光源70Lの第2駆動回路72Lに流す駆動電流Iledを、帯電電流I2が帯電電流I1に等しくなるように増やし、さらに、光源70Rの第3駆動回路72Rに流す駆動電流Iledについては、帯電電流I3が帯電電流I1に等しくなるようにより一層増やして、光源70Cの除電光量E1に合わせている。
【0043】
ただし、本実施例の入力電流調整部98は、LEDチップ74の耐久性を考慮しており、除電光量E1〜E3の均一化(=帯電電流I1〜I3の均一化)の際には、このLEDチップ74の寿命から決定される駆動電流の上限値Iled_maxを超えない範囲において第1〜第3駆動回路72C,72L,72Rに流す各駆動電流Iledを調整している。
【0044】
なお、当該駆動回路72C,72L,72Rの切り換え及び帯電電流I1〜I3の計測は、例えば前回の計測から10000枚の出力毎、2500時間経過毎や、キャリブレーション等の画像調整時に行われる。
再び図1に戻り、上記プリンタ1が印刷を行う際は、給紙ローラ46によって給紙カセット4から用紙が1枚ずつ分離して送出される。送出された用紙はレジストローラ14に到達する。このレジストローラ14は、用紙の斜め送りを矯正しつつ、画像形成部16で形成されるトナー像との画像転写タイミングを計りながら、用紙を所定の給紙タイミングにて2次転写部30へと送出する。
【0045】
一方、図2の入力ポート91は、印刷の元になる画像データが外部から受信可能に構成されている。この画像データは、文字や符号、図形、記号、線図、模様等の各種の画像がデータ化されたものである。そして、このデータに基づき、コントローラ90では光の照射などを制御する。
詳しくは、各感光体ドラム18の表面層に対してイレーサ19のLEDチップ74がそれぞれ点灯して除電し、帯電器20が感光体ドラム18の表面層をそれぞれ帯電する。
【0046】
次いで、露光部15が感光体ドラム18の表面層にレーザ光をそれぞれ照射すると、各感光体ドラム18の表面層には静電潜像が作られ、現像バイアス電圧の印加によりこの静電潜像から各色のトナー像が形成される。
各トナー像は中間転写ベルト12に重ね合わされ(1次転写)、2次転写部30にて用紙に2次転写される。なお、感光体ドラム18の表面層に残留したトナーはクリーニング部50等で除去される。
【0047】
続いて、用紙は未定着トナー像を担持した状態で定着部32に向けて送られ、この定着部32にて加熱及び加圧され、トナー像が定着される。その後、定着部32から送出された用紙は排出ローラ35を介して排紙トレイ36に排出され、高さ方向に積層される。
この片面印刷に対し、両面印刷を行う場合には、定着部32から排出された用紙は、排出分岐部34でその搬送方向が切り換えられる。
【0048】
つまり、片面に印刷された用紙は装置本体2内に引き戻され、両面印刷搬送路38に搬送される。続いて、この用紙はレジストローラ14の上流側に向けて送出され、2次転写部30に向けて再び送られる。これにより、用紙の未だ印刷がされていない面にトナー像が転写される。
【0049】
以上のように、本実施例によれば、イレーサ19は、感光体ドラム18の回転軸線に沿って配列された複数の光源70C,70L,70Rを有し、これら各光源70C,70L,70Rが感光体ドラム18の表面層に除電光を照射することにより、感光体ドラム18の前回の露光履歴を解消する。
ここで、これら各光源70C,70L,70Rからの除電光量にバラツキが生ずると、非晶質シリコン系の表面層を有した感光体ドラム18では、この表面層の硬度が高く、高感度の表面層で形成されていることから、図8に示されるように、除電光量Eのバラツキaが感光体ドラム18の表面電位V0のバラツキbとして現れ、特に、dot画像においては濃度ムラが発生し、安定した画像形成性能を得ることが困難になる。
【0050】
また、この非晶質シリコン系の表面層を有した感光体ドラム18では、この表面層の硬度が高くその表面層の膜減りがほとんど起こらないため、各光源70C,70L,70Rがこの表面層を照射する除電光量Eと帯電ローラ21に付与する帯電電流I、つまり、帯電ローラ21から感光体ドラム18への帯電電流との関係は、ほぼ一定になる。
【0051】
詳しくは、図9に示される如く、除電光量Eが多くなると、この除電光量Eの変化に対して帯電電流Iの変化が小さくなる。表面層で発生するキャリア量が次第に飽和するので、帯電ローラ21から感光体ドラム18に流れ込む電流量も次第に飽和するからである。一方、除電光量Eが少ない場合には、図10に示されるように、この除電光量Eの変化に対して帯電電流Iは大きく変化する。
【0052】
すなわち、仮に、除電光量Eの変動量を図9及び図10にEmin〜Emaxの範囲で特定しても、各光源70C,70L,70Rによる除電光量Eが多い場合には、感光体ドラム18への帯電電流の差dが小さいので、この除電光量Eのバラツキを認識することは難しくなるのに対し(図9)、各光源70C,70L,70Rによる除電光量Eが少ない場合には、感光体ドラム18への帯電電流の差Dが大きくなるため、この除電光量Eのバラツキを容易に認識することができる(図10)。
【0053】
そこで、本実施例では、イレーサ19の光源70C,70L,70R毎に駆動回路72C,72L,72Rを設け、各駆動回路72C,72L,72Rが、その担当する光源70C,70L,70Rに対して別個に駆動電流Iledを供給できる構成を採用する。そして、除電光量制御部92が、帯電ローラ21から感光体ドラム18への帯電電流を駆動回路72C,72L,72R毎にそれぞれ計測し、感光体ドラム18の回転軸線に沿って配置された各光源70C,70L,70Rからの除電光量が略等しくなるように、各駆動回路72C,72L,72Rの駆動電流Iledを制御している。よって、この軸線方向の除電光量は均一になり、感光体ドラム18の帯電性能を維持可能になる。この結果、安定した画像形成性能を得ることができる。
【0054】
また、除電光量制御部92が回路切換部94及び帯電電流計測部96を備えており、この回路切換部94が除電光量Eのバラツキを確実に認識させ、また、帯電電流計測部96は、回路切換部94による切換タイミングで感光体ドラム18への帯電電流を計測しており、帯電電流値と各駆動回路72C,72L,72Rとの対応を明確にし、除電光量Eが低下した光源70C,70L,70Rを確実に特定できる。よって、軸線方向の除電光量をより均一できる。
【0055】
さらに、除電光量制御部92は入力電流調整部98を備え、この入力電流調整部98が、複数の駆動回路72C,72L,72R毎に計測された感光体ドラム18への帯電電流の結果から各光源70C,70L,70Rの除電光量E1〜E3を予測する。そして、これら予測された除電光量E1〜E3を比較して各駆動回路72C,72L,72Rの駆動電流Iledを調整し、帯電電流を最大の除電光量(例えばE1)が予測された帯電電流(例えばI1)に合わせている。これにより、少ない除電光量(例えばE2,E3)が予測された帯電電流(例えばI2,I3)を確実に増やすことができ、この軸線方向の除電光量E1〜E3はより一層均一になる。
【0056】
さらにまた、接触帯電式の帯電器20は、コロナ放電式の帯電器による場合に比してオゾンや窒素酸化物が生じないため、昨今の環境意識の高まりに対応できるが、感光体ドラム18の表面層に直接に接触する帯電ローラ21は、その駆動時間や印刷パターン、使用環境等によって帯電特性が変動する。より具体的には、これら各光源70C,70L,70Rからの除電光量Eにバラツキが生ずると、上述した感光体ドラム18の帯電特性の他、次の画像形成時に必要な表面電位に高める際に帯電電流、つまり、帯電ローラ21から感光体ドラム18への帯電電流にもバラツキが生じ、帯電電位の安定化を図ることは難しくなる。
【0057】
しかし、上述した除電光量制御部92を用いれば、軸線方向の除電光量が均一になることから、帯電電位は長期間に亘って安定し、この点も安定した画像形成性能の獲得に寄与する。
また、光源70C,70L,70RがLEDチップ74の集合体である場合には、各LEDチップ74は、同じ発光特性を備えるように製造されていても、その光量の大きさには違いあり、これらLEDチップ74を感光体ドラム18の回転軸線に沿って並べると、除電光量にバラツキが生じてしまう。しかしながら、上述した除電光量制御部92を用いれば除電光量低下分を補って除電光量の均一化を図るため、感光体ドラム18及び帯電ローラ21の帯電特性の変化に確実に対応できる。
【0058】
さらに、各光源70C,70L,70Rからの除電光量を軸線方向で略等しくするにあたり、LEDチップ74の耐久性、つまり、LEDチップ74に印加可能な電流値(例えば20mA〜30mA)を考慮して各駆動電流Iledを調整すれば、軸線方向の除電光量の均一化を図りつつ、LEDチップ74を長期間に亘って使用でき、プリンタ1のランニングコストの削減に寄与する。
【0059】
なお、本実施例における各種数値を明記する。まず、a−Siドラム18のドラム線速は400[mm/sec]、その表面電位は300[V]、露光後の電位は20[V]である。また、帯電ローラ21の帯電交流電圧は1.2[kV]、帯電直流電圧は450[V]、帯電電圧周波数は2.00[kHz]の正弦波である。
【0060】
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施例では、LEDチップ74を有したイレーサ19について説明したが、本発明の光源は有機EL素子などであっても良い。これらの場合にも除電光量の低下が生ずるからである。
【0061】
また、上記実施例では、中間転写ベルトを採用したプリンタ1で説明されている。しかし、本発明は、感光体ドラム18のトナー像を用紙に直接に転写する場合にも適用可能であり、本発明の転写材は用紙であっても良い。
さらに、この実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているが、本発明の画像形成装置は、複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
【0062】
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、除電光量の低下による感光体ドラムの帯電性能の変化を抑制できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0063】
1 プリンタ(画像形成装置)
12 中間転写ベルト(転写材)
18 感光体ドラム
19 イレーサ(除電ユニット)
20 帯電器
21 帯電ローラ
70C,70L,70R 光源
72C,72L,72R 駆動回路
74 LEDチップ
90 コントローラ
92 除電光量制御部(制御手段)
94 回路切換部
96 帯電電流計測部
98 入力電流調整部(光源駆動電流調整部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質シリコン系の表面層を有し、その回転駆動によって前記表面層に帯電や露光を経て形成したトナー像を転写材に転写させる感光体ドラムと、
前記感光体ドラムを帯電させる帯電器と、
前記感光体ドラムの回転軸線に沿って複数の駆動回路に分割され、これら駆動回路毎に駆動電流を付与してそれぞれ発光可能な光源を有し、これら各光源が前記帯電に至る前に前記表面層に除電光を照射して前記転写を経た後のこの表面層に残された電荷を除去する除電ユニットと、
前記帯電器に付与する帯電電流を前記駆動回路毎にそれぞれ計測し、前記各光源からの除電光の光量が略等しくなるように、前記駆動電流を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記制御手段は、
前記駆動回路を切り換えて前記光源毎に発光させる回路切換部と、
前記帯電電流をこの切り換えられた駆動回路毎にそれぞれ計測する帯電電流計測部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置であって、
前記制御手段は、前記計測された駆動回路毎の帯電電流から前記各光源の除電光量を予測し、低い除電光量が予測された帯電電流を、最も高い除電光量が予測された帯電電流に一致させるように、前記各駆動回路の駆動電流を制御する光源駆動電流調整部を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記帯電器は、前記感光体ドラムの表面層に接触して帯電させる帯電ローラを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記各光源は、前記感光体ドラムの回転軸線に沿って前記駆動回路毎に配置された複数のLEDチップの集合体であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−197502(P2011−197502A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65734(P2010−65734)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】