説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置の大型化、コストアップを招くことなく、かつ、雰囲気環境の変化によらず、中間転写ベルト上の残留現像剤に対するクリーニング性能をより安定させる。
【解決手段】クリーニングローラ6により帯電された残留トナーが中間転写ベルト5上から感光ドラム1yに転写されることで、感光ドラム1y上のトナーを除去するクリーニングブレード31yにより除去される画像形成装置において、二次転写部T2からクリーニングローラ6までの中間転写ベルト5の回転経路の長さが、クリーニングローラ6から一次転写部T1までの中間転写ベルト5の回転経路の長さより長くなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート等の記録材上に画像を形成する機能を備えた、例えば、複写機、プリンタなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いたカラー画像形成装置において、メディアフレキシビリティの観点から、次のような方式がある。それは、感光体上にトナー像を形成した後、トナー像を中間転写体(中間転写ベルト)に転写(以下、一次転写)し、複数色のトナー像を中間転写体上に重ねて形成した後、記録材にトナー像を転写(以下、二次転写)する方式である。
この方式では、二次転写した際、記録材に転写されず中間転写体上にトナーの一部が残留するため、中間転写体のクリーニングが必要となる。
このクリーニングには、ブレード、ファーブラシ等で中間転写体上に残留したトナーを除去、回収し、廃トナー容器に収容する方式がある。しかし、この方式では回収したトナーを廃トナー容器に搬送する手段を設ける必要がある。また廃トナー容器をユーザが交換する必要があるため、ユーザビリティの観点から望ましくない。
【0003】
この課題を解決するため、次のようなクリーニング方式が提案、実用化されている。
特許文献1においては、中間転写体上の残トナーを、本来トナーに帯電されている極性とは逆極性に帯電する帯電手段が設けられている構成が開示されている。帯電手段の下流に配設されている感光ドラムの転写部では、通常の画像形成による感光体側から中間転写体へのトナー像の転写と、それと入れ替わるように中間転写体上の逆極性に帯電された二次転写の残トナーが感光体と静電的に吸着し、感光体に逆転写される。そして、感光体に転写された二次転写の残トナーは、感光体にあるクリーニング部で回収される。
また、特許文献2においては、中間転写体上の残トナーを、本来、トナーに帯電されている極性とは逆極性に帯電する部材にローラを用い、そのローラに回転駆動を与えることにより中間転写体の回転負荷の軽減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−50167号公報
【特許文献2】特開2000−321881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来技術の場合には、以下のような問題が生じることが懸念される。
特に、低温、低湿の雰囲気環境下で画像形成を行う際、クリーニング不良により画像品質を著しく低下させる場合があった。これは、低温、低湿の雰囲気環境では、トナー、中間転写体等の電気抵抗の上昇、また摩擦帯電の影響により、トナーに帯電している電荷量が大きくなるためである。一方、残トナーを感光体に転写させるためには、逆極性で適正な電荷量にトナーを帯電させる必要がある。しかし、帯電する前の残トナーの電荷量が大きいと、逆極性で適正な電荷量に帯電することが困難となる。このため、残トナーは中間転写体から感光体に逆転写されず、結果的にクリーニング不良が発生する場合があった。
帯電能力の向上を図るには、より高い高圧を印加する方法もあるが、高圧回路のコストアップ、耐高圧電圧の対応のためのスペースの確保など課題があった。
また、逆極性への帯電手段に非接触のコロナチャージャを用いた場合、オゾンが発生するため、ローラ、ブラシを用いることが一般的である。しかし、ローラやブラシでは残ト
ナーと接触して帯電させるため、トナーと逆極性のバイアスを印加すると、残トナーはローラ、ブラシに静電的に付着しやすくなる。
このため、ローラ、ブラシに付着したトナーが、残トナーへの帯電を阻害し、結果的にクリーニング不良が発生する場合があった。これは、帯電前の残トナーの電荷が高いほど顕著となる。
【0006】
また、高温、高湿での環境下で画像形成を行う場合も、クリーニング不良が発生する場合があった。これは、高温、高湿の雰囲気環境では、トナー、中間転写体の電気抵抗が低下する。そのため、逆極性にトナーを帯電しても、帯電部から逆転写部まで移動に要す時間で電荷が減衰していく。このため、逆転写に必要な静電付着力が低下し、結果的にクリーニング不良が発生する場合があった。
【0007】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、画像形成装置の大型化、コストアップを招くことなく、かつ、雰囲気環境の変化によらず、中間転写ベルト上の残留現像剤に対するクリーニング性能をより安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
像担持体上に担持された現像剤像が第一位置で一次転写される無端状の回転可能な中間転写ベルトを有し、前記中間転写ベルト上に一次転写された現像剤像が、前記第一位置よりも前記中間転写ベルトの回転方向下流の第二位置で記録材に二次転写される画像形成装置であって、
前記第二位置よりも前記中間転写ベルトの回転方向下流、かつ、前記第一位置よりも前記中間転写ベルトの回転方向上流の第三位置で、前記中間転写ベルト上に残留した残留現像剤を、前記像担持体上に担持された現像剤の帯電極性とは逆極性に帯電させる帯電部材を有し、
前記帯電部材により帯電された残留現像剤が前記中間転写ベルト上から前記像担持体に転移され、前記像担持体上に転移した現像剤をクリーニング手段により除去する画像形成装置において、
前記第二位置から前記第三位置までの前記中間転写ベルトの回転経路の長さが、前記第三位置から前記第一位置までの前記中間転写ベルトの回転経路の長さより長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成装置の大型化、コストアップを招くことなく、かつ、雰囲気環境の変化によらず、中間転写ベルト上の残留現像剤に対するクリーニング性能をより安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の画像形成装置の全体構成を示す縦断面図
【図2】実施例2の画像形成装置の全体構成を示す縦断面図
【図3】実施例3の画像形成装置の全体構成を示す縦断面図
【図4】比較例の画像形成装置の全体構成を示す縦断面図
【図5】実施例1と比較例での、単位質量あたりの残トナー電荷量の推移を示した図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0012】
<特徴>
本実施例では、二次転写部T2から帯電部材としてのクリーニングローラ6までの距離を、クリーニングローラ6から残トナー(残留現像剤)を逆転写する一次転写部T1までの距離より長くなるように構成していることを特徴とする。
【0013】
<画像形成装置の全体構成>
図1を用いてカラー画像形成装置の全体構成について説明する。図1は、実施例1の電子写真方式の画像形成装置の一態様である中間転写方式の4色インラインフルカラープリンタの全体構成を示す縦断面図である。
図1に示す画像形成装置は、略水平方向に並設された4個の像担持体としての感光ドラム1(1y、1m、1c、1k)を備えている。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)によって、時計回りに回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、その回転方向に従って順に、クリーニングブレード31、残トナー収容容器32、帯電装置2、スキャナ3、現像ローラ41、トナー供給容器42、無端状の回転可能な中間転写ベルト5、二次転写ローラ9等が配設されている。
【0014】
ここで、クリーニングブレード31(31y、31m、31c、31k)は、感光ドラム1上(像担持体上)のトナーを除去するためのものである。残トナー収容容器32(32y、32m、32c、32k)は、クリーニングブレード31で回収した残トナーを収容するためのものである。帯電装置2(2y、2m、2c、2k)は、感光ドラム1表面を均一に帯電するためのものである。スキャナ3は、画像情報に基づいてレーザビームを照射し感光ドラム1上の静電潜像を形成するためのものである。現像ローラ41(41y、41m、41c、41k)は、静電潜像にトナーを付着させてトナー像(現像剤像)として現像するためのものであり、現像手段を構成している。トナー供給容器42(42y、42m、42c、42k)は、現像ローラ41にトナーを供給するためのものである。
【0015】
中間転写ベルト5は、一次転写手段としての一次転写ローラ8(8y、8m、8c、8k)により感光ドラム1上のトナー像を一時的に担持し、反時計方向に回転搬送するためのものである。二次転写ローラ9は、中間転写ベルト5上のトナー像を記録材に転写(転移)させるためのものであり、二次転写手段を構成している。
感光ドラム1、クリーニングブレード31、残トナー収容容器32、帯電装置2、現像ローラ41、トナー供給容器42は一体的にカートリッジ化され、プロセスカートリッジを形成し、画像形成装置本体(以下、装置本体)に着脱可能な構成となっている。
【0016】
次に各部の構成について、順次説明する。
感光ドラム1は、例えば直径30mmのアルミニウムシリンダの外周面に有機光導電体層(OPC感光体)が塗布されて構成されたものである。感光ドラム1は、その両端部が支持部材によって回転自在に支持されており、一方の端部に駆動モータ(不図示)からの駆動力が伝達されることにより、図中時計回りに回転駆動される。
【0017】
クリーニングブレード31は、感光ドラム1と当接する板状の弾性ゴムにより構成され、感光ドラム1の潜像、トナー像形成の工程前に、感光ドラム1上における転写残トナー等の不要なトナーを除去する。
クリーニングブレード31により除去された残トナーは、残トナー収容容器32に回収され、プロセスカートリッジの交換とともに廃却される。
【0018】
帯電装置2は、ローラ状に形成された導電性ローラを有している。そして、このローラが感光ドラム1表面に当接されると共に、このローラに電源(不図示)によって負極性で
かつ放電開始電圧以上の所定の帯電バイアスが印加されることにより、感光ドラム1表面が一様に負極性に帯電することとなる。
スキャナ3は、レーザ光学ユニットで構成され、不図示の駆動回路によって画像信号に応じたレーザ光Lが点灯制御され、帯電済みの感光ドラム1の表面を選択的に露光し、静電潜像を形成する。
【0019】
現像装置は、それぞれ中間転写ベルト5の回転方向上流側(図1の左側)から順にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーをそれぞれ収納したトナー供給容器42と、現像ローラ41から構成される。トナー供給容器42から現像ローラ41にトナーが搬送され、現像ローラ41に付着したトナーは摺擦により、一様な極性(ここでは負極性)に帯電される。その状態で、現像ローラ41に、感光ドラム1の表面電位より絶対値が小さく、かつ負極性である現像バイアスを印加することにより、静電潜像のみにトナーを付着させることが可能となり、トナー像として画像が顕在化されることになる。
【0020】
一次転写ローラ8は、ローラ状に形成された導電性ローラであり、例えば、SUS(ステンレス鋼)などの金属からなる外径6mmシャフトの周囲に外径12mmとなるよう発泡性弾性ローラが配設されたものである。発泡性弾性ローラは10〜10Ωの抵抗を有し、一次転写ローラ8は中間転写ベルト5を挟んで感光ドラム1に加圧されている。そして、不図示の電源より正極性の一次転写バイアスが一次転写ローラ8に印加されることにより、感光ドラム1上のトナー像がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で中間転写ベルト上に転写される。
【0021】
中間転写ベルト5は、1×10〜1×1014Ωcmの体積固有抵抗率を持たせた厚さ50〜150μm程度の無端状のフィルム状部材で構成されている。尚、前記体積抵抗率は、JIS法K6911に準拠した測定プローブを用い、ADVANTEST社製高抵抗計R2340にて、温度は25℃、相対湿度は50%で、50〜100Vを印加して得た値である。
中間転写ベルト5は、中間転写ベルト5を回転させる駆動ローラを兼ねる二次転写対向ローラ92、適度なテンションを加えるための従動ローラ91、93で張架されている。
【0022】
二次転写ローラ9は、一次転写ローラ8と同様の構成、物性を有するものである。二次転写ローラ9は記録材Sを介して中間転写ベルト5に加圧され、不図示の電源より正極性の二次転写バイアスが印加されることにより、中間転写ベルト5上のトナー像を記録材S上に転写させるものである。
ここで、二次転写ローラ9は、中間転写ベルト5を挟んで二次転写対向ローラ92との間で二次転写部T2を構成している。中間転写ベルト5上における二次転写部T2の位置が第二位置に相当する。また、感光ドラム1y上のトナー像は、中間転写ベルト5を挟んで感光ドラム1yと一次転写ローラ8yとの間で形成される一次転写部T1で中間転写ベルト5に一次転写される。中間転写ベルト5上における一次転写部T1の位置が第一位置に相当する。第二位置は、第一位置よりも中間転写ベルト5の回転方向下流に位置している。なお、以下の説明において、中間転写ベルト5の回転方向上流(上流側)を単に上流(上流側)といい、中間転写ベルト5の回転方向下流(下流側)を単に下流(下流側)ということとする。
【0023】
本実施例の画像形成装置による画像形成動作は次のように行われる。
まず、装置本体下部に装着されたカセット11に収納された記録材Sが、給送ローラ12によって1枚ずつ分離給送されると共に、搬送ローラ対13により二次転写部T2へと搬送される。そして、一次転写により中間転写ベルト5上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックからなるトナー像が、二次転写部T2で記録材Sに二次転写されることでカラー画像が形成される。そして、その記録材Sが、加熱ローラ101及び加圧ロ
ーラ102のローラ対からなる定着装置10を通過することで記録材S上の未定着のトナー像が熱定着され、その後、記録材Sは装置本体上部の排出部へ排出される。
【0024】
<中間転写クリーニング>
二次転写時に中間転写ベルト5上に残留した残トナーは、クリーニングローラ6で本来(正規)の帯電極性とは逆極性に帯電された後、感光ドラム1yに逆転写されることで、クリーニングブレード31yによりクリーニングされる。ここで、クリーニングブレード31yは、クリーニング手段に相当する。また、本来の帯電極性とは、画像形成時に感光ドラム上に担持されたトナーの帯電極性をいう。本実施例において、クリーニングローラ6は二次転写部T2(第二位置)よりも下流、かつ、一次転写部T1(第一位置)よりも上流の位置(第三位置)に配設されている。クリーニングローラ6は、中間転写ベルト5を介して従動ローラ91とニップ部(第三位置)を構成している。
【0025】
クリーニングローラ6は、1×10〜1×10Ωに抵抗調整されたソリッドゴムローラである。クリーニングローラ6には、高圧電源(不図示)から0.3〜+1.0kVの電圧が印加される構成となっている。
本実施例において、画像形成時のトナーは負極性に帯電され、一次転写ローラ8、二次転写ローラ9に正バイアスが印加されることで、静電的に転写が行われる。このため、二次転写で記録材に転写されず中間転写ベルト5上に残留したトナーは、記録材との放電により正極性に帯電するものも一部あるが、多くは負極性に帯電されたままとなっている。
【0026】
本実施例においては、クリーニングローラ6で、中間転写ベルト5上の残トナーを適正な正極性の電荷量に帯電している。その後、中間転写ベルト5上の残トナーは、クリーニングローラ6の下流に位置する感光ドラム1yの一次転写部T1において、感光ドラム1yに逆転写される。
これは、一次転写ローラ8yに正バイアスが印加されていることと、感光ドラム1yは負極性に帯電されていることから、残トナーと感光ドラム1yに静電的な吸着力が働くことによる。残トナーと感光ドラム1yに静電的な吸着力が働くことで、感光ドラム1yの一次転写部T1において残トナーが中間転写ベルト5から感光ドラム1yに逆転写される。一方、画像形成のためのトナーは負極性に帯電されているので、残トナーの逆転写と同時に、通常の転写を行うことが可能となっている。
その後、感光ドラム1yに逆転写された残トナーは感光ドラム1yに配設されたクリーニングブレード31yによって回収される。
【0027】
本実施例においては、二次転写部T2から、その下流側に配設されているクリーニングローラ6(ニップ部)までの長さ(距離)を、クリーニングローラ6から、その下流側に配設されている感光ドラム1yの一次転写部T1までの長さよりも短くしている。(第二位置から第三位置までの中間転写ベルト5の(回転経路の)長さが、第三位置から第一位置までの中間転写ベルト5の(回転経路の)長さより長くなるように構成されている。)
よって、二次転写時の残トナー電荷量は、クリーニングローラ6到達までに減衰が多くなる。クリーニングローラ6では、残トナー電荷量が小さい状態で、本来とは逆極性となる適正な電荷量に帯電すれば良く、クリーニングローラ6に印加するバイアスを小さくすることができる。
【0028】
さらには、クリーニングローラ6で本来とは逆極性に帯電された残トナーは、減衰が抑制されて一次転写部T1に到達する。よって、残トナー電荷量の減衰を考慮した場合、クリーニングローラ6から、その下流側に配設されている感光ドラム1yの一次転写部T1までの長さが長い場合と比較すると、クリーニングローラ6に印加するバイアスを小さくすることができる。
特に、雰囲気環境が低温低湿下で、残トナー電荷量が大きくなるため、従来は他の雰囲
気環境と比較しクリーニングローラ6に印加する電圧を大きくする必要があったが、本実施例ではクリーニングローラ6に印加する電圧を+1.0kVに抑えることが可能となる。
これにより、本実施例においては、高圧回路のコスト、耐高圧電圧のための対応スペースを抑えることが可能となる。
【0029】
<比較例>
図4は、比較例の画像形成装置の全体構成を示す縦断面図である。本実施例との違いとして、比較例では、クリーニングローラ6が、二次転写対向ローラ92に対向し、かつ、二次転写ローラ9の下流側に配設されており、さらに、二次転写対向ローラ92の大きさが異なっている。
図5は、本実施例と比較例での、中間転写ベルト5の回転方向下流に向かうにつれて推移する、単位質量あたりの残トナー電荷量を示した概念図であり、実線が本実施例、点線が比較例を示している。図5において、横軸Xは、二次転写部T2から、中間転写ベルト5の回転方向下流に向かった一次転写部T1までの領域を含む、中間転写ベルト5の領域を示し、縦軸Yは、単位質量あたりの残トナー電荷量を示している。図5において、Aは、本実施例でのクリーニングローラ6の帯電部(第3位置)を示し、Bは、比較例でのクリーニングローラ6の帯電部を示し、Cは、クリーニング不良が発生するトナー電荷量の領域を示している。また、クリーニングローラ6に印加される電圧は同一であり、残トナーへの帯電能力も同一であることを想定している。
【0030】
本実施例においては、二次転写部T2からクリーニングローラ6までの残トナーの移動距離が長くなるように構成されており、残トナー電荷が減衰してから、クリーニングローラ6にて残トナーを本来とは逆極性に帯電できる。さらに、クリーニングローラ6から残トナーが逆転写される一次転写部T1までの残トナーの移動距離が短いので、残トナー電荷量の減衰を抑えることが可能となる。これにより、クリーニングローラ6に印加するバイアスを小さくすることができ、高圧回路のコスト、耐高圧電圧のための対応スペースを抑えることが可能となる。
【0031】
一方、比較例においては、二次転写部T2からクリーニングローラ6までの長さが短いため、クリーニングローラ6にて残トナーを本来とは逆極性に帯電した後の残トナー電荷量が小さくなる。さらには、クリーニングローラ6から、残トナーが逆転写される一次転写部T1までの長さが本実施例より長いので、残トナー電荷量は減衰していくこととなる。その結果、逆転写する直前の残トナー電荷量は、適正な電荷量を下回り、クリーニング不良が発生する場合がある。これに対し、クリーニング不良の発生を防止するため、クリーニングローラ6に印加するバイアスを上げ、残トナーへの帯電能力を高くすることが考えられる。しかし、このような場合に、雰囲気環境が低温低湿下のクリーニング性を確保しようとすると、比較例ではクリーニングローラ6に印加する電圧を+2.0kVにする必要があり、高圧回路のコストアップ、耐高圧電圧のための対応スペースが必要となる。
【0032】
また比較例では、二次転写対向ローラ92の対向に、クリーニングローラ6と二次転写ローラ9を配置する必要があるため、二次転写対向ローラ92の直径を大きくする必要があり、コスト、スペースの観点で不利となっている。
さらに比較例では、クリーニングローラ6と、熱源である定着装置10とが近くに配置される構成となっている。このため、熱によるクリーニングローラ6の劣化により、耐久性の観点でも不利である。また、画像形成装置内の昇温によるクリーニングローラ6の抵抗変動で、残トナーへの帯電能力が変動し、クリーニング性が低下する場合もある。
【0033】
以上説明したように、本実施例では、二次転写部T2からクリーニングローラ6までの長さが、クリーニングローラ6から、残トナーを逆転写する一次転写部T1までの長さよ
り長い。よって、二次転写後の残トナーの電荷が減衰してから本来とは逆極性に帯電させることができ、また帯電してから感光ドラムに逆転写されるまでの残トナーの電荷の減衰を抑えることが可能となる。
そのため、クリーニングローラ6に印加するバイアスを小さくすることができ、画像形成装置の大型化、コストアップを招くことなく、また、雰囲気環境の変化によらず、より安定したクリーニング性能を確保することができる。
なお、本実施例では、中間転写ベルト5の回転方向に沿って複数配設された感光ドラムのうち最上流の感光ドラム1yのクリーニングブレード31yで残トナーをクリーニングしているが、これに限るものではない。中間転写ベルト5上の二次転写の残トナーをクリーニングするモードを設定し、複数の感光ドラムのうちいずれかとこのドラムに対向する一次転写ローラを一次転写部T1として動作させ、このドラムに残トナーを逆転写させるように構成してもよい。この場合における、二次転写部T2からクリーニングローラ6までの長さと、クリーニングローラ6から一次転写部T1までの長さの関係は上記同様である。
【実施例2】
【0034】
<特徴>
実施例2では、実施例1に加え、二次転写残トナーを散らすためのクリーニングブラシ61を設け、二次転写部T2からクリーニングブラシ61までの距離が、クリーニングブラシ61からクリーニングローラ6までの距離より短い構成とする。ここで、クリーニングブラシ61は、中間転写ベルト5上の残トナーを中間転写ベルト5上で散らすための散らし部材に相当する。クリーニングブラシ61は、二次転写部T2(第二位置)よりも下流、かつ、クリーニングローラ6(第三位置)よりも上流の第四位置に配設されている。なお、画像形成装置の構成は、クリーニングブラシ以外、実施例1と同様の構成となっているため、実施例1と同様の構成部分については、その説明を省略する。
【0035】
<画像形成装置の構成>
図2は、本実施例の画像形成装置の全体構成を示す縦断面図である。
本実施例では、クリーニングブラシ61を、二次転写対向ローラ92上のうち、二次転写部T2の下流側に配設している。
クリーニングブラシ61は、1×10〜1×10Ωcmの導電性を有するナイロン製の繊維からなり、幅は3mmとした。クリーニングブラシ61の先端位置は、中間転写ベルト5表面に対し、1.0mmの侵入量で固定配置される。また、本実施例では、クリーニングブラシ61は、装置本体のグランドに接続している構成となっているが、これに限るものではない。また、クリーニングブラシ61に、トナーの帯電極性とは逆極性のバイアスを印加し、散らし効果の向上、残トナーへの帯電効果を図っても良い。
【0036】
クリーニングブラシ61の効果としては、中間転写ベルト5上で残トナーを散らすことで、クリーニングローラ6の帯電能力を向上させることにあり、この点について以下に説明する。
二次転写効率が低下し残トナー量が多い場合、中間転写ベルト5上で残トナーが2層以上で構成されることがある。このような場合においては、上層の残トナーは中間転写ベルト5と接触しないので、トナー電荷の減衰が抑制され、クリーニングローラ6での電荷付与が不十分となる場合がある。さらに、クリーニングローラ6での残トナー電荷付与も、上層の残トナーのみ電荷付与され、下層の残トナーに電荷付与が妨げられる場合がある。その結果、残トナーを適正な電荷量に帯電できず、クリーニング性が低下する場合があった。
【0037】
本実施例によれば、クリーニングブラシ61を配設することにより、中間転写ベルト5上に残トナー量が多い場合でも、クリーニングブラシ61により残トナーを中間転写ベル
ト5上で略1層に均すようにすることができる。これにより、中間転写ベルト5に接触する残トナーの数が増え、二次転写後の残トナーの電荷の減衰が促進される。また、残トナーは中間転写ベルト5上で略1層であるので、残トナーに対するクリーニングローラ6での電荷付与も十分に行うことが可能となる。
【0038】
さらに本実施例では、二次転写部T2からクリーニングブラシ61までの長さ(中間転写ベルト5の回転経路の長さ)を、クリーニングブラシ61からクリーニングローラ6までの長さより短くしている。よって、残トナー電荷の減衰が促進され、クリーニング性のさらなる向上が可能となる。
なお本実施例では、散らし部材としてブラシを用いたが、シート状の部材を中間転写ベルトに当接させても良く、また導電性のローラにACバイアスを重畳し印加することでも同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【実施例3】
【0039】
<特徴>
実施例3では、中間転写ベルト5を張架するローラを4本で構成している点が、実施例1と異なる。本実施例において、クリーニングローラ6に対向しているローラは、イエローの一次転写部T1の直前の、中間転写ベルト5に内接しているローラとしている。なお、画像形成装置の構成は、中間転写ベルト5を張架するローラの数以外、実施例1と同様の構成となっているため、実施例1と同様の構成部分については、その説明を省略する。
【0040】
<画像形成装置の構成>
図3は、本実施例の画像形成装置の全体構成を示す縦断面図である。
本実施例では、二次転写対向ローラ92、及び、従動ローラ91、94、95で中間転写ベルト5が張架されている。また、従動ローラ91、94、95により中間転写ベルト5に適度なテンションが加えられている。また、二次転写対向ローラ92は、感光ドラム1kに対して下流側に位置するローラ(中間転写ベルト5を張架しているローラ)の中で、最も上流側に位置している。クリーニングローラ6は、中間転写ベルト5を張架しているローラのうち、二次転写部T2からみて最下流に配設されている従動ローラ91に対向するように配設されている。また、従動ローラ91、94、95は、装置本体のグランドに接地されている。
【0041】
上述したように、クリーニング性の観点から、残トナーの電荷が可能な限り減衰してから、クリーニングローラ6で残トナーを本来とは逆極性に帯電した方が良い。
また、残トナーの電荷は、中間転写ベルト5表面から裏面を伝わり、従動ローラ91、94、95を介し、装置本体のグランドにアースされることになる。よって、残トナーの電荷の減衰を促進させるためには、本実施例のように、中間転写ベルト5を張架する従動ローラを、残トナーを担持している中間転写ベルト5の領域が可能な限り多く通過するように構成されるのが良い。
一方、クリーニングローラ6で残トナーを本来とは逆極性に帯電した後は、逆転写部まで残トナーの電荷の減衰を抑制する必要がある。残トナーの電荷の減衰を抑制するには、本実施例のように中間転写ベルト5を張架する従動ローラを、残トナーを担持している中間転写ベルト5の領域が通過しないような構成が良い。
【0042】
ここで、本実施例においては、中間転写ベルト5を張架するローラが4本の場合について説明したが、これに限るものではない。すなわち、中間転写ベルト5を張架する複数のローラのうち、逆転写部よりも上流で、逆転写部の最も近くに配置されたローラに対して、中間転写ベルト5を挟んで対向するように、クリーニングローラ6が配置されるように構成されるものであればよい。ここで、逆転写部は、本実施例ではイエローの一次転写部T1(第一位置)である。
【符号の説明】
【0043】
1 感光ドラム ; 5 中間転写ベルト ; 6 クリーニングローラ ; 31 クリーニングブレード ; T1 一次転写部 ; T2 二次転写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に担持された現像剤像が第一位置で一次転写される無端状の回転可能な中間転写ベルトを有し、前記中間転写ベルト上に一次転写された現像剤像が、前記第一位置よりも前記中間転写ベルトの回転方向下流の第二位置で記録材に二次転写される画像形成装置であって、
前記第二位置よりも前記中間転写ベルトの回転方向下流、かつ、前記第一位置よりも前記中間転写ベルトの回転方向上流の第三位置で、前記中間転写ベルト上に残留した残留現像剤を、前記像担持体上に担持された現像剤の帯電極性とは逆極性に帯電させる帯電部材を有し、
前記帯電部材により帯電された残留現像剤が前記中間転写ベルト上から前記像担持体に転移され、前記像担持体上に転移した現像剤をクリーニング手段により除去する画像形成装置において、
前記第二位置から前記第三位置までの前記中間転写ベルトの回転経路の長さが、前記第三位置から前記第一位置までの前記中間転写ベルトの回転経路の長さより長いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第二位置よりも前記中間転写ベルトの回転方向下流、かつ、前記第三位置よりも前記中間転写ベルトの回転方向上流の第四位置に、前記中間転写ベルト上の残留現像剤を前記中間転写ベルト上で散らすための散らし部材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記散らし部材には、前記像担持体上に担持された現像剤の帯電極性とは逆極性の電圧が印加されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第二位置から前記第四位置までの前記中間転写ベルトの回転経路の長さが、前記第四位置から前記第三位置までの前記中間転写ベルトの回転経路の長さより短いことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記中間転写ベルトは、複数のローラにより張架されており、
前記複数のローラのうち、前記第一位置よりも前記中間転写ベルトの回転方向上流で、前記第一位置の最も近くに配置されたローラに対して、前記中間転写ベルトを挟んで対向するように、前記帯電部材が配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−53163(P2012−53163A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194062(P2010−194062)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】