説明

画像形成装置

【課題】ファーストプリントに要する時間を短縮できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】印刷媒体へ印刷する画像形成部110と、印刷ジョブデータを画像展開し、画像形成部が印刷できる印刷データを生成する画像展開部21と、画像展開部21により画像展開された印刷データを一時的に記憶するDRAM23と、DRAM23から画像形成部へ印刷データを転送し、印刷データに基づいて前記画像形成部に印刷を実行させる制御部20と、画像展開部21により画像展開される各ページの印刷データ容量を算出し、DRAM23の空容量とを比較する算出部22と、を備える画像形成装置において、算出部22により前記印刷データ容量がDRAM23の空容量以下であると判定されると、前記印刷ジョブデータは、前記画像展開部21により印刷データへと画像展開され、DRAM23へ記憶され、制御部20により前記画像形成部110に転送され印刷処理が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部装置から受信した印刷ジョブを画像展開し印刷を実行する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像形成装置は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介し外部端末であるPC(Personal Computer)やスキャナ等の外部装置と接続され、これらの外部装置から印刷ジョブを受信し、受信した印刷ジョブに係るデータをインクジェットヘッド等の画像形成部が印刷を実行することが可能なデータへと画像展開し、印刷を実行することができる(下記特許文献1)。
【0003】
上述の印刷過程では、印刷に必要なデータの記憶、削除等は画像形成装置内に搭載されているHDD(Hard Disk Drive)等の記憶部(記憶媒体)を介して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−022545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、印刷指示がなされてから印刷物を得られるまでに要する時間(ファーストプリント時間)が重要視され、画像形成装置の性能を示す指標として用いられている。もちろんこのファーストプリント時間は短いほど画像形成装置の性能が良いということになる。
【0006】
従来、外部装置から受信した印刷ジョブを印刷するには、まず、HDDに受信したデータを保存し、この保存されたデータを画像形成部が印刷処理可能なデータへと画像展開し、この画像展開されたデータがDRAM(Dynamic Random Access Memory)等のメモリに一時記憶され、画像形成部がこの保存されたデータに基づき印刷処理を実行していた。
【0007】
印刷ジョブデータが小容量であれば、HDDを介する必要のないものも存在する。しかし、従来の印刷処理法ではいかなるデータであってもHDDを介して印刷処理がなされていたのでファーストプリント時間が長く、また、印刷処理の生産性を向上させ難いという課題が生じていた。ここで、印刷処理の生産性とは単位時間辺りに印刷処理できる枚数のことである。
【0008】
そこで本発明は、上述の課題に鑑み、これを解決できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置の第1の特徴は、印刷媒体へ印刷する画像形成部と、印刷ジョブデータを画像展開し、画像形成部が印刷できる印刷データを生成する画像展開部と、前記画像展開部により画像展開された印刷データを一時的に記憶するメモリと、前記メモリから画像形成部へ印刷データを転送し、該印刷データに基づいて前記画像形成部に印刷を実行させる制御部と前記画像展開部により画像展開される各ページの印刷データ容量を算出し、前記メモリの空容量とを比較する算出部と、を備える画像形成装置において、前記算出部により前記印刷データ容量が前記メモリの空容量以下であると判定されると、前記印刷ジョブデータは、前記画像展開部により印刷データへと画像展開された後に前記メモリへ記憶され、前記制御部は前記メモリに記憶された前記印刷データを前記画像形成部に転送し印刷処理が実行されることにある。
【0010】
本発明に係る画像形成装置の第2の特徴は、更に、前記印刷ジョブデータを記憶する記憶部を更に備え、前記算出部により前記印刷データの容量が前記メモリの空容量を超える場合には、前記制御部は、前記受信した印刷ジョブのうち前記メモリの空容量を超える印刷ジョブデータを前記記憶部に記憶させることにある。
【0011】
本発明に係る画像形成装置の第3の特徴は、更に、前記画像展開部は更に前記記憶部に記憶された前記印刷ジョブデータを印刷データに画像展開するものであり、前記制御部は、印刷処理が完了した印刷データを前記メモリから削除し、前記メモリに記憶されたすべての印刷データが削除されると、前記記憶部に記憶された印刷ジョブデータの印刷処理を開始することにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る画像処理装置の第1の特徴によれば、印刷ジョブの印刷処理を実行するにあたり、印刷ページ順に順次、現在のメモリ空容量と印刷データ容量とを比較しているため、記憶部を介さずとも印刷処理が実行可能となるため、ファーストプリント時間が短縮されるとともに印刷処理の生産性が向上できる。
【0013】
本発明に係る画像処理装置の第2の特徴によれば、印刷ジョブに係るデータのうち、メモリ容量が不足するデータについて記憶部を介した印刷処理がなされるため、上述した第1の特徴と同様の効果を奏するとともに、データ容量の大きい印刷ジョブに対しても対応できる。
【0014】
本発明に係る画像処理装置の第3の特徴によれば、優先記憶先のメモリに記憶された印刷データの処理が終了した後に、記憶部に記憶されたデータの印刷処理を開始するため、1つの印刷ジョブで複数の記憶先を使用した印刷ジョブであっても、ページ順を揃えた印刷ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る印刷装置の概要を示す図
【図2】画像形成装置のブロック図
【図3】印刷ジョブに係るデータの受信動作を説明するフロー図
【図4】印刷動作を表すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(印刷装置の全体構成)
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置100の概要を示す図である。本実施形態では、画像形成装置100は、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の記録用紙上に複数の画像を互いに重なり合うように形成するインクジェット方式のライン型カラープリンタを例に説明する。
【0017】
図1に示すように画像形成装置100は、環状の搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する装置であり、搬送経路は、記録媒体を供給する給紙系搬送経路FRと、この給紙系搬送経路FRからヘッドユニット110を経て排紙経路DRへ至る通常経路CRと、通常経路CRに分岐接続された反転経路SRとから概略構成されている。
【0018】
給紙系搬送経路FRにおいて、印刷媒体の供給を行う給紙機構としては、筐体側面の外部に配設されたサイド給紙台120と、筐体内部に設けられた複数の給紙トレイ(130a、130b、130c、130d)とが備えられている。また、印刷済の印刷媒体を排出する排紙機構として排紙口140を備えている。
【0019】
サイド給紙台120、給紙トレイ130のいずれかの給紙機構から給紙された印刷媒体は、ローラ等の駆動機構によって筐体内の給紙系搬送経路FRに沿って搬送され、印刷媒体の先頭部分の基準位置であるレジスト部Rに導かれる。レジスト部Rのさらに印刷媒体搬送方向下流側には、複数の印字ヘッドを備えたヘッドユニット110が設けられている。印刷用紙は、ヘッドユニット110の対向面に設けられた搬送ベルト160によって印刷条件により定められる速度で搬送されながら、各印字ヘッドから吐出されたインクによりライン単位で画像形成される。
【0020】
印刷済の印刷媒体は、さらに、ローラ等の駆動機構によって通常経路CR上を搬送される。印刷媒体の片側の面のみに印刷を行う片面印刷の場合は、そのまま排紙経路DRを経て、排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に印刷面を下にして積載されていく。排紙台150は、筐体から突出したトレイ形状をしており、ある程度の厚みを有している。排紙台150は、画像形成装置本体に対して傾斜しており、傾斜の下位置に形成された壁により、排紙口140から排紙された印刷媒体が自然に整えられて重なっていくようになっている。
【0021】
一方、印刷媒体の両面に印刷を行う両面印刷の場合は、表面(最初に印刷される面を「表面」、次に印刷される面を「裏面」とする)印刷終了時には排紙経路DR側に導かれずに、さらに筐体内を搬送され、反転経路SRに送出される。このため、画像形成装置100は、裏面印刷用に搬送経路を切り替えるための切替機構170が設けられており、切替機構170によって排出経路へ送出されなかった印刷媒体は、反転経路SRに引き込まれる。この切替機構170については、後述する。
【0022】
この反転経路SRでは、通常経路CRから印刷媒体が受け渡され、印刷媒体を往復させることにより印刷媒体の表裏を反転させる、いわゆるスイッチバックを行う。そして、ローラ等の駆動機構によって、切替機構172を経由して通常経路CRに戻され、レジスト部Rを経て再給紙されて、表面と同様の手順によって裏面の印刷が行われる。その後、裏面の印刷が行われ、両面に画像が形成された印刷媒体は、排紙経路DRを通じて排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に積載されていく。
【0023】
画像形成装置100では、給紙された印刷媒体の先頭部分の基準位置となるレジスト部Rには、両面印刷時に片面印刷済の印刷媒体も再給紙されてくる。このため、レジスト部Rの直前部分には、新規に給紙される印刷媒体の搬送経路と、裏面印刷の印刷媒体が循環して搬送されてくる再給紙経路とが合流する合流地点が形成される。レジスト部Rは、給紙系搬送経路FRと通常経路CRとの合流点近傍において、印刷媒体の送り出しを行う。
【0024】
なお、本実施形態では、上記合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙系搬送経路FRとし、それ以外の経路を搬送経路とする。この搬送経路は環状をなし、上述したように通常経路CRと反転経路SRとが含まれる。
【0025】
本実施形態においては、近年の高速搬送の要求に応じたものであり、ある印刷媒体を給紙した後、その印刷媒体に印刷が施され排紙されるのを待って次の印刷媒体を給紙するのではなく、用紙搬送のスケジューリングにより、先行する印刷媒体が排紙される前に、後続の印刷媒体を給紙して、所定の間隔で連続的に印刷することができるようになっている。したがって、両面印刷時の通常のスケジューリングでは、表面の印刷媒体を給紙する際に、反転経路SRから戻ってきた印刷媒体が挿入される位置を確保するように、予めスペースを確保しておく。これにより、本装置では、表面の印刷と裏面の印刷とを並行させることができ、片面印刷時に対して2倍の生産性を確保することができる。
【0026】
搬送ベルト160は、ヘッドユニット110に対向する面の前端及び後端に配設された駆動ローラ161及び従動ローラ162に掛け渡されており、図1中時計回り方向に回転移動する。また、搬送ベルト160の上面には、そのベルト移動方向に沿って、4色のインクヘッドが並べて配置され、複数の画像を互いに重なり合うようにしてカラー画像を形成するヘッドユニット110が対向配置されている。
(画像形成装置の制御ブロック)
【0027】
図2は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。図2に示すように本実施の形態に係る画像形成装置100は、外部通信インターフェース(以下、外部通信IFと略す。)10と、制御部20と、第1記憶部であるHDD30と、画像形成部110と、印刷媒体搬送部40と、操作パネル部340とを備え、外部通信IF10を介し、画像読取装置であるスキャナ1、及び外部端末であるPC2と接続さている。
【0028】
スキャナ1は画像形成装置100と接続され、図示しないが、原稿を載置するコンタクトガラス、このコンタクトガラスに対して接離自在に設けられたカバー、コンタクトガラス上に載置された原稿を走査する走査ユニット、走査された画像を集束するレンズ、及び集束された画像を処理する画像処理部を備えている。そして、走査ユニットがコンタクトガラス上に載置された原稿を1ライン毎に走査し、画像処理部が走査された画像を処理することにより、画像データを読み取る。また、スキャナ1は通常、ADF(Auto Document Feeder)機能を有しており、これを使用して画像データを読み取ることもできる。ここで、スキャナ1から送られるデータはRGB形式のデータであるが、制御部20、又は画像展開部21により、HDD30に記憶される場合は画像形成装置100が解釈可能なデータである印刷ジョブデータとして、DRAM23に記憶される場合は画像形成部110が印刷実行可能な印刷データ(例えば、ビットマップデータ)として記憶される。
【0029】
PC2には、図示しないプリンタドライバがインストールされており、ユーザーの印刷指示により、印刷ジョブをPDL(ページ記述言語)形式等の印刷ジョブデータとして画像形成装置に送信する。
【0030】
HDD30は、スキャナ1又はPC2から受信した印刷ジョブのうち、DRAM23の容量を超える印刷ジョブをページごとに印刷ジョブデータとして記憶する記憶部、又は保存指示が要求されている印刷ジョブに関しては印刷ジョブに係るデータをすべて印刷ジョブデータとして記憶する記憶部として作用する。HDD30は、本発明の記憶部に相当する。
【0031】
制御部20は、各種の演算処理やデータの入出力等の処理を実行するCPU(Central Processing Unit)等からなり、ROM24に記憶されている制御プログラムに応じた処理を行うことによって、画像処理装置100全体の動作を制御するものである
【0032】
また、制御部20は、以下の画像展開部21、算出部22、DRAM23及びROM24を有する。
【0033】
画像展開部21は、スキャナ1又はPC2から送られた印刷ジョブデータを、又はHDD30に記憶された印刷ジョブデータ読み出し、この読み出された印刷ジョブデータを画像形成部110が印刷実行可能な印刷データに画像展開し、DRAM23に一時的に記憶させる。
【0034】
算出部22は、スキャナ1又はPC2から送られる印刷ジョブに係る印刷ジョブデータ、HDD30に記憶された印刷ジョブデータを解析し、画像展開部21にて画像展開された場合の印刷データの容量が、DRAM23の空容量を超えないか否かを判断する。
【0035】
DRAM23は、前述したように一時的なデータの保存や、演算時における制御部30のワーク領域として使用される。本発明では、後述する画像展開(画像形成装置100が有するインクジェットヘッド各色に対応する色分解処理)後の印刷データを所定のライン単位、又はページ単位で一時的に記憶する記憶部として作用する。DRAM23は、本発明のメモリに相当する。
【0036】
制御部20は、更に、DRAM23に記憶された印刷データを読み出し、画像形成部110へこの印刷データを転送し、転送を終えた印刷データを削除する。この転送、削除動作は、所定数のライン単位又はページ単位で実行される。
【0037】
ROM24は、画像形成装置100の動作のための制御プログラム等を格納する。
【0038】
画像形成部110は、制御部20により転送された印刷データに基づいて印刷媒体に対して印刷(画像形成)を実行する。
【0039】
印刷媒体搬送部40は、制御部20により制御され、画像形成部110が印刷を実行するにあたり必要な印刷媒体の給紙、搬送、排紙等を実行する。
【0040】
操作パネル部340は、表示/入力パネルや各種操作キー(図示せず)とからなり、ユーザーの操作を受け付け、ユーザー操作に基づく操作信号を制御部20に出力する。表示/入力パネルは、前面に配置された感圧式あるいは静電式の透明なタッチパネルと、このタッチパネルの裏面に配置された液晶表示パネルとで構成される。ユーザーは、液晶表示パネルの表示画面を見ながら、タッチパネルの表面を指などで直接触れることで入力操作や各規定値の変更を行うことができる。
(外部からの印刷ジョブ)
【0041】
スキャナ1から送られる印刷ジョブは、光学読取されるためページごとにRGBデータにて画像形成装置100に送られ、制御部20にて印刷ジョブデータへ、又は画像展開部21にて印刷データへと変換される。また、PC2から送られる印刷ジョブは、ページごとにPDL形式の印刷ジョブデータとして送信される。PC2からの印刷ジョブは、ファイルの先頭にヘッダ情報(ジョブ設定情報ともいう。)、その後に画像データというデータ構造からなる。PC2からの印刷ジョブのヘッダ情報には、印刷処理を実行するにあたり必要な情報、例えば画像データの枚数(総印刷枚数)、印刷ジョブのカラー属性情報、解像度、印刷倍率、プリント濃度、入力サイズ(原稿サイズ)、出力サイズ(使用する印刷用紙サイズ)等が含まれる。また、スキャナ1からの印刷ジョブにも、ユーザーの原稿読取設定により、上述した印刷処理を実行するにあたり必要な情報が含まれる。
(画像形成装置の作用)
(印刷ジョブ受信の動作フロー)
【0042】
図3は、画像形成装置100が印刷ジョブに係るデータの受信動作を説明するフロー図である。この図3を参照してデータ受信の流れを説明する。なお、本明細書図面中の「S」は処理ステップを表す。また、この受信動作に係る印刷ジョブにはスキャナ1、PC2双方からの印刷ジョブが含まれる。
【0043】
ユーザーからの印刷指示があると、画像形成装置100は印刷ジョブの受信を開始する。まず、受信枚数Nに1が代入される(S10)。ここで受信開始当初はN=1であるため(S11;Yes)ステップ13(S13)へと処理が進められる。
【0044】
算出部22は、受信した印刷ジョブの情報を解析し、印刷ジョブのカラー属性等、印刷に必要な情報を取得する。また、画像展開部21により画像展開され生成される場合の1枚目の印刷データの容量がDRAM23の空容量より大きいか否かが判断される(S13)。ステップ13にて、DRAM23の空容量が十分であると判断された場合(S13;Yes)、ステップ14に処理が進められる。
【0045】
ステップ14にて、受信した画像データの保存が不要な場合、すなわちユーザーによるHDD30への保存設定がなされていない場合(S14;Yes)、画像展開部21にて画像展開された印刷データがDRAM23へと記憶される(S15)。
【0046】
ステップ13にて、DRAM23の空容量が不足していると判断された場合(S13;No)、制御部20は受信した印刷ジョブに係るデータを保存データとしてHDD30へと記憶させる(S17)。なお、HDD30への記憶させる際、制御部20はHDD30内に新たなファイルを作成し、このファイル内に保存データを記憶させる。
【0047】
また、ステップ14にて、受信した画像データの保存が必要な場合、すなわち保存設定がなされていた場合(S14;No)、制御部20は受信した印刷ジョブに係るデータを印刷ジョブデータとしてHDD30に記憶させるとともに、画像展開部21は受信したデータを印刷データへと画像展開し、この印刷データをRAM21に記憶させる(S16)。
【0048】
ステップ18にて、ステップ15〜17のうちのいずれか1つの選択されたステップの1ページ分の動作が終了すると(S18;Yes)、制御部20は印刷ジョブ枚数P枚分の読取が終了したか否かを判断する(S19)。
【0049】
ステップ19にてP枚分の読取が終了していない場合には、NにN+1の値が代入され(S20)、再びステップ11に処理が戻される。この場合、N≠1であるため(S11;No)、前回DRAM23への記憶動作を行ったか否かが判断される(S12)。
【0050】
前回DRAM23への記憶動作が行われていない場合(S12;No)、以降の印刷ジョブの画像データはHDD30に記憶されることになる(S17)。
【0051】
前回DRAM23への記憶動作が行われている場合(S12;Yes)、ステップ14へ処理が進み、前述した動作(S15orS16、S18、S19)が繰り返される。
【0052】
ステップ19にてP枚分の読取が終了した場合(S19;Yes)、印刷ジョブの受信動作を終了する(S21)。
【0053】
上述したように、画像形成装置100が受信した印刷ジョブは、算出部22により、まず、最初の1ページ目が画像展開された場合の印刷データを記憶するために必要な容量がDRAM23に空容量として存在するかが判定される。したがって、DRAM23の空容量が少なくとも印刷ジョブに係る1ページ目に要する容量以上存在する場合、当該ページの印刷処理においてはHDD30を介す必要がない。また、DRAM23の空容量のみで印刷ジョブに係る全ページの印刷処理が実行できる場合には、印刷ジョブに係るすべてのページの印刷処理が、HDD30を介する必要がなくなる。したがって、ファーストプリント時間が短縮できるとともに、印刷処理の生産性が向上できる。更に算出部22により、DRAM23の空容量が不足していると判定された場合には、印刷ジョブに係るデータの記憶先を切り替え、HDD30に記憶させるようにしている。よって、データ容量の大きな印刷ジョブが送られたとしても対応できる。
【0054】
なお、算出部22はDRAM23の空容量との比較とを行っているが、DRAM23内に印刷データを一時記憶させる専用領域を持たせ、この専用領域内の空容量との比較を行うようにしても良い。また、この専用領域の容量は、操作パネル部340を操作することでユーザーが適宜設定できるようにしても良い。更に、オフィス等で画像形成装置100を複数人が共同使用するような場合は、各個人に対して個人専用領域として容量を割り当てるようにしても良い。
【0055】
なお、DRAM23の容量が十分存在しなくなり、印刷ジョブの途中からHDD30に記憶先を切り替えることになった場合であって、印刷ジョブ全てをHDD30に保存する要求が有る場合、HDD30を介さずに印刷を実行するデータであっても、HDD30にすべて保存されることになる(図2中のS16の場合)。すると、DRAM23内のすべての印刷データの印刷が終了した後に、HDD30内のデータの印刷処理を実行することになるが、この際、既に印刷済みのデータも含まれるため、これらが重複印刷されないように印刷処理がなされた保存データに関しては、制御部20によりフラグ等の目印を付するようにすれば良い。また、ステップ37において印刷が終了するときに、制御部20によりこの目印を削除させればよい。こうすれば重複印刷が防止できるとともに、次回、保存データを読み出して印刷処理を実行する際にもすべての保存データが印刷処理対象とできる。
(印刷動作のフロー)
【0056】
図4は、印刷動作を表すフロー図である。図4にて画像形成装置100が受信し、DRAM23又はHDD30に記憶されたデータの印刷に係る動作を説明する。
【0057】
制御部20は、印刷ジョブの受信を開始すると、制御部20は、DRAM23に画像展開部21の画像展開により生成された印刷データが記憶されているか否かを検出する(S30)。
【0058】
ステップ30にて、DRAM23に印刷データが記憶されていることが検出されると(S30;Yes)、制御部20は、この印刷データを画像形成部110へと転送する(S31)。
【0059】
印刷データ1枚分の転送処理が完了すると(S32;Yes)、制御部20は、印刷処理を実行するとともに(S33)、再びステップ30の処理に戻り、印刷処理を継続する。
【0060】
画像形成部110は、この転送された印刷データに基づき印刷処理を実行する(S32)。印刷処理の際には制御部20は、給紙機構120、130等の各給紙手段、搬送ベルト160等の各搬送手段、排紙台150等の排紙手段からなる印刷媒体搬送部40と、画像形成部110を制御しつつ印刷を実行する。即ち、制御部20は、給紙手段を制御し、給紙台に積載された印刷媒体を1枚ずつ給紙させ、搬送手段を制御し、給紙された印刷媒体を画像形成部110へと搬送させる。その後、制御部20は、画像形成部40を制御し、印刷媒体に対し印刷データに基づいて印刷を実行させ、搬送手段を制御して印刷がなされた印刷媒体を排紙手段まで搬送し、排紙手段が排紙するように制御する。
【0061】
制御部20は、DRAM23から画像形成部110へ印刷データを転送を終えた場合、又は画像形成部110による印刷処理が終了し、排紙手段に印刷された印刷媒体が排出されたことが検出された場合、DRAM23内の印刷データを削除する。
【0062】
ステップ30にて、DRAM23に印刷データが記憶されていない場合(S30;No)、制御部20はHDD30に印刷すべきデータが記憶されているか否かを検出する(S34)。
【0063】
HDD30に印刷すべきデータが記憶されている場合(S34;Yes)、算出部22により、画像展開部21にて生成される印刷データの容量がDRAM23の空容量以内であるか否かを算出する。
【0064】
算出部22により、DRAMの空容量が存在すると判定されると(S35;Yes)、画像展開部21はHDD30内の印刷ジョブデータを読み出し、画像展開処理を実行し印刷データを生成する。その後、画像展開部21は、この生成された印刷データをDRAM23に一時的に記憶する(S36)。なお、この画像展開処理は、画像形成部110を構成するCMYKのインクジェットヘッド4色分を略同時にライン単位で行っても良いし、各色ごとに1色ずつ行っても良い。
【0065】
制御部20は、再びステップ30に処理を進め、DRAM23に印刷データが記憶されていることになるので(S30;Yes)、ステップ31以降の処理を繰り返す。
【0066】
ステップ34にて印刷すべきデータがHDD30に無いと判断されると、制御部20は印刷処理を終了する(S37)。
【0067】
なお、上述したDRAM23から画像形成部110への印刷データの転送は、所定のライン単位で行っても良いし、各ページ分のデータが揃ってから行っても良い。所定ライン単位で転送する場合には、DRAM23から画像形成部110への転送速度、画像形成装置100の生産性を考慮し、印刷媒体への画像欠損が生じないようなライン単位で転送を実行する必要があることは言うまでもない。
【0068】
本発明に係る実施例によれば、記憶先をDRAM23からHDD30へ切り替えたとしても、DRAM23内に記憶された印刷データすべてを印刷処理してからHDD30に記憶された印刷ジョブデータの印刷を実行するため、ページ順を揃えた印刷処理が実行できる。
【0069】
なお、本実施形態では、便宜上、印刷ジョブの受信動作と印刷動作を分けて説明しているが、これらは並列に処理される。すなわち、DRAM23へ記憶されている印刷データは、画像形成部110へ転送されると制御部20により削除される。削除後には、DRAM23の空容量は増加するため、算出部22の比較対象が変化することになる。算出部22はこの情報を用いることにより、印刷データをDRAM23へ一時記憶可能か否かを判定することになる。
【0070】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。また、上述した各実施形態の構成の機能、接続関係等は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 画像読取装置(スキャナ)
2 外部端末(PC)
10 外部通信IF
20 制御部
21 画像展開部
22 算出部
23 メモリ(DRAM)
24 ROM
30 記憶部(HDD)
40 画像形成部
100 画像形成装置
110 画像形成部
340 操作パネル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体へ印刷する画像形成部と、
印刷ジョブデータを画像展開し、画像形成部が印刷できる印刷データを生成する画像展開部と、
前記画像展開部により画像展開された印刷データを一時的に記憶するメモリと、
前記メモリから画像形成部へ印刷データを転送し、該印刷データに基づいて前記画像形成部に印刷を実行させる制御部と、
前記画像展開部により画像展開される各ページの印刷データ容量を算出し、前記メモリの空容量とを比較する算出部と、
を備える画像形成装置において、
前記算出部により前記印刷データ容量が前記メモリの空容量以下であると判定されると、前記印刷ジョブデータは、前記画像展開部により印刷データへと画像展開された後に前記メモリへ記憶され、前記制御部は前記メモリに記憶された前記印刷データを前記画像形成部に転送し印刷処理が実行されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷ジョブデータを記憶する記憶部を更に備え、
前記算出部により前記印刷データの容量が前記メモリの空容量を超える場合には、前記制御部は、前記受信した印刷ジョブのうち前記メモリの空容量を超える印刷ジョブデータを前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像展開部は更に前記記憶部に記憶された前記印刷ジョブデータを印刷データに画像展開するものであり、
前記制御部は、印刷処理が完了した印刷データを前記メモリから削除し、前記メモリに記憶されたすべての印刷データが削除されると、前記記憶部に記憶された印刷ジョブデータの印刷処理を開始することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−71461(P2012−71461A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217053(P2010−217053)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】