説明

画像形成装置

【課題】パターン種を選択するパターン種選択手段を備え、該選択するパターン種はユーザーの使用形態を考慮して選択することによって、短時間で効果的な階調補正を行うことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】
中間転写ベルト6上に面積階調法によって段階的に階調値の異なるパターンから成る面積階調パターン列を形成するパターン形成手段と、該パターン形成手段によって形成された面積階調パターン列における各パターンのトナー付着量を測定するための黒トナー付着量検知センサ30及びカラートナー付着量検知センサ40とを有し、このセンサ30,40の検知結果に基づいて階調補正を行う画像形成装置であり、パターンの面積階調パターン列を形成して行う階調補正の制御を実行する際、中間転写ベルト6上に形成するパターン種を複数種から1種類を選択するパターン種選択手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面積階調法によって段階的に階調値の異なるパターンから成る面積階調パターン列を形成し、検知して階調補正制御を行う画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、トナー付着領域の面積率を変化させて擬似的に濃度を表現する面積階調法によって階調を表現している。多くの画像形成装置には、ユーザーが望む画像品質に合わせて数種類のパターン種が画像形成装置内に内蔵されており、出力画像の種類によって使い分けられている。例えば文字列の部分はドット状のパターン種で表現され、色味などの階調性が重要視される写真などにはモアレなどの現象が現れ難いライン状のパターン種で階調が表現される。これらのパターン種はそれぞれ異なる階調特性をもつため、温湿度などの使用環境や各画像形成部の経年変化などによって階調特性が変化した場合、パターン種毎の階調特性を補正することが必要となる。
【0003】
従来から、パターン種毎の階調補正には紙上に形成した面積階調パターン列の紙上濃度情報をスキャナで読取り、画像処理部へフィードバックすることによって階調特性を補正する階調補正方法が用いられている。しかしながら、紙上に形成した面積階調パターン列をスキャナで読取るというマニュアル動作を伴うため、階調補正実施時期はユーザーもしくはサービスマンに託されているのが現状である。また、このような階調補正動作はユーザーにとって煩わしく、自動的に階調補正を実施し、階調特性を安定化する階調補正方法が望まれている。
【0004】
特許文献1(特開2003‐270868号公報)においては、プリントコントロール部で設定されたパターン種情報を受け取って、同一パターン種で階調補正用パッチを形成し、濃度情報から階調特性を補正することが記載されている。しかし、頻繁にパターン種を変えた画像信号が入力される場合、全てのパターン種の階調特性に対する補正はできず、パターン種によって画質の差が大きくなってしまう可能性がある。公報には、パターン種が変更された場合は、変更されたパターン種に応じて階調補正を行うことが記載されているが、この方法ではパターン種を変更する度に補正が入ることとなり、ユーザーの待ち時間を増やしてしまう。
【0005】
特許文献2(特開2004‐88257号公報)においては、画像形成装置内に形成する面積階調パターン列のパターン数を、パターン種に基づいて変化させることが記載されている。例えば比較的色味を気にしないフォントオブジェクトに適用されるパターン種はパターン数を少なく、色味を重視するようなオブジェクトに適用されるパターン種に対しては従来と同程度の補正精度が得られるようなパターン数としている。一般に階調補正用パターンはパターン数が多いほど正確な階調特性が得られるが、補正時間を短くするため、少ないパターン数のパターン検知結果から階調特性を近似する方法が取られている。そのため公報の方法では、近似する階調特性がパターン数によって変化し、階調安定性が保てない恐れがある。
さらに、複数のパターン種を形成して階調補正を行うため、階調補正に要する時間が長くなり、ユーザーの待ち時間を増やしてしまう。
【0006】
特許文献3(特開2004−64358号公報)においては、階調補正制御用に形成する2つ以上の面積階調パターン列を像担持体上に形成し、装置の動作状態に応じて補正する階調テーブルを選択して階調補正を行うことが記載されている。ここで、公報における動作状態とは、装置立上げや所定プリント枚数などによって発動する動作のことを意味している。しかしこの方法では、ユーザーが使用するパターン種と階調補正を行うパターン種とが異なり、所望のパターン種に対する階調補正の効果が得られない可能性がある。また、2種類以上の面積階調パターン列を像担持体上に形成して濃度情報を検知するため、階調補正に要する時間が長いという問題がある。
【0007】
このように近年の画像形成装置には、最低限の画質調整時間で高い画質の出力画像を提供することが求められているが、一般的に画質調整時間と画質はトレードオフの関係にある。画質調整動作中はユーザーがプリントできないため、画質調整に要する時間はより短い方が好ましいが、画質への要求が高まっているため、階調特性などの画質に関わる諸特性を適切に補正し、階調安定性を維持したい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、パターン種を選択するパターン種選択手段を備え、該選択するパターン種はユーザーの使用形態を考慮して選択することによって、短時間で効果的な階調補正を行うことができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、像担持体上に面積階調法によって段階的に階調値の異なるパターンから成る面積階調パターン列を形成するパターン形成手段と、該パターン形成手段によって形成された面積階調パターン列における各パターンのトナー付着量を測定するためのトナー付着量検知手段とを有し、該トナー付着量検知手段の検知結果に基づいて階調補正を行う画像形成装置において、前記面積階調パターン列を形成して行う階調補正の制御を実行する際、前記像担持体上に形成するパターン種を複数種から1種類を選択するパターン種選択手段を備えたことを特徴とする画像形成装置を提案する。
【0010】
なお、本発明は、前記パターン種選択手段が選択するパターン種は前回の補正制御実施以降、最も使用頻度の高いパターン種であると有利である。
さらに、本発明は、前記パターン種選択手段が選択するパターン種は予め決められた順番のパターン種であると有利である。
【0011】
さらにまた、本発明は、前記パターン種選択手段が選択するパターン種は初期設定で設定されているパターン種であると有利である。
さらにまた、本発明は、前記パターン種選択手段が選択するパターン種がユーザーによって任意に設定できると有利である。
【0012】
さらにまた、本発明は、前記最も使用頻度の高いパターン種は写真用のパターン種の中で最も使用頻度の高いパターン種を選択すると有利である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、補正を行うパターン種を1種類とすることで、補正制御に要する時間を短縮することが可能となる。さらに、トナーの消費を抑えることができるとともに、記録紙上に面積階調パターン列を印字しないため、記録紙の無駄も省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図2】その画像形成装置の画像形成部を示す概略構成図である。
【図3】本実施形態の画像形成装置における画像データ処理方法の流れを表したブロック図である。
【図4】(A)がドット状、(B)がライン状の代表的なパターン種の一例を示す模式図である。
【図5】(A)は黒トナー付着量検知センサ、(B)はカラートナー付着量検知センサを示すトナー付着量検知センサの概略図である。
【図6】本実施形態における階調補正のフローチャートである。
【図7】本実施形態の階調補正制御の概略図である。
【図8】パターン選択動作を示す概略図である。
【図9】不揮発メモリ内のパターン種情報を示す説明図である。
【図10】面積階調パターン列のレイアウトを示す説明図である。
【図11】(A)が補正前、(B)が補正後の階調特性のイメージを示すグラフである。
【図12】パターン選択方法の一例を示す説明図である。
【図13】パターン選択方法の別の例を示す説明図である。
【図14】画像形成装置のパターン種によって補正制御の実施時を示す説明図である。
【図15】パターン選択方法のさらに別の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態である画像形成装置の一例を示す概略図、図2はその画像形成装置の画像形成部を示す概略構成図である。ここに示した画像形成装置1は記録紙に画像を形成する画像形成部2、この画像形成部2に対して記録紙を供給する給紙装置3、原稿画像を読み取るスキャナ4、このスキャナ4に原稿を自動給紙する原稿自動搬送装置5等を備えている。
【0016】
画像形成部2には、駆動ローラ7、2次転写バックアップローラ8、従動ローラ9が巻き掛けられ、駆動ローラ7の回転によって矢印A方向に回転走行される無端状の中間転写ベルト6が配設されている。中間転写ベルト6は、伸びの少ないポリイミド樹脂に、電気抵抗を調整するためのカーボン粉末を分散せしめた材料からなっている。
【0017】
さらに、画像形成部2にはこの中間転写ベルト6に対向配置されたイエロー、シアン、マゼンタ、ブラック用の各プロセスカートリッジ10Y,10C,10M,10Kを有している。各プロセスカートリッジ10Y乃至10Kは、それぞれ異なった色のトナー像が形成されるドラム状の感光体として構成された像担持体11Y,11C,11M,11Kを有し、その各像担持体上に形成された各トナー像は、中間転写ベルト6によって搬送される記録媒体に重ねて転写される。ドラム状の像担持体に代えて、無端ベルトより成る像担持体を用いることもできる。
【0018】
各プロセスカートリッジ10Y乃至10Kの各像担持体11Y乃至11K上にトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写ベルト6に転写する構成は、トナー像の色が異なるだけで、実質的に全て同一であるため、第1のプロセスカートリッジ10Yの像担持体11Yにトナー像を形成し、これを中間転写ベルト6に転写する構成だけを説明する。
【0019】
プロセスカートリッジ10Yの像担持体11Yは、カートリッジケース12に回転可能に支持されていて、図示していない駆動装置によって反時計方向に回転駆動される。このとき、カートリッジケース12に回転可能に支持された帯電ローラ13より成る帯電装置に帯電電圧が印加され、これによって像担持体11Yの表面が所定の極性に帯電される。帯電ローラ13は、像担持体を帯電する帯電装置の一例を構成するものである。
【0020】
帯電後の像担持体11Yには、プロセスカートリッジ10Yとは別体の光書込ユニット14から出射する光変調されたレーザ光が照射され、これによって像担持体11Yに静電潜像が形成される。このようにして形成された静電潜像は現像装置15Yによってイエロートナー像として可視像化される。なお、本実施形態の光書込ユニット14としては、半導体レーザーから出射したレーザー光を図示しないポリゴンミラーによって偏向せしめながら、図示しない反射ミラーで反射させたり光学レンズに通したりすることで光走査を行うものを用いている。かかる構成のものに代えて、LEDアレイによって光走査を行うものを用いてもよい。
【0021】
一方、中間転写ベルト6を挟んでプロセスカートリッジ10Yと反対側には1次転写ローラ16が配置され、この1次転写ローラ16に転写電圧が印加されることによって、像担持体11Y上のトナー像が、矢印A方向に回転駆動される中間転写ベルト6上に1次転写される。トナー像転写後の像担持体11Yは図示していないクリーニング装置によって残留トナーが掻き取り除去される。
【0022】
上述したところと全く同様にして、図1に示した第2乃至第4の像担持体11C,11M,11K上にシアントナー像、マゼンタトナー像及びブラックトナー像がそれぞれ形成され、これらのトナー像がイエロートナー像の転写された中間転写ベルト6上に順次重ねて1次転写され、中間転写ベルト6上に合成トナー像が形成される。
【0023】
一方、画像形成部2の下部に配置された給紙装置3からは記録媒体が給紙され、該給紙装置3によって送り出された記録媒体は、レジストローラ対17によって所定のタイミングで2次転写バックアップローラ8に巻き掛けられた中間転写ベルト6の部分と、これに対置された転写搬送ベルト18の2次転写ローラ19との間に給送される。このとき、2次転写ローラ19には所定の転写電圧が印加され、これによって中間転写ベルト6上の合成トナー像が記録媒体に2次転写される。
【0024】
合成トナー像を2次転写された記録媒体は、さらに上方に搬送されて定着装置20を通り、このとき記録媒体上のトナー像が熱と圧力の作用により定着される。定着装置20を通過した記録媒体は機外の排紙部21に排出される。また、トナー像転写後の中間転写ベルト6上に付着する転写残トナーはクリーニング装置(図示せず)によって除去される。
【0025】
なお、上記装置には図示しない不揮発性メモリが搭載されており、各センサからの出力や補正制御結果、各プリントジョブにおけるパターン種の使用頻度など、様々な情報が記憶される。
【0026】
つぎに、この画像形成装置におけるこれらの画像データ処理に係る部分について説明する。
ここでは、入力画像データに対して画像処理および信号処理を施し、上述の光書込ユニット14でのレーザー駆動信号となるまでの概略を説明する。
【0027】
図3は、本実施形態の画像形成装置における画像データ処理方法の流れを表したブロック図である。
図3において、ホストコンピュータから本画像形成装置に、PDL(ページ記述言語)で記述された画像データが入力データとして入力されると、ラスタ化処理部において解釈され、ラスタイメージが形成される。このとき、それぞれのオブジェクトについて、例えば文字・線、写真、グラフィックス画像などの種別や属性信号を生成し、それをMTFフィルタ処理部、色補正・階調補正(「色・階調補正」と略称する)処理部、および擬似中間調処理部などへ出力する。MTFフィルタ処理部では、ラスタ化処理部から送られてくる属性の信号にしたがって各属性に対して最適なフィルタを選択して強調処理を行う。MTFフィルタ処理方法については従来の技術と同一であるので、ここでは詳細の説明は省略することにする。MTFフィルタ処理を行った後の画像データは、次工程である色・階調補正処理部に引き渡される。
【0028】
色・階調補正処理部では、ラスタ化処理部から送られてくる属性の信号にしたがって各属性に最適な色補正係数を用いて、ホストコンピュータから入力されたPDLの色空間であるRGB色空間から、作像部で用いるトナーの色からなる色空間であるCMYK色空間への色変換を行い、さらに階調補正処理などの各種の補正処理を行う。この色・階調補正処理方法については従来技術と同じであるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0029】
色・階調補正処理部における処理後、画像データは擬似中間調処理部に引き渡される。擬似中間調処理部では擬似中間調処理を行ない、出力画像用データを生成する。この出力画像用データはビデオ信号処理部及びPWM信号生成部を介してレーザー駆動部が駆動される。なお、この実施形態では、色・階調補正処理を施されたデータに対して、ディザ法により擬似中間調処理を行う。すなわち、予め記憶されたディザマトリクスとの比較参照を行うことにより量子化を行う。
【0030】
図4は、面積階調法による代表的なパターン種の一例で、(A)がドット状、(B)がパターン種である。ラスタ化処理部から送られてくる属性の信号にしたがって、最適な線数とスクリーン角に設定されたディザマトリクスが選択され、最適な擬似中間調処理が施されるようになっている。階調特性は、パターン種によってそれぞれ異なることが知られている。
【0031】
つぎに本実施形態の画像形成装置におけるトナー付着量検知センサについて説明する。
図5はトナー付着量検知センサの概略図を示したものであり、(A)は黒トナー付着量検知センサ30の構成を、(B)はカラートナー付着量検知センサ40の構成を示している。黒トナー付着量検知センサ30は図5(A)に示すように、発光ダイオード(LED)等からなる発光素子31と、正反射光を受光する受光素子32とから構成されている。発光素子31は中間転写ベルト6上に光を照射し、この照射光は中間転写ベルト6によって反射される。受光素子32は、この反射光のうちの正反射光を受光する。
【0032】
一方、カラートナー付着量検知センサ40は図5(B)に示すように、発光ダイオード(LED)等からなる発光素子41と、正反射光を受光する受光素子42と、拡散反射光を受光する受光素子43とから構成されている。発光素子41は、黒トナー付着量検知センサの場合と同様、中間転写ベルト6上に光を照射し、この照射光は中間転写ベルト6表面によって反射される。正反射受光素子42は、この反射光のうちの正反射光を受光し、拡散反射光受光素子43は、反射光のうち拡散反射光を受光する。本実施形態では、発光素子41として、発光される光のピーク波長が950nmであるGaAs赤外発光ダイオードを用いており、受光素子42,43としてはピーク受光感度が800nmであるSiフォトトランジスタなどを用いているが、ピーク波長およびピーク受光感度がこれと異なるものでも構わない。また、黒トナー付着量検知センサ30及びカラートナー付着量検知センサ40と、検知対象物である中間転写ベルト6のベルト表面との間の幅Hは5mm程度の距離(検出距離)を設けて配設されている。本実施形態では、トナー付着量検知センサを中間転写ベルト近傍に設け、中間転写ベルト6上のトナー付着量に基づいて作像条件を決定するが、像担持体11上や転写搬送ベルト18上に配設されていても構わない。
【0033】
つぎに本実施形態の特徴である補正制御について説明する。電子写真方式によって形成される画像の各特性は周囲環境や経時変化によって変化してしまうため、各特性を補正する制御が行われている。本実施形態における画像形成装置では、電源投入時、またはある所定枚数通紙後に各色の目標付着量を保証するためにプロセスコントロール(以下、プロコンと略す)が実施される。このプロコンでは、帯電バイアス、現像バイアスを適当なタイミングで順次切り替えることにより各色階調パターン(以下、Pパターンと略す)を中間転写ベルト上に形成し、これらPパターンの付着量をトナー付着量検知センサによって検知し、センサ出力電圧を付着量に変換する。そして付着量の検知結果に基づき、目標付着量が得られるように現像バイアス値及びトナー濃度制御目標値の変更をする制御を行っている。このような制御によって目標トナー付着量が保証された状態の装置を前提として、つぎに階調特性を補正する制御について説明する。
【0034】
階調補正制御は、プロコン終了後に実行される。図6は本実施形態における階調補正のフローチャートであり、図7は本実施形態の階調補正制御の概略図である。本実施形態の画像形成装置はコピー部とプリンタ部にそれぞれγ補正部を持っている。図7に示すように、面積階調パターン列の検知結果に基づいて生成されたγ補正信号は、コピー、プリンタのγ補正部を修正する。このような形態とすることで、コピー、プリンタどちらの入力に対しても階調安定性を保つことが可能となる。
【0035】
まず、図6中の”パターン種を選択”では、不揮発メモリ内の情報から補正を行うパターン種から1種類を選択する。図8はパターン種選択動作の概略図を示したもので、図のようにパターン種選択部は階調補正指令を受取り、不揮発メモリにアクセスして、パターン種毎の情報に基づいて補正を行うパターン種を決定する。
【0036】
この不揮発メモリ内には、図9に示すように通算画像面積率や使用回数、前回の補正制御からの通算枚数などの情報が、パターン種毎に格納されている。本実施例では前回補正制御終了後からのプリントジョブにおいて、使用した画像面積率が最も多かったパターン種を不揮発メモリから参照し、補正対象とする1種類のパターン種を決定しているが、通算プリントジョブにおいて最も使用回数が多かったパターン種でも構わない。
【0037】
つぎに選択したパターン種を用いて、各色10階調の面積階調パターン列を中間転写ベルト上に形成する。本実施形態における画像形成装置では、黒トナー付着量検知センサ及びカラートナー付着量検知センサが主走査方向に並んで1個ずつ配設されているため、図10に示すようなレイアウトで面積階調パターン列を形成している。なお、本実施形態では面積階調パターン列の階調数を各色10階調としているが、装置によって補正精度が異なるため、求める補正精度に応じて階調数を10階調から増減しても構わない。
【0038】
つぎに、各トナー付着量検知センサによって、形成した面積階調パターン列におけるパターンの各パッチからの正反射光、拡散反射光を検知し、検知した各パッチの出力電圧を付着量に変換し、現在の階調特性を算出する。この階調特性に基づいて、目標トナー付着量が得られるγ補正信号を生成し、γ補正信号をコピー、プリンタのγ補正部にフィードバックし、階調を補正する。そして補正結果を不揮発メモリに格納して階調補正を終了させる。
【0039】
図11は補正前後の階調特性のイメージであり、(A)が補正前、(B)が補正後の階調特性を示している。図11(A)の実線で示すように、温湿度などの使用環境や各画像形成部の経年変化によって、装置の階調特性が点線で示す目標特性からずれた場合を考える。この場合、目標特性に対して中間調ではトナー付着量が多く、さらに高階調ではトナー付着量が飽和し、階調が表現できない。このように目標からずれた階調特性を、図11(B)に示すように目標特性と一致するように補正を行っている。
【0040】
なお、本実施形態では、面積階調パターン列のトナー付着量を測定する場所を中間転写ベルト上としているが、測定場所は各像担持体上や転写搬送ベルトに転写してその上で測定しても構わない。
【0041】
また、以上の諸条件はあくまでも本実施形態における例であり、それらの条件は使用する画像形成装置の階調安定性に対して適宜調整される。さらに、補正制御が入る条件は、電源投入時に限らず、所定プリント数、トナー交換、ドラム交換、環境センサからの条件で行ってもよいし、その各条件においてパターン種の選択手段を変更しても構わない。
【0042】
また、本実施形態における階調補正制御はプロコン実施後、即ち、目標トナー付着量が保証された状態の画像形成装置に対して実施しているが、補正制御だけを実施する形態でも構わない。
【0043】
本発明における補正制御は階調補正を行うパターン種が1種類であるため、補正制御に要する時間は従来の補正制御と比較しても短くなることは確実である。また、多く使用されているパターン種に対して階調補正を行うため、大半の印刷物の階調特性を保証することが可能となる。
【0044】
ユーザーが階調補正に要する時間に対して不満を抱くことなく、階調安定性を実感できるようなパターン種の選択手段は他にいくつか考えられる。
例えば、画像形成装置に搭載されている複数種のパターン種を、補正制御毎に予め決められた順番で選択して補正制御を行う形態でも良い。
【0045】
図12は画像形成装置におけるパターン選択方法のイメージである。ここでは、パターン種A〜Fの6種類のパターン種を搭載している画像形成装置を例にとって説明する。この画像形成装置は、予めパターン種A〜Fの中で、補正を行うパターン種の選択順序を決めておくようにしている。図示する例ではパターン種B→C→E→D→F→Aという順番で補正制御を行うものとする。このパターン種の補正順序は、使用頻度によって決めても良いし、写真用が先にくるように決めても良いし、特に意図が無くても構わない。今回はパターン種B, C, Dが写真用のパターン種として図12に示すような順序で補正制御を行うこととしている。まず、一番初めに補正制御が行われる場合、パターン種Bを選択して面積階調パターン列を形成し、図6に示した流れに沿ってパターン種Bに対する階調特性を補正する。そして次の補正制御時には、パターン種Cを選択して面積階調パターン列を形成し、パターン種Cの階調特性を補正する。同様に3回目の補正制御時にはパターン種Eを、4回目にはパターン種Dを、といった様に、決められた順番で補正を行うパターン種を選択し、階調補正を実施する。7回目の補正制御時には、初めに戻り、パターン種Bの階調特性の補正を行う。
【0046】
このような実施形態とすることで、画像形成装置に搭載されているパターン種全て(本例では6種類)に対して偏ることなく補正制御を実施することができる。しかも、パターン種に対して満遍なく階調補正を行うことができるため、通常よく使用するパターン種以外で形成される印刷物を印刷した場合でも、階調特性を保証することができる。
【0047】
また、本実施例は複数のパターン種に対して1度ずつ選択しているが、図13に示すパターン種の選択順序のように、同一のパターン種を複数回選択するようにしても構わない。頻繁に使用され、階調特性が変化し易いパターン種は補正頻度を高く、また、階調特性が変化し難いパターン種に対しては補正頻度を下げることでユーザーの要求に応じた階調補正を行うことが可能となる。
【0048】
また、本実施例では補正制御を実施する間隔を一定にしなくても良い。これは、所定枚数で補正制御が行われるような場合、図14に示すパターン種の選択順序のように、パターン種によって補正制御を実施するタイミングを異ならせても構わない。この場合、頻繁に階調補正動作が入ることになるが、補正を実施するために形成する面積階調パターン列のパターンは1種類であるので、補正制御は短時間で済む。補正制御が入る条件は枚数でなく、時間でも構わない。
【0049】
さらに他のパターン種選択手段としては、初期設定で設定されているパターン種に固定しても良い。ユーザーが画像を出力する場合、印刷動作毎に印刷設定を調整して出力することは少なく、印刷物の大半が初期設定のまま出力される。階調補正を行うパターン種を初期設定で設定されているパターン種とすることで、そのような印刷物に対しても階調安定性を保つことができる。
【0050】
また、これまでのプリントジョブでほとんど用いていなかったパターン種を使って大量印刷を行う場合では、補正制御実施時に対象となるパターン種が直前で選択されていない限り階調特性が補正されていない。そのため、補正制御を行うパターン種をユーザーが指定できるような形態であることが好ましい。選択するパターン種をユーザーが任意に設定できるようにすることで、所望のパターン種に対して補正制御を行うことが可能となり、補正制御の自由度を向上させることができる。また、ユーザーが補正制御を実施するパターン種の順番を自由に決められるような形態でも構わない。
【0051】
階調性が重視されるのは、主に写真などの印刷物である。最も使用頻度が高いパターン種を選択した結果が文字列に使用するパターン種だった場合、写真用のパターン種の階調特性を補正することができない。そこで、図15に示すように、使用頻度に基づいて選択するパターン種を、写真用のパターン種から選択することによって、色味などが重要視される写真などの印刷物に対して階調特性を補正することができる。
【符号の説明】
【0052】
6 中間転写ベルト
30 黒トナー付着量検知センサ
40 カラートナー付着量検知センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開2003−207868号公報
【特許文献2】特開2004−088257号公報
【特許文献3】特開2004−064358号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に面積階調法によって段階的に階調値の異なるパターンから成る面積階調パターン列を形成するパターン形成手段と、該パターン形成手段によって形成された面積階調パターン列における各パターンのトナー付着量を測定するためのトナー付着量検知手段とを有し、該トナー付着量検知手段の検知結果に基づいて階調補正を行う画像形成装置において、
前記面積階調パターン列を形成して行う階調補正の制御を実行する際、前記像担持体上に形成するパターン種を複数種から1種類を選択するパターン種選択手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記パターン種選択手段が選択するパターン種は前回の補正制御実施以降、最も使用頻度の高いパターン種であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記パターン種選択手段が選択するパターン種は予め決められた順番のパターン種であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記パターン種選択手段が選択するパターン種は初期設定で設定されているパターン種であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記パターン種選択手段が選択するパターン種がユーザーによって任意に設定できることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項2に記載の画像形成装置において、前記最も使用頻度の高いパターン種は写真用のパターン種の中で最も使用頻度の高いパターン種を選択することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−81023(P2011−81023A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229468(P2009−229468)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】