説明

画像形成装置

【課題】 情報検知による画像形成装置の印刷速度の低下。
用紙媒体に埋め込まれた情報を検知する画像形成装置で、解析に要する計算時間のために、印刷速度が低下する。
【解決手段】 スキャンの途中の段階で投機的に解析処理を行うことによって、先行して解析結果を取得可能とし、印刷速度の高速化を達成する。
ページの途中での投機解析による早期情報の抽出と、それによる印刷の開始を行うことにより印刷速度を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置において生成された機密情報を含んだ画像の情報漏洩対策方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスのIT化の促進に伴い、セキュリティに対する関心が近年高まってきている。例えば、企業が保持している顧客情報の漏洩事件が度々発生するなど、組織の機密や、個人のプライバシが脅かされており、大きな社会問題になっている。
【0003】
これらの問題に対処するために、電子化された機密情報のアクセス権限や、ファイアウォールに監視装置を設けるなどのIT(Information Technology)メカニズムを導入することにより、企業外への漏洩を防ぐ対処が行われている。あるいはノートPCやUSBメモリなどの可搬媒体のオフィスへの持ち込み、持ち出しを禁止するなどの措置が取られている。電子化された機密情報の場合、上記のようなITメカニズムを用いた対策を実施することによってある程度のガードすることが可能である。これは電子情報の場合、ITを使ってのみ参照可能であり、そこにメカニズムを導入しやすいという性質があるため可能である。
【0004】
一方、機密情報を画像形成装置などで用紙媒体に印刷された場合、組織の機密や個人のプライベート情報が印刷された用紙の持ち出しを確認・禁止することは、上記のような従来のITメカニズムを迂回することが可能である。そのため、電子化された機密情報の持ち出しを制限することよりもより困難であり、セキュリティの維持を難しくしている。
【0005】
この課題に対処するために、従来さまざまな情報漏洩対策手段が考案されている。
【0006】
一例として、既知の電子透かし(ウォーターマーク)技術や2次元バーコード技術を用いて、印刷を実施する際に用紙媒体そのものにコピーを禁止する複写制限情報を埋め込むシステムが従来考案されている。このシステムにおいては対応した画像形成装置において複写実施時に、当該複写制限情報を抽出することによってコピーの可否を検知し、それによってコピーの継続、中止をページ毎に制御することが可能であった。また単純な是非だけの複写制限だけではなく、パスワード情報や許可ユーザ情報を条件情報として埋め込み、特定のユーザにのみ複写を許可する方式も提案されている。例えば、この種のシステムとしては特許文献1が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−280469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術において、例えば文書の複写操作を実施する際に、上記の複写制限情報の抽出を試み、抽出結果が中止を指示している場合には複写操作を中止する必要がある。ここで従来、複写制限情報の抽出は用紙1面分の画像を取り込み終わって、画像情報の取り込みが確定してから実施される。しかしすべての画像を取り込んで抽出処理を行う分、複写制限機能を保持しない複写機に比べて、最初の複写時間(以降FCOT=First Copy Output Time)に遅延が生じてしまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために、本発明による画像形成装置は、
原稿に埋め込まれた埋め込み情報によって複写の可否を判断する画像形成装置であって、
入力したスキャン画像からドットの座標を抽出する抽出手段と、
抽出されたドットの座標から埋め込まれた情報を解析する解析手段と、
ページの規定の位置から投機的に解析を行う投機解析と、スキャンが完了してから解析を行う完全解析を指示する解析指示手段と、
解析結果に応じて、ページの複写、送信、格納を指示するジョブ制御手段と、
から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、1ページ分のスキャンを完了する前に解析を開始できるため、解析結果をより早く入手して複写を継続するか、中止するかを判定できるため、継続となる判断を従来よりも早く行うことが可能となるため、FCOTが改善する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施例における画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】スキャンイメージ解析部104のより詳細を示したブロック図である。
【図3】解析制御部204の動作を説明するフローチャートである。
【図4】解析処理の投機実行を説明するための模式図である。
【図5】ドット検知部201におけるドットの検知を説明するための概念図である。
【図6】ハーフトーン除去を説明するためのグラフ図である。
【図7】グリッドの間隔を測定する手法を説明した模式図である。
【図8】グリッド間の距離の頻度を示したヒストグラムの一例である。
【図9】グリッドの回転角度の補正を説明する図である。
【図10】回転の補正結果およびグリッド位置を求めた説明図である。
【図11】グリッドの変位から実際のデータに変換を行う説明図である。
【図12】回転を考慮し、エラー訂正を行った復号の処理を説明するための説明図である。
【図13】LVBCが埋め込まれた原稿の一例を示すイメージ図である。
【図14】付加情報として、010111110011bというバイナリデータを埋め込む例を示す図である。
【図15】シートに情報を埋め込む際に領域の配置を示す模式図である。
【図16】オフセット値に対応した自己相関値を計算した例を示すグラフである。
【図17】領域の位置の決定方法を示した模式図である。
【図18】領域の集計を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
以下に本発明第1実施例の説明を行う。
【0014】
図1は本実施例における画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1において、100は画像形成装置全体、101は光学スキャナを用いて画像の入力を行うスキャン部、102はスキャン部101から入力されたラスターデータをJPEG形式のような既知のフォーマット形式の画像データに変換するスキャンイメージ処理部である。
【0016】
103は画像データを一時的に格納するイメージ格納部、104はスキャン部101から入力したラスターデータを解析して原稿に埋め込まれた埋め込み情報を抽出するスキャンイメージ解析部である。
【0017】
105は一連の処理単位(以降、ジョブと呼ぶ)を制御し、スキャンした画像データの印刷を行うジョブ制御部、106は画像データを印刷できるようにラスターデータに変換するプリントイメージ処理部である。
【0018】
107はラスターデータを既知の印刷技術を用いて印刷を行う印刷部である。
【0019】
なお、ジョブ制御部105はスキャンイメージ解析部104の解析結果に応じてジョブの印刷を継続するか中止するかの制御を行うことが可能である。
【0020】
印刷部107は電子写真技術やインクジェット技術のような既知の印刷技術を用いることを想定している。
【0021】
なお、本実施例では情報埋め込みの手法として、LVBC(Low Visibility BarCode)を採用する。
LVBCについて
次に本発明の情報埋め込み技術の好適な例として、LVBC(Low Visibility Barcodes:低可視バーコード)を説明する。
【0022】
ここでいう情報埋め込み手段というのは印刷装置において、用紙やOHPシートなどの画像形成媒体(以下シートとする)に本来印刷する画像の他に、システムとして所望の情報を付加して印字する手段のことをいう。
【0023】
一般的な情報埋め込み手段の要件として、下記が挙げられる。
【0024】
・シートに対して、情報埋め込みに必要とされるために十分な情報量のデータ埋め込みを実現できること。
【0025】
・シートに色材(トナーやインクなど)を使って埋め込まれた情報が後にデジタル情報として確実に抽出可能であること。
【0026】
・原稿画像をシートに複写する際に、原稿の回転、拡大、縮小、部分的削除、複写による信号の鈍り、汚れなどの情報抽出を妨げる要因に対するある程度の耐性があること。
【0027】
複写禁止原稿の複写を防止するために、複写時に抽出可能なリアルタイム性、あるいはそれに準ずる高速性があること
本実施形態におけるLVBCは上記の要件を満たすものである。
【0028】
図13はLVBCが埋め込まれた原稿の一例を示すイメージ図である。
【0029】
1301はシート全体を示し、1302は1301の拡大図を示す。3702によれば、原稿に本来描画されるイメージの他に、一見ランダムに埋め込まれた多数のドット(例えば1303)が見える。このドットに付加すべき情報を埋め込む。
LVBCの埋め込み方法
次にLVBCの埋め込み方法について説明する。
【0030】
LVBCではシートに対して印刷される画像のほかに、付加情報を埋め込むためにグリッド(格子)と呼ばれるドットパターン印刷する。図13においてドット1303はグリッドを構成する各ドットを示している。グリッドそのものは縦横等間隔に離れたドットの集合体である。グリッドに置かれた各ドット間の最短距離を仮想的な線(ガイドライン)で結ぶと、一定の間隔で縦横に引かれた仮想的な格子模様が出現する。
【0031】
付加情報は一定サイズ以内のバイナリ(2値)データとして入力される。付加データはグリッドを構成するドットに対して上下左右8方向に変位(中心地からずれること)することによって情報埋め込みを実現している。
【0032】
図14は付加情報として、010111110011bというバイナリデータを埋め込む例を示す図である。図14において、縦横の線1901はグリッドの位置を示す仮想的なガイドラインを示す。このようにグリッドの最短距離を線で結ぶと格子模様が出現する。1902は中心地を示し、ここにはドットを置かない。実際には、例えば1903のように中心地1902から離れた位置にドットを変位させて配置する。
【0033】
010111110011bは3ビットずつ分解され、010,111,110,011に分けられる。さらに各3ビットに対してデシマル変換を行い、2,7,6,3に変換される。図14の下図で示されるように、グリッドを構成する各ドットは数値に対して上下左右の8方向にいずれかに変位させることによって情報をあらわすことが可能である。この場合、2,7,6,3はそれぞれ右上、右下、下、左に変位することによって情報を埋め込むことが可能である。このような処理の繰り返しによって、LVBCでは高々2000バイト程度の付加情報をシートに埋め込むことが可能である。さらに付加情報を表現するドットをシートに対して何度も埋め込むことによって冗長性が増し、画像イメージとの誤認識やシートに対する汚れ、しわ、部分的破壊に対して信頼性を向上することができる。詳細についてはLVBCの解析方法で説明する。
【0034】
なお、LVBCを解析するに当たって、グリッドの位置を正確に調査する必要があり、ドットの変位は8方向に対して等確率に出現することが望ましい。しかし埋め込みデータには0などの特定のデータを多く埋め込みたい場合があり、そのままでは等確率にならない可能性がある。そこで、本実施形態では埋め込み情報に対して可逆性を有したスクランブル処理(例えば共通鍵暗号処理)を施し、ドットの変位をランダム化して埋め込んでいる。
【0035】
図15はシートに情報を埋め込む際に領域の配置を示す模式図である。1501の四角の領域は埋め込み領域を示す。同様の四角が周期的に埋め込まれているが、いずれも同じデータが格納されている。埋め込み領域を繰り返し何度も埋め込むことにより、冗長性を増し、ノイズや誤差に対する信頼性を向上している。
【0036】
LVBCの埋め込みはデジタルデータとしての付加情報をアナログデータとしてシートに記録するDA変換であるため、比較的単純な仕組みで実現可能である。
LVBCの解析方法
次にLVBCの解析方法について説明する。
【0037】
図2はスキャンイメージ解析部104のより詳細を示したブロック図である。図2において、
201は入力されたラスターイメージから孤立ドットを検出するドット検知部、202は検出されたドットからLVBC以外のドットを除去するドット解析部である。
【0038】
203はドット解析部202が解析した絶対座標のリストを一時的に格納しておく絶対座標リスト記憶部、204は絶対座標リスト記憶部203に一時的に格納された絶対座標リストの解析を後段に指示する解析制御部である。
【0039】
205は絶対座標リストから情報ドットを抽出するドット変換部、206は変換された相対ドット座標リストを一時的に記憶する相対ドット座標リスト記憶部、207は情報ドットリストから埋め込み情報を抽出する領域復号部である。
ドットの検知
次にドット検知部201の説明を行う。
【0040】
ドット検知部201スキャン部101が読み込んだ画像を多値モノクロイメージの形式で受信する。LVBCの情報埋め込みはモノクロ2値のドットで埋め込まれるが、埋め込み時のトナーの乗り具合、シートの取り扱い、スキャン時の光学系などの影響により微細に信号が鈍った状態で受信される。よって、LVBCではこれらの影響を排除するために、受信したドットの検知を行い、受信したドットの重心位置を座標位置と認識することにより抽出精度を高めている。
【0041】
図5はドット検知部201におけるドットの検知を説明するための概念図である。イメージ上の孤立点であることを検査するために、イメージに対して4方向からギャップの検査を実施する。501〜504はそれぞれ孤立点の有無の検査を行う方向を示している。例えば縦方向501の検査結果が、「白」「白」「黒」「黒」「白」「白」と検査された場合は黒の部分が孤立点である可能性がある。しかしこれだけでは横方向のラインである可能性も否定できない。同様に横方向502の検査のみで孤立点である可能性があると判定した場合でも、実際には縦方向のラインである可能性もある。本実施形態では、ドット検知部201は、4つの方向501〜504のそれぞれに対して孤立点の検査を行うことで検査精度を向上させている。もし、ある領域において501〜504のすべてが同時に成り立つ場合はこの位置に孤立点があると識別することが可能である。
ドットの解析
次にドット解析部202の処理を説明する。ドット検知部201で検知されたドッがLVBCを構成するドット以外のドットである場合もある。例えば、原稿画像に含まれているハーフトーンを表現するためのドットパターンや、もともと原稿に含まれる孤立点(例えば平仮名の濁点など)等がそのようなドットに該当する。これらのLVBCを構成するドットでは無い孤立点を削除するためのハーフトーン除去を行う必要がある。
【0042】
図6はハーフトーン除去を説明するためのグラフ図である。縦軸にドットの粒形、横軸に濃度、さらにポイントの濃度にドットの頻度を示すヒストグラムを示している。ドットの濃度が濃い(より黒い)ほど出現頻度が高いことをしめしている。ここで、LVBCのドットの場合、埋め込みを行う際にドットの粒形や濃度をそろえて埋め込むため、LVBCのドットの出現頻度はグラフの狭い位置にピークを迎える(図6の601)。一方、ハーフトーンの場合は粒形や濃度が規格化されていないため、グラフの広い位置にまばらに出現し、頻度も比較的少ない。この特性を使用して、出現頻度が狭くピークを示している位置をLVBCドットと識別して絶対座標リスト記憶部203に記憶し、それ以外のドットを排除する。この処理によって絶対座標リスト記憶部203にはほぼLVBCドットのみが記録されることになる。
【0043】
以上の処理はスキャン部101から受信したラスターデータがスキャンイメージ解析部に送信されることと、同時に行われる。
ドットの変換
次にドット変換部205の処理を説明する。
【0044】
印刷時点でLVBCドットを埋め込んだ角度と、スキャンされたイメージの角度では、スキャナに配置した向きの違いやアナログレベルでの微細な角度のズレによって異なるため、回転角の検知と補正を行う必要がある。また、LVBCはドットが属するグリッド位置からの変位に情報を載せるために、グリッドを再現する必要があるのでグリッドの間隔を正確に決定する必要がある。
【0045】
図7はグリッドの間隔を測定する手法を説明した模式図である。今注目している点701から最も近い点702までの距離Xがグリッドの間隔に類似する。
【0046】
注目点から最も近い点は上下左右の4箇所あるが、計算を軽くするために、注目ドット701から右側90度の範囲だけを最も近い点の検索対象とする。具体的には注目点(x,y)以外の任意のドット(a,b)において、
【0047】
【数1】

【0048】
ならドット(a,b)は計算対象外とする。そして(x,y)と(a,b)間の距離が最小となる(a,b)を近隣ドットとし、2点間の距離Xをグリッドの間隔の候補とする。
【0049】
ここで注目点701も近隣ドット702も情報を埋め込むために変位されており、実際にはグリッド間隔と異なる値を示している可能性がある。また、LVBCドットとして認識しているドットは実はドット解析部202で除去しそこねたハーフトーンパターンかもしれない。そこですべての注目点(x,y)に対して上記のような手段でグリッド間の距離を計測して、すべての注目点に関してグリッド間の距離別の頻度を示したヒストグラムを作成する。
【0050】
図8はグリッド間の距離の頻度を示したヒストグラムの一例である。横軸はグリッド間距離の候補である距離Xの値、縦軸は注目点(x,y)において距離Xが計測された頻度を示している。図8によれば、頻度の最も高い801の位置の距離Xが最も頻度が高いと識別される。注目点701と近隣ドット702のそれぞれのグリッドからの変調位置の出現確率が縦横ともに同じだとすると、多量の注目ドットのヒストグラムから最頻値である801がグリッド間隔であることを示すことができる。
【0051】
図9はグリッドの回転角度の補正を説明する図である。901において、すべてのドットについて、近隣ドットまでの角度を測定する。
【0052】
本来、注目ドットからの近隣ドットの角度は0度、90度、180度、270度のいずれかであるため、測定した角度のズレを補正することにより回転角度を決定することが可能である。この場合も個々の注目ドットから近隣ドットの角度は、注目点と近隣点からなるベクトルを(dx,dy)とすると、角度θは下記の式であらわされる。
【0053】
【数2】

【0054】
902はA,B,C,Dのそれぞれの近隣点までのベクトルを示している。しかし実際には注目点も隣点ドットも情報を埋め込むためにグリッド位置からわずかに変位されているため、これも同様にすべての注目点においてθを計測する。注目点701と近隣ドット702のそれぞれのグリッドからの変位位置の出現確率が縦横ともに同じだとすると、すべての注目点の角度のズレを加算することにより、平均的にグリッドの回転角度を計測することができる。903はいくつかの点のベクトルを表示したものであり、この角度を重ね合わせるとグリッドの回転角度に近似できることがわかる。
【0055】
具体的には個々の注目点のθに対して再度基準ベクトルを算出し、すべての基準ベクトルの合計結果から、トータルの角度φを求める。基準ベクトルの合計結果を(A,B)とすると、
【0056】
【数3】

【0057】
となり、グリッドの回転角度φは、
【0058】
【数4】

【0059】
によって近似することが可能である。
【0060】
ここで絶対座標リスト記憶部206に格納されている絶対座標リストに対して、グリッドの回転角度の逆回転を実施して、グリッドの角度を補正する。
【0061】
ここの回転角度の補正は90度単位には絞り込まれているが、実際には0度(正しい)、90度、180度、270度の4つまでは絞り込まれていない。この絞込みに関しては後述する。
【0062】
図10は回転の補正結果およびグリッド位置を求めた説明図である。
【0063】
図10において1001は回転の補正が完了したLVBCドットの絶対座標リストを示している。さらに、1002で示すように、ドット変換部205で求めたグリッド間隔毎に仮想的な直線をX方向、Y方向それぞれに引き、これら直線の交点をグリッドとする。
【0064】
このグリッドの位置から実際に打たれたドットの座標の変位を計測する。
【0065】
図11はグリッドの変位から実際のデータに変換を行う説明図である。
【0066】
グリッドからの変位を縦横にそれぞれ0〜7の情報で表現する。図11の場合、2,7,6,3が抽出できるため、これを3bitずつ集め、010111110011がこのドットから抽出した埋め込みデータとなる。同様にすべてのドットに対してこのような抽出処理を行うことによって数十〜数千バイトの埋め込みが実施可能である。
【0067】
領域の決定
次に埋め込み領域の決定について説明する。
【0068】
図15で説明した埋め込み領域のサイズ1503と繰り返し同期1504および領域の位置はそれぞれ未知数であるため、これらの決定を行う。
【0069】
最初に埋め込み領域1501の繰り返し同期1504の決定を行う。1501は同じデータが周期的に入っており、縦方向に対して所定のオフセットで自己相関を取ると、オフセット値が繰り返し同期1504と一致したときに自己相関性が高まり、繰り返し同期1504を決定することができる。
【0070】
図16はオフセット値に対応した自己相関値を計算した例を示すグラフである。
【0071】
ここでいう自己相関とは特定の埋め込みデータが周期的に出現する頻度を評価する手法であり、自己相関値とは特定のオフセット値における、埋め込みデータの類似性を評価する数値である。
【0072】
自己相関値を算出する自己相関関数COR(A,B)は下記の演算式で与えられる。
【0073】
COR(A,B)=bitcount(not(A xor B))
ここでxorは2項の排他的論理和を示しており、notは否定を示す。
【0074】
bitcountはビット列で1となるものの個数をカウントする関数である。
【0075】
例えば、Aが010b,Bが011bの場合はnot(A xor B)=not(001b)=110bとなり、bitcountは2となる。
【0076】
ここで領域があらかじめ決められた幅と高さを持つ行列だとし、領域を評価するためのビット列をCELL(x,y)とする。ここでx,yは縦、横の座標を示す。例えば第1の領域のサイズが幅=8、高さ=8だとすると、x,yを左上とした領域は3bit×8×8=192bitがCELL(x,y)のビット列の長さとなる。
【0077】
ここで、あるオフセットにおける、すべての座標の自己相関値は下記関数で表される。
【0078】
【数5】

【0079】
例えば領域のサイズ1503を8,繰り返し同期1504を8×3=24としたときに自己相関を取るとオフセット=24で自己相関値はピーク1601となるため、オフセット=24を繰り返し同期2904と決定することが可能である。
【0080】
次に埋め込み領域1501の位置とサイズの決定を行う。自己相関を取ったことにより、領域の繰り返し同期は決定したが、その中のどの位置に領域があるかと領域のサイズの決定が必要である。
【0081】
図17は領域の位置の決定方法を示した模式図である。あらかじめ繰り返し同期が決定しているので、相対座標リスト記憶部205から任意の繰り返し同期分の領域を切り出す。その領域の隣の領域で相関を取る、さらに隣の領域で相関を取る、ということを繰り返す。この中で領域1702の部分は繰り返し同期の周期で同じデータが出現するので相関性が高い。この特性を利用して、相関性の高い部分の開始位置を領域の開始位置と特定し、相関の高い部分の終わりまでのサイズを埋め込み領域のサイズと決定することが可能である。
領域の復号
上記で確定した領域の位置とサイズから領域のデータを復号する。
【0082】
ここで単一の領域だけだと計測誤差やノイズによる誤判定する可能性があるため、すべての領域に書き込まれたドットの位置の集計を行い、最頻値を採用し、その値の生起確率を計算する。
【0083】
図18は領域の集計を説明するための模式図である。図18において、1801〜1803は異なる位置に書かれた領域である。これらを重合した結果が1804である。ノイズや誤差によるズレがあるが、すべての領域の集計結果によって最頻値が決まるため、この値を採用することができる。
【0084】
次に実際の復号を実施する。この段階においてノイズや誤差による影響が拭えないため、復号した結果にエラー訂正処理を施して復号を行う。まずは図14で説明したように、グリッドからの変位を抽出して、変位位置に対応するデータに変換して第1の領域に埋め込まれたデータ列を抽出する。このデータ列には実際に使用する複写禁止データの他に、データの破壊を検知、可能なら修復するエラー訂正符号が埋め込み時に記録されている。
【0085】
エラー訂正符号には既知の技術として数多くされているが、ここではLDPC(Low Density Parity Check)方式を使用する。LDPCは誤り訂正能力が非常に高く、シャノン限界に近い特性を示すことで知られている。LDPCの詳細な説明に関しては省略する。また、LDPC以外であっても、エラー訂正符号の特性を持つ方式であればどのような方式であっても構わない。
【0086】
エラー訂正符号を用いることで、抽出したグリッドにある程度の誤差やノイズが含まれていても埋め込みデータを抽出することが可能である。
【0087】
さらに、回転角度の補正で説明したとおり、回転角度の補正処理は90度単位で行うため、ここで抽出されたデータは正しいデータか、正しいデータを90度回転したものか、180度回転したものか、270度回転したものかの4通りが存在する。そこで、抽出データに対して、回転なし、90度回転、180度回転、270度回転した結果に対してそれぞれ見込みでLDPCによるエラー訂正を行った復号を実施する。正しい回転角度の場合にのみ、エラー訂正符号が機能し、正常にデータを抽出することが可能である。
【0088】
図12は回転を考慮し、エラー訂正を行った復号の処理を説明するための説明図である。
【0089】
図12において、この例では正しいデータに対して270度回転した結果が抽出されたとする。1201において最初に抽出データに対してそのままエラー訂正処理を実施する。正しいデータはエラー訂正符号を含んでいるが、回転することによって意味のないデータになってしまうため、エラー訂正することができない。次に1202において、1201に対して90度回転を施したデータに対してエラー訂正処理を実施する。同様にエラー訂正に失敗するため、データを抽出することができない。次に1203において、1202に対して90度回転を施したデータに対してエラー訂正処理を実施する。同様にエラー訂正に失敗するため、データを抽出することができない。最後に1204において、1203に対して90度回転を施したデータに対してエラー訂正処理を実施する。これは正しいデータであるため、エラー訂正処理に成功するため、抽出データとして採用することが可能である。
【0090】
もし1204でもエラー訂正処理に失敗した場合、以下の状況が考えられる。
【0091】
・誤差やノイズが多くてデータの抽出に失敗した場合
なお、後で説明する投機解析の場合には、LVBCのドット数が少ないため、全ページのドットを用いる方法に比較して、抽出に失敗する可能性は高い。
【0092】
以上によって領域に格納された埋め込みデータの抽出が実施可能である。
解析処理の投機実行
上記で述べたスキャンイメージ解析部について、ドット検知部201およびドット解析部202までの処理はスキャン部101から送信されるラスターデータ毎にリアルタイムに処理が行われる。
【0093】
従来、ドット変換部203以降の処理は従来、1ページ分のスキャンデータが確定してから実施していた。
【0094】
しかし、上記で述べたようにエラー訂正符号などを利用して、ある程度の面積が確保できれば十分解析は可能である。
【0095】
そこで1ページ分のラスターデータが揃うまで待たなくても解析を始めることにより、最初のページの出力判定を早期に行うことにより、FCOTの高速化を達成することができる。
【0096】
図4は解析処理の投機実行を説明するための模式図である。図4において、401はスキャンする対象画像を単純化して表示している。403は対象画像401をスキャンラインに分解したものを示しており、402は対象画像401上に載ったLVBCドットであることを示している。404はスキャンライン数を示している。図4の状態では全体のページのスキャンが完了しておらず、画像の前半部分のスキャンのみが完了していることを示す。410は絶対座標リスト記憶部203の内容を示しており、LVBCドット402の個々の座標がリスト化して配置される。このリスト化はスキャン部101がラスターをスキャンすると同時に書きこまれる。このような途中の段階でもある程度のLVBCドットの情報が集まれば解析可能である。
【0097】
その制御を行うのが解析制御部204である。
【0098】
図3は解析制御部204の動作を説明するフローチャートである。解析制御部204はスキャン部204からラスターデータが送信された時に、処理を開始し、以降1ページ分のラスターデータの受信が終わるまで処理を継続する。図3において、ステップ301において投機スキャンライン定数分のスキャンを完了したか調査する。
【0099】
投機スキャンラインとは、全体のスキャンライン数に比べて先行して解析を行うために調査を開始するスキャンライン数である。
【0100】
例えばA4サイズの長尺方向の場合、600dpi換算しておよそ7000ラインのスキャンラインがあるが、その1/3の2333ラインを投機スキャンライン定数とすると、解析部204は全体のスキャンの1/3程度を読み込んだ時点で、ドット変換部205にドットの変換を指示する。
【0101】
ここで、ドット検知部201およびドット解析部202はスキャンデータの処理を停止せず、全スキャンライン分の処理が完了するまで動作を継続する。これは投機スキャンライン定数分の解析が失敗したときに、全スキャンラインで再度解析を行うために使用される。
【0102】
投機スキャンライン定数分のスキャンが完了すると、ステップ302においてドット変換部205に解析処理を指示する。続いてステップ303において解析処理が完了したかどうかを確認する。完了したらステップ304において正しく解析できたか確認する。これは領域復号部206での解析結果が成功したかどうかの判断となる。もし解析が成功した場合にはステップ305において投機解析結果を採用する。解析できない場合にはステップ306において、規定個数以上のドットが検出できたかどうかを判定する。これはそもそも原稿にLVBCが埋め込まれていない場合を想定しており、この場合はステップ307において埋め込みなしと判定する。埋め込みがあると判定された場合にも、投機スキャンライン定数分のスキャンライン分では、解析対象となるドットのサンプルが少なく、十分にエラー訂正ができない場合があり、その場合には全ラインを用いた解析処理を行う。その場合にはステップ308において、全スキャンラインの受信が完了したかを調べ、ステップ309において、ドット変換部205に再度解析を指示する。ステップ310において解析の完了を待ち、ステップ311において再度正しく解析できたかを判断する。解析できた場合にはステップ312において全スキャンラインの解析結果を採用する。正しく解析できなかった場合はステップ307において埋め込みなしと判断する。
【0103】
このようにして、1ページ分のスキャンラインが揃わなくても投機的に解析処理を行うことにより、出力の判断を早期に行うことができるため、ページの印刷を早めることが可能となり、FCOTの向上を図ることが可能となる。
【実施例2】
【0104】
第1実施例ではページの前半部分だけを投機解析してその結果で印刷の可否を判定していた。しかし、圧板に二つの異なるページ(片方は印刷許可、片方は印刷禁止)が同時に載せられた場合には、前半部分の判定だけで印刷の可否を判断してしまい、印刷禁止のページの印刷が行われる可能性がある。
【0105】
よって、スキャン部101の構成によって、投機解析を行うかどうかを判定するようにしてもよい。
【0106】
この場合、スキャン部101からページのラスターデータが送信される時に、送信条件として、スキャナが圧板か、それともADF(Auto Document Feeder)を用いているかの条件を送るようにする。
【0107】
そして異なるページが混在するような読み方がなされた場合は投機解析を行わず、全ページをスキャンした後に解析するように変更して、ページの印刷条件を損なわない場合にのみFCOTの高速化を図れるようにしてもよい。
【実施例3】
【0108】
第1実施例では投機スキャンライン定数が固定値(2333ライン)を採用していた。この値は状況に応じて変更しても構わない。例としては、投機解析による解析結果の成功率をカウントしておき、成功率が低い場合には投機スキャンライン定数を増加させることによって、投機解析の成功率を上げることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に埋め込まれた埋め込み情報によって複写の可否を判断する画像形成装置であって、
原稿を光学的に読み込み、ラスターデータに変換するスキャン手段(101)と、
入力したスキャン画像からドットの座標を抽出する抽出手段(201)と、
抽出されたドットの座標から埋め込まれた情報を解析する解析手段(205−206)と、
予め設定されたパラメータに従って、ページの特定の位置から投機的に解析を行う投機解析と、
スキャンが完了してから解析を行う完全解析を指示する解析制御手段(204)と、
解析結果に応じて、ページの複写、送信、格納を指示するジョブ制御手段(105)と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置であって、
前記スキャン部(101)は読み取り方法を情報として後段に渡し、
前記解析制御手段は、前記読み取り方法によって投機解析を行うかどうかを決定する解析制御手段と
を特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1あるいは2の画像形成装置であって、
前記解析制御手段が投機解析を行うためのパラメータを変更可能とするパラメータ変更手段と、
を特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−55353(P2011−55353A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203882(P2009−203882)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】