画像形成装置
【課題】剛度の低い薄記録材などの記録材であっても、トナーが持つ電荷をなくすことによる画像不良を発生させることなく、剥離放電を減ずる方向に搬送ベルトから分離できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナーが保持する電荷量を検知する検知手段と、搬送ベルトから記録材を分離させる際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量に応じて転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側の吸着手段で供給する電荷量を制御する。
【解決手段】トナーが保持する電荷量を検知する検知手段と、搬送ベルトから記録材を分離させる際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量に応じて転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側の吸着手段で供給する電荷量を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に潜像を形成し潜像をトナー(現像剤)を用いて顕像化する画像形成装置であって、記録材(例えば、記録材、OHPシート)として剛度の低い薄記録材などの記録材であっても安定して高画質な画像を提供することのできる画像形成装置に関する。特に、電子写真方式を採用し、記録材上に画像を形成する複写機やプリンタ(例えばレーザプリンタ、LEDプリンタ)等の画像形成装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で、各色毎に設けられた像担持体上に形成された各色トナー像を中間搬送ベルト等の中間転写体に順次1次転写して重ね合わせた多色トナー像を形成し、記録材に一括して2次転写するカラー画像形成装置が実用化されている。中間転写体を用いることにより、状態が変わりやすい記録材に転写を行う工程が1回で済むことから安定した画像形成を行うことが可能となっている。多色トナー像が2次転写された記録材は、その後中間転写体から分離される。
【0003】
ここで、記録材に関して、近年、画像形成装置の用途拡大に伴って、薄い記録材等、剛性の低い記録材への対応が求められている。剛度の低い薄記録材などは2次転写工程までに、記録材先端のカール条件やガイドとの摺擦により記録材先端が変形・遅れたりなどして安定して転写できないということがあった。そこで、記録材を搬送する無端状の搬送ベルトに記録材を静電的に吸着させて2次転写部を通過させている。
【0004】
中間転写体から分離された記録材は、2次転写部を過ぎて記録材の搬送手段である搬送ベルトから分離される。記録材の剛度が極端に低くなってくると、搬送ベルトから分離することが困難になってくるため、記録材を搬送ベルトから分離する分離部に位置するローラ径を小さくすることが考えられる。この場合、分離性には有利になるけれども、曲率が大きくなることで、分離部での剥離放電が大きくなるため、記録材上のトナー像の配置を乱して画像不良を起こしてしまうという問題が生ずる。
【0005】
剥離放電は記録材の帯電している状態が、正もしくは負のどちらかに大きく片寄った状態にあるときに発生する。そこで、この剥離電荷を抑えるために、分離部にコロナ帯電器を配置して、剥離放電の原因となる電荷を除去することが知られる(特許文献1)。
【0006】
これとは別に、トナーの帯電量としてトナーの単位質量当たりの電荷量によってトナー層電位が変化することを考慮し、検知したトナー帯電量に応じて転写前帯電手段の放電電極への印加電圧を制御することが知られる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−3731号公報
【特許文献2】特開2006−251288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特許文献1に係る装置の更なる改善に関する。その目的は、剛度の低い薄記録材などの記録材であっても、トナーが持つ電荷をなくすことによる画像不良を発生させることなく、剥離放電を減ずる方向に搬送ベルトから分離できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係わる画像形成装置の代表的な構成は、像担持体と、前記像担持体に電荷を保持したトナーを用いて画像を形成する作像手段と、複数の張架部材に張架されて循環移動される可撓性を有する無端状のベルトであって、記録材を担持して搬送するベルトと、前記ベルトを介して前記像担持体と転写ニップ部を形成する転写部材と、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側において記録材に電荷を供給して記録材を前記ベルトに吸着させる吸着手段と、を有し、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向下流側において前記ベルトから前記記録材を分離させる画像形成装置において、前記トナーが保持する電荷量を検知する検知手段と、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量に応じて前記吸着手段で前記記録材に供給する電荷量を制御する制御手段と、を有する。
【0010】
また、像担持体と、前記像担持体に電荷を保持したトナーを用いて画像を形成する作像手段と、複数の張架部材に張架されて循環移動される可撓性を有する無端状のベルトであって、記録材を担持して搬送するベルトと、前記ベルトを介して前記像担持体と転写ニップ部を形成する転写部材と、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側において記録材に電荷を供給して記録材を前記ベルトに吸着させる吸着手段と、を有し、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向下流側において前記ベルトから前記記録材を分離させる画像形成装置において、前記トナーが保持する電荷量を検知する検知手段と、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側にあって前記吸着手段とは別に設けられる第2手段と、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量に応じて前記第2手段で前記記録材に供給する電荷量を制御する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、剛度の低い薄記録材などの記録材であってもトナーが持つ電荷をなくすことによる画像不良を発生させることなく、剥離放電を減ずる方向に搬送ベルトから分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す図である。
【図2】(a)は記録材が厚記録材である場合のベルトからの分離ができることを示す図、(b)は記録材が薄記録材である場合のベルトからの分離ができないことを示す図である。
【図3】現像時のトナーの挙動を示す図である。
【図4】トナーの保持量が大きい場合であって、(a)は比較例における電荷分布の説明図、(b)は第1の実施形態の電荷分布の説明図である。
【図5】トナーの保持量が小さい場合であって、(a)は比較例における電荷分布の説明図、(b)は第1の実施形態の電荷分布の説明図である。
【図6】第1の実施形態のブロック図である。
【図7】第1の実施形態のフローチャートを示す図である。
【図8】第1の実施形態に関する、トナーの単位質量あたりの電荷量と吸着バイアスによる剥離放電の発生状態を示す図である。
【図9】第2の実施形態を示す図である。
【図10】トナーの保持量が大きい場合であって、(a)は比較例における電荷分布の説明図、(b)は第2の実施形態の電荷分布の説明図である。
【図11】トナーの保持量が小さい場合であって、(a)は比較例における電荷分布の説明図、(b)は第2の実施形態の電荷分布の説明図である。
【図12】第2の実施形態のフローチャートを示す図である。
【図13】第2の実施形態に関する、トナーの単位質量あたりの電荷量と吸着バイアスによる剥離放電の発生状態を示す図である。
【図14】第3の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一又は対応する部分には同一の符号を付す。
【0014】
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
(感光ドラムにおける像形成)
図1は第1の実施形態に係る画像形成装置の説明図である。有彩色トナーのイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)とブラック(k)トナーに対応し、感光ドラム(潜像担持体)として1Y、1M、1C、1kが設けられる。
【0015】
感光ドラム1は、矢印Aの方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電手段2により感光ドラム1の周面が所定の極性、電位に帯電される(一次帯電)。画像露光手段3としてのレーザビームスキャナーは、不図示のイメージスキャナー、コンピュータ等の外部機器から入力される画像情報に対応してオン/オフ変調したレーザ光を出力して、ドラム1上の帯電処理面を走査露光する。この走査露光により感光ドラム1面上に目的の画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0016】
Y、M、C、Bkの各色成分のトナーを内包する現像器4Y,4M,4C,4kがドラム1の近傍に配置され、画像情報に基づいて使用する現像器4を選択し感光ドラム1面上に現像剤(トナー)が現像され、静電潜像がトナー像として可視化される。静電潜像の露光部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。各現像器4内の単位質量あたりの電荷量は、−30uC/gを目標とし、現像器内の攪拌条件や、補給量を制御しているけれども、環境、トナーの補給タイミング等によって、−10〜−40uC/gの間で変動する。また、各色の単位面積当たりのトナー載り量は0.50〜0.65mg/cm2の間で制御されている。
【0017】
(感光ドラムから中間転写ベルトへの1次転写)
ドラム1に対し無端ベルト状の中間転写ベルト6を対向配置し、中間転写ベルト6の1回転毎にドラム1上の各色未定着トナー像を形成する。1次転写手段5により中間転写ベルト6上に順次静電的に一次転写することにより中間転写ベルト上に4色の未定着トナー像が重ね合わされたフルカラー画像を得る。一方、1次転写後の感光ドラム1の一回転毎に感光ドラム1表面はクリーニング装置11で転写残トナーのクリーニングを受け、繰り返し作像工程に入る。
【0018】
中間転写ベルト6は、複数の張架ローラ20、21、22に張架されて矢印Gの方向へ250〜300mm/secで回動するようになっている。本実施形態では、張架ローラ20は中間転写ベルト6の張力を一定に制御するようにしたテンションローラ、張カローラ21は上流側2次転写ローラ用の対向ローラ、張架ローラ22は中間転写ベルト6の駆動ローラである。
【0019】
中間転写ベルト6としては、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂または各種ゴム等に帯電防止剤としてカーボンブラックを適当量含有させ、その体積抵抗率を1E+9〜1E+14[Ω・cm]、厚みを0.07〜0.1[mm]としたものを用いている。
【0020】
(中間転写ベルトから記録材への2次転写)
転写ニップNでの転写部材としての2次転写ローラ9には、所定の値に制御された定電圧バイアス(転写バイアス)が電源部13より印加される。2次転写ローラ9にはトナーと逆極性の転写バイアスが印加されることで、2次転写部位にて中間転写ベルト6上に重ね合わされた4色のフルカラー画像を記録材Pへ一括転写して、記録材P上にフルカラーの未定着トナー像が形成される。2次転写電流としては、+30〜60uAであり、2次転写電流が変化するのは、記録材である記録材の乾燥状態、環境、転写するトナーの電荷量や載り量等の要因によって、必要な電流量が変化するためである。
【0021】
2次転写ローラ9は張架ローラ21の対向に配置され、中間転写ベルト6と接離可能になっている。中間転写ベルト6上に未定着トナー像が重ねられている間は接触させず、重ね終わり記録材Pに2次転写する際に接触させて当接ニップを形成して2次転写部位を形成する。
【0022】
供給バイアスが可変な2次転写用高圧の電源13が取り付けられている2次転写ローラ9は、イオン導電系発泡ゴム(NBRゴム)の弾性層と芯金からなる。そして、2次転写ローラ9は外径が16mm,ローラ表面粗さRz=6.0〜12.0(μm)、長手方向の幅が340mm、抵抗値がN/N(23℃、50%RH)測定で、2kV印加の条件で1E+5〜1E+7Ωである。
【0023】
2次転写ローラ9で転写された後に、記録材Pと分離した中間転写ベルト6は、クリーニング装置12により転写残トナーや記録材粉等がクリーニングされ、繰り返し作像工程に入る。
【0024】
(記録材の搬送ベルトへの吸着)
不図示の給紙カセットには、記録材Pとして記録紙が収納されており、給紙スタート信号に基づいて不図示の給紙ローラが駆動され、給紙カセット内の記録材Pが1枚ずつ給紙され、レジストローラ8により矢印Bの向きに搬送される。レジストローラ8で搬送された記録材Pは、先ず搬送ベルト24の張架ローラ25とバイアスが印加された吸着ローラ28で狭持されることで搬送ベルト24に吸着される。
【0025】
吸着後、中間転写ベルト6上のトナー像の先端部が2次転写部位に到達するタイミングと同期するようにしてレジストローラ8で記録材Pの搬送を制御して記録紙を送っていく。
【0026】
吸着に関しては、吸着バイアス印加手段30により、定電流制御された吸着バイアスは−15〜−30μAの電流を流す。吸着バイアス印加手段30で印加する吸着バイアスは、吸着バイアス制御手段50によって制御されていて、その関係を示しているのが図6に示すブロック図である。すなわち、ユーザー操作部40で指定された記録材サイズ情報、印刷モード、現像器4の電流計4Aで検知された現像電流、パッチ検用のパッチセンサー17で検知された濃度情報に基づいて、吸着バイアス印加手段30に印加する吸着バイアスが決定されている。
【0027】
吸着ローラ28は、搬送ベルト24の内側に配置されたローラ25と外側に配置されたローラの一対で構成される。搬送ベルト24の内側に配置されたローラは、イオン導電系ソリッドゴム(NBRゴム)の弾性層と芯金からなる。そして、外径が18mm,抵抗値がN/N(23℃、50%RH)測定で、50V印加の条件で1E+5〜1E+6Ωとなるゴムローラである。搬送ベルト24の外側に配置されたローラは、ファーブラシローラで、搬送ベルト24に1.5〜2mm侵入している。そして、毛長5mm芯金径8mmで外径18mm、抵抗値がN/N(23℃、50%RH)測定の100V印加で1E+5〜1E+6Ωのものを使用した。
【0028】
搬送ベルト24は、複数の張架部材に張架されて循環移動される可撓性を有する無端状のベルトであって、記録材Pを担持して搬送する。即ち、搬送ベルト24は、複数の張架ローラ25、26、27に張架されて矢印Bの方向へ250〜300mm/secで回動するようになっている。本実施形態では、張架ローラ26が搬送ベルト24から記録材Pを分離する分離部に位置する分離張架ローラとなっている。また、搬送ベルト24として、引っ張り試験法(JIS K 6301)で測定したヤング率の値が10MPa以下となるような弾性体のものを用いている。
【0029】
(記録材の搬送ベルトからの分離)
転写ニップ部Nを通過した記録材Pは、転写ニップ部Nよりもベルト搬送方向下流側の張架ローラ26まで搬送される。そして、更に下流側の分離爪29で搬送ベルト24から記録材Pは分離されて、不図示の定着装置に搬送導入され、トナー像の加熱加圧定着工程を受け、その後に装置外へ排出される。
【0030】
記録材が厚い記録材の場合、図2(a)に示すように分離爪29により記録材Pは搬送ベルト24から分離され易い。しかし、記録材Pが薄い記録材の場合、図2(b)に示すように、分離爪29によっては記録材Pは搬送ベルト24から分離され難い。この場合、分離張架ローラ26の径を小さくし曲率を大きく採ることで分離し易くする。分離張架ローラ26は、SUS製で、外径が16mmのローラとなっている。
【0031】
ここで、分離を補助するための手段として、分離張架ローラ26の下流に設けられる分離爪29の他に、分離張架ローラ26の上流で搬送ベルト24の裏面に、分離補助コロを設けても良い。
【0032】
(トナーの保持する電荷量の検知)
検知の手法としては特許文献2に知られるが、図3に現像時のトナーの挙動を示す。像担持体ZT(感光ドラム1)上の静電潜像を現像して像担持体ZT上にトナー像を形成する現像においては、現像器4の現像スリーブGSに電源Eにより現像バイアス電圧が印加される。そして現像工程においては、電荷(図3では負電荷)を担持するトナーTが現像スリーブGSから像担持体ZTに移動することにより、バイアス電圧印加回路に現像電流が流れる。
【0033】
即ち、各色現像器4Y〜4K内にはトナーを感光ドラム1Y〜1Kへ現像する際の現像電流を検知する現像電流計が備えられており、現像スリーブGSから像担持体ZTへはトナーTの移動によってのみ電流が流れるので、電流計により現像電流を測定する。
【0034】
また、像担持体ZTに付着したトナーの量(質量)を計測することにより、単位質量のトナーが有する電荷量(いわゆるトリボ)である帯電量qを検知する。
【0035】
即ち、単位質量のトナーが有する電荷量qは、所定面積S、単位面積当たりのトナー付着量Mのトナー像を形成したときの現像電流Iを時間積分して検知することにより、次の式から算出される。
【0036】
I=dQ/dt、Q=q×M×S
具体的には、画像露光手段3を駆動して、感光ドラム1上にある決められた面積を持つベタ画像からなるパッチ画像の静電潜像を形成する。ここで静電潜像を現像器4で現像するときの現像電流値を検知することにより、単位面積あたりのトナー電荷量(q×M)を算出できる。
【0037】
ここで、濃度センサの検知結果を現像器4の現像バイアス電流にフィードバックして、濃度センサの出力が一定になるように、現像バイアス電流を制御し、所定濃度のトナー像が形成されたときの現像電流Iを電流計で計測していくものとする。
【0038】
また、現像したトナー像を中間転写体6に転写したときの、中間転写体6上のトナー像の濃度を濃度センサで検知し、単位面積あたりのトナー載り量を算出する。
【0039】
単位面積あたりのトナー電荷量を、単位面積あたりのトナー載り量で除算すれば、トナーの保持電荷量として単位質量あたりの電荷量であるトリボが求められる。
表1は、平均的な現像電流Iと単位質量のトナーが有する電荷量であるトナー帯電量qとの関係を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
トナー帯電量qは、温度や湿度等の環境、現像剤及びトナーの使用履歴、画像形成条件等により変化するが、表1に示す単位質量のトナーが有する電荷量であるトナー帯電量qは、次の現像条件でトナー像を形成することにより検知されたものである。
トナー・・・・・6.5μm、シアントナー(比重1.1)
トナー像・・・・・幅50mm×長さ10mm(形成時間0.2sec)
トナー付着量・・・・・6g/平方m
感光ドラム速度・・・・・220mm/sec
(トナーの保持する電荷量と吸着バイアス)
トナーの保持する電荷量が変化すると、記録材上の電荷バランスが変化して、時には搬送ベルト24での分離部で剥離放電が起きて記録材上のトナー画像が乱れてしまう。そこで、トナーの電荷量が大きくなる場合、電荷のバランスが負の方向へいくため、トナーと逆極性のバイアスが増える方向へ吸着バイアス印加して記録材上の電荷バランスを保つことが考えられる。ここで、トナーのトリボ(トナーの単位質量あたりの電荷量)が大きいほど、ユーザーが指定する印刷モードとしてトナーの最大載り量が大きくなる場合は、吸着バイアスの値を大きくする。
【0042】
吸着電流テーブルを表2に示す。図4(a)で示されるように、トナーの保持電荷量が大きくなればなるほど、2次転写後、トナーも含めた記録材上の電荷量が負になりやすくなる。それによって、搬送ベルト分離時に、負に帯電した記録材の極性を緩和するような剥離放電が生じて画像不良を発生させてしまう。そこで、所定基準値に対してトナーの保持する電荷量が大きくなるときは、あらかじめトナーと逆極性のバイアスが増える方向へ吸着バイアス印加手段30で記録材へ供給する電荷を制御しておく。これにより、搬送ベルト24から記録材が分離するとき、トナーが載った状態でも、記録材は図4(b)で示されるように、電荷的にバランスの取れた状態になる。そのため、分離時の剥離放電が緩和され、剥離放電によって生じていた画像不良が抑制される。
【0043】
逆にトナーの保持電荷量が小さいときは、図5(a)で示されるように、トナーを含めても2次転写後の記録材上の電荷量が正になりやすく、正に帯電した記録材の極性を緩和するような剥離放電が生じて画像不良を発生させてしまう。そこで、所定基準値に対してトナーの保持する電荷量が小さくなるときは、図5(b)で示されるように、あらかじめトナーと逆極性のバイアスが減る方向へ吸着バイアス印加手段30で記録材へ供給する電荷を制御しておく。これにより、搬送ベルト24から記録材が分離するとき、トナーが載った状態でも、記録材は電荷的にバランスの取れた状態になるため、分離時の剥離放電が緩和され、剥離放電によって生じていた画像不良が抑制される。
【0044】
【表2】
上述のような、単位質量あたりの電荷量と吸着バイアスによる剥離放電の発生状態を示しているのが図8である。すなわち、図8の白地部で示される領域に入っていれば、記録材Pが搬送ベルト24から分離するときの放電が抑えられるため、トナーの単位質量あたりの電荷量に応じて必要な吸着バイアスを印加する。図8で示した関係は、記録材Pの記録材幅が236〜267mmのときの関係である。記録材幅が大きくなれば、吸着ローラ対でインピーダンスの小さい部分にもれる電流が小さくて済むため、同じ単位質量あたりの電荷量を持っていても、吸着電流は小さくなる。このため、トナーの単位質量あたりの電荷量と、記録材幅によって、決まる吸着バイアスの値は表1で示されるマトリクスになる。
【0045】
ここで、吸着バイアス制御回路50が吸着バイアスを決定するフローの詳細を図7に示す。先ずユーザーがユーザー操作部40で紙サイズを選択する。次に現像器4の現像電流計で現像電流を計測してトナーの電荷量を算出する。そして、パッチセンサー17を用いたトナーのパッチ濃度計測からトナー載り量を算出する。ここで、トナーの電荷量とトナー載り量から、トナーのトリボ(単位質量あたりの電荷量)を算出する。次に、ユーザーがユーザー操作部40でフルカラー画像形成、あるいは単色画像形成かという印刷モードを選択すると、トナー像の最大載り量が200%の場合(フルカラー画像形成)には吸着電流テーブルから吸着電流を導出する。200%以外の場合(例えば単色画像形成)はトナー像の載り量に応じて単位質量あたりの電荷量情報を変換し吸着電流テーブルから吸着電流を導出する。即ち、フルカラー画像形成以外のモードでは、記録材上に載せられるトナー載り量によって、トナー像の単位面積あたりの電荷量がフルカラー画像形成時にどの程度変化をしているかを求め、それに応じて吸着電荷量を制御している。
【0046】
本実施形態で、トナーの電荷量情報として、トリボ(トナーの単位質量あたりの電荷量)を求めているのは以下の理由による。トナー像の濃度諧調は、ある濃度のドットの密度を変えることで行っている。そのため、トナー像が密集した画像のときも、まばらにトナー像が配置されたハーフトーン画像のときも個々のドット領域の単位面積当たりの電荷はほとんど変わらない。
【0047】
ここで、トナーがある一定の電荷量を持つと仮定し、画像比率から画像域全体の電荷量を計算して、それに応じて吸着電荷量を制御する方式を考える。この方式では、ハーフトーン画像のように画像域全体の電荷量としては小さいが、個々のドット画像では十分な電荷を持っている場合に、画像が載っている領域で電荷量のバランスが崩れ剥離放電が起きてしまうことがある。そのため、ドット画像が載っている領域の単位面積あたりの電荷量を求め、それに対してバランスが取れる電荷量を画像比率に関わらず全面に供給するようにしている。
【0048】
本実施形態では、トナーの保持電荷量として、単位質量あたりの電荷量を求めている。これは画像作成モードによって、記録材上のトナーの最大載り量が変化し、それに応じて記録材上のトナー像の単位面積あたりの電荷量も変化してしまうことを考慮しているからである。すなわち、本実施形態では、フルカラー画像形成時に記録材へ転写するトナー像の最大の載り量は、最大2次色画像で200%のトナー載り量に相当する1.2mg/cm2のトナー載り量が転写されることを想定している。
【0049】
しかし、単色画像形成時やトナー量低消費モードが存在して、トナー像の最大載り量はそれより少なくなり、これによって単位面積あたりの電荷量も変わってくる。このため、電荷のバランスを取るため吸着バイアス供給手段30で供給する電荷量も変化する必要が生じる。
【0050】
表2で示したマトリクスは、フルカラー画像形成時に最大トナー載り量が200%となることを想定している。他の画像形成モードでは、記録材上に載せられるトナー載り量によって、トナー像の単位面積あたりの電荷量がフルカラー画像形成時にどの程度変化をしているかを求め、それに応じて吸着電荷量を制御している。例えば単色画像形成時には、トナー像の単位面積あたりの電荷量はフルカラー画像形成時に比べて半分になるため、検知された単位質量あたりの電荷量を半分にした値を表1のマトリクスに当てはめて、吸着バイアスを決定する。
【0051】
《第2の実施形態》
第1の実施形態において、吸着バイアス印加手段30で記録材に供給する電荷量は、トナーが保持する電荷量のみに応じて切り替えていた。本実施形態においては、2次転写後の記録材上の電荷量は、2次転写時に印加される2次転写バイアスによっても変化することを踏まえ、トナーが保持する電荷量と2次転写電流に応じて、吸着電流量を制御する。
【0052】
図9は第2実施形態の画像形成装置の構成の説明図である。本実施形態でもトナーの保持電荷量として、単位質量あたりの電荷量を検知している。そして、吸着バイアス電荷量制御回路50は図12で示されるフローに従って、吸着バイアス印加手段30を制御する。図7に示されたフローに対し、以下の点が異なる。即ち、先ずユーザーがユーザー操作部40で紙坪量を選択し、次に環境センサー41で湿度情報を取得した後に、2次転写電流テーブルから2次転写電流値を導出する。その後のフローは図7に示されたものと同様である。
【0053】
すなわち、検知されたトナーの単位質量あたりの電荷量と2次転写バイアスで印加する2次転写電流値から、表3で示される吸着電流テーブルを参照して、吸着バイアス印加手段30に印加する吸着バイアスを決定している。トナーと逆極性の2次転写電流値が大きいほど、吸着バイアス印加手段によって印加する電流量は小さく、検知されたトナーの単位質量あたりの電荷量が大きいほど吸着バイアスの値は大きくなっている。そして、第1の実施形態に比べ、本実施形態では吸着バイアスの値は概して小さくなっている。
【0054】
ここで、2次転写電流値に関しては、表4で示されるように、環境センサー41によって検知される湿度など環境情報、及びユーザー操作部40でユーザーが指定する記録材坪量情報によって、2次転写電流テーブルに従って電流値が印加されるようになっている。
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
ここで、表3に示す吸着電流テーブルのように、トナーの単位質量あたりの電荷量に応じて吸着バイアスを制御する意味を詳述する。2次転写電流によって記録材に供給された正の電荷より、トナーが保持する負の電荷量が大きくなればなるほど、2次転写後、図10(a)で示されるようにトナーも含めた記録材上の電荷量が負になりやすい。そして、搬送ベルトからの分離時に、負に帯電した記録材の極性を緩和するような剥離放電が生じて画像不良を発生させてしまう。そこで、2次転写電流量に関連して、所定基準値に対してトナーの保持する電荷量が大きくなるときは、あらかじめトナーと逆極性のバイアスが増える方向へ吸着バイアス印加手段30で記録材へ供給する電荷を制御しておく。これにより、搬送ベルト24から記録材が分離するとき、トナーが載った状態でも、記録材は図10(b)で示されるように、電荷的にバランスの取れた状態になるため、分離時の剥離放電が緩和され、剥離放電によって生じていた画像不良が抑制される。逆に2次転写電流によって記録材に供給された正の電荷よりトナーの保持電荷量が小さいときは、図11(a)で示されるように、トナーを含めても2次転写後の記録材上の電荷量が正になりやすい。そして、正に帯電した記録材の極性を緩和するような剥離放電が生じて画像不良を発生させてしまう。そこで、所定基準値に対してトナーの保持電荷量が小さくなるときは、図11(b)で示されるように、あらかじめトナーと逆極性のバイアスが減る方向へ吸着バイアス印加手段30で記録材へ供給する電荷を制御しておく。これにより、搬送ベルト24から記録材が分離するとき、トナーが載った状態でも、記録材は電荷的にバランスの取れた状態になるため、分離時の剥離放電が緩和され、剥離放電によって生じていた画像不良が抑制される。
【0057】
上述のようなトナーのトリボ(単位質量あたりの電荷量)と吸着バイアスによる剥離放電の発生状態を示しているのが図13である。すなわち、図13の白地部で示される領域に入っていれば、記録材Pが搬送ベルト24から分離するときの放電が抑えられる。このため、トナーの単位質量あたりの電荷量に応じて必要な吸着バイアスを印加する。図13で示した関係は、2次転写電流が40〜50μAのときの関係である。2次転写電流が大きくなれば、記録材Pに供給される正の電荷量が増えるため、同じ単位質量あたりの電荷量を持っていても、吸着電流は小さくて済む。このため、トナーの単位質量あたりの電荷量と、2次転写電流量で決まる吸着バイアスの値は表3で示されるマトリクスになる。
【0058】
《第3の実施形態》
本実施形態は、第1の実施形態あるいは第2の実施形態と比べ、吸着ローラとは別に設けられる第2手段で記録材に供給する電荷量を制御する点が異なる。即ち、図14に示すように、吸着ローラ28の他に搬送ローラ100が転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側に設けられる。記録材は、吸着ローラ28で搬送ベルトに吸着されるが、記録材への電荷量制御は吸着ローラで行われず、搬送ローラ100で行われる。
【0059】
(変形例)
上記実施形態では、感光ドラム1に形成されるトナー画像を中間転写ベルト6に1次転写し、中間転写ベルトに形成されるトナー画像を記録材Pに2次転写することを述べたが、感光ドラム1に形成されるトナー画像を直接記録材Pに転写しても良い。
【0060】
また、トナーが保持する電荷量に関し、第1の像担持体としての感光ドラム1に関連した現像器4内で検知するとしたが、第2の像担持体としての中間転写ベルト6に関連して検知するようにしても良い。
【0061】
また、トナーが保持する電荷量を検知することに関し、モノクロ画像形成装置で単色画像形成時のみの場合には、トナーの単位質量あたりの電荷量を検知する他に、単位面積あたりの電荷量を検知するようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1・・感光ドラム、2・・1次帯電器、3・・露光装置、4・・現像器、5・・1次転写ローラ、6・・中間搬送ベルト、8・・レジストローラ、9・・2次転写ローラ、
11・・ドラムクリーニング装置、12・・ベルトクリーニング装置、13・・2次転写高圧電源、17・・パッチセンサー、20・・テンションローラ、21・・2次転写ローラの対向ローラ、22・・駆動ローラ、24・・搬送ベルト、28・・吸着ローラ、29・・分離爪、30・・吸着バイアス印加手段、40・・ユーザー操作部、
50・・吸着バイアス制御回路、P・・記録材、N・・転写ニップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に潜像を形成し潜像をトナー(現像剤)を用いて顕像化する画像形成装置であって、記録材(例えば、記録材、OHPシート)として剛度の低い薄記録材などの記録材であっても安定して高画質な画像を提供することのできる画像形成装置に関する。特に、電子写真方式を採用し、記録材上に画像を形成する複写機やプリンタ(例えばレーザプリンタ、LEDプリンタ)等の画像形成装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で、各色毎に設けられた像担持体上に形成された各色トナー像を中間搬送ベルト等の中間転写体に順次1次転写して重ね合わせた多色トナー像を形成し、記録材に一括して2次転写するカラー画像形成装置が実用化されている。中間転写体を用いることにより、状態が変わりやすい記録材に転写を行う工程が1回で済むことから安定した画像形成を行うことが可能となっている。多色トナー像が2次転写された記録材は、その後中間転写体から分離される。
【0003】
ここで、記録材に関して、近年、画像形成装置の用途拡大に伴って、薄い記録材等、剛性の低い記録材への対応が求められている。剛度の低い薄記録材などは2次転写工程までに、記録材先端のカール条件やガイドとの摺擦により記録材先端が変形・遅れたりなどして安定して転写できないということがあった。そこで、記録材を搬送する無端状の搬送ベルトに記録材を静電的に吸着させて2次転写部を通過させている。
【0004】
中間転写体から分離された記録材は、2次転写部を過ぎて記録材の搬送手段である搬送ベルトから分離される。記録材の剛度が極端に低くなってくると、搬送ベルトから分離することが困難になってくるため、記録材を搬送ベルトから分離する分離部に位置するローラ径を小さくすることが考えられる。この場合、分離性には有利になるけれども、曲率が大きくなることで、分離部での剥離放電が大きくなるため、記録材上のトナー像の配置を乱して画像不良を起こしてしまうという問題が生ずる。
【0005】
剥離放電は記録材の帯電している状態が、正もしくは負のどちらかに大きく片寄った状態にあるときに発生する。そこで、この剥離電荷を抑えるために、分離部にコロナ帯電器を配置して、剥離放電の原因となる電荷を除去することが知られる(特許文献1)。
【0006】
これとは別に、トナーの帯電量としてトナーの単位質量当たりの電荷量によってトナー層電位が変化することを考慮し、検知したトナー帯電量に応じて転写前帯電手段の放電電極への印加電圧を制御することが知られる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−3731号公報
【特許文献2】特開2006−251288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特許文献1に係る装置の更なる改善に関する。その目的は、剛度の低い薄記録材などの記録材であっても、トナーが持つ電荷をなくすことによる画像不良を発生させることなく、剥離放電を減ずる方向に搬送ベルトから分離できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係わる画像形成装置の代表的な構成は、像担持体と、前記像担持体に電荷を保持したトナーを用いて画像を形成する作像手段と、複数の張架部材に張架されて循環移動される可撓性を有する無端状のベルトであって、記録材を担持して搬送するベルトと、前記ベルトを介して前記像担持体と転写ニップ部を形成する転写部材と、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側において記録材に電荷を供給して記録材を前記ベルトに吸着させる吸着手段と、を有し、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向下流側において前記ベルトから前記記録材を分離させる画像形成装置において、前記トナーが保持する電荷量を検知する検知手段と、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量に応じて前記吸着手段で前記記録材に供給する電荷量を制御する制御手段と、を有する。
【0010】
また、像担持体と、前記像担持体に電荷を保持したトナーを用いて画像を形成する作像手段と、複数の張架部材に張架されて循環移動される可撓性を有する無端状のベルトであって、記録材を担持して搬送するベルトと、前記ベルトを介して前記像担持体と転写ニップ部を形成する転写部材と、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側において記録材に電荷を供給して記録材を前記ベルトに吸着させる吸着手段と、を有し、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向下流側において前記ベルトから前記記録材を分離させる画像形成装置において、前記トナーが保持する電荷量を検知する検知手段と、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側にあって前記吸着手段とは別に設けられる第2手段と、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量に応じて前記第2手段で前記記録材に供給する電荷量を制御する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、剛度の低い薄記録材などの記録材であってもトナーが持つ電荷をなくすことによる画像不良を発生させることなく、剥離放電を減ずる方向に搬送ベルトから分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す図である。
【図2】(a)は記録材が厚記録材である場合のベルトからの分離ができることを示す図、(b)は記録材が薄記録材である場合のベルトからの分離ができないことを示す図である。
【図3】現像時のトナーの挙動を示す図である。
【図4】トナーの保持量が大きい場合であって、(a)は比較例における電荷分布の説明図、(b)は第1の実施形態の電荷分布の説明図である。
【図5】トナーの保持量が小さい場合であって、(a)は比較例における電荷分布の説明図、(b)は第1の実施形態の電荷分布の説明図である。
【図6】第1の実施形態のブロック図である。
【図7】第1の実施形態のフローチャートを示す図である。
【図8】第1の実施形態に関する、トナーの単位質量あたりの電荷量と吸着バイアスによる剥離放電の発生状態を示す図である。
【図9】第2の実施形態を示す図である。
【図10】トナーの保持量が大きい場合であって、(a)は比較例における電荷分布の説明図、(b)は第2の実施形態の電荷分布の説明図である。
【図11】トナーの保持量が小さい場合であって、(a)は比較例における電荷分布の説明図、(b)は第2の実施形態の電荷分布の説明図である。
【図12】第2の実施形態のフローチャートを示す図である。
【図13】第2の実施形態に関する、トナーの単位質量あたりの電荷量と吸着バイアスによる剥離放電の発生状態を示す図である。
【図14】第3の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一又は対応する部分には同一の符号を付す。
【0014】
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
(感光ドラムにおける像形成)
図1は第1の実施形態に係る画像形成装置の説明図である。有彩色トナーのイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)とブラック(k)トナーに対応し、感光ドラム(潜像担持体)として1Y、1M、1C、1kが設けられる。
【0015】
感光ドラム1は、矢印Aの方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電手段2により感光ドラム1の周面が所定の極性、電位に帯電される(一次帯電)。画像露光手段3としてのレーザビームスキャナーは、不図示のイメージスキャナー、コンピュータ等の外部機器から入力される画像情報に対応してオン/オフ変調したレーザ光を出力して、ドラム1上の帯電処理面を走査露光する。この走査露光により感光ドラム1面上に目的の画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0016】
Y、M、C、Bkの各色成分のトナーを内包する現像器4Y,4M,4C,4kがドラム1の近傍に配置され、画像情報に基づいて使用する現像器4を選択し感光ドラム1面上に現像剤(トナー)が現像され、静電潜像がトナー像として可視化される。静電潜像の露光部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。各現像器4内の単位質量あたりの電荷量は、−30uC/gを目標とし、現像器内の攪拌条件や、補給量を制御しているけれども、環境、トナーの補給タイミング等によって、−10〜−40uC/gの間で変動する。また、各色の単位面積当たりのトナー載り量は0.50〜0.65mg/cm2の間で制御されている。
【0017】
(感光ドラムから中間転写ベルトへの1次転写)
ドラム1に対し無端ベルト状の中間転写ベルト6を対向配置し、中間転写ベルト6の1回転毎にドラム1上の各色未定着トナー像を形成する。1次転写手段5により中間転写ベルト6上に順次静電的に一次転写することにより中間転写ベルト上に4色の未定着トナー像が重ね合わされたフルカラー画像を得る。一方、1次転写後の感光ドラム1の一回転毎に感光ドラム1表面はクリーニング装置11で転写残トナーのクリーニングを受け、繰り返し作像工程に入る。
【0018】
中間転写ベルト6は、複数の張架ローラ20、21、22に張架されて矢印Gの方向へ250〜300mm/secで回動するようになっている。本実施形態では、張架ローラ20は中間転写ベルト6の張力を一定に制御するようにしたテンションローラ、張カローラ21は上流側2次転写ローラ用の対向ローラ、張架ローラ22は中間転写ベルト6の駆動ローラである。
【0019】
中間転写ベルト6としては、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂または各種ゴム等に帯電防止剤としてカーボンブラックを適当量含有させ、その体積抵抗率を1E+9〜1E+14[Ω・cm]、厚みを0.07〜0.1[mm]としたものを用いている。
【0020】
(中間転写ベルトから記録材への2次転写)
転写ニップNでの転写部材としての2次転写ローラ9には、所定の値に制御された定電圧バイアス(転写バイアス)が電源部13より印加される。2次転写ローラ9にはトナーと逆極性の転写バイアスが印加されることで、2次転写部位にて中間転写ベルト6上に重ね合わされた4色のフルカラー画像を記録材Pへ一括転写して、記録材P上にフルカラーの未定着トナー像が形成される。2次転写電流としては、+30〜60uAであり、2次転写電流が変化するのは、記録材である記録材の乾燥状態、環境、転写するトナーの電荷量や載り量等の要因によって、必要な電流量が変化するためである。
【0021】
2次転写ローラ9は張架ローラ21の対向に配置され、中間転写ベルト6と接離可能になっている。中間転写ベルト6上に未定着トナー像が重ねられている間は接触させず、重ね終わり記録材Pに2次転写する際に接触させて当接ニップを形成して2次転写部位を形成する。
【0022】
供給バイアスが可変な2次転写用高圧の電源13が取り付けられている2次転写ローラ9は、イオン導電系発泡ゴム(NBRゴム)の弾性層と芯金からなる。そして、2次転写ローラ9は外径が16mm,ローラ表面粗さRz=6.0〜12.0(μm)、長手方向の幅が340mm、抵抗値がN/N(23℃、50%RH)測定で、2kV印加の条件で1E+5〜1E+7Ωである。
【0023】
2次転写ローラ9で転写された後に、記録材Pと分離した中間転写ベルト6は、クリーニング装置12により転写残トナーや記録材粉等がクリーニングされ、繰り返し作像工程に入る。
【0024】
(記録材の搬送ベルトへの吸着)
不図示の給紙カセットには、記録材Pとして記録紙が収納されており、給紙スタート信号に基づいて不図示の給紙ローラが駆動され、給紙カセット内の記録材Pが1枚ずつ給紙され、レジストローラ8により矢印Bの向きに搬送される。レジストローラ8で搬送された記録材Pは、先ず搬送ベルト24の張架ローラ25とバイアスが印加された吸着ローラ28で狭持されることで搬送ベルト24に吸着される。
【0025】
吸着後、中間転写ベルト6上のトナー像の先端部が2次転写部位に到達するタイミングと同期するようにしてレジストローラ8で記録材Pの搬送を制御して記録紙を送っていく。
【0026】
吸着に関しては、吸着バイアス印加手段30により、定電流制御された吸着バイアスは−15〜−30μAの電流を流す。吸着バイアス印加手段30で印加する吸着バイアスは、吸着バイアス制御手段50によって制御されていて、その関係を示しているのが図6に示すブロック図である。すなわち、ユーザー操作部40で指定された記録材サイズ情報、印刷モード、現像器4の電流計4Aで検知された現像電流、パッチ検用のパッチセンサー17で検知された濃度情報に基づいて、吸着バイアス印加手段30に印加する吸着バイアスが決定されている。
【0027】
吸着ローラ28は、搬送ベルト24の内側に配置されたローラ25と外側に配置されたローラの一対で構成される。搬送ベルト24の内側に配置されたローラは、イオン導電系ソリッドゴム(NBRゴム)の弾性層と芯金からなる。そして、外径が18mm,抵抗値がN/N(23℃、50%RH)測定で、50V印加の条件で1E+5〜1E+6Ωとなるゴムローラである。搬送ベルト24の外側に配置されたローラは、ファーブラシローラで、搬送ベルト24に1.5〜2mm侵入している。そして、毛長5mm芯金径8mmで外径18mm、抵抗値がN/N(23℃、50%RH)測定の100V印加で1E+5〜1E+6Ωのものを使用した。
【0028】
搬送ベルト24は、複数の張架部材に張架されて循環移動される可撓性を有する無端状のベルトであって、記録材Pを担持して搬送する。即ち、搬送ベルト24は、複数の張架ローラ25、26、27に張架されて矢印Bの方向へ250〜300mm/secで回動するようになっている。本実施形態では、張架ローラ26が搬送ベルト24から記録材Pを分離する分離部に位置する分離張架ローラとなっている。また、搬送ベルト24として、引っ張り試験法(JIS K 6301)で測定したヤング率の値が10MPa以下となるような弾性体のものを用いている。
【0029】
(記録材の搬送ベルトからの分離)
転写ニップ部Nを通過した記録材Pは、転写ニップ部Nよりもベルト搬送方向下流側の張架ローラ26まで搬送される。そして、更に下流側の分離爪29で搬送ベルト24から記録材Pは分離されて、不図示の定着装置に搬送導入され、トナー像の加熱加圧定着工程を受け、その後に装置外へ排出される。
【0030】
記録材が厚い記録材の場合、図2(a)に示すように分離爪29により記録材Pは搬送ベルト24から分離され易い。しかし、記録材Pが薄い記録材の場合、図2(b)に示すように、分離爪29によっては記録材Pは搬送ベルト24から分離され難い。この場合、分離張架ローラ26の径を小さくし曲率を大きく採ることで分離し易くする。分離張架ローラ26は、SUS製で、外径が16mmのローラとなっている。
【0031】
ここで、分離を補助するための手段として、分離張架ローラ26の下流に設けられる分離爪29の他に、分離張架ローラ26の上流で搬送ベルト24の裏面に、分離補助コロを設けても良い。
【0032】
(トナーの保持する電荷量の検知)
検知の手法としては特許文献2に知られるが、図3に現像時のトナーの挙動を示す。像担持体ZT(感光ドラム1)上の静電潜像を現像して像担持体ZT上にトナー像を形成する現像においては、現像器4の現像スリーブGSに電源Eにより現像バイアス電圧が印加される。そして現像工程においては、電荷(図3では負電荷)を担持するトナーTが現像スリーブGSから像担持体ZTに移動することにより、バイアス電圧印加回路に現像電流が流れる。
【0033】
即ち、各色現像器4Y〜4K内にはトナーを感光ドラム1Y〜1Kへ現像する際の現像電流を検知する現像電流計が備えられており、現像スリーブGSから像担持体ZTへはトナーTの移動によってのみ電流が流れるので、電流計により現像電流を測定する。
【0034】
また、像担持体ZTに付着したトナーの量(質量)を計測することにより、単位質量のトナーが有する電荷量(いわゆるトリボ)である帯電量qを検知する。
【0035】
即ち、単位質量のトナーが有する電荷量qは、所定面積S、単位面積当たりのトナー付着量Mのトナー像を形成したときの現像電流Iを時間積分して検知することにより、次の式から算出される。
【0036】
I=dQ/dt、Q=q×M×S
具体的には、画像露光手段3を駆動して、感光ドラム1上にある決められた面積を持つベタ画像からなるパッチ画像の静電潜像を形成する。ここで静電潜像を現像器4で現像するときの現像電流値を検知することにより、単位面積あたりのトナー電荷量(q×M)を算出できる。
【0037】
ここで、濃度センサの検知結果を現像器4の現像バイアス電流にフィードバックして、濃度センサの出力が一定になるように、現像バイアス電流を制御し、所定濃度のトナー像が形成されたときの現像電流Iを電流計で計測していくものとする。
【0038】
また、現像したトナー像を中間転写体6に転写したときの、中間転写体6上のトナー像の濃度を濃度センサで検知し、単位面積あたりのトナー載り量を算出する。
【0039】
単位面積あたりのトナー電荷量を、単位面積あたりのトナー載り量で除算すれば、トナーの保持電荷量として単位質量あたりの電荷量であるトリボが求められる。
表1は、平均的な現像電流Iと単位質量のトナーが有する電荷量であるトナー帯電量qとの関係を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
トナー帯電量qは、温度や湿度等の環境、現像剤及びトナーの使用履歴、画像形成条件等により変化するが、表1に示す単位質量のトナーが有する電荷量であるトナー帯電量qは、次の現像条件でトナー像を形成することにより検知されたものである。
トナー・・・・・6.5μm、シアントナー(比重1.1)
トナー像・・・・・幅50mm×長さ10mm(形成時間0.2sec)
トナー付着量・・・・・6g/平方m
感光ドラム速度・・・・・220mm/sec
(トナーの保持する電荷量と吸着バイアス)
トナーの保持する電荷量が変化すると、記録材上の電荷バランスが変化して、時には搬送ベルト24での分離部で剥離放電が起きて記録材上のトナー画像が乱れてしまう。そこで、トナーの電荷量が大きくなる場合、電荷のバランスが負の方向へいくため、トナーと逆極性のバイアスが増える方向へ吸着バイアス印加して記録材上の電荷バランスを保つことが考えられる。ここで、トナーのトリボ(トナーの単位質量あたりの電荷量)が大きいほど、ユーザーが指定する印刷モードとしてトナーの最大載り量が大きくなる場合は、吸着バイアスの値を大きくする。
【0042】
吸着電流テーブルを表2に示す。図4(a)で示されるように、トナーの保持電荷量が大きくなればなるほど、2次転写後、トナーも含めた記録材上の電荷量が負になりやすくなる。それによって、搬送ベルト分離時に、負に帯電した記録材の極性を緩和するような剥離放電が生じて画像不良を発生させてしまう。そこで、所定基準値に対してトナーの保持する電荷量が大きくなるときは、あらかじめトナーと逆極性のバイアスが増える方向へ吸着バイアス印加手段30で記録材へ供給する電荷を制御しておく。これにより、搬送ベルト24から記録材が分離するとき、トナーが載った状態でも、記録材は図4(b)で示されるように、電荷的にバランスの取れた状態になる。そのため、分離時の剥離放電が緩和され、剥離放電によって生じていた画像不良が抑制される。
【0043】
逆にトナーの保持電荷量が小さいときは、図5(a)で示されるように、トナーを含めても2次転写後の記録材上の電荷量が正になりやすく、正に帯電した記録材の極性を緩和するような剥離放電が生じて画像不良を発生させてしまう。そこで、所定基準値に対してトナーの保持する電荷量が小さくなるときは、図5(b)で示されるように、あらかじめトナーと逆極性のバイアスが減る方向へ吸着バイアス印加手段30で記録材へ供給する電荷を制御しておく。これにより、搬送ベルト24から記録材が分離するとき、トナーが載った状態でも、記録材は電荷的にバランスの取れた状態になるため、分離時の剥離放電が緩和され、剥離放電によって生じていた画像不良が抑制される。
【0044】
【表2】
上述のような、単位質量あたりの電荷量と吸着バイアスによる剥離放電の発生状態を示しているのが図8である。すなわち、図8の白地部で示される領域に入っていれば、記録材Pが搬送ベルト24から分離するときの放電が抑えられるため、トナーの単位質量あたりの電荷量に応じて必要な吸着バイアスを印加する。図8で示した関係は、記録材Pの記録材幅が236〜267mmのときの関係である。記録材幅が大きくなれば、吸着ローラ対でインピーダンスの小さい部分にもれる電流が小さくて済むため、同じ単位質量あたりの電荷量を持っていても、吸着電流は小さくなる。このため、トナーの単位質量あたりの電荷量と、記録材幅によって、決まる吸着バイアスの値は表1で示されるマトリクスになる。
【0045】
ここで、吸着バイアス制御回路50が吸着バイアスを決定するフローの詳細を図7に示す。先ずユーザーがユーザー操作部40で紙サイズを選択する。次に現像器4の現像電流計で現像電流を計測してトナーの電荷量を算出する。そして、パッチセンサー17を用いたトナーのパッチ濃度計測からトナー載り量を算出する。ここで、トナーの電荷量とトナー載り量から、トナーのトリボ(単位質量あたりの電荷量)を算出する。次に、ユーザーがユーザー操作部40でフルカラー画像形成、あるいは単色画像形成かという印刷モードを選択すると、トナー像の最大載り量が200%の場合(フルカラー画像形成)には吸着電流テーブルから吸着電流を導出する。200%以外の場合(例えば単色画像形成)はトナー像の載り量に応じて単位質量あたりの電荷量情報を変換し吸着電流テーブルから吸着電流を導出する。即ち、フルカラー画像形成以外のモードでは、記録材上に載せられるトナー載り量によって、トナー像の単位面積あたりの電荷量がフルカラー画像形成時にどの程度変化をしているかを求め、それに応じて吸着電荷量を制御している。
【0046】
本実施形態で、トナーの電荷量情報として、トリボ(トナーの単位質量あたりの電荷量)を求めているのは以下の理由による。トナー像の濃度諧調は、ある濃度のドットの密度を変えることで行っている。そのため、トナー像が密集した画像のときも、まばらにトナー像が配置されたハーフトーン画像のときも個々のドット領域の単位面積当たりの電荷はほとんど変わらない。
【0047】
ここで、トナーがある一定の電荷量を持つと仮定し、画像比率から画像域全体の電荷量を計算して、それに応じて吸着電荷量を制御する方式を考える。この方式では、ハーフトーン画像のように画像域全体の電荷量としては小さいが、個々のドット画像では十分な電荷を持っている場合に、画像が載っている領域で電荷量のバランスが崩れ剥離放電が起きてしまうことがある。そのため、ドット画像が載っている領域の単位面積あたりの電荷量を求め、それに対してバランスが取れる電荷量を画像比率に関わらず全面に供給するようにしている。
【0048】
本実施形態では、トナーの保持電荷量として、単位質量あたりの電荷量を求めている。これは画像作成モードによって、記録材上のトナーの最大載り量が変化し、それに応じて記録材上のトナー像の単位面積あたりの電荷量も変化してしまうことを考慮しているからである。すなわち、本実施形態では、フルカラー画像形成時に記録材へ転写するトナー像の最大の載り量は、最大2次色画像で200%のトナー載り量に相当する1.2mg/cm2のトナー載り量が転写されることを想定している。
【0049】
しかし、単色画像形成時やトナー量低消費モードが存在して、トナー像の最大載り量はそれより少なくなり、これによって単位面積あたりの電荷量も変わってくる。このため、電荷のバランスを取るため吸着バイアス供給手段30で供給する電荷量も変化する必要が生じる。
【0050】
表2で示したマトリクスは、フルカラー画像形成時に最大トナー載り量が200%となることを想定している。他の画像形成モードでは、記録材上に載せられるトナー載り量によって、トナー像の単位面積あたりの電荷量がフルカラー画像形成時にどの程度変化をしているかを求め、それに応じて吸着電荷量を制御している。例えば単色画像形成時には、トナー像の単位面積あたりの電荷量はフルカラー画像形成時に比べて半分になるため、検知された単位質量あたりの電荷量を半分にした値を表1のマトリクスに当てはめて、吸着バイアスを決定する。
【0051】
《第2の実施形態》
第1の実施形態において、吸着バイアス印加手段30で記録材に供給する電荷量は、トナーが保持する電荷量のみに応じて切り替えていた。本実施形態においては、2次転写後の記録材上の電荷量は、2次転写時に印加される2次転写バイアスによっても変化することを踏まえ、トナーが保持する電荷量と2次転写電流に応じて、吸着電流量を制御する。
【0052】
図9は第2実施形態の画像形成装置の構成の説明図である。本実施形態でもトナーの保持電荷量として、単位質量あたりの電荷量を検知している。そして、吸着バイアス電荷量制御回路50は図12で示されるフローに従って、吸着バイアス印加手段30を制御する。図7に示されたフローに対し、以下の点が異なる。即ち、先ずユーザーがユーザー操作部40で紙坪量を選択し、次に環境センサー41で湿度情報を取得した後に、2次転写電流テーブルから2次転写電流値を導出する。その後のフローは図7に示されたものと同様である。
【0053】
すなわち、検知されたトナーの単位質量あたりの電荷量と2次転写バイアスで印加する2次転写電流値から、表3で示される吸着電流テーブルを参照して、吸着バイアス印加手段30に印加する吸着バイアスを決定している。トナーと逆極性の2次転写電流値が大きいほど、吸着バイアス印加手段によって印加する電流量は小さく、検知されたトナーの単位質量あたりの電荷量が大きいほど吸着バイアスの値は大きくなっている。そして、第1の実施形態に比べ、本実施形態では吸着バイアスの値は概して小さくなっている。
【0054】
ここで、2次転写電流値に関しては、表4で示されるように、環境センサー41によって検知される湿度など環境情報、及びユーザー操作部40でユーザーが指定する記録材坪量情報によって、2次転写電流テーブルに従って電流値が印加されるようになっている。
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
ここで、表3に示す吸着電流テーブルのように、トナーの単位質量あたりの電荷量に応じて吸着バイアスを制御する意味を詳述する。2次転写電流によって記録材に供給された正の電荷より、トナーが保持する負の電荷量が大きくなればなるほど、2次転写後、図10(a)で示されるようにトナーも含めた記録材上の電荷量が負になりやすい。そして、搬送ベルトからの分離時に、負に帯電した記録材の極性を緩和するような剥離放電が生じて画像不良を発生させてしまう。そこで、2次転写電流量に関連して、所定基準値に対してトナーの保持する電荷量が大きくなるときは、あらかじめトナーと逆極性のバイアスが増える方向へ吸着バイアス印加手段30で記録材へ供給する電荷を制御しておく。これにより、搬送ベルト24から記録材が分離するとき、トナーが載った状態でも、記録材は図10(b)で示されるように、電荷的にバランスの取れた状態になるため、分離時の剥離放電が緩和され、剥離放電によって生じていた画像不良が抑制される。逆に2次転写電流によって記録材に供給された正の電荷よりトナーの保持電荷量が小さいときは、図11(a)で示されるように、トナーを含めても2次転写後の記録材上の電荷量が正になりやすい。そして、正に帯電した記録材の極性を緩和するような剥離放電が生じて画像不良を発生させてしまう。そこで、所定基準値に対してトナーの保持電荷量が小さくなるときは、図11(b)で示されるように、あらかじめトナーと逆極性のバイアスが減る方向へ吸着バイアス印加手段30で記録材へ供給する電荷を制御しておく。これにより、搬送ベルト24から記録材が分離するとき、トナーが載った状態でも、記録材は電荷的にバランスの取れた状態になるため、分離時の剥離放電が緩和され、剥離放電によって生じていた画像不良が抑制される。
【0057】
上述のようなトナーのトリボ(単位質量あたりの電荷量)と吸着バイアスによる剥離放電の発生状態を示しているのが図13である。すなわち、図13の白地部で示される領域に入っていれば、記録材Pが搬送ベルト24から分離するときの放電が抑えられる。このため、トナーの単位質量あたりの電荷量に応じて必要な吸着バイアスを印加する。図13で示した関係は、2次転写電流が40〜50μAのときの関係である。2次転写電流が大きくなれば、記録材Pに供給される正の電荷量が増えるため、同じ単位質量あたりの電荷量を持っていても、吸着電流は小さくて済む。このため、トナーの単位質量あたりの電荷量と、2次転写電流量で決まる吸着バイアスの値は表3で示されるマトリクスになる。
【0058】
《第3の実施形態》
本実施形態は、第1の実施形態あるいは第2の実施形態と比べ、吸着ローラとは別に設けられる第2手段で記録材に供給する電荷量を制御する点が異なる。即ち、図14に示すように、吸着ローラ28の他に搬送ローラ100が転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側に設けられる。記録材は、吸着ローラ28で搬送ベルトに吸着されるが、記録材への電荷量制御は吸着ローラで行われず、搬送ローラ100で行われる。
【0059】
(変形例)
上記実施形態では、感光ドラム1に形成されるトナー画像を中間転写ベルト6に1次転写し、中間転写ベルトに形成されるトナー画像を記録材Pに2次転写することを述べたが、感光ドラム1に形成されるトナー画像を直接記録材Pに転写しても良い。
【0060】
また、トナーが保持する電荷量に関し、第1の像担持体としての感光ドラム1に関連した現像器4内で検知するとしたが、第2の像担持体としての中間転写ベルト6に関連して検知するようにしても良い。
【0061】
また、トナーが保持する電荷量を検知することに関し、モノクロ画像形成装置で単色画像形成時のみの場合には、トナーの単位質量あたりの電荷量を検知する他に、単位面積あたりの電荷量を検知するようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1・・感光ドラム、2・・1次帯電器、3・・露光装置、4・・現像器、5・・1次転写ローラ、6・・中間搬送ベルト、8・・レジストローラ、9・・2次転写ローラ、
11・・ドラムクリーニング装置、12・・ベルトクリーニング装置、13・・2次転写高圧電源、17・・パッチセンサー、20・・テンションローラ、21・・2次転写ローラの対向ローラ、22・・駆動ローラ、24・・搬送ベルト、28・・吸着ローラ、29・・分離爪、30・・吸着バイアス印加手段、40・・ユーザー操作部、
50・・吸着バイアス制御回路、P・・記録材、N・・転写ニップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体に電荷を保持したトナーを用いて画像を形成する作像手段と、
複数の張架部材に張架されて循環移動される可撓性を有する無端状のベルトであって、記録材を担持して搬送するベルトと、
前記ベルトを介して前記像担持体と転写ニップ部を形成する転写部材と、
前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側において記録材に電荷を供給して記録材を前記ベルトに吸着させる吸着手段と、
を有し、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向下流側において前記ベルトから前記記録材を分離させる画像形成装置において、
前記トナーが保持する電荷量を検知する検知手段と、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量に応じて前記吸着手段で前記記録材に供給する電荷量を制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ベルトに担持されて搬送される記録材が前記転写ニップ部を通過している際に前記転写部材に転写バイアスを印加する電源部を有し、前記制御手段は、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量と、前記転写バイアスで印加する転写電流量と、に応じて前記吸着手段で前記記録材に供給する電荷量を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記制御手段は、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記トナーの単位質量あたりの電荷量に応じて前記吸着手段で前記記録材に供給する電荷量を制御する請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体は中間転写ベルトである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
像担持体と、
前記像担持体に電荷を保持したトナーを用いて画像を形成する作像手段と、
複数の張架部材に張架されて循環移動される可撓性を有する無端状のベルトであって、記録材を担持して搬送するベルトと、
前記ベルトを介して前記像担持体と転写ニップ部を形成する転写部材と、
前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側において記録材に電荷を供給して記録材を前記ベルトに吸着させる吸着手段と、
を有し、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向下流側において前記ベルトから前記記録材を分離させる画像形成装置において、
前記トナーが保持する電荷量を検知する検知手段と、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側にあって前記吸着手段とは別に設けられる第2手段と、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量に応じて前記第2手段で前記記録材に供給する電荷量を制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記ベルトに担持されて搬送される記録材が前記転写ニップ部を通過している際に前記転写部材に転写バイアスを印加する電源部を有し、前記制御手段は、前記制御手段は、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量と、前記転写バイアスで印加する転写電流量と、に応じて前記第2手段で前記記録材に供給する電荷量を制御することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記制御手段は、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記トナーの単位質量あたりの電荷量に応じて前記第2手段で前記記録材に供給する電荷量を制御する請求項5または請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体は中間転写ベルトである請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体に電荷を保持したトナーを用いて画像を形成する作像手段と、
複数の張架部材に張架されて循環移動される可撓性を有する無端状のベルトであって、記録材を担持して搬送するベルトと、
前記ベルトを介して前記像担持体と転写ニップ部を形成する転写部材と、
前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側において記録材に電荷を供給して記録材を前記ベルトに吸着させる吸着手段と、
を有し、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向下流側において前記ベルトから前記記録材を分離させる画像形成装置において、
前記トナーが保持する電荷量を検知する検知手段と、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量に応じて前記吸着手段で前記記録材に供給する電荷量を制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ベルトに担持されて搬送される記録材が前記転写ニップ部を通過している際に前記転写部材に転写バイアスを印加する電源部を有し、前記制御手段は、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量と、前記転写バイアスで印加する転写電流量と、に応じて前記吸着手段で前記記録材に供給する電荷量を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記制御手段は、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記トナーの単位質量あたりの電荷量に応じて前記吸着手段で前記記録材に供給する電荷量を制御する請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体は中間転写ベルトである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
像担持体と、
前記像担持体に電荷を保持したトナーを用いて画像を形成する作像手段と、
複数の張架部材に張架されて循環移動される可撓性を有する無端状のベルトであって、記録材を担持して搬送するベルトと、
前記ベルトを介して前記像担持体と転写ニップ部を形成する転写部材と、
前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側において記録材に電荷を供給して記録材を前記ベルトに吸着させる吸着手段と、
を有し、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向下流側において前記ベルトから前記記録材を分離させる画像形成装置において、
前記トナーが保持する電荷量を検知する検知手段と、前記転写ニップ部よりもベルト搬送方向上流側にあって前記吸着手段とは別に設けられる第2手段と、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量に応じて前記第2手段で前記記録材に供給する電荷量を制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記ベルトに担持されて搬送される記録材が前記転写ニップ部を通過している際に前記転写部材に転写バイアスを印加する電源部を有し、前記制御手段は、前記制御手段は、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記検知手段が検知する電荷量と、前記転写バイアスで印加する転写電流量と、に応じて前記第2手段で前記記録材に供給する電荷量を制御することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記制御手段は、前記分離の際に剥離放電を減ずる方向に前記トナーの単位質量あたりの電荷量に応じて前記第2手段で前記記録材に供給する電荷量を制御する請求項5または請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記像担持体は中間転写ベルトである請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−42642(P2012−42642A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182860(P2010−182860)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]