説明

画像形成装置

【課題】カバーの開閉に際して動作する部材である画像読取部の一部が画像形成装置の本体設置場所外へ飛び出すのを回避すること。
【解決手段】画像形成部100の上部を開閉するよう画像形成部の一端側を支点10bとして回動可能に支持されたカバー10と、前記カバーの上部に配置された画像読取部200と、画像読取部200をカバー10にスライド可能に支持する支持手段と、カバー10の回動と画像読取部のスライドを連動させる連動手段を備え、カバー10を閉じた状態から開く場合の回動動作に連動して画像読取部200が当該画像形成装置の本体設置面積内に収まるように矢印方向にスライドする構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリの画像形成装置に関し、さらに詳しく言えば、装置本体に対して開閉可能に設けられた開閉体を備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成部の上部に画像読取部を配置した構成の場合、消耗品交換等のメンテナンス時に画像形成部の上部に設けられたカバーを開く必要がある。
【0003】
カバーを開閉する技術として次の公知技術がある。
(1)画像読取部を画像形成部に水平方向にスライド可能に保持され、カバーを開くときには画像読取部を水平方向にスライドして退避させ、カバーを開閉させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、本体設置面積より画像読取部が飛び出してしまうため、本体設置時には画像読取部が飛び出すのに必要な空間を確保する必要があり、設置場所に制約が出る。
(2)画像読取部が本体に対して回動可能に保持され、カバーを開閉させるときには画像読取部を傾けて退避させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、カバーを開けるときには最初に画像読取部を傾けてからカバーを操作する必要があり、2段階の操作が必要になることから、操作性に課題がある。
(3)画像読取部が画像形成部のカバーと一体で構成され、カバーを開くときには画像読取部も一緒に回動させる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、カバーを開くとカバー上部に配置されている画像読取部が本体設置面積より飛び出してしまうため、本体設置時には想定される画像読取部の飛び出し量を収容するのに必要な空間を確保する必要があり、設置場所に制約が出る。
【0004】
このように、従来技術では、カバー開閉時に飛び出す画像読取部を収容するために必要な空間を確保する必要から画像形成装置の設置場所に制約が出ることや、カバーの開き動作に2段階の操作を必要とすることから操作が煩雑である等の課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カバーの開閉に際して動作する部材である画像読取部の一部が画像形成装置の本体設置場所外へ飛び出すのを回避でき、また、カバーの開閉動作の操作性も優れている画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するため、以下の構成とした。
(1): 本発明の第1の手段の画像形成装置では、画像を記録紙に出力する画像形成部と、
前記画像形成部の上部を開閉するよう前記画像形成部の一端側を支点として回動可能に支持されたカバーと、前記カバーの上部に配置された画像読取部と、前記画像読取部を前記カバーにスライド可能に支持する支持手段と、前記カバーの回動と前記画像読取部のスライドを連動させる連動手段を備え、前記カバーを閉じた状態から開く場合の回動動作に連動して前記画像読取部が当該画像形成装置の本体設置面積内に収まるようにスライドする構成とした。前記カバーを閉じた状態から開く場合の回動動作に連動して前記画像読取部が当該画像形成装置の本体設置面積内に収まるようにスライドするのであるから、画像読取部の一部が画像形成装置の本体設置場所外へ飛び出すのを回避でき、また、カバーの開動作は1段階の操作で済むので操作も簡単である。
(2): 本発明の第2の手段の画像形成装置では、第1の手段の画像形成装置において、画像読取部は付勢手段によって、前記スライド方向上であって前記支点位置と反対側に向けて付勢されていて、この付勢方向はカバーの開き方向と対応している。操作力が低減されるので、カバー開時の操作性に優れる。
(3): 本発明の第3の手段の画像形成装置では、第2の手段に記載の画像形成装置において、前記付勢手段の付勢力は前記カバー開時には閉じ方向への力に抗して開状態を維持し、前記カバー閉時には閉じ方向への力に対しブレーキ力を発生させる大きさとしている。カバーが自重で閉じ難い構成であり安全性が増し、またカバー開閉時の操作性に優れる。
(4): 本発明の第4の手段の画像形成装置では、第1の手段の画像形成装置において、前記画像形成部は前記カバー上部に設けた前記支持手段によりスライド可能であり、
前記連動手段は前記カバーに設けたピニオンと、前記画像形成部と一体をなし前記ピニオンと噛み合うラックと、前記カバーの回動中心を軸心とし非回転に画像形成部本体に固定された固定歯車と、前記カバーに設けられ前記ピニオンと前記固定歯車とを連結する中間歯車を有することとしている。スライド機構と連動手段とによりカバーの開閉と画像読取部のスライドが連動同期するので、カバーの操作だけで画像読取部が変位するので、操作性に優れる。
(5): 本発明の第5の手段の画像形成装置では、第4の手段の画像形成装置において、前記連結する歯車は複数の歯車からなり、その中の少なくとも1つは2段歯車とした。2段歯車をカバーの回動操作に対して画像読取部のスライドが増速する傾向に構成すれば、カバーの操作による画像読取部の変位量を大きくとることができる。
(6): 本発明の第6の手段の画像形成装置では、第1の手段の画像形成装置において、前記画像読取部のスライド部又は前記画像形成部には前記画像読取部の移動量を制限する抜け止め部を有することとした。画像読取部がスライド部から外れることが防止され安全性が高まる。
(7): 本発明の第7の手段の画像形成装置では、第2の手段の画像形成装置において、前記付勢手段をばねとしている。付勢手段として廉価なばねを用い、また、簡易な構成により発明の課題を解消している。
(8): 本発明の第8の手段の画像形成装置では、第4の手段に記載の画像形成装置において、前記歯車のうち、少なくとも1つはウォームであり、又、歯車のうち少なくとも1つは傘歯歯車であり、ウォームを駆動する歯車列は2段歯車又は複数の歯車の組み合わせにより増速される構成とした。ウォームの制動機能により、画像読取部に重量のある原稿が載せられ場合等でもカバーが自重で閉じ方向に移動することがなく、安全性が向上する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、カバーの開閉に際して動作する部材である画像読取部の一部が画像形成装置の本体設置場所外へ飛び出すのを回避できる。また、カバーの開閉動作の操作性も優れている画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】カバー閉じ状態での画像形成装置を示した正面図である。
【図2】カバー開き状態での画像形成装置を示した正面図である。
【図3】カバー閉じ状態での画像形成装置を連動手段と共に示した正面図である。
【図4】カバーに対する爪の取り付け態様を示した分解斜視図である。
【図5】カバー開き状態での画像形成装置を連動手段と共に示した正面図である。
【図6】連動手段にウォーム歯車及び傘歯歯車を用いた画像形成装置の正面図である。
【図7】図6に示した歯車列の一部を、視点を変えて示した図である。
【図8】参考例であって画像形成部と画像読取部で構成された画像形成装置のレイアウトを示した図である。
【図9】参考例であって画像形成部の断面図である。
【図10】参考例であってカバーの回動軌跡上方に画像読取部が定置されている例であり、(a)はカバー回動前、(b)はカバー回動時における画像形成装置の正面図である。
【図11】参考例であってカバーの回動軌跡上にスライド退避可能に画像読取部が配置されている例であり、(a)はカバー回動前、(b)はカバー回動時における画像形成装置の正面図である。
【図12】参考例であってカバーの回動軌跡上に回動退避可能に画像読取部が配置されている例であり、(a)はカバー回動前、(b)はカバー回動時における画像形成装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付すことにより、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
[実施形態1:画像形成装置の概要]
本発明は画像形成部の消耗品交換等のメンテナンスに伴うカバー開閉時に、画像形成装置本体の設置場所について占有面積を確保する上での厳しい制約を受けることなく画像読取部を退避させる機構をもつ画像形成装置を提供することを目的とする。
【0011】
本発明に係る画像形成装置の全体構成を示した図1、図2において、画像形成部100は画像形成装置の外装フレーム内に構成されていて、書込み装置1、シアン、イエロー、マゼンタ、ブラックなどの各色用の4つの感光体ユニット2、中間転写ユニット3、給紙カセット4、2次転写ユニット5、定着装置6、排紙ローラ対7など備え、一般的な電子写真プロセスに従ってフルカラー画像を記録紙に出力する。
【0012】
画像形成部100では、給紙カセット4によって、用紙が2次転写ユニット5へ搬送される。一方、書込み装置1におけるスキャナによる信号もしくはプリンタからの信号に対応した光によって、感光体ユニット2内の感光体が露光される。露光されることにより感光体上に担持された潜像は感光体ユニット2においてトナーにより可視像化されてから中間転写ユニット3の転写ベルトに転写され、2次転写ユニット5において、用紙に未定着のトナー像として転写される。この未定着トナー像は定着装置6で定着された後、排紙ローラ対7により、カバー10の傾斜面に形成された排紙トレイ10aに排出される。
【0013】
カバー10は筐体状の構造物であり、画像形成部100の上部空間を開閉するよう画像形成部100の一端側、図1、図2の例では画像形成部100の左端側寄りの上部に紙面を貫く向きに設けた支点軸10bを中心にしてとして回動可能に画像形成装置の本体部に支持されている。
【0014】
カバー10の上には画像形成部100が搭載され、カバー10に対して画像形成部100はスライド可能になっている。スライドを可能にして画像形成部100を支持している支持手段として、画像形成部100の下面部にはスライド方向に長さを有する断面が山形の案内形状部がある。また、カバー10の上面にはスライド方向に長さを有する断面が谷形の案内形状部がある。これらカバー10と画像読取部200の各案内形状部はスライド可能に嵌まり合うように形成され、嵌合状態で組み立てられることにより、画像読取形成200はカバー10に支持されてスライドすることができる。画像読取部200のスライド方向は支点軸10bの軸線方向に水平面内で直交する方向である。
【0015】
画像読取部200は原稿読取機能を有する原稿台部201と原稿を覆う圧板202からなる。圧板202は支点軸202aを支点として開閉可能である。なお、圧板202に代えて自動原稿送り装置が構成される場合がある。
【0016】
カバー10は図2に示したように矢印Aに示す方向に回動させることができる。カバー10を回動させることで画像形成部100の上部空間は開放され、書込み装置1や感光体ユニット2を上方に取り出し、メンテナンスを施すことが可能である。また、画像形成装置本体部の側部には本体部カバー101が支点軸100aを支点として開閉可能に配置されている。本体部カバー101には2次転写ユニット5が設けられている。2次転写ユニット5に紙詰まりが発生した場合には、本体部カバー101を矢印Bの方向に開放することで2次転写ユニット5も開放され、容易に紙詰まりの処理が可能である。
【0017】
本発明は、カバー10の回動と画像読取部200のスライドとを連動させる連動手段を有している。カバー10を閉じた図1に示す状態から図2に示すように矢印Aに示す方向に回動させて開く場合、この回動動作に連動して画像読取部200が当該画像形成装置の本体設置面積内に収まるようにスライドする点に特徴がある。
【0018】
カバー10は排紙トレイ10aのスペースを確保する必要性や、ある程度の重量、大きさを有する画像読取部200を支える必要性などのため、支点軸10bからある程度の高さ寸法を有する筐体状の構造体からなる。
【0019】
カバー10を開く場合に、仮に、本発明のように該カバー10の回動動作に連動して画像読取部200がスライドするような構成を採らなかった場合には、支点10bを中心とする画像読取部200の回動軌跡は図1に示す矢印Dのようになり、距離Lだけ画像形成装置の本体設置面積外に飛び出してしまう。この飛び出し量はカバーの高さが高いほど大きくなることから、小さいのが好ましいが画像読取部200を支える必要上や、原稿載置部の高さ確保などから、ある程度の高さは必要であるので、本体設置面積外への飛び出し量を無くすことは困難である。
【0020】
本発明では、画像読取部200の本体設置面積外への飛び出し量を無くすためカバー10を利用して、カバー10の回動と画像読取部200との連動手段を設け、カバー10を閉じた状態から開く場合の回動動作に連動して画像読取部100が当該画像形成装置の本体設置面積内に収まるようにスライドできる構成としている。これにより、画像形成装置のカバーを上方に開く時に、読取装置が本体設置面積外に回りこむためのスペースを確保でき、画像形成装置の設置面積以上に必要な空間を極力少なくすることができる。
【0021】
[実施形態2:支持手段、連動手段]
図3は本発明における実施形態として、カバー10が閉じた状態を示したものである。画像読取部200の下部には脚部20が設けられ、脚部20にはラック21と画像読取部200の移動量を規制するための突き当て溝22が形成されている。突き当て溝22は画像読取部200のスライド方向と平行な溝である。
【0022】
カバー10には脚部20をその移動領域を含めて収容可能な空間領域が設けてある。この空間領域はカバー10の開閉に応じて画像読取部200と共にスライドする脚部20の移動を妨げない広がりを有している。カバー10上の定位置には軸状をした突き当て部12が設けられ、この突き当て部12は、突き当て溝22で摺動可能に嵌まり合っている。本発明では、カバー10を開くのに連動して画像読取部200がスライド方向上でカバー10上を支点10bから遠ざかる向きにスライドするが、突き当て部12はこのスライド時において画像読取部200の移動量を規制する機能を有する。突き当て部12、突き当て溝22は対をなし、その嵌合構造から、画像読取部200をカバー10にスライド可能に支持する支持手段としての機能も有する。
【0023】
脚部20の一端側、本例ではスライド方向上であって、支点軸10bが設けられた側の端部とカバー10との間には、圧縮ばね、所謂伸長性を有するばね13が撓められて設けられている。ばね13は画像読取部200を、案内形状部で案内される方向であるスライド方向上で支点軸10bから離れる向き、回転先端側に付勢するためのものである。画像読取部200は付勢手段の一例であるばね13によって、前記スライド方向上であって前記支点位置と反対側に向けて付勢されこの付勢方向はカバーの開き方向と対応しているので、カバー10を開ける力が軽減されて操作性が向上する。付勢手段はばね以外にもあるが、ばねを用いた場合には単純な構成で付勢することができ、また、ばねは廉価のため、コストダウンにつながる。ばね13については後でも述べる。
【0024】
カバー10の回動時における支点軸10bは画像形成装置の本体に固定された軸で回転しない。カバー10は支点軸10bのまわりを回転可能なように支持されている。支点軸10bには扇形をしたセグメント歯車14が固定されている。セグメント歯車14は回転しない歯車である。
【0025】
このセグメント歯車14とラック21との間には、中間歯車15G、16Gが介在して噛み合わされている。中間歯車15G、16Gは共に2段歯車からなる。中間歯車15Gは小歯車15G1と大歯車15G2からなる2段歯車、中間歯車16Gは小歯車16G1と大歯車16G2からなる2段歯車である。歯車系列は、セグメント歯車14G、小歯車15G1、大歯車15G2、小歯車16G1、大歯車16G2、ラック21の順に回転が伝達されるようにしてある。なお、大歯車16G2はラック21との関係ではピニオンと称される歯車である。
【0026】
中間歯車15G、16Gを2段歯車にすることにより、カバー10の回動角度と画像読取部200の移動量を調整し、また、複数の歯車の組み合わせにより回転数の変更を可能にする。
【0027】
カバー10上であって、支点位置から最も離れた位置である、カバー回動時の先端部にはカバー10を閉じた状態を保持するために画像形成部の本体に設けた突起部110に掛けたり外したりすることができる爪11aが設けられている。爪11aは解除レバー11bと一体の構成であり、その中間部が軸11cによりカバー10に回転自在に支持されている。解除レバー11bは図4に示すようにカバー10の側部に形成された凹部10cに装着されている。
【0028】
図3の状態では、ばね13が伸びようとする力によりカバー10は支点軸10bを中心として反時計回りの向きに回動して画像形成部100を開放する向きに付勢されているが、爪11aが突起部110に掛けられているので、回動することができない。このようにばね13による付勢力は、爪11aが突起部110に掛けられていることにより阻止されている。
【0029】
図5は本発明における実施形態として、カバー10を開いた状態を示したものである。カバー10を開くための動作から説明すると、図3に示した状態のもとにおいて、解除レバー11bを引き上げることにより、突起部110に掛けられていた爪11aの掛かり状態が解除される。
【0030】
操作レバー11bを操作することにより爪11aが本体の突起部110から外れると、手動によりカバー10を上方向に開けることができる。カバー10が開く動作と連動して、セグメント歯車14Gと噛み合わされた小歯車15G1が回転し、大歯車15G2、小歯車16G1、大歯車16G2、ラック21の順に回転が伝わることにより、ラック21と共に画像読取部200がスライド方向上、支点軸10bから遠ざかる向きに移動する。
【0031】
カバーの支点軸10bに設けた固定歯車であるセグメント歯車14Gと、画像読取部200に設けたラック21と、ラック21に噛み合う大歯車16G2と、大歯車16G2とセグメント歯車14Gとを連結する中間歯車の構成はカバー10の回動と画像読取部200のスライドを連動させる連動手段の一例を構成する。大歯車16G2はラック21との関係ではピニオンと称される。
【0032】
連動手段は、画像形成部100のカバー10の開閉時に画像読取部200の画像形成装置の本体設置面積外への退避を簡単な構成で行いたいという要求を満足する。また、本発明とは異なり、リンク機構で画像読取部200を移動させる場合、カバー開閉角度に対し画像読取部200の移動量を大きく取ることは難しいが、本発明のように歯車列を用いると歯車比を変化させることで、カバー開閉角度に対し画像読取部200の移動量を大きく取ることができる。
【0033】
画像読取部200の脚部20に設けられた突き当て溝22の長手方向上、支点軸10bに近い方の端部が突き当て部12に当接する位置で画像読取部200の移動は規制されて停止し、同時にカバー10の回動もできなくなり停止する。図5はこの状態を例示している。この停止状態において、画像読取部200は図1に示した距離Lが減少する方向に退避している。また、カバー10は書込み装置1や、感光体ユニット2を交換するのに十分な開き角を保持するように設定されている。
【0034】
ここで、図5に示したようにカバー10を全開した状態のもとで、仮に中間歯車など歯車が破損したり、噛み合いが解除されたりした場合には画像読取部200がカバー10上を滑り、外れて落下する等の事態も想定され対策を講じておくことが必要である。本例では、図5に仮想線(2点鎖線)で示すように画像読取部200のスライド部又は画像形成部100の本体部には画像読取部200の移動量を制限する抜け止め部17を設けることとしている。画像読取部200の移動位置を制限することで、カバー10と画像読取部200とのスライドを可能に支持する嵌合部の嵌め合いが外れることはなく、画像読取部の脱落が防止される。
【0035】
図5に示したカバー10の開状態のもとで、必要な交換作業を終えて、カバー10を閉じる場合には、本発明の連動手段により画像読取部200は支点軸10b寄り、つまり回転中心側に移動し、図3に示す通常状態に復帰する。
【0036】
本発明では、画像読取部200を搭載し回動可能なカバー10を設け、カバー10の回動と画像読取部200とを連動手段で連結したので、画像読取部200の退避がカバー10を開ける1アクションのみで行える。カバー10を開けたときに本体設置面積以上のスペースを必要とせず、設置場所の自由度が上がり、狭い場所にも設置しやすくなる。
【0037】
カバー開閉時におけるばね13の力量、カバー10および画像読取部200の自重、カバー10の操作力量の関係を表1に示す。カバー10を開くときには、ばね13は圧縮されているため付勢力はカバー10を開く方向に作用する。つまり、閉じ方向への力に抗して開状態を維持するように作用し、その付勢力はカバー10および画像読取部200の自重により閉まろうとする力と等しいかまたは大きく設定されため、操作力を軽くすることができる。一方、カバー10を閉じるときには、ばね13は圧縮されるために付勢力が増えるため、カバーが自重で閉じようとする動作に対しブレーキとして作用する。画像読取部装置200の付勢力をカバー開方向に作用させることで、カバー10が自重で閉じることがなく、手を挟むおそれがない。
【0038】
【表1】

【0039】
[実施形態3:連動手段]
図6は図3〜図5の実施形態に対し、ラック21と噛み合う歯車にウォーム56Gを用いた場合を例示している。本例では、セグメント歯車14Gとラック21との間に介在する歯車列の構成が前記図3〜図5の実施形態と異なる。カバー10の開閉時の操作手順は図3〜図5における例と同じである。
【0040】
図6、図7を参照しつつ説明する。セグメント歯車14Gには歯車51Gが噛み合っている。歯車51Gは同軸の傘歯車52Gと同軸の2段歯車を構成している。傘歯車52Gには傘歯車53Gが噛み合っている。傘歯車53Gは平歯車54Gと同軸で2段歯車を構成している。歯車54Gには歯車55Gが噛み合っている。歯車55Gはウォーム56Gと同軸で2段歯車を構成している。
【0041】
ラック21はウォーム23Gと噛み合う歯形に形成されたものが用いられ、ウォーム23Gはラック21と噛み合わされている。ラック21とウォーム23Gとで対をなすウォームギヤのウォーム23G側からの入力のみをラック21に伝え、カバー10を持ち上げる操作側を原動側とすれば、従動側であるラック21からの入力に対してウォーム23Gは動かないという非可逆性の特性を利用し、開状態にあるカバー10に支持された画像読取部200に力を加えてもウォーム50は回転しないため、ユーザーの意に反してカバー10が開閉されることが防止される。
【0042】
ウォーム23Gを用いた構成は、特に画像読取部200に厚手の本などの重い原稿が載せてある場合は、カバー10を開いた後にカバー10が閉まるおそれがあり、これを回避したい場合に有効である。なお、ウォーム56Gを用いる場合は回転軸の方向を90度変える必要があるために傘歯歯車で軸方向を変える必要があり、傘歯歯車を含むこれら中間歯車が設けられる。また、ウォーム56Gは減速比が高いため、従動側の端部近傍に位置するウォーム56Gの回転数を増やすために中間歯車として2段歯車や複数の歯車を組み合わせることで画像読取部のスライド量を確保している。
【0043】
[参考例]
図8は参考例として画像形成部1000と画像読取部2000で構成された画像形成装置のレイアウトを示したものである。画像形成部1000の上部に画像読取部2000が配置され、画像形成部1000の上面部1010に記録紙が排出されるよう、画像形成部1000と画像読取部2000の間には空間が設けられている。
【0044】
図9は参考例として画像形成部1000の断面を示したものである。画像形成部1000に配置された部材は、本発明の実施形態として既に説明したものと同じものについては同じ符号を付している。圧板202は矢印Cの方向に開放される。カバー10’を軸支する支点軸10bの近傍からは柱状に立ち上がる立ち上げ部3000があり、画像読取部2000を支持している。
【0045】
図10〜図12は画像形成部1000と画像読取部から構成される画像形成装置において、感光体ユニット等の消耗品交換時に、画像形成部の上部に設けられたカバーを開ける構成をとる画像形成装置の比較例について説明するものである。
【0046】
図10(a)、(b)の例は、カバー10’を矢印Dの向きに開くときにカバー10’が画像読取部2000の底面に当たらないように、画像形成部1000と画像読取部2000の距離L1を大きくとる場合の例である。しかし、カバー10’のサイズと同等以上の空間が画像形成部1000と画像読取部2000の間に必要になるため、装置本体の高さが大きくなるという課題がある。また、原稿をセットする画像読取部2000の読取面が高く位置し、原稿セット時の視認性や操作性が悪化するという課題がある。
【0047】
図11(a)、(b)の例は、カバー10’を矢印の向きに開くときに、画像読取部2000が水平方向の矢印Eにスライドして退避する方法である。この方法によれば、図10で示した装置の高さが高くなる問題は回避できる。しかし、画像読取部2000を退避させると本体設置面積より画像読取部2000が距離L2だけ飛び出してしまうため、本体設置時には画像読取部2000が飛び出すのに必要な空間を確保する必要があり、本体設置場所に制約が生じるという課題がある。また、カバー10’を開けるときには最初に画像読取部2000をスライドさせてからカバー10’を操作する必要があるため、2段階の操作が必要になり操作性が悪いという課題がある。
【0048】
図12の例は、カバー10’を開くときに、画像読取部2000が支点軸2000aを支点として本体に対して単独で矢印F方向に回動して退避する方法である。この方法によれば、図11で示した本体設置面積より画像読取部2000が飛び出す空間の確保は不要になり設置場所の制約はない。しかし、カバー10’を開けるときには最初に画像読取部2000を傾けてからカバー10’を操作する必要があるため、2段階の操作が必要になり操作性が悪いという課題がある。
【0049】
図12の例の発展形として、カバー10’と画像読取部2000とを一体的に構成して
カバー10’を開くときには画像読取部2000も一緒に回動させる方法がある。この方法によれば、図11、図12で示した2段階の操作は不要になるため、操作性は改善できる。しかし、カバー10’の開時には図1で説明したように本体設置面積より画像読取部が距離Lだけ飛び出してしまうため、図11で示した例と同様に本体設置時には画像読取装部2000が飛び出すのに必要な空間を確保する必要があり、本体設置場所に制約が生じるという課題がある。また、カバーを開いた時には画像読取部の重心位置がカバー閉時から大きく移動するため本体の重心バランスが不安定になり、本体が転倒しやすくなるという課題がある。
【0050】
本発明は、これら比較例における課題を全て解決してカバーの開閉に際して動作する部材である画像読取部の一部が画像形成装置の本体設置場所外へ飛び出すのを回避でき、また、カバーの開閉動作の操作性も優れている画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 書込み装置
2 感光体ユニット
3 中間転写ユニット
4 給紙カセット
5 2次転写ユニット
6 定着装置
7 排紙ローラ対
10、10’ カバー
10a 排紙トレイ
10b、100a、202a、2000a 支点軸
10c 凹部
11a 爪
11b 解除レバー
11c 軸
12 突き当て部
13 ばね
14G セグメント歯車
15G、16G 中間歯車
15G1、16G1 小歯車
16G1、16G2 大歯車
17 抜け止め部材
20 脚部
21 ラック
22 突き当て溝
51G、54G、55G 歯車
52G、53G 傘歯車
56G ウォーム
100、1000 画像形成部
101 本体部カバー
110 突起部
200、2000 画像読取部
201 原稿台部
202 圧板
1010 上面部
3000 立ち上げ部
A、B、C、D、E、F 矢印
L、L1、L2 距離
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2004−354832号公報
【特許文献2】特開2000−39827号公報
【特許文献3】特開2008−139763号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を記録紙に出力する画像形成部と、
前記画像形成部の上部を開閉するよう前記画像形成部の一端側を支点として回動可能に支持されたカバーと、
前記カバーの上部に配置された画像読取部と、
前記画像読取部を前記カバーにスライド可能に支持する支持手段と、
前記カバーの回動と前記画像読取部のスライドを連動させる連動手段を備え、
前記カバーを閉じた状態から開く場合の回動動作に連動して前記画像読取部が当該画像形成装置の本体設置面積内に収まるようにスライドする構成としたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、画像読取部は付勢手段によって、前記スライド方向上であって前記支点位置と反対側に向けて付勢されこの付勢方向はカバーの開き方向と対応していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置において、前記付勢手段の付勢力は前記カバー開時には閉じ方向への力に抗して開状態を維持し、前記カバー閉時には閉じ方向への力に対しブレーキ力を発生させる大きさであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1記載の画像形成装置において、前記画像形成部は前記カバー上部に設けた前記支持手段によりスライド可能であり、
前記連動手段は前記カバーに設けたピニオンと、前記画像形成部と一体をなし前記ピニオンと噛み合うラックと、前記カバーの回動中心を軸心とし非回転に画像形成装置本体に固定された固定歯車と、前記カバーに設けられ前記ピニオンと前記固定歯車とを歯車で連結する歯車を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置において、前記連結する歯車は複数の歯車からなり、その中の少なくとも1つは2段歯車であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1記載の画像形成装置において、前記画像読取部のスライド部又は前記画像形成部には前記画像読取部の移動量を制限する抜け止め部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項2記載の画像形成装置において、前記付勢手段はばねであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項4に記載の画像形成装置において、前記歯車のうち、少なくとも1つはウォームであり、又、歯車のうち少なくとも1つは傘歯歯車であり、ウォームを駆動する歯車列は2段歯車又は複数の歯車の組み合わせにより増速される構成としたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−242663(P2012−242663A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113667(P2011−113667)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】