説明

画像形成装置

【課題】印字速度の高速化に伴うトナーの噴出を抑えることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】画像形成装置は、静電潜像が形成される感光体と、前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、前記現像ローラの回転速度を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記現像ローラの総回転量に対応するパラメータ(総印字枚数)の増加に応じて、前記現像ローラの回転速度を下げて、前記感光体に対する前記現像ローラの周速比を減少させる周速比減少制御(S3,S4)を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体に現像剤を供給する現像ローラを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電潜像が形成される感光ドラムと、トナーを収容するトナー収容室と、トナー収容室内のトナーを感光ドラムに供給する現像ローラとを備えた画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−250378号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、印字速度を高速化すべく、現像ローラや感光ドラムの回転速度を速くすることが望まれている。しかしながら、このように現像ローラ等の回転速度を速くすると、現像ローラでトナーを保持しきれずに、現像ローラと感光ドラムの間のニップ部からトナーが外部に噴出するといった現象が発生することがあった。具体的に、この現象は、トナー収容室内のトナーが劣化していない状態では発生しないが、トナーが劣化して流動性が悪くなると発生する。
【0005】
そこで、本発明は、印字速度の高速化に伴うトナー(現像剤)の噴出を抑えることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、静電潜像が形成される感光体と、前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、前記現像ローラの回転速度を制御する制御装置と、を備える。
そして、前記制御装置は、前記現像ローラの総回転量に対応するパラメータの増加に応じて、前記現像ローラの回転速度を下げて、前記感光体に対する前記現像ローラの周速比を減少させる周速比減少制御を実行する。
【0007】
このような画像形成装置によれば、現像ローラの総回転量に対応するパラメータが増加して現像剤の劣化が進んだ場合には、現像ローラの回転速度が下がって現像ローラの周速比が減少するので、現像ローラと感光体の間のニップ部から現像剤が噴出するのを抑えることができる。
【0008】
また、前記画像形成装置は、湿度を測定する湿度測定手段を備え、前記制御装置が、前記湿度測定手段で測定した湿度が第1閾値より小さいか否かを判断し、小さい場合には前記周速比減少制御を実行し、小さくない場合には前記周速比減少制御を実行しないように構成されていてもよい。
【0009】
これによれば、低湿度ではない環境下(現像剤の流動性が悪化し難い環境下)では、周速比減少制御を実行しないので、周速比の減少に伴って生じる現像ローラから感光体への現像剤の搬送量の減少を抑えることができ、感光体上における現像剤の濃度低下を抑えることができる。
【0010】
また、前記制御装置は、前記現像ローラの周速比を第1周速比から当該第1周速比よりも小さい第2周速比に変更したときに、前記現像ローラに印加する現像バイアスの絶対値を前回値よりも大きくするように構成されていてもよい。
【0011】
これによれば、周速比を第1周速比から第2周速比に下げることによって現像剤の搬送量が減少しても、現像バイアスの絶対値を大きくすることで、現像剤の搬送量を増加させることができるので、感光体上における現像剤の濃度低下を抑えることができる。
【0012】
また、前記制御装置は、前記パラメータが増加するにつれて前記周速比が徐々に小さくなるような周速比マップに基づいて前記周速比減少制御を実行するように構成されていてもよい。
【0013】
これによれば、現像ローラの総回転量に応じた適正な周速比にすることができるので、現像剤の搬送量と濃度を総回転量に応じた適切な値にすることができる。
【0014】
また、前記制御装置は、前記湿度測定手段で測定した湿度が第1閾値よりも小さくない場合には、前記パラメータが増加するにつれて前記現像ローラに印加する現像バイアスを所定の傾きで変化させた第1マップに基づいて現像バイアスを決定し、前記湿度測定手段で測定した湿度が第1閾値よりも小さい場合には、前記パラメータが増加するにつれて前記現像ローラに印加する現像バイアスを前記所定の傾きよりも絶対値の大きな傾きで変化させた第2マップに基づいて現像バイアスを決定するように構成されていてもよい。
【0015】
これによれば、湿度が第1閾値よりも小さい場合には、現像バイアスを第1マップよりも傾きの大きな第2マップに基づいて決定するので、現像バイアスの絶対値が増加し、周速比の減少に伴って生じる現像剤の搬送量の減少を抑えて現像剤の濃度低下を抑えることができる。
【0016】
また、前記パラメータは、総印字枚数であってもよい。
【0017】
これによれば、印字指令などから把握できる総印字枚数に基づいて現像ローラの回転速度を制御することができるので、現像ローラの総回転量を検出するセンサが不要となり、コストダウンを図ることができる。
【0018】
また、前記画像形成装置は、前記現像ローラを回転させる駆動源と、速度伝達比の異なる2つの伝達機構と、前記駆動源に対して前記2つの伝達機構を介して連結される出力部と、2つのうち一方の伝達機構と前記出力部との間に設けられるワンウェイクラッチと、前記一方の伝達機構よりも速度伝達比の小さな他方の伝達機構と前記出力部との間に設けられる電磁クラッチと、を備え、前記制御装置は、前記電磁クラッチを制御して前記伝達機構を切り替えることで、前記現像ローラの回転速度を下げるように構成されていてもよい。
【0019】
これによれば、駆動源の回転速度を変えずに現像ローラの回転速度を変えることができるので、駆動源を他の部材(感光体など)と共用することができ、コストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、印字速度の高速化に伴う現像剤の噴出を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザプリンタを示す図である。
【図2】2つの伝達機構や周速切替機構を示す図である。
【図3】周速切替機構を示す断面図であり、スロー周速用の伝達機構から出力歯車に駆動力が伝達される状態を示す図(a)と、ノーマル周速用の伝達機構から出力歯車に駆動力が伝達される状態を示す図(b)である。
【図4】制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】周速比と総印字枚数との関係を示すマップ(a)と、劣化により帯電量が変化しないトナーを採用した場合における現像バイアスと総印字枚数との関係を示すマップ(b)である。
【図6】周速比と総印字枚数との関係を示すマップ(a)と、劣化により帯電量が減少するトナーを採用した場合における現像バイアスと総印字枚数との関係を示すマップ(b)と、劣化により帯電量が増加するトナーを採用した場合における現像バイアスと総印字枚数との関係を示すマップ(c)である。
【図7】総印字枚数が増加するにつれて周速比を徐々に下げる形態を示すマップ(a)と、周速比減少制御を行うときの現像バイアスを総印字枚数に応じて徐々に下げる形態を示すマップ(b)である。
【図8】総印字枚数が増加するにつれて周速比を徐々に下げる形態を示すマップ(a)と、劣化により帯電量が減少するトナーを採用した場合における現像バイアスと総印字枚数との関係を示すマップ(b)と、劣化により帯電量が増加するトナーを採用した場合における現像バイアスと総印字枚数との関係を示すマップ(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<レーザプリンタの全体構成>
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、画像形成装置の一例としてのレーザプリンタの全体構成を説明した後、本発明の特徴部分を詳細に説明することとする。
【0023】
以下の説明において、方向は、レーザプリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前側(手前側)」、紙面に向かって右側を「後側(奥側)」とし、紙面に向かって奥側を「左側」、紙面に向かって手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0024】
図1に示すように、レーザプリンタ1は、装置本体2と、フィーダ部3と、画像形成部4と、制御装置100と、駆動ユニット20とを備えている。なお、制御装置100と駆動ユニット20については、後で詳述する。
【0025】
フィーダ部3は、装置本体2の下部に着脱可能に装着される給紙トレイ31と、給紙トレイ31内の用紙Pを画像形成部4に向けて給紙する給紙機構32とを備えている。
【0026】
画像形成部4は、スキャナユニット5と、プロセスカートリッジ6と、転写ローラTRと、定着装置7とを備えている。
【0027】
スキャナユニット5は、装置本体2内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。このスキャナユニット5では、レーザビームを、後述する感光体の一例としての感光ドラム81の表面上に高速走査にて照射する。
【0028】
プロセスカートリッジ6は、装置本体2に着脱可能であり、感光ドラム81を有するドラムカートリッジ8と、現像剤の一例としてのトナーを収容するとともに、感光ドラム81に接触する現像ローラ91等を備える現像カートリッジ9とを備えている。現像カートリッジ9は、ドラムカートリッジ8に対して着脱可能となっている。なお、本実施形態では、劣化しても帯電量が略一定となる性質を持つトナーを採用することとする。
【0029】
このプロセスカートリッジ6では、回転する感光ドラム81の表面が、図示せぬ帯電器により一様に帯電された後、スキャナユニット5からのレーザビームの高速走査により露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、感光ドラム81の表面に画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0030】
次いで、現像カートリッジ9内のトナーが現像ローラ91によって担持された後、現像ローラ91上のトナーが感光ドラム81の静電潜像に供給されて、感光ドラム81の表面上にトナー像が形成される。
【0031】
その後、感光ドラム81と転写ローラTRの間で用紙Pが搬送されることで、感光ドラム81の表面に担持されているトナー像が用紙P上に転写される。
【0032】
定着装置7は、加熱ローラ71と、加熱ローラ71と対向して配置され加熱ローラ71を押圧する加圧ローラ72とを備えている。そして、このように構成される定着装置7では、用紙P上に転写されたトナーを、用紙Pが加熱ローラ71と加圧ローラ72との間を通過する間に熱定着している。
【0033】
なお、定着装置7で熱定着された用紙Pは、定着装置7の下流側に配設される排紙ローラRに搬送され、この排紙ローラRから排紙トレイ2A上に送り出される。
【0034】
<駆動ユニットの構成>
次に、駆動ユニット20について詳細に説明する。
図2に示すように、駆動ユニット20は、現像ローラ91を回転させる駆動源の一例としての電動モータMoと、周速切替機構30と、電動モータMoから出力された駆動力を減速して周速切替機構30に伝達するための歯車21〜24と、周速切替機構30から出力された駆動力を現像ローラ91に伝達するための歯車25とを備えている。なお、電動モータMoは、現像ローラ91に駆動力を伝達する他、図示せぬ他の伝達機構を介して感光ドラム81にも駆動力を伝達するように構成されている。
【0035】
歯車21は、電動モータMoから駆動力を受けて分配歯車22に駆動力を伝達する駆動歯車であり、分配歯車22は、同軸上に配列された3種類の歯車22A〜22Cが一体化された3段歯車であって、駆動歯車21から伝達された駆動力をノーマル周速用の伝達機構MB(実線の矢印参照)とスロー周速用の伝達機構MC(2点鎖線の矢印参照)とに分配する。
【0036】
ここで、「ノーマル周速用の伝達機構MB」とは、現像ローラ91を所定速度で回転させるための速度伝達比(スロー周速用よりも小さい速度伝達比)で構成される伝達機構をいい、本実施形態では、歯車22B,23,30Bで構成されている。また、「スロー周速用の伝達機構MC」とは、現像ローラ91を前記所定速度よりも遅い速度で回転させるための速度伝達比で構成される伝達機構をいい、本実施形態では、歯車22C,24,30Cで構成されている。なお、図2においては、各伝達機構MB,MCを分かり易くするために各歯車21〜24,30A〜30Cの径が異なるように描いているが、前述したような速度伝達比の関係が満たされれば各歯車の径はどのように構成してもよい。
【0037】
分配歯車22の歯車22Aは、駆動歯車21と噛み合う従動歯車である。歯車22Bは、周速切替機構30の第1入力歯車30Bに第1中間歯車23を介して駆動力を伝達する従動歯車である。歯車22Cは、周速切替機構30の第2入力歯車30Cに第2中間歯車24を介して駆動力を伝達する従動歯車である。
【0038】
このため、電動モータMoが回転・停止すると、これに連動して歯車21〜24,30B,30Cが回転・停止するようになっている。つまり、第1入力歯車30Bおよび第2入力歯車30Cは、周速切替機構30(電磁クラッチ50)の状態によらずに、電動モータMoの回転・停止に連動して回転・停止する。
【0039】
そして、周速切替機構30は、図3(a)に示すように、出力部の一例としての出力歯車30Aと、第1入力歯車30Bと、第2入力歯車30Cと、ワンウェイクラッチ40と、電磁クラッチ50とを備えている。
【0040】
出力歯車30Aは、現像ローラ91側(歯車25)に駆動力を出力する歯車であり、その軸線方向に延びる回転軸30Dを一体に備えている。そして、この出力歯車30Aの回転軸30Dは、前述した2つの伝達機構MB,MCを介して電動モータMoに連結されている。
【0041】
ワンウェイクラッチ40は、スロー周速用の伝達機構MC(第2入力歯車30C)と出力歯車30Aの回転軸30Dとの間に設けられており、電動モータMoによって回転する第2入力歯車30Cの回転方向のみに駆動力を伝達するように構成されている。すなわち、第2入力歯車30Cが回転軸30Dよりも早く回転する場合にのみ駆動力を回転軸30Dに伝達し、回転軸30Dが第2入力歯車30Cよりも早く回転する場合には第2入力歯車30Cから回転軸30Dへの駆動力の伝達を遮断するようになっている。
【0042】
電磁クラッチ50は、コイルが巻回された可動鉄心50Aと、固定鉄心50Bとを備えており、前述したスロー周速用の伝達機構MCよりも速度伝達比の小さなノーマル周速用の伝達機構MB(第1入力歯車30B)と出力歯車30Aの回転軸30Dとの間に設けられている。
【0043】
可動鉄心50Aは、スプラインやセレーションを介して回転軸30Dに係合しているため、回転軸30Dに対して軸方向に移動可能で、かつ、回転軸30Dと一体的に回転可能となっている。
【0044】
固定鉄心50Bは、第1入力歯車30Bの端面に固定されており、この第1入力歯車30Bは、図示せぬ軸受を介して回転軸30Dに対して回転可能に組み付けられている。
【0045】
これにより、可動鉄心50Aのコイルに通電すると、図3(b)に示すように、電磁吸引力により可動鉄心50Aが移動して固定鉄心50Bに吸着するので、第1入力歯車30Bから伝達されてきた駆動力が回転軸30Dに伝達される。このとき、回転軸30Dは、第2入力歯車30Cよりも早く回転するので、第2入力歯車30Cから回転軸30Dへの駆動力の伝達はワンウェイクラッチ40によって遮断される。
【0046】
以上により、電磁クラッチ50に通電するときには、図3(b)に示すように、ノーマル周速用の伝達機構MB(第1入力歯車30B)から出力歯車30Aに駆動力が伝達されることで現像ローラ91が所定速度で回転し、電磁クラッチ50への通電を切ったときには、図3(a)に示すように、スロー周速用の伝達機構MC(第2入力歯車30C)から出力歯車30Aに駆動力が伝達されることで現像ローラ91が所定速度よりも遅い速度で回転するようになっている。
【0047】
<制御装置>
次に、制御装置100について詳細に説明する。
図1に示すように、制御装置100は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、湿度測定手段の一例としての温度センサ110および湿度センサ120からの入力と、印字指令の内容と、ROMに記憶されたプログラムやデータなどに基づいて演算処理を行うことによって制御を実行する。
【0048】
ここで、温度センサ110は、現像ローラ91の近傍に設けられ、現像ローラ91周りの空気の温度を検知している。また、湿度センサ120は、装置本体2内に外気を取り込むための取込口(図示略)の近傍に設けられ、装置本体2外の絶対湿度を検知している。
【0049】
制御装置100は、総印字枚数の増加に応じて、現像ローラ91の回転速度を下げて、感光ドラム81に対する現像ローラ91の周速比を減少させる周速比減少制御を実行するように構成されている。ここで、総印字枚数とは、1つの現像カートリッジ9の使用開始から現時点までの印字枚数の総数である。制御装置100は、印字指令に含まれる印字枚数データに基づいて総印字枚数をカウントし、現像カートリッジ9の交換に応じて総印字枚数をリセットするようになっている。
【0050】
なお、総印字枚数は、現像ローラ91の総回転量の増加に応じて増加するパラメータであるため、制御装置100は、総印字枚数をカウントすることで現像ローラ91の総回転量の増加によるトナー劣化を間接的に把握している。
【0051】
具体的に、周速比減少制御において、制御装置100は、総印字枚数が第2閾値T2(図4参照)を超えたか否かを判断し、超えていない場合には、感光ドラム81に対する現像ローラ91の周速比が図5(a)に示すような第1周速比R1となるように現像ローラ91の回転速度を制御する。ここで、第2閾値T2は、実験やシミュレーション等によって予め決めておけばよい。そして、総印字枚数が第2閾値T2を超えた場合には、制御装置100は、現像ローラ91の周速比を第1周速比R1から当該第1周速比R1よりも小さい第2周速比R2に変更する。
【0052】
このように制御装置100が構成されることで、総印字枚数が増加してトナーの劣化が進んだ場合には、現像ローラ91の回転速度が下がって現像ローラ91の周速比が減少するので、現像ローラ91と感光ドラム81の間のニップ部からトナーが噴出するのを抑えることができる。
【0053】
また、制御装置100は、図5(a),(b)に示すように、周速比が第1周速比R1であるときには、現像ローラ91に印加する現像バイアスを一定値である第1バイアス値B1にしている。そして、制御装置100は、周速比を第1周速比R1から第2周速比R2に変更したときに、現像ローラ91に印加する現像バイアスの絶対値を前回値よりも大きくする、すなわち第1バイアス値B1よりも大きい第2バイアス値B2に変更するように構成されている。
【0054】
これにより、周速比を下げることによってトナー搬送量が減少しても、現像バイアスを上げることによって、トナー搬送量を増加させることができるので、感光ドラム81上におけるトナーの濃度低下を抑えることができる。
【0055】
また、制御装置100は、湿度センサ120で検出した絶対湿度を、温度センサ110で検出した温度に基づいて補正することで、相対湿度(以下、単に「湿度」という。)を算出する。そして、制御装置100は、算出した湿度が第1閾値T1(図4参照)よりも小さい場合に前述した周速比減少制御を実行し、湿度が第1閾値T1よりも小さくない場合に周速比減少制御を実行しないように構成されている。
【0056】
すなわち、図5(a),(b)に示すように、総印字枚数が第2閾値T2を超えた場合であっても、湿度が第1閾値T1よりも小さくない環境下、すなわち低湿度ではない環境下であれば、周速比および現像バイアスは、初期値である第1周速比R1および第1バイアス値B1のまま維持される。なお、第1閾値T1は、実験やシミュレーション等によって予め決めておけばよい。
【0057】
これによれば、低湿度ではない環境下(トナーの流動性が悪化し難い環境下)では、周速比減少制御を実行しないので、周速比の減少に伴って生じる現像ローラ91から感光ドラム81へのトナー搬送量の減少を抑えることができ、感光ドラム81上におけるトナーの濃度低下を抑えることができる。
【0058】
次に、制御装置100の制御について、図4に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。なお、制御装置100は、本制御を開始する前の初期状態においては、現像ローラ91の周速比や現像バイアスを、初期値である第1周速比R1や第1バイアス値B1に設定している。
【0059】
図4に示すように、制御装置100は、まず、印字指令を受けたか否かを判断する(S1)。ステップS1において印字指令を受けた場合には(Yes)、制御装置100は、湿度が第1閾値T1より小さいか否かを判断する(S2)。
【0060】
ステップS2において湿度が第1閾値T1よりも小さい場合には(Yes)、制御装置100は、ステップS3の処理に移行し、小さくない場合には(No)、そのまま本制御を終了する。ここで、ステップS3,S4の処理は、前述した周速比減少制御である。そのため、制御装置100は、湿度が第1閾値T1よりも小さい場合には周速比減少制御を実行し、小さくない場合には周速比減少制御を実行しないように構成されている。
【0061】
ステップS3において、制御装置100は、総印字枚数が第2閾値T2を超えたか否かを判断し、超えた場合には(Yes)、現像ローラ91の周速比を通常よりも減少させるべく、電磁クラッチ50への通電状態をOFFにして伝達機構をノーマル周速用の伝達機構MBからスロー周速用の伝達機構MCに切り替える(S4)。すなわち、ステップS4において、制御装置100は、現像ローラ91の周速比を第1周速比R1から当該第1周速比R1よりも小さい第2周速比R2に変更する。
【0062】
ステップS4の後、制御装置100は、現像ローラ91に印加する現像バイアスを、第1周速比のときに印加する第1バイアス値B1よりも大きい第2バイアス値B2に変更し(S5)、本制御を終了する。なお、本制御終了後には、制御装置100は、本制御によって設定した周速比や現像バイアスによって現像ローラ91を制御するとともに、スキャナユニット5等を公知の制御で制御することで、印字制御を実行する。
【0063】
本実施形態によれば、前述した各効果の他、以下のような効果を得ることができる。
電磁クラッチ50を制御して各伝達機構MB,MCを切り替えることで、電動モータMoの回転速度を変えずに現像ローラ91の回転速度を変えることができるので、電動モータMoを感光ドラム81と共用することができ、コストダウンを図ることができる。
【0064】
印字指令に含まれる印字枚数データから簡単に把握できる総印字枚数に基づいて現像ローラ91の回転速度を制御するので、例えば現像ローラの総回転量を検出するセンサからの信号に基づいて現像ローラの回転速度を制御する形態に比べ、センサが不要となり、コストダウンを図ることができる。
【0065】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、第1周速比R1および第2周速比R2のときに現像ローラ91に印加する現像バイアスをともに一定値(B1,B2)としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、劣化により帯電量が徐々に減少する性質を持ったトナーを採用する場合には、図6(a),(b)に示すように、第1周速比R1および第2周速比R2のときに現像ローラ91に印加する現像バイアスを、ともに総印字枚数が増加するにつれて徐々に下がるように変化させてもよい。
【0066】
すなわち、この形態では、第1周速比R1から第2周速比R2に下げたときに、総印字枚数が0枚のときから徐々に下げていく現像バイアスを、前回値よりも大きくし、その後は大きくした値から徐々に下げていけばよい。これによれば、前記実施形態と同様の効果に加え、劣化によるトナーの帯電量の減少により現像ローラから感光ドラムへのトナーの搬送量が増えることを、現像バイアスを徐々に下げていくことで抑えることができる。
【0067】
また、例えば、劣化により帯電量が徐々に増加する性質を持ったトナーを採用する場合には、図6(a),(c)に示すように、第1周速比R1および第2周速比R2のときに現像ローラ91に印加する現像バイアスを、ともに総印字枚数が増加するにつれて徐々に上がるように変化させてもよい。
【0068】
すなわち、この形態では、第1周速比R1から第2周速比R2に下げたときに、総印字枚数が0枚のときから徐々に上げていく現像バイアスを、前回値よりも大きくし、その後は大きくした値から徐々に上げていけばよい。これによれば、前記実施形態と同様の効果に加え、劣化によるトナーの帯電量の増加により現像ローラから感光ドラムへのトナーの搬送量が減ることを、現像バイアスを徐々に上げていくことで抑えることができる。
【0069】
前記実施形態では、現像ローラ91の周速比を2段階で切り替えるようにしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、感光ドラム81の駆動用のモータとは別の専用のモータで現像ローラ91を駆動させる場合には、3段階以上で切り替えてもよいし、図7(a)に示すように、周速比を総印字枚数が増加するにつれて徐々に減少させてもよい。すなわち、総印字枚数が増加するにつれて周速比が徐々に小さくなるような周速比マップRMに基づいて周速比減少制御を実行するように制御装置を構成してもよい。また、この場合、図7(b)に示すように、周速比減少制御中に現像ローラに印加する現像バイアスを、総印字枚数が増加するにつれて徐々に増加させるように制御装置を構成してもよい。
【0070】
具体的には、図4におけるステップS3,S4の処理を、周速比マップRMに基づいて周速比を決定するステップに代え、ステップS5の処理を現像バイアスマップに基づいて現像バイアスを設定するステップに代えればよい。これによれば、ステップS2において湿度が第1閾値T1よりも小さくない場合には(No)、制御装置は、図7(a)に破線で示す基準マップBMに基づいて周速比を決定するとともに、図7(b)に破線で示す第1マップM1に基づいて現像バイアスを決定する。
【0071】
ここで、基準マップBMは、総印字枚数の増加に関わらず、周速比を一定にするマップである。また、第1マップM1は、総印字枚数の増加に関わらず、現像バイアスを一定にするマップである。言い換えると、第1マップM1は、総印字枚数が増加するにつれて現像バイアスを所定の傾き(0)で変化させるマップである。より具体的には、図7(b)の第1マップM1は、劣化しても帯電量が略一定となるトナーを採用するときに用いるマップである。
【0072】
また、ステップS2において湿度が第1閾値T1よりも小さい場合には(Yes)、制御装置は、図7(a)に実線で示す周速比マップRMに基づいて総印字枚数に対応した周速比を決定するとともに、図7(b)に実線で示す第2マップM2に基づいて現像バイアスを決定する。ここで、第2マップM2は、総印字枚数が増加するにつれて現像バイアスを第1マップM1の傾きよりも絶対値の大きな傾きで変化させるマップである。
【0073】
これによれば、総印字枚数に応じた適正な周速比にすることができるので、トナーの搬送量と濃度を総印字枚数に応じた適切な値にすることができる。また、湿度が第1閾値T1よりも小さい場合、すなわち周速比減少制御を実行するときには、現像バイアスを第1マップM1よりも傾きの大きな第2マップM2に基づいて決定するので、周速比の減少に伴うトナー搬送量の減少を抑えることができ、トナーの濃度低下を抑えることができる。
【0074】
なお、劣化により帯電量が減少するトナーを採用する場合には、図8(b)に示す第1マップM11および第2マップM12を用いればよい。ここで、第1マップM11は、総印字枚数が増加するにつれて現像バイアスを所定の傾きで減少させるマップであり、第2マップM12は、総印字枚数が増加するにつれて現像バイアスを第1マップM11の傾きよりも大きな傾きで変化させるマップである。
【0075】
すなわち、図8(a)に示す基準マップBMで周速比を決定するときは、第1マップM11で現像バイアスを決定し、周速比マップRMで周速比を決定するときは、第2マップM12で現像バイアスを決定すればよい。この場合であっても、図7(a),(b)の形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
また、劣化により帯電量が増加するトナーを採用する場合には、図8(c)に示す第1マップM21および第2マップM22を用いればよい。ここで、第1マップM21は、総印字枚数が増加するにつれて現像バイアスを所定の傾きで増加させるマップであり、第2マップM22は、総印字枚数が増加するにつれて現像バイアスを第1マップM21の傾きよりも大きな傾きで変化させるマップである。
【0077】
すなわち、図8(a)に示す基準マップBMで周速比を決定するときは、第1マップM21で現像バイアスを決定し、周速比マップRMで周速比を決定するときは、第2マップM22で現像バイアスを決定すればよい。この場合であっても、図7(a),(b)の形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
前記実施形態では、現像剤としてプラスに帯電したトナーを採用したが、本発明はこれに限定されず、マイナスに帯電したトナーを採用してもよい。なお、この場合には、例えば周速比を第1周速比から第2周速比に変更するときには、負の第1バイアス値よりも小さい負の第2バイアス値(絶対値の大きいバイアス値)に変更すればよい。
【0079】
前記実施形態では、感光体として感光ドラム81を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばベルト状の感光体を採用してもよい。
【0080】
前記実施形態では、現像ローラの総回転量に対応するパラメータとして総印字枚数を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えば、現像ローラの総回転量そのものであってもよいし、用紙に印字したドット数などであってもよい。
【0081】
前記実施形態では、湿度測定手段として温度センサ110および湿度センサ120を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えば、相対湿度を検出する湿度センサのみで構成してもよい。
【0082】
前記実施形態では、レーザプリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 レーザプリンタ
81 感光ドラム
91 現像ローラ
100 制御装置
110 温度センサ
120 湿度センサ
B1 第1バイアス値
B2 第2バイアス値
R1 第1周速比
R2 第2周速比
T1 第1閾値
T2 第2閾値


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される感光体と、
前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、
前記現像ローラの回転速度を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記現像ローラの総回転量に対応するパラメータの増加に応じて、前記現像ローラの回転速度を下げて、前記感光体に対する前記現像ローラの周速比を減少させる周速比減少制御を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
湿度を測定する湿度測定手段を備え、
前記制御装置は、
前記湿度測定手段で測定した湿度が第1閾値より小さいか否かを判断し、小さい場合には前記周速比減少制御を実行し、小さくない場合には前記周速比減少制御を実行しないことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記現像ローラの周速比を第1周速比から当該第1周速比よりも小さい第2周速比に変更したときに、前記現像ローラに印加する現像バイアスの絶対値を前回値よりも大きくすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記パラメータが増加するにつれて前記周速比が徐々に小さくなるような周速比マップに基づいて前記周速比減少制御を実行することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記湿度測定手段で測定した湿度が第1閾値よりも小さくない場合には、前記パラメータが増加するにつれて前記現像ローラに印加する現像バイアスを所定の傾きで変化させた第1マップに基づいて現像バイアスを決定し、
前記湿度測定手段で測定した湿度が第1閾値よりも小さい場合には、前記パラメータが増加するにつれて前記現像ローラに印加する現像バイアスを前記所定の傾きよりも絶対値の大きな傾きで変化させた第2マップに基づいて現像バイアスを決定することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記パラメータは、総印字枚数であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記現像ローラを回転させる駆動源と、
速度伝達比の異なる2つの伝達機構と、
前記駆動源に対して前記2つの伝達機構を介して連結される出力部と、
2つのうち一方の伝達機構と前記出力部との間に設けられるワンウェイクラッチと、
前記一方の伝達機構よりも速度伝達比の小さな他方の伝達機構と前記出力部との間に設けられる電磁クラッチと、を備え、
前記制御装置は、
前記電磁クラッチを制御して前記伝達機構を切り替えることで、前記現像ローラの回転速度を下げることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−247631(P2012−247631A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119311(P2011−119311)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】