説明

画像形成装置

【課題】装置を小型化することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】連動機構540は、カートリッジホルダの装置本体10に対する内側位置への移動に連動して、取っ手部材520を退避位置に変位させるとともに、カバー部材530を開位置に変位させ、カートリッジホルダの装置本体10に対する外側位置への移動に連動して、取っ手部材520を突出位置に変位させるとともに、カバー部材530を閉位置に変位させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカートリッジを一体的に支持するカートリッジホルダを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置において、所定の並列方向に並列された複数のカートリッジと、複数のカートリッジを一体的に支持するとともに、装置本体に対して上記並列方向に引き出し可能に設けられたカートリッジホルダを備えたものが知られている(特許文献1参照)。具体的に、この技術では、各カートリッジには上方へ突出する取っ手部材が設けられており、ユーザは、カートリッジホルダを手前に引き出した後、取っ手部材を掴むことでカートリッジを取り出すことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−54837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成であると、カートリッジホルダを装置本体内に収容させたときに、取っ手部材が上方へ突出した状態のままとなるため、装置本体内において取っ手部材を収容するためのスペースを大きくとる必要があり、装置が大型化してしまうといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、装置を小型化することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、装置本体と、所定の並列方向に並列された複数のカートリッジと、前記複数のカートリッジを一体的に支持するとともに、前記並列方向おいて、前記装置本体に対して外側に位置する外側位置と、装置本体に対して内側に位置する内側位置との間を移動可能に構成されたカートリッジホルダと、を備えた画像形成装置であって、前記カートリッジは、上方に開放された開口が形成されたケーシングと、現像剤を保持し、前記開口を介して上方に露出する現像剤保持体と、前記開口よりも上方に突出する突出位置と、当該突出位置から倒れた退避位置との間を変位可能に構成される取っ手部材と、前記現像剤保持体の上部を覆う閉位置と、前記現像剤保持体の上部を開放させる開位置との間を変位可能に構成されたカバー部材と、を備え、前記カートリッジおよび前記カートリッジホルダのうち少なくとも前記カートリッジには、前記カートリッジホルダの前記装置本体に対する移動に連動して前記取っ手部材と前記カバー部材を変位させる連動機構が設けられ、前記連動機構は、前記カートリッジホルダの前記装置本体に対する前記内側位置への移動に連動して、前記取っ手部材を前記退避位置に変位させるとともに、前記カバー部材を前記開位置に変位させ、前記カートリッジホルダの前記装置本体に対する前記外側位置への移動に連動して、前記取っ手部材を前記突出位置に変位させるとともに、前記カバー部材を前記閉位置に変位させるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、カートリッジホルダを内側位置へ移動させると、取っ手部材が退避位置に変位するので、取っ手部材が上方へ突出した状態のまま装置本体に収納される形態に比べ、装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るカラープリンタを簡略的に示す図であり、カートリッジホルダが内側位置に位置する状態を示す図である。
【図2】カートリッジホルダが外側位置に位置する状態を示す図である。
【図3】外側位置に位置するカートリッジホルダと各プロセスカートリッジを示す断面図である。
【図4】取っ手部材が退避位置に位置するときのプロセスカートリッジを示す斜視図である。
【図5】取っ手部材が突出位置に位置するときのプロセスカートリッジを示す斜視図である。
【図6】プロセスカートリッジ側の連動機構を示す分解斜視図である。
【図7】ラック部材と作動レバーを示す図である。
【図8】連動機構を簡略化した図であり、取っ手部材が突出位置に位置するときの状態を示す図(a)と、取っ手部材が退避位置に位置するときの状態を示す図(b)である。
【図9】連動機構の第1の変形例を示す図である。
【図10】連動機構の第2の変形例を示す図である。
【図11】連動機構の第3の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<カラープリンタの全体構成>
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、方向は、カラープリンタを使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0011】
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1は、装置本体10内に、給紙ユニット30と、4つのLEDユニット40と、カートリッジの一例としての4つのプロセスカートリッジ50と、4つのプロセスカートリッジ50を一体的に支持するカートリッジホルダ100と、転写ユニット60と、定着ユニット70とを備えている。
【0012】
図1に示すように、装置本体10の上部には、装置本体10から排出された用紙Sが載置・積層される排紙トレイ12が設けられている。また、装置本体10の前壁には、カートリッジホルダ100を装置本体10外に引き出すための開口部13が形成されるとともに、この開口部13を開閉するためのフロントカバー14が回動可能に設けられている。
【0013】
給紙ユニット30は、装置本体10内の下部に設けられ、用紙Sを収容する給紙トレイ31と、給紙トレイ31から用紙Sを転写位置(中間転写ベルト63と2次転写ローラ65との間)に搬送する給紙機構32とを備えている。給紙トレイ31内の用紙Sは、給紙機構32によって1枚ずつ分離されて転写位置に搬送される。
【0014】
LEDユニット40は、現像剤保持体の一例としての感光ドラム51の下方に対向して配置され、先端に図示しない複数の発光部(LED)が感光ドラム51の軸方向(左右方向)に配列されている。LEDユニット40は、画像データに基づいて発光部を明滅させることで、感光ドラム51の表面を露光する。
【0015】
そして、LEDユニット40は、プロセスカートリッジ50に対して前後に隣接した位置(露光位置)に配置されており、フロントカバー14を開放させると傾動しながら下方に移動して、各プロセスカートリッジ50に対して前後方向から見て重ならない位置まで退避するようになっている。これにより、フロントカバー14を開放させたときには、LEDユニット40とプロセスカートリッジ50が干渉することなく、カートリッジホルダ100を引き出すことが可能となっている。なお、フロントカバー14を閉じたときには、各LEDユニット40は、傾動しつつ上方に移動することで、前述した露光位置に戻るようになっている。
【0016】
プロセスカートリッジ50は、給紙ユニット30の上方で前後方向(所定の並列方向)に並列されており、感光ドラム51や、公知の帯電器52、現像ローラ53、供給ローラ54、層厚規制ブレード55、トナー収容室56(図3参照)などを備えて構成されている。なお、プロセスカートリッジ50の詳細な構成については後述する。
【0017】
カートリッジホルダ100は、装置本体10に前後方向に移動可能に支持されており、前後方向おいて、装置本体10に対して外側に位置する外側位置(図2の位置)と、装置本体10に対して内側に位置する内側位置(図1の位置)との間を移動可能に構成されている。なお、カートリッジホルダ100は、装置本体10に対して着脱可能に構成されていてもよいし、工具などを用いない限り装置本体10から取り外しができないように構成されていてもよい。
【0018】
転写ユニット60は、プロセスカートリッジ50の上方に設けられ、駆動ローラ61と、従動ローラ62と、駆動ローラ61および従動ローラ62の間に張設された無端状の中間転写ベルト63と、中間転写ベルト63を介して感光ドラム51と対向配置された4つの1次転写ローラ64と、中間転写ベルト63を介して駆動ローラ61と対向配置された2次転写ローラ65とを備えている。
【0019】
このようなプロセスカートリッジ50および転写ユニット60では、感光ドラム51の表面が、帯電器52により一様に帯電された後、LEDユニット40によって露光されることで、感光ドラム51上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容室56内のトナーは、供給ローラ54を介して現像ローラ53の表面に担持される。
【0020】
現像ローラ53の表面に担持されたトナーは、現像ローラ53から感光ドラム51上の静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化されて感光ドラム51上にトナー像が形成(担持)される。各感光ドラム51上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト63上に順次重ね合わせて転写される。そして、給紙ユニット30から搬送された用紙Sが、中間転写ベルト63と2次転写ローラ65の間の転写位置を通過することで、中間転写ベルト63上のトナー像が用紙Sに転写される。
【0021】
定着ユニット70は、転写ユニット60の後側上方に設けられ、加熱ローラ71と、加熱ローラ71と対向配置されて加熱ローラ71を押圧する加圧ローラ72と、定着後の用紙Sを装置本体10の外部に排出する排出ローラ73とを備えている。定着ユニット70では、トナー像が転写された用紙Sが、加熱ローラ71と加圧ローラ72との間を通過することでトナー像が熱定着され、排出ローラ73によって装置本体10の外部に排出されて排紙トレイ12上に載置・積層される。
【0022】
<プロセスカートリッジ50およびカートリッジホルダ100の構造>
図4および図5に示すように、プロセスカートリッジ50は、ケーシング510と、取っ手部材520と、カバー部材530と、連動機構540の一部とを備えて構成されている。
【0023】
ケーシング510の上部には、上方に開放された開口511が形成されており、これにより、感光ドラム51の上部が開口511を介して上方に露出して中間転写ベルト63に接触可能となっている。具体的に、開口511は、ケーシング510の前壁512の上端と、後壁513の上端と、カバー部材530の左右両端部を感光ドラム51の周面に沿ってスライド可能に支持する一対の断面視円弧状の支持部材514の内面とで形成されている。
【0024】
取っ手部材520は、開口511よりも上方に突出する突出位置(図5の位置)と、当該突出位置から略90°倒れた退避位置(図4の位置)との間を変位可能となるように、ケーシング510の左右の側壁515に形成された支持軸516によって揺動可能に支持されている。支持軸516は、感光ドラム51の回転中心とは異なる位置に形成されており、これにより、取っ手部材520は、感光ドラム51とは異なる軸回りで揺動するようになっている。
【0025】
具体的に、取っ手部材520は、突出位置において開口511に対向する把持部521と、当該把持部521の両端から開口511側に向けて延びる一対のアーム部522とを有している。そして、把持部521は、退避位置において感光ドラム51の上部よりも下方に位置するように、退避位置において一対のアーム部522よりも下側にずれた位置に形成されている。
【0026】
これにより、中間転写ベルト63と把持部521とが干渉するのを防止することが可能となっている。なお、一対のアーム部522は、中間転写ベルト63の幅(左右方向の長さ)よりも左右方向外側に位置しているため、感光ドラム51よりも上方の位置に配置されていても、中間転写ベルト63と干渉することはない。
【0027】
そして、各アーム部522の下端は、前述した支持軸516に回動可能に支持されるとともに、その略中央部がリンク機構の一例としてリンクアーム550を介してカバー部材530に連結されている。リンクアーム550は、取っ手部材520からカバー部材530に動力を伝える部材であり、断面視円弧状に形成され、その両端部が取っ手部材520とカバー部材530とに回動可能に連結されている。
【0028】
カバー部材530は、開口511から上方に露出した感光ドラム51の上部を覆う閉位置(図5の位置)と、感光ドラム51の上部を開放させる開位置(図4の位置)との間を変位可能に構成されている。具体的に、カバー部材530は、感光ドラム51の周面に沿った断面視円弧状に形成され、図6に示すように、その両端には、左右方向外側に突出するとともに円弧状に延びるスライダ部531が形成されるとともに、スライダ部531の前端部から左右方向外側に突出する突出ピン部532が形成されている。
【0029】
そして、スライダ部531が前述した断面視円弧状の支持部材514に形成される円弧状の孔で支持されることによって、カバー部材530が感光ドラム51の回転軸を中心とする円弧状にスライド可能となっている。また、突出ピン部532が支持部材514の円弧状の孔を貫通してリンクアーム550の後端部に連結されることによって、カバー部材530がリンクアーム550を介して取っ手部材520と連動するようになっている。
【0030】
さらに、カバー部材530は、図4に示すように、開位置において、折り畳まれたコ字状の取っ手部材520の内側の空間内に収容されるようになっている。言い換えると、カバー部材530が開位置において取っ手部材520の把持部521と一対のアーム部522とで形成される空間内に入り込むように、リンクアーム550の長さや位置が設定されている。
【0031】
連動機構540は、カートリッジホルダ100の装置本体10に対する移動に連動して取っ手部材520とカバー部材530を変位させる機構である。具体的には、図6,7に示すように、連動機構540は、カートリッジホルダ100に設けられる作動レバー610およびラック部材600と、プロセスカートリッジ50に設けられる欠歯ギヤ560、取っ手部材520のアーム部522、リンクアーム550およびカバー部材530の突出ピン部532とを備えて構成されている。なお、連動機構540は、プロセスカートリッジ50の左右両側に1つずつ設けられている。
【0032】
作動レバー610は、図8(a)に示すように、その略中央部がカートリッジホルダ100の側壁110(図7参照)に回動可能に支持されている。作動レバー610の下端には、左右方向外側に突出してラック部材600の長孔602に係合する第1係合突起611が設けられ、上端には側壁110よりも左右方向外側に突出して装置本体10の左右の側壁15に形成された係合溝16に係合する第2係合突起612が設けられている。そして、係合溝16は、左右方向内側に開口する溝であり、側壁15の前端から後斜め下方に延びる傾斜溝161と、傾斜溝161の後端から後方に略水平に延びる水平溝162とを有している。
【0033】
また、作動レバー610の回動中心よりも上側の部位は、カートリッジホルダ100に設けられるねじりコイルバネ620などの付勢手段によって、常時図8(a)の初期位置に付勢されている。これにより、カートリッジホルダ100が外側位置に位置するときに、ユーザが誤って作動レバー610を動かしても、ねじりコイルバネ620の付勢力によって作動レバー610を初期位置に戻すことが可能となっている。なお、作動レバー610を初期位置に確実に位置させるべく、作動レバー610の上端部の後側に作動レバー610の後側への移動を規制する規制部材を設け、この規制部材に向けて作動レバー610をねじりコイルバネ620で付勢してもよい。
【0034】
このように作動レバー610が構成されることで、図8(a),(b)の順で示すように、カートリッジホルダ100を外側位置から装置本体10内の内側位置へ移動する際には、作動レバー610の第2係合突起612が傾斜溝161の上面に係合して下方に押されて、作動レバー610が図示時計回りに回動するようになっている。また、このように作動レバー610が図示時計回りに回動することで、作動レバー610の第1係合突起611によってラック部材600が後方に引かれ、ラック部材600が後方に移動するようになっている。
【0035】
また、逆に、図8(b),(a)の順で示すように、カートリッジホルダ100を内側位置から外側位置へ移動する際には、作動レバー610の第2係合突起612が傾斜溝161の下面に係合して上方に押されることや、ねじりコイルバネ620の付勢力が働くことで、作動レバー610が図示反時計回りに回動する。そして、このように作動レバー610が図示反時計回りに回動することで、第1係合突起611によってラック部材600が前方に押され、ラック部材600が前方に移動するようになっている。
【0036】
図7に示すように、ラック部材600は、前後方向に延びるように形成される部材であり、少なくとも4つ(複数)の欠歯ギヤ560に上下方向から見て重なる長さ(並列方向の一端側の欠歯ギヤ560から他端側の欠歯ギヤ560までの長さ)で形成されている。ラック部材600は、複数のプロセスカートリッジ50を挟み込むように左右に1つずつ配置され、カートリッジホルダ100の左右の側壁110の内側に前後方向(カートリッジホルダ100の移動方向)にスライド移動可能に支持されている。
【0037】
ラック部材600には、4つの欠歯ギヤ560にそれぞれ噛み合う4つのラック歯601が形成されており、これにより、ラック部材600の前後動に連動して各欠歯ギヤ560が回動するようになっている。また、図8(a)に示すように、ラック部材600の後端部には、上下に延びる長孔602が形成されており、この長孔602には、前述した作動レバー610の第1係合突起611が係合する。
【0038】
欠歯ギヤ560は、ラック部材600から取っ手部材520に動力を伝えるためのギヤ機構の一例としての円筒状のギヤであり、図6に示すように、プロセスカートリッジ50の左右の側壁515に形成される円筒状の支持筒517に回動可能に支持されることで、感光ドラム51の回転軸回りに回動可能となっている。具体的に、欠歯ギヤ560は、ラック部材600のラック歯601と噛み合う第1ギヤ部561と、取っ手部材520のアーム部522の下部に形成されるアーム側ギヤ部523と噛み合う第2ギヤ部562とを備えている。
【0039】
以上のように連動機構540が構成されることで、図8(a),(b)に示すように、カートリッジホルダ100を外側位置から内側位置へ移動させると、作動レバー610が図示時計回りに回動してラック部材600が後方に移動する。これにより、ラック部材600に噛み合う欠歯ギヤ560が図示時計回りに回動し、取っ手部材520が反時計回りに揺動して退避位置に位置する。そして、このように揺動する取っ手部材520がリンクアーム550を介してカバー部材530を押すことで、カバー部材530が反時計回りに移動して開位置に位置する。
【0040】
また、カートリッジホルダ100を内側位置から外側位置へ移動させると、前述した動作とは逆に各部材が動くことで、取っ手部材520が突出位置に位置するとともに、カバー部材530が閉位置に位置する。
【0041】
すなわち、連動機構540は、図8(a),(b)の順で示すように、カートリッジホルダ100の装置本体10に対する内側位置への移動に連動して、取っ手部材520を退避位置に変位させるとともに、カバー部材530を開位置に変位させる。また、連動機構540は、図8(b),(a)の順で示すように、カートリッジホルダ100の装置本体10に対する外側位置への移動に連動して、取っ手部材520を突出位置に変位させるとともに、カバー部材530を閉位置に変位させる。
【0042】
これにより、カートリッジホルダ100が内側位置に位置する場合には、取っ手部材520が退避位置に折り畳まれるので、装置本体10内におけるカートリッジホルダ100の収容スペースを小さくすることが可能となっている。
【0043】
また、連動機構540は、すべてのプロセスカートリッジ50が開口部13(装置本体10)よりも外側に位置するときに、当該外側に位置する各プロセスカートリッジの取っ手部材520およびカバー部材530を変位させるように構成されている。つまり、本実施形態においては、作動レバー610を作動させるための傾斜溝161の位置が開口部13の近傍に設けられるとともに、最も後方のプロセスカートリッジ50よりも後方に突出するラック部材600の後端部に作動レバー610が配置されることで、最も後方のプロセスカートリッジ50が装置本体10内に入る前に、作動レバー610およびラック部材600を作動させてプロセスカートリッジ50側の機構(欠歯ギヤ560等)を装置本体10の外側で作動させることが可能となっている。
【0044】
これにより、各プロセスカートリッジ50が開口部13から装置本体10内に入る前に取っ手部材520が退避位置に倒れるので、開口部13の大きさやカートリッジホルダ100を移動させるための装置本体10内のスペースを小さくすることが可能となっている。
【0045】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
カートリッジホルダ100を内側位置へ移動させると、取っ手部材520が退避位置に変位するので、取っ手部材が上方へ突出した状態のまま装置本体に収納される形態に比べ、装置本体10を小型化することができる。
【0046】
また、カートリッジホルダ100を外側位置へ移動させると、カバー部材が閉位置に移動して感光ドラム51の上部を覆うので、ユーザが取っ手部材520を持ってプロセスカートリッジ50を引き抜く際に、ユーザの指先が感光ドラム51の上部に当たって感光ドラム51が傷付くのを抑えることができる。
【0047】
各プロセスカートリッジ50が開口部13から装置本体10内に入る前に取っ手部材520が退避位置に倒れるので、装置本体10内に入った後で取っ手部材520が退避位置に倒れる形態に比べ、装置本体10を小型化することができる。
【0048】
カバー部材530が、感光ドラム51の周面に沿った断面視円弧状に形成されるとともに、感光ドラム51の回転軸を中心とする円弧状にスライドするので、円弧状でないカバーを回動させる構造に比べ、プロセスカートリッジ50を感光ドラム51の径方向に小型化することができる。
【0049】
1つのラック部材600にすべての欠歯ギヤ560を噛み合せたので、ラック部材を複数に分割する構造に比べ、構造を簡易化することができる。
【0050】
カバー部材530が、開位置において、折り畳まれたコ字状の取っ手部材520の内側の空間内に収容されるので、取っ手部材520の内側の無駄な空間を有効活用してコンパクト化を図ることができる。
【0051】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、複数のプロセスカートリッジ50の各取っ手部材520および各カバー部材530を1つのラック部材600によって同時に変位させるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、各取っ手部材および各カバー部材が変位するタイミングをずらすように連動機構を構成してもよい。
【0052】
なお、このようにタイミングをずらす場合には、カートリッジホルダの外側位置から内側位置への移動時において複数のカートリッジのうち内側位置側から順に取っ手部材およびカバー部材を変位させるように連動機構を構成するのが望ましい。具体的には、例えば図9〜図11に示すような連動機構700,800,900を採用することができる。なお、以下の説明において、前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0053】
図9に示すように、第1の変形例に係る連動機構700は、前記実施形態と同様の欠歯ギヤ560、取っ手部材520のアーム部522、リンクアーム550およびカバー部材530の突出ピン部532とを備えている。また、連動機構700は、前記実施形態とは異なり、前後に分割された第1ラック部材710および第2ラック部材720を備えるとともに、前記実施形態と同様の作動レバー610を各ラック部材710,720に対応して2つ備えている。
【0054】
第1ラック部材710は、後側の2つ(所定数)の欠歯ギヤ560にそれぞれ噛み合う2つのラック歯711を有している。第2ラック部材720は、前側の2つ(残り2つ)の欠歯ギヤ560にそれぞれ噛み合う2つのラック歯721を有している。そして、各ラック部材710,720の後端部には、前記実施形態と同様の長孔602が形成され、この長孔602に作動レバー610が係合するようになっている。
【0055】
この構造では、カートリッジホルダ100を外側位置から内側位置へ移動させると、まず、後側の作動レバー610が装置本体10の係合溝16(図8参照)に係合することで、後側の2つの取っ手部材520およびカバー部材530がそれぞれ退避位置および開位置に移動する。その位置からさらにカートリッジホルダ100を内側位置へ向けて移動させると、前側の作動レバー610が係合溝16に到達するまでの間、前側の2つのカバー部材530は閉位置のままとなる。
【0056】
そのため、この構造では、前記実施形態のようにすべてのカバー部材530が同時に開放される形態に比べ、前側の2つのカバー部材530を開口部13(図8参照)近傍まで閉じておくことができるので、前側の2つのプロセスカートリッジ50内に塵埃等が入るのを抑えることができる。
【0057】
図10に示す第2の変形例に係る連動機構800は、第1の変形例に係る第1ラック部材710および第2ラック部材720を一部変更したものである。具体的に、この形態に係る第1ラック部材810は、後側の3つ(所定数)の欠歯ギヤ560にそれぞれ噛み合う3つのラック歯811を有している。また、第2ラック部材820は、最も前側の1つ(残り1つ)の欠歯ギヤ560に噛み合う1つのラック歯821を有している。
【0058】
この連動機構800でも、第1の変形例と同様の効果を得ることができる。また、この連動機構800では、最も前側の取っ手部材520が他の3つの取っ手部材520とは別に独立して揺動する。そのため、例えば最も前側のプロセスカートリッジ50内に頻繁に使用するブラックのトナーを入れておけば、カートリッジホルダ100を開口部13から少し引き出すだけで、取っ手部材520を起こすことができ、ユーザがその状態で容易にブラックのプロセスカートリッジ50を交換することができる。
【0059】
図11に示す第3の変形例に係る連動機構900は、4つ(複数)のプロセスカートリッジ50に対応して、4つのラック部材910,920,930,940を設けた構造となっている。各ラック部材910,920,930,940は、各欠歯ギヤ560にそれぞれ噛み合うラック歯911,921,931,941を有している。また、この構造では、4つのラック部材910,920,930,940に対して、それぞれ作動レバー610を設けている。
【0060】
この連動機構900では、カートリッジホルダ100を外側位置から内側位置へ移動させる際に、各カバー部材530をそれぞれ開口部13(図8参照)近傍まで到達するまで閉じておくことができるので、各プロセスカートリッジ50内に塵埃等が入るのをより抑えることができる。また、例えば、前から2番目のプロセスカートリッジ50を交換したい場合には、前から2番目のプロセスカートリッジ50が装置本体10外に出るまでカートリッジホルダ100を引き出すだけで、2番目のプロセスカートリッジ50を交換することができるので、プロセスカートリッジ50の交換作業を容易にすることができる。
【0061】
前記実施形態では、カートリッジとしてプロセスカートリッジ50を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば感光ドラムを有するドラムカートリッジに対して現像ローラを有する現像カートリッジが着脱可能な構造においては、ドラムカートリッジに本発明を適用してもよいし、現像カートリッジに本発明を適用してもよい。なお、現像カートリッジに本発明を適用した場合には、現像ローラが現像剤保持体に相当する。
【0062】
前記実施形態では、ケーシング510の上部に形成した開口511がカバー部材530で完全に塞がれない構造を採用したが、本発明はこれに限定されず、開口をカバー部材で完全に覆うように構成してもよい。
【0063】
前記実施形態では、カートリッジホルダ100にも連動機構540の一部(ラック部材600等)を設けたが、本発明はこれに限定されず、カートリッジのみに連動機構を設けてもよい。具体的には、例えば、前記実施形態における連動機構540のうちラック部材600および作動レバー610を取り除いて連動機構を構成してもよい。この場合には、例えば、装置本体の一部に取っ手部材520の一部を当接させることで、取っ手部材520を退避位置に揺動させることができ、また、取っ手部材520を常時突出位置に付勢する付勢部材を設けることで取っ手部材520を突出位置に戻すことができる。
【0064】
連動機構は、前記実施形態や図9〜図11の形態に限定されず、例えば、前記実施形態における連動機構540のうち作動レバー610を取り除いて連動機構を構成してもよい。この場合、カートリッジホルダ100の装着方向を前後逆にして、ラック部材600の一部を装置本体10の一部に当接させることで取っ手部材520を退避位置に揺動させることができ、また、取っ手部材520を常時突出位置に付勢する付勢部材を設けることで取っ手部材520を突出位置に戻すことができる。
【0065】
前記実施形態では、ギヤ機構として1つの欠歯ギヤ560を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば複数のギヤや動力伝達ベルトなどによってギヤ機構を構成してもよい。
【0066】
前記実施形態では、リンク機構として1つのリンクアーム550を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば複数のリンクアームやカムなどによってリンク機構を構成してもよい。
【0067】
前記実施形態では、カラープリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 カラープリンタ
10 装置本体
51 感光ドラム
100 カートリッジホルダ
510 ケーシング
511 開口
520 取っ手部材
530 カバー部材
540 連動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
所定の並列方向に並列された複数のカートリッジと、
前記複数のカートリッジを一体的に支持するとともに、前記並列方向おいて、前記装置本体に対して外側に位置する外側位置と、装置本体に対して内側に位置する内側位置との間を移動可能に構成されたカートリッジホルダと、を備えた画像形成装置であって、
前記カートリッジは、
上方に開放された開口が形成されたケーシングと、
現像剤を保持し、前記開口を介して上方に露出する現像剤保持体と、
前記開口よりも上方に突出する突出位置と、当該突出位置から倒れた退避位置との間を変位可能に構成される取っ手部材と、
前記現像剤保持体の上部を覆う閉位置と、前記現像剤保持体の上部を開放させる開位置との間を変位可能に構成されたカバー部材と、を備え、
前記カートリッジおよび前記カートリッジホルダのうち少なくとも前記カートリッジには、
前記カートリッジホルダの前記装置本体に対する移動に連動して前記取っ手部材と前記カバー部材を変位させる連動機構が設けられ、
前記連動機構は、
前記カートリッジホルダの前記装置本体に対する前記内側位置への移動に連動して、前記取っ手部材を前記退避位置に変位させるとともに、前記カバー部材を前記開位置に変位させ、
前記カートリッジホルダの前記装置本体に対する前記外側位置への移動に連動して、前記取っ手部材を前記突出位置に変位させるとともに、前記カバー部材を前記閉位置に変位させるように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記装置本体は、前記カートリッジホルダを外へ引き出すための開口部を有し、
前記連動機構は、カートリッジが前記開口部よりも外側に位置するときに、当該外側に位置するカートリッジの取っ手部材およびカバー部材を変位させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記連動機構は、
前記カートリッジホルダの前記外側位置から前記内側位置への移動時において前記複数のカートリッジのうち前記内側位置側から順に前記取っ手部材および前記カバー部材を変位させることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記現像剤保持体の周面に沿った断面視円弧状に形成され、前記現像剤保持体の回転軸を中心とする円弧状にスライド可能に構成されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像剤保持体は、現像剤像を担持する感光ドラムであり、
前記感光ドラムの上方にベルトが配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記連動機構は、前記カートリッジおよび前記カートリッジホルダの両方に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記連動機構は、
前記カートリッジホルダに対して当該カートリッジホルダの移動方向に移動可能に設けられ、前記カートリッジホルダの前記内側位置への移動時に前記装置本体と係合することで一方向に移動し、前記カートリッジホルダの前記外側位置への移動時に前記装置本体と係合することで他方向に移動するラック部材と、
前記ラック部材から前記取っ手部材に動力を伝えるギヤ機構と、
前記取っ手部材から前記カバー部材に動力を伝えるリンク機構と、を備え、
前記ラック部材は、複数のギヤ機構のそれぞれに噛み合うように、前記移動方向に延びていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記連動機構は、
前記カートリッジホルダに対して当該カートリッジホルダの移動方向に移動可能に設けられ、前記カートリッジホルダの前記内側位置への移動時に前記装置本体と係合することで一方向に移動し、前記カートリッジホルダの前記外側位置への移動時に前記装置本体と係合することで他方向に移動するラック部材と、
前記ラック部材から前記取っ手部材に動力を伝えるギヤ機構と、
前記取っ手部材から前記カバー部材に動力を伝えるリンク機構と、を備え、
前記ラック部材は、複数のうち所定数のギヤ機構に噛み合う第1ラック部材と、複数のうち残りのギヤ機構に噛み合う第2ラック部材とで構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記連動機構は、
前記カートリッジホルダに対して当該カートリッジホルダの移動方向に移動可能に設けられ、前記カートリッジホルダの前記内側位置への移動時に前記装置本体と係合することで一方向に移動し、前記カートリッジホルダの前記外側位置への移動時に前記装置本体と係合することで他方向に移動するラック部材と、
前記ラック部材から前記取っ手部材に動力を伝えるギヤ機構と、
前記取っ手部材から前記カバー部材に動力を伝えるリンク機構と、を備え、
前記ラック部材が、複数のカートリッジに対応して複数設けられ、各ギヤ機構にそれぞれ噛み合うように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記取っ手部材は、前記開口に対向する把持部と、当該把持部の両端から前記開口側に向けて延びる一対のアーム部とを有し、
前記カバー部材が前記開位置において前記取っ手部材の前記把持部と前記一対のアーム部とで形成される空間内に入り込むように、前記リンク機構が構成されていることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−155266(P2012−155266A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16428(P2011−16428)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】