説明

画像形成装置

【課題】中間転写ベルトをクリーニングするブレードを設けた構成において、ブレードの摺擦が過剰になるのを抑制するために潤滑剤を供給しても、トナー像を記録材に転写する二次転写位置で紙粉や外添材がベルト外周面に直接付着するのを抑制する。
【解決手段】トナー像を担持する像担持体11と、トナー像が外周面に転写される弾性の中間転写ベルト16と、中間転写ベルト16からトナー像を記録材Pに転写する二次転写外部材26と、中間転写ベルト16をクリーニングするブレード27と、中間転写ベルト16に潤滑剤を供給する供給手段25と、中間転写ベルト16を介して供給手段25に対向する位置で、中間転写ベルト16を張架する供給手段対向部材24とを、備える画像形成装置において、供給手段対向部材24の中間転写ベルト16に接触する領域での曲率は、二次転写内部材22の中間転写ベルト16に接触する領域での曲率よりも大きい画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真システムを用いて画像を形成する複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関し、特に中間転写体を用いる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多様な記録材に対応するためにトナー像を担持する中間転写ベルトを設けた構成がある。しかし中間転写ベルトの外周面をクリーニングブレードでクリーニングしようとすると表面の摩擦が過度になりクリーニングブレードがめくれるおそれがある。そこで中間転写ベルトとクリーニングブレード間の摩擦が過度になるのを抑制するために、中間転写ベルトの外周面に潤滑剤を供給する方法がある。特許文献1には、中間転写ベルト外周面に潤滑剤を供給する供給手段と、中間転写ベルトを介して供給手段に対向する位置で中間転写ベルトを張架する供給手段対向部材とを設けた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−140317
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし潤滑剤が供給されたベルト面がトナー像を記録材に転写する二次転写位置に到達したときにベルト面が伸びる場合がある。この場合には、ベルト上で潤滑剤が供給された領域が引き延ばされて、単位面積当たりの潤滑剤の濃度が低下するので、二次転写位置で紙粉が潤滑剤の上ではなくてベルト面に直接付着しやすくなる。その結果紙粉がベルト上の微小な凹部に入り込みクリーニングされにくくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、トナー像を担持する像担持体と、回転可能であって、前記像担持体からトナー像が外周面に転写される弾性の中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトの外周面側に配置されて、前記中間転写ベルトからトナー像を記録材に転写する二次転写外部材と、前記中間転写ベルトを内周面側から張架して、前記中間転写ベルトを介して前記二次転写外部材に対向する二次転写内部材と、前記中間転写ベルトが回転する回転方向において前記転写内部材より下流側に設けられて、前記中間転写ベルトをクリーニングするブレードと、前記中間転写ベルトに潤滑剤を供給する供給手段と、前記中間転写ベルトを介して前記供給手段に対向する位置で、前記中間転写ベルトを張架する供給手段対向部材とを、備える画像形成装置において、前記供給手段対向部材の前記中間転写ベルトに接触する領域での曲率は、前記二次転写内部材の前記中間転写ベルトに接触する領域での曲率よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本願発明により、中間転写ベルトをクリーニングするブレードを設けた構成において、ブレードの摺擦が過剰になるのを抑制するために潤滑剤を供給しても、トナー像を記録材に転写する二次転写位置で紙粉がベルト外周面に直接付着するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を実施する装置の概略断面構成を示した図である。
【図2】潤滑剤塗布装置の概略断面構成を示した図である。
【図3】中間転写体ベルト表面の伸び量と曲率半径の関係を示した図である。
【図4】R2/R1による60k枚時のグロス低下率を示した図である。
【図5】実施の形態1の構成において得られたグロス低下率の推移を示した図である。
【図6】実施の形態2で用いた装置の概略断面構成を示した図である。
【図7】R3/R1による60k枚時のグロス低下率を示した図である。
【図8】実施の形態2の構成において得られたグロス低下率の推移を表す図である。
【図9】実施の形態3で用いた中間転写ベルトの概略断面構成を示した図である。
【図10】実施の形態3の構成において得られたグロス低下率の推移を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】
<実施形態1>
(画像形成プロセス)
本実施形態における画像形成装置は電子写真方式の4色フルカラーの画像形成装置である。図1を参照して、画像形成全体の構成及び動作を説明する。
【0010】
画像形成装置は、4個(4色)の画像形成ステーション、即ちそれぞれイエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成する画像形成ステーションY,M,C,Kを備えている。
【0011】
各画像形成ステーションY,M,C,Kは、それぞれ像担持体(感光体、感光ドラム)としてドラム型の感光体(以下、感光ドラム)11Y,11M,11C,11Kを備えている。各感光ドラム11Y,11M,11C,11Kは、外径30mmのアルミニウム製のシリンダの外周面に、感光層としてOPC(有機光半導体)を塗布し、硬化性の樹脂を電荷輸送層用の樹脂として使用した構成したものである。
【0012】
各感光ドラム11Y,11M,11C,11Kには、それらの表面に押圧された外径14mmの帯電ローラ12Y,12M,12C,12Kが接触しており、図示していない一次帯電バイアス電源から交流電圧に直流電圧を重畳した帯電バイアスが印加されることで一様に帯電される。
【0013】
感光ドラム11Y,11M,11C,11Kが帯電ローラ12Y,12M,12C,12Kによって一様に帯電された後、露光装置13Y,13M,13C,13Kから波長780nmのレーザー光を画像情報に応じて感光ドラム11Y,11M,11C,11K上に照射し、それぞれの色に対応する静電潜像が形成される。
【0014】
各感光ドラム11Y,11M,11C,11K上に形成された静電潜像は、それぞれイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックのトナーを収容した現像装置14Y,14M,14C,14Kによってそれぞれの色のトナーが付着され、トナー像として現像される。18Y,18M,18C,18Kは、各色の現像装置14Y,14M,14C,14Kに補給するためのトナーが収納されたトナー補給容器である。
【0015】
現像剤としては、トナー粒子に対して磁性のキャリアを混合したものを磁気力によって搬送し、感光ドラムに対して接触状態で現像するための2成分現像剤を用いた。良好な画質を得る観点からは、球状のトナーを用いることが好ましい。トナーに添加する外添剤は、トナーに添加したときの耐久性の点から、トナー粒子の重量平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。この外添剤の粒径は、顕微鏡によるトナー粒子の表面観察により求めたその平均粒径を意味する。外添剤は、トナー100重量部に対し0.01〜15重量部が用いられ、好ましくは0.05〜12重量部である。外添剤としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、その他の材料等を使用することができる。
【0016】
本実施形態では、ネガ帯電極性のトナーを用い、キャリアとの摩擦により帯電する平均帯電量(単位重量当りの電荷量;以下Q/M)が−1.0×10−2C/kg〜−6.0×10−2C/kgのものを用いた。
【0017】
上述の4個の画像形成ステーションY,M,C,Kの下方には、トナー像を担持する中間転写体16が配設されている。中間転写体16を挟んで各感光ドラム11Y,11M,11C,11Kに対応する位置には、外径18mmのトナー像を中間転写体上に転写する一次転写ローラ15Y,15M,15C,15Kが接触配設されている。一次転写バイアス電源から正極性の一次転写バイアスが印加されると、感光ドラム11Y,11M,11C,11K上のそれぞれのトナー像は、一次転写部N1で一次転写される。
【0018】
また、本実施形態では中間転写体16として単層の弾性層を有する中間転写体ベルトを用いた。弾性層としては、厚さ500μmのウレタンゴムを使用したが、天然ゴム、その他の材料を使用することが可能である。
【0019】
厚さとしては、20μm未満の薄い場合は、弾性層は十分に収縮できず、感光ドラム11Y,11M,11C,11K上の中間転写体ベルト16に対する当接圧の振れを十分に吸収できない。また、厚さが1000μmを超えると硬度に関わらず、中間転写体ベルト16は支持軸にて適当に曲がらないため、走行が安定しなくなる。
【0020】
中間転写体ベルト16は、駆動ローラ21、二次転写内部材としての二次転写対向ローラ22、クリーニング装置対向ローラ23、潤滑剤塗布装置対向ローラ24とに掛け渡されている。21は中間転写ベルトを駆動する駆動張架部材としての駆動ローラである。駆動ローラ21は図示していない駆動モーターからの駆動力が伝達されて回転して時計回りの回転により、中間転写体ベルト16は矢印方向に回転可能である。22は中間転写ベルト16を介して二次転写ローラに対向する二次転写対向ローラである。23は中間転写ベルト16を介してクリーニング装置に対向するクリーニング装置対向ローラである。24は中間転写ベルトを介して潤滑剤塗布装置に対向する潤滑剤塗布装置対向ローラ24である。駆動ローラ21は金属芯金上に導電ゴム層を有し、10〜10Ωのロールで、芯金は接地されている。この中間転写体ベルト16上の潤滑剤塗布装置対向ロール24が配設されている位置には、中間転写体ベルト16表面に潤滑剤を塗布するための潤滑剤塗布装置25が接触配設されている。潤滑剤塗布装置25については、詳細を後で説明する。
【0021】
クリーニング装置対向ロール23、潤滑剤塗布装置対向ローラ24は外径がそれぞれ30mm、20mmであり、絶縁性ローラを半導電性の薄層フィルムで被覆して形成されている。この薄層フィルムは厚さ10μm〜200μmに形成され、その表面抵抗率が10〜1011Ω/□(□:単位面積)に調整されている。
【0022】
中間転写体ベルト16の二次転写対向ローラ22に対向した部位には、外径24mmのトナー像を記録材に転写する二次転写外部材としての二次転写ローラ26が二次転写対向ローラ22のバックアップローラとして対向配置されている。すなわち二次転写ローラ26は中間転写ベルトの外周面側に配置されて、二次転写対向ローラ22は中間転写ベルトの内周面側に配置される。この二次転写対向ローラ22と二次転写ローラ26が、中間転写体ベルト16に転写されたトナー像を記録材に転写させるための二次転写手段となる。転写材Pは、上述の中間転写体ベルト16上に4色のトナー像をタイミングよく合わせるようにして、レジストローラにより二次転写部N2に供給される。中間転写体ベルト16上のトナー像は、二次転写ローラ26に二次転写バイアス電源から二次転写バイアス電圧が印加されることで、転写材P表面に二次転写される。
【0023】
転写材Pに転写されたトナー像は、定着器で熱や圧力を受けて転写材Pに定着される。その後装置本体外部に排紙される。
【0024】
なお二次転写部N2にて転写材Pに二次転写されなかった二次転写残トナーや潤滑剤は、中間転写ベルト16を圧するクリーニングブレード27によって除去される。
【0025】
(検知センサ)
本実施形態では、画像の濃度制御を行うために、中間転写体上に調整用のトナー像を形成した上で、調整用のトナー像に光を照射してその正反射光成分や散乱光成分の強度を検知して、これらの光量と濃度との関係から画像形成条件を調整する。
【0026】
19は感光ドラム11Y、11M、11C、11Kから順次中間転写体ベルト16上に転写されたトナー像の濃度を検知するための検知センサである。検知センサは、ベルト面に向けて光を照射する照射部と、光を検出する検出部とを備える。照射部がベルト面に向けて光を照射して、検出部が正反射光を検出する。正反射光の光量は、調整用のトナー像が形成されていない領域と、調整用のトナー像が形成された領域とで異なる。その上で調整部が、この正反射光の差Δを利用して調整用のトナー像の濃度を算出して、画像形成条件を調整する。
【0027】
(潤滑剤塗布装置)
本実施形態では多様な記録材に対応するために中間転写ベルト16として弾性のベルトを用いる。そのため中間転写ベルト16とクリーニングブレード27との間で摩擦が大きくなりクリーニングブレード27がめくれるおそれがある。そこでクリーニングブレード27がめくれるのを抑制するために本実施形態では、中間転写ベルトの外周面に潤滑剤を供給する供給手段として、ベルト外周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置25が設けられている。その結果中間転写ベルトとクリーニングブレード27との間で摩擦が小さくなり、クリーニングブレード27がめくれるのが抑制される。
【0028】
図2は、本発明で用いた潤滑剤塗布装置25の部分拡大図であり、固形潤滑剤28、固形潤滑剤保持部材29、固形潤滑剤28を中間転写体ベルト16上に塗布するための潤滑剤塗布手段(ブラシ状部材)としてのブラシローラ30、潤滑剤をブラシローラに加圧するための加圧バネ31、潤滑剤が飛散するのを防止するための飛散防止シート32、ブラシローラ30から中間転写体ベルト16上に供給した潤滑剤を均すための均しブレード33を備えている。
【0029】
潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛を使用しており、固形のバー状に成型されている。固形潤滑剤28は、潤滑剤保持部材29に保持されており、加圧バネ31によって300gfの加圧力で潤滑剤保持部材を介してブラシローラ30側に押し当てられており、ブラシローラ30を介して潤滑剤が中間転写体ベルト16上に塗布される。塗布された潤滑剤は、中間転写体ベルト16表面の移動方向下流側で均しブレード33の当接位置を通過する際に、表面が均されて一様に押し広げられ、厚さムラが抑制される。
【0030】
ブラシローラ30は中間転写体ベルト16に当接して設けられており、ブラシローラ30の回転によって、固形潤滑剤28をブラシローラ30側に掻き取り、ブラシローラ30に付着した潤滑剤が中間転写体ベルト16との当接部から中間転写体ベルト16表面に付着する。
【0031】
なお、ブラシローラ30の回転方向については中間転写体ベルト16に対して同じ方向で回転させるかあるいは逆方向に回転させるかについては本発明に関しては問わない。
【0032】
固形潤滑剤28としては、乾燥した固体疎水性潤滑剤を用いることができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム等のステアリン酸基を持つものを用いることができる。また、同じ脂肪酸基であるオレイン酸鉛、脂肪酸の金属塩等も使用できる。さらに、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、オオバ油等のような植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス等も使用できる。
【0033】
また均しに要求されるベルト面への加圧力はクリーニングより低いので、均しブレード33は中間転写体ベルト16の表面の移動方向に対して順方向に当接さる。そのため均しブレード33がめくれるおそれはない。
【0034】
(張架部材の半径とベルト外周面の伸び量)
本実施形態では中間転写ベルトとして弾性のベルト部材を用いるので、ベルト外周面が張架部材に沿って伸び縮みする。張架部材の曲率とベルト外周面の伸びとの関係について図3を用いて説明する。
図3は中間転写ベルトのベルト外周面と張架ローラのサイズの関係を示す。rは張架ローラの半径であり、tは中間転写体ベルト35の厚さであり、θは張架ローラ34の中心と張架ローラ34と中間転写体ベルト35との接点によって形成される扇形の中心角である。さらにL1は半径rの張架ローラ34と中間転写体ベルト35の張架されている部分の内側の弧の長さであり、L2は中間転写体ベルト35の外側の弧の長さである。L1とL2はそれぞれ
L1=rθ
L2=(r+t)θ
と表される。
【0035】
ここで中間転写ベルトの外周面についての伸び量は、中間転写体ベルト35の外周面についての自然長を基準とする伸び率αを用いて表される。伸び量と伸び率αの関係は、伸び率αが大きくなる程ベルト外周面の伸び量が大きくなるという関係である。伸び率αは、
α=L2/L1=1+(t/r)
と表される。本実施形態では中間転写体ベルト35の厚さtはほぼ一定であるので、ベルトの伸び量は張架ローラ34の半径rが大きくなる程小さくなる。ここで張架ローラによる張架位置での中間転写ベルトの外周面の曲率半径Rは、
R=r+t
で表わされる。曲率半径Rと、曲線や曲面の曲がり具合を表す曲率Xとの関係は以下のようになる。
X=1/R
すなわち、中間転写体ベルト35表面の曲率半径Rが大きいほど曲率Xは小さくなり、自然長に対しての伸び量が小さくなる。なお、フラットな形状は曲率=0によって表わされる。
【0036】
(潤滑剤塗布装置対向手段の曲率と二次転写対向ローラの曲率)
既に説明した通り本実施形態では、クリーニングブレード27がめくれるのを抑制するために潤滑剤塗布装置25が潤滑剤をベルト外周面に塗布する構成となっている。
【0037】
しかし潤滑剤が供給されたベルト面がトナー像を記録材に転写する二次転写位置に到達したときにベルト面が伸びる場合がある。この場合には、ベルト上で潤滑剤が供給された領域が引き延ばされて、単位面積当たりの潤滑剤の濃度が低下するので、二次転写位置で紙粉が潤滑剤の上ではなくてベルト面に直接付着しやすくなる。その結果紙粉がベルト上の微小な凹部に入り込みクリーニングされにくくなるおそれがある。
【0038】
そこで本実施形態では、供給手段に対向する供給手段対向部材としての潤滑剤塗布装置対向ローラ24の半径r1が二次転写対向ローラ22の半径r2より小さくなるように設定される。言い換えると潤滑剤塗布装置対向ローラ24が中間転写ベルトに接触する領域での曲率χ1が二次転写対向ローラ22が中間転写ベルトに接触する領域での曲率χ2よりも大きくなるように設定される。すなわち潤滑剤を供給する潤滑剤供給部での中間転写ベルト16の外周面の曲率半径R1が、二次転写する二次転写部での中間転写ベルト16の外周面の曲率半径R2よりも小さくなる。言い換えると潤滑剤供給部での中間転写ベルトの外周面の曲率X1が二次転写部での曲率X2よりも大きくなるように設定される。
【0039】
その結果、潤滑剤塗布部における伸び率が二次転写部における伸び率より大きくなる。二次転写部でベルト外周面が曲がっても、二次転写部でベルト外周面が大きく露出するのが抑制される。中間転写体ベルト16表面に二次転写外ローラから付着する紙粉や外添剤は表面にコートされた潤滑剤の上に付着するので、ベルト外周面に直接付着するのが抑制される。これらの付着物は中間転写体ベルト16表面に塗布された潤滑剤ごとクリーニング装置27で除去されるので、紙粉や外添材が蓄積して中間転写ベルトを汚すのを抑制される。
【0040】
図4は、グロスの低下率と、曲率半径R1とR2のサイズ比との関係を示す。横軸は、二次転写部でのR2に対する潤滑剤塗布部での曲率半径R1の比率を示す。縦軸は、普通紙CLC80(坪量80g/cm)を用いて60,000枚通紙を行った時点での中間転写体ベルト16上のグロス値を20点測定した結果を示す。紙粉や外添剤がベルト面に蓄積するにつれベルト面のグロスは低下するので、縦軸のグロス値でもってベルト面の汚れ具合がわかる。なお、この中間転写体ベルト16上のグロス値は、日本電飾(株)製のグロスメーターPG−3Dを使用し、転写材の画像面の鉛直方向に対して45度の入出力角度において測定した、いわゆる45度測定値でグロス値を定義した。グロス低下率の算出は、通紙前の中間転写体ベルト16表面のグロス値を基準として、測定点中で最も低いグロス値を用いることで行った。
【0041】
図4に示されるように、二次転写部でのベルト外周面の曲率半径R2の値が潤滑剤塗布部でのベルト外周面の曲率半径R1に対して小さくなるにつれて、グロス低下率は大きくなる。R2/R1が1以上である場合にグロス低下率は8パーセント前後の値であり、十分低い。一方でR2/R1が1.0より小さい場合にグロス低下率は18パーセント前後の値であり、高い。
【0042】
しかし潤滑剤の塗布にムラが生じるおそれがある。R2/R1が1に設定された場合には、塗布のムラに起因して潤滑剤が塗布されない領域が生じてベルト面が二次転写部で露出するおそれがある。そのため塗布ムラが生じても中間転写ベルト35の外周面が二次転写部で露出するのを抑制するためには、R2/R1>1の範囲を用いるのが望ましい。
【0043】
本実施形態では潤滑剤塗布装置対向ローラ24の半径r1を10mm、二次転写対向ローラ22の半径r2を15mmに設定する。それぞれのローラに対応する曲率はχ1=1/10、χ2=1/15となる。すなわち潤滑剤塗布装置対向ローラ24の半径が二次転写対向ローラ22の半径よりも小さくなるように設定する。言い換えると潤滑剤塗布装置対向ローラ24の曲率χ1が二次転写対向ローラ22の曲率χ2よりも大きくなるように設定される。中間転写ベルトの厚みtは0.5mmであるので、R1=10+0.5=10.5mmであり、R2=15+0.5=15.5mmとなる。また潤滑剤塗布装置対向ローラ24位置での中間転写ベルトの外周面の曲率X1=1/10.5、二次転写対向ローラ22位置での中間転写ベルトの外周面の曲率X2=1/15.5となる。
【0044】
これらを受けてR2/R1=X1/X2=(15.5/10.5)≒1.5となる。すなわち潤滑剤塗布部での中間転写ベルトの外周面の曲率半径が二次転写部での中間転写ベルトの外周面の曲率半径よりも小さいように設定される。言い換えると潤滑剤塗布部での中間転写ベルトの外周面の曲率が二次転写部での中間転写ベルトの外周面の曲率よりも大きいように設定される。
【0045】
本実施形態の構成におけるグロス低下率と画像形成枚数との関係を図5に示す。グロス値の測定は、図4での測定と同じ測定方法を用いて20,000枚毎に300,000枚まで行った。その結果、懸念された中間転写体ベルト16表面のグロス低下による画質劣化は発生しなかった。
【0046】
よって、本発明により、弾性層を有する中間転写ベルトを用いた系でも画像品位が劣化するようなグロス低下は発生せず、恒久的に高画質画像を安定して得ることが可能である。
【0047】
なお、本実施形態では中間転写ベルトの外周面の潤滑剤供給部での曲率半径R1と二次転写部でのR2をR1<R2の関係を満たすように潤滑剤塗布装置対向ロール24と二次転写対向ローラ22の半径をそれぞれ10mm、15mmに設定した場合について述べたが、R1<R2の関係を満たせば潤滑剤塗布装置対向ローラ24と二次転写対向ローラ22の半径は共に自由に選択することができる。なお二次転写対向ローラの半径が大きいと、二次転写位置での中間転写ベルトのベルト面がフラット形状に近づく。その結果転写後の記録材が中間転写ベルト側に張り付いて分離不良を引き起こすおそれがある。そこで分離不良を抑制するために二次転写対向ローラの半径r2をある程度小さくして曲率χ2が0より大きくなるように設定するのが望ましい。より好ましくは二次転写対向ローラの半径r2は20mm以下にして、曲率χ2≧1/20>0とするのが望ましい。その結果二次転写対向ローラが中間転写ベルトに接触する領域での二次転写部での中間転写ベルトの外周面の曲率X2>0となり、分離不良が抑制される。
【0048】
<実施形態2>
実施形態1と重複する点については説明を省略する。実施形態1と相違する点について説明する。
【0049】
本実施形態では、潤滑剤塗布装置対向ローラの半径r1がブレード対向部材としてのクリーニング装置対向ローラの半径r3以上になるように設定される。言い換えると潤滑剤塗布装置対向ローラの曲率χ1がクリーニング装置対向ローラの曲率χ3以下になるように設定される。すなわち潤滑剤塗布部での中間転写ベルトの外周面の曲率半径R1がクリーニング部での中間転写ベルトの外周面の曲率半径R3以上になるように設定される。言い換えると潤滑剤塗布部での中間転写ベルトの外周面の曲率X1がクリーニング部での中間転写ベルトの外周面の曲率X3以下になるように設定される。
【0050】
このように設定する理由について以下で説明する。潤滑剤が供給されたベルト面はクリーニング部に到達すると、クリーニング装置対向ローラ22の曲率にそって屈曲する。クリーニング装置対向ローラ22の曲率が潤滑剤塗布装置対向ローラ24の曲率よりも小さければ、クリーニング部でベルト外周面が縮むので、ベルト外周面のクリーニング性が低下するおそれがある。その結果ベルト外周面のグロスが低下するおそれがある。そこで本実施形態では、潤滑剤塗布装置対向ローラの半径r1がクリーニング装置対向ローラの半径r3以上になるように設定される。すなわちクリーニング装置対向ローラ23によって形成される中間転写体ベルト16外周面の曲率半径R3と潤滑剤塗布装置対向ロール24によって形成される中間転写ベルト16の外周面の曲率半径R1との関係をR3≦R1となるようにする。その結果潤滑剤が塗布される領域は予めクリーニング装置27によるクリーニング性を高めることができる。
【0051】
図7は、グロス低下と、中間転写ベルト外周面の潤滑剤供給部での曲率半径R1とクリーニング部でのR3のサイズ比の関係を示す。横軸は、クリーニング部でのベルト外周面の曲率半径R3に対する潤滑剤塗布部でのベルト外周面の曲率半径R1の比を示す。縦軸は、60,000枚まで通紙を行った時点での中間転写ベルトのベルト外周面のグロス低下率を示す。グロス値の測定と算出は、図4と同じ方法を用いて行った。
【0052】
図7に示されるように、R1の値がR3に対して小さくなるにつれてグロス低下率が大きくなった。R1/R3が1以上となる場合はグロス低下率がほぼ一定となった。一方でR1/R3が1より小さい場合はグロス低下率が上昇傾向になった。すなわちグロス低下率を抑制するためには、R1/R3が1以上に設定されるのが望ましい。
【0053】
そこで本実施形態では、R1/R3=X3/X1≒1.5となるように設定される。より具体的には本実施形態では図6に示されるように、中間転写体ベルト16のクリーニング装置27に中間転写体ベルト16を介して当接するクリーニング装置対向ローラ23の半径が15mmに設定される。すなわちクリーニング装置対向ローラ23によって形成される中間転写体ベルト35表面の曲率半径R3は、R3=15+0.35=15.35mmとなる。中間転写ベルト24のベルト外周面の曲率X3はX3=1/R3=1/15.35となる。これらを受けてR1/R3=X3/X1=30.35/20.35≒1.5となる。
【0054】
本実施の形態の構成で、グロス低下率と画像形成枚数との関係を示すのが図8である。測定は図5と同じ要領で行った。
【0055】
懸念していた中間転写体ベルト16表面のグロス低下による画質劣化は発生しなかった。その上実施形態1の形態よりもグロス低下率を小さくすることができた。
【0056】
よって、本発明により、弾性層を有する中間転写体ベルトを用いた系でも画像品位が劣化するようなグロス低下は発生せず、恒久的に高画質画像を安定して得ることが可能である。
【0057】
なお、本実施の形態では曲率半径R1とR3をR3≦R1の関係を満たすために、潤滑剤塗布装置対向ローラ24とクリーニング装置対向ローラ23の半径をそれぞれ20mm、15mmに設定した。すなわち潤滑剤塗布装置対向ローラ24の半径がクリーニング装置対向ローラ23の半径よりも大きい。言い換えると潤滑剤塗布装置対向ローラ24の曲率がクリーニング装置対向ローラ23の曲率よりも小さい。もちろんこの数値に限定する意図ではない。R3<R1の関係を満たせば潤滑剤塗布装置対向ロール24とクリーニング装置対向ローラ23の半径は共に自由に選択することができる。
【0058】
<実施形態3>
本実施の形態では、実施の形態1、2で用いた中間転写ベルトを複層構造へと変更した。実施の形態1、2では、弾性層のみの単層構造の中間転写ベルトを用いたが、弾性層のみを有する単層構造では、画像形成を重ねていくと弾性層にクリーニングで除去できなかった外添剤や紙粉、潤滑剤等が堆積して融着、フィルミングを誘発し、グロス低下や転写効率が変化して画像品位に影響を与えてしまう。これを軽減するためには、離型性の高い材質で弾性層をコートしてやればよい。したがって、弾性層を離型性の高い表層で覆うことで、中間転写体ベルト16表層のクリーニング性を向上させることができる。また、弾性層はそれを構成している弾性体が帯電や転写時に生成されるオゾンによって劣化したり、繰り返し張架されることによる疲労磨耗が発生したりする。その結果弾性特性が低下してしまうという問題点もある。そのために、本実施の形態では中間転写体ベルト16として、単層の弾性層を有する中間転写体ベルトではなく、弾性層を中間層とする離型性の高い表層を有した複層構造の中間転写体ベルトを用いた。中間転写体ベルト16を表層及び基体を有する複層構造にすることで、オゾン暴露等による弾性層の機能劣化を抑制し、より長期に渡って高画質画像を維持することができる。
【0059】
本実施形態で用いた中間転写体ベルト16は、図9のような断面構成をしており、ポリイミド樹脂から成る厚さ150μmに成型した基体36と、その上面にウレタンゴムから成る厚さ300μmの弾性層37、フッ素樹脂から成る厚さ10μmの表層38を設けた。本実施の形態では基体36として、ポリイミド樹脂を用いた。その他の材料を用いてもよい。
【0060】
また、弾性層37としては、ウレタンゴムを使用した。その他の材料を用いてもよい。さらに、必要に応じて、カーボン、ZnO、SnO及びTiO等の導電性の充填材により、中間転写体ベルト16の体積抵抗率を適度に調整することができる。厚さとしては、20μm未満の薄い場合は、弾性層37は十分に収縮できず、感光ドラム11Y,11M,11C,11Kの中間転写体ベルト16に対する当接圧の振れを十分に吸収できない。また、厚さが1000μmを超えると硬度に関わらず、中間転写体ベルト16は支持軸にて適当に曲がらないため、走行が安定しなくなる。
【0061】
本実施の形態では、実施の形態1、2と同じ要領で500,000枚まで画像形成を行って出力画像を確認しながら20,000枚おきに二次転写後の中間転写体ベルト16上を観察してみたが、二次転写後にも中間転写体ベルト16上には潤滑剤が存在しており、図10に示したように懸念していた中間転写体ベルト16表面のグロス低下による画像劣化は確認されなかった。
【0062】
よって、本発明により、弾性層を有する中間転写体ベルトを用いた系でも画像品位が劣化するようなグロス低下は発生せず、恒久的に高画質画像を安定して得ることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
11Y、11M、11C、11K 感光ドラム
12Y、12M、12C、12K 帯電ローラ
13Y、13M、13C、13K 露光装置
14Y、14M、14C、14K 現像器
15Y、15M、15C、15K 一次転写ローラ
16 中間転写体ベルト
17Y、17M、17C、17K 感光ドラムクリーニング装置
18Y、18M、18C、18K トナー補給容器
19 濃度検知センサ
20 一次転写後のトナー像
21 駆動ローラ
22 二次転写対向ローラ
23 クリーニング装置対向ローラ
24 潤滑剤塗布装置対向ローラ
25 潤滑剤塗布装置
26 二次転写ローラ
27 中間転写体ベルトクリーニング装置
28 潤滑剤
29 潤滑剤保持部材
30 潤滑剤塗布部材
31 潤滑剤加圧バネ
32 潤滑剤飛散防止シート
33 均しブレード
34 張架ローラ
35 中間転写体ベルト
36 基体
37 弾性層
38 表層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
回転可能であって、前記像担持体からトナー像が外周面に転写される弾性の中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトの外周面側に配置されて、前記中間転写ベルトからトナー像を記録材に転写する二次転写外部材と、
前記中間転写ベルトを内周面側から張架して、前記中間転写ベルトを介して前記二次転写外部材に対向する二次転写内部材と、
前記中間転写ベルトが回転する回転方向において前記二次転写内部材より下流側に設けられて、前記中間転写ベルトをクリーニングするブレードと、
前記中間転写ベルトに潤滑剤を供給する供給手段と、
前記中間転写ベルトを介して前記供給手段に対向する位置で、前記中間転写ベルトを張架する供給手段対向部材とを、備える画像形成装置において、
前記供給手段対向部材の前記中間転写ベルトに接触する領域での曲率は、前記二次転写内部材の前記中間転写ベルトに接触する領域での曲率よりも大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記中間転写ベルトを介して前記ブレードに対向する位置で、前記中間転写ベルトを張架するブレード対向部材を備えて、
前記供給手段対向部材の曲率は、前記ブレード対向部材の曲率以下になることを特徴とする請求項1に記載された画像形成装置。
【請求項3】
前記供給手段対向部材はローラであることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載された画像形成装置。
【請求項4】
前記二次転写内部材の前記中間転写ベルトに接触する領域での曲率は0より大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載された画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−256003(P2012−256003A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130262(P2011−130262)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】