説明

画像形成装置

【課題】第1回転体3と第2回転体6とを同一の動力伝達系に配置して、動力伝達系の簡素化及び小型軽量化を図る場合において、第1回転体3の回転速度ムラをなくす。
【解決手段】本願発明の画像形成装置1は、動力を発生する駆動源40と、駆動源40の動力にて回転駆動する第1回転体3と、駆動源40から第1回転体3に動力伝達する第1動力伝達系41と、第1回転体3よりも動力伝達下流側に位置する第2回転体6と、第1動力伝達系41から第2回転体6に動力伝達する第2動力伝達系45とを備える。第1動力伝達系41と第2動力伝達系45との間に、動力伝達下流側からの低周波振動を抑制する対低周波粘弾性体53を介在させる一方、第1動力伝達系41と第1回転体3との間には、動力伝達上流側からの高周波振動を抑制する対高周波粘弾性体52を介在させる。対高周波粘弾性体52の剛性は対低周波粘弾性体53の剛性よりも高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は画像形成装置に関するものである。画像形成装置には、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれらの機能を複合的に備えた複合機といった各種のものが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式を採用した画像形成装置では、回転駆動する感光体の表面に形成された静電潜像を現像器にてトナー像として顕像化し、当該トナー像を静電的に記録材に転写して画像を得ている。この種の画像形成装置の一例として特許文献1には、画像形成動作の繰り返しによって消耗する複数の消耗部品、例えば感光体、帯電器、現像器及びクリーニング部材等を一体構造にまとめてカートリッジ化し、いわゆるプロセスカートリッジとして着脱交換可能にすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−140744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プロセスカートリッジは消耗部品であるため、ユーザが安価に購入できる価格であり且つ保管場所を取らない小型軽量のものであるのが望ましい。この点、特許文献1のプロセスカートリッジでは、感光体に固着されたドラムギヤと、現像器(現像ローラ)に固着されたローラギヤとを噛み合わせて、感光体と現像器とを動力伝達可能に連結する構成を採用して、動力伝達系の簡素化及び小型軽量化を図っている。
【0005】
しかし、特許文献1のプロセスカートリッジに採用された構成では、感光体固定のドラムギヤと、現像器(現像ローラ)固定のローラギヤとを噛み合わせるため、顕像化に際して現像器に作用する負荷変動の影響が低周波振動として感光体に及び易い。この場合、現像器における負荷変動の影響は感光体の回転速度を変動させるから、その結果、画像に帯状の画像ブレ(バンディング)が生じて、画像品質を低下させるという問題を招来するのであった。感光体の回転速度ムラは、現像器の負荷変動に起因する場合以外に、例えば装置本体側に設けられる駆動源の回転速度ムラや、各ギヤ間の噛み合いによる送り誤差など様々な要因が考えられる。駆動源の回転速度ムラは、高周波振動として感光体に及び易い。従って、前記の問題は、交換式のプロセスカートリッジを適用可能な画像形成装置に顕著に現れるだけでなく、画像形成装置一般に広く共通するものであった。
【0006】
本願発明は、このような現状を改善することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、動力を発生する駆動源と、前記駆動源の動力にて回転駆動する第1回転体と、前記駆動源から前記第1回転体に動力伝達する第1動力伝達系と、前記第1回転体よりも動力伝達の下流側に位置する第2回転体と、前記第1動力伝達系から前記第2回転体に動力伝達する第2動力伝達系とを備えており、前記第1動力伝達系と前記第2動力伝達系との間に、動力伝達下流側からの低周波振動を抑制する対低周波粘弾性体を介在させる一方、前記第1動力伝達系と前記第1回転体との間には、動力伝達上流側からの高周波振動を抑制する対高周波粘弾性体を介在させており、前記対高周波粘弾性体の剛性を前記対低周波粘弾性体の剛性よりも高くしているというものである。
【0008】
請求項2の発明は、動力を発生する駆動源と、前記駆動源の動力にて回転駆動する第1回転体と、前記駆動源から前記第1回転体に動力伝達する第1動力伝達系と、前記第1回転体よりも動力伝達下流側に位置する第2回転体と、前記第1回転体から前記第2回転体に動力伝達する第2動力伝達系とを備えており、前記第1回転体と前記第2動力伝達系との間に、動力伝達下流側からの低周波振動を抑制する対低周波粘弾性体を介在させる一方、前記第1動力伝達系と前記第1回転体との間には、動力伝達上流側からの高周波振動を抑制する対高周波粘弾性体を介在させており、前記対高周波粘弾性体の剛性を前記対低周波粘弾性体の剛性よりも高くしているというものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した画像形成装置において、前記第1回転体はトナー像を担持する感光体ドラム又は中間転写体の駆動ローラであるというものである。
【発明の効果】
【0010】
本願の請求項に記載された発明によると、第1動力伝達系(又は第1回転体)と第2動力伝達系との間に、動力伝達下流側からの低周波振動を抑制する対低周波粘弾性体を介在させ、第1動力伝達系と第1回転体との間に、動力伝達上流側からの高周波振動を抑制する対高周波粘弾性体を介在させるから、前記両粘弾性体の存在によって、前記第1回転体に対する高周波及び低周波両方の振動を的確に抑制できる。このため、画像ブレ(バンディング)等を防止して、画像品質の向上を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】プリンタの概略説明図である。
【図2】第1実施形態における作像部の動力伝達系統の概略説明図である。
【図3】作像部の動力伝達系統の斜視図である。
【図4】図3の断面説明図である。
【図5】動力伝達上流側からの高周波振動を受けた場合の感光体ドラムの位置変動を説明するグラフである。
【図6】動力伝達下流側からの低周波振動を受けた場合の感光体ドラムの位置変動を説明するグラフである。
【図7】第2実施形態における作像部の動力伝達系統の概略説明図である。
【図8】作像部の動力伝達系統の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願発明を画像形成装置の一例であるタンデム方式のカラーデジタルプリンタ(以下、プリンタと称する)に適用した実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「上下」等)を用いる場合は、図1において紙面に直交した方向を正面視とし、これを基準にしている。これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
(1).プリンタの概要
まず、図1を参照しながら、プリンタ1の概要について説明する。プリンタ1は、画像形成部10、給送部20及び定着部30等を備えている。これら各部10,20,30は、プリンタ1の筺体9内に配置されている。図示は省略するが、プリンタ1は例えばLAN等のネットワークに接続されていて、外部端末(図示省略)等からの印刷指令を受け付けると、当該印刷指令に基づいて印刷ジョブを実行するように構成されている。
【0014】
画像形成部10は、像担持体の一例である感光体ドラム3上に形成されたトナー像を記録材Pに転写する役割を担うものであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色に対応する計4つの作像部2及び中間転写ベルト11等を備えている。4つの作像部2は、中間転写ベルト11の下方において、図1の左からイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に、中間転写ベルト11に沿って並べて配置されている。各作像部2は図1の時計方向に回転駆動する感光体ドラム3を有している。感光体ドラム3の周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電部4、露光部5、現像部6、一次転写ローラ7及び感光体クリーナ8が配置されている。なお、図1では説明の便宜上、再現色に応じた符号Y,M,C,Kを各作像部2に添えている。また、イエロー用の作像部2Y以外の作像部2M−2Kでは、感光体ドラム3といった各構成要素の符号3−8を省略している。
【0015】
中間転写ベルト11も像担持体(中間転写体)の一例であり、駆動ローラ12、従動ローラ13及びテンションローラ14に巻き掛けられている。中間転写ベルト11は図1の反時計方向に回転駆動する。中間転写ベルト1のうち駆動ローラ12に巻き掛けられた部分の外側に、給送部20の構成要素である二次転写ローラ25が配置されている。中間転写ベルト11と二次転写ローラ25との当接部分は二次転写位置15である。中間転写ベルト11のうち従動ローラ13に巻き掛けられた部分の外側には、中間転写ベルト11上の未転写トナーを除去する転写ベルトクリーナ16が配置されている。
【0016】
給送部20は、記録材Pを収容する給紙カセット21、給紙カセット21内の記録材Pを搬送路R0に向けて1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ22、繰り出された記録材Pを1枚ずつに分離する分離ローラ対23、1枚に分離された記録材Pを二次転写位置15に記録材Pを送り出すタイミングをとるレジストローラ対24及び二次転写ローラ25等を備えている。給紙カセット21内の記録材Pは、繰り出しローラ22及び分離ローラ対23の回転にて、最上層のものから1枚ずつ搬送路R0に送り出される。
【0017】
定着部30は、ハロゲンランプ等の定着ヒータ33を内蔵した定着ローラ31と、定着ローラ31に対峙する加圧ローラ32とを備えている。定着ローラ31と加圧ローラ32との当接部分が定着位置である。制御部(図示省略)にて定着ヒータ33への通電が制御され、定着ヒータ33が定着に必要な温度に維持される。定着部30の搬送下流側には、印刷済の記録材Pを排出するための排出ローラ対36が配置されている。プリンタ1の上部には、排出ローラ対36に対する排紙トレイ37が設けられている。搬送路R0の終端側は排出ローラ対36に向けて延びている。印刷済の記録材Pは、排出ローラ対36の回転駆動にて排紙トレイ37上に排出される。
【0018】
記録材Pの印刷動作は以下のように行われる。すなわち、作像部2Y−2K毎に、感光体クリーナ8にて清掃後の感光体ドラム3を帯電部4にて一様に帯電させ、露光部5からの露光にて感光体ドラム3の表面に静電潜像を形成する。静電潜像は、現像部6からのトナーにて反転現像され、各色トナー像として顕像化される。各色トナー像は、一次転写ローラ7にて、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で、感光体ドラム3から中間転写ベルト11上に一次転写されて重ねられる。
【0019】
一方、中間転写ベルト11の回転駆動にて二次転写位置15に向かう各色トナー像の移動タイミングに合わせて、記録材Pがレジストローラ対24の回転駆動にて二次転写位置15に搬送される。記録材Pが二次転写位置15を通過する際に、重なった4色のトナー像が記録材Pの片面に一括して二次転写される。二次転写後の中間転写ベルト11上は転写ベルトクリーナ16にて清掃される。二次転写位置15を通り過ぎて片面に未定着トナー像を載せた記録材Pは、定着部30を通過する際に加熱・加圧され、未定着トナー像を定着される。定着後(印刷済)の記録材Pは、排出ローラ対36の回転駆動にて排紙トレイ37上に排出される。
【0020】
例えば各作像部2の現像部6、中間転写ベルト11及び転写ベルトクリーナ16等は、画像形成動作の繰り返しによって消耗する消耗部品に相当するものである。これら各消耗部品は筐体9に交換可能(着脱可能)に装着されている。例えば各作像部2(感光体ドラム3、帯電部4、露光部5、現像部6及び感光体クリーナ8)は、ハウジング35内に収容してカートリッジ化(一体構造化)されていて、いわゆるプロセスカートリッジとして筐体9に交換可能に装着されている。
【0021】
(2).作像部における動力伝達構造の第1実施形態
次に、図2〜図6を参照しながら、作像部2における動力伝達構造の第1実施形態について説明する。プリンタ1の筐体9側には、動力を発生する駆動源としての駆動モータ40が配置されている。第1実施形態では、駆動モータ40の動力が第1回転体である感光体ドラム3と第2回転体である現像部6との2方向に分岐して伝達される(図2参照)。
【0022】
駆動モータ40の動力は一旦、第1動力伝達系としての入力ギヤ列41に伝達される。入力ギヤ列41は、駆動モータ40からの動力を受け取る入力ギヤ42と、入力ギヤ42の外周側に噛み合う感光体駆動ギヤ43とを備えている。感光体駆動ギヤ43は、カップリング部材44を介して感光体ドラム3の回転軸3aと同軸上に、動力伝達可能に配置されている(図3及び図4参照)。すなわち、駆動モータ40の動力の一部は、入力ギヤ列41及びカップリング部材44を介して感光体ドラム3に伝達される。
【0023】
駆動モータ40から伝達された残りの動力は、入力ギヤ列41から第2動力伝達系としての分岐ギヤ列45を介して現像部6に伝達される。分岐ギヤ列45は、感光体駆動力ギヤ43の回転中心部を構成する円筒状のハブ部43aに被嵌された分岐ギヤ46と、分岐ギヤ46の外周側に噛み合う中継ギヤ47とを備えている。詳細は後述するが、分岐ギヤ46は感光体駆動ギヤ43の回転に連動して回転するように構成されている。中継ギヤ47の外周側に、現像部6の現像部駆動ギヤ48が噛み合っている。分岐ギヤ46に伝達された動力が、中継ギヤ47を介して現像部駆動ギヤ48に伝達される。
【0024】
図4に示すように、カップリング部材44は、一端開口の円筒状に形成された雌型嵌合体51と、雌型嵌合体51の凹部51aに嵌め込まれた対高周波粘弾性体52とを備えている。凹部51a内の対高周波粘弾性体52に、感光体駆動ギヤ43のハブ部43aから突出した断面多角形状の伝動軸43bが挿入されている。対高周波粘弾性体52及び伝動軸43bは、例えば圧入等によって外れ難い状態で、雌型嵌合体51の凹部51aに嵌合している。雌型嵌合体51のうち凹部51aと反対側の外底面に、感光体ドラム3の回転軸3aの先端側が固定されている。このため、感光体ドラム3は雌型嵌合体51と一体回転することになる。対高周波粘弾性体52としては、天然ゴム、ポリブタジエン系ゴム又はクロロプレン系ゴム等を採用できる。また、加硫成形による加硫ゴムや、射出成形によるスチレン系、オレフィン系又はウレタン系の熱可塑性エラストマーも使用可能である。
【0025】
感光体駆動ギヤ43から感光体ドラム3への動力伝達系統において、カップリング部材44では、感光体駆動ギヤ43の伝動軸43bから対高周波粘弾性体52を経由して感光体ドラム3の回転軸3aに、回転動力が伝達されることになる。例えば駆動モータ40の回転速度ムラや入力ギヤ列41での噛み合い誤差といった駆動系起因の高周波振動(動力伝達上流側からの高周波振動)は、対高周波粘弾性体52によって減衰され、感光体ドラム3への高周波振動の伝達が抑制される。
【0026】
図3に示すように、分岐ギヤ46は、感光体駆動力ギヤ43のハブ部43aが回転可能に挿入されるハブ部46aと、外周側に外歯が形成された外環部46bとを、ハブ部46aから放射状に延びる複数のリブ部46cにて連結した構造である。分岐ギヤ46において隣り合うリム部46bの間の空間に、感光体駆動ギヤ43における分岐ギヤ46側の側面から突出した支持片部43cを入り込ませている。分岐ギヤ46側のリブ部46cと感光体駆動ギヤ43側の支持片部43cとの間に、動力伝達下流側からの低周波振動を抑制する対低周波粘弾性体53を介在させている。この場合、対低周波粘弾性体53を挟んで回転上流側に支持片部43cが位置し、回転下流側にリブ部46cが位置している。支持片部43cとリブ部46cとのいずれか一方に対低周波粘弾性体53が取り付けられている。なお、対低周波粘弾性体53は、図示のような1つだけに限らず、複数個合っても差し支えない。図示の実施形態では、リブ部46c及び支持片部43cが8個ずつあるので、最高8個まで対低周波粘弾性体53を取り付けることが可能である。対低周波粘弾性体53としてはブチル系ゴム等を採用できる。
【0027】
感光体駆動ギヤ43の回転に連動して分岐ギヤ46を回転させるにおいて、感光体駆動ギヤ43側の支持片部43cが、対低周波粘弾性体53を介して分岐ギヤ46側のリブ部46cを回転下流側に押圧することによって、分岐ギヤ46が感光体ドラム3の回転軸3aと同軸上に回転駆動することになる。例えば現像部6の負荷変動等に起因した低周波振動(動力伝達下流側からの低周波振動)は、対低周波粘弾性体53によって減衰され、感光体ドラム3への低周波振動の伝達が抑制される。対高周波粘弾性体52の剛性(硬度)は対低周波粘弾性体53の剛性よりも高く設定されている。この場合、対高周波粘弾性体52の剛性はJISA61.5°程度、対低周波粘弾性体53の剛性はJISA6°程度である。対高周波粘弾性体52はJISA50°以上の硬度であるのが望ましい。
【0028】
以上の構成によると、駆動モータ40の動力は感光体ドラム3と現像部6との2方向に分岐して伝達されるが、感光体駆動ギヤ43と感光体ドラム3との間には対高周波粘弾性体52が介在するので、例えば駆動モータ40の回転速度ムラや入力ギヤ列41での噛み合い誤差といった駆動系起因の高周波振動は、対高周波粘弾性体52によって減衰される。また、感光体駆動ギヤ43と分岐ギヤ46との間には対低周波粘弾性体53が介在するので、例えば現像部6の負荷変動等に起因した低周波振動は、対低周波粘弾性体53によって減衰される。すなわち、感光体ドラム3に対して、動力伝達上流側からの高周波振動の伝達が対高周波粘弾性体52にて抑制されると共に、動力伝達下流側からの低周波振動の伝達が対低周波粘弾性体53にて抑制される。その結果、感光体ドラム3における回転速度ムラの発生が確実に抑制され、例えば画像ブレ(バンディング)等を防止でき、画像品質の向上を実現できる。特に、作像部2はいわゆるプロセスカートリッジとして筐体9に交換可能に装着される構造であるから、動力伝達系の簡素化及び小型軽量化も併せて達成できるのである。
【0029】
ここで、図5及び図6に、各粘弾性体52,53が感光体ドラム3の回転速度ムラに与える影響について調べた実験結果を示す。図5は、動力伝達上流側からの高周波振動(312.6Hz)を受けた場合の感光体ドラム3の位置変動を示し、図6は、動力伝達下流側からの低周波振動(138.9Hz)を受けた場合の感光体ドラム3の位置変動を示している。図5及び図6のグラフではそれぞれ、縦軸に位置変動の0−P値(ゼロピーク値、最大位置変動)を採っている。なお、位置変動値は、感光体ドラム3の表面にレーザドップラーのレーザを照射して感光体ドラム3の回転速度を測定し、感光体ドラム3の回転速度変動から変換して導出したものである。また、「対策なし」の場合は、感光体駆動ギヤ43の伝動軸43bと、感光体ドラム3の回転軸3aの先端側とを直結している。
【0030】
図5に示すように、動力伝達上流側からの高周波振動(312.6Hz)を受けた場合、対高周波粘弾性体52を用いた例のゼロピーク値が、対策なしのゼロピーク値と比べて、半分以下に低減していることが分かる。この点から、対高周波粘弾性体52の存在が高周波振動を抑制して、感光体ドラム3の回転速度ムラを防止していることが見て取れる。また、図6に示すように、動力伝達下流側からの低周波振動(138.9Hz)を受けた場合、対低周波粘弾性体53を用いた例のゼロピーク値が、対策なしのゼロピーク値に比べて1/4以下、対高周波粘弾性体52を用いた例のゼロピーク値に比べて1/5程度に低減していることが分かる。この点から、対低周波粘弾性体53の存在が低周波振動を抑制して、感光体ドラム3の回転速度ムラを防止していることも見て取れる。これら両粘弾性体52,53の存在によって、高周波及び低周波両方の振動を的確に抑制でき、高品質な画像の提供が可能になるのである。
【0031】
なお、図5の例で対低周波粘弾性体53を用いた例がないのは、カップリング部材44内に対低周波粘弾性体53を設けると、感光体駆動ギヤ43と感光体ドラム3との間で大幅な相対回転が生じ、感光体ドラム3が回転位相遅れして印刷精度の低下を招来するという問題を回避するためである。
【0032】
(3).作像部における動力伝達構造の第2実施形態
次に、図7及び図8を参照しながら、作像部2における動力伝達構造の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、駆動モータ40の動力が感光体ドラム3、現像部6の順に伝達される(図7参照)。この場合、第1実施形態のような感光体駆動ギヤ43と分岐ギヤ46との連動関係がなく、第2動力伝達系の構成要素である分岐ギヤ46が、対低周波粘弾性体53を介して第1回転体としての感光体ドラム3に取り付けられている。第1動力伝達系としての入力ギヤ列41は、第1実施形態と同様に、カップリング部材44を介して感光体ドラム3に動力伝達可能に連結されている。分岐ギヤ46は、中継ギヤを介して現像部6の現像部駆動ギヤ48群に動力伝達可能に連結されている。対低周波粘弾性体53としては第1実施形態と同様のものが採用される。その他の構成は概ね第1実施形態と同じである。
【0033】
このように構成した場合、駆動モータ40の動力が感光体ドラム3、現像部6の順に伝達されるが、感光体駆動ギヤ43と感光体ドラム3との間には対高周波粘弾性体52が介在し、感光体ドラム3と分岐ギヤ46との間には対低周波粘弾性体53が介在するので、両粘弾性体52,53の存在によって高周波及び低周波両方の振動を的確に抑制でき、第1実施形態と同様に、画像ブレ(バンディング)等を防止して、画像品質の向上を実現できるのである。
【0034】
(4).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、画像形成装置としてプリンタを例に説明したが、これに限らず、複写機、ファクシミリ又はこれらの機能を複合的に備えた複合機等でもよい。また、第1及び第2実施形態において、第1回転体は感光体ドラム3、第2回転体は現像部6であったが、当該関係を、中間転写ベルト11の駆動ローラ12と定着部30とに置き換えることも可能である。この場合、第1回転体が駆動ローラ12に相当し、第2回転体が定着部30に相当することになる。かかる構成を採用すると、両粘弾性体52,53の存在によって、駆動ローラ12、ひいては中間転写ベルト11に対する高周波及び低周波両方の振動を的確に抑制でき、高品質な画像の提供が可能になる。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
R0 搬送路
P 記録材
1 プリンタ(画像形成装置)
2Y−2K 作像部
3 感光体ドラム(第1回転体)
3a 回転軸
6 現像部(第2回転体)
10 画像形成部
11 中間転写ベルト(中間転写体)
12 駆動ローラ(第1回転体)
20 給送部
30 定着部(第2回転体)
40 駆動モータ(駆動源)
41 入力ギヤ列(第1動力伝達系)
42 入力ギヤ
43 感光体駆動ギヤ
44 カップリング部材
45 分岐ギヤ列(第2動力伝達系)
46 分岐ギヤ
47 中継ギヤ
48 現像部駆動ギヤ
52 対高周波粘弾性体
53 対低周波粘弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を発生する駆動源と、前記駆動源の動力にて回転駆動する第1回転体と、前記駆動源から前記第1回転体に動力伝達する第1動力伝達系と、前記第1回転体よりも動力伝達下流側に位置する第2回転体と、前記第1動力伝達系から前記第2回転体に動力伝達する第2動力伝達系とを備えており、
前記第1動力伝達系と前記第2動力伝達系との間に、動力伝達下流側からの低周波振動を抑制する対低周波粘弾性体を介在させる一方、前記第1動力伝達系と前記第1回転体との間には、動力伝達上流側からの高周波振動を抑制する対高周波粘弾性体を介在させており、
前記対高周波粘弾性体の剛性を前記対低周波粘弾性体の剛性よりも高くしている、
画像形成装置。
【請求項2】
動力を発生する駆動源と、前記駆動源の動力にて回転駆動する第1回転体と、前記駆動源から前記第1回転体に動力伝達する第1動力伝達系と、前記第1回転体よりも動力伝達下流側に位置する第2回転体と、前記第1回転体から前記第2回転体に動力伝達する第2動力伝達系とを備えており、
前記第1回転体と前記第2動力伝達系との間に、動力伝達下流側からの低周波振動を抑制する対低周波粘弾性体を介在させる一方、前記第1動力伝達系と前記第1回転体との間には、動力伝達上流側からの高周波振動を抑制する対高周波粘弾性体を介在させており、
前記対高周波粘弾性体の剛性を前記対低周波粘弾性体の剛性よりも高くしている、
画像形成装置。
【請求項3】
前記第1回転体はトナー像を担持する感光体ドラム又は中間転写体の駆動ローラである、
請求項1又は2に記載した画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−220665(P2012−220665A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85341(P2011−85341)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】