説明

画像形成装置

【課題】感光体の残存寿命を把握し、それに応じて感光体と中間転写体の周速の相対速度差を適切に制御する。
【解決手段】感光体1と、中間転写体8と、転写手段5と、を有する画像形成装置100は、感光体1の残存寿命を検知する検知手段120と、感光体1と中間転写体8の周速の相対速度差を制御する制御手段112と、を有し、検知手段120は、感光体1を用いて形成された画像の量が同じであっても感光体1の駆動時間と相関して異なった値となる感光体1の残存寿命を検知し、制御手段112は、検知手段120による感光体1の残存寿命の検知結果に応じて、感光体1と中間転写体8の周速の相対速度差を変化させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた複写機、プリンター(例えば、LEDプリンター、レーザービームプリンターなど)、ファクシミリ装置、ワードプロセッサーなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置として、中間転写方式の画像形成装置がある。中間転写方式の画像形成装置では、複数の像担持体として例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色用の4つの感光体が1列に配置される。そして、各感光体上に形成された各色のトナー像が中間転写体上に順次重ね合わせて一次転写され、その後中間転写体上の多色トナー像が記録用紙などの転写材(記録媒体)に一括して二次転写される。感光体としてはドラム型の感光ドラムが広く用いられ、中間転写体としては無端ベルト状の中間転写ベルトが広く用いられている。
【0003】
上記中間転写方式の画像形成装置において、感光体から中間転写体へのトナー像の一次転写性を向上させるために、各転写部(転写位置)における、感光体と中間転写体の周速に相対速度差を持たせる方式が提案されている。この方式によれば、各色トナー像の一次転写効率は向上する。又、この方式によれば、再転写、即ち、中間転写体に転写された1色目のトナー像が2色目以降の感光体に再び付着してしまう現象も同時に抑制される。
【0004】
しかしながら、感光体と中間転写体の周速に相対速度差を持たせて駆動すると、その相対速度差が大きいほど、感光体の表面にある感光層の磨耗量が増加する。感光体の表面にある感光層の膜厚(以下、「感光体膜厚」又は「感光ドラム膜厚」ともいう。)の低下が進むと、次第にその削れムラ(凹凸)が顕著となり、転写材上に形成された画像にはスジとなって現れる。これにより、感光体の寿命は感光体膜厚の磨耗量によって決められる。そのため、画像不良を出さないために、その磨耗量を正しく把握することが重要である。
【0005】
特許文献1には、感光体の使用初期にその表面にスリップ傷が発生することを防止するために、次のような構成が開示されている。即ち、画像形成装置に搭載されたカウンターによって画像形成枚数をカウントし、画像形成枚数の増加にしたがって、徐々に感光体と中間転写体の相対速度差を大きくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−128243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるように、画像形成枚数によって感光体と中間転写体の相対速度差の大きさを決める方法では、感光体膜厚の磨耗状態を必ずしも正確に把握することができない。なぜならば、画像形成には前処理、後処理などの動作があるため、プリントの1ジョブ中に何枚の画像形成をするかといったプリント条件によって感光体の回転走行距離が異なり、感光体膜厚の磨耗量はその条件によって変わるためである。その結果、特許文献1に開示されるような構成では、画像形成枚数の増加とともに感光体と中間転写体の周速の相対速度差を徐々に大きくすることで、想定以上に感光体の表面の感光層の磨耗が進み、前述のスジ画像のような画像不良が発生してしまうことがある。
【0008】
従って、本発明の目的は、感光体の残存寿命を把握し、それに応じて感光体と中間転写体の周速の相対速度差を適切に制御することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、回転可能な感光体と、前記感光体と接触しながら回転可能であり前記感光体からトナー像が転写される中間転写体と、前記感光体から前記中間転写体にトナー像を静電的に転写させる転写手段と、を有する画像形成装置において、前記感光体の残存寿命を検知する検知手段と、前記感光体と前記中間転写体の周速の相対速度差を制御する制御手段と、を有し、前記検知手段は、前記感光体を用いて形成された画像の量が同じであっても前記感光体の駆動時間と相関して異なった値となる前記感光体の残存寿命を検知し、前記制御手段は、前記検知手段による前記感光体の残存寿命の検知結果に応じて、前記感光体と前記中間転写体の周速の相対速度差を変化させることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感光体の残存寿命を把握し、それに応じて感光体と中間転写体の周速の相対速度差を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体構成を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る画像形成装置の概略制御態様を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施例に係る画像形成装置の感光ドラム寿命検知回路を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施例に係る画像形成装置における1枚間欠プリントを行った際の画像形成枚数と感光ドラム膜厚摩耗量との関係を示すグラフ図である。
【図5】本発明の一実施例に係る画像形成装置で1枚間欠プリントと連続プリントを行う場合における感光ドラムモーターと帯電バイアスの動作のシーケンス図である。
【図6】本発明の一実施例に係る画像形成装置における感光ドラムと中間転写ベルトの周速の相対速度差と感光ドラム膜厚摩耗量との関係を示すグラフ図である。
【図7】本発明の一実施例に係る画像形成装置における感光ドラムと中間転写ベルトの相対速度差と一次転写性との関係を示すグラフ図である。
【図8】本発明の一実施例に係る画像形成装置で4枚間欠プリントを行った際の画像形成枚数と感光ドラム膜厚摩耗量との関係を示すグラフ図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る画像形成装置で4枚間欠プリントを行った際の画像形成枚数と感光ドラム膜厚摩耗量との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0013】
実施例1
1.画像形成装置の基本的な構成及び動作
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置の主要部の模式的な断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真プロセスを利用してフルカラー画像の形成が可能な、中間転写方式を採用したタンデム型のレーザービームプリンターである。
【0014】
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部(ステーション)Pa、Pb、Pc、Pdを有する。本実施例では、各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdの構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために図中符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して、各色用のものに共通に適用されるものとして総括的に説明する。
【0015】
画像形成部Pには、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム1が設けられている。感光ドラム1は、図中矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って順に次の各手段が設けられている。先ず、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2である。次に、露光手段としての露光装置(レーザースキャナー)3である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ5である。次に、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーナ6である。本実施例では、感光ドラム1と、感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びドラムクリーナ6とは、プロセスカートリッジ7として一体的にカートリッジ化されて、画像形成装置100の装置本体に対して着脱可能とされている。各プロセスカートリッジ7a、7b、7c、7dは、画像形成装置100の装置本体内で、縦方向に並置される。
【0016】
又、各画像形成部Pa〜Pdの各感光ドラム1a〜1dに対向するように、中間転写体としての無端ベルト状の中間転写ベルト8が配置されている。中間転写ベルト8は、複数の支持部材としての駆動ローラ81、テンションローラ82及び二次転写対向ローラ83の3個のローラに張架されている。中間転写ベルト8は、駆動ローラ81が回転駆動されることによって図示矢印R2方向(時計回り)に回転(周回移動)する。各一次転写ローラ5は、中間転写ベルト8の内周面側において、中間転写ベルト8を挟んで各感光ドラム1と対向する位置に配置されている。一次転写ローラ5は、中間転写ベルト8を介して感光ドラム1に押圧され、感光ドラム1と中間転写ベルト8とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)N1を形成する。又、中間転写ベルト8の外周面側において、中間転写ベルト8を挟んで二次転写対向ローラ83と対向する位置には、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写ローラ9が配置されている。二次転写ローラ9は中間転写ベルト8を介して二次転写対向ローラ83に押圧され、中間転写ベルト8と二次転写ローラ9とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)N2を形成する。又、中間転写ベルト6の外周面側において、中間転写ベルト6を挟んで二次転写対向ローラ83と対向する位置には、更に、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーナ84が配置されている。
【0017】
更に、画像形成装置100は、転写材Sを収容するカセット10、カセット10から転写材Sを送り出す供給ローラ11、転写材Sの斜行補正や搬送タイミング制御のためのレジストローラ12、定着手段としての定着装置13などを有する。
【0018】
画像形成時には、回転する感光ドラム1の表面は、帯電ローラ2により所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電される。このとき、帯電ローラ2には、帯電電圧印加手段としての帯電電源(図示せず)から所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。帯電した感光ドラム1の表面には、露光装置3から画像情報に従うレーザ光Lが照射される。これにより、感光ドラム1上に静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像装置4によりトナー像として現像される。本実施例では、現像装置4は、反転現像方式にて、感光ドラム1上の静電潜像の現像を行う。即ち、現像装置4は、一様に帯電された後に露光されることによって電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(明部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性に帯電したトナーを付着させることで現像を行う。
【0019】
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部N1において、一次転写ローラ5の作用により、中間転写ベルト8上に一次転写される。このとき、一次転写ローラ5には、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性(本実施例では正極性)の一次転写電圧(一次転写バイアス)が、一次転写電圧印加手段としての一次転写電源(図示せず)から印加される。
【0020】
例えば、フルカラー画像の形成時には、以上のような帯電、露光、現像、一次転写工程が第1、第2、第3、第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdにおいてこの順番で順次に行われる。これにより、中間転写ベルト8上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたフルカラー画像用の多重トナー像が形成される。
【0021】
中間転写ベルト8上に形成されたトナー像は、二次転写部N2において、二次転写ローラ9の作用により、転写材S上に二次転写される。このとき、二次転写ローラ9には、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性(本実施例では正極性)の二次転写電圧(二次転写バイアス)が、二次転写電圧印加手段としての二次転写電源(図示せず)から印加される。
【0022】
転写材Sは、中間転写ベルト8上のトナー像が二次転写部N2に搬送されるタイミングと同期するようにして、二次転写部N2まで搬送される。即ち、カセット10に収容されている転写材Sが、供給ローラ11により送り出された後、レジストローラ12により二次転写部N2に所定のタイミングで供給される。
【0023】
二次転写部N2でトナー像が転写された転写材Sは、定着装置13に搬送される。定着装置13は、熱源を有する加熱ローラと、加熱ローラに圧接される加圧ローラとを有し、これらローラ対の接触部(定着ニップ)で転写材Sを挟持して搬送することで、未定着トナー像を担持した転写材Sを加熱及び加圧する。これにより、転写材S上のトナーが溶融し、その後固着することで、転写材S上に定着される。トナー像が定着された転写材Sは、画像形成装置100の外部に排出される。
【0024】
又、一次転写工程において中間転写ベルト8に転写されずに感光ドラム1上に残留したトナー(転写残トナー)は、ドラムクリーナ6により感光ドラム1上から除去されて回収される。ドラムクリーナ6は、感光ドラム1の表面に当接する板状の弾性体であるクリーニングブレード62(図2)と、感光ドラム1の表面から除去されたトナーを回収する回収容器61(図2)とを有する。そして、クリーニングブレード62によって回転する感光ドラム1の表面からトナーを掻き取り、回収容器61に回収する。又、二次転写工程において転写材Sに転写されずに中間転写ベルト8上に残留したトナー(転写残トナー)は、ベルトクリーナ84により中間転写ベルト8上から除去されて回収される。ベルトクリーナ84は、中間転写ベルト8の表面に当接する板状の弾性体であるクリーニングブレードと、中間転写ベルト8の表面から除去されたトナーを回収する回収容器とを有する。そして、クリーニングブレードによって回転する中間転写ベルト8の表面からトナーを掻き取り、回収容器に回収する。
【0025】
感光ドラム1は、繰り返し使用される回転可能なドラム型の電子写真感光体である。各感光ドラム1は、それぞれに接続された駆動手段としてのモーターである感光ドラムモーター111(図2)の作用により回転駆動される。
【0026】
露光装置3は、帯電処理された感光ドラム1の表面を、画像情報に基づいて露光する。露光装置3は、レーザダイオード、ポリゴンスキャナ、レンズ群などを有して構成される。
【0027】
現像装置4は、感光ドラム1上の静電潜像へ現像剤としてのトナーを付着させる。現像装置4は、トナーを収容するトナー容器43(図2)と、トナーを担持し搬送する現像剤担持体としての現像ローラ41(図2)、及び現像ローラ41上のトナー量を規制する現像剤規制部材としての現像ブレード2(図2)を有する。現像ローラ41は、電気抵抗が調整された弾性ゴムで構成されている。現像ローラ41は、少なくとも現像動作時には感光ドラム1に対して接触するように感光ドラム1に対向して配置されている。現像ローラ41は、感光ドラム1との接触部(現像部)において感光ドラム1と現像ローラ41の表面の移動方向が同方向(順方向)になるように回転駆動される。現像ブレード42が所定の圧力で現像ローラ41に押圧されることで、同一極性に摩擦帯電された状態で現像ローラ41上にトナーが担持される。又、現像動作時には、現像ローラ41には、所定の極性(本実施例では負極性)の現像電圧(現像バイアス)が印加される。これにより、現像ローラ41からトナーが感光ドラム1上の静電潜像に転移することで、感光ドラム1上の静電潜像の現像が行われる。
【0028】
一次転写ローラ5は、芯金に体積低効率が104〜107Ω・cmに電気抵抗が調整された発砲ゴムを被覆させた発砲ゴムローラである。
【0029】
中間転写ベルト8は、各感光ドラム1と接触しながら、駆動ローラ81の作用で回転駆動される。中間転写ベルト8は、106〜1012Ωcmの体積固有抵抗率を持たせた、厚さ50〜150μm程度の無端のフィルム状部材で構成されている。
【0030】
2次転写ローラ9は、芯金に106〜1010Ωに電気抵抗が調整された発砲ゴムを被覆させた発砲ゴムローラである。
【0031】
2.感光ドラム寿命検知
図2を参照して、本実施例の画像形成装置100は、後述するようにして検知された各感光ドラム1の寿命を記憶する記憶手段130を有している。この記憶手段130は、EEPROMなどの不揮発性の読み書き可能なメモリであり、各プロセスカートリッジ7の枠体(本実施例ではドラムクリーナ6の回収容器61)の側面にそれぞれ設けられている。この枠体を含むプロセスカートリッジ7が画像形成装置100の装置本体に装着された箇所において、各記憶手段130は、コネクタによって電気的に画像形成装置100と接続される。そして、この箇所で、記憶手段130は、画像形成装置100に設けられた検知手段としての感光ドラム寿命検知回路120と情報のやり取りが可能である。つまり、各記憶手段130の情報は、感光ドラム寿命検知回路120の感光ドラム寿命制御部126(図3)により、読み書きが可能な構成となっている。又、感光ドラム寿命検知回路120は制御手段としてのモーター制御部112と情報のやり取りが可能であり、その情報に基づいて感光ドラムモーター111の周速(周速度)を変化させることができる。モーター制御部112は、詳しくは後述するように、モーター制御記憶部113の情報を用いて、感光ドラム111の周速を変化させて、感光ドラム1と中間転写ベルト6の周速の相対速度差を変化させることができる。
【0032】
本実施例における感光ドラム1の寿命検知方法を説明する。本実施例では、感光ドラム1の寿命は、感光ドラム1の駆動手段の駆動時間と帯電バイアス印加時間とから感光ドラム膜厚の磨耗量を予測し、その積算値によって検知する。本実施例の画像形成装置100では、感光ドラム膜厚の積算磨耗量S(μm)を、次の式で表す。
S=α×Pt+β×Dt ・・・ (式1)
【0033】
ここで、Ptは帯電バイアス印加時間の積算値、Dtは帯電バイアス印加時間を除いた感光ドラム1の回転駆動時間の積算値、α、βは装置設計や実験などによって決まる適当な定数である。式1は、感光ドラム1の表面の感光層は、感光ドラム1に帯電ローラ2やクリーニングブレード62といった当接部材が当接するために、又中間転写ベルト8と繰り返し接触するために磨耗することを表している。又、感光ドラム1の表面の感光層は、帯電バイアスの印加による電気的な刺激により、高分子材料の分子結合に欠陥が生じる。上記式1は、このことを加味しており、単に感光ドラム1が回転駆動するよりも磨耗が増すため、α>βである。尚、本実施例の画像形成装置100では、帯電バイアス印加中、常に感光ドラム1は回転駆動されている。
【0034】
尚、上述の実施例では、感光ドラム膜厚の積算摩耗量を、感光ドラムの駆動時間と感光ドラムに電気的に作用する手段の駆動時間としての帯電ローラに印加する帯電バイアスの印加時間を測定して求めたが、所望により感光ドラムの駆動時間のみから求めてもよい。即ち、検知手段120は、少なくとも感光体の駆動時間又は感光体の駆動時間と感光体に電気的に作用する手段の駆動時間の測定結果から感光体の表層の磨耗量と相関する情報を算出し、この磨耗量と相関する情報に基づいて感光体の残存寿命を検知できる。
【0035】
上記式1で計算される感光ドラム膜厚の積算磨耗量Sを、前述した記憶手段130(不揮発性のメモリ)に逐次更新して記憶していき、積算磨耗量Sが予め定めておいた寿命値SO超えたときに、感光ドラム1が寿命に至ったことを報知する。又、感光ドラム1の残存寿命(以下「感光ドラム残存寿命」という。)は、(1−S/SO)×100によって算出される百分率で表す。
【0036】
図3に示すように、感光ドラム寿命検知回路120は、帯電ローラ2に帯電バイアスが印加された時間である帯電バイアス印加時間を検出する帯電バイアス検知部121を有する。又、感光ドラム寿命検知回路120は、感光ドラム1の駆動時間を検知する感光ドラム駆動検知部122を有する。又、感光ドラム寿命検知回路120は、所定の演算を行うことによって上記式1より求めた感光ドラム膜厚の磨耗量を感光ドラム残存寿命%に換算する感光ドラム寿命演算部123を有する。又、感光ドラム寿命検知回路120は、感光ドラム1の寿命を画像形成装置100の装置本体に設けられた表示部(図示せず)に表示させる表示制御部124を有する。更に、感光ドラム寿命検知回路120は、感光ドラム1を用いて形成した画像の量を計数する計数手段として、画像形成枚数をカウントするカウンター125を有する。又、感光ドラム寿命検知回路120は、感光ドラム寿命演算部123、カウンター125及びプロセスカートリッジ7の記憶手段130と情報のやり取りを行う感光ドラム寿命制御部126とを有して構成される。
【0037】
次に、感光ドラム残存寿命0%となる積算磨耗量Sの寿命値SOについて説明する。本実施例では、上記寿命値SOを、本実施例の画像形成装置100を用いて、繰り返しプリントを重ねる耐久試験を行うことで決定した。試験の条件は常温常湿環境とした。又、プリント条件は、1枚間欠プリントとし、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差は0%に設定した。ここで、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差は、感光ドラム1の周速をVd、中間転写ベルト8の周速をViとしたとき、{(Vi−Vd)/Vd}×100で算出される百分率(周速比)で表す。
【0038】
尚、n枚間欠プリントとは、プリントの1ジョブにおいて、n枚の画像形成を行うプリント条件のことである。又、プリントの1ジョブとは、画像形成装置がプリント要求を受けた後、プリント動作を開始し、プリント動作を終了するまでの一連の動作サイクルのことである。
【0039】
図4のグラフの実線は、上記耐久試験を行った際の結果である。横軸は画像形成枚数、縦軸は感光ドラム膜厚積算磨耗量Sである。前述の式1より、帯電バイアス印加時間と感光ドラム駆動時間は画像形成と共に増加するので、感光ドラム膜厚積算磨耗量Sは画像形成枚数の増加とともに増加する。
【0040】
繰り返しプリントを重ねて、感光ドラム膜厚の低下が進むと、次第に表面の削れムラ(凹凸)が顕著となり、転写材S上に形成された画像にはスジとなって現れる。本実施例では、このようなスジ画像不良が発生しないことを保証する最大の感光ドラム膜厚積算磨耗量Sを寿命値SOと設定する。又、その時の画像形成枚数をNO(寿命値対応画像形成枚数)とする。
【0041】
ここで、図5を参照して、1ジョブ中にプリントする画像枚数によって、感光ドラム膜厚磨耗量が変わることについて説明する。図5は、本実施例の画像形成装置100を用いて1枚間欠プリントの条件で2枚の画像形成を行う場合と、連続プリントの条件で2枚の画像形成を行う場合との、感光ドラムモーター111の動作状態と帯電バイアスの印加状態についてのシーケンス図である。図5に示すように、2枚の画像を1枚間欠プリントでプリントする場合、プリント前の前回転と、プリント後の後回転を行うため、2枚の画像を連続してプリントする場合よりも、長く感光ドラム1が回転駆動される。n枚の画像を1枚間欠プリントの条件と連続プリントの条件でプリントする場合も同様のことが言える。
【0042】
尚、前回転とは、画像形成装置がプリント要求を受けた後、実際に印刷物として出力する画像情報に従うトナー像の形成(印字動作)の前に、感光ドラムを回転させることを含む各種要素の動作を行わせて、印字動作の準備を行う前処理動作である。又、後回転とは、実際に印刷物として出力する画像情報に従うトナー像を転写材に転写した後も、感光ドラムを回転させることを含む各種要素の動作を行わせて、印字動作後の整理(準備)を行う後処理動作である。
【0043】
そのため、ミスプリントなどの例外的な事情を考慮しない場合、プリント条件は1枚間欠プリントとした場合に、n枚の画像形成を行う際の感光ドラム1の駆動時間が最も長くなる。前述の式1の関係から、感光ドラム1の駆動時間が長いほど、感光ドラム膜厚の磨耗量が増加するので、1枚間欠のプリント条件は最も感光ドラム膜厚の磨耗量の大きい条件である。
【0044】
尚、連続プリントとは、1枚目の画像と続く2枚目の画像との間で画像形成装置の動作を終了させないで、画像間にある距離を空けてプリント動作を繰り返す条件のことを言う。
【0045】
ユーザーが行うプリント条件においては、1枚間欠プリント、又は複数枚の連続プリントの組合せとなる。
【0046】
次に、感光ドラム膜厚の磨耗量と感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に設ける相対速度差の大きさの関係について説明する。図6は、本実施例の画像形成装置100を用いて、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差を変化させ、それぞれの場合について感光ドラム1が新品の状態からNO枚の画像形成を行った際の感光ドラム膜厚の磨耗量を比較した実験結果である。図6には、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差を0%、0.25%、1%、1.5%に変化させた場合の結果を示す。感光ドラム膜厚の磨耗量は、感光ドラム1が新品の状態の感光ドラム膜厚とNO枚画像形成後の感光ドラム膜厚を渦電流膜厚計により測定し、その差分を計算することで求めた。縦軸は感光ドラム膜厚の磨耗量の比を表し、横軸は感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に設定した相対速度差を表す。感光ドラム膜厚の摩耗量の比は、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に設定する相対速度差を0%にした際の感光ドラム膜厚の磨耗量を1として表す。図6の結果のように、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に設ける相対速度差が大きくなるほど感光ドラム膜厚の磨耗量が大きくなる。
【0047】
次に、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差の大きさと一次転写性の関係について説明する。図7は、本実施例の画像形成装置100を用いて、感光ドラム1と中間転写ベルト8の相対速度差を変化させ、それぞれの場合について、次の測定を行った。第1に、ブルーベタ画像をプリントした際のシアン用の第3の画像形成部Pcの感光ドラム1c上に残ったシアン転写残トナーをテープで採取し、そのトナーの濃度を反射濃度計で測定した。ブルーベタ画像は、マゼンタの画像濃度が100%の条件で中間転写ベルト8にマゼンタトナーを転写した上に、シアンの画像濃度が100%の条件でシアントナーを重ねて形成した画像である。第2に、レッドベタ画像をプリントした際のシアン用の第3の画像形成部Pcの感光ドラム1c上に残ったマゼンタ再転写トナーをテープで採取し、そのトナーの濃度を反射濃度計で測定した。レッドベタ画像は、イエローの画像濃度が100%の条件で中間転写ベルト8にイエロートナーを転写した上に、マゼンタの画像濃度が100%の条件でマゼンタトナーを重ねて形成した画像である。
【0048】
尚、前述したように、各画像形成部Pの感光ドラム1から中間転写ベルト8に各色のトナー像を順次重ねて一次転写を行う際、色順はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順である。又、相対速度差の符号は、中間転写ベルト8の周速が、感光ドラム1の周速に対して速い場合を+としている。又、感光ドラム残存寿命が80%のプロセスカートリッジ7を用いた場合と、感光ドラム残存寿命が10%のプロセスカートリッジ7を用いた場合の結果を示している。
【0049】
図7のグラフは、感光ドラム1上のトナー濃度(縦軸)の値が小さいほど、転写効率が良く、又再転写の程度が良いことを表している。図7の結果より、感光ドラム1が新しい場合には、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差が0%でも、一次転写性が十分に良いことが分かる。これは、感光ドラム1の表面が非常に平滑であるために、トナーの感光ドラムに対する接触面積が小さく、従ってトナーの感光ドラム1に対する付着力が小さいためである。しかし、感光ドラム1が感光ドラム残存寿命の後半まで使用されている場合には、一次転写性が低下している。これは、接触している部材との摺擦による磨耗により表面が荒れているために、トナーの感光ドラム1に対する接触面積が大きく、従ってトナーの感光ドラムに対する付着力が増加するためである。その結果、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差が0%では、感光ドラム1上のトナー濃度(縦軸)の値が大きく、一次転写性が十分でない。
【0050】
そこで、一次転写時に感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に相対速度差を設けると、一次転写部N1で物理的な剥ぎ取り力が働くため、上述のような感光ドラム1に対する付着力の影響が小さくなる。その結果として、一次転写電界に対して忠実にトナーが移動し易くなるために、一次転写性が改善されるものと考えられる。
【0051】
これらの結果から、本実施例の画像形成装置100では、感光ドラム残存寿命100%から0%までを通じて、良好な一次転写性を維持させるために、概略、次のように制御する。即ち、感光ドラム残存寿命の前半では、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に相対速度差を設けず、感光ドラム残存寿命後半に、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に相対速度差を設ける。
【0052】
3.プロセス条件の制御
本実施例の目的の一つは、感光体の表面の磨耗量をより正確に把握し、それにより感光体の残存寿命を把握し、それに応じて感光体と中間転写体の周速の相対速度差を適切に制御することである。又、それにより、感光体の摩耗による画像スジの発生を抑制しつつ、感光体から中間転写体へのトナー像の一次転写性を向上させることも本実施例の目的の一つである。
【0053】
本実施例では、画像形成装置100は、回転可能な感光体1と、感光体1と接触しながら回転可能であり感光体1からトナー像が転写される中間転写体8と、感光体1から中間転写体8にトナー像を静電的に転写させる転写手段5と、を有する。又、本実施例では画像形成装置100は更に、感光体1の残存寿命を検知する検知手段120と、感光体1と中間転写体8の周速の相対速度差を制御する制御手段112と、を有する。検知手段120は、感光体1を用いて形成された画像の量(画像形成枚数)が同じであっても感光体1の駆動時間と相関して異なった値となる感光体1の残存寿命を検知する。そして、制御手段112は、検知手段120による感光体1の残存寿命の検知結果に応じて、感光体1と中間転写体8の周速の相対速度差を変化させる。以下、更に詳しく説明する。
【0054】
図8を参照して、本実施例の画像形成装置100を感光ドラム残存寿命が100%から0%に到達するまで画像形成を繰り返す際の、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に設ける相対速度差の制御を説明する。
【0055】
図8中、実線のプリント条件は1枚間欠プリント、破線のプリント条件は4枚間欠プリントである。図8のグラフの縦軸は感光ドラム残存寿命であり、前述の式1の関係から感光ドラム膜厚の磨耗量と等価である。又、図8の横軸は画像形成枚数である。
【0056】
本実施例では、感光ドラム残存寿命が0%に到達する寿命値SOを決める際の条件で画像形成を繰り返した場合(図8の実線)において、感光ドラム残存寿命が20%(閾値)となる時点の画像形成枚数をNLとする。感光ドラム残存寿命が0%に到達する寿命値SOを決める際の条件では、前述のように感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差が0%、プリント条件は1枚間欠プリントである。そして、当該プロセスカートリッジ7の画像形成枚数がNLに到達した時点を、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差の変更する条件とした。
【0057】
NLを決定する際のプリント条件を上述のようにすることで、当該プロセスカートリッジ7の画像形成枚数がNLに到達した時点で感光ドラム残存寿命は少なくとも20%以上である。なぜならば、1枚間欠プリントで画像形成をする場合が最も感光ドラム膜厚の磨耗量が大きいためである。このように、画像形成枚数が同じである場合に感光ドラム残存寿命が最も少なくなる所定の条件で画像形成を行って、その値よりも感光ドラム残存寿命が少ない場合には多い場合よりも相対速度差を大きくするように、感光ドラム残存寿命の所定の閾値を設定する。これにより、制御手段112は、少なくとも感光体1の残存寿命が所定の閾値より少ない場合に、該閾値よりも多い場合よりも感光体1と中間転写体8の周速の相対速度差が大きくなるように制御することとなる。
【0058】
4枚間欠プリントで画像形成を繰り返した場合について説明する。先ず、画像形成枚数が0〜NL枚の間については、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差は0%とする。画像形成枚数に対する感光ドラム残存寿命(感光ドラム膜厚の磨耗量)は、図8の破線Aのように推移する。
【0059】
次に、画像形成枚数がNL枚に到達した時点(図8中の黒点)の動作について説明する。感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に相対速度差を設けると、図6の結果のように、画像形成枚数に対する感光ドラム膜厚の磨耗量が増加する。そのため、図8グラフの破線Aの推移は傾きが増加する。
【0060】
感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に相対速度差を設けた上で、感光ドラム残存寿命が0%に到達するまでにプリントできる画像形成枚数がNO枚以下にならないためには、次のようにすればよい。即ち、最も感光ドラム膜厚の磨耗量が大きい条件である、1枚間欠プリントの条件を仮定して、NL枚以降の画像形成を行った場合に、感光ドラム残存寿命が図8中の黒点を始点とする矢印のような傾きを持つように推移すればよい。図8中の黒点を始点とする矢印の傾きの大きさから、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差の大きさを決定する。より詳細には、図8の実線の傾きSO/NOと、図6の感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差とドラム膜厚の磨耗量の比の実験結果を比較することによって、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差の大きさを決定する。図8の実線の傾きSO/NOは、前述の感光ドラム残存寿命が0%に到達する寿命値SOを決める際の条件で画像形成を繰り返した場合の画像形成枚数に対する感光ドラム残存寿命の傾きである。感光ドラム残存寿命が0%に到達する寿命値SOを決める際の条件では、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差が0%、プリント条件は1枚間欠プリントである。例えば、図8中の黒点を始点とする矢印の傾き(1枚間欠の条件でプリントを行った場合)は、傾きSO/NOの1.5倍程度であったので、図6の結果より、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差の大きさは1.0%程度となる。
【0061】
上述の4枚間欠プリントの例のような方法で、その他の間欠プリントについても、画像形成枚数がNL枚に到達した時点の感光ドラム残存寿命に対して、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に設ける相対速度差の大きさを予め求めておく。図2をも参照して、これらのNL枚に到達した時点の感光ドラム残存寿命に応じた相対速度差の設定は、表1に示すようなテーブル(相対速度設定テーブル)として、モーター制御記憶部113に記憶しておく。そして、画像形成枚数がNL枚に到達した時点で、感光ドラム寿命検知回路120の感光ドラム寿命制御部126が、前述の式1による感光ドラム残存寿命を計算する。そして、この計算結果から、モーター制御部112は、対応する相対速度差の大きさをモーター制御記憶部113から読み出し、感光ドラムモーター111の周速を設定する。又、同時に、感光ドラム寿命検知回路120の感光ドラム寿命制御部126は、上述のようにしてモーター制御部112が決定した相対速度差の大きさに従って、感光ドラム寿命演算部123において用いる前述の式1の感光ドラム駆動時間に係る係数を変更する。これにより、感光ドラム寿命検知回路120による感光ドラム膜厚の磨耗量の計算結果の整合性を保つようにする。
【0062】
尚、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差は大きくしすぎると、感光ドラム1と中間転写ベルト8のニップ部で画像のスリップが発生しやすくなるといった弊害が生じるおそれがある。そのため、必要以上には大きくせず、上限としては3%程度とする。
【0063】
【表1】

【0064】
図8に戻り、画像形成枚数がNL枚以降においては、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に上述のように設定した相対速度差をつけて画像形成動作を行う。4枚間欠プリントで画像形成を行っているため、感光ドラム残存寿命は1枚間欠プリントを条件としている図8中の黒点を始点とする矢印よりも小さな傾きを持って破線Bのように推移する。その後、感光ドラム膜厚の磨耗量の積算値がSOになると感光ドラム残存寿命0%に到達する。
【0065】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、感光体1を用いて形成された画像の量(画像形成枚数)を計数する計数手段125を有する。そして、制御手段112は、計数手段125により計数された画像の量が所定の量になった際に、検知手段120により検知された感光体1の残存寿命が多いほど感光体1と中間転写体8の周速の相対速度差を大きくするように変化させる。
【0066】
表2は、本実施例の画像形成装置100で画像形成を繰り返した際、感光ドラム残存寿命が100%から0%に到達するまでの、画像スジ(感光ドラム膜厚の低下により発生するスジ)の発生状況と一次転写性のレベルを評価した結果である。プリント条件は、2枚間欠プリントと4枚間欠プリントの2条件とした。本実施例の画像形成装置100では、2枚間欠プリントで画像形成を繰り返した場合、NL枚以降の感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差は0.5%となる。又、4枚間欠プリントの条件で画像形成を繰り返した場合、NL枚以降の感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差は1.0%となる。
【0067】
又、表3は、比較例1として、本実施例と同一基本構成の画像形成装置を用いて、感光ドラム残存寿命が100%から0%に到達するまで画像形成を繰り返し、本実施例と同様に画像スジの発生状況と一次転写性のレベルを評価した結果である。但し、比較例1では、画像形成を繰り返す間、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差を設けない。プリント条件は、2枚間欠プリントと4枚間欠プリントの2条件とした。
【0068】
又、表4は、比較例2として、本実施例と同一基本構成の画像形成装置を用いて、感光ドラム残存寿命が100%から0%に到達するまで画像形成を繰り返し、本実施例と同様に画像スジの発生状況と一次転写性のレベルを評価した結果である。但し、比較例2では、2枚間欠プリントと4枚間欠プリントのプリント条件で、画像形成枚数がNL枚に到達した時点で、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差を固定値に設定した。即ち、それぞれのプリント条件で画像形成を繰り返し、画像形成枚数がNL枚に到達した時点で、その時点での感光ドラム残存寿命にかかわらず、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差を次の一定の値にする。その固定値としては、2枚間欠プリントの場合は0.25%と1.0%、4枚間欠プリントの場合は0.25%と0.5%を用いて評価を行った。
【0069】
画像スジは、各色のハーフトーン画像をプリントし、画像を目視で見ることによって評価した。評価基準は、発生が無い場合は○、発生があっても目立たない場合は△、発生があり目立つ場合は×とした。又、一次転写性は、前述したブルーベタ画像とレッドベタ画像をプリントした際の感光ドラム1上に残る転写残トナーと再転写トナーの濃度を反射濃度計で測定する実験を行って評価した。評価基準は、転写残トナーと再転写トナーの反射濃度の合計が0.15以上を×、0.12以上0.15未満を△、0.12未満を○と評価した。又、評価は、感光ドラム寿命が100%、60%、40%、20%、10%、0%の時点で実施した。又、画像スジ及び一次転写性の両者とも、△を許容限度のレベルとした。
【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
表2、表3及び表4の結果から分かるように、本実施例の画像形成装置100で2枚間欠プリントの条件で画像形成を繰り返した場合、比較例1の2枚間欠プリント時と比較して、一次転写性が良化している。又、感光ドラム残存寿命が0%に到達するまでに画像スジが発生しない。一方、比較例2では、2枚間欠プリントの条件で画像形成を繰り返した場合、相対速度差が0.25%では一次転写性が十分でない。そこで、比較例2において相対速度差を1.0%と大きくすると、一次転写性は改善される。しかし、一方で感光ドラム膜厚の磨耗量が増加するため、1%の相対速度差では感光ドラム寿命到達の表示がされる前に画像スジが発生してしまう。
【0074】
次に、本実施例の画像形成装置100で4枚間欠プリントの条件で画像形成を繰り返した場合、比較例1の4枚間欠プリント時と比較して、一次転写性が良化している。又、画像スジの発生はない。一方、比較例2では、4枚間欠プリントの条件で画像形成を繰り返した場合に、相対速度差を0.25%から0.5%と大きくすることによって、一次転写性が良化する。但し、本実施例の画像形成装置100のように相対速度差を1.0%とした方がより一次転写性が良化する。そのため、4枚間欠プリントの条件では相対速度差を1.0%とすることが好ましいことが分かる。しかしながら、前述のように、2枚間欠プリントの場合では、相対速度差を1.0%とすると、画像スジが発生してしまう。そのため、一律に相対速度差を1.0%と設定することは、プリント条件を含めると最適ではないことが分かる。
【0075】
このように、NL枚以前までのプリント条件によってNL枚以降に設ける最適な相対速度差が異なるため、一律に相対速度差を決定する方法では、一次転写性と画像スジに対して最適な相対速度差を判断して選択することができない。これに対して、本実施例の画像形成装置100は、NL枚時点の感光ドラム残存寿命から一次転写性と画像スジに対して最適な相対速度差を判断し選択することができる。
【0076】
尚、上述の比較実験では、2枚間欠プリントと4枚間欠プリントのように1ジョブ中の画像形成枚数は一定の枚数とした。これは、1ジョブ中の画像形成枚数が平均2枚、4枚になる場合と同意である。画像形成装置の使用条件は使用しているユーザーによって異なり、ユーザー自身の中で著しく変わることはまれである。そのため本実施例では、例えば、ユーザーの使用条件が平均して2枚間欠、4枚間欠プリントとなることを仮定して、比較実験を行った。
【0077】
以上のように、本実施例によれば、感光ドラム1の表面の感光層の磨耗量に応じて、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に相対速度差を変化させることができる。そのため、感光ドラム膜厚の低下による画像不良が発生することなく、感光ドラム1の表面の感光層の摩耗による画像スジの発生を抑制しつつ、感光ドラム1から中間転写ベルト8へのトナー像の一次転写性を向上させることができる。このように、本実施例によれば、感光体の表面の磨耗量をより正確に把握し、それにより感光体の残存寿命を把握し、それに応じて感光体と中間転写体の周速の相対速度差を適切に制御することができる。又、それにより、感光体の摩耗による画像スジの発生を抑制しつつ、感光体から中間転写体へのトナー像の一次転写性を向上させることができる。
【0078】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0079】
本実施例では感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に設ける相対速度差の大きさを切り替える条件を複数設定する点で実施例1と異なる。
【0080】
図9を参照して、本実施例の画像形成装置100を感光ドラム残存寿命が100%から0%に到達するまで画像形成を繰り返す際の、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に設ける相対速度差の制御を説明する。
【0081】
図9中、実線のプリント条件は1枚間欠プリント、破線のプリント条件は4枚間欠プリントである。図9グラフの縦軸は感光ドラム残存寿命であり、前述の式1の関係から感光ドラム膜厚の磨耗量と等価である。又、図9の横軸は画像形成枚数である。
【0082】
本実施例では、感光ドラム残存寿命が少なくとも40%以下の条件では感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に相対速度差を設けられるようにする。そのため、実施例1と同様に、感光ドラム残存寿命が0%に到達する寿命値SOを決める際の条件で画像形成を繰り返した場合(図9の実線)に、感光ドラム残存寿命が40%となる時点の画像形成枚数をNLとする。感光ドラム残存寿命が0%に到達する寿命値SOを決める際の条件では、前述のように感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差が0%、プリント条件は1枚間欠プリントである。そして、当該プロセスカートリッジ7の画像形成枚数がNLに到達した時点を、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差の変更条件とした。
【0083】
又、本実施例では、感光ドラム残存寿命が20%以下の条件で再度、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に相対速度差を変更する。そのために、上記同様にして、感光ドラム残存寿命が0%に到達する寿命値SOを決める際の条件で画像形成を繰り返した場合(図9の実線)に、感光ドラム残存寿命が20%となる時点の画像形成枚数をNL’とする。感光ドラム残存寿命が0%に到達する寿命値SOを決める際の条件では、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差が0%、プリント条件は1枚間欠プリントである。そして、当該プロセスカートリッジ7の画像形成枚数がNL’に到達した時点を、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差の変更条件とした。
【0084】
これは、一次転写性は感光ドラム寿命の後半で徐々に低下していくため、感光ドラム残存寿命の早い段階(感光ドラム残存寿命40%)で感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差を設けて一次転写性を改善させることを意図したものである。又、NL〜NL’枚の画像形成において、連続プリントでプリントを行う枚数が多く、1枚間欠プリントの条件に対して感光ドラム膜厚の磨耗量が小さかった場合には、再度前記相対速度差を大きくすることができる。そのため、画像形成枚数がNL’枚に到達した時点に感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差の切り替えタイミングを設定した。
【0085】
尚、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差の設定は、感光ドラム残存寿命が100%から0%までにプリントできる画像形成枚数がNO枚以下にならないことを前提条件としている。
【0086】
4枚間欠プリントで画像形成を繰り返した場合について説明する。先ず、画像形成枚数が0〜NL枚の間については、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速の相対速度差は0%とする。画像形成枚数に対する感光ドラム残存寿命(感光ドラム膜厚の磨耗量)は、図9の破線Aのように推移する。
【0087】
次に、画像形成枚数がNL枚に到達した時点(図9中の黒点a)の動作について説明する。本実施例の画像形成装置100では、実施例1の画像形成装置100と同様の方法で、画像形成枚数がNL枚に到達した時点の感光ドラム膜厚の磨耗量に対して、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に設ける相対速度差の大きさを予め求めておく。図2をも参照して、このNL枚に到達した時点の感光ドラム残存寿命に応じた相対速度差の設定を、実施例1と同様のテーブル(相対速度設定テーブル)として、モーター制御記憶部113に記憶しておく。そして、画像形成枚数がNL枚に到達した時点で、感光ドラム寿命検知回路120の感光ドラム寿命制御部126が、前述の式1による感光ドラム磨耗量を計算する。そして、この計算結果から、モーター制御部112は、対応する相対速度差の大きさをモーター制御記憶部113から読み出し、感光ドラムモーター111の周速を設定する。又、同時に、感光ドラム寿命検知回路120の感光ドラム寿命制御部126は、上述のようにしてモーター制御部112が決定した相対速度差の大きさに従って、感光ドラム寿命演算部123において用いる前述の式1の感光ドラム駆動時間に係る係数を変更する。これにより、感光ドラム寿命検知回路120による感光ドラム膜厚の磨耗量の計算結果の整合性を保つようにする。
【0088】
次に、画像形成枚数がNL〜NL’枚の間においては、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に上述のように設定した相対速度差をつけて画像形成動作を行う。4枚間欠プリントで画像形成を行っているため、感光ドラム残存寿命は1枚間欠プリントを条件としている図9中の黒点aを始点とする矢印よりも小さな傾きを持って破線Bのように推移する。
【0089】
次に、画像形成枚数がNL’枚に到達した時点(図9中の黒点b)の動作について説明する。画像形成枚数がNL’枚に到達した時点(図9中の黒点b)の動作は、画像形成枚数がNL枚に到達した時点(図9中の黒点a)の動作と同様である。但し、NL’枚到達時の相対速度設定テーブルをNL枚到達時のテーブルとは別に予め求めておく。そして、そのテーブルから感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に設ける相対速度差を読み込むようにする。尚、図9中の黒点a、bをそれぞれ始点とする矢印の傾きから設定される相対速度差の関係は、以下のようになる。
(黒点a始点の相対速度差)<(黒点b始点の相対速度差)
【0090】
このように、本実施例では、制御手段112は、少なくとも感光体1の残存寿命が所定の第1の閾値より少ない場合に、該第1の閾値よりも多い場合よりも感光体1と中間転写体8の周速の相対速度差が大きくなるように制御することとなる。更に、本実施例では、制御手段112は、少なくとも感光体1の残存寿命が上記第1の閾値より小さい所定の第2の閾値より少ない場合に、該第2の閾値よりも多い場合よりも感光体1と中間転写体8の周速の相対速度差が大きくなるように制御することとなる。そして、感光体1の残存寿命が第1の閾値より少ない場合の上記相対速度差よりも第2の閾値よりも少ない場合の上記相対速度差の方が大きくなるようにする。尚、この閾値は2個に限定されるものではない。即ち、感光体の残存寿命に複数の閾値を設けることができる。そして、感光体の残存寿命がN番目の閾値Xnより少ない場合の上記相対速度差aと感光体の残存寿命がN+1番目の閾値Xn+1(Xn>Xn+1)より少ない場合の上記相対速度差bがa<bであるようにする。
【0091】
次に、画像形成枚数がNL’枚以降においては、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に上述のように再度設定した相対速度差をつけて画像形成動作を行う。4枚間欠プリントで画像形成を行っているため、感光ドラム膜厚の磨耗量は1枚間欠プリントを条件としている図9中の黒点bを始点とする矢印よりも小さな傾きを持って破線Cのように推移する。その後、感光ドラム膜厚の磨耗量の積算値がSOになると感光ドラム残存寿命0%に到達する。
【0092】
以上のように、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に設ける相対速度差の大きさを複数点で切り替えることによって、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に相対速度差を段階的に大きく設定することができる。又、感光ドラム膜厚の磨耗量に応じて、感光ドラム1と中間転写ベルト8の周速に相対速度差を変化させることができる。そのため、感光ドラム膜厚の低下による画像不良が発生することなく、感光ドラム1から中間転写ベルト8へのトナー像の一次転写性を向上させることができる。
【0093】
その他
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0094】
例えば、上述の実施例では、感光ドラムの駆動時間と相関する情報として感光ドラムの回転駆動時間自体を検知したが、感光ドラムの回転数を検知してもよい。又、画像形成枚数は、単に画像を形成して出力した転写材の枚数をカウントするようにしてもよいし、例えば搬送方向の長さを基準として所定のサイズの転写材の枚数に換算してカウントしてもよい。又、上述の実施例では、感光ドラムと中間転写ベルトの周速の相対速度差は、感光ドラムの周速を変化させることで変化させたが、中間転写体の周速を変化させることで変化させてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 感光ドラム(感光体)
2 帯電ローラ
3 露光装置
4 現像装置
6 ドラムクリーナ
7 プロセスカートリッジ
8 中間転写ベルト(中間転写体)
111 感光ドラムモーター(駆動手段)
112 モーター制御部(制御手段)
120 感光ドラム寿命検知手段(検知手段)
130 画像形成枚数カウンター(計数手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な感光体と、前記感光体と接触しながら回転可能であり前記感光体からトナー像が転写される中間転写体と、前記感光体から前記中間転写体にトナー像を静電的に転写させる転写手段と、を有する画像形成装置において、
前記感光体の残存寿命を検知する検知手段と、
前記感光体と前記中間転写体の周速の相対速度差を制御する制御手段と、
を有し、
前記検知手段は、前記感光体を用いて形成された画像の量が同じであっても前記感光体の駆動時間と相関して異なった値となる前記感光体の残存寿命を検知し、
前記制御手段は、前記検知手段による前記感光体の残存寿命の検知結果に応じて、前記感光体と前記中間転写体の周速の相対速度差を変化させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記検知手段は、少なくとも前記感光体の駆動時間又は前記感光体の駆動時間と前記感光体に電気的に作用する手段の駆動時間の測定結果から前記感光体の表層の磨耗量と相関する情報を算出し、前記磨耗量と相関する情報に基づいて前記感光体の残存寿命を検知することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、少なくとも前記感光体の残存寿命が所定の閾値より少ない場合に、該閾値よりも多い場合よりも前記相対速度差が大きくなるように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、少なくとも前記感光体の残存寿命が所定の第1の閾値より少ない場合に、該第1の閾値よりも多い場合よりも前記相対速度差が大きくなるように制御すると共に、少なくとも前記感光体の残存寿命が前記第1の閾値より小さい所定の第2の閾値より少ない場合に、該第2の閾値よりも多い場合よりも前記相対速度差が大きくなるように制御し、前記感光体の残存寿命が前記第1の閾値より少ない場合の前記相対速度差よりも前記第2の閾値よりも少ない場合の前記相対速度差の方が大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記感光体を用いて形成された画像の量を計数する計数手段を有し、前記制御手段は、前記計数手段により計数された画像の量が所定の量になった際に、前記検知手段により検知された前記感光体の残存寿命が多いほど前記相対速度差を大きくするように変化させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−173650(P2012−173650A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37684(P2011−37684)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】