説明

画像形成装置

【課題】装置本体の開閉蓋を閉じたときに開閉蓋に保持された回転体の固定される位置の状態に影響されることなく、開閉蓋の操作部材を装置本体の一部に正常に接触させた状態に保つ。
【解決手段】画像形成装置は、開閉蓋が閉じる位置にあるときに装置本体の位置決め溝に入る軸部を備える回転体と、開閉蓋の内側に回転体の軸部を位置決め溝から出す方向に沿って移動自在に取り付けられる回転体保持部材と、回転体保持部材を回転体の軸部が位置決め溝に入る方向に沿って押す加圧部材と、開閉蓋の内側に位置決め溝から出す方向に沿って移動自在に取り付けられ、開閉蓋が開ける位置にあるときに回転体保持部材に接触してその保持部材を位置決め溝から出す方向に押しかつ開閉蓋を閉じる位置に揺動させたときに回転体保持部材が接触して装置本体の一部に突き当たり静止する操作部材を有し、開閉蓋と回転体保持部材が弾性緩衝部材を介して接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、記録媒体に画像を形成する画像形成装置においては、装置本体の一部を開閉する開閉扉に転写ロール等の回転体を取り付けた構造を採用するものがある。このような構造を採用した画像形成装置としては、例えば以下のものが知られている。
【0003】
開閉カバーに転写ロールを支持し、そのカバーの閉塞位置では転写ロールを像担持体表面に当接させかつそのカバーの離隔位置では転写ロールを像担持体表面から離隔させるよう構成した画像形成装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
画像形成装置本体を開閉する扉ユニットと、扉ユニットの内側に設けられ転写部材を有する転写ユニットを備え、転写ユニットは、中間転写ベルトとの間で転写ニップ域を形成するセット位置及び中間転写ベルトから離間したリトラクト位置との間で転写部材を移動可能に保持するリトラクト機構と、セット位置にて転写部材を位置決めするように装置本体側に形成された位置決め溝に当接する当接部(例えば転写部材の支持軸部)を有する画像形成装置が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−330353号公報
【特許文献2】特開2007−128108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、開閉蓋を閉じたときに回転体の固定される位置の状態に影響されることなく、開閉蓋を操作する操作部材を装置本体の一部に正常に接触させた状態に保つことができる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(A1)の画像形成装置は、
内部を外部に開放する開放部と前記開放部を揺動して開閉する開閉蓋を備える装置本体と、
前記装置本体の内部に設けられる位置決め溝と、
前記開放部を閉じる位置に前記開閉蓋を揺動させたときに前記位置決め溝に入る軸部を備える回転体と、
前記開閉蓋の内側に前記回転体の軸部を前記位置決め溝から出す方向に沿って移動自在に取り付けられ、前記回転体を回転自在に保持する回転体保持部材と、
前記回転体保持部材を前記回転体の軸部が前記位置決め溝に入る方向に沿って押す加圧部材と、
前記開閉蓋の内側に前記位置決め溝から出す方向に沿って移動自在に取り付けられ、前記開放部を開ける位置に前記開閉蓋を揺動させるときに前記回転体保持部材に接触して当該回転体保持部材を前記位置決め溝から出す方向に押し、かつ前記開放部を閉じる位置に前記開閉蓋を揺動させたときに前記加圧部材で押される前記回転体保持部材が接触して前記装置本体の一部に突き当たり静止した状態になる操作部材と
を有し、
前記回転体保持部材と前記操作部材が弾性緩衝部材を介して接触するように構成したことを特徴とするものである。
【0008】
この発明(A2)の画像形成装置は、上記発明A1の画像形成装置において、前記弾性緩衝部材は、その弾性変形することで発生する反力が前記加圧部材の押す力よりも弱い関係になるよう設定されているものである。
【0009】
この発明(A3)の画像形成装置は、上記発明A1又はA2の画像形成装置において、前記弾性緩衝部材は、前記開閉蓋又は回転体保持部材の前記回転体の軸方向に沿う幅方向における複数の箇所に配置されているものである。
【0010】
この発明(A4)の画像形成装置は、上記発明A1からA3のいずれかの画像形成装置において、前記弾性緩衝部材が、前記回転体保持部材又は開閉蓋の一部を、自由端となる端部に接触用の突起部が設けられた片持ち支持形状の板部として形成して構成されているものである。
【0011】
この発明(A5)の画像形成装置は、上記発明A1からA4のいずれかの画像形成装置において、前記回転体保持部材は、前記回転体の軸方向に沿う幅方向における両端部が前記位置決め溝から出る方向に異なった量だけ移動して当該保持部材全体が傾いた状態に変位し得るように取り付けられているものである。
【0012】
この発明(A6)の画像形成装置は、上記発明A1からA5のいずれかの画像形成装置において、前記位置決め溝の前記開閉蓋に近い側の外側部分に、前記開閉蓋を前記閉じる位置に揺動させるときに前記回転体の軸部が接触して前記回転体保持部材を前記位置決め溝から出る方向に移動させた後に当該軸部を当該位置決め溝に入れるように誘導する誘導斜面が設けられ、
前記回転体保持部材に、当該保持部材が前記誘導斜面の誘導により前記位置決め溝から出る方向に移動するときに前記操作部材の一部に接触して当該操作部材と連結した状態にする接触連結部が設けられているものである。
【0013】
この発明(A7)の画像形成装置は、上記発明A1からA6のいずれかの画像形成装置において、前記装置本体の上面部に、前記開閉蓋が前記閉じる位置に揺動したときに前記操作部材が収容される切欠き部を設け、
前記操作部材は、前記装置本体の一部に突き当たって停止した状態になったときに前記装置本体の上面部における前記切欠き部から露出する上面部分を有し、前記露出する上面部分がその周囲に存在する当該装置本体の上面部分と段差なく連続する形状で形成されているものである。
【0014】
この発明(A8)の画像形成装置は、上記発明A1からA7のいずれかの画像形成装置において、前記回転体は、現像剤からなる未定着の像を搬送する中間転写体に接触して回転する二次転写ロールで構成されているものである。
【発明の効果】
【0015】
上記発明A1の画像形成装置によれば、開閉蓋を閉じたときに回転体の固定される位置の状態に影響されることなく開閉蓋の操作部材を装置本体の一部に正常に接触させた状態に保つことができる。
【0016】
上記発明A2の画像形成装置によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、開閉蓋を閉じたときに、操作部材の静止した状態の影響を受けて回転体保持部材が位置決め溝から出る方向に移動させられるおそれがなく、回転体の位置を正常に保つことができる。
【0017】
上記発明A3の画像形成装置によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、操作部材と回転体保持部材が円滑に移動して機能する。
【0018】
上記発明A4の画像形成装置によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、弾性緩衝部材を部品点数の増加を招くことなく簡易に構成することができる。
【0019】
上記発明A5の画像形成装置によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、画像形成装置の個体差(公差)があっても回転体が容易に変位して位置の調整がなされる。
【0020】
上記発明A6の画像形成装置によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、操作部材を操作することなく開閉蓋を閉じる位置に揺動させるだけで、回転体の軸部を位置決め溝に入れ、操作部材を装置本体の一部に正常に接触させた状態にすることができる。
【0021】
上記発明A7の画像形成装置によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、開閉蓋が閉じる位置に揺動したときに、操作部材の上面部分を装置本体の切欠き部の周辺における上面部分に整然と揃えた状態に保つことができる。
【0022】
上記発明A8の画像形成装置によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、開閉蓋を閉じたときに二次転写ロールの固定される位置の状態に影響されることなく操作部材を装置本体の一部に正常に接触させた状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1に係る画像形成装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の画像形成装置の要部を示す概略断面図である。
【図3】図1の画像形成装置の背面側の状態を示す背面図である。
【図4】画像形成装置の背面カバーを閉じたときの状態を図3のQ−Q線にほぼ沿って示した概略断面図である。
【図5】図4の画像形成装置の背面カバーを開けたときの一状態を示す概略断面図である。
【図6】背面カバーの内側の状態を示す斜視図である。
【図7】図6の背面カバーの内面側を正面の方向から見たときの状態を示す正面図である。
【図8】背面カバー単体を示す斜視図である。
【図9】背面カバーに取り付ける構成部品を分解した状態を示す分解斜視図である。
【図10】背面カバーに取り付ける構成部品の全体を背面カバー側から見たときの状態を示す斜視図である。
【図11】図10の構成部品の一部(ロール保持フレームと操作ボタン)を分解した状態を示す分解斜視図である。
【図12】閉じた状態(位置)にあるときの背面カバー等の状態を示す断面説明図である。
【図13】板ばね部と引っ掛け部の構成を示す説明図である。
【図14】図13の板ばね部と引っ掛け部の操作ボタンとの関係を示す説明図である。
【図15】背面カバーを開けるときの操作及び動作を示す概略断面説明図である。
【図16】背面カバーを閉じるときの操作及び動作を示す概略断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という)について添付の図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1から図3は、実施の形態1に係る画像形成装置1を示す。図1はその画像形成装置1の外観を示す斜視図、図2はその画像形成装置1の要部を示す概略断面図、図3はその一側面部(この例では背面部)側から見たときの外観の状態を示す側面図である。図中に示す矢印X,Y,Zは座標軸であり、座標軸Xに沿う方向が画像形成装置における「左右の方向」を、座標軸Yに沿う方向が画像形成装置における「上下の方向」を、座標軸Zに沿う方向が画像形成装置における「前後の方向」を示している。
【0026】
画像形成装置1は、支持材、外装材等で構成される装置本体10を有している。装置本体10は、その全体が箱状の外観を有する形状になっており、内部に所要の空間が形成された形態になっている。また、装置本体10は、その一側面部に内部を外部に開放する開放部12(図5)が形成されており、その開放部12がヒンジ(軸)13を支点として矢印A1,A2で示す方向に揺動して開放部12を開閉する開閉蓋としての背面カバー14にて覆われている。矢印A1で示す方向は背面カバー14の開放部12を開けるときの方向、矢印A2で示す方向は背面カバー14の開放部12を閉じるときの方向である。
【0027】
また、装置本体10の下部には、画像を形成する対象の記録媒体としての記録用紙9を収容して供給する用紙供給装置40が配置されている。さらに、装置本体10の上部には、画像が形成された後の記録用紙9が排出されて収容される排出収容部15が形成されている。排出収容部15は、記録用紙9が排出される排出口16を有している。図1における矢付き一点鎖線は、記録用紙9の主な搬送経路を示す。
【0028】
用紙供給装置40では、用紙収容体41に収容されている記録用紙9の最上位にある用紙が供給ロール42により繰り出された後、供給ロール42と捌きロール43との協働により用紙9が捌かれて1枚ずつ送り出される。この送り出された用紙9は、搬送調整ロール44により一時停止させられた後、所要のタイミング(後述する二次転写工程に合わせるタイミング)で後述する中間転写ユニット30と二次転写装置35の間(二次転写位置)に搬送される。
【0029】
装置本体10の内部には、作像手段としての作像装置20、中間転写ユニット30、二次転写装置37、定着装置45等が配置されている。作像装置20は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色の現像剤(トナー)像をそれぞれ形成する4つの作像装置20Y,20M,20C,20Kを用いて構成されている。実施の形態1における作像装置20(Y,M,C,K)は、その設置される位置がブラック、シアン、マゼンタ、イエローの順番で次第に高くなる状態(傾斜した状態)で配置されている。
【0030】
作像装置20(Y,M,C,K)は、所要の方向(矢印で示す方向)に回転する像保持体としての感光体ドラム22(Y,M,C,K)と、感光体ドラム22の表面を帯電する帯電装置23と、潜像形成手段としての光書込み装置24と、複数の現像装置25(Y,M,C,K)と、転写後の感光体ドラム22の表面に残留するトナー等を除去するドラム清掃装置26とで構成されている。
【0031】
帯電装置23としては、感光体ドラム22の表面に接触させるとともに帯電バイアス電圧が印加される帯電ロールを配置する帯電装置を使用している。光書込み装置24としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ等の光源とレンズ、ミラー等の光学素子等で構成される露光装置を使用している。現像装置25としては、現像剤(トナー)を感光体ドラム21の現象領域に接近した状態で回転する現像ロール25aに保持して搬送する装置を使用している。ドラム清掃装置26としては、感光体ドラム22の表面に接触させる弾性ブレードを設置し、その弾性ブレードで除去したトナー等を回収する装置が使用されている。
【0032】
作像装置20(Y,M,C,K)では、次のようにして像が作成される。まず、回転する感光体ドラム22の表面(感光層)が帯電装置23により所要の電位に帯電された後、その帯電後の感光体ドラム22に対して光書込み装置24から画像形成装置1に入力された画像情報に基づく露光がされて所要の電位からなる各色成分の静電潜像が形成される。続いて、各感光体ドラム22上の各色成分の静電潜像が、現像装置25から供給される対応する色の現像剤でそれぞれ現像されて前記4色のトナー像が形成される。この感光体ドラム22上のトナー像は、後述するように中間転写ユニット30の中間転写ベルト31に一次転写される。
【0033】
中間転写ユニット30は、各作像装置20(Y,M,C,K)の感光体ドラム22上にそれぞれ形成される各色のトナー像が外周面に転写される無端状の中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31を各感光体ドラム22に接する状態となるよう掛け渡して回転させる複数の支持ロール32a,32bと、各感光体ドラム22上のトナー像を中間転写ベルト31の外周面に一次転写させる一次転写装置33とを有している。複数の支持ロールのうち支持ロール32bは駆動ロールであり、図示しない回転駆動装置から回転動力が伝達されて中間転写ベルト31を矢印で示す方向に回転させる。一次転写装置33としては、中間転写ベルト31の内周面から接触してベルト31の外周面を各感光体ドラム22の表面にそれぞれ押し付ける状態で配置されるとともに一次転写バイアス電圧が印加される一次転写ロール33を採用している。
【0034】
中間転写ユニット30では、矢印で示す方向に回転する中間転写ベルト31の外周面に対し、一次転写ロール33の作用により各作像装置20(Y,M,C,K)の感光体ドラム22からトナー像がそれぞれ静電的に一次転写される。中間転写ベルト31の外周面には、一次転写により、複数色のトナー像が重ね合わされた状態のトナー像か又は1色(この例ではブラック)のトナー像が保持される。
【0035】
二次転写装置35は、中間転写ベルト31の外周面に一次転写されたトナー像を記録用紙9に二次転写するものである。二次転写装置35としては、駆動ロールとしての支持ロール32bに掛けられている部分の中間転写ベルト31の外周面に接触して従動回転するように配置されるとともに二次転写バイアス電圧が印加される二次転写ロール35を使用している。この二次転写装置35では、中間転写ベルト31と二次転写ロール35の間に搬送して供給される記録用紙9に対し、中間転写ベルト31上に保持されている未定着のトナー像が静電的に二次転写される。
【0036】
定着装置45は、二次転写された未定着のトナー像を記録用紙9に定着するものであり、二次転写装置35の上方の位置に配置されている。定着装置45は、加熱手段により所要の温度に加熱される定着面を有するロール形態、ベルト形態の加熱回転体46と、加熱回転体46の定着面に所要の圧力で接触して未定着のトナー像を保持する記録媒体9(定着対象物)を通過させる定着部を形成するロール形態、ベルト形態の加圧回転体47で構成されている。定着装置45では、未定着のトナー像が転写された記録媒体9が加熱回転体46と加圧回転体47の間の定着処理部に導入され、その定着処理部において加熱及び加圧されることで未定着トナー像が溶融して記録用紙9に定着される。
【0037】
定着後の記録用紙9は、定着装置45から排出された後に排出ロール48により搬送され、排出口16を通して排出収容部15に排出されて収容される。これにより、記録用紙9の片面に現像剤からなる単色又は多色の画像が形成される。
【0038】
次に、背面カバー14に関連する構成等について説明する。
【0039】
はじめに、画像形成装置1においては、図2、図4、図5等に示すように、背面カバー14に二次転写装置としての二次転写ロール35を保持した構造を採用している。また、その背面カバー14の閉じたときの固定手段として、二次転写ロール35の配置すべき位置を決めるために、二次転写ロール35の軸部36を入れて保持させる位置決め溝50を兼用している。つまり、画像形成装置1では、二次転写ロール35が装置本体10側の位置決め溝50により位置が保持され、その二次転写ロール35を保持している背面カバー14も位置が保持されることになるので、背面カバー14が二次転写ロール35を介して位置決め溝50により固定される仕組みになっている。
【0040】
図4は画像形成装置1の要部について背面カバー14を閉じたときの状態を示し、図5はその背面カバー14を開けたときの状態を示している。図5に示す背面カバー14の開けた状態は、その背面カバー14を全開にできる位置に至る手前の中途位置まで開けたときの状態である。
【0041】
位置決め溝50は、中間転写ユニット30を左右の両側から支持するユニット支持フレーム55の一端部に、左右一対の状態で設けられている。位置決め溝50は、詳しくは、中間転写ベルト31の二次転写位置に配置される支持ロール32bが存在する側となるユニット支持フレーム55の端部に、二次転写ロール35が支持ロール32bと中間転写ベルト31を介して接触して転写処理部(ニップ部)を形成するために配置されるべき位置に保持されるように形成されている。また、位置決め溝50は、ユニット支持フレーム55の一端部に左右一対の状態で形成されている。左右一対の状態とは、二次転写ロール35の軸方向Dにおける両端部から突出する各軸部36a,36bとそれぞれ対向した位置に存在させた状態である。
【0042】
また、位置決め溝50は、重力方向の上方に対して背面カバー14側に少し傾いた状態で窪み、重力方向の下方の側の端部が開口した矩形状の溝形状で形成されている。すなわち、位置決め溝50は、背面カバー14に近い側の第一側壁部50aと、第一側壁部50aとほぼ平行する背面カバー14から遠い側の第二側壁部50bと、溝底部50cとで囲まれる溝で構成されている(図5)。また、位置決め溝50は、2つの支持ロール32a,32bに掛け渡されている中間転写ベルト31の面に対してほぼ直交する方向に沿って延びる側壁部50a,50bとしている。
【0043】
ユニット支持フレーム55は、装置本体10に設けられる複数の位置決め突出部56によって装置本体10の内部において所要の状態に保持されている。実施の形態1では、前方に1つ、後方の左右に1つずつ設け、計3つの位置決め突出部56で保持している。また、二次転写位置に配置される支持ロール32bは、図示しない加圧スプリングにより二次転写ロール35にむけて加圧された状態に保たれている。これにより、二次転写ロール35は、その軸部36を位置決め溝50に入れると、そのロール本体が支持ロール32bに中間転写ベルト31を介して接触すると同時に支持ロール32bから加圧された状態となり、支持ロール32bとの間に形成される転写処理部に所要の圧力が発生するようになっている。二次転写ロール35は、軸35aの回りに導電性物資を含む発泡ウレタン等の材料からなる弾性体層35bを形成した構造のものである。
【0044】
また、ユニット支持フレーム55における位置決め溝50の背面カバー14に近い側の外側部分には、背面カバー14を閉じるときに二次転写ロール35の軸部36を接触させて位置決め溝50に導入させるように誘導するガイド斜面52が設けられている。
【0045】
ガイド斜面53は、背面カバー14に取り付けられる二次転写ロール35の軸部36が背面カバー14の軸13を中心に揺動するときの軌道(図16に一点鎖線Kで示す円弧曲線)上で接触する位置に存在するように形成されている。また、ガイド斜面53は、図5等に示すように、位置決め溝50の第一側壁部50aの頂点部(この例では下端に位置する終点部分)から背面カバー14に近づくにつれて重力方向の上方に上昇するように所要の角度で傾く斜面として形成されている。位置決め溝50は、このガイド斜面53を含めた見た場合、その全体がフック(鉤)のような形状になっている。
【0046】
一方、背面カバー14は、その内側(装置本体10の内部に面する側)に、図4から図7等に示すように、二次転写ロール35を保持するロール保持フレーム60と、背面カバー14の開閉動作を操作する操作ボタン70と、ロール保持フレーム60を押す加圧スプリングを保持する加圧材保持フレーム80が取り付けられている。ちなみに、実施の形態1における背面カバー14、ロール保持フレーム60、操作ボタン70及び加圧材保持フレーム80はいずれも、合成樹脂を用いて所要のプラスチック成形法により作製した樹脂成形品である。
【0047】
まず、背面カバー14は、図3、図6、図8等に示すように、外形がほぼ矩形状に形成された板部材である。背面カバー14の下部両側には、開閉するときの揺動運動の支点となるヒンジ13が形成されており、その上端部のほぼ中央には、操作ボタン70の上部を外部(背面カバー14の外側)側に移動自在に露出させるボタン配置部141が形成されている。ボタン配置部141は、操作ボタン70の形状及び大きさに対応した形状に形成される。
【0048】
また、背面カバー14は、その上下方向(座標軸Yに沿う方向)のほぼ中段部における左右方向(座標軸Zに沿う方向)の両側に、ロール保持フレーム60を矢印B1,B2で示す方向に移動させるように支持する上部ガイド溝142及び下部ガイド溝143を形成した左右一対のガイド板144A,144Bが設けられている。上部ガイド溝142は上端が開口したU字状の形状に形成されており、下部ガイド溝143は下端が開口したU字状の形状に形成されている。
【0049】
さらに、背面カバー14は、ガイド配置部141の下方側となる左右の両側に、操作ボタン70を矢印B1,B2で示す方向に移動させるように支持するガイド孔145を形成した左右一対のガイド板146A,146Bが設けられている。ガイド孔145は、操作ボタン70の許容移動範囲に対応した長さからなる長孔の形状で形成されている。
【0050】
ここで、矢印B1,B2で示す方向は、図4等に示すように、背面カバー14を閉じた位置に揺動させて存在させた際に、二次転写ロール35の軸部36が位置決め溝50から出る方向(出ることが可能な方向)C1にほぼ沿う方向になる。ちなみに、この実施の形態1における矢印B1,B2で示す方向は、背面カバー14を基準にして見た場合、背面カバーを主に構成する板部材の面とほぼ平行して上下の方向に移動するときの方向にも相当する。
【0051】
図8等における符号147は、加圧材保持フレーム80の下部を取り付ける取付板(リブ)である。取付板147には、加圧材保持フレーム80の下部に設けられる複数の差込部(86)をそれぞれ差し込んで固定する差込孔147aが形成されている。また、符号148は、後述する加圧スプリング(85B)と一体に形成された加圧スプリング(86)の一端を保持する保持部である。さらに、符号149は、加圧材保持フレーム80の上端部を固定する固定板である。
【0052】
ロール保持フレーム60は、図6、図7、図9等に示すように、上下方向におけるほぼ中央部に二次転写ロール35を保持するロール保持部61と、ロール保持部61の上下の方向にそれぞれ延長された状態で存在して二次転写位置を通過する記録用紙9を搬送方向に沿わせるよう誘導する上部(用紙搬送方向の下流側)用紙ガイド部62Aと下部(用紙搬送方向の上流側)用紙ガイド部62Bとで構成されている。
【0053】
ロール保持部61は、半円筒状の曲面で形成された本体部61aと、その本体部61aの両端部に形成された二次転写ロール35の軸部36を支持する軸受部61bとで形成されている。二次転写ロール35は、このロール保持部61に対し、その軸部36を軸受部61bの軸受孔に貫通させた後に、軸受具(ベアリング)63で軸受け部61bに確実に引き寄せて固定させた状態で回転し得る状態で取り付けられる。また、上部用紙ガイド部62Aと下部用紙ガイド部62Bはいずれも、用紙搬送方向に対応させた曲線状のガイド部(縁部)が形成された板状のガイド突起部(リブ)64を、二次転写ロール35の軸方向Dにおいて所要の間隔をあけて複数配置して形成されている。
【0054】
また、ロール保持フレーム60は、上部用紙ガイド部62Aと下部用紙ガイド部62Bの左右の側面部に、背面カバー14のガイド溝142,143にそれぞれ差し入れて誘導される上突出部65及び下突出部66が設けられている。上突出部65及び下突出部66は、各用紙ガイド部62A,62Bの左右側面部から外側にむけて突出する状態で形成されている。また、突出部65、66はいずれも円筒状に形成されており、その径がガイド溝142,143の溝幅とほぼ同じ(少し狭い)寸法に設定されている。
【0055】
さらに、ロール保持フレーム60は、図4、図10、図11等に示すように、上部用紙ガイド部62Aの上端部に、操作ボタン70の下面部(底板部74の外面部74a)と接触する接触面部67が設けられている。
【0056】
この他、ロール保持フレーム60は、図10、図11等に示すように、背面カバー14と対向する側の部位の下部における左右両端部から少し内側部分に、後述する加圧スプリング(85)の一部が接触して保持される一対のばね受け板部68が設けられている。このばね受け板部68は、加圧材保持フレーム80の後述するばね収容部(82)と嵌まり合って加圧スプリング(85)を保持する形状になっている。
【0057】
操作ボタン70は、図5、図6、図9等に示すように、本体部71と、本体部71の上部に形成された操作部72とで構成されている。
【0058】
本体部71は、矩形の形状からなる板状の基板71aの左右側部に側板部73A,73Bを形成し、その基板71aの底部に底板部74を形成したものである。底板部74は、その下面74aがロール保持フレーム60における接触面部67と対向して接触するようになっている(図4、図13)。操作部72は、上面部72aと、段差部72bを介して後方に突出する側面部72cが形成されたものである。
【0059】
また、操作ボタン70は、本体部71の側板部73A,73Bにおける上下方向のほぼ中央部に、背面カバー14のガイド溝145に差し入れて誘導される突出部75が左右両側に突出した状態で設けられている。
【0060】
さらに、操作ボタン70は、本体部71の側板部73A,73Bにおける操作部72とのほぼ境界部分にもなる上端部に突当て部76が設けられている。突当て部76は、背面カバー14を閉じた状態にしたときに装置本体10の上面カバー(外装材)17の内面側に設ける被突当て部18に対して突き当てて、操作ボタン70の移動を停止させるものである。突当て部76は、操作部72の側面から左右に突出した段差のような形状で形成されている。被突当て部18は、図3から図5等に示すように、上面カバー17の裏面側端部のほぼ中央部に形成するボタン露出切欠き部19の左右端部に対向した状態で形成されている。
【0061】
加圧材保持フレーム80は、図6、図7、図9、図10等に示すように、板状の本体部81と、本体部81の左右端部より少し内側に形成され加圧スプリング85A,85Bをそれぞれ収容する一対のばね収容部82A,82Bと、本体部81の上部でかつ一対のばね収容部82A,82Bの間に形成される用紙ガイド部83とで構成されている。
【0062】
加圧スプリング85A,82Bは、ロール保持フレーム60を矢印B1で示す方向(軸部36が位置決め溝50に入る方向にほぼ沿う方向)に押すための一対のコイルばねである。このうち一方の加圧スプリング85Bとしては、その下端部から延びる延長線部85cを介して別のスプリング部86を一体に形成したものを使用している。この別のスプリング部89は、ロール保持部61の本体部61aと上部ガイド部62Aの境界部に設置する除電部材101(二次転写後の用紙9の裏面の除電等をする)の接地処理をするための構成部品である。具体的には、その除電部材101と(導電性の)加圧スプリング85ひいてはスプリング89部の間を導電部材(導電性スプリング)102で接続して、除電部材101と電気的に接続された状態にあるスプリング部89が、裏面カバー14を閉じたときに装置本体10の接地されている構成部分に接触できるようにしたものである。
【0063】
一対のばね収容部82A,82Bは、加圧スプリング85の下端部を保持するばね保持底板84と、その加圧スプリング85の下方の側部を囲む側板85とで形成されている。用紙ガイド部83は、ロール保持フレーム60の下部用紙ガイド部62Bにおける下突出部66と重ね合わせた状態で配置する複数の板状ガイド突起部で形成されている。
【0064】
また、加圧材保持フレーム80の本体部81の下端部には、背面カバー14の取付板147に形成された差込孔145aに差し込んで固定する複数の差込部86が設けられている。さらに、本体部81の上端部には、背面カバー14に形成された固定板149が接触して固定される固定受け部87が形成されている。
【0065】
そして、画像形成装置1においては、図4や図10から図14等に示すように、ロール保持フレーム60の接触面部67に、開閉ボタン70の下部と接触する板ばね部90を設けている。
【0066】
板ばね部90は、図11、図13等に示すように接触面部(板部)67の一部を、細長い板状片となるように切り分けたような状態で形成されている。詳しくは、板ばね部90は、接触面部67と連続した状態にある付け根部分91を有し、その付け根部分から延びる端部92が弾性変形する自由端になっている。つまり、板ばね部90は、片持ち支持された形態の板ばねになっている。自由端92は、保持フレーム60を形成する合成樹脂(成形品)の弾性により矢印E1,E2で示す方向に撓むように弾性変形する。
【0067】
自由端92は、板ばね部90が撓んでいない状態において、その上面側に接触面部67の表面から上方に突出する突起部93が設けられている。突起部93は、板ばね部90の長手方向に沿う断面形状が三角形状になっているものであり、その尖った上端部93aが開閉ボタン70の下部(本体部の底板部74の下面74a)と実際に接触する部分となる(図14)。突起部93は、その上端部93aが接触面部67から所要の高さhとなるように形成されている。この突起部93の高さhは、板ばね部90のばね力BFの大きさを決定する要因の1つとなる。
【0068】
この板ばね部90は、ロール保持フレーム60の接触面部67の左右方向(二次転写ロール35の軸方向Dにも相当する)の2箇所に設けられている。具体的には、その接触面部67の左右方向の中央部(上部ガイド部62Aの中央部にもなる)から同じ距離だけ左右両側にむけて離れた対称的な位置に設けられている。
【0069】
また、画像形成装置1においては、図4や図10から図14等に示すように、ロール保持フレーム60の接触面部67に、開閉ボタン70の下部に接触して開閉ボタン70と連結した状態にする引っ掛け部95を設けている。
【0070】
引っ掛け部95は、背面カバー14を閉じるときに、二次転写ロール35の軸部36が位置決め溝50の手前側のガイド斜面53に誘導された矢印B2の方向に変位するためロール保持フレーム60が同じ方向に移動するが、このロール保持フレーム60と共に操作ボタン70を矢印B2の方向に同様に移動させるための機能がある(図16)。
【0071】
引っ掛け部95は、図13、図14等に示すように、開閉ボタン70の本体部底板部74の上面74bに接触するようにロール保持フレーム60の上部ガイド部62Aの壁面から突出して接触面部67の上方に位置するような状態で形成されている。引っ掛け部95は、接触面67との隙間(離間距離)mが、開閉ボタン70の本体部底板部74の厚さよりも大きい値に設定されている。これにより、開閉ボタン70の本体部底板部74が、接触面67と引っ掛け部95との間で所要の距離だけ矢印B1,B2の方向に移動できるようになっている。この引っ掛け部95は、2つの板ばね部90の各外側の位置に隣り合った状態で形成されている。
【0072】
さらに、画像形成装置1においては、ロール保持フレーム60(上部ガイド部62A及び下部ガイド部62Bの左右側面部)が左右一対のガイド板144A,144Bに対して変位を許容する隙間Sをあけて取り付けられている(図7)。これにより、ロール保持フレーム60は、背面カバー14に対し、その幅方向(二次転写ロール35の軸方向Dに沿う方向)における両端部が矢印B1,B2(背面カバー14を閉じたときには矢印B2)の方向に異なった量だけ移動し、その保持フレーム全体が矢印J1,J2で示すような方向に傾いた状態に変位するようになっている。
【0073】
また、装置ボタン70は、図3、図12等に示すように、その操作部72における上面部72aが、装置本体10の上面カバー17におけるボタン露出切り欠き部19の周囲となる部分17aと段差がなく連続する平面形状で形成されている。しかも、操作部72における側面部72cが背面カバー14の外表面とも段差がなく連続する平面形状で形成されている。
【0074】
以上のように構成されているロール保持フレーム60、操作ボタン70、加圧材保持フレーム80等は、例えば、次のような手順で背面カバー14の内側に取り付けられる。なお、背面カバー14は、装置本体10の背面側に形成された開放部12にヒンジ13を介して取り付けられる。
【0075】
まず、背面カバー14の内側に加圧材保持フレーム80を取り付ける。具体的には、加圧材保持フレーム80は、ばね収容部82に加圧スプリング85を収容した後、その差込部86を背面カバー14にある取付板147の差込孔147aに差し込むとともに、その固定受け部87に背面カバー14にある固定板149による固定を行う。これにより、加圧材保持フレーム80は、背面カバー14に固定した状態で取り付けられる。
【0076】
続いて、背面カバー14に取り付けられた状態の加圧材保持フレーム80の上方に、ロール保持フレーム60を連結した状態に取り付ける。具体的には、ロール保持フレーム60は、二次転写ロール35を装着した後、ばね受け板部68を加圧材保持フレーム80のばね収容部82から露出する加圧スプリング85の上部部分に差し入れる状態で取り付けるとともに、用紙ガイド部62にある上突出部65及び下突出部66を背面カバー14にあるガイド板144のガイド溝142,143にそれぞれ嵌め入れる。
【0077】
これにより、ロール保持フレーム60は、背面カバー14に対して矢印B1,B2で示す方向に移動自在な状態で取り付けられ、また、加圧スプリング85により矢印B1の方向(上方向)に押された状態に保たれる。
【0078】
最後に、背面カバー14に取り付けられた状態のロール保持フレーム60の上方に、操作ボタン70を接触した状態に取り付ける。具体的には、操作ボタン70は、その下部となる底板部74をロール保持フレーム60の接触面部67に接触させた状態にした後、その突出部75を背面カバー14にあるガイド板145のガイド孔146A,146Bにそれぞれ嵌め入れる。このとき、操作ボタン70の底板部74は、図14等に示すように、接触面部67と引っ掛け部95の間の隙間に差し入れられ、その下面74aが板ばね部90の突起部93に接触した状態になる。
【0079】
これにより、操作ボタン70は、背面カバー14に対して矢印B1,B2で示す方向に移動自在な状態で取り付けられ、また、その底板部74がロール保持フレーム60の接触面部67と引っ掛け部95の間に差し込まれるとともに板ばね部90に接触した状態に保たれる。また、操作ボタン70は、その操作部72が背面カバー14のボタン配置部141に配置された状態に保たれる。
【0080】
次に、背面カバー14の開閉動作等について説明する。
【0081】
図3及び図4は、背面カバー14が閉じた位置にあるときの状態を示している。このとき、背面カバー14は、二次転写ロール35の軸部36が装置本体10側に設けられた位置決め溝50に入って位置が保持されることで、その二次転写ロール35を保持しているロール保持フレーム60を介して位置が固定された状態(閉じる位置に固定され続ける状態)に保たれる。
【0082】
またこのとき、二次転写ロール35の軸部36は、ロール保持フレーム60が加圧スプリング85のばね力F1により矢印B1で示す上方向(軸部36が位置決め溝50に入る方向C2に沿う方向)に押されるので、位置決め溝50に確実に保持される。また、二次転写ロール35は、中間転写ユニット30の支持ロール32bから圧力F2が加えられることにより、位置決め溝50の第一側壁部51(図5)に押当てられた状態に保たれる。
【0083】
さらにこのとき、操作ボタン70は、加圧スプリング85で押されるロール保持フレーム60が接触面部76で接触しているので、矢印B1で示す上方向に押されて移動する。これにより、操作ボタン70は、その突当て部76が上面カバー17の被突当て部18に突き当ることで移動が阻止されて静止した状態になる。この際、操作ボタン70の操作部72における上面部72aは、上面カバー17のボタン露出切り欠き部19から外部に露出した状態になり、しかも、ボタン露出切り欠き部19の周囲となる上面カバー部分17aと段差がなく互いに連続した一連の平面を形成するような状態におかれる(図3、図12)。
【0084】
続いて、背面カバー14を開けるときには、次の操作を行う。
【0085】
はじめに、図15に示すように、操作者が手で操作ボタン70を矢印M1で示す下方の方向に押す。これにより、操作ボタン70がガイド孔145に沿って矢印B2で示し下方向に移動する。
【0086】
この際、操作ボタン70の下部である底板部74が、加圧スプリング85で押されるロール保持フレーム60の接触面部76に突き当たるように接触するので、操作ボタン70は、加圧スプリング85のばね力F1に抗してロール保持フレーム60も併せて矢印B2で示す下方向に移動させることになる。
【0087】
このとき、操作ボタン70の底板部74は、ロール保持フレーム60の接触面部76にある板ばね部90の突起部93に接触し、その板ばね部90を下方向E2にむけて撓むように弾性変形させ、最後に接触面部76の表面に直に接触した状態になる(詳しくは、底板部74は、引っ掛け部95A,95Bの下部にある停止突起103に接触する状態になる)。これにより、操作ボタン70がロール保持フレーム60を下方に押す力が伝達される。また、操作ボタン70は、突出部75がガイド孔145の下端部145aに接触することで、矢印B2で示し下方向への移動が停止させられる。
【0088】
また、操作ボタン60の矢印B2の方向への移動力は、板ばね部60を介してロール保持フレーム60に伝達されるが、板ばね部60が接触面部67の中心部を挟んで対称的な位置にそれぞれ配置されているので、その移動力が左右のバランスを崩すことなく良好にロール保持フレームに伝達される。これにより、操作ボタン60もロール保持フレーム60も各ガイド孔145やガイド溝142,143にそってスムーズに移動する。
【0089】
この結果、ロール保持フレーム60が操作ボタン60と共に矢印B2で示す方向に移動することになるので、二次転写ロール35の軸部36が位置決め溝50から出る方向C1に移動する。しかる後、二次転写ロール35の軸部36が位置決め溝50から完全に出た状態になると、背面カバー14は、軸13を支点として矢印A1で示す方向(開ける方向)に揺動する状態におかれる。また、このとき操作ボタン70においては、その突当て部76が上面カバー17の被突当て部18から離れた状態になる。
【0090】
したがって、背面カバー14は、図5に示すように、装置本体10に対して傾いた状態となり、装置本体10の開放部12を外部に開放する。この開いた状態の背面カバー14においては、ロール保持フレーム60が加圧スプリング85のばね力F1により押されて矢印B1で示す上方向に移動させられた状態になる。しかも、このロール保持フレーム60がその接触面部67において操作ボタン70の下部に接触することで、操作ボタン70も矢印B1で示す上方向に併せて移動させられた状態になる。
【0091】
このとき、ロール保持フレーム60の接触面部67は、弾性復元力により矢印E2で示す復元方向に移動する板ばね部90の突起部93を介して操作ボタン70の底板部74と接触した状態になる。また、操作ボタン70は、突出部75がガイド孔145の上端部145bに接触することで、矢印B1で示す上方向への移動が阻止されて停止した状態になる。ただし、操作ボタン70の操作部72の上面部72aは、背面カバー14の上端部14aから少し突出した状態になる(図6、図16参照)。
【0092】
続いて、背面カバー14を閉じるときには、次の操作を行う。
【0093】
まず、図16に示すように、操作者が手で背面カバー14を矢印M2で示す閉じる方向に押す。この際、操作者は操作ボタン70に触れて押してもよいが、操作ボタン70自体を操作する必要がない。背面カバー14は、軸13を支点として矢印A2で示す方向(閉じる方向)に揺動して装置本体10の開放部12の手前となる位置までに近づくと、二次転写ロール35の軸部36が位置決め溝50の手前側にあるガイド斜面53に接触する。
【0094】
二次転写ロール35の軸部36がガイド斜面53に接触した後に背面カバー14を更に閉じる方向A2に押して揺動させると、軸部36がその進行方向に対して下方に傾斜するガイド斜面53に接触したままで移動することで下方に押さえ付けられる力を受けるので、二次転写ロール35がロール保持フレーム60と共に(加圧スプリング85のばね力F1に抗して)矢印B2で示す方向に移動する。そして、ロール保持フレーム60が矢印B2で示す方向に移動すると、その接触面部76にある引っ掛け部95が操作ボタン70の底板部74に接触するので、操作ボタン70と連結した状態になる。これにより、操作ボタン70も、ロール保持フレーム60と共に矢印B2で示す方向に移動する。
【0095】
しかる後、二次転写ロール35の軸部36がガイド斜面53の終点部(位置決め溝50の上端部50dにもなる)まで達すると、二次転写ロール35がロール保持フレーム60を介して加圧スプリング85のばね力F1を受けて矢印B1の方向に押された状態になるので、その軸部36が位置決め溝50に入る方向C2に移動し、位置決め溝50の内部に入ることになる。
【0096】
このとき二次転写ロール35の軸部36は、図16に示すように、ガイド斜面53に接触した地点P1から位置決め溝50の上端部50dまでの距離L(矢印B方向に沿う変位距離)を移動する。このため、ロール保持フレーム60と操作ボタン70も、軸部36の距離Lに対応して矢印B2で示す方向に距離Lとほぼ同じ距離だけ移動する。
【0097】
これにより、操作ボタン70は、操作部72の上面部72aが、背面カバー14の上端部14aから突出しない状態となる。また、操作ボタン70は、突当て部76が、装置本体10の上面カバー17の被突当て部18に衝突することなく、その被突当て部18の下面から少し下方に離れた位置に進入できる位置まで移動した状態になる。その後、二次転写ロール35の軸部36が位置決め溝50に入り、その溝50内に入る方向C2に移動すると、図4に示すように、操作ボタン70がロール保持フレーム60に押されて矢印B1の方向に移動するので、その突当て部76が被突当て部18に突き当たって静止した状態になる。このように、背面カバー14を閉じるときには、操作ボタン70を操作することなく、その閉じる作業を円滑に行うことができる。
【0098】
また、操作ボタン70は、操作部72の上面部72aが、上面カバー17のボタン露出切欠き部19の内部に存在して外部に露出した状態になる。この際、上面部72aは、上面カバー17のボタン露出切欠き部19の周囲部分17aと段差のない連続した平面として存在する(図3)。この結果、操作ボタン70が外面カバー17等に良好に整合した状態となり、操作ボタン70を含む周囲の外観が良好に保たれる。
【0099】
以上により、背面カバー14は、図3や図4に示すように閉じられて固定された状態になる。
【0100】
そして、この画像形成装置1においては、背面カバー14を閉じるとき又は閉じたときに、二次転写ロール35の位置が、画像形成装置ごとや同じ画像形成装置で主に軸部36の位置決め溝50への出入り方向C1,C2にずれるように変動して移動することがある。この他にも、稼動時において中間転写ベルト31の蛇行、片寄りの走行を補正するためにユニット支持フレーム55の状態が変動した場合、これによりその支持フレーム55に形成されている位置決め溝50(底面部50c)の位置そのものが、軸部36の位置決め溝50への出入り方向C1,C2に微妙に変動して移動することがある。以上の変動時の移動は、左右非対象になることが多い。この変動は、背面カバー14自体が薄くなったり補強にも限界があることにより機械的強度が低下したものになるほど、発生するおそれが高くなる。
【0101】
ただし、この二次転写ロール35の変動は、本来の正しい設置位置に合わせた変動(移動)になるので、結果としては、二次転写ロール35が二次転写位置に正常に配置(位置合わせ、位置調整)され、良好な二次転写を行うことが可能になる。また、位置決め溝40そのものが変動した場合にも、ロール保持フレーム60が加圧スプリング85のばね力により押されているので、二次転写ロール35はその軸部36が位置決め溝50の位置に追従して変位し、正しい二次転写位置に配置され、良好な二次転写を行うことが可能になる。
【0102】
一方、この二次転写ロール35の位置の変動があると、それを保持するロール保持フレーム60の位置(状態)も矢印B1,B2で示す方向に変動することになる。また、ロール保持フレーム60は、その接触面部67において操作ボタン70の下部(底板部74)と接触した状態になるので、ロール保持フレーム60の変動が操作ボタン70にまで伝わるおそれがある。
【0103】
仮に操作ボタン70まで伝わって操作ボタン70の位置(状態)も矢印B1,B2で示す方向に変動した場合には、突当て部76が正常に突き当たらず、操作ボタン70全体が傾いた状態となり、操作部72の上面部72aが上面カバー17と連続した平面をなす状態に存在せず、段差のある状態になってしまい、外観品質が低下してします。また、操作ボタン70が被突当て部材18に正常な状態で接触しないで静止した状態になると、その操作ボタン70の状態の変動が背面カバー14にも及んでしまい、背面カバー14と隣接する装置本体10の他のカバー(他の背面カバー部分や上面カバー17等の外装材)との整合状態が悪化してしまうこともある。
【0104】
しかし、この画像形成装置1におけるロール保持フレーム60と操作ボタン70の間は、板ばね部90を介して接続された構造になっているので、二次転写ロール35の位置合わせに起因してロール保持フレーム6が変動しても、その変動(移動)が接触面部67における板ばね部90が弾性変形することにより緩衝(吸収、消失)され、操作ボタン70に伝達されることがない。
【0105】
この結果、この画像形成装置1では、裏面カバー14を閉じたときには、二次転写ロール35の位置調整が正常になされるとともに、その二次転写ロール35の位置の状態に影響されることなく操作ボタン70が上面カバー17の被突当て部18に正常に接触させた状態に保つことができる。二次転写ロール35について詳述すれば、背面カバー14を閉じたとき、二次転写ロール35はその軸部36が装置本体10側に設けられる位置決め溝50に保持されるので、背面カバー14の剛性に左右されることなく正規の位置に位置決めされる。
【0106】
したがって、この画像形成装置1によれば、良好な二次転写を確保することができるとともに、背面カバー14の閉じたときの外観品質の低下の発生を防止することができる。
【0107】
特にこの画像形成装置1では、ロール保持ユニット60が背面カバー14に対してその左右両端部が矢印B1,B2の方向に異なった量だけ移動して全体が傾いた状態にも変位できるように取り付けられているので、二次転写ロール35も位置合わせのために変動することが多くなる。しかし、この場合であっても、二次転写ロール35の変動に伴って生じるロール保持フレーム60の変動は、板ばね部90の存在によって操作ボタン70に伝達されにくくなる。
【0108】
また、この画像形成装置1では、裏面カバー14を閉じたときに、二次転写ロール35の変動に伴ってロール保持ユニット60も変動することで板ばね部90が弾性変形するので、図4に示すように、板ばね部90がその変形量に応じて弾性復元力(ばね力)BFを発生し、そのばね力BFを板ばね部90(の突起部93)に接触する操作ボタン70に及ぼす。しかし、それと同時に、板ばね部90が設けられているロール保持フレーム60に反力HFが発生する。これにより、板ばね部90が弾性変形すると、その反力HFによりロール保持フレーム60を矢印B2で示す方向に押し戻されるように移動させてしまい、その結果として二次転写ロール35の位置も変更してしまう(位置の精度を低下させてしまう)おそれも内在している。
【0109】
この点、実施の形態1では、板ばね部90が弾性変形することで発生する反力HFが加圧スプリング85のばね力F1よりも弱い関係(HF<F1)になるように設定している。このため、画像形成装置1では、背面カバー14を閉じたときに、板ばね部90の反力HFでロール保持フレーム60を矢印B2で示す方向に押し戻すように移動させるおそれがなく、この結果、二次転写ロール35の位置精度を保つことができる。
【0110】
[他の実施の形態]
実施の形態1では、ロール保持フレーム60の接触面部67に弾性緩衝部材として板ばね部を設けた場合を例示したが、その接触面部67に設けることに代えて、操作ボタン70の下部(例えば底板部74)に設けることが可能である。
【0111】
また、弾性緩衝部材としては、その機能を有するものであれば特に限定されず、例えば、コイルばねや板ばね等を設置するように構成することも可能である。ただし、この場合においても、その弾性緩衝部材が弾性変形したときに、ロール保持フレーム60と操作ボタン70が弾性変形しない接触部どうしで接触する状態が得られるように構成することが好ましい。
【0112】
また、位置決め溝50として、その背面カバー14に近い側の外側部分にガイド斜面53を併設する場合を例示したが、そのガイド斜面53を設けないように構成することもできる。この場合は、背面カバー14を閉じるときには、操作者が操作ボタン70を矢印B2の方向に押し下げる操作が必要になる。また、この場合であっても、引っ掛け部95は、設けておくことが好ましい。
【0113】
さらに、背面カバー14に保持する回転体として二次転写ロール35を適用した場合を例示したが、他の回転体でもあってもよい。他の回転体としては、例えば、一次転写ロール、用紙搬送ロール等が挙げられる。また、回転体を保持する開閉カバーについても、装置本体1の背面に位置する背面カバー14に限定されず、装置本体10の他の部位に配置される開閉カバーを対象にすることが可能である。
【0114】
また、この発明の対象となる画像形成装置は、複数の作像装置20を使用してカラー画像を形成するカラー画像形成装置が好ましいが、単色の画像形成装置であってもよい。また、画像形成方式についても、電子写真方式以外の方式、例えばインク吐出方式、感熱転写方式等の方式を採用する画像形成装置であってもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 …画像形成装置
10…装置本体
12…開放部
14…背面カバー(開閉蓋)
17…上面カバー(装置本体の上面部)
17a…ボタン露出切欠き部の周囲に存在する上面カバーの部分
18…被突当て部(装置本体の一部)
19…ボタン露出切欠き部(切欠き部)
31…中間転写ベルト(中間転写体)
35…二次転写ロール(回転体)
36…軸部
50…位置決め溝
53…ガイド斜面
60…ロール保持フレーム(回転体保持部材)
70…操作ボタン(操作部材)
90…板ばね部(弾性緩衝部材)
92…自由端となる端部
93…突起部
95…引っ掛け部(接触連結部)
A …揺動する方向
B …移動する方向(矢印Cで示す方向に沿う方向)
C1…位置決め溝から出る方向
C2…位置決め溝に入る方向
D …軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を外部に開放する開放部と前記開放部を揺動して開閉する開閉蓋を備える装置本体と、
前記装置本体の内部に設けられる位置決め溝と、
前記開放部を閉じる位置に前記開閉蓋を揺動させたときに前記位置決め溝に入る軸部を備える回転体と、
前記開閉蓋の内側に前記回転体の軸部を前記位置決め溝から出す方向に沿って移動自在に取り付けられ、前記回転体を回転自在に保持する回転体保持部材と、
前記回転体保持部材を前記回転体の軸部が前記位置決め溝に入る方向に沿って押す加圧部材と、
前記開閉蓋の内側に前記位置決め溝から出す方向に沿って移動自在に取り付けられ、前記開放部を開ける位置に前記開閉蓋を揺動させるときに前記回転体保持部材に接触して当該回転体保持部材を前記位置決め溝から出す方向に押し、かつ前記開放部を閉じる位置に前記開閉蓋を揺動させたときに前記加圧部材で押される前記回転体保持部材が接触して前記装置本体の一部に突き当たり静止した状態になる操作部材と
を有し、
前記回転体保持部材と前記操作部材が弾性緩衝部材を介して接触するように構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記弾性緩衝部材は、その弾性変形することで発生する反力が前記加圧部材の押す力よりも弱い関係になるよう設定されている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記弾性緩衝部材は、前記開閉蓋又は回転体保持部材の前記回転体の軸方向に沿う幅方向における複数の箇所に配置されている請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記弾性緩衝部材は、前記回転体保持部材又は開閉蓋の一部を、自由端となる端部に接触用の突起部が設けられた片持ち支持形状の板部として形成して構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記回転体保持部材は、前記回転体の軸方向に沿う幅方向における両端部が前記位置決め溝から出る方向に異なった量だけ移動して当該保持部材全体が傾いた状態に変位し得るように取り付けられている請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記位置決め溝の前記開閉蓋に近い側の外側部分に、前記開閉蓋を前記閉じる位置に揺動させるときに前記回転体の軸部が接触して前記回転体保持部材を前記位置決め溝から出る方向に移動させた後に当該軸部を当該位置決め溝に入れるように誘導する誘導斜面が設けられ、
前記回転体保持部材に、当該保持部材が前記誘導斜面の誘導により前記位置決め溝から出る方向に移動するときに前記操作部材の一部に接触して当該操作部材と連結した状態にする接触連結部が設けられている請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記装置本体の上面部に、前記開閉蓋が前記閉じる位置に揺動したときに前記操作部材が収容される切欠き部を設け、
前記操作部材は、前記装置本体の一部に突き当たって停止した状態になったときに前記装置本体の上面部における前記切欠き部から露出する上面部分を有し、前記露出する上面部分がその周囲に存在する当該装置本体の上面部分と段差なく連続する形状で形成されている請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記回転体は、現像剤からなる未定着の像を搬送する中間転写体に接触して回転する二次転写ロールで構成されている請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−209316(P2011−209316A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73724(P2010−73724)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】