説明

画像形成装置

【課題】シート排出装置からの排出時におけるシートのカールを抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像が形成されたシートを排出するシート排出装置5を備え、シート排出装置5は、シートの基準横方向R(搬送方向及び上下方向Zに直交する方向)の中央部を載置させてシートを搬送する搬送ベルト15と、搬送ベルト15にシートを吸着させる吸着部と、シートの基準横方向Rの両側部を中央部に比べて斜め上向きに持ち上げるガイド面20aを有し、搬送ベルト15の基準横方向Rの両側それぞれに一対設けられるガイド部20と、ガイド部20を駆動させ、基準横方向Rに対するガイド面20aの傾斜角度を変更するガイド部駆動部35〜37と、シートの印字率に基づいて傾斜角度を設定する傾斜角度設定部と、傾斜角度が傾斜角度設定部により設定された傾斜角度となるようにガイド部駆動部35〜37の駆動を制御するガイド部駆動制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、コピー機などの画像形成装置に関し、詳しくは、画像形成部により画像が形成されたシートを所定の排出先へ排出するシート排出装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置においては、図7に示すように、インクジェットヘッドによって印刷された用紙Pは、画像形成面(印刷面)の繊維が伸びることによって、画像形成面側が凸状に撓(たわ)む傾向がある。図7は、画像形成後の用紙Pを示す模式図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。一般的に、用紙Pは、その目の方向Mと直交する方向におけるコシ(剛性)が弱いため、印刷された用紙Pは、図7(b)に示すように、上に凸に撓んだ状態に変形する。
【0003】
インクジェット記録装置として、インクジェットヘッドの下流側に、印刷された用紙を排出するシート排出装置を備え、シート排出装置に設けられた搬送ベルトによって、印刷された用紙を搬送し、所定の排出先へ排出するように構成されたものが知られている。このようなインクジェット記録装置においては、シート排出装置から排出された用紙Pは、図7に示すように、上に凸に撓んだ状態で排出されるので、そのままだと丸まってしまう。特に、用紙Pの目の方向Mが用紙の搬送方向と直交した状態で、用紙が排出される場合には、シート排出装置から排出された用紙は、搬送ベルトから外れると同時に丸まってしまう。
【0004】
下記特許文献1には、前記問題を解決するための画像形成装置が記載されている。特許文献1に記載の画像形成装置は、記録ヘッドによる画像形成が終了した用紙の両端を上下からローラなどで拘束した状態で、カールが発生しにくくなるまで用紙を待機させた後、排紙動作を行う機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−82546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の画像形成装置においても、用紙のカールを防止することは困難であり、シート排出装置から用紙をスムーズに排出できないという問題点がある。この問題点は、インクジェット記録装置以外の画像形成装置においても同様に発生し、また、用紙以外のシートにおいても同様に発生する。
【0007】
従って、本発明は、画像形成部により画像が形成されたシートを所定の排出先へ排出するシート排出装置を備える画像形成装置において、シート排出装置からの排出時におけるシートのカールを一層抑制でき、シートを一層スムーズに排出することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部により画像が形成されたシートを所定の排出先へ排出するシート排出装置と、を備え、シートの搬送方向及び上下方向に直交する方向を基準横方向という場合に、前記シート排出装置は、シートにおける前記基準横方向の中央部を載置させてシートを所定方向に搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトにシートを保持して吸着させる吸着部と、シートにおける前記基準横方向の両側部をシートの前記中央部に比べて下方から斜め上向きに持ち上げるガイド面を有し、前記搬送ベルトにおける前記基準横方向の両側それぞれに一対設けられるガイド部と、前記ガイド部を駆動させ、前記搬送方向に視た場合における前記基準横方向に対する前記ガイド面の傾斜角度を変更するガイド部駆動部と、シートの印字率に基づいて前記傾斜角度を設定する傾斜角度設定部と、前記傾斜角度が前記傾斜角度設定部により設定された傾斜角度となるように前記ガイド部駆動部の駆動を制御するガイド部駆動制御部と、を備える画像形成装置に関する。
【0009】
また、前記傾斜角度設定部は、前記印字率及びシートの坪量に基づいて前記ガイド面の傾斜角度を設定することが好ましい。
【0010】
また、前記傾斜角度設定部は、シートの坪量が80g/m以上の場合には、前記傾斜角度を4から6度に設定し、シートの坪量が80g/m未満の場合には、前記印字率が5%未満のときには、前記傾斜角度を8から12度に設定し、前記印字率が5%以上20%未満のときには、前記傾斜角度を17から23度に設定し、前記印字率が20%以上のときには、前記傾斜角度を26から34度に設定することが好ましい。
【0011】
また、一対の前記ガイド部それぞれの前記ガイド面における傾斜が始まる境界部同士の間隔は、平面視でシートの搬送方向の上流側よりも下流側の方が次第に狭くなっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画像形成部により画像が形成されたシートを所定の排出先へ排出するシート排出装置を備える画像形成装置において、シート排出装置からの排出時におけるシートのカールを一層抑制でき、シートを一層スムーズに排出することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態のインクジェット記録装置1の構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態におけるシート排出装置5の第1の斜視図である。
【図3】本実施形態におけるシート排出装置5の第2の斜視図である。
【図4】本実施形態におけるガイド部20の搬送方向Q側の端面を説明する図である。
【図5】本実施形態のインクジェット記録装置の機能を示す機能ブロック図である。
【図6】本実施形態のインクジェット記録装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】画像形成後の用紙Pを示す模式図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の画像形成装置の実施形態としてのインクジェット記録装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態のインクジェット記録装置1の構成を示す模式図である。
【0015】
本実施形態のインクジェット記録装置1は、カラープリンタであり、第1搬送ベルト2と、第1駆動ローラ41と、第1従動ローラ42と、第1テンションローラ43と、画像形成部7と、吸着ユニット4と、シート排出装置5と、スタッカ(貯紙装置)6と、を備える。
【0016】
第1搬送ベルト2は、第1駆動ローラ41、第1従動ローラ42、第1テンションローラ43に掛けられている。第1駆動ローラ41が回転駆動することにより、第1搬送ベルト2は、図1に示す矢印Tの方向(用紙Pの搬送方向でもある)に回転移動する。第1搬送ベルト2の回転移動に伴って、第1従動ローラ42及び第1テンションローラ43は、従動回転する。
【0017】
画像形成部7は、PC(パーソナルコンピュータ)等の外部機器から出力された画像情報に基づいて、用紙Pに画像を形成する部位であり、4個のインクジェットヘッド3を主体として構成されている。インクジェットヘッド3は、いわゆるラインタイプのインクジェットヘッドであり、第1搬送ベルト2の上方に配置されている。
【0018】
4個のインクジェットヘッド3は、BK(ブラック),C(シアン),M(マゼンダ),Y(イエロー)の順で下流に向けて並列して配置されている。インクジェットヘッド3は、用紙の幅(基準横方向Rの長さ)に対応する印刷可能領域を有する。基準横方向R(図2から図4参照)とは、用紙Pの搬送方向T及び上下方向Zに直交する方向をいう。
【0019】
吸着ユニット4は、第1搬送ベルト2におけるインクジェットヘッド3と対向する領域の内面側(裏面側)に配置されている。吸着ユニット4は、吸引ポンプを備えた真空吸着装置からなり、第1搬送ベルト2の表面に載置される用紙Pを、エア吸引により位置ずれのないように、第1搬送ベルト2の表面側に保持する。第1搬送ベルト2の吸引圧は、後述する第2搬送ベルト15の吸引圧よりも強いことが好ましい。
【0020】
シート排出装置5は、第1搬送ベルト2の回転移動方向(用紙Pの搬送方向)Tの下流側に配置されている。シート排出装置5は、第1搬送ベルト2から搬送されてくる印刷済の用紙Pを、第1搬送ベルト2と同じ速度で同方向(搬送方向Q)に搬送し、その搬送方向Qの終端部から、外付けの外部装置であるスタッカ6に用紙Pを排出する装置である。
【0021】
次に、シート排出装置5について詳細に説明する。図2は、本実施形態におけるシート排出装置5の第1の斜視図である。図3は、本実施形態におけるシート排出装置5の第2の斜視図である。図4は、本実施形態におけるガイド部20の搬送方向Q側の端面を説明する図である。
【0022】
図1から図3に示すように、シート排出装置5は、画像形成部7により画像が形成された用紙Pを排出先であるスタッカ6へ排出する装置である。
シート排出装置5は、排出ガイド10と、搬送ベルトとしての第2搬送ベルト15と、吸着部としての吸着装置18と、ガイド部20と、支持部材21と、アーム35と、を備える。
【0023】
排出ガイド10は、第1搬送ベルト2から搬送されてくる用紙Pを第2搬送ベルト15に案内するガイド部材である。排出ガイド10は、上流側から下流側に向けて若干下方向に傾斜した傾斜面を有する。
【0024】
第2搬送ベルト15は、搬送される用紙Pの基準横方向Rの中央部に位置するように配置されている。第2搬送ベルト15は、前後方向に一対の第2従動ローラ16及び第2駆動ローラ17に掛けられている。第2駆動ローラ17の軸17aが、駆動部としてのモータ19により回転されることにより、第2搬送ベルト15は、用紙Pにおける基準横方向Rの中央部を第2搬送ベルト15の表面に載置させた状態で、用紙Pを第1搬送ベルト2と同じ速度で図1に示す搬送方向Qに搬送させる。
【0025】
第2搬送ベルト15の短手方向(搬送される用紙Pの基準横方向R)の幅D1は、例えば、70から100mmである。
【0026】
吸着装置18は、第2搬送ベルト15の下方に、第2搬送ベルト15に当接又は近接するように配置されている。第2搬送ベルト15には、吸引用の孔部が多数設けられている。吸着装置18は、吸引用の孔部を介して用紙Pをエアポンプにより吸引して、用紙Pを保持して吸着させる真空吸着装置からなる。
【0027】
なお、吸着装置18は、例えば、帯電ローラから構成されていてもよい。吸着装置18が帯電ローラから構成される場合には、吸着装置18は、直流電源と接続され、数kV、例えば2kVの帯電電圧が印加されることにより、第2搬送ベルト15を帯電させる。この帯電により、用紙Pは、静電気力によって第2搬送ベルト15の表面に吸着保持される。
【0028】
エア吸引方式の場合には、第2搬送ベルト15の材料としては、クロロプレンゴム等のゴムベルトを使用することが望ましい。また、帯電による静電吸着方式の場合には、第2搬送ベルト15の材料としては、ポリウレタン等の樹脂ベルトを使用することが望ましい。
【0029】
支持部材21は、第2搬送ベルト15の短手方向(搬送される用紙Pの基準横方向R)の両側それぞれに、第2搬送ベルト15の側縁部に近接して一対配置されている。支持部材21は、板状部材から構成されている。支持部材21は、第2搬送ベルト15の表面(用紙Pの搬送面)と概略同一高さの平面を有している。第2搬送ベルト15により搬送されてきた用紙Pは、支持部材21の表面上を滑り、下流側へ移動する。
【0030】
ガイド部20,20は、第2搬送ベルト15の短手方向(搬送される用紙Pの基準横方向R)の両側それぞれに、第2搬送ベルト15の側縁部から離間して一対配置されている。一対のガイド部20、20は、平面視で概略三角形状である。
ガイド部20は、支持部材21に蝶番状の可動軸部22により上下方向Zに回動可能となるように連結されている。
【0031】
ガイド部20は、ガイド面20aを有する。ガイド面20aは、用紙Pにおける基準横方向Rの両側部を用紙Pにおける基準横方向Rの中央部に比べて、下方から斜め上向きに持ち上げる面である。
図3に示すように、ガイド部20は、第2搬送ベルト15に臨む内側の境界部Lが平面視で第2搬送ベルト15の両側縁部に対して角度αで交差する関係を有する。つまり、一対のガイド部20,20それぞれのガイド面20a,20aにおける傾斜が始まる境界部L,L同士の間隔は、平面視で用紙Pの搬送方向Qの上流側よりも下流側の方が次第に狭くなっている。
角度αは、例えば、5から45度である。
【0032】
図4に示すように、ガイド部20は、第2搬送ベルト15の移動方向(用紙Pの搬送方向)Qに直交する方向(基準横方向R及び上下方向Zを含む平面方向)で切断した場合に、境界部Lを境にして、第2搬送ベルト15の表面に対して傾斜角度βの傾斜をもって、基準横方向Rの外側に立ち上がっている。
【0033】
図4に示すように、ガイド部20における搬送方向Q側の端面において、ガイド部20の投影長さ(基準横方向Rに沿う長さ)Kは、例えば、90から110mmである。
また、一対のガイド部20の境界部L,L同士の間隔D2(>第2搬送ベルト15の幅D1)は、例えば、100から140mmである。
【0034】
ガイド面20aの傾斜角度βは、ガイド部20を搬送方向Qに視た場合における基準横方向Rに対する傾斜角度である。即ち、一対のガイド部20,20それぞれのガイド面20a,20aは、第2搬送ベルト15から基準横方向Rに遠ざかるに従って、第2搬送ベルト15(及び支持部材21)の表面を基準とした高さが、次第に高くなるように傾斜している。
この傾斜角度βは、搬送されてくる用紙Pの幅(基準横方向Rの長さ)に応じて又は用紙Pにコシを入れる程度に応じて、設定(調整)することができる。
【0035】
詳述すると、図2に示すように、アーム35は、ガイド部20の下側に上下方向Zに延びるように配置されている。アーム35の先端部は、ガイド部20の下面に当接してガイド部20を支持している。アーム35の基部は、モータ36によって回転されるシャフト37に取り付けられており、このモータ36の回転に応じて正方向又は逆方向に回動する。アーム35が回動すると、アーム35の先端部35aの上下方向Zの位置が変化するため、アーム35の先端部35aによって支持されているガイド部20は、可動軸部22を中心に上下方向Zに回動する。これによって、ガイド部20の傾斜角度βを設定(調節)することができる。
【0036】
アーム35、モータ36、シャフト37等は、ガイド部20を駆動させ、搬送方向Qに視た場合における基準横方向Rに対するガイド面20aの傾斜角度βを変更するガイド部駆動部120(図5参照)を構成する。
【0037】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置1におけるシート排出装置5の機能に係る構成について説明する。図5は、本実施形態のインクジェット記録装置の機能を示す機能ブロック図である。
図5に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置1は、記録装置制御部100と、ガイド部制御部110と、ガイド部駆動部120と、ガイド部20と、を備える。ガイド部制御部110は、印字率算出部111と、用紙判定部112と、傾斜角度設定部113と、ガイド部駆動制御部114と、を備える。
【0038】
記録装置制御部100は、インクジェット記録装置1の全体(ガイド部20を除く)を制御する。例えば、記録装置制御部100は、PC等の外部機器から出力された画像情報に基づいて、画像形成部7を制御し、用紙Pに画像を形成する。また、記録装置制御部100は、PC等の外部機器から出力された画像情報に基づいて、ガイド部制御部110の印字率算出部111に用紙Pの印字率に関するデータを出力すると共に、ガイド部制御部110の用紙判定部112に用紙Pの坪量(用紙Pのサイズ、質量)、用紙Pの搬送方向などに関するデータを出力する。
坪量は、単位面積(1平方メートル)あたりの質量であるので、用紙Pのサイズ及び質量に基づいて算出することができる。
【0039】
印字率算出部111は、記録装置制御部100から入力されるデータに基づいて用紙Pの印字率を算出する。例えば、印字率算出部111は、用紙Pに印字(印刷)される画像の面積を用紙Pの全領域の面積で除算することで、用紙Pの印字率を算出する。
また、印字率算出部111は、用紙Pを搬送方向Qに交差する方向に区画して形成した複数の領域のうちの一の領域における印字率を算出してもよい。
【0040】
用紙判定部112は、記録装置制御部100から入力されるデータに基づいて用紙Pの坪量(用紙Pのサイズ、質量)、用紙Pの搬送方向などを判定する。例えば、用紙判定部112は、用紙PのサイズがA4であるかA3であるかについて、用紙Pの質量が何gであるかについて、用紙Pの搬送方向Qが縦流れ(用紙Pの長手方向に用紙Pが搬送される)であるか横流れ(用紙Pの短手方向に用紙Pが搬送される)であるか等について、判定する。
用紙判定部112によれば、用紙Pのサイズ及び質量に基づいて坪量を算出することができる。
【0041】
用紙Pの質量は、用紙Pのサイズごとにデータベース化し、データベースから用紙Pに対応する質量のデータを取得できるようにされていてもよく、あるいは、用紙Pの搬送経路に質量センサを設け、この質量センサにより用紙Pの質量データを取得できるようにされていてもよい。
【0042】
傾斜角度設定部113は、印字率算出部111により算出された用紙Pの印字率及び用紙判定部112により判定された用紙Pの坪量及び搬送方向Qに基づいて、傾斜角度βを設定する。
例えば、傾斜角度設定部113は、以下のように傾斜角度βを設定する。
【0043】
用紙PのサイズがA4であり且つ第2搬送ベルト15により用紙Pが用紙Pの短手方向に搬送される場合(横流れ)において、傾斜角度設定部113は、
用紙Pの坪量が80g/m以上の場合には、傾斜角度βを4から6度に設定し、
用紙Pの坪量が80g/m未満の場合には、
印字率が5%未満のときには、傾斜角度βを8から12度に設定し、
印字率が5%以上20%未満のときには、傾斜角度βを17から23度に設定し、
印字率が20%以上のときには、傾斜角度βを26から34度に設定する。
【0044】
また、用紙PのサイズがA3であり且つ第2搬送ベルト15により用紙Pが用紙Pの長手方向に搬送される場合(縦流れ)において、傾斜角度設定部113は、前述のA4・横流れの場合と同様に、傾斜角度βを設定する。
【0045】
前述のように傾斜角度βを設定する理由は、例えば、以下の通りである。
坪量が大きい(質量が大きい)用紙Pは、元々十分なコシ(剛性)を有しているため、印字率の大小に拘わらず、画像形成後(インクの付着後)のカールが発生にくい。そのため、傾斜角度βを4から6度に設定すれば、カールの発生を抑制することができる。また、傾斜角度βをこれ以上大きく設定してもカールの発生の抑制効果は特に向上しない。また、傾斜角度βをこれ以上大きく設定すると、下向きに凸のカール(逆反りカール)が発生するという悪影響が生じる。
従って、用紙Pの坪量が80g/m以上の場合には、傾斜角度βを4から6度に設定した。
【0046】
坪量が小さい(質量が小さい)用紙Pは、十分なコシ(剛性)を有していないため、画像形成後(インクの付着後)のカールが発生しやすく、これを防止するために傾斜角度βを大きく設定する必要がある。また、印字率の大小(インクの付着の程度の大小)によって、カールの発生しやすさの程度が異なる。そこで、用紙Pの坪量が小さい(質量が小さい)場合には、印字率の大小によって、傾斜角度βの大きさを変えている。詳細には、印字率が小さく、カールが発生しにくい場合には、傾斜角度βを小さく設定し、一方、印字率が大きく、カールが発生しやすい場合には、傾斜角度βを大きく設定する。
【0047】
具体的には、用紙Pの坪量が80g/m未満の場合には、傾斜角度βを以下のように設定した。
印字率が5%未満のときには、傾斜角度βを8から12度に設定し、
印字率が5%以上20%未満のときには、傾斜角度βを17から23度に設定し、
印字率が20%以上のときには、傾斜角度βを26から34度に設定した。
【0048】
傾斜角度βを前述の範囲以上に大きく設定してもカールの発生の抑制効果は特に向上しない。また、傾斜角度βを前述の範囲以上に大きく設定すると、下向きに凸のカール(逆反りカール)が発生するという悪影響が生じる。
従って、用紙Pの坪量が80g/m未満の場合には、傾斜角度βを印字率の大きさに応じて、前述の範囲に設定した。
【0049】
ガイド部駆動制御部114は、ガイド面20aの傾斜角度βが、傾斜角度設定部113により設定された傾斜角度となるようにガイド部駆動部120の駆動を制御する。
【0050】
ガイド部駆動部120は、前述の通り、アーム35、モータ36、シャフト37等から構成されている。ガイド部駆動部120は、ガイド部20を駆動させ、搬送方向Qに視た場合における基準横方向Rに対するガイド面20aの傾斜角度βを変更する。
詳述すると、モータ36によってシャフト37が回転することにより、アーム35は回動する。アーム35が回動すると、アーム35の先端部35aの上下方向Zの位置が変化するため、アーム35の先端部35aによって支持されているガイド部20は、可動軸部22を中心に上下方向Zに回動する。これによって、ガイド部20の傾斜角度βを変更することができる。
【0051】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置1の動作について説明する。
インクジェット記録装置1においては、不図示の用紙供給装置によって、搬送方向Tに沿って第1搬送ベルト2の表面に用紙Pが供給される。用紙Pは、吸着ユニット4の吸引作用により、第1搬送ベルト2の表面に吸着した状態で保持され、第1搬送ベルト2の回転移動により所定速度で下流側に搬送される。この搬送の間に、用紙Pに複数のインクジェットヘッド3からそれぞれの色のインクが画像データに応じて吐出され、印刷が行われる(画像が形成される)。
【0052】
インクジェットヘッド3により各色の印刷が行われた用紙Pは、第1搬送ベルト2からシート排出装置50の第2搬送ベルト15の表面に搬送される。第2搬送ベルト15は、図1に示す搬送方向Qに第1搬送ベルト2と同じ速度で移動している。そのため、用紙Pは、第1搬送ベルト2の表面から第2搬送ベルト15の表面へスムーズに移行し、搬送方向Qに搬送される。
【0053】
一方、第2搬送ベルト15の幅D1は、搬送されてくる用紙Pの幅よりも狭く、また、第2搬送ベルト15の搬送方向Qの左右両側には、それぞれガイド部20、20が設けられている。そのため、用紙Pにおける第2搬送ベルト15から基準横方向Rにはみ出した部分は、搬送が進行するに従って、一対のガイド部20,20それぞれのガイド面20a,20aの上に乗り上げる。
【0054】
また、用紙Pの中央部は、第2搬送ベルト15の下方に配置された吸着装置18によって吸着保持されているので、第2搬送ベルト15によって搬送される用紙Pは、図4に示すように、第2搬送ベルト15の下流側の端部側から搬送方向Qに視た場合において、中央部が低く両側部が斜めに持ち上げられた下に凸の概略V形状となる。
【0055】
このように用紙Pの表面側(印刷面側)が、本来上に凸に撓もうとする方向と反対向きに撓まされた状態で搬送されるので、インクによる用紙Pの撓みが抑制された状態で搬送及び乾燥が進行する。また、用紙Pは、その両側部が上向きに撓まされることにより、平面状ではなくなるので、搬送方向Qに対しても、撓みにくくなる。このように、印刷直後の用紙Pにおいては、その搬送過程において、下に凸に撓んだ状態でインクの乾燥が進行するので、乾燥後の用紙Pに撓みが生じにくい。
【0056】
そして、用紙Pが第2搬送ベルト15の上を搬送されて行くと、用紙Pの先端部は、徐々に第2搬送ベルト15から外れ、最終的には第2搬送ベルト15から外れる。しかし、このとき、用紙Pは、下に凸に撓んだ状態で第2搬送ベルト15から外れるので、第2搬送ベルト15から用紙Pの剥離はスムーズに行われる。
【0057】
さらに、用紙Pが下に凸に撓んだ状態で第2搬送ベルト15から外れるので、用紙Pにコシ(剛性)が与えられた状態となり、用紙Pの先端部が垂れ下がることなく、ほぼ水平に第2搬送ベルト15から外れる。
また、第2搬送ベルト15における搬送速度を維持したまま、用紙Pは、第2搬送ベルト15から外れるので、スタッカ6に向けて水平に放出され、スタッカ6における不図示のストッパーに当たって、ほぼ垂直に落下して、スタックされる。
【0058】
このように、本実施形態のインクジェット記録装置のシート排出装置5によれば、第1搬送ベルト2と同等の搬送速度で用紙Pを排出でき、また、乾燥後の用紙Pに撓みが生じにくく、しかも印刷後の用紙Pに一時的にコシを与えて排出できる。従って、インクジェット記録装置1の高速印刷に対応でき、且つ、用紙Pのスタック性を向上させることができる。
【0059】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置1におけるシート排出装置5の動作について、図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態のインクジェット記録装置の動作を示すフローチャートである。
【0060】
ステップST1において、記録装置制御部100により、インクジェット記録装置1による印刷(画像の形成)が開始される。ここでは、ガイド部20のガイド面20aの傾斜角度βは、0度(傾斜していない)又は所定の初期角度に設定されている。
【0061】
ステップST2において、印字率算出部111は、記録装置制御部100から入力されるデータに基づいて用紙Pの印字率を算出する。
【0062】
ステップST3において、用紙判定部112は、記録装置制御部100から入力されるデータに基づいて用紙Pの坪量(用紙Pのサイズ、質量)、用紙Pの搬送方向などを判定する。
【0063】
ステップST4において、傾斜角度設定部113は、印字率算出部111により算出された用紙Pの印字率及び用紙判定部112により判定された用紙Pの坪量及び搬送方向Qに基づいて、傾斜角度βを設定する。傾斜角度設定部113は、例えば、前述の通りに、傾斜角度βを設定する。
【0064】
ステップST5において、ガイド部駆動制御部114は、ガイド面20aの傾斜角度βが、傾斜角度設定部113により設定された傾斜角度となるようにガイド部駆動部120の駆動を制御する。
【0065】
ステップST6において、ガイド部駆動部120は、ガイド部20を駆動させ、搬送方向Qに視た場合における基準横方向Rに対するガイド面20aの傾斜角度βを変更する。
【0066】
ステップST7において、ガイド面20aの傾斜角度βは、傾斜角度設定部113により設定された所定の傾斜角度となる。
【0067】
本実施形態のインクジェット記録装置1によれば、例えば、以下に示す効果が奏される。
本実施形態のインクジェット記録装置1においては、シート排出装置5は、用紙Pを搬送する第2搬送ベルト15と、第2搬送ベルト15に用紙Pを保持して吸着させる吸着装置18と、用紙Pにおける基準横方向Rの両側部を用紙Pの中央部に比べて下方から斜め上向きに持ち上げるガイド面20aを有し、第2搬送ベルト15における基準横方向Rの両側それぞれに一対設けられるガイド部20と、ガイド部20を駆動させ、搬送方向Qに視た場合における基準横方向Rに対するガイド面20aの傾斜角度βを変更するガイド部駆動部120と、用紙Pの印字率に基づいて傾斜角度βを設定する傾斜角度設定部113と、傾斜角度βが傾斜角度設定部113により設定された傾斜角度となるようにガイド部駆動部120の駆動を制御するガイド部駆動制御部114と、を備える。
【0068】
用紙Pの印字率によって画像形成後(インクの付着後)のカールの発生しやすさは異なるが、本実施形態によれば、用紙Pの印字率に基づいてガイド部20のガイド面20aの傾斜角度βを変更することでき、用紙Pの印字率に応じて傾斜角度βを適切に設定することができる。従って、シート排出装置5からの排出時における用紙Pのカールを一層抑制でき、用紙Pを一層スムーズに排出することができる。
【0069】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1においては、傾斜角度設定部113は、用紙Pの印字率及び用紙Pの坪量に基づいてガイド面20aの傾斜角度βを設定する。
用紙Pの坪量によって画像形成後(インクの付着後)のカールの発生しやすさは異なるが、本実施形態によれば、用紙Pの坪量に基づいてガイド部20のガイド面20aの傾斜角度βを変更することでき、用紙Pの坪量に応じて傾斜角度βを適切に設定することができる。従って、シート排出装置5からの排出時における用紙Pのカールを一層抑制でき、用紙Pを一層スムーズに排出することができる。
【0070】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1においては、一対のガイド部20,20それぞれのガイド面20a,20aにおける傾斜が始まる境界部L,L同士の間隔は、平面視で用紙Pの搬送方向Qの上流側よりも下流側の方が次第に狭くなっている。そのため、ガイド部20,20に乗り上げた用紙Pの両側部は、搬送方向Qの下流側に行くに従って、傾斜している部分の幅が長くなり且つ変形量が大きくなりながら搬送されることになる。従って、シート排出装置5からの排出時における用紙Pのカールを一層抑制でき、用紙Pを一層スムーズに排出することができる。
【0071】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1においては、第2搬送ベルト15の上に排出された用紙Pが、インクの作用で上に凸に撓もうとするのを撓まないように抑制し、用紙Pを撓まない状態で保持して乾燥させることができる。そのため、スタッカ6における用紙Pの積み重ねを適正に行うことができる。また、用紙Pの撓みが少ないので、両面印刷や、印刷後の後処理工程での用紙Pの取り扱いを容易にすることができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、本発明の画像形成装置は、インクジェット記録装置に制限されず、電子写真方式の画像形成装置、その他の方式の画像形成装置にも適用することができる。本発明の画像形成装置は、プリンタに制限されず、コピー機、ファクシミリ又はこれらの複合機でもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、一対のガイド部20,20は、基準横方向Rの位置が固定されているが、これに制限されず、基準横方向Rの位置が可変に構成されていてもよい。つまり、ガイド部20のガイド面20aの傾斜角度βが可変であり、且つ、一対のガイド部20,20における基準横方向Rの位置も可変である構成としてもよい。
この場合には、用紙の両側部の持ち上げの角度(傾斜角度β)及び用紙の変形部分の長さ(投影長さK)を、用紙の幅、厚み、種類、坪量、印字率等に応じて一層きめ細かく制御することができ、カールの発生を一層確実に抑制することができる。
【0074】
また、シート搬送装置におけるシートが搬送される搬送先は、例えば、画像形成部、シート排出部、次のシート搬送装置、戻し搬送路、ステイブルやパンチ処理などを行う後処理装置、用紙を強制的に乾燥させるための乾燥装置などでもよい。
また、前記実施形態では、第2搬送ベルト15の速度が、第1搬送ベルト2の速度と同じである場合について説明したが、これに制限されず、例えば、第2搬送ベルト15の速度の方が、第1搬送ベルト2の速度よりも速くてもよい。
【0075】
また、前記実施形態では、ガイド部20により用紙にコシを付ける場合について説明したが、これに制限されず、用紙には必ずしもコシが付かなくてもよい。
シートは、用紙に制限されない。
【符号の説明】
【0076】
1……インクジェット記録装置(画像形成装置)、5……シート排出装置、6……スタッカ(排出先)、7……画像形成部、15……第2搬送ベルト(搬送ベルト)、18……吸着装置(吸着部)、20……ガイド部、20a……ガイド面、35……アーム(ガイド部駆動部)、36……モータ(ガイド部駆動部)、37……シャフト(ガイド部駆動部)、113……傾斜角度設定部、114……ガイド部駆動制御部、120……ガイド部駆動部、L……境界部、P……用紙(シート)、Q……搬送方向、R……基準横方向、Z……上下方向、β……傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像が形成されたシートを所定の排出先へ排出するシート排出装置と、を備え、
シートの搬送方向及び上下方向に直交する方向を基準横方向という場合に、前記シート排出装置は、
シートにおける前記基準横方向の中央部を載置させてシートを所定方向に搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトにシートを保持して吸着させる吸着部と、
シートにおける前記基準横方向の両側部をシートの前記中央部に比べて下方から斜め上向きに持ち上げるガイド面を有し、前記搬送ベルトにおける前記基準横方向の両側それぞれに一対設けられるガイド部と、
前記ガイド部を駆動させ、前記搬送方向に視た場合における前記基準横方向に対する前記ガイド面の傾斜角度を変更するガイド部駆動部と、
シートの印字率に基づいて前記傾斜角度を設定する傾斜角度設定部と、
前記傾斜角度が前記傾斜角度設定部により設定された傾斜角度となるように前記ガイド部駆動部の駆動を制御するガイド部駆動制御部と、を備える
画像形成装置。
【請求項2】
前記傾斜角度設定部は、前記印字率及びシートの坪量に基づいて前記ガイド面の傾斜角度を設定する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記傾斜角度設定部は、
シートの坪量が80g/m以上の場合には、前記傾斜角度を4から6度に設定し、
シートの坪量が80g/m未満の場合には、
前記印字率が5%未満のときには、前記傾斜角度を8から12度に設定し、
前記印字率が5%以上20%未満のときには、前記傾斜角度を17から23度に設定し、
前記印字率が20%以上のときには、前記傾斜角度を26から34度に設定する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
一対の前記ガイド部それぞれの前記ガイド面における傾斜が始まる境界部同士の間隔は、平面視でシートの搬送方向の上流側よりも下流側の方が次第に狭くなっている
請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−93671(P2011−93671A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249950(P2009−249950)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】