説明

画像形成装置

【課題】操作面を操作する側へ向けるように操作部を起立させ得る構成において、操作部の薄型化を図り、又操作時のガタつきを抑制することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】操作部11は、操作する側へ引き出し、該引き出した位置で操作面102を操作する側へ向けるように回動させることが可能な画像形成装置1は、操作部を上記引き出す方向及び上記回動方向に移動可能に支持するスライド及びヒンジ機構300であって、操作部の両端部において装置本体側に設けられた突部307、308と、操作部の両端部に固定され、それぞれに突部がその中を移動することで上記引き出す方向及び上記回動方向への操作部の移動方向を規定する溝部301a、301bが形成された板状のカム部材301と、を備えたスライド及びヒンジ機構300を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成部が収納された筐体に操作面を上向きにした操作部が配置された画像形成装置に関し、より詳しくは、操作面を操作する側へ向けるように操作部を起立させる構造に特徴を有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成部(例えば電子写真方式又はインクジェット方式)が収納された筐体の上部に画像読取部(例えばフラットベッドスキャナ)を配置し、液晶画面を備えた操作部を、画像読取部の高さ位置に配置した画像形成装置が実用化されている。このような画像形成装置では、一般に、操作する側から画像読取部の読取面へ原稿を載置する際の邪魔にならないように、操作部の上向きの操作面は、読取面よりも低い位置に配置されている。
【0003】
しかし、背丈の高い画像形成装置の筐体の上部に操作面を上向きにした操作部が配置されている場合、例えば小児や車椅子使用者にとって、液晶画面の表示画像を見ながら操作部に各種の設定を行ったり操作したりすることが容易ではない場合がある。このため、通常は操作面が上向きに配置されている操作部を、必要に応じて起立させて、操作する側の低い位置から容易に操作できるようにした画像形成装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1には、本願の図22及び図23に示すように、画像形成装置の筐体の上部に配置された操作部500を、正面側へスライドさせて引き出し(図22(a))、その引き出した位置で下方へ回動させる(図22(b))ようにした画像形成装置が開示される。更に説明すると、特許文献1に記載の画像形成装置は、操作部500の左右中央奥側端部に配置された回動軸で操作部500を下方へ回動可能に支持して、可動範囲の中間位置で保持可能な自在ヒンジ機構504(図23)を有する。又、該画像形成装置は、自在ヒンジ機構504の固定側部材を、操作部500を操作する側へ引き出し可能に支持するためのスライド機構としてスライダ506を有する。該スライダ506は、支持ユニット507に形成された左レール508と右レール509とに案内されて前後方向へ円滑に移動可能である。表示/入力ユニット501を前後に移動させるとき、スライダ506に一体的に回転支持されたレールコロ505が、左レール508と右レール509とに案内される。又、該画像形成装置には、画像形成部の筐体面の内側に、操作部500に一端が接続されて下方へ垂れ下がる束線511の余長部分の移動空間が形成される(図23)。又、操作部500の引き出し経路を塞ぐように配置された画像形成部の筐体面には、引き出し方向に移動可能に束線511を貫通させる細長い開口部510(図23)が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−102143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるスライド機構の場合、次のような課題がある。
【0007】
即ち、自在ヒンジ機構504が操作部500の左右中央奥側端部に配置され、これを案内するスライド機構も操作部500の左右中央にある液晶表示部502の下部に配置される。そのため、操作部500内の液晶表示部502や基板ユニットの配置が制限され、操作部自体の厚みを比較的大きく取る必要がある。
【0008】
又、自在ヒンジ機構504が操作部500の左右中央にある液晶表示部502の奥側端部に配置される。そのため、操作部500を引き出したとき、操作者が操作部500の左右両端側に近い数字/アルファベットキー105などのボタンを押したときに、左右中央部に対しガタつきが大きく出て、操作感を悪化させてしまうことがある。
【0009】
従って、本発明の目的は、操作面を操作する側へ向けるように操作部を起立させ得る構成において、操作部の薄型化を図り、又操作時のガタつきを抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、記録材に画像を形成する装置本体と、前記装置本体を操作するために操作面を上向きにして前記装置本体に取り付けられた操作部と、を有し、前記操作部は、操作する側へ引き出し、該引き出した位置で前記操作面を操作する側へ向けるように回動させることが可能な画像形成装置において、前記操作部を前記引き出す方向及び前記回動方向に移動可能に支持するスライド及びヒンジ機構であって、前記引き出す方向と略直交する方向における前記操作部の両端部において前記装置本体側に設けられた突部と、前記操作部の前記両端部に固定され、それぞれに前記突部がその中を移動することで前記引き出す方向及び前記回動方向への前記操作部の移動方向を規定する溝部が形成された板状のカム部材と、を備えたスライド及びヒンジ機構を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、操作面を操作する側へ向けるように操作部を起立させ得る構成において、操作部の薄型化を図り、又操作時のガタつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】本発明の一実施例に係る画像形成装置の斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部の斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部を引き出した状態の斜視図である。
【図5】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部を下方へ回動させた状態の斜視図である。
【図6】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部を下方へ回動させた状態で操作部の筐体を取り除いた要部の斜視図である。
【図7】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部の要部分解斜視図である。
【図8】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部の要部分解斜視図である。
【図9】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部の要部分解斜視図である。
【図10】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部の要部断面図である。
【図11】本発明の一実施例に係る画像形成装置のスライド及びヒンジ機構の動作説明図である。
【図12】本発明の一実施例に係る画像形成装置のスライド及びヒンジ機構の動作説明図である。
【図13】本発明の一実施例に係る画像形成装置のスライド及びヒンジ機構の一部を詳細に示す斜視図である。
【図14】本発明の一実施例に係る画像形成装置のスライド及びヒンジ機構の一部の動作説明図である。
【図15】本発明の一実施例に係る画像形成装置のスライド及びヒンジ機構の変形例を示す斜視図である。
【図16】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部を下方から見た束線の移動の説明図である。
【図17】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部を下方から見た束線の移動の説明図である。
【図18】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部を下方から見た束線の移動の説明図である。
【図19】本発明の一実施例に係る画像形成装置の束線の移動溝の説明図である。
【図20】本発明の他の実施例に係る画像形成装置の操作部を下方へ回動させた状態の斜視図である。
【図21】本発明の更に他の実施例に係る画像形成装置の操作部を下方から見た束線の移動の説明図である。
【図22】従来例の操作部の斜視図である。
【図23】従来例の操作部を下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0014】
実施例1
1.画像形成装置
図1は、本実施例の画像形成装置1の構成の説明図である。尚、以下の説明において、図1の紙面手前側を画像形成装置1の「前(正面)」、紙面奥側を「後」とする。又、画像形成装置1について左右は、画像形成装置1を正面から見た場合の左右であり、上下は、鉛直方向の上下であるものとする。画像形成装置1の正面側は、通常、操作者が画像形成装置1を操作する側である。
【0015】
図1に示すように、本実施例の画像形成装置1は、中間転写ベルト12の画像担持面の移動方向に沿って、電子写真方式によりトナー像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部PY、PM、PC、PKを配置した、タンデム型のフルカラー複合機である。
【0016】
画像形成装置1の本体(装置本体)3に収納された第1の画像形成部PYでは、イエロートナー像が形成されて、中間転写ベルト12に一次転写される。第2の画像形成部PMでは、マゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト12上のイエロートナー像に重ねて一次転写される。第3、第4の画像形成部PC、PKでは、それぞれシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて、同様に中間転写ベルト12上のトナー像に位置を重ねて順次一次転写される。
【0017】
中間転写ベルト12に担持された4色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送され、別途二次転写部T2に搬送される記録材Pへ一括して二次転写される。
【0018】
二次転写部T2でトナー像を二次転写された記録材Pは、縦パス部4に収納された定着装置14で加熱及び加圧を受けて、表面にトナー像が定着された後に、排出ローラ15によって排紙トレイ5へ排出される。
【0019】
装置本体3の下部に、給紙カセット2が、正面側へ引き出し可能に配置される。給紙カセット2から1枚ずつ引き出された記録用紙などの記録材Pは、二次転写部T2の手前で待機し、中間転写ベルト12上のトナー像にタイミングを合わせて、二次転写部T2へ送り出される。
【0020】
装置本体3の上方には、縦パス部4を介して画像読取部(本実施例ではフラットベッドスキャナ)6が配置される。画像読取部6は、読取面(本実施例ではガラス板)に載置された原稿の下面の画像を光学的に読み取って、画像データに変換するものである。自動原稿給送装置(ADF)7を持ち上げた状態で、読取面6aに原稿を載置することができる。自動原稿給送装置7は、原稿トレイ8に積載した束原稿から、原稿を1枚ずつ分離して読取面6aを通過させて、画像読取部6に原稿を流し読みさせる。
【0021】
操作部11は、画像読取部6の高さ位置に操作面を上向きにして配置されているが、操作する側である正面側へ引き出して下方へ回動させることにより、図1に破線で示す位置に操作面を正面側へ向けて起立させることが可能である。尚、操作部11の操作面は、操作部11上の被操作要素群で形成される主平面であり、本実施例では、後述する液晶表示部102の表面、或いは後述する入力キー群の被押圧部を含む平面で代表される。
【0022】
操作部11の直下の縦パス部4には、排紙ローラ15を含む記録材Pの搬送機構、各種センサ、送風ファンなどが収納されている。
【0023】
装置本体3から出力された記録材Pを積載する積載部としての排紙トレイ5は、装置本体3と画像読取部6との間に配置されて、装置本体3で画像が形成された記録材Pを、正面側から取り出し可能に積載する。
【0024】
2.操作部の基本構成
図2は、本実施例の画像形成装置1の斜視図である。図3は、操作部11の斜視図である。図4は、操作部11を引き出した状態の斜視図である。図5は、操作部11を下方へ回動させた状態の斜視図である。図6は、操作部11を下方へ回動させた状態において操作部11の筐体を取り除いた要部の斜視図である。
【0025】
図2に示すように、操作部11は、画像読取部6の読取面6a以下の高さ位置として、読取面6aよりも低い位置で、画像読取部6よりも正面側に配置される。操作部11の下方には、記録材Pの搬送方向において排紙トレイ5の上流側の縦パス部4を覆うように、縦パス部カバー10が配設されている。
【0026】
自動読取モードにおいては、自動原稿給送装置7の原稿トレイ8上に原稿をセットする。手動読取モードにおいては、自動原稿給送装置7を後側へ回動させて上方へ開放することで、画像読取部6の読取面6aにアクスセス可能となる。読取面6aに原稿をセットする操作のアクセス性を妨げないよう、操作部11は、常に読取面6aより低い位置に最上部を位置させている。
【0027】
そして、自動原稿給送装置7の原稿トレイ8(又は画像読取部6の読取面6a)に原稿をセットした後、操作部11を通じて、白黒又はカラーの読取モードや、コピー出力サイズ、記録材Pの種類、コピー枚数などの情報を入力する。
【0028】
操作部11に入力された情報に基づいて、画像読取部6において原稿の画像情報が読み取られる。そして、給紙カセット2内又は開放した手差しトレイ9上に積載された記録材Pが給紙され、装置本体3で画像形成がされ、縦パス部4を経由して排紙トレイ5に排出されて積載される。
【0029】
図3に示すように、操作部11の表示/入力ユニット101には、画像形成装置1の動作状態を表示したり、後述するキー類の代用となるタッチパネル機能を有する液晶表示部102が配置されている。又、表示/入力ユニット101には、コピー動作やプリント動作を開始するためのスタートキー103、動作を中止するためのストップキー104が配置されている。又、表示/入力ユニット101には、プリント枚数やFAX番号、電子メールアドレスなどを入力する数字/アルファベットキー105などが配置されている。これらの入力キー群は、複数のスイッチ作動部材(ボタン)群105aを有する(図6)。
【0030】
図4に示すように、表示/入力ユニット101は、支持ユニット201によって正面側へ水平に引き出し可能に支持されている。支持ユニット201は、装置本体3に固定されている。従って、表示/入力ユニット101は、支持ユニット201に対して水平に前後方向に自在に移動可能である。より詳細には、表示/入力ユニット101は、支持ユニット201に対して、後方へ押し込んだ収納位置(第1の位置)と、正面側へ引き出した最大引き出し位置(第2の位置)との間を水平に前後方向に移動可能である。
【0031】
支持ユニット201には、表示/入力ユニット101を引き出した際の外観品位を向上させるために、装置本体3又は操作部11の外装カバーと同一又は類似の外観色及び/又は表面処理が施された、トレイ様のカバー320が取り付けられている(図4、図5)。
【0032】
図5に示すように、表示/入力ユニット101は、支持ユニット201に沿って正面側へ水平に引き出した位置で、下方へ50度まで回動して、液晶表示部102を正面側へ向けるように起立可能である。より詳細には、表示/入力ユニット101は、最大引き出し位置において、支持ユニット201に対して垂直面内で回動させて、水平に対して0度〜50度の範囲で自在に液晶表示部102の角度を設定することが可能である。
【0033】
従って、操作部11が高い位置に設置されていても、例えば低身長又は車椅子使用者などの視線が低い操作者は、操作部11を手前に引き出した後、下方へ回動させることにより、液晶表示部102を見易く設定できる。このように、表示/入力ユニット101の角度を変更(チルト)することにより、液晶表示102の視認性及び操作部11の操作性が向上する。
【0034】
又、表示/入力ユニット101は、その最大引き出し位置において、後方の頂点位置が原稿読取部6の読取面6a以下の位置を保つように、表示/入力ユニット101の正面側が下方に倒れるように回動する。このため、図2に示すように、操作部11の後方で且つ操作部11より高い位置にある画像読取部6の読取面6aへのアクセス性が確保できる。
【0035】
又、表示/入力ユニット101は、画像読取部6よりも正面側で且つ排紙トレイ5より右側へ配置されるため、表示/入力ユニット101をチルトさせても、排紙トレイ5へのアクセス性を確保することが可能である。排紙トレイ5へ積載された記録材Pを正面側へ取り出す際に表示/入力ユニット101が邪魔になる場合は、一時的に、表示/入力ユニット101を上方へ回動させておけばよい。
【0036】
又、表示/入力ユニット101が収納位置にある状態では、図2に示すように、操作部11の正面側の側面と縦パス部カバー10の正面側の側面とが同一面上にあるので、外観品位が向上する。
【0037】
又、表示/入力ユニット101を収納位置から最大引き出し位置まで引き出す場合、表示/入力ユニット101の下面(底面)は、縦パス部カバー10よりも正面側に外側の位置まで移動する。このため、最大引き出し位置において表示/入力ユニット101の角度を変更したときに、表示/入力ユニット101が縦パス部カバー10と干渉することがなく、縦パス部カバー10内側の空間を有効に活用できる。
【0038】
3.スライド及びヒンジ機構
図7、図8及び図9はそれぞれ、操作部11の要部分解斜視図である。図10は、操作部11を左右方向に切った要部断面図である。図11は、スライド及びヒンジ機構の操作説明図である。図12は、スライド及びヒンジ機構の一部の動作説明図である。図13は、スライド及びヒンジ機構の一部の詳細図である。図14は、スライド及びヒンジ機構の一部の動作説明図である。
【0039】
図7を参照して、支持ユニット201の固定部材202は、図示しない複数の固定ネジによって、画像読取部6及び装置本体3に固定されている。又、図7に示すように、板状のカム部材を有するスライド及びヒンジ機構としての左側のヒンジ部300Lと右側のヒンジ部300Rは、操作部ステイ322の左右端部に、それぞれネジ317、318で固定される。又、ヒンジ部300R、300Lは、後述するように固定部材202に固定される。操作部ステイ322は、次のような各ユニットを取り付けるためのものである。即ち、図6に示す表示/入力ユニット101内の液晶表示部102や、液晶表示部102の基板ユニット102a、数字/アルファベットキー105の電気基板105bといった電気基板(制御基板401)などの各ユニットである。従って、表示/入力ユニット101は、ヒンジ部300R、300Lを介して、後述するように引き出した後に回動できるように固定部材202に固定される。又、操作部ステイ322には、操作部11の筐体が取り付けられる。又、固定部材202には、カバー320が、ネジ321によって固定される。
【0040】
左側のヒンジ部300Lと右側のヒンジ部300Rはそれぞれ、以下の(1)〜(7)に示す構成・機能を有する。尚、本実施例では、左側のヒンジ部300Lは、右側のヒンジ部300Rと対称の形態を有している。従って、以下、主に右側のヒンジ部300R(以下、単に「ヒンジ部」ともいう。)を例に詳しく説明する。しかし、名称が同じものは、左側のヒンジ部300Lについても、左右対称に設けられることを除いて右側のヒンジ部300Rのものと実質的に同一の構成・機能を有する。
【0041】
(1)ヒンジ部300Rは、板状のカム部材としてのカム板301を有する。図13及び図14に示すように、カム板301は次のような形態を有している。カム板301は、溝部としての直線状の第1のカム溝301aを有する。第1のカム溝301aは、ヒンジ部300Rが組み立てられた状態で略水平に延在する。第1のカム溝301aは、表示/入力ユニット101が支持ユニット201に沿って正面側へ引き出されるときに、後述する第1のカムピン307aと第2のカムピン307bがガタなく円滑にスライドできる幅L1を有する。又、カム板301は、第1のカム溝301aの一方の端部(図13の左端)301a1を中心とする、溝部としての円弧状の第2のカム溝301bを有する。第2のカム溝301bは、ヒンジ部300Rが組み立てられた状態で、第1のカム溝301aから上方に円弧状に延在する。第2のカム溝301bは、第1のカム溝301aと合流する。又、カム板301は、第1、第2のカムピン307a、307bが円滑にスライドできるよう、第1のカム溝301aと第2のカム溝301bとの合流部で鋭角になる角部に設けられた面取り形状部301eを有する。又、カム板301は、第2のカム溝301bの円弧中心に対し、第1のカム溝301aの中心軸と所定の角度で長手軸が一致する方向を持つ複数(本実施例では2個)の角穴301c、301dを有する。複数の角穴301c、301dは、第1のカム溝301aの円弧中心と同芯で、第1のカム溝301aの中心軸に対し異なる角度位置に設けられている。カム板301は、ネジ穴301eに通されるネジ317を操作部ステイ322のネジ穴322bに螺合することによって操作部ステイ322に固定される(図8)。
【0042】
尚、本実施例では、左側のヒンジ部300Lのカム板302は、右側のヒンジ部300Rのカム板301と同一部品を使用している。
【0043】
(2)ヒンジ部300Rは、挟持部材を構成する弾性部材としての板バネ303を有する。図13及び図14に示すように、板バネ303は、次のような形態を有している。板バネ303は、台形状の断面形状を有する突部303aを有する。突部303aは、ヒンジ部300Rが組み立てられた状態で、カム板301側に突出する。又、板バネ303は、第1、第2のカムピン307a、307bをそれぞれ貫通させる丸穴303c、二方取り穴303dを有する。又、板バネ303は、突部303aの突出方向と反対方向に、カム板301や後述するスライドアーム309との摺動時の引っ掛かりを防止するための皿状の絞り形状303bを有する。本実施例では、突部303aの根元の幅L2は、第1のカム溝301aの幅L1に対し、L2<L1の関係を有する。即ち、表示/入力ユニット101が支持ユニット201に沿って正面側へ引き出されるときに、板バネ303が第1のカムピン307aと第3のカムピン307bにガイドされ、突部303aが第1のカム溝301a内を移動する。このとき、上記関係とすることにより、突部303aがカム溝301aの端面に接触して負荷を発生しないようすることができる。又、本実施例では、複数の角穴301c、301dのそれぞれの幅L3は、突部303aの根元の幅L2、突部303a先端の幅L4に対し、L2≧L3>L4の関係を有する。これにより、突部303aの先端が複数の角穴301c、301dのそれぞれに確実に落ち込み、ガタつきを防止することができる。
【0044】
尚、本実施例では、左側のヒンジ部300Lの板バネ304は、右側のヒンジ部300Rの板バネ303と同一部品であり、取り付け方向を変えて使用している。
【0045】
(3)ヒンジ部300Rは、スライド部材としてのスライドアーム309を有する。スライドアーム309は、図9に示すように、次のような形態を有している。スライドアーム309は、C字状の断面を有している。スライドアーム309は、上下方向に延在する側面に、次のものをそれぞれ有する。即ち、第1、第2のカムピン307a、307bがそれぞれ嵌合する穴309a、309bと、ストッパー319を貫通させる穴309cと、後述する第2のスペーサ313をネジ315で固定する穴309dとである。又、スライドアーム309は、図10に示すように、内側に固定部材202の右側の曲げ部202aと、後述する第2のスペーサ313と、後述する第1のスペーサ311とを抱えこんでいる。ストッパー319は、固定部材202のネジ穴202e(図9)に固定される。ストッパー319は、後述する第1、第2のスペーサ311、313の溝311d、313a内を移動する。
【0046】
尚、本実施例では、左側のヒンジ部300Lのスライドアーム310は、右側のヒンジ部300Rのスライドアーム309と面対称のプレス板金部品であり、外形打ち抜き後の曲げ方向を変えたものを使用している。
【0047】
(4)ヒンジ部300Rは、第1のスペーサ311を有する。第1のスペーサ311は、図9に示すように、次のような形態を有している。第1のスペーサ311は、ストッパー319を貫通させ、表示/入力ユニット101のスライド量を規制する溝311dを有する。溝311dは、ヒンジ部300Rが組み立てられた状態で、略水平方向に延在する。又、第1のスペーサ311は、第1、第2のカムピン307a、307bをそれぞれ固定するネジ穴311a、311bを有する。又、第1のスペーサ311は、ネジ315を固定するネジ穴311cを有する。
【0048】
尚、本実施例では、左側のヒンジ部300Lの第1のスペーサ312は、右側のヒンジ部300Rの第1のスペーサ311と同一部品であり、取り付け方向を変えて使用している。
【0049】
(5)ヒンジ部300Rは、第2のスペーサ313を有する。第2のスペーサ313は、弾性を有するプラスチックで作製されている。そして、第2のスペーサ313は、図9に示すように、次のような形態を有している。第1のスペーサ311の溝311dと同様に、ストッパー319を貫通させ、表示/入力ユニット101のスライド量を規制する溝313aを有する。溝313aは、ヒンジ部300Rが組み立てられた状態で、略水平方向に延在する。又、第2のスペーサ313は、ヒンジ部300Rと固定部材202の曲げ部202aとの隙間によるガタを防止するために、溝313aの上下に設けたアーチ状形状313bを有する。このアーチ状形状313bは、曲げ部202aに押し付けられ変形して上記のガタをとる。又、ヒンジ部300Rは、クリック機能を果たすために、溝313aの両端近傍の内側に設けた突起313c、313dを有する。突起313c、313dは、ストッパー319がこれを乗り越えて溝313aの両端部に突き当たるのを可能とする。この突起313c、313dは、上記のクリック機能により、表示/入力ユニット101をスライドスライドさせたとき、収納位置にある状態と最大引き出し位置にある状態とを明確にする。又、第2のスペーサ313は、第1、第2のカムピン307a、307bのネジ先端のそれぞれとの干渉を避けるための穴313e、313fを有する。ヒンジ部300Rが組み立てられた状態で後側に配置される第2のスペーサ313の一方の端部に形成された固定部313hは、第1のスペーサ311とスライドアーム309の同方向側の端部を挟み込むようにして、スライドアーム309の外側に配置される。そして、ネジ315を、固定部313hに形成された穴313gを通し、又スライドアーム309に形成された穴309を通して、第2のスペーサ313のネジ穴311cに螺合する。これによって、第1のスペーサ311、第2のスペーサ313及びスライドアーム309が固定される。
【0050】
尚、本実施例では、左側のヒンジ部300Lの第2のスペーサ314は、右側のヒンジ部300Rの第2のスペーサ313と同一部品であり、取り付け方向を変えて使用している。
【0051】
(6)ヒンジ部300Rは、装置本体3側に設けられた突部を構成する軸状突部としての第1のカムピン(第1の突部)307aと第2のカムピン(第2の突部)307bを有する。第1、第2のカムピン307a、307bはいずれも段ネジで構成される。そして、第1、第2のカムピン307a、307bは、図8及び図9に示すように、次のような形態を有している。第1、第2のカムピン307a、307bはそれぞれ、後述する加圧部材305a、305bと、板バネ303と、カム板301の第1のカム溝301aと、スライドアーム309と、を貫通して、第1のスペーサ311のネジ穴311a、311bに固定される。
【0052】
(7)ヒンジ部300Rは、加圧部材305a、305bを有する。加圧部材305a、35bは、図7及び図8に示すように、次のような形態を有している。本実施例では、加圧部材305a、305bはそれぞれコイルバネであり、第1、第2のカムピン307a、307bで固定されたとき、その弾性により板バネ303、カム板301及びスライドアーム309の各接触面の摩擦を増大させる。第1、第2のカムピン307a、307bは、そのフランジ形状部307a1、307b1で加圧部材305a、305bを板バネ303との間で圧縮して保持する。これにより、表示/入力ユニット101のスライドやチルト動作に適度な抵抗力を発生させ、不用意なスライドやチルト動作を防止する。
【0053】
尚、実施例では、加圧部材305a、305bとしてコイルバネを使用しているが、これに限定されるものではない。例えば、図15に示すような屈曲したはさみ形状の板バネや、バネ座金、ウエーブワッシャなど、弾性を有する部材及び形状の部材であれば良い。
【0054】
上述のように左側のヒンジ部300Lは、右側のヒンジ部300Rと対称の形態を有している。即ち、図7に示すように、左側のヒンジ部300Lは、カム板302、板バネ304、スライドアーム310、第1のスペーサ312、第2のスペーサ314、第1、第2のカムピン308a、308bを有する。又、左側のヒンジ部300Lは、加圧部材306a、306b、第1のスペーサ312、第2のスペーサ314及びスライドアーム310を固定するネジ316、カム板302を固定するネジ318を有する。スライドアーム310は、固定部材202の左側の曲げ部202bに取り付けられる。
【0055】
4.動作
次に、図11及び図12を参照して、表示/入力ユニット101のスライド及びチルト動作について説明する。尚、図11には、操作部ステイ322に固定される表示/入力ユニット101は図示していないが、表示/入力ユニット101は図11に図示されている操作部ステイ322と一体的に移動する。
【0056】
図11(a)に示す収納位置から図11(b)に示す最大引き出し位置までは、第1、第2のカムピン307a、307bが、カム板301の第1のカム溝301aに水平方向に拘束されるため、表示/入力ユニット101は回動することができない。収納位置では、第2のカムピン307bが第1のカム溝301aの一方(正面側)の端部301a2に突き当たり、最大引き出し位置では、第1のカムピン307aが第1のカム溝301aの他方(後側)の端部301a1に突き当たる。
【0057】
図11(b)、図11(c)、並びに、図14(a)〜図14(c)に示すように、表示/入力ユニット101は、最大引き出し位置においてのみ、第2のカムピン307bが、第1のカム溝301aの一方の端部301a1に突き当たった第1のカムピン307aを回動中心として、第2のカム溝301b側に入ることが可能になる。即ち、操作部11は、操作する側へ引き出した位置で、操作する側から排紙トレイ5を遮蔽する方向(下方)に傾くよう回動可能になる。
【0058】
又、図11(c)に示すように、表示/入力ユニット101回動させると、カム板301の角穴301c、301dに板バネ303の突部303aが嵌ることにより、クリック感が得られる。それと同時に、板バネ303自体の弾性と加圧部材305a、305bの加圧力により、突部303aの脱落を防止する。そのため、表示/入力ユニット101の傾き角度を保持することが可能になる。
【0059】
更に、図11(a)に示す収納位置から図11(b)に示す最大引き出し位置に表示/入力ユニット101をスライドさせるとき、次のようになる。即ち、図12に示すように、第2のスペーサ313の溝313aの両端近傍の内側に設けた突起313c、313dをストッパー319が通過し、クリック感が得られる。これにより、スライド位置が明確になると共に、表示/入力ユニット101が不用意に移動しないよう規制することができる。
【0060】
このように、表示/入力ユニット101は、前後方向に円滑に移動すると共に、最大引き出し位置において所定の傾き角度に支持されるので、操作性の向上が図られる。
【0061】
上述のように、本実施例では、画像形成装置1は、記録材Pに画像を形成する装置本体3と、装置本体3を操作するために操作面を上向きにして装置本体3に取り付けられた操作部11と、を有する。又、本実施例では、操作部11は、操作する側へ引き出し、該引き出した位置で操作面を操作する側へ向けるように回動させることが可能である。そして、本実施例では、画像形成装置1は、操作部11を上記引き出す方向及び上記回動方向に移動可能に支持するスライド及びヒンジ機構300(300L、300R)を有する。このスライド及びヒンジ機構300は、上記引き出す方向と略直交する方向における操作部11の両端部において装置本体側に設けられた突部307を有する。又、このスライド及びヒンジ機構300は、次のような板状のカム部材301を有する。即ち、板状のカム部材301は、操作部11の上記両端部に固定され、それぞれに突部307がその中を移動することで上記引き出す方向及び上記回動方向への操作部11の移動方向を規定する溝部301が形成されている。
【0062】
特に、本実施例では、溝部301は、直線状の第1のカム溝301aと、第1のカム溝301aに合流するように形成された、第1のカム溝301aの第1の端部301a1を中心とする円弧状の第2のカム溝301bと、を有する。又、特に、本実施例では、突部307は、上記引き出す方向に沿って配置された第1、第2の突部307a、307bを有する。そして、操作部11を引き出すときに、第1、第2の突部307a、307bは第1のカム溝301aの中(第1のカム溝内)を移動する。又、操作部11を上記引き出した位置としたときに、第1のカム溝301aの第1の端部301a1に第1の突部307aが突き当たると共に、第2の突部307bが第2のカム溝301bに入る。これにより、板状のカム部材301が第1の突部307aを中心に回動する。
【0063】
又、本実施例では、スライド及びヒンジ機構300は、操作部11の上記両端部側に配置された、上記引き出す方向に沿って移動可能に装置本体側の固定部材202に係合するスライド部材309を有する。そして、第1、第2の突部307a、307bはスライド部材309に固定されている。又、本実施例では、スライド及びヒンジ機構300は、第1、第2の突部307a、307bが貫通する穴303c、303dを備えスライド部材309との間で板状のカム部材301を挟持する挟持部材303を有する。又、本実施例では、スライド及びヒンジ機構300は、挟持部材303とスライド部材309との間で板状のカム部材301を挟持する圧力を加えるための第1、第2の突部307a、307bによって保持された加圧部材305a、305bを有する。又、本実施例では、板状のカム部材301は、第2のカム溝301bの円弧中心と同芯で、第1のカム溝301aの中心軸に対し異なる角度位置に設けられた複数の穴301c、301dを有する。又、本実施例では、挟持部材303は複数の穴301c、301dに係合する突起303aを有する。そして、操作部11を回動させたときに、挟持部材303の突起303aが板状のカム部材301の穴301c、301dに嵌合して、操作部11の角度位置を規制する。尚、本実施例では、板状のカム部材301の第1のカム溝301aと第2のカム溝301bとで挟まれた角部は面取りされている。
【0064】
5.束線の余長部分の移動空間
次に、操作部11と装置本体3の制御部(図示せず)とを接続する束線の収容方法について説明する。
【0065】
ここで、図23を参照して前述した特許文献1に記載されるスライド機構の場合、操作部500を引き出したときに、操作部500と装置本体の制御部を結ぶ束線511を操作部の下方に垂れさがるように配置する。従って、束線511を貫通させる装置本体の筺体に設けた細長い開口部510やスライド機構自体が外観として露出する。そのため、外観上煩雑な印象を与え、場合によっては見苦しいと感じられることもある。
【0066】
これに対して、本実施例では、以下に説明するような構成により、操作部の移動に応じて束線の余長部分を移動させるようにする。
【0067】
図16、図17及び図18は、操作部11を下方から見た束線の移動の説明図である。特に、図16は、収納位置にある状態の表示/入力ユニット101を支持ユニット201と共に示す。又、図17は、収納位置にある状態の表示/入力ユニット101を後述の束線カバーを外した状態で示す。又、図18は、最大引き出し位置にある状態の表示/入力ユニット101を後述の束線カバーを外した状態で支持ユニット201と共に示す。
【0068】
図16〜図17に示すように、表示/入力ユニット101には、その筐体の一部である下カバー250の左右中央部の正面側端部の下面(底面)に把手部121が一体的に形成されている。把手部121には、操作者の手指を引っ掛けることができるような凹所121aが形成されている。又、支持ユニット201には、把手部121に対応する配置と形状で切り欠き部211が形成されている。
【0069】
尚、図2に示す縦パス部カバー10は、操作部11の操作する側の側面に連続するように装置本体3の筐体面を形成している。そのため、この縦パス部カバー10にも、把手部121の凹所121aへ向かう手指の進入経路となる窪み10aが形成されている。
【0070】
図7及び図9に示すように、操作部11の下面に配置された支持ユニット201の固定部材202及びカバー320の前面側の右側端部にはそれぞれ、束線131を貫通させるための導入部202c、320aが形成されている。
【0071】
装置本体3の制御部と表示/入力ユニット101を電気的に接続する束線131の一端は、支持ユニット201の導入部320a、202cを上から下に貫通した後、下方で装置本体3の制御部に接続されている。束線131の他端は、支持ユニット201の導入部202c、320aを下から上に貫通して、表示/入力ユニット101に入る。支持ユニット201の導入部202cに隣接する固定部材202の下面(底面)において、束線131は束線保持部材202dで固定部材202に保持される(図9、図16、図18)。
【0072】
図17及び図18に示すように、表示/入力ユニット101に入った束線131は、スタートキー103、ストップキー104、数字/アルファベットキー105の下部において、下カバー250の窪みで形成された空間である収容部250fに収容される。これらスタートキー103、ストップキー104、数字/アルファベットキー105は、表示/入力ユニット101の右よりにある。特に、本実施例では、束線131は、収容部250f内において突出するように下カバー250に設けられた円筒形状の突起であるガイドリブ250cの外周を反時計まわりにループ状にほぼ一周した後、制御基板401にコネクタ131aを介して接続される。
【0073】
図17に示す表示/入力ユニット101が収納位置にある状態における束線131のループ状の余長部分は、図18に示す表示/入力ユニット101が最大引き出し位置にある状態で上記ループが絞まることで所定の長さ分だけ吸収される。そして、最大引き出し位置で表示/入力ユニット101の角度を変更した場合に、残りの余長部分が吸収される。このように、表示/入力ユニット101の移動を妨げることがないように、束線131の長さが規定されている。収容部250fは、束線131の余長部分の移動空間を構成する。
【0074】
更に、束線131は、表示/入力ユニット101のスライド時にコネクタ131aに負荷がかからないように、収容部250f内においてコネクタ131aの近傍で束線保持部材131bにより下カバー250に固定される。
【0075】
図17に示すように、上述のように束線131が装置本体3と表示/入力ユニット101に接続された状態で、下カバー250に束線カバー251が取り付けられる。束線カバー251は、爪部251aを下カバー250の係合部250a、250bに差し込み、弾性を有する係合爪251bを下カバー250の切欠部250eに引っ掛けて装着する。束線カバー251は、後述する開口部(移動溝)252を開けるようにして、収容部250fを閉鎖する。
【0076】
図19は、表示/入力ユニット101のスライドに伴う束線の移動の説明図である。図19(a)は表示/入力ユニット101が収納位置にある状態を下方から見た様子を示し、図19(b)は表示/入力ユニット101が最大引き出し位置にある状態を下方から見た様子を示す。
【0077】
図19及び図10に示すように、束線カバー251を閉じた状態で、束線131の一部は、下カバー250の窪みと束線カバー251の端部251cとにより形成される空間である開口部(移動溝)252内を自在に移動することが可能である。上記開口部252を形成する下カバー250の窪みは、収容部250fの一部である。
【0078】
束線131は、表示/入力ユニット101が支持ユニット201に対して水平移動して、最大引き出し位置で回動して傾き角度を変更する。その過程で、束線131は、一端を束線保持部材202dで固定部材202に保持されているため、図18中の矢印に示す時計方向に引っ張られ、開口部252内でガイドリブ250cに巻きつくように移動する。一方、最大引き出し位置から収納位置に表示/入力ユニット101が移動する際には、束線131は自らの弾性により、図18中の矢印とは反対の反時計方向に移動し、図17に示す状態に戻る。
【0079】
このように、束線131は、スタートキー103、ストップキー104、数字/アルファベットキー105の下部空間でループ状に十分な余長部分がある。従って、表示/入力ユニット101の水平移動動作とチルト動作とにおいて、該水平移動動作とチルト動作とが円滑に行われて操作性の向上が図られる。
【0080】
表示/入力ユニット101が支持ユニット201によって収納位置に保持されている場合、把手部121にアクセスすることで、表示/入力ユニット101を支持ユニット201から容易に引き出し可能である。又、表示/入力ユニット101が最大引き出し位置にあるときに、把手部121に手指を引っ掛けて表示/入力ユニット101の傾き角度を任意に変更できる。又、操作部11が高い位置に設置されていても、把手部121が操作部11の下カバー250下面(底面)に設けられているため、例えば低身長又は車椅子使用者などの視線が低い操作者であっても容易にスライド操作及びチルト操作が可能である。
【0081】
上述のように、本実施例では、操作部11の筐体の内側に、操作部11に一端が接続されて他端が装置本体3に接続された束線131の余長部分を収容する収容部250fを有する。又、本実施例では、束線131は、収容部250fの中(収容部内)にループを形成して収容される。特に、本実施例では、収容部250f内に、束線131のループが巻き付けられる円筒形状の突起250cが形成されている。
【0082】
6.効果
以上説明したように、本実施例によれば、次のような効果が得られる。
【0083】
(1)板状のカム部材を有するヒンジ機構が操作部の左右両端側に配置されるため、ヒンジ機構を薄型化でき、操作部の左右中央部の液晶表示部や基板ユニットの配置に影響せず、操作部自体の厚み小さくすることができる。
【0084】
(2)板状のカム部材を有するヒンジ機構を操作部の左右両端に配置したため、操作者が操作部の左右両端側に近い数字/アルファベットキーなどのボタンを押したときでも、ヒンジ機構が操作部を左右両端で支持し、ガタつきを小さくすることができる。
【0085】
(3)操作部と装置本体の制御部を結ぶ束線を、厚みの必要な液晶表示部の下部を避けて、数字/アルファベットキーなどの操作部の下側のスペース内でループを作るように配置した。又、束線が装置本体の筺体(固定部材)の前端面から下面を通るようにした。そのため、操作部を引き出した時に装置本体の筺体を、開口部を有しないトレイ様の形態をした筐体(カバー)で覆うことができ、外観上も好ましくなる。又、本実施例では、板状のカム部材を有するヒンジ機構を操作部の左右両端に配置したため、操作部の下側に広いスペースを確保し易く、束線の収容部を操作部側に設けることが容易となる。
【0086】
又、本実施例によれば、次のような効果も得られる。操作部が、正面側へ引き出した位置で初めて操作面を正面向きにするように回動されるため、回動する操作部に干渉しない位置まで、湾曲の無い装置本体の筐体内空間を確保できる。又、操作部を正面側へ引き出した位置で回動して操作面を正面向きにするため、操作部の視認性と操作性とを共に高め得る。
【0087】
このように、本実施例によれば、操作面を操作する側へ向けるように操作部を起立させ得る構成において、装置本体の筐体内空間の有効活用を図り、操作部の視認性と操作性を高めると共に、操作部の薄型化を図り、又操作時のガタつきを抑制することができる。
【0088】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0089】
図20は、本実施例における操作部11を下方へ回動した状態の斜視図である。
【0090】
本実施例は、実施例1における左右のヒンジ部300R、300Lのスライドアーム309、310を一体部品のスライドアーム330とした点のみが実施例1と異なる。即ち、本実施例では、スライドアーム330は、実施例1における左右のヒンジ部300R、300Lのスライドアーム309、310にそれぞれ対応する左右のスライドアーム部330a、330bと、これらを連結する連結部330cとが一体的に形成されている。即ち、本実施例では、操作部11の両端側に配置されたスライド部材309は連結部330cによって連結されて一体化されている。
【0091】
このように一体部品のスライドアーム330とすることで、表示/入力ユニット101をスライドさせるとき、左右中央部以外に力を加えても、力が左右に分散される。そのため、表示/入力ユニット101が傾いたままスライドすることを防止できる効果が得られる。
【0092】
尚、本実施例では、スライドアーム330を一体の部品で構成しているが、実施例1におけるスライドアーム309、310をこれとは別部品である連結部材で連結して固定しても、本実施例と同様の効果を得られる。
【0093】
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0094】
図21は、本実施例における収納位置にある状態の表示/入力ユニット101を束線カバー251及び後述のプーリーを外した状態で示す。
【0095】
本実施例は、実施例1における下カバー250に設けたガイドリブ250c(図17及び図18)の代わりにプーリー253を追加した点のみが実施例1と異なる。即ち、本実施例では、収容部250f内に、束線131のループが巻き付けられる回動可能なプーリー253を有する。
【0096】
プーリー253は、束線131が断線など破損しない最小屈曲半径より大きい半径を有する。プーリー253は、次のようにして、下カバー250の収容部250f内に装着する。即ち、プーリー253の中心穴253a内に、下カバー250に設けた回転軸250dを回動可能に嵌合させ、プーリー253の外周溝253bに束線131を図21中で反時計まわりに巻き付ける。その後、束線カバー251を下カバー250に装着することで、プーリー253は、下カバー250と束線カバー251との間で回動可能に保持される。
【0097】
これにより、表示/入力ユニット101の水平移動動作とチルト動作とにおいて、束線131に張力が加わっても、束線131が最小屈曲半径以下になることはなく、プーリー253が回転することにより、摩擦などによる被覆部破損を防止できる効果が得られる。
【0098】
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。操作部が引き出された後に回動される限りにおいて、上述の実施例の構成の一部又は全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施例でも本発明を実施できる。又、本発明は、電子写真方式の画像形成装置に限らず、インクジェット方式の画像形成装置でも実施できる。又、本発明は、中間転写ベルトを用いる画像形成装置に限らず、記録材搬送ベルトに担持された記録材へトナー像を転写する画像形成装置でも実施できる。又、本発明は、ベルト部材に沿って複数の感光ドラムを配置したタンデム型のみならず1個の感光ドラムを配置した1ドラム型でも実施できる。
【符号の説明】
【0099】
11 操作部
101 表示/入力ユニット
121 把手部
131 束線
201 支持ユニット
202 固定部材
252 開口部
300 ヒンジ部
301、302 カム板
303、304 板バネ
305、306 加圧部材
307、308 カムピン
309、310 スライドアーム
311、312 第1のスペーサ
313、314 第2のスペーサ
319 ストッパー
322 操作部ステイ
PY、PM、PC、PK 画像形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に画像を形成する装置本体と、前記装置本体を操作するために操作面を上向きにして前記装置本体に取り付けられた操作部と、を有し、前記操作部は、操作する側へ引き出し、該引き出した位置で前記操作面を操作する側へ向けるように回動させることが可能な画像形成装置において、
前記操作部を前記引き出す方向及び前記回動方向に移動可能に支持するスライド及びヒンジ機構であって、前記引き出す方向と略直交する方向における前記操作部の両端部において前記装置本体側に設けられた突部と、前記操作部の前記両端部に固定され、それぞれに前記突部がその中を移動することで前記引き出す方向及び前記回動方向への前記操作部の移動方向を規定する溝部が形成された板状のカム部材と、を備えたスライド及びヒンジ機構を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記溝部は、直線状の第1のカム溝と、前記第1のカム溝に合流するように形成された、前記第1のカム溝の第1の端部を中心とする円弧状の第2のカム溝と、を有し、
前記突部は、前記引き出す方向に沿って配置された第1、第2の突部を有し、
前記操作部を引き出すときに、前記第1、第2の突部は前記第1のカム溝内を移動し、前記操作部を前記引き出した位置としたときに、前記第1のカム溝の前記第1の端部に前記第1の突部が突き当たると共に、前記第2の突部が前記第2のカム溝に入ることで、前記板状のカム部材が前記第1の突部を中心に回動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記スライド及びヒンジ機構は、前記操作部の前記両端部側に配置された、前記引き出す方向に沿って移動可能に前記装置本体側の固定部材に係合するスライド部材を有し、前記第1、第2の突部は前記スライド部材に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記スライド及びヒンジ機構は、前記第1、第2の突部が貫通する穴を備え前記スライド部材との間で前記板状のカム部材を挟持する挟持部材と、前記挟持部材と前記スライド部材との間で前記板状のカム部材を挟持する圧力を加えるための前記第1、第2の突部によって保持された加圧部材と、を有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記板状のカム部材は、前記第2のカム溝の円弧中心と同芯で、前記第1のカム溝の中心軸に対し異なる角度位置に設けられた複数の穴を有し、前記挟持部材は前記複数の穴に係合する突起を有し、前記操作部を回動させたときに、前記挟持部材の前記突起が前記板状のカム部材の前記穴に嵌合して、前記操作部の角度位置を規制することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記板状のカム部材の前記第1のカム溝と前記第2のカム溝とで挟まれた角部は面取りされていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記操作部の前記両端側に配置された前記スライド部材は連結部によって連結されて一体化されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記操作部の筐体の内側に、前記操作部に一端が接続されて他端が前記装置本体に接続された束線の余長部分を収容する収容部を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記束線は、前記収容部内にループを形成して収容されることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記収容部内に、前記束線の前記ループが巻き付けられる円筒形状の突起が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記収容部内に、前記束線の前記ループが巻き付けられる回動可能なプーリーを有することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−234102(P2012−234102A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103884(P2011−103884)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】