説明

画像形成装置

【課題】距離測定手段11により測定される結果から転写ニップ通過後の記録媒体姿勢を明確にし、それに対して適した転写電圧を与えることで、記録媒体Pに対する適切な転写性を保ち良質な画像を得る。
【解決手段】トナー像を担持する像担持体1と、電圧が印加され前記像担持体1から記録媒体Pにトナー像を転写する転写手段5と、記録媒体Pにトナー像を定着させる定着手段14と、転写手段5と定着手段14の間に配置され、像担持体1から記録媒体Pまでの相対距離ΔLを測定する距離測定手段11とを有し、測定される距離ΔLに応じて転写手段5に印加する電圧を変更することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に形成したトナー像を記録媒体に転写し定着して画像形成物を出力する画像形成装置に関する。
【0002】
像担持体は、電子写真方式における電子写真感光体、静電記録方式における静電記録誘電体、磁気記録方式における磁気記録磁性体などである。また、中間転写方式の画像形成装置における中間転写ベルトや中間転写ドラム等の中間転写体も像担持体に含まれる。画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機能などである。記録媒体はトナー像を形成することができる出来るシート状部材であり、各種の用紙、ラベル、OHTシート等が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
電子写真方式を利用した画像形成装置を例にして説明する。この装置では、像担持体から記録媒体へのトナー画像の転写を記録媒体の非転写面側より転写電圧を印加して電界を形成することで行っている。その際、記録媒体の非転写面側にはトナー画像の持つ電荷量に対応した適切な電荷量が付与される。そして、電気的にほぼ中性とされた記録媒体は定着工程を経て画像形成が完了する。
【0004】
記録媒体が転写工程によって担持する電荷量(以下、記録媒体担持電荷量)は、その電荷量の大きさによって、、転写直後、あるいは転写工程後から定着工程へと至るまでに放電が発生し様々な画像不良を生じる恐れがある。また、転写後に記録媒体が像担持体から剥離せず、巻きついてしまいジャムを生じることもある。そのため、転写工程から定着工程に至るまでの間、記録媒体担持電荷量の調整は非常に重要な課題となる。
【0005】
特許文献1は、実際に画像形成する過程において記録媒体裏面の電位を測定し、除電電圧を制御することで、記録媒体担持電荷量の調整をする。特許文献2は、転写後に定着工程へ搬送される際の記録媒体と除電装置との相対高さに応じて除電電圧を制御し、適切な除電を行い、記録媒体担持電荷量の調整をする。
【0006】
また、特許文献3のように、記録媒体に対してトナー像の転写を開始する前の時点に於いて、画像形成時に用いる転写電圧(プリント電圧)が最適になるように制御し、記録媒体担持電荷量の調整を行う方法が従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−215815号公報
【特許文献2】特開2008−216468号公報
【特許文献3】特開平2−264278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、記録媒体の転写ニップ部通過直後の記録媒材の姿勢状態は固定ではなく、記録媒体の種類や環境など種々の要因により変化する。記録媒材の姿勢状態が変化すると転写ニップ長の変化や放電量変化に繋がり、記録媒体の担持電荷量に大きな違いを与えてしまうことになる。
【0009】
記録媒体担持電荷量の調整は先に示したとおり、画像不良や記録媒体のジャムなどの問題の要因となりうるため非常に重要な課題である。つまり、転写ニップ部通過後の記録媒体の姿勢状態に対する考慮をせずに転写電圧を決めては、良質な画像を得ることができない。この時、転写ニップ部通過後の記録媒体の排出方向が記録媒体の種類や環境などにより変化する要因であるが、これは記録媒体の堅さの違いによる所が大きい。記録媒体は常に複数の点で保持されているわけではないため、保持されていない部分については記録媒体が持つ堅さに任せた形状となるためである。
【0010】
それにより、転写ニップ部通過後に記録媒体が転写ローラ側に排出されるか像担持体側に排出されるかは、記録媒体の堅さがその種類や環境などにより違うため、異なってくる。そして、どちら側に排出されるかにより各部材と記録媒体の接触長さが異なってくるため、転写ニップ長は変化する。また、その際放電量が変化するのは、記録媒体が転写ローラ側、像担持体側、どちらに近く排出されるかで、記録媒体と転写ローラの空隙間、記録媒体と像担持体の空隙間それぞれの分圧が変化するためである。
【0011】
本発明は従来技術を更に発展させたものである。その目的とするところは、転写ニップ部通過後の記録媒体の姿勢状態に応じてそれに適した転写電圧を与えることを可能にして記録媒体に対する適切な転写性を保ち良質な画像を得ることの可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、未定着のトナー像を担持する像担持体と、前記像担持体と転写ニップ部を形成して記録媒体を挟持搬送し前記像担持体から記録媒体にトナー像を転写する転写手段と、前記転写手段に電圧を印加する転写電圧印加手段と、前記転写ニップ部を出て搬送される記録媒体のトナー像を定着する定着手段と、制御手段と、を有する画像形成装置であって、前記転写手段と前記定着手段の間に配置され、前記像担持体から記録媒体までの相対距離を測定する距離測定手段を有し、前記制御手段は前記距離測定手段により測定される前記相対距離に応じて前記転写電圧印加手段から前記転写手段に印加する電圧を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、転写ニップ部の記録媒体搬送方向下流位置における像担持体と記録媒体との相対距離を測定する。これにより、記録媒体の転写ニップ部通過後の姿勢状態が判定可能になり、その結果に応じて転写電圧を制御することで記録媒体に対する適切な転写性を保ちつつ記録媒体の担持電荷量を良好に保ち良質な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における画像形成装置の要部の概略の構成模式図
【図2】図1の部分的拡大図と要部の制御系統ブロック図
【図3】距離測定手段(赤外線距離センサ)の構成模式図
【図4】転写ニップ部から出た記録媒体の排出方向例を示した図
【図5】転写電圧補正制御のフロー図
【図6】算出距離に対する転写電圧の補正値グラフ
【図7】実施例2における転写工程から定着工程へ至る記録媒体搬送経路部分の模式図と制御系統ブロック図
【図8】転写ニップ部から出た記録媒体の排出方向例を示した図
【図9】転写電圧ならびに除電電圧の補正制御のフロー図
【図10】算出距離に対する転写電圧ならびに除電電圧の補正値グラフ
【図11】実施例3における転写工程から定着工程へ至る記録媒体搬送経路部分の模式図と制御系統ブロック図
【図12】転写ニップ部から出た記録媒体の排出方向例を示した図
【図13】転写電圧ならびに除電電圧の補正制御のフロー図
【図14】算出距離に対する転写電圧ならびに除電電圧の補正値グラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施例1>
(1)画像形成装置例の全体的な説明
図1は本発明に従う画像形成装置例の要部の概略の構成模式図である。図2は図1の部分的拡大図と要部の制御系統ブロック図である。本実施例の画像形成装置100は、転写方式電子写真画像形成プロセスを用いたモノカラーのレーザービームプリンタ(LBP)である。ホスト装置400から制御手段(プリントコントローラ)200に入力する画像情報(電気的な画像信号)に基づいて記録媒体(記録材、転写材)Pに画像の形成を行う。ホスト装置400は、パソコン、イメージリーダー、ファクシミリ装置等である。
【0016】
制御手段200は制御CPU201と制御用参照値等を記憶しているデータ格納部(メモリ部)202とを含み、ホスト装置400や操作部300等との間で各種の電気的情報の授受を行う。かつ、画像形成装置100の画像形成動作を所定の制御プログラムや参照テーブルに従って統括的に制御する。従って、以下に説明する画像形成動作は制御手段200によって制御される。操作部300には使用者が所望の画像形成実行条件等を制御手段200に入力したり、設定したりすることができる各種の操作キーや表示器等が配設されている。
【0017】
画像形成装置100は未定着のトナー像を担持する像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(回転可能な感光体:以下、ドラムと記す)1を有する。ドラム1は支軸1aを中心に駆動手段(不図示)により矢印の時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。ドラム1の周囲には、ドラム1に作用する電子写真プロセス手段としての機器が配設されている。本実施例では、帯電手段2、露光手段3、現像手段4、転写手段5、クリーニング手段6等が配設されている。
【0018】
帯電手段2は本実施例の場合は接触帯電部材である導電性の帯電ローラである。帯電ローラ2はドラム1に対して所定の押圧力で当接させてあり、ドラム1の回転に従動して回転する。帯電ローラ2は電源部(不図示)から所定の帯電バイアスが印加されて、ドラム1の回転過程においてドラム表面を所定の電位および極性に一様に帯電する。本実施例の場合はドラム1の表面が帯電ローラ2により負極性の所定の電位に一様に帯電処理される(帯電工程)。
【0019】
露光手段3は本実施例の場合はレーザー走査部(レーザースキャナー)である。走査部3は、発光信号発生器、固体レーザー素子、コリメーターレンズ系、回転多面鏡(ポリゴンミラー)等を有する。そして、走査部3はドラム1の一様帯電面に対して、出力画像信号に対応して変調したレーザー光による走査露光を行い、ドラム面に画像情報に対応した静電潜像を順次形成していく(露光工程)。
【0020】
現像手段4は本実施例の場合は、現像剤として負極性に帯電したトナーを用いた反転現像装置である。ドラム表面の露光部にトナーが付着することでドラム表面に形成された静電潜像が未定着のトナー像として順次に現像(可視化)される(現像工程)。
【0021】
転写手段5は本実施例の場合は接触転写部材である導電性の転写ローラである。転写ローラ5はドラム1に対して所定の押圧力で当接されていて、駆動手段(不図示)により矢印の反時計方向にドラム1の周速度に対応した周速度をもって回転駆動される。ドラム1と転写ローラ5との接触ニップ部が転写ニップ部Ntである。この転写ニップ部Ntに記録媒体Pが所定の制御タイミングで導入されて挟持搬送される。
【0022】
転写ローラ5には記録媒体Pの搬送タイミングと合わせて転写電圧電源(転写電圧印加手段)17からトナーの帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)で適正電位に制御された転写電圧が印加される。この印加された転写電圧によりドラム面側のトナー像が記録媒体Pの表面(印字面:ドラム1との対向面)に対して順次に静電転写される(転写工程)。転写電圧電源17は制御手段200により転写ローラ5に印加する転写電圧がコントロールされる。これについては後述する。
【0023】
ここで、転写手段(転写部材)として回転駆動する転写ローラ5を示したが、これに限られるものでない。無端状のベルトを用いた系等、他の転写手段であってもよい。
【0024】
記録媒体Pは給紙カセット7に積載されて収容されている。所定の制御タイミング(給送タイミング)で給紙ローラ8が駆動されることにより、最上位の記録媒体Pに送りが掛かり分離部材(不図示)との協働により1枚分離されて、転写ニップ部Ntへ至るシートパス(記録媒体搬送経路)9aに導入される。
【0025】
シートパス9aにはレジストローラ(レジストレーションローラ対)10が配設されている。ローラ10に到達した記録媒体Pの先端部はその時点では回転停止状態に制御されているローラ10のニップ部に突き当たって受け止められて記録媒体Pの先端全長部がニップ部に押し当たる。これにより記録媒体Pの斜行が矯正される。
【0026】
そして、所定の制御タイミングでローラ10の駆動が開始される。これにより、記録媒体Pがローラ10のニップ部に挟持されて搬送され、転写ニップ部Ntに導入される。ローラ10は上記のように記録媒体Pの斜行を矯正する役目をすると共に、ドラム1に対するトナー像の形成と記録媒体Pの搬送とを同期させる役目をする。
【0027】
即ち、ローラ10はカセット7から搬送された記録媒体Pの先端位置を一旦規制する。そして、ドラム1上に形成されたトナー像の画像先端が転写ニップ部Ntに到達するタイミングで、記録媒体Pのプリント開始位置が転写ニップ部Ntに丁度到達するように、記録媒体Pの先端規制を解除して記録媒体Pの搬送を再開させる。
【0028】
転写ニップ部Ntを出た記録媒体Pはドラム1から分離され、後述する距離測定手段11と除電手段12の上を通り搬送ガイド13に沿ってガイドされて定着手段14に搬送される。9bは転写ニップ部Ntから定着手段14に至るシートパスである。記録媒体Pが分離された後のドラム1上の転写残トナーはクリーニング手段6によって除去され、ドラム1は繰り返して画像形成に供される。本実施例においてクリーニング手段6はブレードクリーニング装置であり、ドラム1面の転写残トナーはクリーニングブレード6aによりドラム面から掻き落とされて廃トナー収容部6bに収容される。
【0029】
本実施例において定着手段14は、フィルム加熱方式、加圧ローラ駆動式の加熱定着装置である。この装置14は互いに当接して定着ニップ部Nfを形成する加熱回転部材としてのエンドレスベルト状の耐熱性の定着フィルム14aと加圧回転部材としての加圧ローラ14bを有する。加圧ローラ14bは芯金上に弾性層を形成した弾性ローラである。フィルム14aの内部には半円弧状のフィルムガイド部材(ステイ)14cと加熱体14dが配設されている。加熱体14dは電力供給により発熱する加熱源としての通電発熱体を有する。
【0030】
フィルム14aはフィルムガイド部材14cおよび加熱体14dに対してルーズに外嵌されている。加熱体14dと加圧ローラ14cはフィルム14aを挟んで圧接している。フィルム14aと加圧ローラ14cとの圧接ニップ部が定着ニップ部Nfである。加圧ローラ14cはモーター(不図示)により矢印の反時計方向に所定の周速度で回転駆動される。フィルム14aは定着ニップ部Nfにおける加圧ローラ14cとの摩擦力により加圧ローラ14cの回転に従動して矢印の時計方向に回転する。
【0031】
記録媒体Pは定着ニップ部Nfに導入されて挟持搬送され、定着ニップ部Nfにおいてフィルム14aを介した加熱体14dからの熱とニップ部圧により、記録媒体P上の未定着トナー像が固着画像として定着される(定着工程)。記録媒体Pの先端部が定着ニップ部Ntに到達して挟持されると、記録媒体Pは転写ニップ部Ntと定着ニップ部Nfとにまたがって搬送される。制御手段200は、この搬送状態において転写ニップ部Ntと定着ニップ部Nfとの間の記録媒体部分に所定量のループが形成されて維持されるように加圧ローラ14cの回転速度を制御する。
【0032】
定着装置14を出た記録媒体Pはシートパス9cを通って排出口15から装置外の排出トレイ16に対して画像形成物として排出される。ここで、定着手段14は上述のフィルム加熱方式、加圧ローラ駆動式の加熱定着装置に限られない。加熱ローラを加熱回転部材として使用した熱ローラ定着装置、その他の定着装置を使用してもよい。
【0033】
(2)除電手段12
除電手段12は、転写ニップ部Ntを出た記録媒体Pの過剰に帯電した電荷、即ち、記録媒体Pが転写部により過剰に付与された電荷をトナー像転写直後に除電する役目をするものである。本実施例では導電性の除電針である。この除電針12は記録媒体搬送方向に直交する方向(シートパス9bを横断する方向)を長手とする板状の部材であり、先端(長手上辺)が鋸歯状になっている。
【0034】
除電針12は転写ローラ5と搬送ガイド6との間においてシートパス9bを通る記録媒体Pの裏面と所定の間隔をもって対向するように固定配置されている。即ち、除電針12は、転写ニップ部Ntよりも記録媒体搬送方向下流側で、搬送ガイド6よりも記録媒体搬送方向上流側において、転写ニップ部Ntの近傍の位置に転写ローラ5に並行させて固定して配置されている。以下の説明において、下流側と上流側とは記録媒体Pの搬送方向に関して下流側と上流側である。
【0035】
除電針12には、除電電圧を供給するための除電電圧電源(除電電圧印加手段)18が接続されている。この電源18は出力レベルが可変であり、制御手段200により出力が制御される。本実施例ではある範囲において多値の出力レベルが制御可能な例を示す。本実施例では、負極性のトナーを使用しているため、転写工程では記録媒体Pに正極性の電圧を印加して転写を行っている。そのため、記録媒体Pは正極性の電荷を有しており、正電荷を除電するために除電針12には負極性の除電電圧を印加する。
【0036】
反対に、トナーに正極性のものを使用した場合、転写ローラ5は記録媒体Pに負極性の転写電圧を印加して、さらに、除電針12は正極性の除電電圧を印加することになる。
【0037】
実施例では、除電部材として鋸歯状の除電針12を例示したが、その他、金属ブラシや導電性樹脂繊維、或いは金属ワイヤーを除電部材として用い、これらに除電電圧を印加して除電を行う構成にしても良い。
【0038】
(3)距離測定手段11
距離測定手段11は本実施例においては転写ニップ部Ntと除電針12との間において固定配置されている。即ち、距離測定手段11は、転写ニップ部Ntよりも下流側で、除電針12よりも上流側において、転写ニップ部Ntの近傍の位置に距離測定面をドラム1に向けて固定して配置されている。
【0039】
本実施例は、転写ニップ部Ntの記録媒体出口側において距離測定手段11で求められる記録媒体Pとドラム1との距離に応じて転写電圧電源17から出力させる転写電圧を補正制御することにより記録媒体Pに適切な担持電荷を与えるものである。これにより、例えば記録媒体Pへの電荷の付与不足が原因で生じる、転写ニップ部下流側での記録媒体画像部から非画像部へのトナーの飛び散り現象や過剰な帯電によって生じる強い放電によりトナー画像の乱れが発生することを予防することができる。特に本実施例では記録媒体先端で生じる問題を防ぐことを目的とする。
【0040】
距離測定手段11は、本実施例では、記録媒体Pやドラム1に対して非接触で記録媒体Pやドラム1までの距離を測定する非接触式距離測定手段である。より具体的には受光部と発光部を含む光学式センサである赤外線距離センサを用いている。このセンサ11は、発光部である発光素子(赤外LED)により記録媒体Pやドラム1への照射を行い、その反射光を受光部(PSD)で受光することで、記録媒体Pとセンサ11までの距離、ドラム1とセンサ11までの距離を測定する。
【0041】
図3に赤外線距離センサ11の一例の模式図を示した。発光素子4−1からの光が投光レンズ4−3を通り被測定物4−5に照射され、その反射光を受光レンズ4−4を介して距離センサを構成する受光部4−2に受光させる。するとこのときの被測定物4−5までの距離L1は、受光点の位置d1より図に示す関係からL1=F・D/d1と求められる。この距離測定の演算は受光部4−2の受光信号が制御手段200に入力して制御CPU201の演算部でなされる。
【0042】
センサ11が記録媒体Pに対し非接触であることで、記録媒体Pに対するセンサ11の干渉を防ぐことができ、記録媒体Pの搬送経路や担持電荷量の乱れを最小限に抑えることができる。その非接触式のセンサ11が受光部4−2と発光部4−1を含む光学式センサであることで、より少ないコストで正確な距離測定が可能となる。
【0043】
(4)転写電圧の制御
本実施例では、転写ニップ部Ntから出る記録媒体Pについてドラム1から記録媒体Pまでの相対距離をセンサ11で測定する。そして、制御手段200がセンサ11で測定される距離に応じて転写電圧電源17から転写ローラ5に印加する電圧(転写電圧)を変更する制御をしている。以下、この制御について説明する。
【0044】
図4に転写工程および除電工程後の記録媒体Pの排出方向とセンサ11との関係について示す。センサ11と除電針12は転写ニップ部Ntの記録媒体出口側の近傍において転写ニップ部Ntから出てくる記録媒体Pの裏面側に対向して記録媒体搬送方向に順次に位置している。これにより、転写ニップ部Ntを出た直後の記録媒体Pについて距離測定と除電工程を実行することができる。
【0045】
センサ11は所定のタイミングで発光素子4−1を稼動することにより転写ニップ部Ntから出てきた直後時点における記録媒体先端部に裏面に対する光照射および反射光の受光が可能となっている。この時、図中AからEまでの記録媒体Pの記録媒体排出方向(先端部姿勢)はセンサ11によって測定可能な範囲に入っている。この図において記録媒体排出方向Cが排出方向として望ましいものであり、ドラム1の中心O1、転写ローラ5の中心O5を通る中心線(O1−O5)とドラムの交点O1´におけるドラム1の接線方向と一致している。
【0046】
本実施例では転写ローラ5に正の転写電圧を印加しているため、転写ローラ5からドラム1の方向に電界が形成されている。そのため、基本的に記録媒体Pはドラム1からは負の電荷を、転写ローラ5からは正の電荷を付与される。
【0047】
記録媒体Pの排出方向がD、Eのようにドラム1側に近付いた時、記録媒体Pは転写ローラ5から放電を強く受けることになり正に過剰帯電した状態になりやすくなる。反対にA、Bのように転写ローラ側に近付いた時には記録媒体Pは負に過剰帯電した状態になりやすくなる。
【0048】
これは、記録媒体PがD、Eの排出方向ではドラム1と記録媒体Pの距離が転写ローラ5と記録媒体Pとの距離に比べ近い。そのため、分離する近傍の空隙の分圧としてはドラム1と記録媒体Pの方が小さくなり、大きな分圧(電位差)が存在する転写ローラ5と記録媒体Pとの間の空隙での放電が活発となるため正の電荷を受け取りやすくなる。
【0049】
これとは逆にドラム1と記録媒体Pの間の分圧が大きくなるA、Bの排出方向では転写ローラ5と記録媒体Pと間での放電不足による正の電荷の供給不足、もしくはドラム1からの放電により負の電荷を受け取りやすくなるためである。
【0050】
以上のように基本的に記録媒体Pは転写後の転写ニップ部Ntからの排出方向(姿勢状態)により担持電荷量が正負どちらに偏りが生じやすいかが決まる。しかし、実際、担持電荷量に大きな偏りが生じるかはその際に生じている電位差、つまり転写電圧に依存する。
【0051】
そこで、本実施例では記録媒体Pがドラム1と転写ローラ5のいずれにより近い状態になっているかを判定し印加電圧を調整することで、記録媒体Pに対する余分な放電を抑制、もしくは電荷不足を生じないように放電を発生させる。それにより記録媒体Pの排出方向に関わらず担持電荷の偏りが調整され、電荷の付与不足や過帯電により生じる画像不良の発生を防止できる。
【0052】
また、本実施例ではセンサ11が転写ニップ部Ntを出た直後時点での記録媒体先端部に対する光照射の反射光を受光している。そのため、即座に転写電圧電源17の制御を最適化をすることで、測定対象とした記録媒体Pに対して電荷の付与不足や過帯電により生じる画像不良の発生を防止でき、電圧の最適化のために工程を必要としたり、記録媒体を無駄に消費したりすることなどがない。
【0053】
画像形成装置は、ATVC(Active Transfer Voltage Control)制御という、転写電圧制御を実行可能である。ここで、ATVC制御について簡単に説明する。これは、記録媒体に対してトナー像の転写を開始する前の時点に於いて、転写ローラに電圧を印加して帯電後の感光ドラムに流れる電流値を測定し、その時、電流値が所定の値になるように転写電圧を制御する。この転写電圧をV0とし、この値を元に実際の画像形成時に用いる転写電圧(プリント電圧)Vtを決定する制御方法である。
【0054】
この制御は通常プリント前回転時に実施される。それにより転写ローラ抵抗値の製造時ばらつきや環境変動、耐久変動に応じて適した転写電圧の選択がなされ、良好な画像を得ることができる。
【0055】
図5の制御フロー図を用いて、センサ(距離測定手段)11による距離測定結果に応じて転写電圧電源17をどのように制御するかを説明する。この制御は制御手段200により行われる。また、本実施例は記録媒体Pの特に先端領域での画像不良を防ぐことを目的としているため、センサ11による測定結果に応じた転写電圧電源制御は記録媒体Pの搬送が安定する時点まで行うこととする。
【0056】
Step1:画像形成の命令を受けると画像形成装置100は先に示した帯電、露光、潜像、現像の各工程を経てドラム(像担持体)1にトナー画像を形成し、転写工程に差し掛かる。この時、ATVC制御により初期転写電圧Vtcが決定される。
【0057】
Step2:記録媒体Pが給紙カセット7から給紙ローラ8により一枚ずつレジストローラ10の位置まで搬送される。この時、センサ11によりドラム1とセンサ11との距離測定が行われる。測定された基準距離L0は制御手段200にあるデータ格納部202に記録される。
【0058】
Step3:記録媒体Pがレジストローラ10により所定の制御タイミングにて転写ニップ部Ntに給紙されて転写工程が開始される。また転写ニップ部Ntを出る記録媒体Pの除電針12による除電工程が開始される。
【0059】
転写工程において画像形成開始時に転写電圧電源17から転写ローラ5に印加される転写電圧についてはATVCの結果である電圧Vtcが印加されることになる。また、除電電圧電源18から除電針12に印加される除電電圧Vsについては所定の値を印加することになる。Vsの値は例えば温度センサ、指定された入力紙種に従い変更される。これはデータ格納部202に格納した情報に従い、制御CPU201が適正電圧値を判断し制御することになる。
【0060】
Step4:転写ニップ部Ntを出た直後時点における記録媒体Pについてセンサ11との距離Lの測定が行われる。その測定タイミングは転写ニップ部Ntを出た記録媒体Pの先端部がセンサ11の測定範囲に達した時点であり、この時間はドラム1の回転速度が一定であることより記録媒体サイズ等に依らず一意に決まる。
【0061】
Step5:データ格納部202に記録されたセンサ11とドラム1との距離L0、および測定された記録媒体Pとセンサ11との距離Lから、制御CPU201はドラム1と記録媒体Pの相対距離ΔLを算出し、データ格納部202に記録する。ドラム1から記録媒体Pまでの相対距離ΔLは、センサ11からドラム1までの距離L0とセンサ11から記録媒体Pまでの距離Lの差分によって算出(測定)される。
【0062】
Step6:転写電圧Vtcを算出されたΔLに対応して補正する。本実施例では図6に示したグラフを元にその補正値を決める。このグラフはある記録媒体、環境条件において予め実験し、このグラフに従う限りは記録媒体の過剰帯電が生じないことを確認した結果であり、データ格納部202に格納してある。
【0063】
グラフはATVCで決定した転写電圧Vtcに対して目標電圧値をどの程度補正するかがΔLに対してプロットされたものである。このグラフに従い、算出されたΔLに対する補正電圧値を求め制御手段200が転写電圧の補正調整を行う。グラフ中、ΔLcとは図4における記録媒体の排出状態Cにおけるドラム1と記録媒体Pの相対距離である。
【0064】
Step7:記録媒体Pの搬送の安定性を調べるため、所定時間間隔後、再度、センサ11と記録媒体Pとの距離L´を測定し、データ格納部202に記録する。この時間間隔は用いるセンサ11、転写電圧制御手段の処理速度により異なるが、より短い時間間隔で測定することが望ましい。本実施例では5msec間隔で測定した。
【0065】
Step8:制御CPU201により、Step7でデータ格納部202に記録されたL´と、Step2で測定されたセンサ11とドラム1との距離L0の値との比較を行う。この時、値が異なる際には、制御対象とした記録媒体Pが転写および除電工程を通過し終わっていないと見なされる為、L´をLとして置き換え(6´)、Step5に戻る。値が等しい時には記録媒体Pが転写および除電工程を通過したと見なされる為、転写電圧の補正を終了する。
【0066】
以上、本実施例のように、転写ニップ部Ntを出た記録媒体Pのドラム1と記録媒体Pの距離に対して転写電圧を補正制御する。これにより、記録媒体、特に記録媒体の排出方向が不安定な先端領域に対して担持電荷量を良好に保ち、画像不良の無い良質な画像を得ることができる。
【0067】
また、本実施例ではセンサ11の対向にドラム1が配置されている。これにより、転写時に付与する電荷量の過不足を左右するドラム1に対する記録媒体Pの相対距離を正確に測定することができる。それは、センサ11からドラム1までの距離(L0)とセンサ11から記録媒体Pまでの距離(L)の差分(ΔL=L0−L)を計算することで転写ニップ部Ntの記録媒体搬送方向下流位置におけるドラム1と記録媒体Pの距離を直接的に測定できるからである。仮にドラム1の位置が動くようなことがあっても、適時画像形成時に基準としてドラム1の距離を測定すれば良いからである。
【0068】
また、本実施例では、センサ11による測定距離に応じた転写電圧の補正制御値として、図6に示すようなグラフを用いているが、このグラフは記録媒体種類や画像形成時の環境状態により異なることもある。そのため、記録媒体種類や環境状態に伴う複数のグラフをデータ格納部202に格納していることが望ましい。それを用い画像形成時には温度センサ、湿度センサ、メディアセンサなどにより測定された条件も加味してグラフを適用しても良い。
【0069】
即ち、センサ11により測定される距離に応じて変更する印加電圧の変更値が、用いる記録媒体と画像形成を行う環境により異なるようにしてもよい。このように、用いる記録媒体や画像形成時の環境により異なる最適な制御電圧を選択可能となることで、より正確な記録媒体の電荷量制御ができる。
【0070】
以上のように、本実施例によれば、転写ニップ部Ntの記録媒体搬送方向下流位置におけるドラム1と記録媒体Pとの相対距離ΔLを測定する。これにより、記録媒体Pの転写ニップ部通過後の姿勢状態(排出方向)が判定可能になり、その結果に応じて転写電圧を制御することで記録媒体Pに対する適切な転写性を保ちつつ記録媒体Pの担持電荷量を良好に保ち良質な画像を得ることができる。
【0071】
センサ11は、センサ11からドラム1までの距離L0とセンサ11から記録媒体Pまでの距離Lの差分(L0−L)によってドラム1から記録媒体Pまでの相対距離ΔLを測定する。これにより、転写ニップ部Ntの記録媒体搬送方向下流位置におけるドラム1と記録媒体Pの距離を直接的な測定結果から判断できることで、ドラム1に位置変動が生じた際にも正確にドラム1と記録媒体Pの相対距離ΔLを判定することができる。
【0072】
<実施例2>
第2の実施例について説明する。以下では実施例1で説明したものと同一の構成部材、部分については再度の説明を省略する。実施例1では距離測定手段であるセンサ11によって測定される値に対して転写電圧Vtcのみを主に記録媒体先端に対して変更していた。本実施例ではセンサ11によって測定される値に対して転写電圧Vtcと除電電圧Vsの二つの電圧を記録媒体Pが転写工程、除電工程を通過するまで調整する。これにより、記録媒体先端で生じる問題だけでなく、記録媒体全体における画像不良の抑制等を目的とする。
【0073】
本実施例は実施例1と異なり、図7、図8のように、センサ11と除電針12の記録媒体搬送方向における配置の順番が逆になっている。即ち、除電針12とセンサ11は転写ニップ部Ntの記録媒体出口側の近傍において転写ニップ部Ntから出てくる記録媒体Pの裏面側に対向して記録媒体搬送方向に順次に位置している。
【0074】
本実施例ではセンサ11による測定結果に対して転写電圧と除電電圧を変更するため、除電工程が終了した時点での記録媒体Pの距離測定をする必要があるためである。また、除電針12を転写ニップ部Ntの極近傍に設けることで、記録媒体Pの、転写ニップ部Ntから出てきた直後の領域の除電を行うことが可能となり、ドラム1への記録媒体Pの巻きつきを防止する。
【0075】
本実施例では、センサ11により測定される結果により除電電圧Vsも変更する。これは、実施例1に示したように記録媒体Pの担持電荷量が排出方向によって変化することから除電性能に強弱をつける必要があるためでもあるが、記録媒体Pの排出方向が変わることにより除電針12と記録媒体Pとの距離が変化する。そのため、除電針12の記録媒体Pに対する作用ならびに効果が一定ではないため、除電針12の性能向上を行う必要があるためでもある。
【0076】
図8におけるA、Bのような排出方向の場合は除電針12と記録媒体Pとの距離が近くなるため、除電針12の効果が強く現われる。しかし、D、Eのような排出方向の場合は除電針12と記録媒体Pとの距離が遠くなるため、逆に除電手段の効果が現われにくくなる。よって距離に関わらず、除電針12に一定の効果を望むには距離に応じて除電針12の性能変化をする必要がある。本実施例ではこれを除電電圧の変更で実現する。
【0077】
図9のフロー図を用いて最適な転写電圧Vtcと除電電圧Vsをセンサ(距離測定手段)11により測定される結果からどのように補正制御するかを説明する。なお、この制御は制御手段200により行われる。また、本実施例は記録媒体Pの全領域での問題抑制を目的としているため、センサ11による測定結果に応じた転写電圧電源制御は、記録媒体が転写工程、除電工程を通過する時点まで行う。
【0078】
Step1:画像形成の命令を受けると画像形成装置100は先に示した帯電、露光、潜像、現像の各工程を経てドラム1にトナー画像を形成し、転写工程に差し掛かる。この時、ATVC制御により初期転写電圧Vtcが決定される。
【0079】
Step2:記録媒体Pが給紙カセット7から給紙ローラ8により一枚ずつレジストローラ10の位置まで搬送される。この時、センサ11によりドラム1とセンサ11との距離測定が行われる。測定された距離L0はデータ格納部202に記録される。
【0080】
Step3:記録媒体Pがレジストローラ10により所定の制御タイミングにて転写ニップ部Ntに給紙され転写工程および除電工程が開始される。転写工程、除電工程において画像形成開始時に印加される各電圧電源出力は転写電圧についてはATVCの結果であるVtcを、除電電圧Vsについては所定の値をそれぞれ印加することになる。Vsの値は例えば温度センサ、指定された入力紙種に従い変更される。これはデータ格納部202に格納した情報に従い、制御CPU201が適正電圧値を判断し制御することになる。
【0081】
Step4:センサ11と記録媒体Pとの距離Lの測定が行われる。そのタイミングは転写ニップ部Ntを出た記録媒体Pの先端がセンサ11の測定範囲に達した時点からであり、この時間はドラム1の回転速度が一定であることより記録媒体サイズ等に依らず一意に決まる。
【0082】
Step5:データ格納部202に記録されたセンサ11とドラム1との距離L0、および測定された記録媒体Pとセンサ11との距離Lから、制御CPU201はドラム1と記録媒体Pの相対距離ΔLを算出し、データ格納部201に記録する。
【0083】
Step6:転写電圧Vtcおよび除電電圧Vsを算出されたΔLに対応し補正する。本実施例では図10に示したグラフを元にその補正値を決める。このグラフはある記録媒体、環境条件において予め実験し、このグラフに従う限りは記録媒体の過剰帯電が生じないことを確認した結果であり、データ格納部202に格納してある。
【0084】
グラフはATVCで決定した転写電圧Vtcおよび除電電圧Vsに対して目標電圧値をどの程度補正するかがΔLに対してプロットされたものである。このグラフに従い、算出されたΔLに対する補正電圧値を求め制御手段200が転写電圧、除電電圧の補正調整を行う。グラフ中ΔLcとは図8における記録媒体の排出状態Cにおけるドラム1と記録媒体Pの相対距離である。
【0085】
Step7:所定時間間隔後、再度、センサ11により距離測定を行う。この時の測定値距離L´をデータ格納部202に記録する。この時間間隔は用いるセンサ11、転写電圧制御手段の処理速度により異なるが、より短い時間間隔で測定することが望ましい。
【0086】
Step8:制御CPU201により、Step7でデータ格納部202に記録されたL´とStep2で測定されたドラム1とセンサ11との距離L0の値との比較を行う。この時、値が異なる際には、制御対象とした記録媒体が転写および除電工程を通過して終わっていないと見なされる為、L´をLとして置き換え(7´)、Step5に戻り、転写電圧、除電電圧の補正を続ける。値が等しい時には記録媒体が転写および除電工程を通過したと見なされる為、転写電圧、除電電圧の補正を終了する。
【0087】
以上、本実施例のようにドラム1と記録媒体Pの距離に対して転写電圧、除電電圧を補正制御することで、記録媒体全域に対して担持電荷量を良好に保ち、ドラム1に対する巻きつきや画像不良の無い良質な画像を得ることができる。
【0088】
また、本実施例でも実施例1と同様に、センサ11の対向にドラム1が配置されているため、転写時に付与する電荷量の過不足を左右するドラム1に対する記録媒体Pの相対距離を正確に測定することができる。
【0089】
また、本実施例でも実施例1と同様に、センサ11による測定距離に応じた電圧の補正制御値として図10に示すようなグラフ以外にも記録媒体種類や環境状態に応じて複数のグラフを有し、その都度画像形成条件に合うグラフを適用してもよい。即ち、センサ11により測定される距離に応じて変更する印加電圧の変更値が、用いる記録媒体と画像形成を行う環境により異なるようにしてもよい。
【0090】
本実施例のようにセンサ11より測定されるドラム1と記録媒体Pの相対距離ΔLに応じ、転写電圧および除電電圧の2つを制御可能となることで、より正確な記録媒体Pの電荷量制御ができる。
【0091】
<実施例3>
本発明の第3の実施例について説明する。以下では実施例1で説明したものと同一の構成部材、部分については再度の説明を省略する。実施例1、2ではセンサ11によってドラム1と記録媒体Pとの距離を直接的に測定し算出していたが、本実施例では、ドラム1の代わりにドラム1と規定の位置関係で設置した基準板を用いることで、ドラム1と記録媒体Pとの相対距離を求める。これにより、センサ11の設置位置に自由度が増す。また、基準板の位置をセンサ11に対しても規定の位置に設置することでセンサ11の補正や異常検知を行うことも可能となる。
【0092】
本実施例が実施例1、2と異なる点は、図11のように、センサ11の対向に基準板11aを設置していることである。本実施例においては、転写ニップ部Ntの記録媒体出口側の転写ニップ部Ntの近傍の位置において、シートパス9bの上側の位置にセンサ11を、下側の位置に基準板11aを対向させてそれぞれ固定して配置している。基準板11aは除電針12と搬送ガイド13との間に配置している。転写ニップ部Ntを出た記録媒体材Pはセンサ11と基準板11aの間を通って搬送される。
【0093】
基準板11aはドラム1、およびセンサ11と規定の位置関係で設置されている。基準板11aとドラム1の位置関係が規定されているため、図12のように、転写ニップ部Ntを種々の排出方向A〜Eに出た記録媒体材Pについて基準板11aと記録媒体Pとの距離を測定することでドラム1と記録媒体Pとの相対距離を求めることが可能となる。
【0094】
よって基準板11aと記録媒体Pとの距離に対して、転写電圧と除電電圧を補正制御すれば、実施例2と同様の効果が得られる。また、基準板11aとセンサ11とを一定距離Lstに設置し、適時、センサ11が測定する基準面11aとの距離LmとLstを比較することで、センサ11の異常検知が可能となる。図13のフロー図を用いて、本実施例における転写電圧と除電電圧の補正制御、およびセンサ11の異常検知の方法について説明する。
【0095】
Step1:画像形成の命令を受けると画像形成装置100は先に示した帯電、露光、潜像、現像の各工程を経てドラム1にトナー画像を形成し、転写工程に差し掛かる。この時、ATVC制御により初期転写電圧Vtcが決定される。
【0096】
Step2:記録媒体Pが給紙カセット7から給紙ローラ8により一枚ずつレジストローラ10の位置まで搬送される。この時、センサ11により基準板11aとセンサ11との距離測定が行われる。測定された距離Lmはデータ格納部202に記録される。
【0097】
Step3:Step2でデータ格納部202に記録されたセンサ11と基準板11aとの距離Lmと同じくデータ格納部202に記録されたセンサ11と基準板11aとの一定距離Lstとを比較する。
【0098】
LmとLstが等しい時にはセンサ11の動作が正常であると判断される。この際にはStep4−1より実施例2(図9)のStep3以降とほぼ同様の処理を行っていく。
【0099】
LmとLstが異なる時にはセンサ11の動作が正常ではないと判断される。この際にはStep4−2の処理へと移る。
【0100】
まずは、LmとLstが一致し、センサ11の動作が正常であると判断された際の処理について示していく。
【0101】
Step4−1:記録媒体Pがレジストローラ10により所定の制御タイミングにて転写ニップ部Ntに給紙され転写工程および除電工程が開始される。転写工程、除電工程において画像形成開始時に印加される各電圧電源出力は転写電圧についてはATVCの結果であるVtcを、除電電圧Vsについては所定の値を印加することになる。Vsの値は例えば温度センサ、指定された入力紙種に従い変更される。これはデータ格納部202に格納した情報に従い、制御CPU201が適正電圧値を判断し制御することになる。
【0102】
Step5−1:センサ11と記録媒体Pとの距離Lの測定が行われる。そのタイミングは記録媒体Pの先端がセンサ11の測定範囲に達した時点からであり、この時間はドtラム1の回転速度が一定であることより記録媒体サイズ等に依らず一意に決まる。
【0103】
Step6−1:データ格納部202に記録されたセンサ11と基準板11aとの距離Lm、および測定された記録媒体Pとセンサ11との距離Lから制御CPU201は基準板11aと記録媒体Pの相対距離ΔL´を算出し、データ格納部202に記録する。
【0104】
Step7:転写電圧Vtcおよび除電電圧Vsを測定されたΔL´に対応し補正する。本実施例では図14に示したグラフを元にその補正値を決める。このグラフはある記録媒体、環境条件において予め実験し、このグラフに従う限りは記録媒体の過剰帯電が生じないことを確認した結果であり、データ格納部202に格納してある。グラフはATVCで決定した転写電圧Vtcおよび除電電圧Vsに対して目標電圧値をどの程度補正するかがΔL´に対してプロットされたものである。
【0105】
このグラフに従い、算出されたΔL´に対する補正電圧値を求め制御手段200が転写電圧、除電電圧の補正調整を行う。グラフ中ΔLc´とは図12における記録媒体Pの排出方向Cにおける基準板11aと記録媒体Pの相対距離である。
【0106】
Step8:所定時間間隔後、再度、センサ11により距離測定を行う。この時の測定値距離L2をデータ格納部202に記録する。この時間間隔は用いるセンサ11、転写電圧制御手段の処理速度により異なるが、より短い時間間隔で測定することが望ましい。
【0107】
Step9:制御CPU201により、Step8でデータ格納部202に記録されたL2と基準板11aとセンサ11との距離Lmの値との比較を行う。この時、値が異なる際には、制御対象とした記録媒体Pに対する転写および除電工程が終了していないと見なされる為、L2をLとして置き換え(7´)、Step6−1に戻り、転写電圧、除電電圧の補正を続ける。値が等しい時には記録媒体が転写および除電工程を通過したと見なされる為、転写電圧、除電電圧の補正を終了する。
【0108】
次にStep3でLmとLstが異なり、センサ11の動作が異常であると判断された際の処理について示していく。
【0109】
Step4−2:センサ11が正常に動作していないことを表示する。これは画像形成装置外部より参照できる形にすればよく、装置に取り付けたLED、ディスプレイへの表示等手段は問わない。
【0110】
Step5−2:センサ11の異常により画像形成を継続するか否かを判断する。これは、予めユーザーが設定し一様に処理しても、異常が発生した時点で随時判断してもどちらでも良い。
【0111】
センサ11の異常により画像形成を中止する際はここで処理を終える(6−3)。センサ11の異常に際しても画像形成を継続する際にはStep6−2の処理へと移る。
【0112】
Step6−2:記録媒体Pがレジストローラ10により所定の制御タイミングにて転写ニップ部Ntに給紙され転写および除電工程が開始される。転写工程、除電工程において画像形成開始時に印加される各電圧電源出力は転写電圧についてはATVCの結果であるVtcを除電電圧Vsについては所定の値を印加することになる。Vsの値は例えば温度センサ、指定された入力紙種に従い変更される。これはデータ格納部202に格納した情報に従い、制御CPU201が適正電圧値を判断し制御することになる。
【0113】
以上、本実施例のように基準板11aをドラム1、およびセンサ11に対し規定の位置に設置することで、センサ11の設置位置に自由度が増す。その上で、実施例2と同様に記録媒体全域に対して担持電荷量を良好に保ち、ドラム1に対する巻きつきや画像不良の無い良質な画像を得ることができる。
【0114】
また、基準板11aを用いてセンサ11の異常検知を行うことで、センサ11に異常が生じた際、無理に転写目標電流Itおよび除電電圧Vsの制御を行って画質が大きく乱れることや、その他装置自体に良くない影響を与えることが防ぐことができる。
【0115】
また、本実施例でも実施例1、2と同様に、センサ11による測定距離に応じた電圧の補正制御値として図14に示すようなグラフ以外にも記録媒体種類や環境状態に応じて複数のグラフを有し、その都度画像形成条件に合うグラフを適用してもよい。即ち、センサ11により測定される距離に応じて変更する印加電圧の変更値が、用いる記録媒体と画像形成を行う環境により異なるようにしてもよい。
【0116】
以上のように、本実施例においては、センサ11はドラム1およびセンサ11と規定の位置関係をもってセンサ11に対向して設置されている基準板11aを有する。センサ11から基準板11aまでの距離L0とセンサ11から記録媒体Pまでの距離Lの差分(L0−L)によってドラム1から記録媒体Pまでの相対距離ΔLを測定する。
【0117】
この構成により、センサ11から直接、ドラム1と記録媒体Pとの距離が測定できないような状況でも、記録媒体Pとドラム1との相対距離ΔLを求めることができる。即ち、予め基準板11aをドラム1と決まった相対位置に設置しておき、基準板11aと記録媒体Pとの距離を測定することにより、記録媒体Pとドラム1との相対距離を求めることができる。これはセンサ11の設置位置の自由度向上に繋がる。また、基準板11aとセンサ11との位置関係を所定のものとして決めておけば、基準板11aをセンサ11の較正に用いることも可能になる。
【0118】
<その他の実施形態>
(1)画像形成装置の画像形成プロセスは、像担持体として感光体を用いた実施例の電子写真方式に限られず、像担持体として誘電体を用いた静電記録プロセス、像担持体として磁性体誘電体を用いた磁気記録プロセスなどであってもよい。
【0119】
(2)像担持体は中間転写カラー画像形成装置等における中間転写ベルトや中間転写ドラムなどの中間転写体であってもよい。
【0120】
以上、本発明は、上記実施例に拘束されるものではなく、同じ技術思想を有するものであれば、応用がきくことは勿論である。
【符号の説明】
【0121】
100・・画像形成装置、200・・制御手段、1・・像担持体、Nt・・転写ニップ部、P・・記録媒体、5・・転写手段、11・・距離測定手段、14・・定着手段、17・・転写電圧印加手段、ΔL・・像担持体から記録媒体までの相対距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着のトナー像を担持する像担持体と、前記像担持体と転写ニップ部を形成して記録媒体を挟持搬送し前記像担持体から記録媒体にトナー像を転写する転写手段と、前記転写手段に電圧を印加する転写電圧印加手段と、前記転写ニップ部を出て搬送される記録媒体のトナー像を定着する定着手段と、制御手段と、を有する画像形成装置であって、
前記転写手段と前記定着手段の間に配置され、前記像担持体から記録媒体までの相対距離を測定する距離測定手段を有し、前記制御手段は前記距離測定手段により測定される前記相対距離に応じて前記転写電圧印加手段から前記転写手段に印加する電圧を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記距離測定手段は、前記距離測定手段から前記像担持体までの距離と前記距離測定手段から前記記録媒体までの距離の差分によって前記像担持体から前記記録媒体までの相対距離を測定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記距離測定手段は前記像担持体および前記距離測定手段と規定の位置関係をもって前記距離測定手段に対向して設置されている基準板を有し、前記距離測定手段から前記基準板までの距離と前記距離測定手段から前記記録媒体までの距離の差分によって前記像担持体から前記記録媒体までの相対距離を測定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写手段の記録媒体搬送方向下流側に配置され記録媒体の電荷を除電する除電手段と、前記除電手段に電圧を印加する除電電圧印加手段と、を有し、前記制御手段は前記距離測定手段により測定される前記相対距離に応じて前記除電電圧印加手段から前記除電手段に印加する電圧を変更することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記距離測定手段により測定される前記相対距離に応じて変更する電圧の変更値が、用いる記録媒体と画像形成を行う環境により異なることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記距離測定手段が記録媒体に対し非接触であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記距離測定手段が受光部と発光部を含む光学式センサであることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−226139(P2012−226139A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94023(P2011−94023)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】