説明

画像形成装置

【課題】記録シートにダメージを与えることなくスキュー補正を行える、しかも簡易に行える画像形成装置を提供する。
【解決手段】シート9は、供給ローラ21で湾曲搬送路P1にそってレジストローラ3へ搬送され、スキュー補正されたのちトナー像転写位置Nへ供給される画像形成装置であり、供給ローラ21からレジストローラ3へ至る湾曲搬送路P1にシート検出センサS1、S2が配置され、記録シート9がセンサ間を進行するのに要する時間が時間計測部で計測され、供給ローラ制御部が、レジストローラ3でスキュー補正される記録シート9の撓み量が適正撓み量となるように、時間に応じて、供給ローラ21による記録シート送り時間を調整するように供給ローラ動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成部において目的とする画像に応じたトナー像を形成し、前記トナー像を記録シートに転写位置で転写することができ、前記記録シートは、記録シート供給部から供給ローラで引き出されるとともに搬送路にそってレジストローラへ搬送され、該レジストローラでシート先端が一旦止められてスキュー補正されたのち該レジストローラにて前記トナー像転写位置へ供給される画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、電子写真方式や静電記録方式等により目的とする画像に応じたトナー像を形成できる画像形成部を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ機、これらのうち2以上を組み合わせた複合機等が知られている。
【0003】
いずれにしても冒頭記載のタイプの画像形成装置における前記レジストローラによるスキュー(斜行)補正は、停止させてあるレジストローラのニップに斜行する記録シートの先端を当て、そのままさらに該シートを送ることで記録シート先端全体をレジストローラニップに接触させることで行なう。このようなスキュー補正のために、記録シートはレジストローラで停止させられた状態で撓むことになる。
【0004】
このとき、記録シートの撓み量は、記録シートの種類,なかでも記録シートの剛性によって大小が生じる。例えば、搬送路との摺動抵抗等が小さい剛性の小さい記録シート(例えば薄紙シート)では、記録シート供給ローラの記録シートに対するスリップが少なく、従って摺動抵抗等が大きいシートより円滑にレジストローラに到達するので記録シートの撓み量は大きくなる傾向がある。一方、搬送路との摺動抵抗等が大きい記録シート(例えば厚紙シート)では、記録シート供給ローラの記録シートに対するスリップが多くなり、摺動抵抗等が小さいシートよりレジストローラに到達するのが遅れるので記録シートの撓み量は小さくなる傾向がある。
【0005】
しかし、かかる記録シートの撓み量は大きすぎると記録シートにダメージ(皺、変形、破れ等)が生じるおそれがあり、小さすぎるとスキュー補正が不十分になるおそれがある。
【0006】
この点、例えば特開平10−35911号公報には、レジストローラニップの上流側且つニップ近傍に、薄いシート、厚いシートといったように、シート搬送路との摺動抵抗等で搬送性が異なるシートをそれぞれ検出するための複数のシート検出センサを配置し、且つ、搬送性のより低いシートを検出するためのセンサをニップにより近く配置し、シートの搬送性情報を別途のシート厚さ検出手段で得たり、用紙種類設定手段から得る等して、用いるシート検出センサを選択決定し、該センサがシートを検出すると、シート供給ローラによるシート送りを停止し、慣性力でシートをレジストローラニップに当てて適度の撓みでスキュー補正し、その後のトナー像転写位置へのシート搬送に支障がないようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−35911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、冒頭記載のタイプの画像形成装置では、今日の小型化、コンパクト化の要請に応え、画像形成部、シート供給部等の各部のサイズ、配置等が工夫されるとともに記録シートの搬送経路についても工夫されている。例えば、搬送経路についてみると、記録シート供給部からレジストローラへ記録シートを搬送するための搬送路が湾曲搬送路の画像形成装置がある。
【0009】
このように記録シート供給部からレジストローラへ記録シートを搬送するための搬送路が湾曲搬送路である画像形成装置では、記録シートの種類(例えば普通紙シートか、薄紙シートか、厚紙シートか等)によって、供給ローラによる記録シート搬送時の搬送路摺動抵抗等の搬送路抵抗が大きく異なってくるので、記録シートにダメージを与えることなくスキュー補正を支障なく行えるようにする工夫が一層求められる。
【0010】
前記特開平10−35911号公報に記載の技術は、同公報の記載からすると、記録シート供給部からレジストローラへ至る記録シート搬送路は湾曲搬送路ではなく、直線的であるので、記録シート搬送路がシート搬送抵抗の大きい湾曲搬送路である場合にはそのまま適用し難いと思われる。
【0011】
さらに、レジストローラ上流側でレジストローラニップ近傍に配置した、シート搬送性に応じた複数のシート検出センサをシート厚さ等検出手段による検出結果や、用紙種類設定手段による設定から選択決定しなければならないので、別途、シート厚さ等検出手段や用紙種類設定手段が必要になってくるし、用紙種類設定手段による設定では採用すべきシート検出センサの選択決定に手間取ったり、設定のための入力の忘れや、ミスが発生するおそれもある。
【0012】
そこで本発明は、画像形成部において目的とする画像に応じたトナー像を形成し、前記トナー像を記録シートに転写位置で転写することができ、前記記録シートは、記録シート供給部から供給ローラで引き出されるとともに湾曲搬送路にそってレジストローラへ搬送され、該レジストローラでシート先端が一旦止められてスキュー補正されたのち該レジストローラにて前記トナー像転写位置へ供給される画像形成装置であって、採用される記録シートが種々あり、記録シート種によって剛性に違いがあっても、前記記録シートのレジストローラによるスキュー補正にあたり、記録シート種に応じて、特にその剛性に応じて、該記録シートの撓み量を適正化して、記録シートにダメージを与えることなくスキュー補正を行える、しかも簡易に行える画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は前記課題を解決するため、
画像形成部において目的とする画像に応じたトナー像を形成し、前記トナー像を記録シートに転写位置で転写することができ、前記記録シートは、記録シート供給部から供給ローラで引き出されるとともに湾曲搬送路にそってレジストローラへ搬送され、該レジストローラでシート先端が一旦止められてスキュー補正されたのち該レジストローラにて前記トナー像転写位置へ供給される画像形成装置であり、
前記供給ローラから前記レジストローラへ至る前記湾曲搬送路に記録シート搬送方向に隔たりをおいて配置された二つのシート検出センサと、
前記供給ローラで前記シート供給部から供給される記録シートが前記二つのシート検出センサ間を進行するのに要する時間を計測する時間計測部と、
前記レジストローラでスキュー補正される記録シートの前記湾曲搬送路での撓み程度が予め定めた範囲内の撓みとなるように前記供給ローラによる記録シート送り時間が調整されるように前記時間計測部により計測される時間に応じて前記供給ローラによるシート供給動作を制御する供給ローラ制御部と
を含んでいる画像形成装置を提供する。
【0014】
ここで「記録シートの湾曲搬送路での予め定めた範囲内の撓み」とは「記録シートにダメージを与えることなくスキュー補正を行える撓み」であり、予めの実験、各部の設計事項等に基づく計算等により定めておくことができる。
【0015】
本発明に係る画像形成装置によると、記録シートは記録シート供給部から供給ローラで引き出されるとともに湾曲搬送路にそってレジストローラへ搬送される。このように湾曲搬送路にそってレジストローラへ搬送されるので、記録シートの種類、特に記録シートの剛性によって湾曲搬送路による摺動抵抗のような湾曲搬送路抵抗に大小が生じる。例えば、普通紙シートより薄紙シートのような剛性の小さい薄いシートでは普通紙シートより湾曲搬送路にそって曲がり易く、それだけ湾曲搬送路抵抗が小さく、従って供給ローラの記録シートに対するスリップが少なく、それだけ短い時間でレジストローラに到達する。
【0016】
一方、例えば、普通紙シートより厚紙シートのような剛性の大きい厚いシートでは搬送路壁に接触しても普通紙シートより曲がり難く、それだけ湾曲搬送路抵抗が大きく、従って供給ローラの記録シートに対するスリップが多く、それだけ長い時間をかけてレジストローラに到達する。
【0017】
従って、記録シートの種類、特に剛性の大小によってレジストローラ到達に要する時間に差が生じ、延いては、レジストローラのスキュー補正による記録シート撓み量にも差が出てくる。
【0018】
しかし本発明に係る画像形成装置では、前記供給ローラから前記レジストローラへ至る前記湾曲搬送路に記録シート搬送方向に隔たりをおいて二つのシート検出センサが配置されており、前記供給ローラで前記シート供給部から供給される記録シートが前記二つのシート検出センサ間を進行するのに要する時間(換言すれば、記録シート種を表す時間)が前記時間計測部で計測され、供給ローラ制御部は、前記時間計測部により計測される時間に応じて前記供給ローラによる記録シート送り時間を、前記レジストローラでスキュー補正される記録シートの前記湾曲搬送路での撓みの程度が記録シートにダメージを与えることなくスキュー補正が行われる予め定めた範囲内の撓みとなるように調整するように、前記供給ローラによるシート供給動作を制御するので、記録シート種に応じて撓み量が適正化される。
【0019】
このように本発明に係る画像形成装置によると、採用される記録シートが種々あり、記録シート種によって剛性に違いがあっても、記録シートのレジストローラによるスキュー補正にあたり、記録シート種に応じて、特にその剛性に応じて、該記録シートの撓み量を適正化して、記録シートにダメージを与えることなくスキュー補正を行える。
【0020】
また、本発明に係る画像形成装置によると、前記湾曲搬送路に記録シート搬送方向に隔たりをおいて配置された二つのシート検出センサ間を記録シートが進むに要する時間から記録シート種を簡易に把握してスキュー補正による記録シート撓み量を適正化できる。
【0021】
前記供給ローラ制御部として、例えば、前記時間計測部で計測される時間が予め定めた基準時間より長いときは前記供給ローラによる記録シート送り時間が該基準時間について予め定められたシート送り時間より長く調整されるように、前記時間計測部で計測される時間が前記基準時間より短いときは前記供給ローラによる記録シート送り時間が前記基準時間について予め定められたシート送り時間より短く調整されるように前記供給ローラによるシート供給動作を制御するものを挙げることができる。
【0022】
「予め定めた基準時間」としては、例えば予め任意に選んだ記録シート(例えば所謂普通紙シート、或いは例えば供給ローラのスリップ率ができるだけ小さい記録シートから選んだ記録シート)の場合に該記録シートが前記二つのシートセンサ間を進行するに要する時間を挙げることができる。
【0023】
また、前記供給ローラ制御部として、前記の調整すべき前記供給ローラによる記録シート送り時間として前記二つのシート検出センサのうち前記レジストローラに近い方のシート検出センサによる記録シート検出から前記供給ローラによる記録シート送りを停止させるまでの停止前時間を採用し、前記時間計測部で計測される時間が前記基準時間より長いときは、前記停止前時間が前記基準時間について予め定められた基準停止前時間より長く調整されるように、前記時間計測部で計測される時間が前記基準時間より短いときは前記停止前時間が前記基準停止前時間より短く調整されるように前記供給ローラによるシート供給動作を制御するものを採用してもよい。
【0024】
この供給ローラ制御部についてさらに説明すると、「調整すべき前記供給ローラによる記録シート送り時間」としては、例えば、供給ローラによる記録シート供給開始から該供給ローラによる記録シート送りを停止させるまでの時間を採用してもよいが、記録シート供給部から供給ローラで供給開始されるために待機している記録シートは、シートを1枚ずつ引き出して供給するための捌き処理等により記録シート先端位置にばらつきがある場合があるので、スキュー補正のための記録シート撓み量をより確実に適正化するうえで、前記のように、「二つのシート検出センサのうち前記レジストローラに近い方のシート検出センサによる記録シート検出から前記供給ローラによる記録シート送りを停止させるまでの停止前時間」を採用する例を挙げることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によると、
画像形成部において目的とする画像に応じたトナー像を形成し、前記トナー像を記録シートに転写位置で転写することができ、前記記録シートは、記録シート供給部から供給ローラで引き出されるとともに湾曲搬送路にそってレジストローラへ搬送され、該レジストローラでシート先端が一旦止められてスキュー補正されたのち該レジストローラにて前記トナー像転写位置へ供給される画像形成装置であって、採用される記録シートが種々あり、記録シート種によって剛性に違いがあっても、前記記録シートのレジストローラによるスキュー補正にあたり、記録シート種に応じて、特にその剛性に応じて、該記録シートの撓み量を適正化して、記録シートにダメージを与えることなくスキュー補正を行える、しかも簡易に行える画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る画像形成装置の1例を概略的に示す図である。
【図2】図1の画像形成装置の制御回路例の概略を示すブロック図である。
【図3】記録シート供給部から供給ローラで供給される記録シートがレジストローラニップに突き当たったばかりの状態を示す図である。
【図4】図3の記録シートがスキュー補正される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明に係る画像形成装置の例について説明する。
図1は本発明に係る画像形成装置例の構成の概略を示している。
図1に示す画像形成装置は電子写真方式の所謂タンデム型のフルカラープリンタ10である。
【0028】
プリンタ10の各部は、プリンタ10の動作を制御する、図2にその概略を示す制御部Contの指示のもとに動作する。
【0029】
プリンタ10は、駆動ローラ17とこれに対向するローラ18に巻き掛けられた無端の中間転写ベルト19を有している。転写ベルト19は、図示省略のベルト駆動部により駆動される駆動ローラ17により図中反時計方向(図中矢印方向)CCWに回される。
【0030】
ローラ18には転写ベルト19上の2次転写残トナー等を除去清掃するクリーニング装置191が臨んでおり、駆動ローラ17にはベルト19を間にして2次転写ローラ4が臨んでいる。
【0031】
2次転写ローラ4の表層部は弾性材料で形成されており、図示省略の押圧手段にて、駆動ローラ17に支持された中間転写ベルト19の部分に押圧され、中間転写ベルト19との間にニップ部Nを形成し、中間転写ベルト19の回転に従動して、或いは、後述するように該ニップ部に送り込まれる記録紙、オーバーヘッドプロジェクター用シート等の記録シート9の移動に従動して、或いは図示省略の駆動部に駆動されて回転することができる。2次転写ローラ4には、図示省略の電源から2次転写バイアスを印加することができる。
【0032】
中間転写ベルト19及び2次転写ローラ4の上方には定着装置5が配置されており、下方には対ローラからなるレジストローラ3が配置されており、さらにその下方に、記録シート供給部2が設けられている。記録シート供給部2は記録シート9を収容した記録シート収容カセット20及びカセット20から記録シート9を1枚ずつ引き出し、レジストローラ3へ向け供給する供給ローラ21が含まれている。供給ローラ21には記録シート9を捌いて1枚ずつ送りだすための捌きローラ22が対向している。
【0033】
このプリンタ10では、プリンタの小型化、コンパクト化のために、記録シート供給部2の記録シート供給ローラ21からレジストローラ3へ向かう記録シート搬送路(第1搬送路)P1及びレジストローラ3からトナー像の2次転写位置(2次転写ローラ4と転写ベルト19とのニップ部N)へ向かう記録シート搬送路(第2搬送路)P2はそれぞれ湾曲搬送路に形成されている。
【0034】
第1湾曲搬送路P1は湾曲ガイドg1に沿うものであり、シート供給ローラ21から供給される記録シート9がローラ21によるシート供給方向へ膨出するようにガイドg1に沿って湾曲しつつ上昇してレジストローラ3へ到達できるものである。
【0035】
第2湾曲搬送路P2は前記ガイドg1とは反対方向(逆向き)に湾曲したガイドg2に沿うものである。ガイドg2にはこれに対向するようにガイド部材g3、g4が臨設されている。
【0036】
定着装置5は、それとは限定されないが、ここではハロゲンランプヒータ等の熱源を内蔵した定着加熱ローラ51とこれに圧接される加圧ローラ52とを含むものである。
【0037】
中間転写ベルト19を巻き掛けたローラ17、18の間には、転写ベルト19に沿って、ローラ18からローラ17に向けて、イエロー画像形成ユニットY、マゼンタ画像形成ユニットM、シアン画像形成ユニットC及びブラック画像形成ユニットKがこの順序で配置されている。
【0038】
Y、M、C、Kの各画像形成ユニットは、ドラム型の感光体11を備えており、感光体11の周囲に帯電器12、露光装置13、現像器14及びクリーニング装置15がこの順序で配置されている。
【0039】
各画像形成ユニットの感光体11にはベルト19を間にして1次転写ローラ16が対向配置されている。1次転写ローラ16は、図示省略の押圧手段にて感光体11の方向へ押圧され、ベルト19に接触して従動回転するとともにベルト19を感光体11に接触させることができる。
【0040】
1次転写ローラ16には、感光体11上に形成されるトナー像をベルト19へ1次転写するための1次転写バイアスを図示省略の電源から印加できる。
【0041】
露光装置13は、図示省略のパーソナルコンピュータ、画像読取装置等から提供される画像情報に応じて、レーザービームの点滅により感光体11にドット(点)露光で画像露光を施し、静電潜像を形成できる。
【0042】
各画像形成ユニットにおける感光体11は、ここでは負帯電性の感光体であり、図示省略の感光体駆動モータにて図中時計方向回りに回転駆動できる。
【0043】
各画像形成ユニットにおける帯電器12は、本例ではスコロトロン帯電器であり、制御部Contの指示のもとに所定のタイミングで図示省略の電源から帯電用の電圧が印加される。なお、帯電器12は帯電ローラを用いるもの等であってもよい。
【0044】
各画像形成ユニットにおける現像器14は、トナーを主成分とする所謂1成分現像剤を用いて、感光体11上に形成される静電潜像を、図示省略の電源から現像バイアスが印加される現像スリーブ或いは現像ローラで反転現像することができる。
現像器は、キャリア及びトナーを主体とする所謂2成分現像剤を用いる2成分現像器でもよい。
【0045】
前記のY、M、C、Kの画像形成ユニット、中間転写ベルト19等は、目的とする画像に応じたトナー像を形成する画像形成部1を構成している。
【0046】
以上説明したY、M、C、Kの画像形成ユニットにおける感光体11等、中間転写ベルト19、記録シート供給部2の供給ローラ21、レジストローラ3、定着装置5等の各部は、図2に概略的に示す制御部Contの指示のもとに動作する。また、1次転写ローラ16への1次転写バイアス電源からのバイアス印加、2次転写ローラ4への2次転写バイアス電源からのバイアス印加等も制御部Contの指示のもとになされる。
【0047】
このプリンタ10によると、制御部Contの指示のもとに、画像形成ユニットのうち1又は2以上を用いて画像を形成することができる。
画像形成ユニットY、M、C及びKのすべてを用いてフルカラー画像を形成する場合を例にとると、先ず、イエロー画像形成ユニットYにおいてイエロートナー像を形成し、これを転写ベルト19に1次転写する。
【0048】
すなわち、イエロー画像形成ユニットYにおいて、感光体11が図中時計方向に回転駆動され、帯電器12にて表面が一様に所定電位に帯電され、該帯電域に露光装置13からイエロー画像用の画像露光が施され、感光体11上にイエロー用静電潜像が形成される。この静電潜像はイエロートナーを有する現像器14の現像バイアスが印加された現像ローラにて現像されて可視イエロートナー像となる。このイエロートナー像は1次転写ローラ16にて転写ベルト19上に1次転写される。このとき、1次転写ローラ16には図示省略の電源から1次転写バイアスが印加される。
【0049】
同様にして、マゼンタ画像形成ユニットMにおいてマゼンタトナー像が形成されて転写ベルト19に転写され、シアン画像形成ユニットCにおいてシアントナー像が形成されて転写ベルト19に転写され、ブラック画像形成ユニットKにおいてブラックトナー像が形成されて転写ベルト19に転写される。
【0050】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像はこれらが中間転写ベルト19上に重ねて転写されるタイミングで形成される。
かくして転写ベルト19上に形成された多重トナー像は転写ベルト19の回動により2次転写ローラ4へ向け移動する。
【0051】
一方、記録シート9が記録シート収容カセット20からシート供給ローラ21にて引き出され、第1湾曲搬送路P1にそってレジストローラ3へ供給され、待機している。
【0052】
供給ローラ21及び捌きローラ22は、このプリンタ10では、図2に示すように記録シート搬送用モータMによりクラッチCL2を含む伝動機構を介して、制御部Contに含まれる供給ローラ制御部200による制御下に回転或いは停止される。供給ローラ21等はモータMが運転されている状態でクラッチCL2オンで回転する。いずれにしてもクラッチCL2オフで停止する。
【0053】
記録シート9が記録シート収容カセット20から供給ローラ21にて引き出され、第1湾曲搬送路P1にそってレジストローラ3へ供給されるとき、記録シート9が斜行(スキュー)していても、図3に示すように、記録シート9先端の一部が未だ停止しているレジストローラニップnに突き当たり、そのままさらに記録シート9が送られることで、記録シート9に撓みが生じた状態で、図4に示すようにスキュー補正され、その状態で待機する。
【0054】
このようにレジストローラ4のところで待機する記録シート9は、中間転写ベルト19にて送られてくる多重トナー像に合わせて、転写ベルト19と2次転写ローラ4とのニップ部(トナー像転写位置)Nに供給される。このとき、記録シート9は第2湾曲搬送路P2にそって、第1湾曲搬送路P1の場合とは逆向きに湾曲しつつ進行してトナー像転写位置Nに送り込まれる。多重トナー像は図示省略の電源から2次転写バイアスが印加された2次転写ローラ4にて記録シート9上に2次転写される。
【0055】
レジストローラ3は、このプリンタ10では、図2に示すように記録シート搬送用モータMによりクラッチCL3を含む伝動機構を介して、制御部Contに含まれるレジストローラ制御部300による制御下に回転或いは停止される。レジストローラ3はモータMが運転されている状態でクラッチCL3オンで回転する。いずれにしてもクラッチCL3オフで停止する。
【0056】
トナー像が2次転写された記録シート9は定着装置5に通され、そこで多重トナー像が加熱加圧下に記録シート9に定着される。記録シート9はひき続き、排出ローラ対6にて排出トレイ7へ排出される。
【0057】
トナー像のベルト19への1次転写において感光体11上に残留する転写残トナー等はクリーニング装置15で除去回収され、2次転写によりベルト19上に残留する2次転写残トナー等はクリーニング装置191に除去回収される。
【0058】
ここで記録シート9の搬送についてみると、記録シート9は記録シート供給部2から供給ローラ21で1枚ずつ引き出されるとともに湾曲搬送路P1にそってレジストローラ3へ搬送される。このように湾曲搬送路P1にそってレジストローラ3へ搬送されるので、記録シート9の種類、特に記録シート9の剛性によって湾曲搬送路P1による摺動抵抗のような湾曲搬送路抵抗に大小が生じる。
【0059】
例えば、普通紙シートより薄紙シートのような剛性の小さい薄いシートでは普通紙シートより湾曲搬送路ガイドg1にそって曲がり易く、それだけ湾曲搬送路抵抗が小さく、従って供給ローラ21の記録シート9に対するスリップ率は小さく、それだけ短い時間でレジストローラ3に到達する。
【0060】
一方、例えば、普通紙シートより厚紙シートのような剛性の大きい厚いシートでは搬送路ガイドg1に接触しても普通紙シートより曲がり難く、それだけ湾曲搬送路抵抗が大きく、従って供給ローラ21の記録シート9に対するスリップ率が大きくなり、それだけ長い時間をかけてレジストローラ3に到達する。
【0061】
かくして、記録シート9の種類、特に剛性の大小によってレジストローラ3に到達するに要する時間に差が生じ、延いては、レジストローラ3のスキュー補正による記録シート撓み量にも差が出てくる。なお、記録シートの剛性は周囲環境湿度等によっても影響される。
【0062】
記録シート撓み量が大きすぎると、記録シート9がダメージ(皺の発生、変形、破れ発生等)を受けやすく、記録シート撓み量が小さすぎると、スキュー補正が不十分となり、プリント傾き等のプリント不良が発生する。
【0063】
そこでプリンタ10では、採用される記録シートが種々あり、記録シート種によって剛性に違いがあっても、その記録シート9のレジストローラ3によるスキュー補正にあたり、記録シート種に応じて、記録シート9の撓み量を適正化して、記録シート9にダメージを与えることなくスキュー補正を行える、しかも簡易に行えるようにしてある。この点についてさらに説明する。
【0064】
プリンタ10では、図1に示すように、供給ローラ21からレジストローラ3へ至る第1湾曲搬送路P1に記録シート搬送方向に隔たりをおいて二つのシート検出センサS1とS2とを配置してある。センサS1、S2による記録シート先端検出は制御部Contに入力される。
【0065】
制御部Contは供給ローラ21でシート供給部2から供給される記録シート9が二つのシート検出センサS1、S2間を進行するのに要する時間tを計測する時間計測部Tを含んでいる。
【0066】
制御部Contはさらに前記のとおり供給ローラ21の制御部200及びレジストローラ3の制御部300も含んでいる。
【0067】
供給ローラ制御部200は時間計測部Tにより計測される時間tに応じて供給ローラ21による記録シート送り時間を、レジストローラ3でスキュー補正される記録シート9の湾曲搬送路P1での撓みの程度が予め定めた範囲内の撓みとなるように調整するように供給ローラ21によるシート供給(送り)動作を制御する。
【0068】
ここで「記録シートの湾曲搬送路での予め定めた範囲内の撓み」とは「記録シート9にダメージを与えることなくスキュー補正を行える撓み」である。この点についてさらに説明する。
【0069】
記録シート搬送路各部の距離等は次のものである。
供給ローラ21による記録シート搬送速度V:200[mm/秒]、
供給ローラ21からレジストローラ3までの距離L1:100[mm]、
センサS2オン位置からレジストローラ3のニップnまでの距離L2:20[mm]、
センサS1オン位置からセンサS2オン位置までの距離L3:60[mm]。
記録シート9の斜行量(スキュー量)A(図3参照)は4[mm](図3参照)とする。
【0070】
A[mm]のスキュー量を補正するためのシート送り距離はL1+A/2である。
なお、ここではセンサS1、S2は記録シート9の搬送方向を横切る幅の中央に対応させて配置してあり、L1、L2、L3は該幅の中央基準での距離である。
【0071】
供給ローラ21の記録シート9に対するスリップ率等に関するデータが表1のものであったとする。記録シート9として、
普通紙シート(坪量:70g/m)、厚紙シート(坪量:200g/m)、
薄紙シート(坪量:55g/m)のいずれかが採用される場合を想定している。
【0072】
表1
標準スリップ率 ばらつき 最小スリップ率 最大スリップ率
普通紙シート 5% ±2% 3% 7%
厚紙 シート 15% ±5% 10% 20%
薄紙 シート 1% ±1% 0% 2%
【0073】
例えば、普通紙シートで最大スリップ率(7%)の場合のA[mm]スキュー量を補正するためのシート送り距離Lは、
L=(L1−L2)+{L2+(A/2)+[L2+(A/2)]×0.07}と考えることができる。
この距離Lを基準値(0)とした場合の各記録シートのスリップばらつきによる基準値に対する送り距離差は表2のようになる。
【0074】
表2
最小スリップ 標準スリップ 最大スリップ
普通紙シート +0.88mm +0.44mm 基準(0)
厚紙 シート −0.7mm −1.9mm −3.1mm
薄紙 シート +1.5mm +1.3mm +1.1mm
【0075】
表2からすると、厚紙シートでは基準値に対し最大で3.1mm送りが不足し、スキュー補正が不十分となる。薄紙シートでは基準値に対し最大で1.5mm送りが過多となり、記録シート撓み量が過剰となり、シートにダメージが発生する恐れがある。
このように記録シート種によってレジストローラ3でのスキュー補正にともなう記録シートの撓み量に差が生じるのである。
【0076】
そこでプリンタ10では、前記のとおり、供給ローラ21からレジストローラ3へ至る湾曲搬送路P1に記録シート搬送方向に隔たりをおいて二つのシート検出センサS1、S2を配置し、供給ローラ21でカセット20から供給される記録シート9(シート9先端)が二つのシート検出センサS1、S2間を進行するのに要する時間(換言すれば、記録シート種を表す時間)tが時間計測部Tで計測される。
【0077】
実験によると、記録シート種によって次表3に例示するように時間差がある。
表3
最小スリップ時 標準スリップ時 最大スリップ時
普通紙シート 309ms 315ms 321ms
厚紙 シート 330ms 345ms 360ms
薄紙 シート 300ms 303ms 306ms
【0078】
プリンタ10では制御部Contにおいて、供給ローラ制御部200が時間計測部Tにより計測される時間tからその記録シートのスリップ率を求め、求めたスリップ率に基づいてセンサS2のオンから供給ローラ21停止までの時間(停止前時間)を算出し、その時間でもって供給ローラ21を停止させ、それにより記録シート撓み量が適正化される。
スリップ率X=[計測時間t−(L3/V)]/(L3/V)である。
センサS2のオンから供給ローラ21停止までの時間=
{L2+(A/2)+[L2+(A/2)]×X}/V である。
【0079】
第2センサS2オンから供給ローラ21停止までの時間例を表4に示す。
表4
最小スリップ時 標準スリップ時 最大スリップ時
普通紙シート 113.3ms 115.5ms 117.7ms
厚紙 シート 121.2ms 127.2ms 132.2ms
薄紙 シート 110.0ms 111.2ms 112.2ms
【0080】
プリンタ10の供給ローラ制御部200は、基本的には、時間計測部Tで計測される時間tが予め定めた基準時間より長いときは供給ローラ21による記録シート送り時間が該基準時間について予め定められたシート送り時間より長く調整されるように、時間計測部Tで計測される時間tが前記基準時間より短いときは供給ローラ21による記録シート送り時間が該基準時間について予め定められたシート送り時間より短く調整されるように供給ローラ21によるシート供給動作を制御するものである。
【0081】
このとき「予め定めた基準時間」は、予め任意に選んだ記録シート(例えば所謂普通紙シート、或いは供給ローラのスリップ率ができるだけ小さい記録シートから選んだ記録シート)が前記二つのシートセンサS1、S2間を進行するに要する時間であるということができる。
【0082】
プリンタ10では、さらに、調整すべき供給ローラ21による記録シート送り時間として二つのシート検出センサS1、S2のうち前記レジストローラに近い方のシート検出センサS2による記録シート検出から供給ローラ21による記録シート送りを停止させるまでの停止前時間を採用している。
【0083】
そして、時間計測部Tで計測される時間tが前記基準時間より長いときは、前記停止前時間が前記基準時間について予め定められた基準停止前時間より長く調整されるように、時間計測部Tで計測される時間tが前記基準時間より短いときは前記停止前時間が前記基準停止前時間より短く調整されるように供給ローラ21によるシート供給動作(本例では供給ローラ21の回転時間が制御される。
【0084】
例えば前記基準時間を普通紙シートで最大スリップ時のセンサ通過時間とした場合、321ms(表3参照)が基準時間であり、その時のスリップ率Xは7%であり、従って基準停止前時間={L2+(A/2)+[L2+(A/2)]×X}/V=117.7msと考えることができる。
【0085】
いずれにしても、本例では、制御部Contにおいて、供給ローラ制御部200が時間計測部Tにより計測される時間tからその記録シートのスリップ率を求め、求めたスリップ率に基づいてセンサS2のオンから供給ローラ21停止までの時間(停止前時間)を算出し、その時間でもって供給ローラ21を停止させ、それにより記録シート撓み量を適正化する。
【0086】
以上説明した画像形成装置はカラープリンタであったが、本発明はモノクロ画像形成装置にも適用できる。また、プリンタだけでなく、複写機、ファクシミリ機、これらを2以上組み合わせた複合機等にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は画像形成部において目的とする画像に応じたトナー像を形成し、該トナー像をレジストローラでスキュー補正された記録シートに転写できる画像形成装置であって、スキュー補正時の記録シートの撓み量を簡易に適正化できる画像形成装置を提供することに利用できる。
【符号の説明】
【0088】
10 プリンタ
1 画像形成部
Y イエロー画像形成ユニット
M マゼンタ画像形成ユニット
C シアン画像形成ユニット
K ブラック画像形成ユニット
11 感光体
12 帯電器
13 露光装置
14 現像器
15 クリーニング装置
16 1次転写ローラ
2 記録シート供給部
20 記録シート収納カセット
21 シート供給ローラ
22 捌きローラ
P1 記録シート搬送路(第1湾曲搬送路)
g1 湾曲ガイド
P2 記録シート搬送路(第2湾曲搬送路)
g2 湾曲ガイド
g3、g4 ガイド部材
N トナー像の2次転写位置(2次転写ローラ4と転写ベルト19とのニップ部)
3 レジストローラ
n レジストローラニップ
4 2次転写ローラ
5 定着装置
6 排出ローラ対
7 排出トレイ
9 記録シート
Cont 制御部
T 時間計測部
M 記録シート搬送用モータ
200 供給ローラ制御部
CL2 供給ローラ用クラッチ
300 レジストローラ制御部
CL3 レジストローラ用クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部において目的とする画像に応じたトナー像を形成し、前記トナー像を記録シートに転写位置で転写することができ、前記記録シートは、記録シート供給部から供給ローラで引き出されるとともに湾曲搬送路にそってレジストローラへ搬送され、該レジストローラでシート先端が一旦止められてスキュー補正されたのち該レジストローラにて前記トナー像転写位置へ供給される画像形成装置であり、
前記供給ローラから前記レジストローラへ至る前記湾曲搬送路に記録シート搬送方向に隔たりをおいて配置された二つのシート検出センサと、
前記供給ローラで前記シート供給部から供給される記録シートが前記二つのシート検出センサ間を進行するのに要する時間を計測する時間計測部と、
前記レジストローラでスキュー補正される記録シートの前記湾曲搬送路での撓み程度が予め定めた範囲内の撓みとなるように前記供給ローラによる記録シート送り時間が調整されるように前記時間計測部により計測される時間に応じて前記供給ローラによるシート供給動作を制御する供給ローラ制御部と
を含んでいることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記供給ローラ制御部は、前記時間計測部で計測される時間が予め定めた基準時間より長いときは前記供給ローラによる記録シート送り時間が該基準時間について予め定められたシート送り時間より長く調整されるように、前記時間計測部で計測される時間が前記基準時間より短いときは前記供給ローラによる記録シート送り時間が該基準時間について予め定められたシート送り時間より短く調整されるように前記供給ローラによるシート供給動作を制御する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記供給ローラ制御部は、調整すべき前記供給ローラによる記録シート送り時間として前記二つのシート検出センサのうち前記レジストローラに近い方のシート検出センサによる記録シート検出から前記供給ローラによる記録シート送りを停止させるまでの停止前時間を採用しており、前記時間計測部で計測される時間が前記基準時間より長いときは、前記停止前時間が前記基準時間について予め定められた基準停止前時間より長く調整されるように、前記時間計測部で計測される時間が前記基準時間より短いときは前記停止前時間が前記基準停止前時間より短く調整されるように前記供給ローラによるシート供給動作を制御する請求項2記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−86913(P2012−86913A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232639(P2010−232639)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】