説明

画像形成装置

【課題】液体吐出ヘッドに搭載された異物除去フィルタの目詰まりに起因する画像形成装置の寿命を延ばすことを課題とする。
【解決手段】異物除去フィルタにより異物が除去されたインクの液滴を吐出駆動周波数に従って用紙に対して吐出し、用紙上に画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置において、異物除去フィルタの目詰まり度合いを予測し、その目詰まり度合いを示す目詰まり指標値Sを決定する目詰まり指標値決定手段と、決定した目詰まり指標値Sが許容閾値Rを越えているときは、吐出駆動周波数を、その許容閾値Rを超えていないときの吐出駆動周波数よりも低い周波数に変更する吐出駆動周波数制御手段とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物除去フィルタを備えた液体吐出ヘッドを用いて記録材に対して液滴を吐出することにより画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置は、主に、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として利用されるものが知られている(特許文献1、特許文献2等)。ここでいう画像形成装置は、記録材上に画像を形成するものであるが、その記録材の材質は紙に限定されるものではなく、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等のあらゆる記録材に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。そして、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を記録材に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を記録材に付与する(単に液滴を吐出する)ことをも意味する。また、液滴として吐出される液体は、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0003】
このような画像形成装置に用いられる液体吐出ヘッドは、一般に、液滴を吐出する多数のノズル(吐出口)と、これらのノズルに連通する個別液室(圧力発生室、圧力室、加圧液室、インク室、インク流路等とも称される。)と、これらの個別液室内の液体を昇圧させる吐出駆動手段とを備え、記録の必要なノズルのみから液滴を吐出するインク・オン・デマンド方式のものが主流である。このような液体吐出ヘッドは、吐出駆動手段を駆動することで個別液室内の液体を昇圧し、その圧力によりノズルを塞ぐメニスカス状態の液体をノズルから押し出して液滴を吐出させる。このような液体吐出ヘッドにおいて、個別液室あるいは各個別液室に供給される液体が一時的に貯留される共通液室等(以下、単に「液室」といいます。)に異物が入り込むと、適切な液体吐出動作ができなくなる。そのため、液体吐出ヘッドは、一般に、個別液室へ向かう液体流路中(共通液室内あるいは共通液室へ液体を供給する流路中)に、異物を除去するための異物除去フィルタを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、インクジェット方式の画像形成装置は、高精細な画像を高速で形成でき、ランニングコストが安く、騒音が少ないなどの利点を有している。そのため、例えばオフィスや産業用途として多量の印刷処理を連続して行うようなニーズが増えており、そのために画像形成装置の高耐久性(長寿命化)が望まれている。インクジェット方式の画像形成装置における寿命は、通常、簡単に交換できない部品(非消耗品)のうち最も早い時期に寿命が到来する部品の寿命によって決まってくる。そして、多くの画像形成装置は、液体吐出ヘッドに搭載される異物除去フィルタの寿命によって寿命が決まっていた。
【0005】
液体吐出ヘッドに搭載される異物除去フィルタは、多量の印刷処理が行われることで目詰まりが発生し、目詰まりの程度が徐々に進行する。この目詰まりによって、吐出に必要なインクを必要な時間内に個別液室へ供給できなくなると、印刷不良を生じ、寿命が到来する。特に、プリンタ用途で使用される画像形成装置のインク(液体)としては、近年、普通紙でも高画質な画像を形成できる顔料系インクが主流となっている。顔料系インクは、染料系インク等に比べて、異物除去フィルタの目詰まりを発生させやすい。よって、顔料系インクを使用する画像形成装置では、特に長寿命化の問題が深刻である。
【0006】
なお、異物除去フィルタのフィルタ面積を広くすることで異物除去フィルタの寿命を延ばすことはできる。しかしながら、液体吐出ヘッドの小型化(コンパクト化)のニーズも大きいことから、フィルタ面積を広くするにも限度があり、フィルタ面積を広くすることによって画像形成装置を長寿命化するには限界がある。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、液体吐出ヘッドに搭載された異物除去フィルタの目詰まりに起因する画像形成装置の寿命を延ばすことができる画像形成装置を提供することである。
【0008】
なお、特許文献1には、ノズル数が多い記録ヘッドでもインクタンクのインク使用可能量が減少せず、記録ヘッドの製造バラツキに伴う印刷品質や印刷トラブルの発生を防ぐ目的で、インクタンク内のインク消費量が多くなるほど印刷速度を落とす制御に関する技術が開示されている。また、特許文献2には、複数のノズルから同時にインク滴を吐出したときに、流路抵抗とインク質量に起因した慣性力とによって個別液室へのインク供給が不足し、これによりインク滴を吐出していないノズルのメニスカスが壊れるのを防止する目的で、印刷速度を落とす制御に関する技術が開示されている。この制御では、ノズルから所定時間毎に吐出される合計インク量の変化量が閾値を下回ることが予測されると、印刷速度を1/2に変更する。
いずれの特許文献に記載された技術も、印刷速度を落とす制御に関する技術であるが、この技術によって本願発明の目的すなわち異物除去フィルタの目詰まりに起因する画像形成装置の寿命を延ばすという目的については何ら言及されておらず、また、その技術によって本願発明の目的を達成することもできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、液体中の異物を除去する異物除去フィルタを備えた液体吐出ヘッドのノズルから、該異物除去フィルタにより異物が除去された液体の液滴を吐出駆動周波数に従って記録材に対して吐出し、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、上記異物除去フィルタの目詰まり度合いを予測し、その目詰まり度合いを示す目詰まり指標値を決定する目詰まり指標値決定手段と、上記目詰まり指標値決定手段が決定した目詰まり指標値が許容閾値を越えているときは、上記吐出駆動周波数を、該許容閾値を超えていないときの吐出駆動周波数よりも低い周波数に変更する吐出駆動周波数制御手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、環境温度を検知する環境温度検知手段と、該環境温度検知手段の検知結果に基づいて上記許容閾値を決定する許容閾値決定手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の画像形成装置において、上記目詰まり指標値決定手段は、所定のタイミングで、前回の目詰まり指標値の決定から今回の目詰まり指標値の決定までの間における上記異物除去フィルタの目詰まり度合いの増加量を示す目詰まり増加値を予測して決定し、決定した目詰まり増加値の累積値に基づいて上記目詰まり指標値を決定することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の画像形成装置において、前回の目詰まり指標値の決定から今回の目詰まり指標値の決定までの間に上記液体吐出ヘッドのノズルから排出される液体の排出量をカウントする液体排出量カウント手段を有し、上記目詰まり指標値決定手段は、上記液体排出量カウント手段がカウントした液体排出量に基づいて上記目詰まり増加値を予測して決定することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の画像形成装置において、吐出動作とは異なる動作によって上記液体吐出ヘッドのノズルから液体を押し出すか又は該液体吐出ヘッドのノズルから液体を吸引することにより、該液体吐出ヘッドのノズルから液体を強制排出する強制排出手段を有し、上記目詰まり指標値決定手段は、上記液体排出量カウント手段がカウントした液体排出量のうち、上記強制排出手段により排出された液体排出量については、吐出動作により排出された液体排出量よりも、上記目詰まり増加値が低くなるように予測して決定することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前回の目詰まり指標値の決定から今回の目詰まり指標値の決定までの間の液体温度を検知する液体温度検知手段を有し、上記目詰まり指標値決定手段は、上記液体温度検知手段が検知した液体温度に基づいて上記目詰まり増加値を予測して決定することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、前回の目詰まり指標値の決定から今回の目詰まり指標値の決定までの間における吐出動作を行わない放置時間をカウントする放置時間カウント手段を有し、上記目詰まり指標値決定手段は、上記放置時間カウント手段がカウントした放置時間に基づいて上記目詰まり増加値を予測して決定することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記液体吐出ヘッドから吐出する液体の種類を示す液体情報を記憶する液体情報記憶手段を有し、上記目詰まり指標値決定手段は、上記液体情報記憶手段に記憶されている液体情報に基づいて上記目詰まり増加値を予測して決定することを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記異物除去フィルタの種類を示すフィルタ情報を記憶するフィルタ情報記憶手段を有し、上記目詰まり指標値決定手段は、上記フィルタ情報記憶手段に記憶されているフィルタ情報に基づいて上記目詰まり増加値を予測して決定することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記異物除去フィルタを液体が通過する時の流速が互いに異なるように構成された複数種類の液体吐出ヘッドを備えており、上記目詰まり指標値決定手段は、上記複数種類の液体吐出ヘッドごとに、それぞれの構成に応じて上記異物除去フィルタの目詰まり度合いを予測し、各液体吐出ヘッドの異物除去フィルタについての目詰まり指標値を決定し、上記吐出駆動周波数制御手段は、上記目詰まり指標値決定手段が決定した各液体吐出ヘッドについての目詰まり指標値と上記許容閾値決定手段が決定した許容閾値とを比較し、いずれかの液体吐出ヘッドの目詰まり指標値が該許容閾値を越えているときは、上記吐出駆動周波数を、該許容閾値を超えていないときの吐出駆動周波数よりも低い周波数に変更する吐出駆動周波数制御手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置において、互いに異なる種類の液体を吐出する複数種類の液体吐出ヘッドを備えており、1種類の液体吐出ヘッドを用いて画像を形成する第1画像形成モードと2種類以上の液体吐出ヘッドを用いて画像を形成する第2画像形成モードとに画像形成モードを切り換えて、画像形成動作を制御する制御手段を有しており、上記吐出駆動周波数制御手段は、画像形成で用いる液体吐出ヘッドの目詰まり指標値が上記許容閾値を越えているときは、当該画像形成時における吐出駆動周波数を、該許容閾値を超えていないときの吐出駆動周波数よりも低い周波数に変更し、画像形成で用いない液体吐出ヘッドの目詰まり指標値が上記許容閾値を越えていても、画像形成で用いる液体吐出ヘッドの目詰まり指標値が上記許容閾値を越えていないときは、当該画像形成時における吐出駆動周波数を低い周波数には変更しないことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像形成装置において、黒のインクを吐出する黒用液体吐出ヘッド、及び、互いに異なる複数の色のカラーインクをそれぞれ吐出する複数のカラー用液体吐出ヘッドを備えており、モノクロ画像を形成するモノクロ画像形成モードと上記複数のカラー用液体吐出ヘッドを用いてカラー画像を形成するカラー画像形成モードとに画像形成モードを切り換えて、画像形成動作を制御する制御手段を有しており、上記制御手段は、モノクロ画像形成モードで画像形成動作を制御する際、上記吐出駆動周波数制御手段により制御された上記黒用液体吐出ヘッドの吐出駆動周波数と、該吐出駆動周波数制御手段により制御された上記複数のカラー用液体吐出ヘッドの吐出駆動周波数とを比較し、該黒用液体吐出ヘッドの吐出駆動周波数の方が高い場合には該黒用液体吐出ヘッドを用いてモノクロ画像を形成し、該複数のカラー用液体吐出ヘッドの吐出駆動周波数の方が高い場合には該複数のカラー用液体吐出ヘッドを用いてモノクロ画像を形成することを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、異物除去フィルタの目詰まり度合いを示す目詰まり指標値が許容閾値を越えたら吐出駆動周波数を下げて画像形成動作を実行する。吐出駆動周波数を下げると、ノズルから連続して液滴を吐出するときの吐出時間間隔が長くなる。よって、本発明によれば、周波数を下げる前の吐出駆動周波数でそのまま画像形成を行うと異物除去フィルタの目詰まりによって吐出に必要な液体を必要な時間内に供給できずに印刷不良が生じてしまうような状況であっても、吐出駆動周波数を下げることで液体の供給が間に合うようになり、印刷不良の発生を抑制できる。したがって、異物除去フィルタの寿命を延命することができるので、異物除去フィルタの目詰まりに起因する画像形成装置の寿命を延ばすことができる。
なお、本発明においては、目詰まり指標値が許容閾値を越えると吐出駆動周波数が下がるので画像形成速度が遅くなる。しかしながら、目詰まり指標値が許容閾値を越えるまでは、許容閾値を越える前における最適な画像形成速度(印刷不良が生じない範囲で最速の画像形成速度)で画像形成を行うことができる。すなわち、本発明によれば、異物除去フィルタの目詰まり度合いに応じた可能な限り速い画像形成速度で、印刷不良を発生さずに画像形成を継続することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば、液体吐出ヘッドに搭載された異物除去フィルタの目詰まりに起因する画像形成装置の寿命を延ばすことができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を前方側から見た斜視説明図である。
【図2】同画像形成装置の機構部の要部を示す平面説明図である。
【図3】(a)は、同画像形成装置のヘッドユニットの概略構成を示す側面図であり、(b)はその下面図である。
【図4】制御例1に係る制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】制御例1における駆動制御テーブルの一例を示す表である。
【図6】制御例2に係る制御の流れを示すフローチャートである。
【図7】制御例3に係る制御の流れを示すフローチャートである。
【図8】制御例4に係る制御の流れを示すフローチャートである。
【図9】制御例5に係る制御の流れを示すフローチャートである。
【図10】制御例6に係る制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例を前方側から見た斜視説明図である。
この画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された記録材としての用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体1の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0014】
カートリッジ装填部4には、色の異なる記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液カートリッジであるインクカートリッジ10k,10c,10m,10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。また、インクカートリッジ10k,10c,10m,10yは縦置き状態で横方向に並べて装填する構成としている。
【0015】
前カバー6は、全体が、この前カバー6を閉じた状態で、カートリッジ装填部4内に装填されている複数のインクカートリッジ10k,10c,10m,10yを外部から視認することができる透明又は半透明の部材で形成されている。なお、インクカートリッジ10k,10c,10m,10yを外部から視認することができれば、一部が透明又は半透明の部材で形成されている構成とすることもできる。
【0016】
また、操作/表示部5には、各色のインクカートリッジ10k,10c,10m,10yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ10k,10c,10m,10yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部11k,11c,11m,11y(色を区別しないときは「残量表示部11」という。)を配置している。さらに、この操作/表示部5には、電源ボタン12、用紙送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14を配置している。
【0017】
次に、この画像形成装置の機構部について説明する。
図2は、この画像形成装置の機構部の要部を示す平面説明図である。
フレーム21を構成する左右の側板21A,21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31に沿ってキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって図2で矢示方向(キャリッジ走査方向:主走査方向)に移動走査する。このキャリッジ33には、記録液の液滴(インク滴)を吐出するための液体吐出ヘッドである複数の記録ヘッド34を複数のノズルを主走査方向と交叉する方向に配列し、装着している。
【0018】
ここで、記録ヘッド34は、例えば、イエロー(Y)の液滴を吐出する記録ヘッド34y、マゼンタ(M)の液滴を吐出する記録ヘッド34m、シアン(C)の液滴を吐出する記録ヘッド34c、黒(K)の液滴を吐出する記録ヘッド34kとで構成している。なお、「記録ヘッド34」というときは色を区別しないものとする。また、黒以外の記録ヘッド34y,34m,34cについては、カラー記録ヘッドとも称する。なお、ヘッド構成は、これらの例に限るものではなく、1又は複数の色の液滴を吐出する1又は複数のノズル列を有する記録ヘッドを1又は複数用いて構成することもできる。
【0019】
記録ヘッド34としては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための吐出駆動手段として備えたものなどを使用できる。
【0020】
また、キャリッジ33には、各記録ヘッド34にそれぞれ各色の記録液を供給するための各色のヘッドタンク35y,35m,35c,35k(色を区別しない場合は「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には各色の記録液供給チューブ37を介して前述した各色のインクカートリッジ10(各色を区別する場合には、「インクカートリッジ10y,10m,10c,10k」という。)から記録液を供給するようにしている。
【0021】
次に、本実施形態における画像形成装置の動作について説明する。
本実施形態の画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙が1枚ずつ分離給紙され、その用紙は記録ヘッド34y,34m,34c,34kと対向する印字領域を通過するように搬送される。用紙が印字領域を通過する際、記録ヘッド34y,34m,34c,34kから各色のインク滴が吐出され、これにより用紙上に画像が形成される。記録ヘッド34y,34m,34c,34kによって画像を記録する際、用紙の搬送は一時停止され、キャリッジ33を主走査方向へ移動させながら、印字命令に対応する画像信号に応じて記録ヘッド34y,34m,34c,34kを駆動し、停止している用紙に対してインク滴を吐出し、1行分(1走査分)の画像を記録する。その後、用紙を所定量だけ副走査方向へ搬送して再び一時停止した後、次の行の記録を行う。記録終了信号あるいは用紙の後端が所定の副走査方向位置に到達した旨の信号を受けることにより、画像形成動作は終了し、用紙は排紙トレイ3に排紙される。
【0022】
また、キャリッジ33の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するためのメンテナンスユニット91が設けられている。このメンテナンスユニット91には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャッピングする密閉空間形成部材としてのキャップ部材92と、ノズル面をワイピングするためのワイパーブレード93と、空吐出(画像記録に寄与しない液滴の吐出)を行うときに吐出された液滴を受けるための空吐出受け94などを備えている。また、キャリッジ33の走査方向の他方側の非印字領域には、同様に、空吐出時の液滴を受けるための空吐出受け99を備えたサブメンテナンスユニット98を備えている。
【0023】
所定のインク吸引タイミングが到来してインク吸引処理を行う場合、まず、キャリッジ33をメンテナンスユニット91まで移動させ、鉛直方向真下を向いている記録ヘッド34のノズル面をその下方からキャップ部材92でキャッピングする。これにより、ノズル面を被覆したキャップ部材92の内部は密閉状態となる。そして、キャップ部材92に設けられた吸引口に接続された図示しない吸引ポンプによりキャップ部材92の内部を吸引すると、キャップ部材92が記録ヘッド34のノズル面に吸着してキャップ部材内部の密閉性が高まるとともにキャップ部材の内部が負圧となり、記録ヘッド34内のインクがノズル面上のノズル34aから吸い出される。
【0024】
また、所定の空吐出タイミングが到来して空吐出処理を行う場合、キャリッジ33をメンテナンスユニット91又はサブメンテナンスユニット98まで移動させ、鉛直方向真下を向いている記録ヘッド34のノズル面を空吐出受け94,99に対向させる。そして、所定の空吐出駆動を行って記録ヘッド34のノズル34aからインク滴を吐出させる。
【0025】
図3(a)は、記録ヘッド34、フィルタユニット36、ヘッドタンク35から成るヘッドユニットの概略構成を示す側面図であり、図3(b)はその下面図である。
このヘッドユニットにおいては、チューブ37を通ってヘッドタンク35に貯められたインクがフィルタユニット36に内蔵されている異物除去フィルタ(図示しない)を通って記録ヘッド34に供給され、ノズル34aから吐出される。フィルタユニット36は、記録ヘッド34の液室に吐出不良を生じさせるような異物が無い液を供給するために濾過性能をもった異物除去フィルタが搭載されている。濾過性能と関連深い異物除去フィルタのメッシュサイズなどは、記録ヘッド34のノズル径により必要なサイズを決められている。
【0026】
異物除去フィルタは、通液されることにより目詰まりが生じ、それが長期間多量の印刷に使用されることによって進行し、目詰まり度合いが悪化していくと、吐出に必要なインクを必要な時間内で記録ヘッド34の液室に供給できなくなり、印刷不良が生じる。印刷不良が生じてしまうような状況になると、記録ヘッドは寿命を迎えたことになり、記録ヘッドが交換可能な消耗品でない場合には、本画像形成装置も寿命を迎えることになる。
そこで、本実施形態では、以下に示す各種制御例で説明する目詰まり制御を行うことにより、従来装置では異物除去フィルタの目詰まり度合いが悪化して印刷不良が生じてしまうような状況下になっても、印刷不良を生じさせずに画像形成を継続できるようにし、これにより記録ヘッドの寿命を延ばすようにしている。具体的には、目詰まり度合いが悪化して印刷不良が生じる可能性が高まったら、吐出駆動周波数を落とし、これにより印刷不良の可能性を低下させて画像形成を継続する。
【0027】
本実施形態において、現在の目詰まり度合いを数値化した目詰まり指標値Sが許容閾値Rを超えたときに吐出駆動周波数を落とすという目詰まり制御を行う。目詰まり指標値Sの算出方法は、本実施形態では、前回の目詰まり指標値Sの決定から今回の目詰まり指標値Sの決定までの間(以下「算出単位期間」という。)における異物除去フィルタの目詰まり度合いの増加量を示す目詰まり増加値を算出し、この目詰まり増加値の累積値を目詰まり指標値Sとして算出するが、現在の目詰まり度合いに対応した数値であれば、これに限られるものではない。本実施形態の目詰まり指標値Sの算出に用いる目詰まり増加値は、原則として、「目詰まり基準値」×「インク排出量」×「補正係数」により算出されるが、これに限るものではない。
【0028】
なお、本実施形態においては、インク排出量等に基づく目詰まり指標値によってフィルタの目詰まり度合いを予測する例であるが、他の方法によってフィルタの目詰まり度合いを予測するようにしてもよい。
例えば、異物除去フィルタのインク流路下流側(記録ヘッド側)に圧力センサを設け、その圧力センサで測定される圧力値(インクの流れによって異物除去フィルタが押される力の大きさに相当)からフィルタの目詰まり度合いを予測してもよい。この場合の目詰まり指標値は、その圧力センサの圧力値に基づいて決定される。具体例としては、空吐出を行う際の圧力値を計測し、その圧力値(目詰まり指標値)が許容閾値を超えていたら吐出駆動周波数を下げるように制御する。
【0029】
〔制御例1〕
以下、本実施形態の画像形成装置において、記録ヘッドの寿命を延ばすための一制御例(以下、本制御例を「制御例1」という。)について説明する。
本実施形態において、装置本体1の制御部(図示しない)のROMには、後述する所定の選択条件ごとの目詰まり基準値が保持されている。目詰まり基準値は、算出単位期間内におけるインク排出量の単位量当たりの目詰まり度合いの平均的な増加量である。ただし、インク排出量が同じ場合でも、インクの排出方法の違いによって、目詰まり度合いの増加量が変わってくる。例えば、印字命令や空吐出命令を受けて通常の吐出駆動によりノズル34aからインク滴を吐出する場合、吸引メンテナンス命令を受けて吸引ポンプによりインクをノズル34aから吸い出す場合よりも、フィルタの目詰まり度合いが増加しやすく、この違いから、インクの単位排出量当たりのフィルタの目詰まり度合いの増加量が異なってくる。特に、単位時間あたりのインク排出量が少ない印字動作時や空吐出時は、インク吸引処理時と比較して、目詰まり度合いが悪化しやすい。
【0030】
そこで、本制御例1では、この違いを考慮し、印字命令及び空吐出命令に対応する目詰まり基準値と、吸引メンテナンス命令に対応する目詰まり基準値とをROMに保持し、いずれかの命令を受けて目詰まり制御を実行するときに、その命令に応じた目詰まり基準値を選択して目詰まり指標値Sを算出する。なお、印字命令及び空吐出命令に対応する目詰まり基準値は、吸引メンテナンス命令に対応する目詰まり基準値よりも大きな値に設定される。
【0031】
また、制御部のROMには、印刷不良に達する直前における許容できる段階での目詰まり度合いに対応した目詰まり指標値Sに相当する許容閾値R、すなわち、許容できる範囲と許容できない範囲との境界における目詰まり指標値Sに相当する許容閾値Rを保持している。本実施形態では、この許容閾値Rを複数の温度環境ごとに保持しているが、いずれの温度環境についても共通の許容閾値Rを用いるようにしてもよい。本実施形態では、目詰まり指標値Sが許容閾値Rを超えると、吐出駆動周波数を下げる制御を行う。この許容閾値Rは、事前の実験等により適宜決定される。
【0032】
また、制御部のROMには、許容閾値Rに応じた駆動制御テーブルを予め保持している。この駆動制御テーブルは、吐出駆動周波数を含む吐出駆動制御に必要な各種パラメータを記憶したものである。本実施形態では、温度環境ごとに4つずつ許容閾値Rをもち、吐出駆動周波数を4段階で下げていくので、駆動制御テーブルは、その許容閾値Rごとに4種類用意されている。なお、吐出駆動周波数を下げる段階数は適宜設定される。
【0033】
また、本実施形態では、4つの記録ヘッド34y,34m,34c,34kが搭載されており、各記録ヘッドから排出されるインクの量は各記録ヘッドの使用状況によって個々に異なったものとなる。よって、本制御例1では、記録ヘッド34y,34m,34c,34kごとに吐出駆動周波数の設定値を設け、そのうち最も遅い吐出駆動周波数を用いて画像形成動作を行うようにしている。
【0034】
図4は、本制御例1に係る制御の流れを示すフローチャートである。
印字命令、空吐出命令、吸引メンテナンス命令のいずれかを受信すると(S1)、制御部は、それぞれの命令に従ったインク排出処理を実行するとともに(S2)、その処理により各色の記録ヘッド34から排出したインクの排出量を、色ごと(記録ヘッドごと)にカウントする(S3)。そして、所定の選択条件(本制御例では受信した命令の種類)に応じて、対応する目詰まり基準値をROMから読み出す(S4)。その後、制御部は、読み出した「目詰まり基準値」に、カウントした各色の「インク排出量」を乗じ、これにより得られた演算結果を各色の目詰まり増加値として算出する(S5)。このようにして目詰まり増加値を算出したら、色ごとに、その目詰まり増加値を前回算出した目詰まり指標値Sに加算し、加算後の目詰まり指標値Sを現在の目詰まり指標値Sとして更新する(S6)。
【0035】
次に、画像形成装置本体に設けられている環境温度検知手段としての温度センサにより環境温度を検知し(S7)、その検知温度に対応する許容閾値RをROMから読み出す(S8)。本実施形態において、許容閾値Rを温度環境ごとに異ならせている理由は、フィルタの目詰まり度合いが同じ場合でも、環境温度の違いによってインクの流動性が異なることから、吐出に必要なインクを必要な時間内に個別液室へ供給できない場合と供給できる場合とがあるからである。具体的には、温度が低いほど、インクの流動性が悪いので、吐出に必要なインクを必要な時間内に個別液室へ供給できない場合が生じやすい。したがって、本実施形態では、環境温度が低いほど許容閾値Rが低くなるように設定してある。
【0036】
その後、制御部は、色ごとに、更新された目詰まり指標値Sと読み出した許容閾値Rとを比較し、目詰まり指標値Sが許容閾値Rを超えているか否かを判断する(S9)。この判断において、目詰まり指標値Sが許容閾値Rを超えていないと判断された色については、その色の吐出駆動周波数の設定値を変更しない。一方、目詰まり指標値Sが許容閾値Rを超えていると判断された色については、ROMから駆動制御テーブルを読み出し(S10)、その駆動制御テーブルの記述に基づいてその色の吐出駆動周波数の設定値を変更する(S11)。これにより、その色の吐出駆動周波数の設定値は、それまでの周波数よりも低い周波数に変更される。そして、このようにして変更された後、各色の吐出駆動周波数の設定値を比較し、最も遅い吐出駆動周波数が設定されている色の設定値を、本画像形成装置の吐出駆動周波数として設定し(S12)、次回の吐出駆動時には、その吐出駆動周波数で吐出駆動制御がなされる。
【0037】
図5は、本制御例1における駆動制御テーブルの一例を示す表である。
図5に示すように、本制御例1においては、予め4つの許容閾値Rが用意されており、どの許容閾値Rを用いるかが温度ごとに異なっている。具体的には、20℃を超える高温環境ではいずれの閾値も用いないが、10℃〜20℃の温度環境では第4閾値(R=2500)を用いる。また、5℃〜10℃の温度環境では、第3閾値(R=2000)と第4閾値(R=2500)を用いる。また、0℃〜5℃の温度環境では、第2閾値(R=1500)と第3閾値(R=2000)と第4閾値(R=2500)を用いる。0℃以下の温度環境では、すべての閾値を用いる。
【0038】
ここで、10℃〜15℃の温度環境と15℃〜20℃の温度環境は、いずれも、第4閾値(R=2500)が用いられるが、目詰まり指標値Sが第4閾値Rを超えたときに変更される吐出駆動周波数の設定値が異なっている。このように、吐出駆動周波数をどの程度下げるかを環境温度に応じて決定するようにしてもよい。
また、本制御例1において、10℃以下の温度環境では、2つ以上の許容閾値を用いて目詰まり制御を行う。この場合、目詰まり指標値Sとそれぞれの許容閾値とを比較し、その目詰まり指標値Sが各許容閾値で区切られたいずれの区分に属するかを判断し、属する区分に対応した吐出駆動周波数を選択する。例えば、5℃〜10℃の温度環境において、目詰まり指標値Sが、第3閾値(R=2000)以下の第1区分に属するのか、第3閾値(R=2000)よりも大きくかつ第4閾値(R=2500)以下の第2区分に属するのか、第4閾値(R=2500)を超える第3区分に属するのかを判断し、第2区分に属する場合には吐出駆動周波数を24kHzに設定し、第3区分に属する場合には吐出駆動周波数を19kHzに設定する。
【0039】
以上、本制御例1によれば、算出した現在の目詰まり指標値Sが、環境温度に応じて選択された許容閾値Rを超えている場合には、その温度環境下においてはフィルタの目詰まり度合いが許容できない状態になっているものとし、駆動制御テーブルに従って吐出駆動周波数を下げるように設定変更する。この設定変更に伴い、その吐出駆動周波数に応じて、キャリッジ33の走査動作も所望の解像度の画像形成に最適な走査速度に設定変更される。このような目詰まり制御を行うことにより、当初のままの吐出駆動周波数では印刷不良が生じてしまう状況になっても、吐出駆動周波数を落とすことにより印刷不良を生じさずに画像形成を継続することができる。その結果、従来よりも記録ヘッド34の寿命を延ばすことができる。
【0040】
特に、本制御例1では、インクの流動性が温度に依存することに鑑み、温度が高いほど許容閾値を高く設定するようにしているため、その環境温度に対応したできるだけ速い印字速度を確保できる。
また、本制御例1では、インクの流動性が温度に依存することに鑑み、温度が高いほど吐出駆動周波数の下げ幅を小さくしているので、その環境温度に対応したできるだけ速い印字速度を確保できる。
【0041】
〔制御例2〕
次に、本実施形態の画像形成装置において記録ヘッドの寿命を延ばすための他の制御例(以下、本制御例を「制御例2」という。)について説明する。
一般に、異物除去フィルタをインクが通過する時の流速が速くなるように構成されている記録ヘッド34ほど、目詰まりが生じ難い。本実施形態において、黒用記録ヘッド34kとカラー記録ヘッド34y,34m,34cとでは、異物除去フィルタの流路上流側の構造が異なっているため、異物除去フィルタを通るインクの流速が異なる構成となっている。具体的には、黒用記録ヘッド34kの方がカラー記録ヘッド34y,34m,34cよりもフィルタ通過時のインク流速が速くなるように構成されている。
よって、本制御例2では、黒用記録ヘッド34kについては、カラー記録ヘッド34y,34m,34cに対して、目詰まり基準値を低めに設定したり、許容閾値Rを高め設定したりして、黒用記録ヘッド34kの方がカラー記録ヘッド34y,34m,34cよりも吐出駆動周波数を落とす時期が遅れるようにしている。
【0042】
図6は、本制御例2に係る制御の流れを示すフローチャートである。
印字命令、空吐出命令、吸引メンテナンス命令のいずれかを受信すると(S1)、制御部は、それぞれの命令に従ったインク排出処理を実行するとともに(S2)、その処理により各色の記録ヘッド34から排出したインクの排出量を、色ごと(記録ヘッドごと)にカウントする(S3)。そして、所定の選択条件(本制御例2では、受信した命令の種類、記録ヘッドの種類)に応じて、対応する目詰まり基準値をROMから読み出す(S21)。具体的には、本制御例2では、黒用記録ヘッド34kと、カラー記録ヘッド34y,34m,34cとで、異なる目詰まり基準値を用いる。詳しくは、黒用記録ヘッド34kについては、カラー記録ヘッド34y,34m,34cよりも低めに設定された黒用の目詰まり基準値を用いる。
【0043】
その後、制御部は、読み出した各色の「目詰まり基準値」に、カウントした各色の「インク排出量」を乗じ、これにより得られた演算結果を各色の目詰まり増加値として算出する(S5)。このようにして目詰まり増加値を算出したら、色ごとに、その目詰まり増加値を前回算出した目詰まり指標値Sに加算し、加算後の目詰まり指標値Sを現在の目詰まり指標値Sとして更新する(S6)。以後の処理は、上記制御例1と同じなので、説明を省略する。
【0044】
以上、本制御例2によれば、異物除去フィルタをインクが通過する時の流速が異なるように構成された黒用記録ヘッド34kとカラー記録ヘッド34y,34m,34cとで異なる目詰まり基準値を用い、それぞれの流速に適した目詰まり基準値を設定している。これにより、各記録ヘッドについて、より適切な目詰まり指標値Sを算出することが可能となり、不要に吐出駆動周波数を落とすことなく、記録ヘッド34の寿命を延ばすことができる。
【0045】
〔制御例3〕
次に、本実施形態の画像形成装置において記録ヘッドの寿命を延ばすための更に他の制御例(以下、本制御例を「制御例3」という。)について説明する。
一般に、インクの温度の違いによって異物除去フィルタの目詰まり度合いの増加量が異なる。よって、本制御例3では、温度ごとに異なる目詰まり基準値を用意し、温度が高いほど低い目詰まり基準値を用いて制御を行う。
なお、本制御例3では、上記制御例2と同様に、黒用記録ヘッド34kとカラー記録ヘッド34y,34m,34cとで異なる目詰まり基準値を用いる場合について説明するが、上記制御例1のように記録ヘッドごとに異なる目詰まり基準値を用いないようにしてもよい。
【0046】
図7は、本制御例3に係る制御の流れを示すフローチャートである。
印字命令、空吐出命令、吸引メンテナンス命令のいずれかを受信すると(S1)、制御部は、それぞれの命令に従ったインク排出処理を実行するとともに(S2)、その処理により各色の記録ヘッド34から排出したインクの排出量を、色ごと(記録ヘッドごと)にカウントする(S3)。そして、所定の選択条件(本制御例3では、受信した命令の種類、記録ヘッドの種類、検知温度)に応じて、対応する目詰まり基準値をROMから読み出す。具体的には、本制御例3では、画像形成装置本体に設けられている環境温度検知手段としての温度センサを液体温度検知手段として利用し、その温度センサにより検知された環境温度をインクの温度として検知する(S31)。そして、黒用記録ヘッド34kと、カラー記録ヘッド34y,34m,34cとで異なる目詰まり基準値の群の中から、その検知温度に応じた目詰まり基準値を、色ごとに読み出す(S32)。
【0047】
その後、制御部は、読み出した各色の「目詰まり基準値」に、カウントした各色の「インク排出量」を乗じ、これにより得られた演算結果を各色の目詰まり増加値として算出する(S5)。このようにして目詰まり増加値を算出したら、色ごとに、その目詰まり増加値を前回算出した目詰まり指標値Sに加算し、加算後の目詰まり指標値Sを現在の目詰まり指標値Sとして更新する(S6)。以後の処理は、上記制御例2と同じなので、説明を省略する。ただし、本制御例3では、上記S31において温度センサの温度検知をすでに行っているので、許容閾値の読み出し(S8)に際しては、上記S31での検知温度を用いる。なお、上記S31において環境温度検知用の温度センサとは別に、インク温度検知用の温度センサを用いてもよい。
【0048】
以上、本制御例3によれば、温度ごとに異なる目詰まり基準値を用い、それぞれの温度に適した目詰まり基準値を設定している。これにより、より適切な目詰まり指標値Sを算出することが可能となり、不要に吐出駆動周波数を落とすことなく、記録ヘッド34の寿命を延ばすことができる。
【0049】
〔制御例4〕
次に、本実施形態の画像形成装置において記録ヘッドの寿命を延ばすための更に他の制御例(以下、本制御例を「制御例4」という。)について説明する。
一般に、前回のインク排出時から今回のインク排出時までの経過時間(放置時間)の違いによって、今回のインク排出時における異物除去フィルタの目詰まり度合いの増加量が異なる。これは、インクが排出されずに放置されている時間が長いほど、インクタンク中のインクが増粘する場合があり、インクが増粘するほどフィルタの目詰まりが生じやすいためである。よって、本制御例4では、放置時間ごとに異なる目詰まり基準値を用意し、放置時間が長いほど高い目詰まり基準値を用いて制御を行う。
なお、本制御例4では、上記制御例3と組み合わせる場合について説明するが、上記制御例1や上記制御例2と組み合わせても良い。
【0050】
図8は、本制御例4に係る制御の流れを示すフローチャートである。
印字命令、空吐出命令、吸引メンテナンス命令のいずれかを受信すると(S1)、制御部は、それぞれの命令に従ったインク排出処理を実行するとともに(S2)、その処理により各色の記録ヘッド34から排出したインクの排出量を、色ごと(記録ヘッドごと)にカウントする(S3)。そして、所定の選択条件(本制御例4では、受信した命令の種類、記録ヘッドの種類、検知温度、放置時間)に応じて、対応する目詰まり基準値をROMから読み出す。具体的には、本制御例4では、上記制御例3と同様に、画像形成装置本体に設けられている環境温度検知手段としての温度センサを液体温度検知手段として利用し、その温度センサにより検知された環境温度をインクの温度として検知する(S41)。更に、本制御例4では、前回のインク排出に関わる命令受信時から今回の命令受信(S1)時までの経過時間を放置時間として算出する(S42)。そして、黒用記録ヘッド34kと、カラー記録ヘッド34y,34m,34cとで異なる目詰まり基準値の群の中から、その検知温度及び算出した放置時間に応じた目詰まり基準値を、色ごとに読み出す(S43)。
【0051】
その後、制御部は、読み出した各色の「目詰まり基準値」に、カウントした各色の「インク排出量」を乗じ、これにより得られた演算結果を各色の目詰まり増加値として算出する(S5)。このようにして目詰まり増加値を算出したら、色ごとに、その目詰まり増加値を前回算出した目詰まり指標値Sに加算し、加算後の目詰まり指標値Sを現在の目詰まり指標値Sとして更新する(S6)。以後の処理は、上記制御例3と同じなので、説明を省略する。
【0052】
以上、本制御例4によれば、放置時間に応じて異なる目詰まり基準値を用い、放置時間に適した目詰まり基準値を設定している。これにより、より適切な目詰まり指標値Sを算出することが可能となり、不要に吐出駆動周波数を落とすことなく、記録ヘッド34の寿命を延ばすことができる。
【0053】
〔制御例5〕
次に、本実施形態の画像形成装置において記録ヘッドの寿命を延ばすための更に他の制御例(以下、本制御例を「制御例5」という。)について説明する。
一般に、インクの成分の違いによって異物除去フィルタの目詰まり度合いの増加量が異なる。例えば、顔料系インクなどでは、顔料の粒径が大きいほどフィルタの目詰まりが生じやすい。また、インクの樹脂成分などの種類によって異物除去フィルタのフィルタ材料に対する吸着性が異なるため、フィルタの目詰まり度合いに影響を与える。よって、本制御例5では、インクの種類ごとに異なる補正係数を用意している。この補正係数は、上記制御例4と同様の手順で算出された目詰まり増加値を、インクの種類に応じて補正するための係数であり、事前実験を繰り返して調査したデータから各インクの種類のフィルタに対する目詰まり度合いを把握することにより設定することができる。
なお、本制御例5では、上記制御例4と組み合わせる場合について説明するが、上記制御例1や上記制御例2や上記制御例3と組み合わせても良い。
【0054】
図9は、本制御例5に係る制御の流れを示すフローチャートである。
印字命令、空吐出命令、吸引メンテナンス命令のいずれかを受信すると(S1)、制御部は、それぞれの命令に従ったインク排出処理を実行するとともに(S2)、その処理により各色の記録ヘッド34から排出したインクの排出量を、色ごと(記録ヘッドごと)にカウントする(S3)。そして、所定の選択条件(本制御例5では、上記制御例4と同様、受信した命令の種類、記録ヘッドの種類、検知温度、放置時間)に応じて、対応する目詰まり基準値をROMから読み出す。具体的には、黒用記録ヘッド34kと、カラー記録ヘッド34y,34m,34cとで異なる目詰まり基準値の群の中から、その検知温度及び算出した放置時間に応じた目詰まり基準値を、色ごとに読み出す(S41〜43)。
【0055】
その後、制御部は、読み出した各色の「目詰まり基準値」に、カウントした各色の「インク排出量」を乗じ、これにより得られた演算結果を各色の目詰まり増加値として算出する(S5)。このようにして目詰まり増加値を算出したら、本制御例5では、ROMに予め記憶されているインク種類ごとの補正係数のうち、各色のインク種類に対応する補正係数を読み出す(S51)。そして、上記S5において算出した各色の目詰まり増加値に、対応する補正係数を乗じる補正処理を行う(S52)。このようにして補正された各色の目詰まり増加値を前回算出した目詰まり指標値Sに加算し、加算後の目詰まり指標値Sを現在の目詰まり指標値Sとして更新する(S6)。以後の処理は、上記制御例4と同じなので、説明を省略する。
【0056】
以上、本制御例5によれば、インクの種類に応じて異なる補正係数を用い、インクの種類に適した目詰まり増加値を算出できるようにしている。これにより、より適切な目詰まり指標値Sを算出することが可能となり、不要に吐出駆動周波数を落とすことなく、記録ヘッド34の寿命を延ばすことができる。
【0057】
〔制御例6〕
次に、本実施形態の画像形成装置において記録ヘッドの寿命を延ばすための更に他の制御例(以下、本制御例を「制御例6」という。)について説明する。
一般に、異物除去フィルタのメッシュサイズやフィルタ材料の違いによって異物除去フィルタの目詰まり度合いの増加量が異なる。例えば、メッシュサイズが大きいほどフィルタの目詰まりが生じやすい。また、インクの樹脂成分の種類とフィルタ材料との関係から生じる互いの吸着性はインクとフィルタ材料の組合せで異なり、フィルタの目詰まり度合いに影響を与える。よって、本制御例6では、異物除去フィルタの種類ごとに異なる補正係数を用意している。この補正係数は、上記制御例5と同様の手順で算出された目詰まり増加値を、フィルタの種類に応じて補正するための係数であり、事前実験を繰り返して調査したデータから各フィルタの種類のインクに対する目詰まり度合いを把握することにより設定することができる。
なお、本制御例6では、上記制御例5と組み合わせる場合について説明するが、上記制御例1や上記制御例2や上記制御例3や上記制御例4と組み合わせても良い。
【0058】
図10は、本制御例6に係る制御の流れを示すフローチャートである。
印字命令、空吐出命令、吸引メンテナンス命令のいずれかを受信すると(S1)、制御部は、それぞれの命令に従ったインク排出処理を実行するとともに(S2)、その処理により各色の記録ヘッド34から排出したインクの排出量を、色ごと(記録ヘッドごと)にカウントする(S3)。そして、所定の選択条件(本制御例6では、上記制御例4や上記制御例5と同様、受信した命令の種類、記録ヘッドの種類、検知温度、放置時間)に応じて、対応する目詰まり基準値をROMから読み出す。具体的には、黒用記録ヘッド34kと、カラー記録ヘッド34y,34m,34cとで異なる目詰まり基準値の群の中から、その検知温度及び算出した放置時間に応じた目詰まり基準値を、色ごとに読み出す(S41〜43)。
【0059】
その後、制御部は、読み出した各色の「目詰まり基準値」に、カウントした各色の「インク排出量」を乗じ、これにより得られた演算結果を各色の目詰まり増加値として算出する(S5)。このようにして目詰まり増加値を算出したら、本制御例6では、ROMに予め記憶されているインク種類とフィルタ種類との組合せに応じて用意された補正係数のうち、各色のインク種類及びフィルタ種類の組合せに対応する補正係数を読み出す(S61)。そして、上記S5において算出した各色の目詰まり増加値に、対応する補正係数を乗じる補正処理を行う(S62)。このようにして補正された各色の目詰まり増加値を前回算出した目詰まり指標値Sに加算し、加算後の目詰まり指標値Sを現在の目詰まり指標値Sとして更新する(S6)。以後の処理は、上記制御例5と同じなので、説明を省略する。
【0060】
以上、本制御例6によれば、フィルタの種類に応じて異なる補正係数を用い、フィルタの種類に適した目詰まり増加値を算出できるようにしている。これにより、より適切な目詰まり指標値Sを算出することが可能となり、不要に吐出駆動周波数を落とすことなく、記録ヘッド34の寿命を延ばすことができる。
【0061】
〔制御例7〕
次に、本実施形態の画像形成装置において記録ヘッドの寿命を延ばすための更に他の制御例(以下、本制御例を「制御例7」という。)について説明する。
上述した制御例1〜6においては、各色について設定変更した吐出駆動周波数のうち最も遅い吐出駆動周波数で吐出駆動制御を行う場合について説明したが、色間(記録ヘッド間)で同じ吐出駆動周波数を用いる必要がない吐出駆動時には、その吐出駆動に係る色(記録ヘッド)についての吐出駆動周波数の設定値を用いて吐出駆動すれば、更に吐出駆動周波数を不要に落とす必要がなくなる。よって、本制御例7では、一例として、モノクロ印刷時には黒用記録ヘッド34kの設定値に係る吐出駆動周波数で吐出駆動制御を行い、カラー印刷時にはすべての記録ヘッドの設定値の中で最も遅い吐出駆動周波数に設定された設定値で吐出駆動制御を行う。
【0062】
以上、本制御例7によれば、例えば、シアン記録ヘッド34cの目詰まり指標値Sのみが許容閾値Rを越えていて、黒用記録ヘッド34kの目詰まり指標値Sはまだ許容閾値Rを越えていない場合、カラー印刷時は吐出駆動周波数を落とすが、モノクロ印刷時には吐出駆動周波数を落とさずに画像形成を行うことができる。これにより、各々のモードで最大限可能な高速印刷が可能になる。
【0063】
〔制御例8〕
次に、本実施形態の画像形成装置において記録ヘッドの寿命を延ばすための更に他の制御例(以下、本制御例を「制御例8」という。)について説明する。
本制御例8では、上述した制御例1〜7のように各色について吐出駆動周波数の設定変更を行った結果、印刷速度がカラー印刷モードよりモノクロ印刷モードの方が低くなった場合、モノクロ印刷モード時には、黒用記録ヘッド34kを用いる単色印刷方式に代えて、カラー記録ヘッド34y,34m,34cを用いたコンポジットブラック印刷方式に切り替える。すなわち、モノクロ印刷モード時の黒色を、黒用インクではなく、イエロー、マゼンタ、シアンの3色で再現する。これにより、黒用記録ヘッド34kのフィルタ目詰まりが進行してモノクロ印刷モード時の印刷速度が遅くなった場合でも、カラー記録ヘッド34y,34m,34cを代用することにより、より高速なモノクロ印刷速度を維持できる。
【0064】
以上、本実施形態に係る画像形成装置は、液体であるインク中の異物を除去するフィルタユニット36の異物除去フィルタを備えた液体吐出ヘッドとしての記録ヘッド34のノズル34aから、異物除去フィルタにより異物が除去されたインクの液滴を吐出駆動周波数に従って記録材としての用紙に対して吐出し、用紙上に画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置である。この画像形成装置は、異物除去フィルタの目詰まり度合いを予測し、その目詰まり度合いを示す目詰まり指標値Sを決定する目詰まり指標値決定手段、及び、決定した目詰まり指標値Sが許容閾値Rを越えているときは、吐出駆動周波数を、その許容閾値Rを超えていないときの吐出駆動周波数よりも低い周波数に変更する吐出駆動周波数制御手段として機能する制御部を備えている。吐出駆動周波数を下げると、ノズル34aから連続して液滴を吐出するときの吐出時間間隔が長くなる。よって、周波数を下げる前の吐出駆動周波数でそのまま画像形成を行うと異物除去フィルタの目詰まりによって吐出に必要なインクを必要な時間内に供給できずに印刷不良が生じてしまうような状況(寿命を迎えた状況)であっても、吐出駆動周波数を下げることでインクの供給が間に合うようになり、印刷不良の発生を抑制できる。したがって、異物除去フィルタの寿命を延命できるので、異物除去フィルタの目詰まりに起因する画像形成装置の寿命を延ばすことができる。
また、本実施形態においては、上述した制御例1で説明したように、環境温度を検知する環境温度検知手段としての温度センサと、温度センサの検知結果に基づいて許容閾値Rを決定する許容閾値決定手段としての制御部とを有している。これにより、環境温度の違いによってインクの流動性が異なることに起因した印刷不良の発生時期の違いに応じて、吐出駆動周波数を適切な時期に下げることができる。よって、その環境温度に対応したできるだけ速い印字速度を確保できる。
また、本実施形態において、制御部は、所定のタイミングで、前回の目詰まり指標値の決定から今回の目詰まり指標値の決定までの間における異物除去フィルタの目詰まり度合いの増加量を示す目詰まり増加値を予測して決定し、決定した目詰まり増加値の累積値に基づいて目詰まり指標値Sを決定している。これにより、異物除去フィルタの現在の目詰まり度合いとの関連性が高い目詰まり指標値Sを決定することができる。
特に、本実施形態では、上記制御例1で説明したように、前回の目詰まり指標値の決定から今回の目詰まり指標値の決定までの間に記録ヘッド34のノズル34aから排出されるインクの排出量をカウントする液体排出量カウント手段を設け、制御部は、カウントしたインク排出量に基づいて目詰まり増加値を予測して決定する。フィルタの目詰まり度合いの増加量は、インク排出量と高い相関があるので、異物除去フィルタの現在の目詰まり度合いとの関連性が高い目詰まり指標値Sを決定することができる。
また、本実施形態では、上記制御例1で説明したように、吐出動作とは異なる動作によって記録ヘッド34のノズル34aからインクを押し出すか又は記録ヘッド34のノズル34aからインクを吸引することにより、記録ヘッド34のノズル34aからインクを強制排出する強制排出手段としてのメンテナンスユニット91を設け、制御部は、カウントしたインク排出量のうち、メンテナンスユニット91により強制的に排出されたインク排出量については、印刷処理時や空吐出処理時のような吐出動作により排出されたインク排出量よりも、目詰まり増加値が低くなるように予測して決定している。これにより、このようなインクの排出方法の違いによる目詰まり度合いの増加量の違いを考慮して、異物除去フィルタの現在の目詰まり度合いとの関連性が高い目詰まり指標値Sを決定することができる。
また、本実施形態では、上記制御例3で説明したように、前回の目詰まり指標値の決定から今回の目詰まり指標値の決定までの間のインクの温度を検知する液体温度検知手段としての温度センサを設け、制御部は、検知したインクの温度に基づいて目詰まり増加値を予測して決定している。これにより、インクの温度の違いによる異物除去フィルタの目詰まり度合いの増加量の違いを考慮して、異物除去フィルタの現在の目詰まり度合いとの関連性が高い目詰まり指標値Sを決定することができる。
また、本実施形態では、上記制御例4で説明したように、前回の目詰まり指標値の決定から今回の目詰まり指標値の決定までの間における吐出動作を行わない放置時間をカウントする放置時間カウント手段を設け、制御部は、カウントした放置時間に基づいて目詰まり増加値を予測して決定している。これにより、放置時間の違いによる異物除去フィルタの目詰まり度合いの増加量の違いを考慮して、異物除去フィルタの現在の目詰まり度合いとの関連性が高い目詰まり指標値Sを決定することができる。
また、本実施形態では、上記制御例5で説明したように、記録ヘッド34から吐出するインクの種類を示すインク種類情報を記憶する液体情報記憶手段としての記憶領域をROM内に設け、制御部は、インク種類情報に基づいて目詰まり増加値を予測して決定している。これにより、顔料系インクなどの顔料粒径や、異物除去フィルタのフィルタ材料に対する吸着性を異ならせるインク成分などを考慮して、異物除去フィルタの現在の目詰まり度合いとの関連性が高い目詰まり指標値Sを決定することができる。
また、本実施形態では、上記制御例6で説明したように、異物除去フィルタの種類を示すフィルタ情報を記憶するフィルタ情報記憶手段としての記憶領域をROM内に設け、制御部は、フィルタ情報に基づいて目詰まり増加値を予測して決定している。これにより、フィルタのメッシュサイズや、インク成分の吸着性を異ならせるフィルタ材料などを考慮して、異物除去フィルタの現在の目詰まり度合いとの関連性が高い目詰まり指標値Sを決定することができる。
また、本実施形態では、上記制御例2で説明したように、異物除去フィルタをインクが通過する時の流速が互いに異なるように構成された黒用記録ヘッド34kとカラー記録ヘッド34y,34m,34cとを備えており、制御部は、これらの2種類の記録ヘッドごとに、それぞれの構成に応じて異物除去フィルタの目詰まり度合いを予測し、各記録ヘッドの異物除去フィルタについての目詰まり指標値Sを決定し、決定した各記録ヘッドについての目詰まり指標値Sと許容閾値Rとを比較し、いずれかの記録ヘッドの目詰まり指標値が許容閾値を越えているときは、吐出駆動周波数を、その許容閾値を超えていないときの吐出駆動周波数よりも低い周波数に変更する。これにより、異物除去フィルタをインクが通過する時の流速の違いを考慮して、異物除去フィルタの現在の目詰まり度合いとの関連性が高い目詰まり指標値Sを決定することができる。
また、本実施形態では、上記制御例7で説明したように、互いに異なる種類のインクを吐出する4種類の記録ヘッドを備えており、1種類の記録ヘッド34kを用いて画像を形成する第1画像形成モードであるモノクロ印刷モードと4種類の記録ヘッドを用いて画像を形成する第2画像形成モードであるカラー印刷モードとに画像形成モードを切り換えて、画像形成動作を制御する制御手段を有し、制御部は、画像形成で用いる記録ヘッドの目詰まり指標値Sが許容閾値Rを越えているときは、当該画像形成時における吐出駆動周波数を、該許容閾値を超えていないときの吐出駆動周波数よりも低い周波数に変更し、画像形成で用いない記録ヘッドの目詰まり指標値が許容閾値Rを越えていても、画像形成で用いる記録ヘッドの目詰まり指標値が許容閾値を越えていないときは、当該画像形成時における吐出駆動周波数を低い周波数には変更しない。これにより、吐出駆動周波数を不要に下げてしまう事態を軽減でき、より高速な印刷速度を確保することが可能となる。
また、本実施形態では、上記制御例8で説明したように、黒のインクを吐出する黒用記録ヘッド34k、及び、互いに異なる複数の色(Y、M、C)のカラーインクをそれぞれ吐出する3つのカラー用記録ヘッド34y,34m,34cを備えており、モノクロ画像を形成するモノクロ印刷モードとカラー用記録ヘッド34y,34m,34cを用いてカラー画像を形成するカラー印刷モードとに画像形成モードを切り換えて、画像形成動作を制御する制御手段を有し、この制御手段は、モノクロ印刷モードで画像形成動作を制御する際、黒用記録ヘッド34kの吐出駆動周波数と、カラー用記録ヘッド34y,34m,34cの吐出駆動周波数とを比較し、黒用記録ヘッド34kの吐出駆動周波数の方が高い場合には黒用記録ヘッド34kを用いてモノクロ画像を形成し、カラー用記録ヘッド34y,34m,34cの吐出駆動周波数の方が高い場合にはカラー用記録ヘッド34y,34m,34cを用いてモノクロ画像を形成する。これにより、黒用記録ヘッド34kのフィルタ目詰まりが進行してモノクロ印刷モード時の印刷速度が遅くなった場合でも、カラー記録ヘッド34y,34m,34cを代用することにより、より高速なモノクロ印刷速度を維持できる。
【0065】
なお、異物除去フィルタの目詰まり度合いに影響を与える種々の条件を、最終的に吐出駆動周波数を落とす時期に反映させる方法として、本実施形態では、「目詰まり増加値」に反映させる方法、「許容閾値」に反映させる方法のいずれかを適宜選択して反映させている。また、「目詰まり増加値」に反映させる方法としては、「目詰まる基本値」に反映させる方法や、「補正係数」に反映させる方法などがある。いずれの方法を採用して反映させるかは、異物除去フィルタの目詰まり度合いに影響を与える種々の条件ごとに適宜設定でき、本実施形態で説明したものに限られない。
【符号の説明】
【0066】
10 インクカートリッジ
33 キャリッジ
34 記録ヘッド
35 ヘッドタンク
36 フィルタユニット
91 メンテナンスユニット
98 サブメンテナンスユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2003−39705号公報
【特許文献2】特開2010−76440号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の異物を除去する異物除去フィルタを備えた液体吐出ヘッドのノズルから、該異物除去フィルタにより異物が除去された液体の液滴を吐出駆動周波数に従って記録材に対して吐出し、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
上記異物除去フィルタの目詰まり度合いを予測し、その目詰まり度合いを示す目詰まり指標値を決定する目詰まり指標値決定手段と、
上記目詰まり指標値決定手段が決定した目詰まり指標値が許容閾値を越えているときは、上記吐出駆動周波数を、該許容閾値を超えていないときの吐出駆動周波数よりも低い周波数に変更する吐出駆動周波数制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
環境温度を検知する環境温度検知手段と、
該環境温度検知手段の検知結果に基づいて上記許容閾値を決定する許容閾値決定手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
上記目詰まり指標値決定手段は、所定のタイミングで、前回の目詰まり指標値の決定から今回の目詰まり指標値の決定までの間における上記異物除去フィルタの目詰まり度合いの増加量を示す目詰まり増加値を予測して決定し、決定した目詰まり増加値の累積値に基づいて上記目詰まり指標値を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3の画像形成装置において、
前回の目詰まり指標値の決定から今回の目詰まり指標値の決定までの間に上記液体吐出ヘッドのノズルから排出される液体の排出量をカウントする液体排出量カウント手段を有し、
上記目詰まり指標値決定手段は、上記液体排出量カウント手段がカウントした液体排出量に基づいて上記目詰まり増加値を予測して決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、
吐出動作とは異なる動作によって上記液体吐出ヘッドのノズルから液体を押し出すか又は該液体吐出ヘッドのノズルから液体を吸引することにより、該液体吐出ヘッドのノズルから液体を強制排出する強制排出手段を有し、
上記目詰まり指標値決定手段は、上記液体排出量カウント手段がカウントした液体排出量のうち、上記強制排出手段により排出された液体排出量については、吐出動作により排出された液体排出量よりも、上記目詰まり増加値が低くなるように予測して決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前回の目詰まり指標値の決定から今回の目詰まり指標値の決定までの間の液体温度を検知する液体温度検知手段を有し、
上記目詰まり指標値決定手段は、上記液体温度検知手段が検知した液体温度に基づいて上記目詰まり増加値を予測して決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前回の目詰まり指標値の決定から今回の目詰まり指標値の決定までの間における吐出動作を行わない放置時間をカウントする放置時間カウント手段を有し、
上記目詰まり指標値決定手段は、上記放置時間カウント手段がカウントした放置時間に基づいて上記目詰まり増加値を予測して決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記液体吐出ヘッドから吐出する液体の種類を示す液体情報を記憶する液体情報記憶手段を有し、
上記目詰まり指標値決定手段は、上記液体情報記憶手段に記憶されている液体情報に基づいて上記目詰まり増加値を予測して決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記異物除去フィルタの種類を示すフィルタ情報を記憶するフィルタ情報記憶手段を有し、
上記目詰まり指標値決定手段は、上記フィルタ情報記憶手段に記憶されているフィルタ情報に基づいて上記目詰まり増加値を予測して決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記異物除去フィルタを液体が通過する時の流速が互いに異なるように構成された複数種類の液体吐出ヘッドを備えており、
上記目詰まり指標値決定手段は、上記複数種類の液体吐出ヘッドごとに、それぞれの構成に応じて上記異物除去フィルタの目詰まり度合いを予測し、各液体吐出ヘッドの異物除去フィルタについての目詰まり指標値を決定し、
上記吐出駆動周波数制御手段は、上記目詰まり指標値決定手段が決定した各液体吐出ヘッドについての目詰まり指標値と上記許容閾値決定手段が決定した許容閾値とを比較し、いずれかの液体吐出ヘッドの目詰まり指標値が該許容閾値を越えているときは、上記吐出駆動周波数を、該許容閾値を超えていないときの吐出駆動周波数よりも低い周波数に変更する吐出駆動周波数制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
互いに異なる種類の液体を吐出する複数種類の液体吐出ヘッドを備えており、
1種類の液体吐出ヘッドを用いて画像を形成する第1画像形成モードと2種類以上の液体吐出ヘッドを用いて画像を形成する第2画像形成モードとに画像形成モードを切り換えて、画像形成動作を制御する制御手段を有しており、
上記吐出駆動周波数制御手段は、画像形成で用いる液体吐出ヘッドの目詰まり指標値が上記許容閾値を越えているときは、当該画像形成時における吐出駆動周波数を、該許容閾値を超えていないときの吐出駆動周波数よりも低い周波数に変更し、画像形成で用いない液体吐出ヘッドの目詰まり指標値が上記許容閾値を越えていても、画像形成で用いる液体吐出ヘッドの目詰まり指標値が上記許容閾値を越えていないときは、当該画像形成時における吐出駆動周波数を低い周波数には変更しないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
黒のインクを吐出する黒用液体吐出ヘッド、及び、互いに異なる複数の色のカラーインクをそれぞれ吐出する複数のカラー用液体吐出ヘッドを備えており、
モノクロ画像を形成するモノクロ画像形成モードと上記複数のカラー用液体吐出ヘッドを用いてカラー画像を形成するカラー画像形成モードとに画像形成モードを切り換えて、画像形成動作を制御する制御手段を有しており、
上記制御手段は、モノクロ画像形成モードで画像形成動作を制御する際、上記吐出駆動周波数制御手段により制御された上記黒用液体吐出ヘッドの吐出駆動周波数と、該吐出駆動周波数制御手段により制御された上記複数のカラー用液体吐出ヘッドの吐出駆動周波数とを比較し、該黒用液体吐出ヘッドの吐出駆動周波数の方が高い場合には該黒用液体吐出ヘッドを用いてモノクロ画像を形成し、該複数のカラー用液体吐出ヘッドの吐出駆動周波数の方が高い場合には該複数のカラー用液体吐出ヘッドを用いてモノクロ画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−183730(P2012−183730A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48559(P2011−48559)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】