画像形成装置
【課題】 転写ベルトの斜行を抑制することにより良質なカラー画像を形成することが可能とした新規な構成の画像形成装置を提供する。
【解決手段】 転写ベルト14の展張面14Aが仮想平面S1(複数本の感光ドラム7Aのうち隣り合う感光ドラム7Aと転写ベルト14と接線を含む仮想の平面をいう。)上、又は仮想平面S1より感光ドラム7A側のみに位置するように従動ローラ16を傾動変位させる。これにより、展張面14Aが感光ドラム7Aから離間するように変位することはないので、転写ベルトの斜行を抑制することにより良質なカラー画像を形成することができる。
【解決手段】 転写ベルト14の展張面14Aが仮想平面S1(複数本の感光ドラム7Aのうち隣り合う感光ドラム7Aと転写ベルト14と接線を含む仮想の平面をいう。)上、又は仮想平面S1より感光ドラム7A側のみに位置するように従動ローラ16を傾動変位させる。これにより、展張面14Aが感光ドラム7Aから離間するように変位することはないので、転写ベルトの斜行を抑制することにより良質なカラー画像を形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙等の記録シートに画像を形成(印刷)する電子写真方式の画像形成装置に(以下、画像形成装置と略す。)関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を形成することが可能な画像形成装置では、基礎となる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)の現像剤像を重ね合わせることにより、多様な色の画像を形成する。
【0003】
このとき、例えば、ダイレクト方式の画像形成装置では、感光ドラムに担持された現像剤を転写ベルト上を搬送される記録シートに直接的に転写し、記録シート上で複数種類の現像剤像を重ね合わせてカラー画像を記録シートに形成する。
【0004】
また、中間転写方式の画像形成装置では、感光ドラムに担持された現像剤を中間転写ベルトに転写して、中間転写ベルト上で複数種類の現像剤像を重ね合わせた後、その中間転写ベルト上に形成されたカラー画像を記録シートに転写することにより記録シートにカラー画像を形成している。
【0005】
なお、感光ドラムは、基礎となる色毎に設けられるが、通常、これら複数個の感光ドラムは、中間転写ベルト又は転写ベルト(以下、これらのベルトを総称するときは、単に「ベルト」をいう。)の回転方向に沿って直列に並んで配設される。特に、ベルトのうち複数個の感光ドラムと対向する範囲を展帳面という。
【0006】
ところで、上記のような画像形成装置では、転写ベルト上を搬送される記録シート、又は中間転写ベルトに感光ドラムに担持された画像を転写するので、ベルトがその幅方向に移動するように斜行してしまうと、複数種類の現像剤像を正確に重ね合わせることができず、良質なカラー画像を形成することができない。
【0007】
因みに、ベルトの幅方向とは、ベルトの回転方向(循環方向)及び厚み方向と直交する方向をいい、通常、ベルトを回転駆動させる駆動ローラの軸方向と一致する。
そこで、特許文献1に記載の発明では、幅方向全域でベルトに接触してベルトと共に従動回転するステアリングロールを設けるとともに、このステリングロールをベルトの斜行状態に応じて傾動させることにより、ベルトの斜行を抑制又は矯正している。
【0008】
しかし、ステアリングロールが傾動すると、これに呼応してベルトの展張面もベルトの厚み方向に変位するので、感光ドラムと展張面との距離が変化してしまい、画像形成に悪影響が生じる場合がある。
【0009】
このため、特許文献1に記載の発明では、展帳面の前後それぞれに展帳面の位置を保持するための面出しローラを設けることにより、ステアリングロールが傾動した場合であっても、感光ドラムと展張面との距離が変化することを防止している。なお、展帳面の前後とは、展張面を基準として、ベルトの回転方向前進側及び後退側をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−2999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記点に鑑み、ベルトの斜行を抑制することにより良質なカラー画像を形成することを可能とした新規な構成の画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、複数種類の現像剤像を重ね合わせて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置であって、無端状のベルト(14)と、ベルト(14)が架け渡され、軸方向が互いに略平行となるように配設された第1ローラ(15)及び第2ローラ(16)と、ベルト(14)のうち第1ローラ(15)及び第2ローラ(16)により張架された展張面(14A)に対して対向配置され、転写される現像剤像が担持される複数本の感光ドラム(7A)と、第2ローラ(16)の軸方向が第1ローラ(15)の軸方向に対して傾くように第2ローラ(16)を変位させることにより、ベルト(14)の斜行を抑制する傾動手段(21)とを備え、複数本の感光ドラム(7A)のうち隣り合う感光ドラム(7A)とベルト(14)と接線を含む仮想の平面を仮想平面(S1)と呼ぶとき、傾動手段(21)は、展張面(14A)が仮想平面(S1)上、又は仮想平面(S1)より感光ドラム(7A)側のみに位置するように第2ローラ(16)を変位させることを特徴とする。
【0013】
これにより、本発明では、第2ローラ(16)を傾動させるので、特許文献1に記載の発明と同様な原理によりベルト(14)の斜行を抑制することができるが、傾動手段(21)は、仮想平面(S1)より感光ドラム(7A)側の範囲又は仮想平面(S1)上に展張面(14A)が位置するように第2ローラ(16)を傾動させ、かつ、展張面(14A)が仮想平面(S1)を挟んで感光ドラム(7A)と反対側の範囲に位置しないように第2ローラ(16)を傾動させるので、展張面(14A)が感光ドラム(7A)から離間するように変位することはない。
【0014】
つまり、仮想平面(S1)より感光ドラム(7A)側の範囲に展張面(14A)が位置するように第2ローラ(16)を傾動させると、展張面(14A)のうち感光ドラム(7A)と接触する部分は、第2ローラ(16)の傾動角度に応じて接触面圧は変化するものの、感光ドラム(7A)と接触した状態は保持されるので、展張面(14A)が感光ドラム(7A)から離間するように変位することはない。
【0015】
したがって、本発明では、感光ドラム(7A)と展張面(14A)との距離が変化することなく、ベルト(14)の斜行を抑制できるので、良質なカラー画像を形成することが可能とした新規な構成の画像形成装置を得ることができる。
【0016】
ところで、特許文献1に記載の発明では、ステアリングロールに加えて、一対の面出しローラを別途設けているので、画像形成装置の構造が複雑になるとともに、ベルト及びベルトを駆動又は張架するローラ等からなるベルトユニットの大型化招き、画像形成装置の大型化及び製造原価上昇を招いてしまう。
【0017】
これに対して、本発明では、展張面(14A)の前後それぞれに展張面14Aの位置を保持するための面出しローラを設ける必要がないので、画像形成装置の大型化及び製造原価上昇を抑制しつつ、感光ドラムと展張面との距離が変化してしまうことを防止しながらベルトの斜行を抑制するこができる。
【0018】
なお、本発明において「軸方向が互いに略平行となるように第1ローラ(15)及び第2ローラ(16)が配設されている」とは、少なくとも目視にて第1ローラ(15)及び第2ローラ(16)を確認したときに、第1ローラ(15)の軸方向と第2ローラ(16)の軸方向とが平行となっていれば十分である。
【0019】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の中央断面を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るベルトユニットの上面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るベルトユニットの左側斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るベルトユニットの右側斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る傾動機構の斜視図である。
【図6】図5のA矢視図である。
【図7】図5のB矢視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る傾動機構が作動した状態を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る画像形成装置の特徴を示す図ある。
【図10】(a)は駆動ローラ15及び従動ローラ16が互いに平行な場合における上面図であり、(b)は図10(a)の右側面図であり、(c)は従動ローラ16が傾動した状態における上面図であり、(d)は図10(c)の右側面図であり、(e)は図10(c)のA矢視図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るベルトユニットの上面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るベルトユニットの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態は、本発明に係る画像形成装置をダイレクトタンデム方式の画像形成装置に適用したものであり、以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
1.画像形成装置の概略構造
画像形成装置1の筐体3内には、図1に示すように、記録用紙やOHPシート等の記録シート(以下、用紙という。)に現像剤像を転写することにより、用紙に画像を形成する電子写真方式の画像形成部5が収納されており、この画像形成部5は、4つのプロセスカートリッジ7、転写ローラ8、露光器9及び定着器11等から構成されている。
【0022】
また、4つのプロセスカートリッジ7は、後述する転写ベルト14の展張面14Aに面するように用紙搬送方向に沿って直列に並んでおり、本実施形態では、搬送方向上流側から順に、ブラック用のプロセスカートリッジ7K、イエロー用のプロセスカートリッジ7Y、マゼンタ用のプロセスカートリッジ7M、及びシアン用のプロセスカートリッジ7Cが配設されている。
【0023】
そして、各プロセスカートリッジ7K〜7Cは、現像剤像が担持される感光ドラム7A、及び感光ドラム7Aを帯電させる帯電器7B等から構成されている。なお、図1においては、紙面の都合上、シアン用のプロセスカートリッジ7Cのみに感光ドラム7A及び帯電器7Bの符号を付した。
【0024】
以上に説明した構成において、帯電した感光ドラム7Aを露光器9にて露光して感光ドラム7Aの外周面に静電潜像を形成した後、電荷を帯びた現像剤(本実施形態では、粉体状のトナー)を感光ドラム7Aに供給すると、感光ドラム7Aの外周面に現像剤像が担持(形成)される。
【0025】
また、展張面14Aを挟んで感光ドラム7Aと対向する位置には、感光ドラム7Aに担持された現像剤を用紙に転写させる転写ローラ8が設けられており、感光ドラム7Aに担持されていた現像剤像は、転写ベルト14上を搬送される用紙に転写される。そして、現像剤像が転写された用紙は、定着器11に搬送されて加熱され、用紙に転写された現像剤像が用紙に溶着(定着)する。
【0026】
2.ベルトユニット
2.1.ベルトユニットの概要
ベルトユニット13は、図2〜図4に示すように、転写ベルト14、駆動ローラ15、従動ローラ16、メインフレーム17及びサブフレーム18等から構成されており、このベルトユニット13は、装置本体に対して着脱可能に組み付けられている。
【0027】
そして、転写ベルト14は、樹脂材料(本実施形態では、熱可塑性エラストマー)からなるガイドベルトが無いガイドレス無端ベルトであって、駆動ローラ15と従動ローラ16との間に架け渡されて用紙を搬送するものである(図1参照)。因みに、ガイドベルトとは、例えば、駆動ローラ15及び従動ローラ16を軸方向両側から挟み込むようにして転写ベルト14の斜行を防止するものである(特開2007−193205号公報等参照)。
【0028】
なお、以下、本実施形態において、転写ベルト14のうち駆動ローラ15と従動ローラ16との間に形成される平面部であって、プロセスカートリッジ7(感光ドラム7A)と対向する範囲を展張面14A(図1参照)という。
【0029】
そして、駆動ローラ15は、メインフレーム17に対する位置を不動とした状態でメインフレーム17に回転可能に組み付けられているとともに、その軸方向一端側に設けられた駆動歯車15Aを介して装置本体に設けられた電動モータ(図示せず。)から動力を得て回転することにより転写ベルト14を回転させる。このため、駆動ローラ15が回転して転写ベルト14が回転すると、従動ローラ16は転写ベルト14の回転と共に従動回転する。
【0030】
メインフレーム17は、図2に示すように、駆動ローラ15の軸方向両端側に設けられ、かつ、展張面14Aに発生する張力の方向D1(以下、展張方向D1という。)と略平行な方向であって、駆動ローラ15の軸方向と直交する方向に延びる梁状の強度部材であり、これら一対のメインフレーム17には、駆動ローラ15に加えて、4本の転写ローラ8も回転可能に組み付けられている。
【0031】
従動ローラ16は、その軸方向が駆動ローラ15の軸方向に対して略平行に配設されているとともに、その軸方向一端側(本実施形態では、右端側)はメインフレーム17に直接的に組み付けられ、軸方向他端側は、メインフレーム17に揺動可能に連結されたサブフレーム18を介してメインフレーム17に間接的に組み付けられている。
【0032】
すなわち、従動ローラ16の軸方向一端側のメインフレーム17には、図4に示すように、長径方向(長辺方向)がメインフレーム17の長手方向と一致するような矩形状の長穴17Aが設けられており、この長穴17Aには、従動ローラ16の回転軸16Aを回転可能に支持する軸受ブロック19Aが変位可能に組み付けられている。
【0033】
また、長穴17Aの内壁面のうちメインフレーム17の長手方向と平行な一対の内壁面17Bには、メインフレーム17の長手方向と平行な方向に延びる突条(図示せず。)が設けられ、一方、軸受ブロック19Aのうち内壁面17B側には、上記の突条が摺動可能に填り込むとともに、メインフレーム17の長手方向と平行な方向に延びる溝部(図示せず。)が設けられている。このため、軸受ブロック19A、つまり従動ローラ16の軸方向一端側は、メインフレーム17の長手方向と平行な方向のみに変位することができる。
【0034】
一方、従動ローラ16の軸方向他端側は、図3に示すように、サブフレーム18を介してメインフレーム17に組み付けられているものの、サブフレーム18と回転軸16Aとの組み付け構造は、図6に示すように、従動ローラ16の軸方向一端側と同様な構造である。
【0035】
つまり、サブフレーム18には、長径方向(長辺方向)がサブフレーム18の長手方向と一致するような矩形状の長穴18Aが設けられており、この長穴18Aには、回転軸16Aの外周に摺接する軸受ブロック19Bが変位可能に組み付けられている。
【0036】
そして、長穴18Aの内壁面のうち長径方向と平行な一対の内壁面18Bには、長径方向と平行な方向に延びる突条18Cが設けられ、一方、軸受ブロック19Bのうち内壁面18B側には、図7に示すように、突条18Cが摺動可能に填り込むとともに、長径方向と平行な方向に延びる溝部19Cが設けられている。このため、軸受ブロック19B、つまり従動ローラ16の軸方向他端側は、長径方向と平行な方向のみに変位することができる。
【0037】
また、サブフレーム18は、図6に示すように、駆動ローラ15の回転中心から従動ローラ16側にずれた位置に設けられた支持ピン17Cを介してメインフレーム17に揺動可能に組み付けられており、このサブフレーム18が組み付けられたメインフレーム17には、サブフレーム18(従動ローラ16)が、図6で示す状態より下方側に揺動することを規制するストッパ17Dが設けられている。
【0038】
したがって、サブフレーム18は、その下端部がストッパ17Dに衝突することにより、図6で示す状態より下方側に揺動することはできず、図6で示す状態より上方側の範囲のみで揺動することができる。ここで、「図6で示す状態」とは、具体的には、後述する仮想平面S1上に展張面14Aが位置する状態である。
【0039】
因みに、サブフレーム18の実際の揺動量は、目視では揺動したか否かを判別することが難しい程度の微量であるので、サブフレーム18の揺動状態によらず、その長手方向はメインフレーム17の長手方向(展張方向D1)と平行とみなすことができ、かつ、従動ローラ16と駆動ローラ15とが平行であるとみなすことができる。
【0040】
また、軸受ブロック19Aは、図4に示すように、メインフレーム17の長手方向と平行な方向の力であって従動ローラ16と駆動ローラ15との軸間距離が増大する向きの弾性力Fs1をコイルバネ20Aから受け、一方、軸受ブロック19Bは、図6に示すように、サブフレーム18の長手方向と平行な方向の力であって従動ローラ16と駆動ローラ15との軸間距離が増大する向きの弾性力Fs2をコイルバネ20Bから受けている。
【0041】
このため、本実施形態では、従動ローラ16は、展張面14A(転写ベルト14)に所定の張力を発生させるテンションローラとして機能し、転写ベルト14は、転写ベルト14と駆動ローラ15との接触部で発生する摩擦力により、駆動ローラ15に対して滑ることなく一体的に回転する。このとき、本実施形態では、転写ベルト14は、展張面14Aにおいて従動ローラ16側から駆動ローラ15側に向かって移動するように回転する。
【0042】
2.2.傾動機構
傾動機構21は、従動ローラ16の軸方向(以下、軸方向D2という。)が駆動ローラ15の軸方向に対して傾くように従動ローラ16(回転軸16A)を変位させるための機構であり、具体的には、図5に示すように、サブフレーム18、摺動フランジ22、傾動軸受23、及び傾斜フレーム24等から構成されている。
【0043】
摺動フランジ22は、転写ベルト14が軸方向D2に変位したときに、転写ベルト14と共に軸方向D2に変位することが可能な変位部材であり、この摺動フランジ22は、回転軸16Aに対して回転しながら軸方向D2に変位することができるように回転軸16Aに組み付けられている。
【0044】
また、傾動軸受23は、傾斜フレーム24と摺動フランジ22との間に配設され、回転軸16Aを回転可能に支持しながら回転軸16Aに対して軸方向D2に変位することが可能なものであり、この傾動軸受23の外周面には、サブフレーム18の長手方向と平行な方向に突出するボス部23A、23Bが設けられている。
【0045】
そして、ボス部23A、23Bは、傾斜フレーム24に設けられた傾斜面24Aに摺動可能に接触し、一方、傾斜フレーム24は、メインフレーム17と一体化されている。
また、傾斜面24Aは、図7に示すように、傾動軸受23側に面しているとともに、摺動フランジ22側から傾斜フレーム24側に向かう向きの力が傾動軸受23に作用したときに、ボス部23A、23Bと傾斜面24Aとの接点にてボス部23A、23B(傾動軸受23)を感光ドラム7A側(本実施形態では、上方側)に移動させる向きの力が発生するように傾斜している。
【0046】
具体的には、傾斜面24Aは、感光ドラム7A側に向かうほど、摺動フランジ22(転写ベルト14)から離間するように傾斜している。このため、摺動フランジ22側から傾斜フレーム24側に向かう向きの力が傾動軸受23に作用すると、傾動軸受23は、傾斜面24Aに沿って感光ドラム7A側に変位するので、従動ローラ16の軸方向が駆動ローラ15の軸方向に対して傾くように傾動する。
【0047】
3.その他の構成
展張面14A上を搬送される用紙は、図1に示すように、ベルトユニット13より下方側に設けられた給紙トレイ12から供給されるので、給紙トレイ12からベルトユニット13に至る用紙の搬送経路Loは、用紙の搬送方向を略180度転向させるようにU字状に構成されている。
【0048】
そして、搬送経路Loの出口側(ベルトユニット13側)には、搬送されてきた用紙を展張面14Aのうち従動ローラ16側に導くとともに、複数本の感光ドラム7Aのうち隣り合う感光ドラム7Aと転写ベルト14と接線を含む仮想の平面(以下、仮想平面という。)S1に対して傾斜した方向から展張面14Aに突入させる突入ガイド25が設けられている。
【0049】
つまり、突入ガイド25は、仮想平面S1より感光ドラム7A側(上方側)に設けられているとともに、仮想平面S1より感光ドラム7A側(上方側)から展張面14Aに用紙を突入させるように用紙の搬送を案内する。因みに、本実施形態に係る突入ガイド25は装置本体に組み付けられているが、ベルトユニット13に一体化してもよい。
【0050】
4.傾動機構の作動
4.1.転写ベルトの斜行抑制作動
例えば、転写ベルト14が摺動フランジ22側から傾斜フレーム24側に斜行すると、転写ベルト14の端部が摺動フランジ22に接触して、摺動フランジ22が傾動軸受23側に押圧されるので、摺動フランジ22と傾動軸受23とが接触し、図8に示すように、摺動フランジ22側から傾斜フレーム24側に向かう向きの力(以下、この力を斜行力F1という。)が傾動軸受23に作用する。
【0051】
このため、ボス部23A、23Bと傾斜面24Aとの接点にてボス部23A、23B(傾動軸受23)を感光ドラム7A側(本実施形態では、上方側)に移動させる向きの力F2が発生するため、傾動軸受23が傾斜面24Aに沿って感光ドラム7A側に変位し、図9に示すように、従動ローラ16の軸方向が駆動ローラ15の軸方向に対して傾くように傾動する。
【0052】
そして、従動ローラ16の軸方向他端側(傾動軸受23側)が軸方向一端側より感光ドラム7A側に位置するように従動ローラ16が傾動すると、後述するような原理により、斜行力F1と逆向きの斜行力(以下、この斜行力を逆斜行力F3という。)が転写ベルト14に発生するので、斜行力F1が逆斜行力F3により相殺されて転写ベルト14の斜行が抑制される。
【0053】
このとき、従動ローラ16の軸方向一端側(軸受ブロック19A側)の位置は、傾動機構21の作動によっては変位せず、かつ、斜行力F1が傾動軸受23に作用していないときには、展張面14Aが仮想平面S1上、又は仮想平面S1より感光ドラム7A側の範囲に位置するように、ボス部23A、23Bや傾斜面24Aが設定されているので、展張面14Aは、傾動機構21が作動したときであっても、常に、仮想平面S1上、又は仮想平面S1より感光ドラム7A側の範囲にのみに位置し、感光ドラム7Aから離間する方向に変位しない。
【0054】
因みに、従動ローラ16の軸方向一端側(軸受ブロック19A側)の位置は、傾動機構21の作動によっては変位しないものの、回転軸16Aの傾動に伴ってメインフレーム17に対する回転軸16Aの角度が変化する。そこで、本実施形態では、軸受ブロック19A(溝部)と長穴17A(突条)との隙間で、メインフレーム17に対する回転軸16Aの角度変化を吸収する構成としている。
【0055】
また、斜行力F1が摺動フランジ22に作用したとき、摺動フランジ22と傾動軸受23とが接触するが、摺動フランジ22は転写ベルト14と共に回転するのに対して、ボス部23A、23Bが傾斜面24Aに係合した状態となり、傾動軸受23は回転しない。
【0056】
このため、摺動フランジ22と傾動軸受23との接触面で摩擦が発生し、転写ベルト14の回転抵抗が増大して転写ベルト14の幅方向端部に大きな力が作用するおそれがあるので、本実施形態では、摺動フランジ22及び傾動軸受23を摩擦抵抗が小さく、かつ、耐摩耗性に優れた樹脂(例えば、POM)製としている。
【0057】
また、転写ベルト14が回転すると、従動ローラ16から駆動ローラ15側に移動する部分(展張面14A)に発生する張力と、駆動ローラ15から従動ローラ16側に移動する部分に発生する張力との間で張力差が発生し、この張力差が大きい場合には、傾動軸受23が傾斜面24Aに沿って感光ドラム7A側に変位するおそれがある。
【0058】
しかし、本実施形態では、その張力差が比較的に小さいことに加えて、従動ローラ16に作用する重力により、傾動軸受23が傾斜面24Aに沿って感光ドラム7A側に変位することはない。つまり、傾動軸受23は摺動フランジ22に斜行力F1が作用したときのみ傾斜面24Aに沿って変位する。
【0059】
4.2.斜行の発生原理
上述したように、本実施形態では、従動ローラ16を傾動させることより、斜行力F1を打ち消す逆斜行力F3を発生させて転写ベルト14の斜行を抑制しているが、従動ローラ16を駆動ローラ15に対して相対的に傾動させると、以下のような原理にて転写ベルト14が斜行する。なお、以下の説明は、理解を容易にするために、詳細な部分の説明は省き、その概略のみ説明したものである。
【0060】
先ず、駆動ローラ15及び従動ローラ16の軸方向が互いに平行となるように配置した場合における、各ローラ15、16の長手方向中央断面それぞれにおいて、図10(a)及び図10(b)に示すように、A1点、A2点、B1点及びB2点を考える。
【0061】
ここで、A1点、A2点は、駆動ローラ15の外周面のうち、駆動ローラ15の回転中心を通り、かつ、駆動ローラ15の回転中心と従動ローラ16の回転中心とを結ぶ第1仮想線L1と直交する第2仮想線L2上の点である。また、B1点及びB2点は、従動ローラ16の外周面のうち、従動ローラ16の回転中心を通り、かつ、第1仮想線L1と直交する第3仮想線L3上の点である。
【0062】
そして、図10(a)及び図10(b)に示す状態から、例えば従動ローラ16が図10(d)及び図10(e)に示すように傾動すると、B1点及びB2点それぞれは、図10(e)に示すように、B1’点及びB2’点に移動するので、B1’点及びB2’点は、図10(c)に示すように、B1点及びB2点に対して軸方向にずれた位置となる。
【0063】
そして、転写ベルト14の幅方向中央部に仮想点P1を考えたとき、駆動ローラ15及び従動ローラ16の軸方向が互いに平行となるように配置した場合には、転写ベルト14が回転すると、仮想点P1がA1点→A2点→B1点→B2点→A1点……を通過するように移動するので、転写ベルト14は斜行しない。
【0064】
一方、例えば従動ローラ16が、図10(d)及び図10(e)に示すように傾動した場合においては、転写ベルト14が1回転する間に、仮想点P1がA1点→A2’点→B1’点→B2’点→A1’点を通過するように移動するので、転写ベルト14の回転と共に転写ベルト14が軸方向に斜行する。
【0065】
ところで、転写ベルト14の斜行方向は、上述の説明からも明らかなように、駆動ローラ15と従動ローラ16との相対的な位置関係及び転写ベルト14の回転方向により決定される。このため、駆動ローラ15及び従動ローラ16のうちいずれのローラを傾動させても、駆動ローラ15と従動ローラ16との相対的な位置関係が図10(d)のようになれば、図10(c)に示すように斜行する。
【0066】
また、駆動ローラ15と従動ローラ16との相対的な位置関係が図10(d)に示す状態において、転写ベルト14の回転方向が逆方向の場合には、転写ベルト14は、図10(c)に示す方向と逆方向に斜行する。
【0067】
したがって、本実施形態係るベルトユニット13において、傾動軸受23が感光ドラム7A側に変位すると、転写ベルト14は傾動機構21側(軸方向他端側)から傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)に斜行する。
【0068】
また仮に、傾動軸受23が感光ドラム7Aから離間する向きに変位すると、転写ベルト14は傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)から傾動機構21側(軸方向他端側)に斜行する。
【0069】
しかし、本実施形態では、ストッパ17Dが設けられているので、サブフレーム18とストッパ17Dとが衝突し、傾動軸受23は図6に示す状態より更に感光ドラム7Aから離間する向き(下方側)に変位することができない。
【0070】
このため、傾動機構21が作動していない状態(図7に示す状態)において、転写ベルト14が傾動機構21側(軸方向他端側)から傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)に斜行すると、本実施形態では、この斜行を抑制するための逆斜行力F3を発生させることができない。
【0071】
そこで、本実施形態では、傾動機構21と反対側(軸方向一端側)に設けられたコイルバネ20Aの弾性力Fs1を、原則として、傾動機構21側(軸方向他端側)に設けられたコイルバネ20Bの弾性力Fs2より大きくすることにより、仮に、転写ベルト14に斜行が発生した場合であっても、その斜行力F1の向きが、必ず、傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)から傾動機構21側(軸方向他端側)に向かう向きとなるような構成としている。
【0072】
4.本実施形態に係る画像形成装置(特に、ベルトユニット)の特徴
本実施形態では、従動ローラ16を傾動させるので、前述したように、転写ベルト14の斜行を抑制することができる。このとき、傾動機構21は、仮想平面S1より感光ドラム7A側の範囲又は仮想平面S1上に展張面14Aが位置するように従動ローラ16を傾動させ、かつ、展張面14Aが仮想平面S1を挟んで感光ドラム7Aと反対側の範囲に位置しないように従動ローラ16を傾動させるので、展張面14Aが感光ドラム7Aから離間するように変位することはない。
【0073】
つまり、仮想平面S1より感光ドラム7A側の範囲に展張面14Aが位置するように従動ローラ16を傾動させると、展張面14Aのうち感光ドラム7Aと接触する部分は、従動ローラ16の傾動角度に応じて接触面圧は変化するものの、感光ドラム7Aと接触した状態は保持されるので、展張面14Aが感光ドラム7Aから離間するように変位することはない。
【0074】
したがって、本実施形態では、感光ドラム7Aと展張面14Aとの距離が変化することなく、転写ベルト14の斜行を抑制できるので、良質なカラー画像を形成することを可能とした新規な構成の画像形成装置1を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態では、展張面14Aの前後それぞれに展張面14Aの位置を保持するための面出しローラを設ける必要がないので、画像形成装置1の大型化及び製造原価上昇を抑制しつつ、感光ドラムと展張面との距離が変化してしまうことを防止しながら転写ベルト14の斜行を抑制するこができる。
【0076】
また、本実施形態では、仮想平面S1より感光ドラム7A側に、搬送されてきた用紙を展張面14Aのうち従動ローラ16側に導くとともに、仮想平面S1に対して傾斜した方向から展張面14Aに突入させる突入ガイド25が設けられているので、従動ローラ16が仮想平面S1より感光ドラム7A側に変位した場合であっても、用紙を確実に展張面14Aに導く(突入させる)ことができる。
【0077】
すなわち、傾動機構21は、仮想平面S1より感光ドラム7A側又は仮想平面S1上に展張面14Aが位置するように従動ローラ16を変位させるので、仮に、仮想平面S1に沿って用紙を展張面14Aに突入させると、従動ローラ16が仮想平面S1より感光ドラム7A側に変位した場合には、突入しようとする用紙と従動ローラ16とが干渉してしまい、用紙を展張面14Aに突入させることができない。
【0078】
これに対して、本実施形態では、仮想平面S1に対して傾斜した方向から用紙を展張面14Aに突入させるので、従動ローラ16が仮想平面S1より感光ドラム7A側に変位した場合であっても、用紙と従動ローラ16とが干渉してしまうことを回避でき、用紙を確実に展張面14Aに導く(突入させる)ことができる。
【0079】
また、本実施形態では、コイルバネ20Aが転写ベルト14に作用させる弾性力Fs1の大きさとコイルバネ20Bが転写ベルト14に作用させる弾性力Fs2の大きさとが異なることにより転写ベルト14が斜行しようとする向きと、傾動機構21により従動ローラ16を変位させることによって転写ベルト14が斜行しようとする向きとが逆向きとなるように構成されている。
【0080】
このため、本実施形態では、転写ベルト14に発生する斜行力F1を傾動機構21による逆斜行力F3で相殺することができるので、傾動機構21を従動ローラ16の軸方向片側のみ設ける構造とすることができる。
【0081】
すなわち、転写ベルト14の幅方向一端側で発生する張力の大きさと他端側で発生する張力の大きさとが相違する場合には、転写ベルト14は張力の大きい側から張力の小さい側に斜行しようとする。
【0082】
そこで、本実施形態では、コイルバネ20Aが転写ベルト14に作用させる弾性力Fs1の大きさとコイルバネ20Bが転写ベルト14に作用させる弾性力Fs2の大きさとが異なることにより転写ベルト14が斜行しようとする向きと、傾動機構21により従動ローラ16を変位させることによって転写ベルト14が斜行しようとする向きとが逆向きとなるように構成としている。
【0083】
ところで、転写ベルト14の斜行が発生する主な原因としては、上述の説明からも明らかなように、転写ベルト14に発生する張力が幅方向において不均一であること(以下、この原因を張力不均一という。)や駆動ローラ15及び従動ローラ16が互いに平行でないこと(以下、この原因をアライメント不良という。)であるが、これらの原因を誘発する原因として、各部品の寸法バラツキや組み付け寸法バラツキ等がある。
【0084】
そこで、本実施形態では、各部品の寸法バラツキや組み付け寸法バラツキ等に起因する張力不均一及びアライメント不良による斜行力(以下、この斜行力をその他の斜行力という。)を、コイルバネ20Aの弾性力Fs1とコイルバネ20Bの弾性力Fs2との差による斜行力(以下、この斜行力を付勢差による斜行力という。)によって相殺するようにコイルバネ20A、20Bによる弾性力(付勢力)を設定している。
【0085】
つまり、その他の斜行力の方向が、傾動機構21側(軸方向他端側)から傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)に向かう方向である場合には、コイルバネ20Aの弾性力Fs1をコイルバネ20Bの弾性力Fs2より大きくして、付勢差による斜行力の方向を傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)から傾動機構21側(軸方向他端側)に向かう方向とする必要がある。
【0086】
逆に、その他の斜行力の方向が、傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)から傾動機構21側(軸方向他端側)に向かう方向である場合には、コイルバネ20Bの弾性力Fs2をコイルバネ20Aの弾性力Fs1より大きくして、付勢差による斜行力の方向を傾動機構21側(軸方向他端側)から傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)に向かう方向とする必要がある。
【0087】
したがって、傾動機構21が作動していないときに発生する転写ベルト14の斜行力F1は、付勢差による斜行力とその他の斜行力の方向との合力となる。つまり、「コイルバネ20Aが転写ベルト14に作用させる弾性力Fs1の大きさとコイルバネ20Bが転写ベルト14に作用させる弾性力Fs2の大きさとが異なることにより転写ベルト14が斜行しようとする向き」とは、この合力の向きとなる。
【0088】
そして、本実施形態に係る傾動機構21は、付勢差による斜行力とその他の斜行力の方向との合力(斜行力F1)を相殺するように逆斜行力F3を発生させるので、傾動機構21を従動ローラ16の軸方向片側のみ設ける構造とすることができる。
【0089】
ところで、その他の斜行力の方向は、各部品の寸法バラツキや組み付け寸法バラツキ等によって影響されることから、ベルトユニット13毎にその他の斜行力の方向が異なる可能性があるので、厳密には、部品の組み付けが完了したベルトユニット13毎にその他の斜行力の方向を測定し、これを相殺するようにコイルバネ20A、20Bの弾性力を設定する必要があり、ベルトユニット13の組立工数が増大するおそれがある。
【0090】
そこで、本実施形態では、各部品の寸法公差範囲及び組み付け寸法公差範囲内での寸法バラツキが発生しても、その他の斜行力の方向が、傾動機構21側(軸方向他端側)から傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)に向かう向きとなるように各部品の寸法公差及び組み付け寸法公差を設定している。
【0091】
このため、本実施形態では、ベルトユニット13によらず、一律、軸方向一端側のコイルバネ20Aの弾性力Fs1を軸方向他端側のコイルバネ20Bの弾性力Fs2より大きく設定することができるので、ベルトユニット13の組立工数が増大することを防止できる。
【0092】
このとき、付勢差による斜行力の大きさが、その他の斜行力の大きさより大きくなるようにコイルバネ20A、20Bの弾性力を設定することにより、その他の斜行力を付勢差による斜行力にて確実に相殺することができるので、各部品の寸法バラツキや組み付け寸法バラツキ等に起因する斜行の発生を抑制できる。
【0093】
因みに、各部品の寸法バラツキや組み付け寸法バラツキ等が、仮に公差範囲を超えた場合には、その他の斜行力の方向と付勢差による斜行力の方向とが一致し、付勢差による斜行力とその他の斜行力の方向との合力(斜行力F1)が大きくなり、転写ベルト14が大きく斜行した場合には、転写ベルト14の幅方向端部がその他部品と衝突し、転写ベルト14の幅方向端部が損傷するおそれがある。
【0094】
しかし、本実施形態では、傾動機構21により転写ベルト14の斜行が抑制されるので、転写ベルト14の幅方向端部に作用する負荷を軽減することができ、転写ベルト14の損層を抑制することができる。
【0095】
5.発明特定事項と実施形態との対応関係
本実施形態では、駆動ローラ15が特許請求の範囲に記載された第1ローラに相当し、従動ローラ16が特許請求の範囲に記載された第2ローラに相当し、傾動機構21が特許請求の範囲に記載された傾動手段に相当する。
【0096】
また、メインフレーム17が特許請求の範囲に記載されたフレームに相当し、サブフレーム18が特許請求の範囲に記載された揺動アームに相当し、コイルバネ20Aが特許請求の範囲に記載された第1付勢手段に相当し、コイルバネ20Bが特許請求の範囲に記載された第2付勢手段に相当する。
【0097】
(第2実施形態)
第1実施形態では、傾動機構21が従動ローラ16の軸方向片側のみに設けられていたが、本実施形態は、図11に示すように、軸方向両側に傾動機構21を設けたものである。
【0098】
これにより、転写ベルト14に発生する斜行をより確実に抑制することができる。
(第3実施形態)
上述の実施形態では、従動ローラ16はテンションローラを兼ねるローラであったが、本実施形態は、図12に示すように、従動ローラ16とは別にテンションローラ26を設け、このテンションローラ26の軸方向一端側又は両端側に傾動機構21を設けたものである。
【0099】
(第4実施形態)
本実施形態は、第3実施形態の変形例である。具体的には、本実施形態では、テンションローラ26は転写ベルト14に張力を付与する機能のみ有し、傾動機構21は従動ローラ16の軸方向一端側又は両端側に設けられている。
【0100】
つまり、上述の実施形態では、転写ベルト14に張力を付与する機能を有するローラに傾動機構21を設けたが、本実施形態では、転写ベルト14に張力を付与するためのローラとは異なるローラに傾動機構21を設けたものである。
【0101】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、ダイレクトタンデム方式の画像形成装置に本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、中間転写方式の画像形成装置にも適用できる。
【0102】
また、上述の実施形態では、用紙搬送用のベルトユニット13に本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、ADF(オートドキュメントフィーダ)の原稿搬送用ベルトユニット、又は定着器用ベルトユニットにも適用できるので、これらを有する画像形成装置にも適用できる。
【0103】
また、上述の実施形態では、付勢手段としてコイルバネを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、引張りコイルバネ、捻りバネ又はゴム等であってもよい。
【0104】
また、上述の実施形態では、転写ベルト14の斜行力F1を利用した傾動機構21であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば電気式のアクチュエータにより傾動機構21を構成してもよい。
【0105】
また、上述の実施形態では、従動ローラ16のみを傾動させたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば駆動ローラ15、又は従動ローラ16及び従動ローラ16を傾動させてもよい。
【0106】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0107】
1…画像形成装置、5…画像形成部、7…プロセスカートリッジ、
7A…感光ドラム、7C…プロセスカートリッジ、8…転写ローラ、9…露光器、
11…定着器、12…給紙トレイ、13…ベルトユニット、
14…転写ベルト、14A…展張面、15…駆動ローラ、15A…駆動歯車、
16…従動ローラ17…メインフレーム、17A…長穴、17B…内壁面、
17C…支持ピン、17D…ストッパ、18…サブフレーム、18A…長穴、
18B…内壁面、18C…突条、19A、19B…軸受ブロック、19C…溝部、
20A、20B…コイルバネ、21…傾動機構、22…摺動フランジ、
23…傾動軸受、23A…ボス部、24…傾斜フレーム、24A…傾斜面、
25…突入ガイド。
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙等の記録シートに画像を形成(印刷)する電子写真方式の画像形成装置に(以下、画像形成装置と略す。)関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を形成することが可能な画像形成装置では、基礎となる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)の現像剤像を重ね合わせることにより、多様な色の画像を形成する。
【0003】
このとき、例えば、ダイレクト方式の画像形成装置では、感光ドラムに担持された現像剤を転写ベルト上を搬送される記録シートに直接的に転写し、記録シート上で複数種類の現像剤像を重ね合わせてカラー画像を記録シートに形成する。
【0004】
また、中間転写方式の画像形成装置では、感光ドラムに担持された現像剤を中間転写ベルトに転写して、中間転写ベルト上で複数種類の現像剤像を重ね合わせた後、その中間転写ベルト上に形成されたカラー画像を記録シートに転写することにより記録シートにカラー画像を形成している。
【0005】
なお、感光ドラムは、基礎となる色毎に設けられるが、通常、これら複数個の感光ドラムは、中間転写ベルト又は転写ベルト(以下、これらのベルトを総称するときは、単に「ベルト」をいう。)の回転方向に沿って直列に並んで配設される。特に、ベルトのうち複数個の感光ドラムと対向する範囲を展帳面という。
【0006】
ところで、上記のような画像形成装置では、転写ベルト上を搬送される記録シート、又は中間転写ベルトに感光ドラムに担持された画像を転写するので、ベルトがその幅方向に移動するように斜行してしまうと、複数種類の現像剤像を正確に重ね合わせることができず、良質なカラー画像を形成することができない。
【0007】
因みに、ベルトの幅方向とは、ベルトの回転方向(循環方向)及び厚み方向と直交する方向をいい、通常、ベルトを回転駆動させる駆動ローラの軸方向と一致する。
そこで、特許文献1に記載の発明では、幅方向全域でベルトに接触してベルトと共に従動回転するステアリングロールを設けるとともに、このステリングロールをベルトの斜行状態に応じて傾動させることにより、ベルトの斜行を抑制又は矯正している。
【0008】
しかし、ステアリングロールが傾動すると、これに呼応してベルトの展張面もベルトの厚み方向に変位するので、感光ドラムと展張面との距離が変化してしまい、画像形成に悪影響が生じる場合がある。
【0009】
このため、特許文献1に記載の発明では、展帳面の前後それぞれに展帳面の位置を保持するための面出しローラを設けることにより、ステアリングロールが傾動した場合であっても、感光ドラムと展張面との距離が変化することを防止している。なお、展帳面の前後とは、展張面を基準として、ベルトの回転方向前進側及び後退側をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−2999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記点に鑑み、ベルトの斜行を抑制することにより良質なカラー画像を形成することを可能とした新規な構成の画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、複数種類の現像剤像を重ね合わせて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置であって、無端状のベルト(14)と、ベルト(14)が架け渡され、軸方向が互いに略平行となるように配設された第1ローラ(15)及び第2ローラ(16)と、ベルト(14)のうち第1ローラ(15)及び第2ローラ(16)により張架された展張面(14A)に対して対向配置され、転写される現像剤像が担持される複数本の感光ドラム(7A)と、第2ローラ(16)の軸方向が第1ローラ(15)の軸方向に対して傾くように第2ローラ(16)を変位させることにより、ベルト(14)の斜行を抑制する傾動手段(21)とを備え、複数本の感光ドラム(7A)のうち隣り合う感光ドラム(7A)とベルト(14)と接線を含む仮想の平面を仮想平面(S1)と呼ぶとき、傾動手段(21)は、展張面(14A)が仮想平面(S1)上、又は仮想平面(S1)より感光ドラム(7A)側のみに位置するように第2ローラ(16)を変位させることを特徴とする。
【0013】
これにより、本発明では、第2ローラ(16)を傾動させるので、特許文献1に記載の発明と同様な原理によりベルト(14)の斜行を抑制することができるが、傾動手段(21)は、仮想平面(S1)より感光ドラム(7A)側の範囲又は仮想平面(S1)上に展張面(14A)が位置するように第2ローラ(16)を傾動させ、かつ、展張面(14A)が仮想平面(S1)を挟んで感光ドラム(7A)と反対側の範囲に位置しないように第2ローラ(16)を傾動させるので、展張面(14A)が感光ドラム(7A)から離間するように変位することはない。
【0014】
つまり、仮想平面(S1)より感光ドラム(7A)側の範囲に展張面(14A)が位置するように第2ローラ(16)を傾動させると、展張面(14A)のうち感光ドラム(7A)と接触する部分は、第2ローラ(16)の傾動角度に応じて接触面圧は変化するものの、感光ドラム(7A)と接触した状態は保持されるので、展張面(14A)が感光ドラム(7A)から離間するように変位することはない。
【0015】
したがって、本発明では、感光ドラム(7A)と展張面(14A)との距離が変化することなく、ベルト(14)の斜行を抑制できるので、良質なカラー画像を形成することが可能とした新規な構成の画像形成装置を得ることができる。
【0016】
ところで、特許文献1に記載の発明では、ステアリングロールに加えて、一対の面出しローラを別途設けているので、画像形成装置の構造が複雑になるとともに、ベルト及びベルトを駆動又は張架するローラ等からなるベルトユニットの大型化招き、画像形成装置の大型化及び製造原価上昇を招いてしまう。
【0017】
これに対して、本発明では、展張面(14A)の前後それぞれに展張面14Aの位置を保持するための面出しローラを設ける必要がないので、画像形成装置の大型化及び製造原価上昇を抑制しつつ、感光ドラムと展張面との距離が変化してしまうことを防止しながらベルトの斜行を抑制するこができる。
【0018】
なお、本発明において「軸方向が互いに略平行となるように第1ローラ(15)及び第2ローラ(16)が配設されている」とは、少なくとも目視にて第1ローラ(15)及び第2ローラ(16)を確認したときに、第1ローラ(15)の軸方向と第2ローラ(16)の軸方向とが平行となっていれば十分である。
【0019】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の中央断面を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るベルトユニットの上面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るベルトユニットの左側斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るベルトユニットの右側斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る傾動機構の斜視図である。
【図6】図5のA矢視図である。
【図7】図5のB矢視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る傾動機構が作動した状態を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る画像形成装置の特徴を示す図ある。
【図10】(a)は駆動ローラ15及び従動ローラ16が互いに平行な場合における上面図であり、(b)は図10(a)の右側面図であり、(c)は従動ローラ16が傾動した状態における上面図であり、(d)は図10(c)の右側面図であり、(e)は図10(c)のA矢視図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るベルトユニットの上面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るベルトユニットの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態は、本発明に係る画像形成装置をダイレクトタンデム方式の画像形成装置に適用したものであり、以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
1.画像形成装置の概略構造
画像形成装置1の筐体3内には、図1に示すように、記録用紙やOHPシート等の記録シート(以下、用紙という。)に現像剤像を転写することにより、用紙に画像を形成する電子写真方式の画像形成部5が収納されており、この画像形成部5は、4つのプロセスカートリッジ7、転写ローラ8、露光器9及び定着器11等から構成されている。
【0022】
また、4つのプロセスカートリッジ7は、後述する転写ベルト14の展張面14Aに面するように用紙搬送方向に沿って直列に並んでおり、本実施形態では、搬送方向上流側から順に、ブラック用のプロセスカートリッジ7K、イエロー用のプロセスカートリッジ7Y、マゼンタ用のプロセスカートリッジ7M、及びシアン用のプロセスカートリッジ7Cが配設されている。
【0023】
そして、各プロセスカートリッジ7K〜7Cは、現像剤像が担持される感光ドラム7A、及び感光ドラム7Aを帯電させる帯電器7B等から構成されている。なお、図1においては、紙面の都合上、シアン用のプロセスカートリッジ7Cのみに感光ドラム7A及び帯電器7Bの符号を付した。
【0024】
以上に説明した構成において、帯電した感光ドラム7Aを露光器9にて露光して感光ドラム7Aの外周面に静電潜像を形成した後、電荷を帯びた現像剤(本実施形態では、粉体状のトナー)を感光ドラム7Aに供給すると、感光ドラム7Aの外周面に現像剤像が担持(形成)される。
【0025】
また、展張面14Aを挟んで感光ドラム7Aと対向する位置には、感光ドラム7Aに担持された現像剤を用紙に転写させる転写ローラ8が設けられており、感光ドラム7Aに担持されていた現像剤像は、転写ベルト14上を搬送される用紙に転写される。そして、現像剤像が転写された用紙は、定着器11に搬送されて加熱され、用紙に転写された現像剤像が用紙に溶着(定着)する。
【0026】
2.ベルトユニット
2.1.ベルトユニットの概要
ベルトユニット13は、図2〜図4に示すように、転写ベルト14、駆動ローラ15、従動ローラ16、メインフレーム17及びサブフレーム18等から構成されており、このベルトユニット13は、装置本体に対して着脱可能に組み付けられている。
【0027】
そして、転写ベルト14は、樹脂材料(本実施形態では、熱可塑性エラストマー)からなるガイドベルトが無いガイドレス無端ベルトであって、駆動ローラ15と従動ローラ16との間に架け渡されて用紙を搬送するものである(図1参照)。因みに、ガイドベルトとは、例えば、駆動ローラ15及び従動ローラ16を軸方向両側から挟み込むようにして転写ベルト14の斜行を防止するものである(特開2007−193205号公報等参照)。
【0028】
なお、以下、本実施形態において、転写ベルト14のうち駆動ローラ15と従動ローラ16との間に形成される平面部であって、プロセスカートリッジ7(感光ドラム7A)と対向する範囲を展張面14A(図1参照)という。
【0029】
そして、駆動ローラ15は、メインフレーム17に対する位置を不動とした状態でメインフレーム17に回転可能に組み付けられているとともに、その軸方向一端側に設けられた駆動歯車15Aを介して装置本体に設けられた電動モータ(図示せず。)から動力を得て回転することにより転写ベルト14を回転させる。このため、駆動ローラ15が回転して転写ベルト14が回転すると、従動ローラ16は転写ベルト14の回転と共に従動回転する。
【0030】
メインフレーム17は、図2に示すように、駆動ローラ15の軸方向両端側に設けられ、かつ、展張面14Aに発生する張力の方向D1(以下、展張方向D1という。)と略平行な方向であって、駆動ローラ15の軸方向と直交する方向に延びる梁状の強度部材であり、これら一対のメインフレーム17には、駆動ローラ15に加えて、4本の転写ローラ8も回転可能に組み付けられている。
【0031】
従動ローラ16は、その軸方向が駆動ローラ15の軸方向に対して略平行に配設されているとともに、その軸方向一端側(本実施形態では、右端側)はメインフレーム17に直接的に組み付けられ、軸方向他端側は、メインフレーム17に揺動可能に連結されたサブフレーム18を介してメインフレーム17に間接的に組み付けられている。
【0032】
すなわち、従動ローラ16の軸方向一端側のメインフレーム17には、図4に示すように、長径方向(長辺方向)がメインフレーム17の長手方向と一致するような矩形状の長穴17Aが設けられており、この長穴17Aには、従動ローラ16の回転軸16Aを回転可能に支持する軸受ブロック19Aが変位可能に組み付けられている。
【0033】
また、長穴17Aの内壁面のうちメインフレーム17の長手方向と平行な一対の内壁面17Bには、メインフレーム17の長手方向と平行な方向に延びる突条(図示せず。)が設けられ、一方、軸受ブロック19Aのうち内壁面17B側には、上記の突条が摺動可能に填り込むとともに、メインフレーム17の長手方向と平行な方向に延びる溝部(図示せず。)が設けられている。このため、軸受ブロック19A、つまり従動ローラ16の軸方向一端側は、メインフレーム17の長手方向と平行な方向のみに変位することができる。
【0034】
一方、従動ローラ16の軸方向他端側は、図3に示すように、サブフレーム18を介してメインフレーム17に組み付けられているものの、サブフレーム18と回転軸16Aとの組み付け構造は、図6に示すように、従動ローラ16の軸方向一端側と同様な構造である。
【0035】
つまり、サブフレーム18には、長径方向(長辺方向)がサブフレーム18の長手方向と一致するような矩形状の長穴18Aが設けられており、この長穴18Aには、回転軸16Aの外周に摺接する軸受ブロック19Bが変位可能に組み付けられている。
【0036】
そして、長穴18Aの内壁面のうち長径方向と平行な一対の内壁面18Bには、長径方向と平行な方向に延びる突条18Cが設けられ、一方、軸受ブロック19Bのうち内壁面18B側には、図7に示すように、突条18Cが摺動可能に填り込むとともに、長径方向と平行な方向に延びる溝部19Cが設けられている。このため、軸受ブロック19B、つまり従動ローラ16の軸方向他端側は、長径方向と平行な方向のみに変位することができる。
【0037】
また、サブフレーム18は、図6に示すように、駆動ローラ15の回転中心から従動ローラ16側にずれた位置に設けられた支持ピン17Cを介してメインフレーム17に揺動可能に組み付けられており、このサブフレーム18が組み付けられたメインフレーム17には、サブフレーム18(従動ローラ16)が、図6で示す状態より下方側に揺動することを規制するストッパ17Dが設けられている。
【0038】
したがって、サブフレーム18は、その下端部がストッパ17Dに衝突することにより、図6で示す状態より下方側に揺動することはできず、図6で示す状態より上方側の範囲のみで揺動することができる。ここで、「図6で示す状態」とは、具体的には、後述する仮想平面S1上に展張面14Aが位置する状態である。
【0039】
因みに、サブフレーム18の実際の揺動量は、目視では揺動したか否かを判別することが難しい程度の微量であるので、サブフレーム18の揺動状態によらず、その長手方向はメインフレーム17の長手方向(展張方向D1)と平行とみなすことができ、かつ、従動ローラ16と駆動ローラ15とが平行であるとみなすことができる。
【0040】
また、軸受ブロック19Aは、図4に示すように、メインフレーム17の長手方向と平行な方向の力であって従動ローラ16と駆動ローラ15との軸間距離が増大する向きの弾性力Fs1をコイルバネ20Aから受け、一方、軸受ブロック19Bは、図6に示すように、サブフレーム18の長手方向と平行な方向の力であって従動ローラ16と駆動ローラ15との軸間距離が増大する向きの弾性力Fs2をコイルバネ20Bから受けている。
【0041】
このため、本実施形態では、従動ローラ16は、展張面14A(転写ベルト14)に所定の張力を発生させるテンションローラとして機能し、転写ベルト14は、転写ベルト14と駆動ローラ15との接触部で発生する摩擦力により、駆動ローラ15に対して滑ることなく一体的に回転する。このとき、本実施形態では、転写ベルト14は、展張面14Aにおいて従動ローラ16側から駆動ローラ15側に向かって移動するように回転する。
【0042】
2.2.傾動機構
傾動機構21は、従動ローラ16の軸方向(以下、軸方向D2という。)が駆動ローラ15の軸方向に対して傾くように従動ローラ16(回転軸16A)を変位させるための機構であり、具体的には、図5に示すように、サブフレーム18、摺動フランジ22、傾動軸受23、及び傾斜フレーム24等から構成されている。
【0043】
摺動フランジ22は、転写ベルト14が軸方向D2に変位したときに、転写ベルト14と共に軸方向D2に変位することが可能な変位部材であり、この摺動フランジ22は、回転軸16Aに対して回転しながら軸方向D2に変位することができるように回転軸16Aに組み付けられている。
【0044】
また、傾動軸受23は、傾斜フレーム24と摺動フランジ22との間に配設され、回転軸16Aを回転可能に支持しながら回転軸16Aに対して軸方向D2に変位することが可能なものであり、この傾動軸受23の外周面には、サブフレーム18の長手方向と平行な方向に突出するボス部23A、23Bが設けられている。
【0045】
そして、ボス部23A、23Bは、傾斜フレーム24に設けられた傾斜面24Aに摺動可能に接触し、一方、傾斜フレーム24は、メインフレーム17と一体化されている。
また、傾斜面24Aは、図7に示すように、傾動軸受23側に面しているとともに、摺動フランジ22側から傾斜フレーム24側に向かう向きの力が傾動軸受23に作用したときに、ボス部23A、23Bと傾斜面24Aとの接点にてボス部23A、23B(傾動軸受23)を感光ドラム7A側(本実施形態では、上方側)に移動させる向きの力が発生するように傾斜している。
【0046】
具体的には、傾斜面24Aは、感光ドラム7A側に向かうほど、摺動フランジ22(転写ベルト14)から離間するように傾斜している。このため、摺動フランジ22側から傾斜フレーム24側に向かう向きの力が傾動軸受23に作用すると、傾動軸受23は、傾斜面24Aに沿って感光ドラム7A側に変位するので、従動ローラ16の軸方向が駆動ローラ15の軸方向に対して傾くように傾動する。
【0047】
3.その他の構成
展張面14A上を搬送される用紙は、図1に示すように、ベルトユニット13より下方側に設けられた給紙トレイ12から供給されるので、給紙トレイ12からベルトユニット13に至る用紙の搬送経路Loは、用紙の搬送方向を略180度転向させるようにU字状に構成されている。
【0048】
そして、搬送経路Loの出口側(ベルトユニット13側)には、搬送されてきた用紙を展張面14Aのうち従動ローラ16側に導くとともに、複数本の感光ドラム7Aのうち隣り合う感光ドラム7Aと転写ベルト14と接線を含む仮想の平面(以下、仮想平面という。)S1に対して傾斜した方向から展張面14Aに突入させる突入ガイド25が設けられている。
【0049】
つまり、突入ガイド25は、仮想平面S1より感光ドラム7A側(上方側)に設けられているとともに、仮想平面S1より感光ドラム7A側(上方側)から展張面14Aに用紙を突入させるように用紙の搬送を案内する。因みに、本実施形態に係る突入ガイド25は装置本体に組み付けられているが、ベルトユニット13に一体化してもよい。
【0050】
4.傾動機構の作動
4.1.転写ベルトの斜行抑制作動
例えば、転写ベルト14が摺動フランジ22側から傾斜フレーム24側に斜行すると、転写ベルト14の端部が摺動フランジ22に接触して、摺動フランジ22が傾動軸受23側に押圧されるので、摺動フランジ22と傾動軸受23とが接触し、図8に示すように、摺動フランジ22側から傾斜フレーム24側に向かう向きの力(以下、この力を斜行力F1という。)が傾動軸受23に作用する。
【0051】
このため、ボス部23A、23Bと傾斜面24Aとの接点にてボス部23A、23B(傾動軸受23)を感光ドラム7A側(本実施形態では、上方側)に移動させる向きの力F2が発生するため、傾動軸受23が傾斜面24Aに沿って感光ドラム7A側に変位し、図9に示すように、従動ローラ16の軸方向が駆動ローラ15の軸方向に対して傾くように傾動する。
【0052】
そして、従動ローラ16の軸方向他端側(傾動軸受23側)が軸方向一端側より感光ドラム7A側に位置するように従動ローラ16が傾動すると、後述するような原理により、斜行力F1と逆向きの斜行力(以下、この斜行力を逆斜行力F3という。)が転写ベルト14に発生するので、斜行力F1が逆斜行力F3により相殺されて転写ベルト14の斜行が抑制される。
【0053】
このとき、従動ローラ16の軸方向一端側(軸受ブロック19A側)の位置は、傾動機構21の作動によっては変位せず、かつ、斜行力F1が傾動軸受23に作用していないときには、展張面14Aが仮想平面S1上、又は仮想平面S1より感光ドラム7A側の範囲に位置するように、ボス部23A、23Bや傾斜面24Aが設定されているので、展張面14Aは、傾動機構21が作動したときであっても、常に、仮想平面S1上、又は仮想平面S1より感光ドラム7A側の範囲にのみに位置し、感光ドラム7Aから離間する方向に変位しない。
【0054】
因みに、従動ローラ16の軸方向一端側(軸受ブロック19A側)の位置は、傾動機構21の作動によっては変位しないものの、回転軸16Aの傾動に伴ってメインフレーム17に対する回転軸16Aの角度が変化する。そこで、本実施形態では、軸受ブロック19A(溝部)と長穴17A(突条)との隙間で、メインフレーム17に対する回転軸16Aの角度変化を吸収する構成としている。
【0055】
また、斜行力F1が摺動フランジ22に作用したとき、摺動フランジ22と傾動軸受23とが接触するが、摺動フランジ22は転写ベルト14と共に回転するのに対して、ボス部23A、23Bが傾斜面24Aに係合した状態となり、傾動軸受23は回転しない。
【0056】
このため、摺動フランジ22と傾動軸受23との接触面で摩擦が発生し、転写ベルト14の回転抵抗が増大して転写ベルト14の幅方向端部に大きな力が作用するおそれがあるので、本実施形態では、摺動フランジ22及び傾動軸受23を摩擦抵抗が小さく、かつ、耐摩耗性に優れた樹脂(例えば、POM)製としている。
【0057】
また、転写ベルト14が回転すると、従動ローラ16から駆動ローラ15側に移動する部分(展張面14A)に発生する張力と、駆動ローラ15から従動ローラ16側に移動する部分に発生する張力との間で張力差が発生し、この張力差が大きい場合には、傾動軸受23が傾斜面24Aに沿って感光ドラム7A側に変位するおそれがある。
【0058】
しかし、本実施形態では、その張力差が比較的に小さいことに加えて、従動ローラ16に作用する重力により、傾動軸受23が傾斜面24Aに沿って感光ドラム7A側に変位することはない。つまり、傾動軸受23は摺動フランジ22に斜行力F1が作用したときのみ傾斜面24Aに沿って変位する。
【0059】
4.2.斜行の発生原理
上述したように、本実施形態では、従動ローラ16を傾動させることより、斜行力F1を打ち消す逆斜行力F3を発生させて転写ベルト14の斜行を抑制しているが、従動ローラ16を駆動ローラ15に対して相対的に傾動させると、以下のような原理にて転写ベルト14が斜行する。なお、以下の説明は、理解を容易にするために、詳細な部分の説明は省き、その概略のみ説明したものである。
【0060】
先ず、駆動ローラ15及び従動ローラ16の軸方向が互いに平行となるように配置した場合における、各ローラ15、16の長手方向中央断面それぞれにおいて、図10(a)及び図10(b)に示すように、A1点、A2点、B1点及びB2点を考える。
【0061】
ここで、A1点、A2点は、駆動ローラ15の外周面のうち、駆動ローラ15の回転中心を通り、かつ、駆動ローラ15の回転中心と従動ローラ16の回転中心とを結ぶ第1仮想線L1と直交する第2仮想線L2上の点である。また、B1点及びB2点は、従動ローラ16の外周面のうち、従動ローラ16の回転中心を通り、かつ、第1仮想線L1と直交する第3仮想線L3上の点である。
【0062】
そして、図10(a)及び図10(b)に示す状態から、例えば従動ローラ16が図10(d)及び図10(e)に示すように傾動すると、B1点及びB2点それぞれは、図10(e)に示すように、B1’点及びB2’点に移動するので、B1’点及びB2’点は、図10(c)に示すように、B1点及びB2点に対して軸方向にずれた位置となる。
【0063】
そして、転写ベルト14の幅方向中央部に仮想点P1を考えたとき、駆動ローラ15及び従動ローラ16の軸方向が互いに平行となるように配置した場合には、転写ベルト14が回転すると、仮想点P1がA1点→A2点→B1点→B2点→A1点……を通過するように移動するので、転写ベルト14は斜行しない。
【0064】
一方、例えば従動ローラ16が、図10(d)及び図10(e)に示すように傾動した場合においては、転写ベルト14が1回転する間に、仮想点P1がA1点→A2’点→B1’点→B2’点→A1’点を通過するように移動するので、転写ベルト14の回転と共に転写ベルト14が軸方向に斜行する。
【0065】
ところで、転写ベルト14の斜行方向は、上述の説明からも明らかなように、駆動ローラ15と従動ローラ16との相対的な位置関係及び転写ベルト14の回転方向により決定される。このため、駆動ローラ15及び従動ローラ16のうちいずれのローラを傾動させても、駆動ローラ15と従動ローラ16との相対的な位置関係が図10(d)のようになれば、図10(c)に示すように斜行する。
【0066】
また、駆動ローラ15と従動ローラ16との相対的な位置関係が図10(d)に示す状態において、転写ベルト14の回転方向が逆方向の場合には、転写ベルト14は、図10(c)に示す方向と逆方向に斜行する。
【0067】
したがって、本実施形態係るベルトユニット13において、傾動軸受23が感光ドラム7A側に変位すると、転写ベルト14は傾動機構21側(軸方向他端側)から傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)に斜行する。
【0068】
また仮に、傾動軸受23が感光ドラム7Aから離間する向きに変位すると、転写ベルト14は傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)から傾動機構21側(軸方向他端側)に斜行する。
【0069】
しかし、本実施形態では、ストッパ17Dが設けられているので、サブフレーム18とストッパ17Dとが衝突し、傾動軸受23は図6に示す状態より更に感光ドラム7Aから離間する向き(下方側)に変位することができない。
【0070】
このため、傾動機構21が作動していない状態(図7に示す状態)において、転写ベルト14が傾動機構21側(軸方向他端側)から傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)に斜行すると、本実施形態では、この斜行を抑制するための逆斜行力F3を発生させることができない。
【0071】
そこで、本実施形態では、傾動機構21と反対側(軸方向一端側)に設けられたコイルバネ20Aの弾性力Fs1を、原則として、傾動機構21側(軸方向他端側)に設けられたコイルバネ20Bの弾性力Fs2より大きくすることにより、仮に、転写ベルト14に斜行が発生した場合であっても、その斜行力F1の向きが、必ず、傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)から傾動機構21側(軸方向他端側)に向かう向きとなるような構成としている。
【0072】
4.本実施形態に係る画像形成装置(特に、ベルトユニット)の特徴
本実施形態では、従動ローラ16を傾動させるので、前述したように、転写ベルト14の斜行を抑制することができる。このとき、傾動機構21は、仮想平面S1より感光ドラム7A側の範囲又は仮想平面S1上に展張面14Aが位置するように従動ローラ16を傾動させ、かつ、展張面14Aが仮想平面S1を挟んで感光ドラム7Aと反対側の範囲に位置しないように従動ローラ16を傾動させるので、展張面14Aが感光ドラム7Aから離間するように変位することはない。
【0073】
つまり、仮想平面S1より感光ドラム7A側の範囲に展張面14Aが位置するように従動ローラ16を傾動させると、展張面14Aのうち感光ドラム7Aと接触する部分は、従動ローラ16の傾動角度に応じて接触面圧は変化するものの、感光ドラム7Aと接触した状態は保持されるので、展張面14Aが感光ドラム7Aから離間するように変位することはない。
【0074】
したがって、本実施形態では、感光ドラム7Aと展張面14Aとの距離が変化することなく、転写ベルト14の斜行を抑制できるので、良質なカラー画像を形成することを可能とした新規な構成の画像形成装置1を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態では、展張面14Aの前後それぞれに展張面14Aの位置を保持するための面出しローラを設ける必要がないので、画像形成装置1の大型化及び製造原価上昇を抑制しつつ、感光ドラムと展張面との距離が変化してしまうことを防止しながら転写ベルト14の斜行を抑制するこができる。
【0076】
また、本実施形態では、仮想平面S1より感光ドラム7A側に、搬送されてきた用紙を展張面14Aのうち従動ローラ16側に導くとともに、仮想平面S1に対して傾斜した方向から展張面14Aに突入させる突入ガイド25が設けられているので、従動ローラ16が仮想平面S1より感光ドラム7A側に変位した場合であっても、用紙を確実に展張面14Aに導く(突入させる)ことができる。
【0077】
すなわち、傾動機構21は、仮想平面S1より感光ドラム7A側又は仮想平面S1上に展張面14Aが位置するように従動ローラ16を変位させるので、仮に、仮想平面S1に沿って用紙を展張面14Aに突入させると、従動ローラ16が仮想平面S1より感光ドラム7A側に変位した場合には、突入しようとする用紙と従動ローラ16とが干渉してしまい、用紙を展張面14Aに突入させることができない。
【0078】
これに対して、本実施形態では、仮想平面S1に対して傾斜した方向から用紙を展張面14Aに突入させるので、従動ローラ16が仮想平面S1より感光ドラム7A側に変位した場合であっても、用紙と従動ローラ16とが干渉してしまうことを回避でき、用紙を確実に展張面14Aに導く(突入させる)ことができる。
【0079】
また、本実施形態では、コイルバネ20Aが転写ベルト14に作用させる弾性力Fs1の大きさとコイルバネ20Bが転写ベルト14に作用させる弾性力Fs2の大きさとが異なることにより転写ベルト14が斜行しようとする向きと、傾動機構21により従動ローラ16を変位させることによって転写ベルト14が斜行しようとする向きとが逆向きとなるように構成されている。
【0080】
このため、本実施形態では、転写ベルト14に発生する斜行力F1を傾動機構21による逆斜行力F3で相殺することができるので、傾動機構21を従動ローラ16の軸方向片側のみ設ける構造とすることができる。
【0081】
すなわち、転写ベルト14の幅方向一端側で発生する張力の大きさと他端側で発生する張力の大きさとが相違する場合には、転写ベルト14は張力の大きい側から張力の小さい側に斜行しようとする。
【0082】
そこで、本実施形態では、コイルバネ20Aが転写ベルト14に作用させる弾性力Fs1の大きさとコイルバネ20Bが転写ベルト14に作用させる弾性力Fs2の大きさとが異なることにより転写ベルト14が斜行しようとする向きと、傾動機構21により従動ローラ16を変位させることによって転写ベルト14が斜行しようとする向きとが逆向きとなるように構成としている。
【0083】
ところで、転写ベルト14の斜行が発生する主な原因としては、上述の説明からも明らかなように、転写ベルト14に発生する張力が幅方向において不均一であること(以下、この原因を張力不均一という。)や駆動ローラ15及び従動ローラ16が互いに平行でないこと(以下、この原因をアライメント不良という。)であるが、これらの原因を誘発する原因として、各部品の寸法バラツキや組み付け寸法バラツキ等がある。
【0084】
そこで、本実施形態では、各部品の寸法バラツキや組み付け寸法バラツキ等に起因する張力不均一及びアライメント不良による斜行力(以下、この斜行力をその他の斜行力という。)を、コイルバネ20Aの弾性力Fs1とコイルバネ20Bの弾性力Fs2との差による斜行力(以下、この斜行力を付勢差による斜行力という。)によって相殺するようにコイルバネ20A、20Bによる弾性力(付勢力)を設定している。
【0085】
つまり、その他の斜行力の方向が、傾動機構21側(軸方向他端側)から傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)に向かう方向である場合には、コイルバネ20Aの弾性力Fs1をコイルバネ20Bの弾性力Fs2より大きくして、付勢差による斜行力の方向を傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)から傾動機構21側(軸方向他端側)に向かう方向とする必要がある。
【0086】
逆に、その他の斜行力の方向が、傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)から傾動機構21側(軸方向他端側)に向かう方向である場合には、コイルバネ20Bの弾性力Fs2をコイルバネ20Aの弾性力Fs1より大きくして、付勢差による斜行力の方向を傾動機構21側(軸方向他端側)から傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)に向かう方向とする必要がある。
【0087】
したがって、傾動機構21が作動していないときに発生する転写ベルト14の斜行力F1は、付勢差による斜行力とその他の斜行力の方向との合力となる。つまり、「コイルバネ20Aが転写ベルト14に作用させる弾性力Fs1の大きさとコイルバネ20Bが転写ベルト14に作用させる弾性力Fs2の大きさとが異なることにより転写ベルト14が斜行しようとする向き」とは、この合力の向きとなる。
【0088】
そして、本実施形態に係る傾動機構21は、付勢差による斜行力とその他の斜行力の方向との合力(斜行力F1)を相殺するように逆斜行力F3を発生させるので、傾動機構21を従動ローラ16の軸方向片側のみ設ける構造とすることができる。
【0089】
ところで、その他の斜行力の方向は、各部品の寸法バラツキや組み付け寸法バラツキ等によって影響されることから、ベルトユニット13毎にその他の斜行力の方向が異なる可能性があるので、厳密には、部品の組み付けが完了したベルトユニット13毎にその他の斜行力の方向を測定し、これを相殺するようにコイルバネ20A、20Bの弾性力を設定する必要があり、ベルトユニット13の組立工数が増大するおそれがある。
【0090】
そこで、本実施形態では、各部品の寸法公差範囲及び組み付け寸法公差範囲内での寸法バラツキが発生しても、その他の斜行力の方向が、傾動機構21側(軸方向他端側)から傾動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)に向かう向きとなるように各部品の寸法公差及び組み付け寸法公差を設定している。
【0091】
このため、本実施形態では、ベルトユニット13によらず、一律、軸方向一端側のコイルバネ20Aの弾性力Fs1を軸方向他端側のコイルバネ20Bの弾性力Fs2より大きく設定することができるので、ベルトユニット13の組立工数が増大することを防止できる。
【0092】
このとき、付勢差による斜行力の大きさが、その他の斜行力の大きさより大きくなるようにコイルバネ20A、20Bの弾性力を設定することにより、その他の斜行力を付勢差による斜行力にて確実に相殺することができるので、各部品の寸法バラツキや組み付け寸法バラツキ等に起因する斜行の発生を抑制できる。
【0093】
因みに、各部品の寸法バラツキや組み付け寸法バラツキ等が、仮に公差範囲を超えた場合には、その他の斜行力の方向と付勢差による斜行力の方向とが一致し、付勢差による斜行力とその他の斜行力の方向との合力(斜行力F1)が大きくなり、転写ベルト14が大きく斜行した場合には、転写ベルト14の幅方向端部がその他部品と衝突し、転写ベルト14の幅方向端部が損傷するおそれがある。
【0094】
しかし、本実施形態では、傾動機構21により転写ベルト14の斜行が抑制されるので、転写ベルト14の幅方向端部に作用する負荷を軽減することができ、転写ベルト14の損層を抑制することができる。
【0095】
5.発明特定事項と実施形態との対応関係
本実施形態では、駆動ローラ15が特許請求の範囲に記載された第1ローラに相当し、従動ローラ16が特許請求の範囲に記載された第2ローラに相当し、傾動機構21が特許請求の範囲に記載された傾動手段に相当する。
【0096】
また、メインフレーム17が特許請求の範囲に記載されたフレームに相当し、サブフレーム18が特許請求の範囲に記載された揺動アームに相当し、コイルバネ20Aが特許請求の範囲に記載された第1付勢手段に相当し、コイルバネ20Bが特許請求の範囲に記載された第2付勢手段に相当する。
【0097】
(第2実施形態)
第1実施形態では、傾動機構21が従動ローラ16の軸方向片側のみに設けられていたが、本実施形態は、図11に示すように、軸方向両側に傾動機構21を設けたものである。
【0098】
これにより、転写ベルト14に発生する斜行をより確実に抑制することができる。
(第3実施形態)
上述の実施形態では、従動ローラ16はテンションローラを兼ねるローラであったが、本実施形態は、図12に示すように、従動ローラ16とは別にテンションローラ26を設け、このテンションローラ26の軸方向一端側又は両端側に傾動機構21を設けたものである。
【0099】
(第4実施形態)
本実施形態は、第3実施形態の変形例である。具体的には、本実施形態では、テンションローラ26は転写ベルト14に張力を付与する機能のみ有し、傾動機構21は従動ローラ16の軸方向一端側又は両端側に設けられている。
【0100】
つまり、上述の実施形態では、転写ベルト14に張力を付与する機能を有するローラに傾動機構21を設けたが、本実施形態では、転写ベルト14に張力を付与するためのローラとは異なるローラに傾動機構21を設けたものである。
【0101】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、ダイレクトタンデム方式の画像形成装置に本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、中間転写方式の画像形成装置にも適用できる。
【0102】
また、上述の実施形態では、用紙搬送用のベルトユニット13に本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、ADF(オートドキュメントフィーダ)の原稿搬送用ベルトユニット、又は定着器用ベルトユニットにも適用できるので、これらを有する画像形成装置にも適用できる。
【0103】
また、上述の実施形態では、付勢手段としてコイルバネを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、引張りコイルバネ、捻りバネ又はゴム等であってもよい。
【0104】
また、上述の実施形態では、転写ベルト14の斜行力F1を利用した傾動機構21であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば電気式のアクチュエータにより傾動機構21を構成してもよい。
【0105】
また、上述の実施形態では、従動ローラ16のみを傾動させたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば駆動ローラ15、又は従動ローラ16及び従動ローラ16を傾動させてもよい。
【0106】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0107】
1…画像形成装置、5…画像形成部、7…プロセスカートリッジ、
7A…感光ドラム、7C…プロセスカートリッジ、8…転写ローラ、9…露光器、
11…定着器、12…給紙トレイ、13…ベルトユニット、
14…転写ベルト、14A…展張面、15…駆動ローラ、15A…駆動歯車、
16…従動ローラ17…メインフレーム、17A…長穴、17B…内壁面、
17C…支持ピン、17D…ストッパ、18…サブフレーム、18A…長穴、
18B…内壁面、18C…突条、19A、19B…軸受ブロック、19C…溝部、
20A、20B…コイルバネ、21…傾動機構、22…摺動フランジ、
23…傾動軸受、23A…ボス部、24…傾斜フレーム、24A…傾斜面、
25…突入ガイド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の現像剤像を重ね合わせて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置であって、
無端状のベルトと、
前記ベルトが架け渡され、軸方向が互いに略平行となるように配設された第1ローラ及び第2ローラと、
前記ベルトのうち前記第1ローラ及び第2ローラにより張架された展張面に対して対向配置され、転写される現像剤像が担持される複数本の感光ドラムと、
前記第2ローラの軸方向が前記第1ローラの軸方向に対して傾くように前記第2ローラを変位させることにより、前記ベルトの斜行を抑制する傾動手段とを備え、
前記複数本の感光ドラムのうち隣り合う感光ドラムと前記ベルトと接線を含む仮想の平面を仮想平面と呼ぶとき、
前記傾動手段は、前記展張面が前記仮想平面上、又は前記仮想平面より前記感光ドラム側のみに位置するように前記第2ローラを変位させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1ローラを回転可能に支持するフレームを備え、
前記傾動手段は、
前記フレームに対して揺動可能に連結され、前記第2ローラを支持する揺動アーム、及び
前記展張面が前記感光ドラムから離間する向きに変位するように前記揺動アームが揺動することを規制する規制手段
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記規制手段は、前記揺動アーム又は前記第2ローラに衝突することにより、前記第2ローラの変位を機械的に規制するストッパにて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2ローラを前記第1ローラから離間させる向きの力を前記第2ローラの軸方向一端側に作用させる第1付勢手段と、
前記第2ローラを前記第1ローラから離間させる向きの力であって、前記第1付勢手段が作用させる力の大きさと異なる大きさの力を前記第2ローラの軸方向他端側に作用させる第2付勢手段とを備え、
前記第1付勢手段が作用させる力の大きさと前記第2付勢手段が作用させる力の大きさとが異なることにより前記ベルトが斜行しようとする向きと、前記傾動手段により前記第2ローラを変位させることによって前記ベルトが斜行しようとする向きとが逆向きとなるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ベルトは、ガイドレス無端ベルトにより構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記複数本の感光ドラムに担持された現像剤像が、前記展張面上を搬送される記録シートに直接的に転写される請求項1ないし4のいずれか1つに記載の画像形成装置であって、
前記第2ローラは、前記第1ローラより記録シートの搬送方向上流側に配設されており、
さらに、前記仮想平面より前記感光ドラム側には、搬送されてきた記録シートを前記展張面のうち前記第2ローラ側に導くとともに、前記仮想平面に対して傾斜した方向から前記展張面に突入させる突入ガイドが設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
複数種類の現像剤像を重ね合わせて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置であって、
無端状のベルトと、
前記ベルトが架け渡され、軸方向が互いに略平行となるように配設された第1ローラ及び第2ローラと、
前記ベルトのうち前記第1ローラ及び第2ローラにより張架された展張面に対して対向配置され、転写される現像剤像が担持される複数本の感光ドラムと、
前記第2ローラの軸方向が前記第1ローラの軸方向に対して傾くように前記第2ローラを変位させることにより、前記ベルトの斜行を抑制する傾動手段とを備え、
前記複数本の感光ドラムのうち隣り合う感光ドラムと前記ベルトと接線を含む仮想の平面を仮想平面と呼ぶとき、
前記傾動手段は、前記展張面が前記仮想平面上、又は前記仮想平面より前記感光ドラム側のみに位置するように前記第2ローラを変位させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1ローラを回転可能に支持するフレームを備え、
前記傾動手段は、
前記フレームに対して揺動可能に連結され、前記第2ローラを支持する揺動アーム、及び
前記展張面が前記感光ドラムから離間する向きに変位するように前記揺動アームが揺動することを規制する規制手段
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記規制手段は、前記揺動アーム又は前記第2ローラに衝突することにより、前記第2ローラの変位を機械的に規制するストッパにて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2ローラを前記第1ローラから離間させる向きの力を前記第2ローラの軸方向一端側に作用させる第1付勢手段と、
前記第2ローラを前記第1ローラから離間させる向きの力であって、前記第1付勢手段が作用させる力の大きさと異なる大きさの力を前記第2ローラの軸方向他端側に作用させる第2付勢手段とを備え、
前記第1付勢手段が作用させる力の大きさと前記第2付勢手段が作用させる力の大きさとが異なることにより前記ベルトが斜行しようとする向きと、前記傾動手段により前記第2ローラを変位させることによって前記ベルトが斜行しようとする向きとが逆向きとなるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ベルトは、ガイドレス無端ベルトにより構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記複数本の感光ドラムに担持された現像剤像が、前記展張面上を搬送される記録シートに直接的に転写される請求項1ないし4のいずれか1つに記載の画像形成装置であって、
前記第2ローラは、前記第1ローラより記録シートの搬送方向上流側に配設されており、
さらに、前記仮想平面より前記感光ドラム側には、搬送されてきた記録シートを前記展張面のうち前記第2ローラ側に導くとともに、前記仮想平面に対して傾斜した方向から前記展張面に突入させる突入ガイドが設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−64898(P2011−64898A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214700(P2009−214700)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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