説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置本体の前面を開閉自在に覆う前面カバーを開放するための解除レバ
ーを、画像形成装置を操作する操作者から見えにくくし、また、誤操作しにくくする。
【解決手段】画像形成装置本体2の前面側を覆う開閉自在な前面カバー3は、下端側を画
像形成装置本体2によって支持されている。排紙トレイ10にシートを排出するシート排
出口55が排出トレイ10から突出するように背面側を向けて配置されている。前面カバ
ー3を開放するための解除レバー80を、シート排出口55の左側及び右側に、背面側を
向けて配置する。解除レバー80は、正面側から見えにくく、かつ誤操作されにくい。意
図的に操作する際には、簡単に操作できる。作業者は、解除レバー80の操作から前面カ
バー3の開放動作を一連の動作として円滑に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置本体の前面に、例えば、ジャム処理を行うときに開放する開閉
自在な前面カバーを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ,複写機,ファクシミリ等の画像形成装置においては、シート搬送部でシート
を搬送し、このシートに画像形成部で画像を形成する。例えば、画像形成装置が、オフィ
ス等でよく使用される電子写真方式の画像形成装置である場合には、給紙カセット内に収
納されたシートを送り出す給紙時や、シート上に転写されたトナー像を加熱・加圧して定
着する定着時に、ジャム(紙詰まり)が発生しやすい。このため、画像形成装置では、正
面又は左右の側面に開閉可能な開閉カバーを設け、ジャム時には、この開閉カバーを開放
して、シート搬送路の一部を露出させてジャム紙を容易に除去することができるようにな
っている。
【0003】
開閉カバーは、普通、ロック部材によって画像形成装置本体にロックされており、この
ロック部材を、操作者(ユーザ,サービスマン等)がレバー,ボタン等の解除部材を押し
たり引いたりすることで解除することにより、開放することができるようになっている。
【0004】
従来、このような解除部材は、ジャムが発生した場合に誰でもが簡単に見つけられるよ
うに、特許文献1に示すように、画像形成装置本体の正面側や側面の比較的目立つ部分に
、しかも操作しやすいように配置されているのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−351282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術によると、解除部材は、操作者に目立ち、かつ操作しや
すいように配置されているので、第1の問題として、例えば、操作者が画像形成後のシー
トを取り出す際に、誤って触れたり、不用意に触れたりして、ご操作するおそれがある。
また、操作者から見やすい箇所に目立つように配置されているがゆえに、美観を損ねると
いった第2の問題も発生する。
【0007】
そこで、本発明は、画像形成装置を操作する操作者からは見えにくく、また誤操作され
難い箇所に配置されていながら、操作が必要な場合には容易に操作できる解除部材を備え
た画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、シートに画像を形成する画像形成部と、画像形成に係る前記シートを搬送
するシート搬送部と、前記画像形成部及び前記シート搬送部とが配設された画像形成装置
本体と、を備えた画像形成装置に関する。この発明に係る画像形成装置は、操作部を有す
るとともに前記画像形成装置本体によって開閉自在に支持され、前記画像形成装置本体の
前面側を覆う閉鎖位置と前記画像形成装置本体の一部を露出させる開放位置とをとる前面
カバーと、前記画像形成装置本体と前記前面カバーとの間に介装されて前記前面カバーを
前記閉鎖位置に保持する保持機構と、を備えている。そして、前記保持機構は、前記画像
形成装置本体と前記前面カバーとのうちの一方に支持されて他方に係脱可能なロック部材
と、前記ロック部材の係合を解除する解除部材と、を有している。また、前記解除部材は
、前記前面カバーの上端側における前記操作部よりも後側に位置する面であって、かつ背
面側を向いた面に配設されている。また、前記前面カバーは、前記画像形成装置本体の前
記前面側に位置する操作者がその左右の手を前記前面カバーを形作る左右のパネルの前記
上端側で且つ後端に掛けると、前記操作者の指で前記解除部材を操作できるようになって
おり、前記操作者が前記解除部材を操作して前記ロック部材の係合を解除し、そのまま操
作者が左右の手を手前側に引くことにより、前記閉鎖位置から前記開放位置まで開かれ、
前記画像形成装置本体の一部を露出させることができるようになっている。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、解除部材が、前面カバーの上端側における操作部よりも後側に位置
する面であって、かつ背面側を向いた面に配設されているので、操作者が操作部の操作時
に位置する、画像形成装置の正面側からは、解除部材は、見にくくなり、また、誤操作も
されにくくなる。また、本願発明によれば、作業者は、解除部材の操作から前面カバーの
開放動作を一連の動作として円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】画像形成装置全体を、その前側の左斜め上方から見た斜視図である。
【図2】画像形成装置全体を、その左側の後斜め上方から見た斜視図である。
【図3】左側から見た画像形成装置の内部の構造を模式的に示す図である。
【図4】図1の状態から取り外された状態の前面カバーの斜視図である。
【図5】左パネルを取り外した状態の前面カバーの上側部分を左側から見た図である。
【図6】図5に示す状態から解除部材としての解除レバーを操作して、ロック部材を動作させた状態を説明する図である。
【図7】解除レバー、スライド部材、回転部材、連結部材等を説明する拡大斜視図である。
【図8】ロック部材を取り出して示す斜視図である。
【図9】前面カバー及び搬送ユニットを説明する模式図であり、(a)は双方の閉鎖位置(閉鎖状態)を示し、(b)は開放位置(開放状態)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。なお、各図面において、同じ符号を
付した部材等は、同じ構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するもの
とする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
【0012】
<実施形態1>
図1〜図4を参照して、本発明に係る画像形成装置1の全体について説明する。なお、
図1〜図3においては、画像形成装置1における上下前後左右の方向を矢印で示している
。図1〜図3のうち、図1は、画像形成装置1の全体を、その前側の左斜め上方から見た
斜視図である。また、図2は、画像形成装置1の全体を、その左側の後斜め上方から見た
斜視図である。また、図3は、左側から見た画像形成装置1の内部の構造を模式的に示す
図である。そして、図4には、図1の状態から取り外された状態の前面カバー3の斜視図
を示している。ただし、同図においては後述する手差しトレイ16が取り外れている。
【0013】
ここで、画像形成装置1としては、プリンタ,複写機,ファクシミリ,及びこれらの複
合機等があげられるが、以下の説明では、画像形成装置1がプリンタである場合を例に説
明する。同図に示す画像形成装置1は、電子写真方式、中間転写方式、タンデム方式を採
用した、4色フルカラーの画像形成装置1である。
【0014】
図1,図2を参照して、画像形成装置1の全体を外側から見た構成について説明する。
画像形成装置1は、ほぼ箱型直方体状の画像形成装置本体2と、この画像形成装置本体2
によって開閉自在に支持された前面カバー3とを備えている。
【0015】
画像形成装置本体2は、前面が、前面カバー3によって覆われ、左側面及び右側面が合
成樹脂製の左外装パネル4及び右外装パネル5によって覆われている。画像形成装置本体
2の後面は、構造物として本体フレーム6を構成する板金の一部7が露出されている。画
像形成装置本体2の上面は、前部が前面カバー3によって覆われ、中間部から後部にかけ
てが、後上がりのシート積載面8を有する排紙トレイ10によって覆われている。
【0016】
前面カバー3は、前外装パネル11と、この内側に組み込まれた後述のシート搬送部2
4の一部とによって構成されている。前外装パネル11は、前パネル12と、この上端に
続く後上がりの上パネル13と、逆「L」字形の左パネル14及び右パネル15とが一体
に構成されている。前パネル12には、長方形状の手差しトレイ16が配設されている。
手差しトレイ16は、下端側に揺動中心を有していて、図1に示す、起立姿勢の閉鎖位置
にあっては、前パネル12の一部を構成するとともに、上端側が前方に引き出された後下
がりの開放位置(不図示)にあっては、上面にシートを載せる給紙台となる。上パネル1
3には、操作パネル(操作部)17が配置されている。操作パネル17は、画像形成装置
1の正面側に立って操作する操作者(例えば、ユーザ)が見やすいように、後端側が少し
高くなるようにゆるく傾斜してほぼ上向きに配置されている。操作パネル17には、タッ
チパネル式の液晶表示部や、各種ボタンが配置されていて、操作者は、画像形成装置1の
正面に立った状態で、この操作パネル17により画像形成装置1の全体を操作することが
できるようになっている。左パネル14及び右パネル15は、前面カバー3の内側に構成
されたシート搬送部24の一部をそれぞれ左側及び右側から覆うように配設されている。
【0017】
前面カバー3は、後述するように、下端側が画像形成装置本体2によって揺動自在に支
持されていて、全体が開閉自在となっている。前面カバー3を開放する際に操作する後述
の解除レバー(解除部材)80は、図2に示すように、左パネル14の上端側でかつ後端
側の内側(右側)と、右パネル15の上端側でかつ後端側の内側(左側)とに配設されて
いる。なお、解除レバー80については後に詳述する。上述の構成の前面カバー3は、操
作者が、画像形成装置1の正面側から前面カバー3を手前側に開いて、ジャム処理(紙詰
まりを起こしたシートを除去する作業)を行うことが可能である。さらに、後述するよう
に、画像形成対象となるシートが収納される給紙カセット25を、同じく正面側から着脱
できるようになっている。このように、操作者は、操作パネル17を使用しての画像形成
装置1の操作全般、ジャムが発生したときのそのジャム処理、シートがなくなったときの
給紙カセット25に対するシートの補給等をすべて画像形成装置1の正面側から行うこと
ができるようになっている。なお、前面カバー3については、後にさらに詳述する。
【0018】
以上で、画像形成装置1の全体を外側から見た構成についての説明を終了する。
【0019】
次に、図3を参照して、画像形成装置1の内部の構造について説明する。画像形成装置
1には、画像形成装置本体2の下側から上側かけて順に、シート収納部20、基板収納部
21、画像形成部22、トナー補給部23、排紙トレイ10が設けられている。また、画
像形成装置本体2の前側と、前面カバー3との間には、シート搬送部24が設けられてい
る。
【0020】
シート収納部20には、給紙カセット25が配設されている。給紙カセット25は、複
数枚のシートを積層状態で収納しており、底部に配設されたリフト板26によって積層状
態のシートの先端側(同図中の右側)を上方に付勢している。これにより、給紙カセット
25内の最上位のシートが、後述するシート搬送部24のピックアップローラ27によっ
て給紙され、さらに給送ローラ28、リタードローラ30によって重送が防止されて1枚
だけ下流側に給送される。この給紙カセット25は、画像形成装置1の正面側から抜差し
できるようになっている。給紙カセット25の上方には基板収納部21が配設されている

【0021】
基板収納部21には、画像形成装置1の全体を制御する基板や電装品等(不図示)が配
設されている。基板収納部21の上方には、画像形成部22が配設されている。
【0022】
画像形成部22には、中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31の回転方向(矢
印R31方向)に沿って同様な構成の4つ(4色)の画像形成ステーション、すなわちイ
エロー(Y)の画像形成ステーション32,マゼンタ(M)の画像形成ステーション33
,シアン(C)の画像形成ステーション34,ブラック(Bk)の画像形成ステーション
35が配設されている。イエローの画像形成ステーション32は、感光ドラム36と、感
光ドラム36の周囲にその回転方向(矢印方向)に沿って配設された、帯電装置37、露
光装置38、現像装置40、1次転写ローラ41、ドラムクリーナ42等を有している。
感光ドラム36は矢印方向に所定のプロセススピードで回転駆動される。感光ドラム36
の表面(外周面)は、帯電装置37によって所定の極性・電位に一様(均一)に帯電され
た後、パーソナルコンピュータ(不図示)等から送られてきた画像情報に基づく露光装置
38の露光によって露光部分の電荷が除去されて静電潜像が形成される。この静電潜像は
、現像装置40によって現像剤中のトナーが付着されてトナー像として現像される。なお
、本実施形態では、現像剤は、トナーとキャリヤとを主成分とする2成分現像剤が使用さ
れている。
【0023】
上述のようにして感光ドラム36の表面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト31
に転写される。中間転写ベルト31は、駆動ローラ43と従動ローラ44とに張架されて
おり、駆動ローラ43の矢印方向の回転によって矢印R31方向に回転する。感光ドラム
36上に形成されたイエローのトナー像は、1次転写部T1において、1次転写ローラ4
1により、中間転写ベルト31上に1次転写される。トナー像の1次転写後に感光ドラム
36の表面に残ったトナー(1次転写残トナー)は、ドラムクリーナ42によって除去さ
れる。
【0024】
残りの3色(シアン,マゼンタ,ブラック)の画像形成ステーション33,34,35
も上述のイエローの画像形成ステーション32と同様の構成であり、これらの画像形成ス
テーション33,34,35の感光ドラム36の表面にも同様にして、シアン,マゼンタ
,ブラックの各色のトナー像が形成され、中間転写ベルト31上に順次に1次転写される
。こうして、4色のトナー像は、中間転写ベルト31上で重ね合わされる。これら中間転
写ベルト31上の4色のトナー像は、後述するシート搬送部24によって搬送されるシー
トに、2次転写部T2において、2次転写ローラ45によって一括で2次転写される。ト
ナー像の2次転写後に中間転写ベルト31の表面に残ったトナー(2次転写残トナー)は
、従動ローラ44の近傍に配置されたベルトクリーナ46によって除去される。画像形成
部22の上方には、トナー補給部23が設けられている。
【0025】
トナー補給部23には、各色のトナーをそれぞれ個別に収納した4つのトナーコンテナ
、すなわちイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックのトナーコンテナ47,48,50,
51が配設されている。上述の各色の現像装置40には、トナーの濃度(トナー/現像剤
の重量比)を検知するための濃度センサ(不図示)が配設されていて、この濃度センサが
、現像装置40内のトナー量が所定値よりも少なくなったことを検知したときに、各色の
トナーコンテナ47,48,50,51から各色の現像装置40にトナーが補給されるよ
うになっている。トナー補給部23の上方には、排紙トレイ10が設けてある。
【0026】
排紙トレイ10は、画像形成装置本体2の上面を覆うように形成されていて、前後方向
の中間部は、後端側が上方に位置するように傾斜しており、後端側はこの中間部に連続す
るように平らに形成されている。この排紙トレイ10の上面のシート積載面8には、次に
説明するシート搬送部24のシート排出口55から後方に向かって排出されたシートが積
載される。
【0027】
シート搬送部24は、本実施形態においては、画像形成装置本体2の前側と前面カバー
3との間に設けられていて、下方から上方に向かうシートをガイドするシート搬送路52
と、このシート搬送路52よりも前側に配設されて、上方から下方に向かうシートをガイ
ドするシート再搬送路53とを有しており、さらに、手差し給送部54を有している。な
お、本実施形態においては、シート再搬送路53は、後述する前面カバー3の開放によっ
て直接開放されるシート搬送路ということになる。これに対し、シート搬送路52は、前
面カバー3の開放により、後述の搬送ユニット73を介して間接的に開放されるシート搬
送路ということになる。
【0028】
シート搬送路52は、上述の給送ローラ28の近傍から上方に立ち上がり、後方に凸状
にゆるく湾曲しながら上方に延び、中間転写ベルト31の近傍で、湾曲方向を前方に向か
えて上方に延び、後方に向けて斜め上方に延びて、シート排出口55に至る。シート搬送
路52は、相互に対面する後側ガイド52aと前側ガイド52bとによって構成されてお
り、前側ガイド52bの一部が後述する搬送ユニット73に形成されている。シート搬送
路52には、下方から順に、ピックアップローラ27、給送ローラ28、リタードローラ
30、搬送路ローラ対56、レジストローラ対57、上述の中間転写ベルト31を駆動ロ
ーラ43との間に挟みこむ2次転写ローラ45、定着ローラ対58、搬送ローラ対60、
切り換えフラッパ61、排紙ローラ対62等が配設されている。上述の定着ローラ対58
は、ヒータ(不図示)を内蔵した定着ローラ63とこれに当接されて間に定着ニップ部を
構成する加圧ローラ64とを有している。
【0029】
上述の給紙カセット25からピックアップローラ27、給送ローラ28、リタードロー
ラ30によって1枚だけ給送されたシートは、搬送ローラ対56、レジストローラ対57
によって搬送され、2次転写部T2において、中間転写ベルト31上の4色のトナー像が
一括で2次転写され、定着ニップ部を通過する際に加熱・加圧されて表面にトナー像が定
着される。トナー像定着後のシートは、搬送ローラ対60によって切り換えフラッパ61
の下面にガイドされて排紙ローラ対62に搬送され、排紙ローラ対62によって、背面側
を向いたシート排出口55から後方に向けて排出されて、排紙トレイ10のシート積載面
8上に積載させる。なお、同図では、排紙ローラ対62のすぐ下流側に配置された排紙セ
ンサのセンサフラグ65が、排出中のシートPによって動作している状態を示している。
【0030】
シート再搬送路53は、上述のシート排出口55の少し上から前側に向かって傾斜して
延び、緩やかに湾曲しながら、急勾配で後側に傾斜して延び、下端部において下方に凸状
に湾曲しながら、上述のシート搬送路52に合流する。シート再搬送路53は相互に対面
する後側ガイド53aと前側ガイド(ガイド部)53bとによって構成されている。後側
ガイド53aの一部は、後述する搬送ユニット73に形成されている。また、前側ガイド
53bは、そのほとんどが外装パネル11の内側(後端側)に組み込まれて、外装パネル
11とともに前面カバー3を構成している。シート再搬送路53には、シートの再搬送時
に上流側となる上方から順に、反転ローラ対66、切り換えフラッパ61、第1,第2,
第3,第4の再搬送ローラ対67,68,70,71が配設されている。
【0031】
シートの両面に画像を形成する場合には、切り換えフラッパ61が二点鎖線で示す位置
に切り換えられ、表面にトナー像が定着されたシートは、搬送ローラ対60に搬送されて
、切り換えフラッパ61の上面に沿って搬送され、さらに反転ローラ対66によって後方
に向けて搬送される。そして、シートの後端が搬送ローラ対60を抜けて、反転ローラ対
66を抜ける前に反転ローラ対66が逆回転され、第1〜第4の再搬送ローラ対67,6
8,70,71によって下方に搬送され、シート搬送路52に搬送される。そして、シー
トはその裏面に、表面のときと同じようにしてトナー像が転写され、定着され、シート排
出口55から後方に向けて排出されて、排紙トレイ10のシート積載面8に積載される。
なお、シート搬送部24における搬送ローラ対56のすぐ前側には、手差し給送ローラ7
2が配設されていて、閉鎖状態においては前面カバー3の一部を構成する手差しトレイ1
6が引き出され、この手差しトレイ16上にセットされたシートを、搬送ローラ対56側
に向けて給紙するようになっている。
【0032】
上述のシート搬送部24においては、その一部が開閉可能な搬送ユニット73を構成し
ている。搬送ユニット73は、シート搬送路52とシート再搬送路53との間に配置され
ていて、シート搬送路52における前側ガイド52bの一部と、シート再搬送路53にお
ける後側ガイド53aの一部と、レジストローラ対57の一方のローラ57a、2次転写
ローラ45、第3,第4の再搬送ローラ対70,71のそれぞれの一方のローラ70a,
71aとが一体に構成されている。この搬送ユニット73は、下端側に揺動中心を有して
いて、画像形成装置本体2によって開閉自在に支持されている。搬送ユニット73は、後
述するように、前面カバー3が開放されることにより、上端側が前側に開放されて、シー
ト搬送路52の一部及びシート再搬送路53の一部を開放するようになっている。
【0033】
以上で、画像形成装置1の内部の構造についての説明を終える。
【0034】
次に、図4〜図9を参照して、前面カバー3について詳述する。このうち、図4は、図
1に示す画像形成装置1から取り外した状態の前面カバー3の斜視図である。ただし、図
4では、手差しトレイ16を取り外した状態を図示している。また、図5は、左パネル1
4(図1参照)を取り外した状態の前面カバー3の上側部分を左側から見た図である。ま
た、図6は、図5に示す状態から解除部材としての解除レバー80を操作した状態を示す
図である。また、図7は、解除レバー80と、ロック部材81とを示す斜視図である。解
除レバー80とロック部材81とにより保持機構82が構成されている。また、図8は、
ロック部材81を取り出して示す斜視図である。また、図9は、前面カバー3及び搬送ユ
ニット73を説明する模式図であり、このうち、(a)は、前面カバー3及び搬送ユニッ
ト73の閉鎖位置A1,B1を示し、(b)は、開放位置A2,B2を示している。なお
、図9(a),(b)では、画像形成装置本体2の本体フレーム6の一部を構成する左側
板83及び右側板84を二点鎖線で図示している。左側板83は、上述の搬送ユニット7
3及び前面カバー3の左側面を覆い、また、右側板84は、搬送ユニット73及び前面カ
バー3の右側面を覆うように配置されている。
【0035】
図4に示すように、前面カバー3は、下端に揺動中心85を有していて、この揺動中心
85が画像形成装置本体2によって揺動自在に支持されている。画像形成装置本体2は、
図9(a),(b)に示すように、板金製の本体フレーム6のうちの、左側板83及び右
側板84を、前側に延ばして上述の前面カバー3の左側面及び右側面の一部及び搬送ユニ
ット73の左側面及び右側面を覆うようになっている。これら左側板83及び右側板84
の前端側の下端には軸86が突設されていて、上述の前面カバー3の揺動中心85は、こ
の軸86によって揺動自在に支持されている。これにより、前面カバー3は、図9(a)
に示す閉鎖位置A1と、図9(b)に示す開放位置A2とをとることができる。上述の搬
送ユニット73も、下端側に揺動中心(不図示)を有していて、画像形成装置本体2側の
左側板83及び右側板84から突設された軸(不図示)によって揺動自在に支持されてい
る。これにより、搬送ユニット73は、図9(a)に示す閉鎖位置B1と図9(b)に示
す開放位置B2とをとることができる。
【0036】
本実施形態では、この搬送ユニット73は、操作者が特に積極的に開閉動作をする必要
がなく、前面カバー3を開放するとこれに伴って開放され、また、前面カバー3を閉鎖す
るとこれに伴って閉鎖されるようになっている。なお、前面カバー3及び搬送ユニット7
3は、画像形成装置本体2側に設けられたストッパ,ばね等によって、図9(b)に示す
ように、適度な傾斜姿勢を保持した状態でとまるようになっている。前面カバー3及び搬
送ユニット73が開放された場合には、シート搬送路52及びシート再搬送路53は大き
く開放されるため、ジャム紙の除去を簡単に行うことができる。
【0037】
前面カバー3を開放する際には、操作者は、保持機構82の解除レバー80を操作する
。図5〜図8に示すように、保持機構82は、解除部材としての解除レバー80と、この
解除レバー80によって動作されるロック部材81とを備えており、ロック部材81は、
さらに、スライド部材86と、回転部材87と、連結部材88と、フック90とを有して
いる。解除レバー80は、上下方向に長く形成されていて、下端側には、前方を向いた円
弧状の支点91が突設されている。この支点91は、前面カバー3の一部である当接部9
2(二点鎖線で図示)に当接されている。解除レバー80は、上述の支点91を基準とし
て上端側がほぼ前後方向に移動することができるようになっている。解除レバー80の上
端側における背面側には、図2に示すように、操作時に操作者の指がかかりやすいように
、円形のボタン93が形成されている。このボタン93は、背面側を向いていて、画像形
成装置1の正面側で操作パネル17を操作する操作者からは見えないようになっている。
【0038】
上述の支点91からボタン93の中心までの寸法は、通常の大人が、親指を除く4本の
指を軽くあわせて、人差し指をボタン93の中央に当てたときに、下方に位置する小指が
、支点91よりも上の部分に当たるように設定されている。さらに、解除レバー80にお
ける背面側の、支点91に対応する部分の近傍は、緩やかに後方に向かって凸状に湾曲し
ている。これらにより、解除レバー80は、操作者が極端に下端側を操作する場合を除い
て、いずれの位置を操作した場合であっても、ボタン93を有する上端側が後方に移動す
るようになっている。
【0039】
また、解除レバー80の上端側における前面側には、押圧部94が突設されていて、ス
ライド部材86の基端部95に当接されている。本実施形態では、解除レバー80は、左
パネル14(図2参照)の上端側でかつ後端側の内側(右側)、及び右パネル15の上端
側でかつ後端側の内側(左側)において、背面側を向くように配置されている。この位置
は、上述のシート排出口55の周縁部の左側及び右側に対応している。さらに言うと、こ
のシート排出口55は、画像形成装置本体2の上面における前部において、画像形成装置
本体2の上面の排紙トレイ10から上方に突出するようにして背面側を向いて構成されて
いるため、画像形成装置1の正面側に位置する操作者は、積極的に操作するという明確な
意図を持って解除レバー80を操作する際には、容易に操作することができる。
【0040】
スライド部材86は、前後方向に長い角棒状に形成されていて、図7に示すように、上
方に向けて突設された、前後方向の左スライドガイド96及び右スライドガイド(不図示
)の間に挟まれて、前後方向スライド可能に配設されている。また、スライド部材86は
、浮き上がらないように、上述の上パネル13(図1,図2参照)によって上下方向の位
置が規制されている。スライド部材86は、その基端部(後端部)95が上述の解除レバ
ー80の押圧部94に当接されるとともに、先端部(前端部)97が次に説明する回転部
材87に当接されている。
【0041】
回転部材87は、図5〜図7に示すように、左方から見た形状がほぼ扇形に形成されて
いて、一体に構成された軸98を中心に回転可能となっている。回転部材87は、後端側
に当接部100を有していて、上述のスライド部材86の先端部97が当接されている。
また、回転部材87は、前端側に係合部101を有していて、次に説明する連結部材88
の基端部102が係合されている。回転部材87は、軸98を中心に図5中の時計回りに
回転されると、連結部材88の基端部102を左斜め下に引っ張るようになっている。
【0042】
連結部材88は、可撓性を有するベルト状に形成されていて、102が上述の回転部材
87に係合され、中間部103が前側に延びるとともに前面カバー3に沿ってなだらかに
湾曲し、さらに下方に延びて先端部104がフック90の基端部105に連結されている
。なお、図8には、回転部材87に対する係合を解除した状態の連結部材88を二点鎖線
で示している。連結部材88は、前面カバー3に形成されている溝106(図7参照)に
嵌められてガイドされている。
【0043】
フック90は、基端部105が上述の連結部材88の先端部104に連結され、中間部
106が前面カバー3側の軸109によって揺動自在に支持されている。フック90の先
端部107には、上向きの係合凹部108が形成されており、この係合凹部108のさら
に先端側には、傾斜部110が形成されている。上述の図9(a),(b)に示す画像形
成装置本体2の左側板83には、このフック90の係合凹部108が係脱される係合凸部
111が突設されている。なお、フック90は、付勢部材(例えば、ねじりばね)によっ
て図5中の時計回り付勢されていて、係合凸部111に係合されたフック90は、付勢部
材に付勢された状態で、係合凸部に対する係合状態を維持するようになっている。
【0044】
なお、前面カバー3には、フック90の揺動範囲(移動範囲)を規制するストッパ(不
図示)が設けてあって、係合解除時、すなわち前面カバー3の開放時のフック90の位置
を規制している。このストッパは、開放状態の前面カバー3を徐々に閉めていく際に、フ
ック90の傾斜部110が係合凸部111に当たって一旦、退避して係合凹部108が係
合凸部111に係合されるような位置に設定されている。なお、図5,図6においては、
第1,第2,第3の再搬送ローラ対67,68,70(図3参照)を駆動するためのタイ
ミングベルト120,121が図示されている。
【0045】
本実施形態では、図2に示すように、解除レバー80は、前面カバー3の左端側と右端
側との双方に配設されている。これに対応して、図8に示すように、右側の解除レバー8
0に対応する位置には、右のスライド部材112と、回転部材の一部113とが配設され
ていて、この一部113は上述の軸98を介して回転部材87と一体に構成されている。
さらに、右側にも係合凹部115を有するフック114が配設されていて、上述の左のフ
ック90と一体の軸109に固定されている。なお、画像形成装置本体2の右側板84に
おける、右のフック114の係合凹部115に対応する位置には、上述の左側板83の係
合凸部111と同様の係合凸部(不図示)が配設されている。本実施形態では、ロック部
材81が上述のように構成されているので、左右の解除レバー80のうちの少なくとも一
方を操作すれば、係合凸部111等に対するフック90,114のロックを解除して、前
面カバー3を開放することができるようになっている。
【0046】
ここで、上述の保持機構82を構成する各部材、すなわち解除レバー80、スライド部
材86、回転部材87、連結部材88、フック90は、例えば、合成樹脂によって形成さ
れている。さらに、本実施形態では、連結部材88とフック90とは一体に形成されてい
て、その分、保持機構82を構成する部品の部品点数を減らすことができる。
【0047】
上述の前面カバー3は、例えば、シート搬送部24においてジャムが発生した場合に、
以下のようにして開放することができる。操作者が図2に示す左右の解除レバー80のう
ちの少なくとも一方の解除レバー80の上端のボタン93を、図6に示すように手前側(
前面側:矢印a方向)に押すと、解除レバー80の押圧部94がスライド部材86を手前
側(矢印b方向)に押して移動させる。これにより、スライド部材86の先端部97が回
転部材87を矢印c方向に回転させる。すると、連結部材88の基端部102が矢印d方
向に引っ張られるので、連結部材88の先端部104が矢印e方向に引っ張られて、フッ
ク90の基端部105を持ち上げて、フック90の先端部107を矢印f方向に回転させ
る。
【0048】
これにより、画像形成装置本体2側の係合凸部111に対するフック90の係合凹部1
08の係合が解除される。さらに、操作者は、前面カバー3の解除レバー80近傍を手前
に引くことで、前面カバー3を開放して図9(b)に示す開放位置A2に配置することが
できる。これに伴って、搬送ユニット73も開放されて開放位置B2に配置される。これ
により、前面カバー3と搬送ユニット73との間のシート再搬送路53、及び画像形成装
置本体2と搬送ユニット73との間のシート搬送路52が開放されるので、ジャムしたシ
ートを簡単に除去することができる。ジャム処理後、前面カバー3で搬送ユニット73を
押しながら前面カバー3を閉じて閉鎖位置A1に戻すと、保持機構82のフック90が画
像形成装置本体2側の係合凸部111に係合されて、閉鎖状態が保持される。
【0049】
本実施形態では、解除レバー80が、前面カバー3の上端側における操作パネル(操作
部)17よりも後側に位置する面であって、かつ背面側を向いた面に配設されているので
、操作者が操作パネル17の操作時に位置する、画像形成装置1の正面側からは、解除レ
バー80は見にくくなり、また、誤操作もされにくくなる。しかも、操作者が解除レバー
80を操作する意図をもって積極的に操作しようとする際には、操作者は、正面側から特
に移動することなく簡単に操作することができる。また、前面カバー3は、前パネル12
及び上パネル13とも比較的平坦に形成されていて、前面カバー3を開放する際に特につ
かむような部分がないため、操作者は、排紙トレイから上方に突出されている、左パネル
14及び右パネル15の後端に自然に手を掛けるようになる。そして、上パネル13の後
端における左端及び右端に左右の親指をかけると、残りの4本の指は、解除レバー80に
かかり、特に、人差し指が解除レバー80のボタン93に係ることになる。そして、この
ボタン93を手前側に押し、そのまま左右の手を手前側に引くと、前面パネルを開放する
ことができる。つまり、操作者による解除レバー80の操作方向と、前面カバー3の開放
方向とがほぼ一致するので、操作者は、解除レバー80の操作から前面カバー3の開放動
作を、同方向の一連の動作として円滑に行うことができる。
【0050】
ここで、上述のように解除レバー80は、前後方向に対して直交する平面(以下、「基
準面」という。)に対して、ほぼこの基準面上に上下方向を向いて配設されている。つま
り、解除レバー80のボタン93は、背面側(ほぼ真後)を向いている。このため、この
ボタン93を含め、解除レバー80は、画像形成装置1の正面側からはほとんど目視でき
ないようになっていた。本発明は、解除レバー80が背面側を向いているとは、真後に限
定されるものではない。すなわち、上述の基準面に対して、適度な角度を持って配置され
た仮想平面上に解除レバー80が配置されているような場合も含むものである。例えば、
仮想平面が基準面に対して、15度、30度、45度、60度等の傾斜角度を持っている
場合であっても、解除レバー80は、正面側からは見えにくくなる。極端な場合では、傾
斜角度が90度未満であれば、言い換えると、仮想平面に立てた法線が、後ろ向きの成分
を有するような仮想平面であれば、解除レバー80は、少なくとも正面側からは見えにく
くなるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述では、本発明を画像形成装置の前面カバーを開放する構成に適用した例を説明した
場、本発明は、これに限らず、例えば、前面カバーが開閉ない一般的な装置においても適
用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1……画像形成装置1、2……画像形成装置本体、3……前面カバー、10……排紙ト
レイ、17……操作パネル(操作部)22……画像形成部、24……シート搬送部、53
……シート再搬送路(シート搬送路)、53b……前側ガイド(ガイド部)、55……シ
ート排出口、80……解除レバー(解除部材)、81……ロック部材、82……保持機構
、93……ボタン、A1……前面カバーの閉鎖位置、A2……前面カバーの開放位置、P
……シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成部と、画像形成に係る前記シートを搬送するシート搬
送部と、前記画像形成部及び前記シート搬送部とが配設された画像形成装置本体と、を備
えた画像形成装置において、
操作部を有するとともに前記画像形成装置本体によって開閉自在に支持され、前記画像
形成装置本体の前面側を覆う閉鎖位置と前記画像形成装置本体の一部を露出させる開放位
置とをとる前面カバーと、
前記画像形成装置本体と前記前面カバーとの間に介装されて前記前面カバーを前記閉鎖
位置に保持する保持機構と、を備え、
前記保持機構は、前記画像形成装置本体と前記前面カバーとのうちの一方に支持されて
他方に係脱可能なロック部材と、前記ロック部材の係合を解除する解除部材と、を有し、
前記解除部材は、前記前面カバーの上端側における前記操作部よりも後側に位置する面
であって、かつ背面側を向いた面に配設され、
前記前面カバーは、前記画像形成装置本体の前記前面側に位置する操作者がその左右の
手を前記前面カバーを形作る左右のパネルの前記上端側で且つ後端に掛けると、前記操作
者の指で前記解除部材を操作できるようになっており、前記操作者が前記解除部材を操作
して前記ロック部材の係合を解除し、そのまま操作者が左右の手を手前側に引くことによ
り、前記閉鎖位置から前記開放位置まで開かれ、前記画像形成装置本体の一部を露出させ
ることができるようになっている、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置本体は、上面に、画像形成後の前記シートが排出される排紙トレイを
有し、
前記シート搬送部は、前記画像形成装置本体の前記前面側に配置された前記シートを搬
送するシート搬送路を有すると共に、前記排紙トレイの前側に、画像形成後の前記シート
を後側に向けて排出するシート排出口を有し、
前記解除部材は、前記シート排出口の周縁部で且つ前記シート排出口の左側及び右側に
配置されており、いずれか一方の前記解除部材の操作により前記ロック部材の解除を行う
ことができる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−194595(P2012−194595A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159430(P2012−159430)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2007−105666(P2007−105666)の分割
【原出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】