説明

画像形成装置

【課題】 感光体表層の減耗量や帯電ローラの抵抗の変化量によらず感光体の表面を一様に帯電させることのできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 ゼロ電位放電開始電圧算出部210は,ゼロ電位放電開始電圧(帯電ローラ20にバイアスを印加していない状態での感光体ドラム10と現像ローラ50との間の放電開始電圧)の変化量を算出する。ノンゼロ電位放電開始電圧算出部220は,ノンゼロ電位放電開始電圧(帯電ローラ20にバイアスを印加している状態での感光体ドラム10と現像ローラ50との間の放電開始電圧)の変化量を算出する。感光体表面電位変化量算出部230は,ゼロ電位放電開始電圧の変化量とノンゼロ電位放電開始電圧の変化量とから,感光体の表面電位の変化量を算出する。帯電ローラ電圧設定部240は,算出された感光体の表面電位の変化量に基づいて,帯電ローラ20に印加するバイアスを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像形成装置に関する。さらに詳細には,感光体表層の減耗や帯電ローラの汚損の程度によらず感光体の表面を一様に帯電させることのできる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置では一般に,表面を一様に帯電させた感光体ドラムに形成した静電潜像にトナーを付与してトナー像とする。そして,そのトナー像を用紙に転写し,定着装置によりそのトナー像を用紙に定着する。画像形成装置の帯電方式には,コロトロンやスコロトロンを用いる非接触方式と,帯電ローラや帯電ブラシを用いる接触方式とがある。
【0003】
接触方式である帯電ローラを用いる画像形成装置では,実際には,感光体ドラムと帯電ローラとの間にはわずかな隙間がある。そして,感光体ドラムを帯電させる際には,感光体ドラムと帯電ローラとの間の微小な隙間に火花放電を生じさせる。そのため,感光体ドラムと帯電ローラとの間の間隔が変わると,それに伴って感光体ドラムの表面の帯電量は変化する。
【0004】
一方,画像形成装置を使用し続けると,感光体ドラムの表層が減耗する。減耗後(使用後)の感光体ドラムと帯電ローラとの間の間隔は,減耗前(初期)の感光体ドラムと帯電ローラとの間の間隔よりも広い。したがって,帯電された感光体ドラムの表面電位は,減耗前と減耗後とで異なっている。つまり,継続使用している画像形成装置では,画像にカブリや濃度ムラが生じるおそれがある。
【0005】
そのため,感光体ドラムの表層の減耗量を考慮して帯電ローラに印加するバイアスを調整する技術が開発されてきている。例えば,特許文献1には,帯電ローラに流れる放電電流の目標値を設定して,帯電ローラに印加するバイアスを調整する画像形成装置が開示されている(特許文献1の段落[0072]〜[0083]および図6等参照)。
【0006】
しかし,この放電電流は,感光体ドラムの表層の減耗量の他に,トナーや外添剤の帯電ローラへの付着や,放電生成物や劣化に起因する帯電ローラの抵抗値の変化に依存する。すなわち,帯電ローラの放電電流を一定に保つように帯電ローラにバイアスを印加しても,感光体の表面電位は必ずしも一定とはならないのである。そこで,特許文献1では,汚損グレードという概念を導入して,帯電ローラの劣化の程度を推測することで,この問題を回避しようとしている(特許文献1の段落[0068]および図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−52301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし,この汚損グレードは,プリント枚数の累積値のみに依存するものである(特許文献1の段落[0068]および図5参照)。もしくは,感光体ドラムの回転数のみに依存するものである(特許文献1の段落[0069]参照)。しかし,1ジョブで1枚ずつ印刷する場合や,1ジョブで多数枚を印刷する場合など,ユーザの使用状況は必ずしも一様ではない。したがって,ユーザの使用状況によっては,問題が生ずる。つまり,実際の帯電ローラの汚損の程度と,特許文献1の図5に示されている汚損グレードとの間に,ずれが生じてくるのである。このように,推測した値と実際の値との間にずれが生ずるという状況は,帯電ローラ等の汚損を予め仮定する方式の画像形成装置であっても同様である。
【0009】
本発明は,前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,感光体表層の減耗量や帯電ローラの抵抗の変化量によらず感光体の表面を一様に帯電させることのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の一態様における画像形成装置は,像担持体と,像担持体を帯電させるための帯電ローラと,帯電ローラにより帯電された像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と,像担持体の静電潜像にトナーを付与する現像部材と,現像されたトナー像をシートに転写するための転写部と,像担持体と現像部材との間に電圧を印加するとともに帯電ローラにバイアスを印加する電源部と,像担持体と現像部材との間の放電開始電圧を検出する放電開始電圧検出部とを有するものである。そして,帯電ローラがゼロ電位の状態下にて放電開始電圧検出部により検出された値に基づいて算出される第1のゼロ電位放電開始電圧と,帯電ローラがゼロ電位の状態下にて放電開始電圧検出部により第1のゼロ電位放電開始電圧の算出の後に検出された値に基づいて算出される第2のゼロ電位放電開始電圧との差から,ゼロ電位放電開始電圧の変化量を算出するゼロ電位放電開始電圧算出部と,帯電ローラがゼロ電位でない状態下にて放電開始電圧検出部により検出された値に基づいて算出される第1のノンゼロ電位放電開始電圧と,帯電ローラがゼロ電位でない状態下にて放電開始電圧検出部により第1のノンゼロ電位放電開始電圧の算出の後に検出された値に基づいて算出される第2のノンゼロ電位放電開始電圧との差から,ノンゼロ電位放電開始電圧の変化量を算出するノンゼロ電位放電開始電圧算出部と,その算出したゼロ電位放電開始電圧の変化量とノンゼロ電位放電開始電圧の変化量とから,像担持体表面電位変化量を算出する像担持体表面電位変化量算出部と,その算出した像担持体表面電位変化量に基づいて,電源部が帯電ローラに印加するバイアスを設定する帯電装置電圧設定部とを有している。かかる画像形成装置では,像担持体の表面電位に応じて,帯電ローラに好適な電圧を印加することができる。そのため,像担持体の減耗や帯電ローラの抵抗変化等の影響を排除して,像担持体の表面電位を製品出荷時とほぼ同様の電位に帯電させることができる。つまり,画像の背景部電位はほぼ一定である。
【0011】
上記に記載の画像形成装置において,ゼロ電位放電開始電圧算出部は,第1のゼロ電位放電開始電圧として,ゼロ電位放電開始電圧の初期値を用いるとともに,第2のゼロ電位放電開始電圧として,ゼロ電位放電開始電圧の現在値を用いるものであり,ノンゼロ電位放電開始電圧算出部は,第1のノンゼロ電位放電開始電圧として,ノンゼロ電位放電開始電圧の初期値を用いるとともに,第2のノンゼロ電位放電開始電圧として,ノンゼロ電位放電開始電圧の現在値を用いるものであるとよい。像担持体の減耗や帯電ローラの抵抗変化等の影響を排除して,像担持体の表面電位を製品出荷時とほぼ同様の電位に帯電させることができることに変わりないからである。
【0012】
上記に記載の画像形成装置において,ゼロ電位放電開始電圧算出部は,第1のゼロ電位放電開始電圧として,ゼロ電位放電開始電圧の現在値より前の値を用いるとともに,第2のゼロ電位放電開始電圧として,ゼロ電位放電開始電圧の現在値を用いるものであり,ノンゼロ電位放電開始電圧算出部は,第1のノンゼロ電位放電開始電圧として,ノンゼロ電位放電開始電圧の現在値より前の値を用いるとともに,第2のノンゼロ電位放電開始電圧として,ノンゼロ電位放電開始電圧の現在値を用いるものであってもよい。像担持体の減耗や帯電ローラの抵抗変化等の影響を排除して,像担持体の表面電位を製品出荷時とほぼ同様の電位に帯電させることができることに変わりないからである。
【0013】
上記に記載の画像形成装置において,像担持体表面電位変化量算出部により算出された像担持体表面電位変化量を履歴として記憶する像担持体表面電位変化量記憶部を有し,帯電装置電圧設定部は,像担持体表面電位変化量記憶部により記憶された像担持体表面電位変化量を補間して,その補間後の像担持体表面電位変化量の値に基づいて,帯電ローラに印加するバイアスを設定するものであるとなおよい。測定誤差による影響を小さいものとして,帯電ローラに印加する電圧を設定することができるからである。
【0014】
上記に記載の画像形成装置において,像担持体表面電位変化量算出部により算出された像担持体表面電位変化量が,前回に算出された像担持体表面電位変化量よりも予め定めた像担持体表面電位変化量閾値よりも大きい場合に,帯電ローラに異常があると判断するとともに,像担持体表面電位変化量算出部により算出された像担持体表面電位変化量が,前回に算出された像担持体表面電位変化量よりも予め定めた像担持体表面電位変化量閾値以下である場合に,帯電ローラに異常がないと判断する帯電ローラ異常判断部を有するとなおよい。帯電ローラの異常を検出して,帯電ローラの交換時期をユーザに知らせることができるからである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,感光体表層の減耗量や帯電ローラの抵抗の変化量によらず感光体の表面を一様に帯電させることのできる画像形成装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る画像形成装置を説明するための概略構成図である。
【図2】実施形態に係る画像形成部および電源部を説明するための概略構成図である。
【図3】実施形態に係る画像形成装置の制御系を説明するためのブロック図である。
【図4】実施形態に係る画像形成装置における感光体の表面電位の履歴を説明するためのグラフ(その1)である。
【図5】実施形態に係る画像形成装置における感光体の表面電位の履歴を説明するためのグラフ(その2)である。
【図6】実施形態に係る画像形成装置における帯電ローラの異常を検出方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,画像形成装置について,本発明を具体化したものである。
【0018】
(第1の実施形態)
1.画像形成装置の概要
本形態の画像形成装置1は,図1に概略構成を示すように,中間転写ベルト101を有する,いわゆるタンデム方式のカラープリンタである。中間転写ベルト101は,無端状ベルト部材であり,その図中両端部がローラ102,103によって支持され,図中矢印Aの向きに回転するようになっている。中間転写ベルト101の図中下部に沿って,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像形成部100Y,100M,100C,100Kが配置されている。
【0019】
各色の画像形成部100Y,100M,100C,100Kはいずれも同様の構成である。よって以下,特に必要がない限り色による区別をせずに画像形成部100として説明する。それぞれ,像担持体である感光体ドラム10とその周囲に配置された帯電装置20,露光装置30,現像装置40,クリーナ60を有している。また,中間転写ベルト101を挟んで感光体ドラム10に対向する位置に,1次転写ローラ111が配置されている。図1中では画像形成部100Yによって代表して示している。
【0020】
図1中で下方に示すのは,用紙Pを収容する給紙カセット112である。給紙カセット112の上部には,用紙Pを送り出す給紙ローラ113が設けられている。用紙Pは,給紙カセット112から搬送経路114に沿って上方へ送られる。搬送経路114を挟んで,ローラ103と対面する位置に,2次転写ローラ115が配置されている。これら,中間転写ベルト101,1次転写ローラ111,2次転写ローラ115は,用紙Pにトナー像を転写するための転写部である。さらにその下流側(図中上方)には,定着装置70が配置されている。定着装置70は,定着ローラ71,加圧ローラ72のローラ対を有している。定着装置70より搬送経路114のさらに下流側には,用紙搬送切り替えガイド120が配置されている。
【0021】
用紙搬送切り替えガイド120より搬送経路114のさらに下流側には,ローラ対116およびローラ対118が配置されている。用紙搬送切り替えガイド120は,用紙Pをローラ対116もしくはローラ対118のいずれに搬送するかを切り替えるためのものである。ローラ対116より搬送経路114のさらに下流には,排紙トレイ117が設けられている。ローラ対116は,用紙Pを排紙トレイ117に排紙するためのものである。
【0022】
ローラ対118は,搬送経路114を搬送されてきた用紙Pの搬送方向を反転するとともに,用紙Pを搬送経路119に搬送するためのものである。搬送経路119は,片側の面に画像形成された用紙Pを再び2次転写ローラ115の箇所に搬送するための経路である。つまり,用紙Pの画像形成された反対側の面に画像を形成するのに用いられる経路である。このように,本形態の画像形成装置1は,両面印刷可能なものである。
【0023】
図1に示すように,画像形成装置1は,電源部150を有している。電源部150は,後述するように,感光体ドラム10と現像ローラ50(図2参照)との間に現像バイアスを印加するためのものである。また,電源部150は,帯電ローラ20に電圧を印加する役割をも担うものである。
【0024】
また,画像形成装置1は,制御部200を有している。制御部200は,電源部150が印加する電圧を制御するためのものである。また,制御部200は,画像形成装置1に関するその他の制御を行うものでもある。画像形成装置1は,記憶部300を有している。記憶部300は,制御部200の各種制御に用いられる情報を記憶しておくためのものである。
【0025】
2.画像形成部
図2は,本形態の画像形成装置1から,画像形成部100と,電源部150と,制御部200とを抜き出して描いた概略構成図である。感光体ドラム10は,その表面にトナー像を担持するための像担持体である。帯電ローラ20は,感光体ドラム10の表面を一様に帯電させるための帯電装置である。露光装置30は,感光体ドラム10の表面に静電潜像を描きこむためのものである。
【0026】
現像装置40は,現像ローラ50を有するものである。また,現像装置40は,その内部に現像剤であるトナーを収容している。現像装置40は,トナーを現像ローラ50に供給する供給ローラやトナーを攪拌するためのスクリュー等をその内部に有していてもよい。現像ローラ50は,感光体ドラム10の静電潜像にトナーを付与するための現像部材である。クリーナ60は,感光体ドラム10から現像残トナーを回収するためのものである。
【0027】
ここで,画像形成部1の基本的動作について簡単に説明する。感光体ドラム10は,図2中の矢印Bの向きに回転する。そしてその回転に伴って,以下に示す処理を施される。まず,帯電装置20が,感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる。この帯電された感光体ドラム10の表面の電位は,画像の背景部電位である。その下流では,露光装置30が,感光体ドラム10の表面に静電潜像を描きこむ。すなわち,露光を受けた箇所の電位が,画像部電位となるのである。さらにその下流では,現像ローラ50が,感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像にトナーを付与する。これにより,感光体ドラム10の表面にトナー像が形成される。このトナー像は,前述したように,図1の1次転写ローラ111によって中間転写ベルト101に転写されることとなる。
【0028】
3.制御系
図3は,本形態の画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。図3に示すように,本形態の画像形成装置1の制御系は,制御部200と,記憶部300と,電源部150と,測定部400とを有している。
【0029】
制御部200は,ゼロ電位放電開始電圧算出部210と,ノンゼロ電位放電開始電圧算出部220と,感光体表面電位変化量算出部230と,帯電ローラ電圧設定部240と,その他の制御部250とを有している。本形態の画像形成装置1は,画像形成を行わないときに,ゼロ電位放電開始電圧算出部210と,ノンゼロ電位放電開始電圧算出部220と,感光体表面電位変化量算出部230とにより感光体ドラムの表面電位の変化量を算出する。そして,画像形成時に帯電ローラ20に印加する電圧を,帯電ローラ電圧設定部240が決定するものである。
【0030】
ゼロ電位放電開始電圧算出部210は,帯電ローラ20に電位を与えていない状態での感光体ドラム10と現像ローラ50との間の放電開始電圧(ゼロ電位放電開始電圧)を算出するためのものである。ノンゼロ電位放電開始電圧算出部220は,帯電ローラ20に予め定めた一定の電位を与えている状態での感光体ドラム10と現像ローラ50との間の放電開始電圧(ノンゼロ電位放電開始電圧)を算出するためのものである。
【0031】
感光体表面電位変化量算出部230は,ゼロ電位放電開始電圧と,ノンゼロ電位放電開始電圧とから,感光体ドラム10の表面電位の初期からの変化量を算出するための像担持体表面電位変化量算出部である。帯電ローラ電圧設定部240は,感光体表面電位変化量算出部230により算出された感光体表面電位変化量の値に基づいて,帯電ローラ20に印加する電圧を決定するためのものである。
【0032】
記憶部300は,環境係数テーブル記憶部310と,感光体表面電位変更量記憶部320と,その他の記憶部330とを有している。環境係数テーブル記憶部310は,表1に示すような環境係数テーブルを記憶するためのものである。表1には,種々の温度湿度環境に対応した環境係数が記憶されている。感光体表面電位変更量記憶部320は,感光体表面電位変化量算出部230により算出された感光体表面電位変化量の値を記憶するためのものである。感光体表面電位変更量記憶部320は,後述する第2の実施形態で用いるものであり,本形態では必ずしも必要ではない。その他の記憶部330は,その他の情報を記憶するためのものである。
【0033】
電源部150は,現像バイアス印加部160と,放電電圧印加部170とを有している。現像バイアス印加部160は,感光体ドラム10と現像ローラ50との間に現像バイアスを印加するためのものである。放電電圧印加部170は,感光体ドラム10と現像ローラ50との間に交番電圧を印加し,後述する放電開始電圧を求めるために用いられるものである。
【0034】
測定部400は,温度湿度センサ410と,放電電流センサ420とを有している。温度湿度センサ410は,画像形成装置1の使用環境である温度および湿度を測定するためのものである。放電電流センサ420は,感光体ドラム10と現像ローラ50との間に流れる電流を検出するための放電開始電圧検出部である。その測定された電流は,感光体ドラム10と現像ローラ50との間で放電が生じたか否かを判断するために用いられる(特許第3815356号公報の段落[0024]等参照)。
【0035】
【表1】

【0036】
4.電源部
電源部150は,感光体ドラム10と現像ローラ50との間に電圧を印加するためのものである。また,電源部150は,帯電ローラ20にもバイアスを印加することができるものである。制御部200は,電源部150の印加するバイアスを設定することができるようになっている。
【0037】
4−1.現像バイアス
現像バイアス印加部160は,直流電圧と交流電圧とを重畳的にした現像バイアスを印加するものである。この現像バイアスは,現像電圧と回収電圧とを交互に繰り返すものである(例えば,特開2009−300482号公報の図10等参照)。現像電圧は,現像ローラ50から感光体ドラム10へトナーを飛翔させる方向の電界を形成する電圧である。回収電圧は,感光体ドラム10から現像ローラ50へトナーを飛翔させる方向の電界を形成する電圧である。
【0038】
4−2.放電開始電圧の算出
放電電圧印加部170は,感光体ドラム10と現像ローラ50との間に電圧を印加することで,感光体ドラム10と現像ローラ50との間に放電を起こさせることができる。感光体ドラム10と現像ローラ50との間に印加する電圧が放電開始電圧を超えると,感光体ドラム10と現像ローラ50との間に放電が起こる。この放電開始電圧は,放電電流センサ420を用いることにより検出される。放電開始電圧は,感光体ドラム10と現像ローラ50との間の間隔に依存して変化する。すなわち,パッシェンの法則に従う。パッシェンの法則は次式
Vp = 312 + 6.2 × g ………(1)
Vp: 放電開始電圧[V]
g : 感光体ドラムと現像ローラとの間の間隔[μm]
により表される。ここでgは,8〜100μmの範囲内の値である。
【0039】
つまり,この放電開始電圧が分かれば,感光体ドラム10と現像ローラ50との間の間隔が分かる。式(1)より求めた感光体ドラム10と現像ローラ50との間の間隔と,初期における感光体ドラム10と現像ローラ50との間の間隔とを比較することにより,感光体ドラム10の減耗量を求めることができる。
【0040】
放電開始電圧を求めるためには,例えば,リーク電流検知回路およびインピーダンス測定回路を設ければよい(特許第4333288号公報)。これにより,放電開始電圧を算出することができる(例えば,特許第4333288号公報の段落[0029]〜[0039]および図2,図3参照)。また,その他の方法を用いることもできる(例えば,特許第3815356号公報参照)。
【0041】
なお,初期における感光体ドラム10と現像ローラ50との間の間隔は,機械的に測定してもよいし,パッシェンの法則(式(1))を用いて求めてもよい。
【0042】
5.感光体の表面電位の算出方法
本形態では,画像形成を行っていないときに,感光体ドラム10の表面電位の経時変化を算出して,その結果を画像形成時における帯電ローラ20の帯電電位にフィードバックする。これにより,感光体ドラム10の表層の減耗のみならず,トナーや外添剤の帯電ローラ20への付着や,放電生成物や劣化による帯電ローラ20の抵抗値の変化といった影響を排除して,帯電後における感光体ドラム10の表面電位をほとんど一定にすることができる。すなわち,画像形成時の背景部電位をほとんど一定にすることができる。そこで,帯電後における感光体ドラム10の表面電位を正確に算出する方法を以下に示す。
【0043】
本形態では,感光体ドラム10の表面電位を算出するために,放電開始電圧の検出を2回行う。すなわち,第1の検出(ゼロ電位放電開始電圧算出)と第2の検出(ノンゼロ電位放電開始電圧算出)とである。
【0044】
感光体ドラム10の表面電位における「初期」と「測定時」との差をΔVxとする。ΔVxは,初期から測定時にかけての感光体ドラム10の表面電位の変化量を示す像担持体表面電位変化量である。本形態では,「初期」と「測定時」とにおける感光体ドラム10の表面電位の差ΔVxを繰り込んで,帯電ローラ20による感光体ドラム10の帯電を行う。感光体ドラム10における「初期」と「測定時」とにおける表面電位の差ΔVxは,以下の式
ΔVx = ΔVz − ΔVy ………(2)
により求めることができる。ここで,詳しくは後述するが,ΔVyはゼロ電位放電開始電圧算出により算出される値である。ΔVzはノンゼロ電位放電開始電圧算出により算出される値である。
【0045】
本明細書では,以下,画像形成装置1の製品出荷時を「初期」,画像形成装置1を使用し続けて,実際に感光体ドラム10の表面電位の測定を行う時期を,便宜上「測定時」ということとする。初期と測定時とにおける感光体ドラム10の表面電位の差は,以下のとおりである。
ΔVx = Vx(f) − Vx(i) ………(3)
ΔVx : 感光体の表面電位の変化量
Vx(f): 感光体の表面電位(測定時)
Vx(i): 感光体の表面電位(初期)
【0046】
次に,ゼロ電位放電開始電圧算出部210は,ゼロ電位放電開始電圧の変化量を算出する。ゼロ電位放電開始電圧算出では,帯電ローラ20に電位を与えていない状態,すなわち帯電ローラ20がゼロ電位の状態で,感光体ドラム10と現像ローラ50との間で放電を起こさせる。その放電開始電圧の算出方法は,前述のとおりである。これにより,ゼロ電位放電開始電圧の現在値Vy(f)が算出される。ゼロ電位放電開始電圧の初期値Vy(i)は,製品出荷前に予め算出しておけばよい。これにより,感光体ドラム10の減耗量Δgを算出することができる。また,ゼロ電位放電開始電圧の変化量は,次式
Vc=0
ΔVy = Vy(f) − Vy(i)
= 6.2 × Δg ………(4)
ΔVy : ゼロ電位放電開始電圧の変化量
Vy(f): ゼロ電位放電開始電圧(測定時)
Vy(i): ゼロ電位放電開始電圧(初期)
Δg : 感光体ドラムの減耗量
Vc : 帯電ローラの電位
により求まる。ここで,感光体ドラム10の減耗量Δgは,感光体ドラム10と現像ローラ50との間の間隔の変化量に等しい。
【0047】
続いて,ノンゼロ電位放電開始電圧算出部220は,ノンゼロ電位放電開始電圧の変化量を算出する。ノンゼロ電位放電開始電圧算出では,帯電ローラ20に電位を与えている状態,すなわち帯電ローラ20がゼロ電位でない状態で,感光体ドラム10と現像ローラ50との間で放電を起こさせる。これにより,ノンゼロ電位放電開始電圧の現在値Vz(f)が算出される。ノンゼロ電位放電開始電圧の初期値Vz(i)は,製品出荷前に予め算出しておけばよい。ノンゼロ電位放電開始電圧の変化量は,次式
Vc≠0
ΔVz = Vz(f) − Vz(i) ………(5)
ΔVz : ノンゼロ電位放電開始電圧の変化量
Vz(f): ノンゼロ電位放電開始電圧(測定時)
Vz(i): ノンゼロ電位放電開始電圧(初期)
Vc : 帯電ローラの電位
により求まる。ここで帯電ローラ20に与える電位Vcは,ゼロ電位以外の任意の電位である。例えば,−450Vを与えることができる。ただし,「初期」において,−450Vのバイアスを印加して,ノンゼロ電位放電開始電圧Vz(i)を算出した場合,それ以降のノンゼロ電位放電開始電圧Vz(f)の算出においても,−450Vを用いる必要がある。
【0048】
なお,感光体ドラム10の表面電位Vx(f),Vx(i),ゼロ電位放電開始電圧Vy(f),Vy(i),ノンゼロ電位放電開始電圧Vz(f),Vz(i)は,それぞれ以下に示すように,温度湿度環境の影響を受ける。ここで,
Vx(f) = αc・Vs(f)
Vx(i) = αc・Vs(i)
Vy(f) = αd・V0(f)
Vy(i) = αd・V0(i)
Vz(f) = V1(f)
Vz(i) = V1(i) ………(6)
αc: 帯電ローラの環境係数
αd: 現像ローラの環境係数
V0(i): ゼロ電位放電開始電圧(初期,環境補正前)
V0(f): ゼロ電位放電開始電圧(測定時,環境補正前)
V1(i): ノンゼロ電位放電開始電圧(初期,環境補正前)
V1(f): ノンゼロ電位放電開始電圧(測定時,環境補正前)
Vs(i): 感光体の表面電位(初期)
Vs(f): 感光体の表面電位(測定時)
である。なお,帯電ローラ20の環境係数αc,現像ローラ50の環境係数αdは,前出の表1のとおりである。
【0049】
表1は,環境係数テーブル記憶部310に記憶された環境係数テーブルを例示する表である。表1には,帯電ローラ20の環境係数および現像ローラ50の環境係数が示されている。表1の番号1〜7は,低温低湿度環境(LL環境)のうちでも,その温度や湿度の違うものである。表1の番号8〜11は,常温常湿度環境(NN環境)のうちでも,その温度や湿度の違うものである。表1の番号12〜15は,高温高湿度環境(HH環境)のうちでも,その温度や湿度の違うものである。これらの係数は,温度や湿度により,帯電ローラ20および現像ローラ50の抵抗値等の変化を繰り込んだものである。
【0050】
これらの係数は,感光体ドラム10および現像ローラ50との間に形成される電界を形成する電圧の値に,温度湿度環境の違いに応じた補正を加えるためのものである。したがって,これらの係数は「1」に近い無次元の値である。帯電ローラ20の環境係数αcおよび現像ローラ50の環境係数αdは,低温低湿度となるほど小さい値をとり,高温高湿度となるほど大きい値をとる。なお,表1のうち,「…」で示した個所には,具体的な数値が入っている。
【0051】
そして,感光体表面電位変化量算出部230は,感光体ドラム10の表面電位の差ΔVxを算出する。具体的には,式(4)により算出したゼロ電位放電開始電圧の変化量ΔVy,式(5)により算出したノンゼロ電位放電開始電圧の変化量ΔVzを用いて,式(2)より,感光体ドラム10の表面電位の差ΔVxを求めるのである。
【0052】
6.帯電ローラの帯電電位
続いて,帯電ローラ電圧設定部240が帯電ローラ20に印加するバイアスVc(f)を決定する。具体的には,算出した初期と測定時とにおける感光体ドラム10の表面電位の差ΔVxから,帯電ローラ20へ印加するバイアスの設定を行う。この設定は,感光体ドラム10の表面電位をほぼ一定に保つために行うものである。
ΔVc = ΔVx ………(7)
ΔVc: 帯電ローラへ印加するバイアスの補正量
【0053】
このΔVcを用いて,帯電ローラ20へ印加するバイアスを以下のように新たに設定する。
Vc(f) = Vc(i) + ΔVc ………(8)
Vc(f): 帯電ローラへ印加するバイアス(変更後)
Vc(i): 帯電ローラへ印加するバイアス(初期)
ここで算出された帯電ローラ20に印加するバイアスVc(f)は,画像形成時に帯電ローラ20に印加される。このように,帯電ローラ20へ印加するバイアスを変更することにより,帯電後の感光体ドラム10の表面電位,すなわち背景部電位は初期における背景部電位とほぼ同じ電位となる。
【0054】
以上述べたように,本形態では,感光体の表面電位の変化量ΔVxを,帯電ローラ20へ印加するバイアスにフィードバックする。つまり,測定時における感光体ドラム10の表面電位Vx(f)を正確に算出しているのである。この表面電位Vx(f)は,感光体ドラム10の減耗量の他に,トナーや外添剤の帯電ローラへの付着や,放電生成物や劣化に起因する帯電ローラの抵抗値の変化といった,感光体の表面電位のずれを生ずるあらゆる原因を繰り込んだものとなっている。したがって,従来のように,汚損の程度を仮定する必要はない。そのため,汚損の程度を推測して得られた感光体の表面電位と,実際の感光体の表面電位とに差があらわれるおそれはない。
【0055】
7.変形例
7−1.環境係数
本形態では,帯電ローラ20および現像ローラ10について環境係数を導入し,放電開始電圧の電圧値に微調整を加えることとした。しかし,これらの環境係数を考慮しない場合であっても,本発明の効果をある程度は奏する。その場合,表1に示した係数の全てを「1」とすればよい。ただし,環境係数を導入して感光体の表面電位を算出したほうが,よりよいことに変わりない。
【0056】
8.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る画像形成装置1は,ゼロ電位放電開始電圧と,ノンゼロ電位放電開始電圧とを算出することで,感光体ドラム10の表面電位の差ΔVxを求めるものである。そして,感光体ドラム10の表面電位の差ΔVxに基づいて,帯電ローラ20に与える電位Vcを調整するものである。これにより,感光体ドラム10の経時劣化等によらず感光体ドラム10の表面電位を一定にすることのできる画像形成装置1が実現されている。
【0057】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置は,カラープリンタに限らない。すなわち,カラーに限らない。またプリンタに限らない。コピー機にも適用できる。また,公衆回線から印刷ジョブを受信して画像形成する機能を備えた画像形成装置やその他の画像を形成する装置に適用することができる。また,トナーの種類によらず適用できる。また,必ずしも両面印刷用の画像形成装置でなくとも適用することができる。もちろん,転写方式にもよらず適用することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本形態の画像形成装置は,第1の実施形態で説明した画像形成装置1とほぼ同様の構成を有するものである。本形態の画像形成装置が第1の実施形態の画像形成装置1と異なる点は,初期と測定時とにおける感光体ドラム10の表面電位の差ΔVxの値を,測定ごとに記憶する感光体表面電位変化量記憶部320を有することである。
【0059】
1.履歴
本形態では,一定期間おきに測定される感光体ドラム10の表面電位差ΔVxの値を予め履歴として記憶しておき,その記憶された履歴に基づいて,帯電ローラ20に印加するバイアスVcを決定するものである。
【0060】
ここで,感光体表面電位変化量記憶部320に記憶されている感光体表面電位変化量ΔVxの値の履歴を図6に示す。図6の横軸は印刷枚数である。縦軸は,感光体表面電位変化量ΔVxである。このように,感光体表面電位変化量ΔVxの測定を,予め定めた印刷枚数ごとに行えばよい。例えば,1000枚ごとに感光体表面電位変化量ΔVxの算出を行えばよい。
【0061】
本形態では,感光体表面電位変化量ΔVxとして,算出した値を用いる代わりに,それまでに算出した感光体表面電位変化量ΔVxの複数の値について補間した補間後のΔVxの値を用いる。そのために,それまでに蓄積した感光体表面電位変化量ΔVxの値について直線補間を行う。直線補間をした際の直線Lを図6に示す。そして,式(7)で用いるΔVxとして,図6中のSで示す値の代わりに,図6中のTで示す値を用いる。図6中のSは,印刷枚数nにおけるΔVxの算出値である。図6中のTは,印刷枚数nにおける直線補間した直線Lの値である。
【0062】
2.変形例
2−1.感光体表面電位変化量
感光体表面電位変化量算出部230は,ゼロ電位放電開始電圧と,ノンゼロ電位放電開始電圧とから,感光体ドラム10の感光体表面電位変化量の初期値ΔVx(i)を基準として算出することとした。しかし,感光体表面電位変化量記憶部320に記憶されている感光体表面電位変化量のうち,いずれかのデータを基準としてもよい。例えば,前回に算出した感光体表面電位変化量ΔVx(n−1)を基準としてもよい。
【0063】
2−2.補間方法
本形態では,感光体表面電位変化量記憶部320に記憶した表面電位差ΔVxの測定値を,直線補間により補間した。しかし,ラグランジュ補間やスプライン補間,その他の補間方法を用いてもよい。
【0064】
2−3.初期データの除去
本形態では,初期から測定時にわたって感光体表面電位変化量ΔVxの補間を行った。しかし,図7に示すように,印刷枚数が予め定めた印刷枚数閾値以下の場合には,0枚から印刷枚数閾値までのデータを除去しても構わない。もちろん,印刷枚数閾値を超える印刷枚数についての表面電位差ΔVxの値について補間を行うようにしてもよい。
【0065】
2−4.帯電ローラのチェック
また,図8に示すように,感光体表面電位変化量の算出値ΔVx(n)が,その直前に算出した感光体表面電位変化量の算出値ΔVx(n−1)よりも有意に大きかった場合には,帯電ローラ20に何らかの異常が発生したとして,帯電ローラ20の異常検出としても用いることができる。次式
ΔVx(n) − ΔVx(n−1) > W ………(9)
ΔVx(n) :n回目に測定した表面電位差
ΔVx(n−1):n−1回目に測定した表面電位差
W :帯電ローラの異常検出閾値
を満たす場合には,帯電ローラ20に異常が発生したと判断する。この閾値Wは,帯電ローラの異常を検出するために用いられる像担持体表面電位変化量閾値である。なお,この帯電ローラの異常を検出するのが,帯電ローラ異常判断部である。これは,図3に示した制御部200が有していることとすればよい。
【0066】
3.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る画像形成装置は,ゼロ電位放電開始電圧と,ノンゼロ電位放電開始電圧とを算出することで,感光体ドラム10の表面電位の差ΔVxを求めるものである。そして,感光体ドラム10の表面電位の差ΔVxの履歴に基づいて,帯電ローラ20に与える電位Vcを調整するものである。これにより,感光体ドラム10の経時劣化等によらず感光体ドラム10の表面電位を一定にすることのできる画像形成装置が実現されている。
【0067】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置は,カラープリンタに限らない。すなわち,カラーに限らない。またプリンタに限らない。コピー機にも適用できる。また,公衆回線から印刷ジョブを受信して画像形成する機能を備えた画像形成装置やその他の画像を形成する装置に適用することができる。また,トナーの種類によらず適用できる。また,必ずしも両面印刷用の画像形成装置でなくとも適用することができる。もちろん,転写方式にもよらず適用することができる。
【実施例】
【0068】
1.評価方法
ここで,画像形成装置の感光体ドラムの表面電位に関して行った実験について説明する。本実験では,1枚ジョブ,連続ジョブ,通常ジョブについて,常温常湿度環境(NN環境)下で画像形成装置の感光体ドラムの表面電位を測定したものである。ここで,1枚ジョブとは,1ジョブあたり1枚をプリントするものである。連続ジョブとは,1ジョブあたり100枚をプリントするものである。通常ジョブとは,1枚ジョブと連続ジョブとを交互に行うものである。
【0069】
また,高温高湿度環境(HH環境)下においても,同様の測定を行った。ここで採用したNN環境とは,温度23℃,湿度55%である。HH環境とは,温度30℃,湿度85%である。
【0070】
2.実験結果
続いて,各実施例における感光体ドラムの表面電位の差について算出した結果を示す。なお,直線補間等は行っていない。仮に,直線補間を行ったとしても,帯電ローラに印加するバイアスはそれほど変わらない。
【0071】
2−1.実施例1
実施例1では,NN環境下で通常ジョブを行った。表2に,ゼロ電位放電開始電圧を行った場合の算出結果を示す。表2に示すように,印刷枚数の増加とともに,測定時の放電開始電圧と初期の放電開始電圧とのずれが大きいものとなっている。また,表2の最右欄には,感光体ドラムの表層の減耗量Δgが示されている。
【0072】
表3に,ノンゼロ電位放電開始電圧を行った場合の算出結果を示す。また,表3には,初期における感光体の表面電位Vx(i)と,測定時における感光体の表面電位Vx(f)とが示されている。
【0073】
表4に,感光体の表面電位の初期値からのずれを示す。帯電ローラに印加するバイアスを初期値のままとした場合には,感光体ドラムの表面電位の初期値からのずれは−184.8Vであった。一方,式(8)を用いて帯電ローラに印加するバイアスを修正した場合には,感光体ドラムの表面電位の初期値からのずれは±10V以内であった。
【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
実施例2では,NN環境下で連続ジョブを行った。表5に,ゼロ電位放電開始電圧を行った場合の算出結果を示す。表5に示すように,印刷枚数の増加とともに,測定時の放電開始電圧と初期の放電開始電圧とのずれが大きいものとなっている。また,表5の最右欄には,感光体ドラムの表層の減耗量Δgが示されている。なお,減耗量Δgがマイナスの値となっているが,算出による誤差の範囲内である。
【0078】
表6に,ノンゼロ電位放電開始電圧を行った場合の算出結果を示す。また,表6には,初期における感光体の表面電位Vx(i)と,測定時における感光体の表面電位Vx(f)とが示されている。
【0079】
表7に,感光体の表面電位の初期値からのずれを示す。帯電ローラに印加するバイアスを初期値のままとした場合には,感光体ドラムの表面電位の初期値からのずれは−140.7Vであった。一方,式(8)を用いて帯電ローラに印加するバイアスを修正した場合には,感光体ドラムの表面電位の初期値からのずれは±10V以内であった。
【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

【0082】
【表7】

【0083】
2−3.実施例3
実施例3では,NN環境下で1枚ジョブを行った。表8に,ゼロ電位放電開始電圧を行った場合の算出結果を示す。表8に示すように,印刷枚数の増加とともに,測定時の放電開始電圧と初期の放電開始電圧とのずれが大きいものとなっている。また,表8の最右欄には,感光体ドラムの表層の減耗量Δgが示されている。
【0084】
表9に,ノンゼロ電位放電開始電圧を行った場合の算出結果を示す。また,表9には,初期における感光体の表面電位Vx(i)と,測定時における感光体の表面電位Vx(f)とが示されている。
【0085】
表10に,感光体の表面電位の初期値からのずれを示す。帯電ローラに印加するバイアスを初期値のままとした場合には,感光体ドラムの表面電位の初期値からのずれは−236.3Vであった。一方,式(8)を用いて帯電ローラに印加するバイアスを修正した場合には,感光体ドラムの表面電位の初期値からのずれは±10V以内であった。
【0086】
【表8】

【0087】
【表9】

【0088】
【表10】

【0089】
2−4.実施例4
実施例4では,HH環境下で1枚ジョブを行った。表11に,ゼロ電位放電開始電圧を行った場合の算出結果を示す。表11に示すように,印刷枚数の増加とともに,測定時の放電開始電圧と初期の放電開始電圧とのずれが大きいものとなっている。また,表11の最右欄には,感光体ドラムの表層の減耗量Δgが示されている。
【0090】
表12に,ノンゼロ電位放電開始電圧を行った場合の算出結果を示す。また,表12には,初期における感光体の表面電位Vx(i)と,測定時における感光体の表面電位Vx(f)とが示されている。
【0091】
表13に,感光体の表面電位の初期値からのずれを示す。帯電ローラに印加するバイアスを初期値のままとした場合には,感光体ドラムの表面電位の初期値からのずれは−239.8Vであった。一方,式(8)を用いて帯電ローラに印加するバイアスを修正した場合には,感光体ドラムの表面電位の初期値からのずれは±10V以内であった。
【0092】
【表11】

【0093】
【表12】

【0094】
【表13】

【0095】
以上の実施例1〜4で示したように,本発明の画像形成装置では,通常ジョブ,連続ジョブ,1枚ジョブ等のユーザによる使用状況によらず,画像形成装置の使用による感光体の表面電位の変化はほとんどない。すなわち,画像の背景部電位がほとんど一定である。したがって,使用を継続しても画像の品質が劣化しにくい画像形成装置が実現されている。
【符号の説明】
【0096】
1…画像形成装置
10…感光体ドラム
20…帯電ローラ
30…露光装置
40…現像装置
50…現像ローラ
70…定着装置
71…定着ローラ
72…加圧ローラ
100Y,100M,100C,100K…画像形成部
101…中間転写ベルト
111…1次転写ローラ
115…2次転写ローラ
150…電源部
160…現像バイアス印加部
170…放電電圧印加部
200…制御部
210…ゼロ電位放電開始電圧算出部
220…ノンゼロ電位放電開始電圧算出部
230…感光体表面電位変化量算出部
240…帯電ローラ電圧設定部
250…その他の制御部
300…記憶部
310…環境係数テーブル記憶部
320…感光体表面電位変化量記憶部
330…その他の記憶部
400…測定部
410…温度湿度センサ
420…放電電流センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と,
前記像担持体を帯電させるための帯電ローラと,
前記帯電ローラにより帯電された前記像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と,
前記像担持体の静電潜像にトナーを付与する現像部材と,
現像されたトナー像をシートに転写するための転写部と,
前記像担持体と前記現像部材との間に電圧を印加するとともに前記帯電ローラにバイアスを印加する電源部と,
前記像担持体と前記現像部材との間の放電開始電圧を検出する放電開始電圧検出部とを有する画像形成装置であって,
前記帯電ローラがゼロ電位の状態下にて前記放電開始電圧検出部により検出された値に基づいて算出される第1のゼロ電位放電開始電圧と,前記帯電ローラがゼロ電位の状態下にて前記放電開始電圧検出部により前記第1のゼロ電位放電開始電圧の算出の後に検出された値に基づいて算出される第2のゼロ電位放電開始電圧との差から,ゼロ電位放電開始電圧の変化量を算出するゼロ電位放電開始電圧算出部と,
前記帯電ローラがゼロ電位でない状態下にて前記放電開始電圧検出部により検出された値に基づいて算出される第1のノンゼロ電位放電開始電圧と,前記帯電ローラがゼロ電位でない状態下にて前記放電開始電圧検出部により前記第1のノンゼロ電位放電開始電圧の算出の後に検出された値に基づいて算出される第2のノンゼロ電位放電開始電圧との差から,ノンゼロ電位放電開始電圧の変化量を算出するノンゼロ電位放電開始電圧算出部と,
その算出したゼロ電位放電開始電圧の変化量とノンゼロ電位放電開始電圧の変化量とから,像担持体表面電位変化量を算出する像担持体表面電位変化量算出部と,
その算出した像担持体表面電位変化量に基づいて,前記電源部が前記帯電ローラに印加するバイアスを設定する帯電装置電圧設定部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって,
前記ゼロ電位放電開始電圧算出部は,
前記第1のゼロ電位放電開始電圧として,ゼロ電位放電開始電圧の初期値を用いるとともに,
前記第2のゼロ電位放電開始電圧として,ゼロ電位放電開始電圧の現在値を用いるものであり,
前記ノンゼロ電位放電開始電圧算出部は,
前記第1のノンゼロ電位放電開始電圧として,ノンゼロ電位放電開始電圧の初期値を用いるとともに,
前記第2のノンゼロ電位放電開始電圧として,ノンゼロ電位放電開始電圧の現在値を用いるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置であって,
前記ゼロ電位放電開始電圧算出部は,
前記第1のゼロ電位放電開始電圧として,ゼロ電位放電開始電圧の現在値より前の値を用いるとともに,
前記第2のゼロ電位放電開始電圧として,ゼロ電位放電開始電圧の現在値を用いるものであり,
前記ノンゼロ電位放電開始電圧算出部は,
前記第1のノンゼロ電位放電開始電圧として,ノンゼロ電位放電開始電圧の現在値より前の値を用いるとともに,
前記第2のノンゼロ電位放電開始電圧として,ノンゼロ電位放電開始電圧の現在値を用いるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の画像形成装置であって,
前記像担持体表面電位変化量算出部により算出された像担持体表面電位変化量を履歴として記憶する像担持体表面電位変化量記憶部を有し,
前記帯電装置電圧設定部は,
前記像担持体表面電位変化量記憶部により記憶された像担持体表面電位変化量を補間して,その補間後の像担持体表面電位変化量の値に基づいて,前記帯電ローラに印加するバイアスを設定するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置であって,
前記像担持体表面電位変化量算出部により算出された像担持体表面電位変化量が,
前回に算出された像担持体表面電位変化量よりも予め定めた像担持体表面電位変化量閾値よりも大きい場合に,
前記帯電ローラに異常があると判断するとともに,
前記像担持体表面電位変化量算出部により算出された像担持体表面電位変化量が,
前回に算出された像担持体表面電位変化量よりも予め定めた像担持体表面電位変化量閾値以下である場合に,
前記帯電ローラに異常がないと判断する帯電ローラ異常判断部を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−63484(P2012−63484A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206390(P2010−206390)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】