説明

画像形成装置

【課題】簡易な構成で、感光体の露光感度ムラによる明部電位ムラを検知することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置100は、感光体11と、帯電手段17と、露光手段10と、帯電手段17に流れる直流電流を検知する電流検知手段44と、回転する感光体11上に、感光体1の回転軸線方向における位置を段階的にまたは連続的に変化させて帯電部Cに到達する、感光体11の回転軸線方向に所定の幅を有する計測用静電潜像を形成させ、計測用静電潜像が帯電部Cに到達することで電流検知手段44によって検知された直流電流の値から、感光体11の回転軸線方向における露光感度の分布に係る情報を計測する制御手段47と、を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用した画像形成装置では、電子写真感光体(以下、単に「感光体」という。)上に静電潜像(静電像)を形成し、この静電潜像をトナーによって現像した後、最終的に紙などの転写材に転写して定着させることで画像出力物を得る。
【0003】
一般に、感光体は、電荷発生層および電荷輸送層で構成された感光層を金属製のドラムまたは金属製のベルト上に形成して構成されている。感光体は、プリント開始の信号により一定方向に駆動される。
【0004】
感光体の表面は、帯電装置に一定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加されることにより、放電または電荷注入によって一定の電位に帯電させられる。このときの感光体の表面電位を暗部電位(VD電位)と呼ぶ。
【0005】
帯電した感光体の表面には、入力された画像データに基づいてオン/オフ制御されるレーザ光やLED光などが照射される。感光体上の光が照射された位置は電位の絶対値が低下するため、感光体の表面には静電潜像が形成される。この露光された部分の電位を明部電位(VL電位)と呼ぶ。
【0006】
そして、感光体に対向して配置された現像装置に一定の現像電圧(現像バイアス)が印加されることで、所定の電荷が付与されているトナーが、感光体上の静電潜像に転移させられる。これにより、静電潜像はトナー像として現像される。
【0007】
感光体上の露光部に感光体の帯電極性と同極性に帯電したトナーを付着させる反転現像方式の場合、現像時の感光体上のトナー載り量は、感光体を露光した際の電位であるVL電位と現像電圧の直流成分の電位との関係で決まる。
【0008】
ところで、画像形成動作時に、感光体の感光層は、レーザ光やLED光などによる露光メモリの影響を受ける。そのため、感光体の使用状態により露光後のVL電位が変化してしまう。
【0009】
特に、感光体の長手方向(表面の移動方向と略直交する方向)に偏った画像パターンを長期にわたり出力したり、小サイズの転写材に画像を連続出力したりした場合には、感光体の長手方向のVL電位ムラが発生し、同方向の画像濃度ムラが発生することがある。すなわち、露光メモリによる露光感度変動などによって感光体の長手方向における露光感度ムラが発生してVL電位ムラが発生し、これにより同方向における画像濃度ムラが発生することがある。
【0010】
近年では、デジタル技術の進歩に伴い、出力画像の高品質化が急速に進んでいる。なかでも、DTP(Desktop Publishing)の世界では出力物の色見安定性や面内均一性への要望は強く、各種キャリブレーション技術や、電子写真プロセスの安定化を実現させる様々な技術が開発されている。
【0011】
出力物の面内均一性については、感光体における諸特性の均一性が重要な課題となっており、特に、上述のような露光感度ムラによる感光体の面内のVL電位ムラを補正する技術が有効である。
【0012】
特許文献1および2には、感光体の露光部の電位特性に応じてレーザ点灯時間を補正することにより、感光体の軸方向のVL電位を均一にする技術が開示されている。
【0013】
また、特許文献3には、次のような方法が開示されている。すなわち、電位センサを感光体の軸方向に移動させて、感光体の軸方向に分解した各エリアの感光体の1回転における電位ムラのプロファイルデータを測定する。そして、感光体に像露光を照射する経路に、透過率を電圧レベルで調整可能な光透過部材を設けて、光量を調整して電位ムラの補正を行う。
【0014】
さらに、特許文献4には、次のような方法が開示されている。すなわち、電位計測手段を感光体の主走査方向に走査させながら感光体を回転させることで、螺旋状に感光体の1周分の感度ムラを測定する。そして、その測定結果を用いて、画像形成時に露光手段の露光量の補正を行う。
【0015】
これらの技術は、感光体の長手方向における露光部の電位特性(露光感度)に応じて、VL電位が一定になるように、感光体の長手方向における各位置で露光量の補正を行うものである。具体的には、図21に示すように、最も露光感度が低く、VL電位の絶対値が最も高くなる位置(すなわち、図21中のVLmaxとなる位置)にVL電位をあわせるべく、その位置以外の露光量を低下させる。これらの技術によれば、VL電位が同等になるため、画像信号と最終的に得られる画像濃度を、感光体の長手方向で一定になるように補正することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭63−49778号公報
【特許文献2】特開昭63−49779号公報
【特許文献3】特開平03−243967号公報
【特許文献4】特開2004−258482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述のような従来の技術には、次のような課題がある。
【0018】
特許文献1および2に記載されている技術においては、感光体の使用初期における電位特性に応じたレーザ点灯時間の補正データを予め記憶手段に記憶している。したがって、装置の使用初期においては良好な画像を得ることができるが、長期使用後の感光体の長手方向のVL電位ムラに対しては効果がない。
【0019】
また、特許文献3および4に記載されている技術においては、電位センサと、感光体の長手方向全域の電位を測定するため電位センサの移動機構とが必要になる。しかし、近年では、装置の更なる小型化やコストダウンが求められており、上記電位センサや移動機構を搭載すること自体が困難な場合がある。
【0020】
したがって、本発明の目的は、簡易な構成で、感光体の露光感度ムラによる明部電位ムラを検知することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、回転可能な感光体と、電圧が印加されることで帯電部において前記感光体の表面を帯電させる帯電手段と、前記帯電手段によって帯電させられた前記感光体を露光して前記感光体上に静電潜像を形成する露光手段と、前記帯電手段に流れる直流電流を検知する電流検知手段と、回転する前記感光体上に、前記感光体の回転軸線方向における位置を段階的にまたは連続的に変化させながら前記帯電部に到達する、前記感光体の回転軸線方向に所定の幅を有する計測用静電潜像を形成させ、前記計測用静電潜像が前記帯電部に到達することで前記電流検知手段によって検知された直流電流の値から、前記感光体の回転軸線方向における露光感度の分布に係る情報を計測する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡易な構成で、感光体の露光感度ムラによる明部電位ムラを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明に従うVL電位補正制御に係る機能ブロック図である。
【図3】図1の画像形成装置における帯電ローラに対する電圧印加系を示す機能ブロック図である。
【図4】感光体の周方向の電位ムラの一例を表すグラフ図である。
【図5】感光体の長手方向の電位ムラの一例を表すグラフ図である。
【図6】露光補正を行わない状態で出力したハーフトーン画像の模式図である。
【図7】本発明に従う感度ムラ計測モードの実行を判断する動作の一例のフローチャート図である。
【図8】本発明に従う感度ムラ計測モードにおける動作の一例のフローチャート図である。
【図9】本発明に従う感度ムラ計測モードにおける潜像パターンの一例を示す模式図である。
【図10】帯電部に到達した潜像パターンの位置と帯電ローラの位置との関係を示す模式図、および帯電部での感光体の表面電位を示すグラフ図である。
【図11】帯電部に到達した潜像パターンの位置と帯電ローラの位置との関係を示す模式図、および帯電部での感光体の表面電位を示すグラフ図である。
【図12】VD電位とVL電位の電位差と、電流検知手段に流れる直流電流との関係の一例を示すグラフ図である。
【図13】(a)電流検知手段に流れる直流電流と感光体の長手方向の位置との関係を示すグラフ図、(b)求められた感光体の長手方向におけるVL電位の分布を示すグラフ図である。
【図14】露光量の補正方法を説明するためのグラフ図である。
【図15】感光体の長手方向において露光補正を行った状態で出力したハーフトーン画像の模式図である。
【図16】(a)本発明に従う感度ムラ計測モードにおける潜像パターンの他の例を示す模式図、(b)帯電部に到達した潜像パターンの位置と帯電ローラの位置との関係を示す模式図である。
【図17】求められた感光体の長手方向におけるVL電位の分布を示すグラフ図である。
【図18】(a)本発明に従う感度ムラ計測モードにおける潜像パターンの他の例を示す模式図、(b)帯電部に到達した潜像パターンの位置と帯電ローラの位置との関係を示す模式図である。
【図19】感光体の全域(長手方向および周方向)に潜像パターンを形成した様子を示す模式図である。
【図20】感光体の長手方向および周方向において露光補正を行った状態で出力したハーフトーン画像の模式図である。
【図21】感光体の長手方向の露光補正の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0025】
実施例1
1.画像形成装置の全体的な構成および動作
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体的な構成を示す。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を利用したデジタル複写機であり、原稿画像のコピーや画像データに従ったプリントを行うことができる。
【0026】
画像形成装置100は、原稿画像を光学的に読み込んで電気信号に変換する原稿読み取り部(リーダー)Rと、画像情報に従って画像形成を行う画像形成部(プリンタ)Pと、を有する。
【0027】
原稿読み取り部Rには、原稿給紙装置1、原稿台ガラス面2、スキャナユニット4、ミラー5、6、7、イメージセンサ部9などが設けられている。
【0028】
画像形成部Pには、像担持体としてのドラム型の感光体(感光ドラム)11が設けられている。本実施例では、感光体11は、帯電極性が負極性の有機光導電体(OPC)の層を備える有機感光体であり、駆動手段としてのモータ(図示せず)によって図示矢印R1方向に回転駆動される。感光体11の周囲には、その回転方向に沿って次の各手段が配置されている。
【0029】
まず、帯電手段としてのローラ状の帯電部材である帯電ローラ17である。次に、現像手段としての現像装置13である。次に、転写手段としてのローラ状の転写部材である転写ローラ12である。次に、クリーニング手段としてのクリーナ14である。
【0030】
帯電ローラ17は、感光体11の表面に接触してニップ部(帯電ニップ)を形成する。ここで、注入帯電方式では、ニップ部において感光体の表面の帯電処理が行われる。注入帯電方式とは、導電性の部材を感光体の表面に接触させ、導電性の部材から感光体の表面に電荷を注入して感光体の表面を帯電するものであり、導電性の部材として磁気ブラシが多く用いられている。注入帯電方式は放電現象を利用しない帯電方式である。一方、接触放電方式では、帯電ニップの上下流の帯電部材と感光体の表面との間の微小空隙において帯電処理が行われる。したがって、注入帯電方式では、帯電ニップを帯電部Cと呼び、接触放電方式では、感光体の表面と帯電部材との間の微小空隙を帯電部Cと呼ぶ。
【0031】
本実施例では、接触放電方式で、感光体11の表面の帯電処理を行う。尚、本実施例では、帯電部材として帯電ローラ17を用いるので、感光体11の回転方向において帯電ニップの上下流に微小空隙が存在する。感光体11の表面の帯電処理は、装置の構成によって、この上下流の微小空隙のうち上流側または下流側のいずれかにおいて主に行われたり、両方で行われたりする。本実施例では、主に上流側の微小空隙で感光体11の表面の帯電処理が行われるものとする。したがって、本実施例では、特に、この上流側の微小空隙が帯電部Cとなる。
【0032】
尚、詳しくは後述するように、本実施例では、計測用静電潜像が帯電部Cに到達することで帯電ローラ17に流れる電流を検知して露光補正を行う。この際、本実施例では、計測用静電潜像が、帯電部Cとしての感光体11の回転方向において帯電ニップの上流側の微小空隙(帯電ギャップ)到達することで帯電ローラ17に流れる電流値を検知して露光補正を行う。但し、上述のように帯電ローラ17を感光体11に接触させるような構成では、帯電ニップの上下流に微小空隙が存在する。そのため、下流側の微小空隙で帯電処理が行われる場合には、計測用静電潜像が帯電ニップを通過した時、すなわち、計測用静電潜像が帯電部Cとしての下流側の微小空隙に到達することで帯電ローラ17に流れる電流値を検知して露光補正を行ってもよい。
【0033】
現像装置13は、現像剤であるトナーを担持して搬送する現像剤担持体としての現像ローラを有しており、この現像ローラと感光体11との対向部である現像部Gにおいて静電潜像の現像を行う。また、転写ローラ12は、感光体11の表面に接触して転写部(転写ニップ)Tを形成する。
【0034】
また、画像形成部Pには、画像情報に従って感光体11を露光する露光手段としての露光装置10が設けられている。本実施例では、露光装置10は、レーザスキャナである。露光装置10は、感光体11の回転方向において帯電部Cよりも下流側、かつ、現像部Gよりも上流側の露光部Eで、感光体11の表面をその長手方向(表面の移動方向と略直交する方向;回転軸線方向)に走査しながら露光する。
【0035】
さらに、画像形成部Pには、定着手段としての定着装置19、転写材Sの供給手段を構成する転写材積載部21、22、搬送ローラ23などが設けられている。
【0036】
例えば、コピーを行う場合、原稿読み取り部Rにおいて、原稿給紙装置1上に積載された原稿が、1枚ずつ順次原稿台ガラス面2上に搬送される。原稿が搬送されると、スキャナユニット4のランプ3が点灯し、かつ、スキャナユニット4が移動して、原稿に光が照射される。原稿からの反射光は、ミラー5、6、7を介してイメージセンサ部9に入力される。イメージセンサ部9に入力された画像信号は、直接露光装置10に入力されるか、または一旦画像メモリ(図示せず)に記憶され、再び読み出された後に加工されて、露光装置10に入力される。
【0037】
一方、画像形成部Pでは、感光体11の表面が、帯電部Cにおいて、帯電ローラ17により所定のVD電位に一様に帯電処理される。本実施例では、帯電ローラ17は、金属製の芯金の外回りに発泡スポンジで形成された弾性層を備える発泡弾性ローラである。図3は、帯電ローラ17に対する帯電電圧印加系の概略構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、帯電ローラ17の芯金17aには、帯電電圧印加手段としての帯電電源50が接続されている。感光体11の帯電処理を行う際には、帯電電源50から芯金17aを介して所定の条件の帯電電圧(帯電バイアス)が帯電ローラ17に印加される。これにより、感光体11の周面が所定の極性・電位に帯電させられる。本実施例では、帯電電圧は、直流電圧(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧である。すなわち、帯電電源50は、直流(DC)電源51と交流(AC)電源52とを有しており、帯電ローラ17に直流電圧と交流電圧とを重畳した振動電圧を印加する。なお、詳しくは後述するように、帯電電源50には、感光体11を介して帯電ローラ17に流れる直流電流値を測定する電流値測定回路とされる電流検知手段44が接続されている。
【0038】
帯電処理された感光体11上には、露光部Eにおいて、露光装置10が画像情報に従って発生する光が照射される。これによって、感光体11上に画像情報に従った静電潜像(静電像)が形成される。
【0039】
感光体11上に形成された静電潜像は、現像部Gにおいて、現像装置13によって現像剤であるトナーによってトナー像として現像される。本実施例の画像形成装置100では、反転現像方式が採用されている。すなわち、一様に帯電処理された感光体11上における、露光によって電荷が減衰させられた露光部に、感光体11の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーが付着させられる。現像動作時に、現像装置13の現像ローラには、現像電圧印加手段としての現像電源(図示せず)から所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。本実施例では、現像電圧として、直流電圧と交流電圧とが重畳された振動電圧が印加される。現像電圧の直流成分の電位(以下、「現像電位」という。)は、感光体11のVD電位とVL電位との間の電位に設定されている。
【0040】
また、感光体11上への静電潜像の形成とタイミングを合わせて、転写材積載部21または22から転写部Tへと転写材Sが搬送される。そして、転写部Tにおいて、感光体11上から転写材S上へと、トナー像が転写される。
【0041】
その後、トナー像が転写された転写材Sは、定着装置19に搬送され、ここで加熱および加圧されることで、その上にトナー像が定着される。その後、トナー像が定着された転写材Sは、排紙部20から画像形成装置100の外部に排出される。
【0042】
また、転写工程後の感光体11の表面は、クリーナ14で清掃される。すなわち、転写工程後に感光体11の表面に残留したトナー(転写残トナー)は、クリーナ14において、クリーニング部材としてのクリーニングブレードで回転する感光体11の表面から掻き取られて回収容器内に回収される。
【0043】
クリーナ14で清掃された感光体11の表面は、帯電ローラ17によって再び帯電処理され、その後上述の露光、現像、転写の各工程が繰り返されることで、複数枚の転写材Sに対して画像形成が行われる。
【0044】
なお、本実施例では、感光体11の直径は30mmであり、感光体11の長手方向における画像形成可能領域の長さは300mmである。また、本実施例では、帯電ローラ17の長手方向(表面の移動方向と略直交する方向;回転軸線方向)の長さは320mmである。また、本実施例では、感光体11上のVD電位は−500Vに設定されている。したがって、本実施例では、帯電ローラ17には、帯電電圧として、−500Vの直流電圧(直流成分)と、周波数2kHzの交流電圧(交流成分)とを重畳した振動電圧が印加される。また、本実施例では、現像電位は−350Vに設定されている。
【0045】
2.制御態様
図2は、本実施例における後述のVL電位補正制御に関連する画像形成部Pの機能ブロックを示す。
【0046】
画像形成部Pには、感光体11、帯電ローラ17、半導体レーザ31、画像信号生成部32、レーザ駆動制御部33、補正手段34、コリメートレンズ35、回転多面鏡36、fθレンズ37、ミラー38が設けられている。また、画像形成部Pには、ビームディテクト(以下、「BD」という。)手段39、補正値記憶手段42、補正値算出手段43、電流検知手段44、感光体回転位置検知手段45、潜像位置記憶手段46、制御部47、出力枚数カウンタ48などが設けられている。半導体レーザ31、コリメートレンズ35、回転多面鏡36、fθレンズ37、ミラー38は、露光装置10を構成する。また、例えば図2において個別の機能ブロックとして示されている補正手段34、補正値記憶手段42、補正値算出手段43、潜像位置記憶手段46、制御部47、出力枚数カウンタ48の全てまたは一部が、統合された回路として構成されていてもよい。所望により、画像信号生成部32、レーザ駆動制御部33、電流検知手段44の全てまたは一部についても同様である。なお、本実施例では、制御手段としての制御部47が、図2中の他の機能ブロックを含む画像形成装置100の全体の動作を統括的に制御する。
【0047】
まず、画像信号aと、補正信号bとに従って、レーザ駆動制御部33が、半導体レーザ31の発光電流cの電流値または発光時間を制御する。このときの電流制御方法は、電流の絶対値を制御しても、電流を流す時間を制御しても、その両方でもよい。上記画像信号aは、BD手段39から出力されるBD信号eに同期して、画像信号生成部32により生成される。また、上記補正信号bは、BD手段39から出力されるBD信号eと感光体回転位置検知手段45から出力される感光体位置信号fに同期して、補正手段34から出力される。
【0048】
ここで、補正手段34から出力される補正信号bは、感光体11の表面の2次元的な位置に対応する補正値であり、補正値記憶手段42に記憶されている。この補正値は、詳しくは後述する感光体11の感度ムラを計測する感度ムラ計測モードが行われた際に、補正値算出手段43によって算出される。詳しくは後述するが、補正値算出手段43は、露光装置10によって感光体11に形成した静電潜像の位置と、その静電潜像が帯電部Cに到達した際に電流検知手段44が検知した電流値に基づき、上記補正値を算出する。
【0049】
また、感光体回転位置検知手段45としては、感光体11に設けられたホームポジション指示手段をホームポジション検知手段によって検知し、その検知タイミングと感光体11の回転速度とから感光体11の回転位置を検知するものを用いることができる。ホームポジション検知手段としては、例えば光学センサを用いることができ、この光学センサによって感光体11に設けられた切り欠きや反射シールなどとされるホームポジション指示手段を検知することができる。
【0050】
半導体レーザ31から照射されたレーザ光dは、コリメートレンズ35により平行光にされる。平行光に変換されたレーザ光dは、回転多面鏡36により走査され、fθレンズ37により面倒れなどの光学的な歪みが補正され、ミラー38により反射されて、感光体11の表面に照射される。これにより、感光体11上に静電潜像が形成される。
【0051】
3.感光体の感度ムラ
画像形成時には、帯電処理された感光体11上に、露光装置10が発生する光が照射されて、静電潜像が形成されるが、感光体11の表面には2次元的な各位置における露光感度ムラが存在することがある。
【0052】
図4は、感光体11上を一様なハーフトーン画像(一例として256階調のうち128レベル)を形成するレーザ光量で露光したときの、感光体11の周方向(副走査方向)の電位ムラを表すグラフを示す。図4には、感光体11の長手方向(主走査方向)の任意の5点におけるそれぞれの周方向の電位ムラを表すグラフが示されている。感光体11の長手方向の各点において、絶対量は違うものの、感光体11の周方向の電位ムラの分布は同じような形になっている。
【0053】
図5は、感光体11上を一様なハーフトーン画像(一例として256階調のうち128レベル)を形成するレーザ光量で露光したときの、感光体11の長手方向の電位ムラを表すグラフを示す。図5には、感光体11の周方向の任意の5点におけるそれぞれの長手方向の電位ムラを表すグラフが示されている。感光体11の周方向の各点において、絶対量は違うものの、感光体11の長手方向の電位ムラ分布は同じような形になっている。また、図5に示す感光体11の長手方向の電位ムラと、図4に示す感光体11の周方向の電位ムラとを比較すると、長手方向の電位ムラの方が、電位の最大値と最小値との差が大きいことがわかる。
【0054】
図6は、出力されたハーフトーン画像の画像濃度を模式的に表現したものである。画像濃度が高い部分を濃い色で表現している。
【0055】
露光感度が高くVL電位の絶対値が低くなるポイントでは、現像電位とのコントラストが大きいため、画像濃度が高くなる。一方、露光感度が低くVL電位の絶対値が高くなるポイントでは、現像電位とのコントラストが小さいため、画像濃度が低くなる。上述のように、感光体11の長手方向の電位ムラは、感光体11の周方向の電位ムラと比較して大きい傾向があるため、感光体11の長手方向の画像濃度差が大きい画像が出力される。
【0056】
感光体11の感度ムラの補正は、感光体11の長手方向、周方向の双方に対して行うことが最も望ましい。しかし、上述のような感光体11の感度ムラの大きさの傾向から、主に感光体11の長手方向の感度ムラを補正することが望まれる。本実施例では、感光体11の長手方向の感度ムラの補正を行う。
【0057】
4.感度ムラ計測モード
本実施例の画像形成装置100は、感光体11の感度ムラを計測する感度ムラ計測モードを備えている。感度ムラ計測モードは、予め設定されたタイミングで行われる。このタイミングは、装置の使用状況や、感光体11の膜厚などによって自由に設定することができる。例えば多くの画像形成が行われた直後や、小サイズ紙が連続して出力された直後など、感光体11の面内で感度ムラが大きくなると予想されるタイミングで行われることが望ましい。本実施例では、感度ムラ計測モードは、毎電源投入時および前回の感度ムラ計測モードからの累積出力枚数が1000枚を越えたときのジョブ(一の画像形成開始指示による単数または複数の転写材への一連の画像形成動作)終了時に行われる。
【0058】
次に、図7および図8のフローチャートを参照して、感度ムラ計測モードについて説明する。
【0059】
図7に示すように、コピー、プリントなどのジョブが開始されて画像出力が行われ(S101)、当該ジョブが終了する(S102)と、制御部47は出力枚数カウンタ48から出力枚数情報を読み取る(S103)。そして、制御部47は、累積出力枚数が1000枚以上であるか否かを判断し(S104)、累積出力枚数が1000枚以上であった場合(S104:Yes)には、感度ムラ計測モード(図8)を開始する(S105)。制御部47は、感度ムラ計測モードを実行すると、出力枚数カウンタ48をリセットする(S106)。一方、制御部47は、累積出力枚数が1000枚に満たない場合(S104:No)には、感度ムラ計測モードを開始せずに、画像形成装置の動作を停止する。なお、本実施例では、制御部47は、画像形成装置100の電源投入時には必ず感度ムラ計測モード(図8)を開始する。
【0060】
図8を参照して、制御部47は、感度ムラ計測モードを開始すると、通常の画像形成時と同様に、感光体11を回転駆動させて、その表面を帯電ローラ17により帯電させる(S201)。
【0061】
次に、制御部47は、露光装置10に、一様に帯電した感光体11上に、感光体11の感度ムラを計測するための計測用静電潜像(以下「潜像パターン」という。)を形成させる(S202)。本実施例では、図9に示すように、感光体11の長手方向に所定の幅を有し、周方向に所定の長さを有する複数の帯状の潜像パターンを形成する。具体的には、感光体11の長手方向に50mmの幅を有し、周方向に50mmの長さを有する潜像パターンを、感光体11の周方向でオーバーラップしないように、感光体11の回転に伴い感光体11の長手方向の一方の端部側から他方の端部側に向けて6個形成する。これにより、感光体11の長手方向の全域にわたって潜像パターンを形成することができる。本実施例では、潜像パターンは、ハーフトーン画像(一例として256段階のうち128レベル)の画像を形成する場合のレーザ光量で一様に露光することで形成する。すなわち、計測用静電潜像を形成するときの露光手段による感光体の露光量は一定である。この潜像パターンの情報は、画像信号生成部32に予め設定されており、レーザ駆動制御部33が、画像信号生成部32からのこの情報に従って露光装置10を駆動することで、潜像パターンが形成される。このとき、レーザ駆動制御部33には、補正手段34から補正信号は入力されない。また、潜像パターンを形成する際に、同時に、感光体回転位置検知手段45が感光体11の周方向の位置を検知する(S202)。
【0062】
なお、以下の説明では、最初に潜像パターンが形成される感光体11の長手方向の一方の端部側を「手前側」ともいう。そして、感光体11の長手方向の他方の端部側を、「奥側」ともいう。
【0063】
次に、制御部47は、感光体11の表面における潜像パターンの2次元的な潜像位置情報を算出し、算出した潜像位置情報を潜像位置記憶手段46に記憶させる(S203)。制御部47は、感光体回転位置検知手段45によって検知された潜像パターンの感光体11の周方向の位置と、画像信号生成部32に予め設定されている情報からわかる潜像パターンの感光体11の長手方向の位置とから、潜像位置情報を算出する。
【0064】
ここで、感度ムラ計測モードが行われている際には、帯電ローラ17および露光装置10以外で、感光体11の電位に影響する要素(本実施例では、転写ローラ12)の動作は行われない。したがって、上述のようにして形成された感光体11上の潜像パターンの電位は、そのまま感光体11に保持され、感光体11の回転に伴って再び帯電部Cに到達する。
【0065】
図10は、潜像パターンAが帯電部Cに到達した時点における、感光体11の表面の潜像パターンの位置と帯電ローラ17の位置との関係および帯電部Cでの感光体11の表面電位を模式的に示す。同様に、図11は、他の潜像パターンBが帯電部Cに到達した時点における、感光体11の表面の潜像パターンの位置と帯電ローラ17の位置との関係および帯電部Cでの感光体11の表面電位を模式的に示す。感光体11の長手方向の位置は、感光体11の長手方向における画像形成可能領域の手前側の端部の位置を0mmとし、奥側の端部の位置を300mmとして示す。図10および図11に示すように、帯電部Cにおいて、各潜像パターンA、Bの電位は、それぞれの位置における感光体11の露光感度に応じたVL電位になっている。
【0066】
図8を再び参照して、制御部47は、感光体回転位置検知手段45の検知結果により、各潜像パターンが帯電部Cに到達したことを検知する(S204)。各潜像パターンが帯電部Cに到達すると、それぞれの潜像パターンのVL電位に応じた電荷が、帯電ローラ17から感光体11に向けて移動し、その位置の感光体11の表面電位の絶対値は再び一様にVD電位まで上昇する。このとき移動した電荷は、帯電ローラ17と電気的に接続された電流検知手段44によって、直流電流として検知される(S205)。
【0067】
ここで、図12は、露光量を変更しながら感光体11の長手方向に50mmの幅を有する潜像パターンを形成し、VD電位と潜像パターンのVL電位との電位差と、そのときに電流検知手段44に流れる電流との関係を求めたものである。ここで、VL電位は、電位センサを用いて実験的に求めた。なお、潜像パターンを形成する際の露光量を変更する他は、本実施例の画像形成装置100における感度ムラ計測モードに係る設定と実質的に同一とした。当然ながら、この関係は潜像パターンの幅によっても変化し、幅が広いほど電流値が大きくなる関係にあるが、ここでは、本実施例と同等の50mmの幅で潜像パターンを形成した。
【0068】
図12に示すように、VD電位と潜像パターンのVL電位との電位差と、電流検知手段44で検知される直流電流との関係は、比例の関係にある。本実施例の設定では、電位差100Vあたり0.3μAの直流電流が流れることが判明した。このように、VD電位と潜像パターンのVL電位との電位差は、帯電ローラ17に流れる直流電流の値で表現することができる。
【0069】
図8に戻ると、本実施例では、補正値算出手段43が、予め設定されている図12の関係を用いることにより、電流検知手段44によって検知された直流電流値から、各潜像パターンについてのVD電位とVL電位との電位差を求める(S206)。
【0070】
一方、前述のようにして潜像位置記憶手段46に記憶されている潜像位置情報から、各潜像パターンの位置を検出することが可能である。したがって、本実施例では、補正値算出手段43が、上述のようにして求めた電位差と、感光体11の表面における潜像パターンの2次元的な位置との関係を算出する(S207)。
【0071】
具体的には、図13(a)に示すように、例えば、前述の潜像パターンAが帯電部Cに到達した際(図10)には0.75μAの直流電流が流れ、前述の潜像パターンBが帯電部Cに到達した際(図11)には0.6μAの直流電流が流れていた。この場合、図12の関係から、潜像パターンAにおけるVD電位とVL電位との電位差は250V程度であり、潜像パターンBにおけるVD電位とVL電位との電位差は200V程度であることがわかる。算出されたVD電位とVL電位との電位差から求めたVL電位を、図13(b)に実線で示す。
【0072】
ここで、実験的に電位センサを用いて求めた潜像パターンA、Bの実際のVL電位は、図13(b)に破線で示す通りであり、本実施例の方法により精度良くVD電位とVL電位との電位差(或いはVL電位)を求め得ることがわかる。
【0073】
図8に戻って、補正値算出手段43は、上述のようにして求めたVD電位とVL電位との電位差の分布から、画像形成時に補正手段34がレーザ駆動制御部33に入力する露光信号の補正値(補正信号)に変換する(S208)。具体的には、補正値算出手段43は、感光体11の長手方向における各潜像パターンの位置に対応する各領域毎に、求めたVD電位とVL電位との電位差から、露光信号の補正値を算出する。そして、補正値算出手段43は、感光体11の長手方向の位置に対応させて、露光信号の補正値を補正値記憶手段42に記憶させる(S209)。本実施例では、感光体11の長手方向に6個の潜像パターンを形成し、感光体11の長手方向の全域にわたる感度ムラを計測した。したがって、本実施例では、感光体11の長手方向における各潜像パターンの位置に対応して、感光体11の長手方向に6分割された領域毎に、露光信号の補正値が算出されて記憶される。以上により、計測モードが終了する。
【0074】
5.VL電位の補正
画像形成時には、補正値記憶手段42に記憶した補正値に基づいて、露光信号の補正を行う。具体的には、補正値記憶手段42に記憶されている補正値(補正信号)bを用いて、補正手段34がレーザ駆動制御部33から出力されるレーザ31の発光電流cを補正する。
【0075】
本実施例では、最も露光感度が低く、VL電位の絶対値が最も高くなる位置にVL電位をあわせるべく、その位置以外の露光量を低下させる。このVL電位を合わせるために露光量を低下させる方法自体は、従来公知の方法など任意の方法を採用することができる(図21参照)。具体的には、感度ムラ計測モードにおいて、補正値算出手段43は、感光体11の長手方向において最もVL電位の絶対値が高い(すなわち、VD電位とVL電位との電位差が最も大きい)位置を検知する。ここでは、図13(b)に示すように、感光体11の長手方向の位置で200mm〜250mmの領域のVL電位の絶対値が最も高いことが検知される。この場合、図14に示すように、補正値算出手段43は、当該VL電位の絶対値が最も高い領域については、露光信号の補正を行わないように補正値を設定する。一方、当該VL電位の絶対値が最も高い領域以外の領域については、同じ階調レベルのVL電位が上記VL電位の絶対値が最も高い領域のものと略等しくなるように、露光量を低下させる補正値を設定する。例えば、潜像パターンの階調レベルにおいてVL電位を上記VL電位の絶対値が最も高い領域のものと同じにするのに必要な露光量の低減割合で、他の階調レベルにおける露光量も低減させることができる。
【0076】
そして、画像形成時には、補正値記憶手段42に記憶されているこの補正値(補正信号)bを用いて、補正手段34がレーザ駆動制御部33から出力されるレーザ31の発光電流cを補正する。
【0077】
このように、本実施例では、感光体11の長手方向の複数位置に形成された潜像パターンが帯電部Cに達したときに帯電ローラ17に流れる直流電流に基づいて露光電位の分布を検知する。そして、検知された露光電位のムラを打ち消すように露光量を補正する。
【0078】
ここで、本実施例では、レーザ光量の最大値の制御として、半導体レーザ31の発光電流cの発光時間を制御しているが、発光電流cの電流値を制御して、露光量の補正を行ってもよい。
【0079】
本実施例に従って露光量の補正を行った状態で、実際にハーフトーン画像(一例として256階調の128レベル)を出力すると、図15に模式的に示すような画像が得られる。このように、補正を行わないときに出力した画像(図6)と比較すると、VL電位ムラに起因する濃度ムラが改善され、良好な画質を得ることができる。
【0080】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、回転可能な感光体11と、電圧が印加されることで帯電部Cにおいて感光体11の表面を帯電させる帯電手段17と、を有する。また、画像形成装置100は、帯電手段17によって帯電させられた感光体11を露光して感光体上に静電潜像を形成する露光手段10と、帯電手段17に流れる直流電流を検知する電流検知手段44と、制御手段47と、を有する。そして、本実施例では、制御手段47は、回転する感光体上に、感光体11の回転軸線方向における位置を段階的に変化させて帯電部Cに到達する、感光体11の回転軸線方向に所定の幅を有する計測用静電潜像(潜像パターン)を形成させる。また、制御手段47は、この計測用静電潜像が帯電部Cに到達することで電流検知手段44によって検知された直流電流の値から、感光体11の回転軸線方向における露光感度の分布に係る情報を計測する。また、本実施例の画像形成装置100は、計測された露光感度の分布に応じて、画像出力時の露光手段10の露光量を補正する補正手段34を有する。
【0081】
以上説明したように、本実施例によれば、簡易な構成で、感光体の露光感度ムラによる明部電位ムラを検知することができる。すなわち、本実施例によれば、感光体11の電位を測定する電位センサを有しない簡易な構成であっても、感光体11の感度ムラによる明部電位ムラを良好に検知することができる。そして、この明部電位ムラを、露光量を調整することによって補正することができる。したがって、感光体11の個体差による感度のばらつきや劣化後の感度ばらつきにも対応することが可能となる。特に、本実施例では、より顕著に現れることの多い感光体11の長手方向のVL電位ムラの発生を抑制して、高品質の画像を出力することができる。
【0082】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成および動作は、実施例1のものと同じである。したがって、実施例1の画像形成装置のものと同一またはそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0083】
本実施例では、感度ムラ計測モードで用いる潜像パターンが実施例1と異なる。
【0084】
本実施例では、感度ムラ計測モードにおいて、図16(a)に示すような帯状の潜像パターンが形成される。具体的には、感光体11の長手方向に50mmの幅の露光領域を、感光体11の長手方向の手前側から奥側に向けて徐々に中心位置を移動させていくことで、連続する帯状の潜像パターンを形成する。これにより、感光体11の長手方向の全域にわたって潜像パターンを形成することができる。すなわち、本実施例では、制御手段47は、回転する感光体上に、感光体11の回転軸線方向における位置を連続的に変化させて帯電部Cに到達する、感光体11の回転軸線方向に所定の幅を有する計測用静電潜像(潜像パターン)を形成させる。
【0085】
図16(b)は、潜像パターンが帯電部Cに到達した時点における、感光体11の表面の潜像パターンの位置と帯電ローラ17の位置との関係を模式的に示す。
【0086】
実施例1と同様の方法で算出した感光体11の長手方向の各位置におけるVD電位とVL電位との電位差から、感光体11の長手方向の各位置に対するVL電位を求めると、図17に示すようになる。
【0087】
実施例1では感光体11の長手方向の複数の領域に対して、段階的に感光体11の感度ムラを求めていた。これに対して、本実施例では、連続する帯状の潜像パターンを用いることで、感光体11の長手方向において連続的に感光体11の感度ムラを求めることができる。すなわち、感光体11の長手方向におけるVL電位ムラをより精度良く求めることができる。そして、感光体11の長手方向において連続的に変化する感度ムラの情報に基づいて、感光体11の長手方向の各位置に対して連続的に変化する露光量の補正値を求めることができる。したがって、このようにして求めた露光量の補正値を用いることで、より精度よく、感光体の露光感度ムラによる明部電位ムラの発生を抑制することができる。
【0088】
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成および動作は、実施例1のものと同じである。したがって、実施例1の画像形成装置のものと同一またはそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0089】
本実施例では、感度ムラ計測モードで用いる潜像パターンが実施例1、2と異なる。
【0090】
本実施例では、感度ムラ計測モードにおいて、実施例2と同様の、図18(a)に示すような帯状の潜像パターンが形成される。具体的には、感光体11の長手方向に50mmの幅の露光領域を、感光体11の長手方向の手前側から奥側に向けて徐々に中心位置を移動させていくことで、連続する帯状の潜像パターンを形成していく。
【0091】
ここで、実施例2では、感光体11の長手方向における手前側から奥側に向けて1回だけ潜像パターンを形成した。これに対し、本実施例では、図18(b)に示すように上述のような潜像パターンを感光体11の長手方向の手前側から奥側に向けて複数回形成する。潜像パターンの感光体11の長手方向における幅50mmの範囲は常に1箇所のみが帯電部Cに到達するようにする。
【0092】
これにより、図19に示すように、感光体11の長手方向の全域だけでなく周方向の略全域にも、潜像パターンを形成することができる。そのため、感光体11の長手方向および周方向の2次元的な各位置におけるVL電位を求めることができる。図19に示す例では、複数回数形成する帯状の潜像パターン間に間隙があるが、当該間隙は設けられていなくてもよい。その場合、感光体11の周方向の全域にわたって潜像パターンを形成することができ、より詳しく感光体11の長手方向および周方向の2次元的な各位置におけるVL電位を求めることができる。
【0093】
このように、本実施例では、感光体11の回転軸線方向の同一位置において、感光体11の周方向の異なる位置に形成された計測用静電潜像(潜像パターン)が複数回にわたり帯電部Cに到達するように、感光体上に計測用静電潜像を形成する。そして、この計測用静電潜像が帯電部Cに到達することで電流検知手段44によって検知された直流電流の値から、感光体11の回転軸線方向および周方向における露光感度の分布に係る情報を計測する。
【0094】
実施例1、2で感光体11の長手方向について行った露光補正と同様の露光補正を、感光体11の周方向にも行い(即ち、感光体11の面内の略全域の2次元的な各位置について行い)、実際にハーフトーン画像(一例として256階調の128レベル)を出力する。すると、図20に模式的に示すような画像が得られる。このように、補正を行わないときに出力した画像(図6)や、長手方向のみ補正を行って出力した画像(図15)と比較すると、VL電位ムラに起因する濃度ムラが大幅に改善され、良好な画質を得ることができる。
【符号の説明】
【0095】
10 露光装置
11 感光体
17 帯電ローラ
33 レーザ駆動制御部
34 補正手段
42 補正値記憶手段
43 補正値算出手段
44 電流検知手段
45 感光体回転位置検知手段
46 潜像位置記憶手段
47 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な感光体と、
電圧が印加されることで帯電部において前記感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段によって帯電させられた前記感光体を露光して前記感光体上に静電潜像を形成する露光手段と、
前記帯電手段に流れる直流電流を検知する電流検知手段と、
回転する前記感光体上に、前記感光体の回転軸線方向における位置を段階的にまたは連続的に変化させて前記帯電部に到達する、前記感光体の回転軸線方向に所定の幅を有する計測用静電潜像を形成させ、前記計測用静電潜像が前記帯電部に到達することで前記電流検知手段によって検知された直流電流の値から、前記感光体の回転軸線方向における露光感度の分布に係る情報を計測する制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記感光体の回転軸線方向の同一位置において、前記感光体の周方向の異なる位置に形成された前記計測用静電潜像が複数回にわたり前記帯電部に到達するように、前記感光体上に前記計測用静電潜像を形成させ、前記計測用静電潜像が前記帯電部に到達することで前記電流検知手段によって検知された直流電流の値から、前記感光体の回転軸線方向および周方向における露光感度の分布に係る情報を計測することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記計測された露光感度の分布に応じて、画像出力時の前記露光手段の露光量を補正する補正手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記計測用静電潜像を形成するときの前記露光手段による前記感光体の露光量は一定であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図6】
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【図15】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−133052(P2012−133052A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283863(P2010−283863)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】