説明

画像形成装置

【課題】駆動時の騒音を低減でき、かつ、小型化でき、安定して動作可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置の伝達機構は、歯付プーリー91と、歯付プーリー91に噛み合う歯付ベルト95とを有している。歯付ベルト95には、心線97が設けられている。伝達機構は、歯付プーリー91と歯付ベルト95とが噛み合う部分において、歯付ベルト95の歯底部96bと歯付プーリー91の歯先部92aとが互いに接触しないように構成されている。歯付プーリー91の歯先部92aと歯付ベルト95の歯底部95bとが互いに接触しないので、歯付プーリー91の歯先部92aが歯付ベルト95の心線97がたたかれることがなくなり、耳障りな噛み合い音が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置に関し、特に、歯付ベルトと歯付プーリーとを有する駆動力の伝達機構を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置(スキャナー機能、複写機能、プリンターとしての機能、ファクシミリ機能、データ通信機能、及びサーバ機能を備えたMFP(Multi Function Peripheral)など)について、より高い静音性が求められるようになっている。画像形成装置は、高い静粛性が求められるオフィス内などに設置される場合も多く、特にその場合、オフィス内の静粛性を妨げないような静音性を有していることが重要になる。
【0003】
画像形成装置の静音化への要求に対応するための一つの方策として、歯付ベルトと歯付プーリーとの組合せによりベルト駆動を行う伝達機構が採用される場合がある。伝達機構は、画像形成装置の駆動力伝達系において、例えばモーターなどの動力源からの駆動力を伝達するために用いられる。このような歯付ベルトと歯付プーリーとを用いた伝達機構は、他の方式により動力を伝達する機構と比較して、静音性に優れたものである。
【0004】
図11は、従来の伝達機構の歯付ベルトと歯付プーリーとの噛み合い部を示す図である。
【0005】
図11に示されるように、伝達機構は、歯付プーリー891とそれに噛み合う歯付ベルト895とを有している。歯付ベルト895は、心線897を抗張体として有している。図11において、歯付プーリー891の外周の一部は、ラックと同様の形状に示されている。実際は、歯付プーリー891は円板状であって、歯付ベルト895のうち、歯付プーリー891に噛み合っている部分も、歯付プーリー891の外周面に沿って湾曲していることはいうまでもない。
【0006】
歯付プーリー891と歯付ベルト895とのそれぞれは、互いに適合する歯形を有する歯部892,896を有している。図11に示されている例において、歯部892,896は台形状に形成されている。歯部892,896のそれぞれの歯の高さ(歯底部から歯先部までの寸法)は、一般的に、伝達効率が高くなるように、互いに略等しいか、歯付プーリー891の歯の高さが若干高くなっている。そのため、歯付プーリー891と歯付ベルト895とが噛み合っているとき、歯付プーリー891側の歯部892の歯先部892aは、歯付ベルト895の歯部896間の歯底部896bに接触した状態となる。
【0007】
ところで、このような比較的静音性に優れている伝動機構を用いた場合でも、例えばベルトの歯先とプーリーとの間で気体が圧縮されることなどに起因する騒音の発生が問題となることがあった。画像形成装置でより高いレベルの静音性を実現するために、このようなベルト駆動を行う伝達機構それ自体としても、静音化されることが要求されている。
【0008】
下記特許文献1には、歯付ベルトの歯先と歯付プーリーの歯底との間に隙間を設け、ベルトとプーリーとの両者の歯が衝突する頻度を少なくすることで、その両者の歯が衝突することにより発生する騒音を防止するようにしたベルト伝動機構が開示されている。
【0009】
下記特許文献2には、丸歯形の歯部を有するベルトを用いたベルトシステムにおいて、プーリー溝内において歯部とプーリー溝との間に第1の隙間と第2の隙間とが形成されるように構成することが開示されている。
【0010】
下記特許文献3には、Vリブドベルトを用いたベルト伝動装置において摩擦スリップ音を低減する構造が開示されている。
【0011】
下記特許文献4及び特許文献5のそれぞれには、歯付ベルトを用いたベルト伝動装置において、騒音の発生の抑制を図ったものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−198526号公報
【特許文献2】特開2010−60068号公報
【特許文献3】特開2003−74650号公報
【特許文献4】特開2002−48200号公報
【特許文献5】特開2006−153249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、画像形成装置としては、モーターとして大きい回転数で駆動されるもの(例えば、インナーローターモーターなど)を用いたものがある。従来、画像形成装置において、歯付プーリーとして10ミリメートル程度の歯先円直径を有するものを用いるような伝達機構には、ステッピングモーターが組み合わせて用いられることが多かった。このようなステッピングモーターとしては、必要とされるトルクによっても変わるものの、例えば1000〜1500rpm程度の回転数で駆動されるものが多かった。これに対し、同様のサイズのインナーローターモーターを用いた場合には、例えば3000rpm程度の回転数で、高速回転可能である。
【0014】
このように高速回転可能なモーターを用いることには、様々な利点がある。すなわち、画像形成装置は、より高速に動作可能になる。また、画像形成装置の基本的なハードウェア構成を同一とし、装置の制御を行うファームウェアを交換してモーターの回転数の変更などを行うことで(例えば、数百回転/分〜数千回転/分など)、高速動作可能なものから比較的低速な動作を行うものまで、プリント速度などの仕様が異なる、複数種類の画像形成装置を安価に製造できる。
【0015】
しかしながら、上記のように高速回転可能なモーターを用いて伝達機構を高速で動作させるようにすると、モーターが比較的低い回転数で駆動されていたときに問題になっていた騒音とは異質の騒音が発生する、という新たな問題が発生することがわかった。
【0016】
すなわち、特にモーターの回転数が例えば2000rpmを超えるような高速回転時において、歯付プーリーと歯付ベルトとから耳障りな噛み合い音が聞こえるようになる。噛み合い音は、歯付ベルトの歯が歯付プーリーに噛み合うとき、歯付プーリーの歯先部が歯付ベルトの歯底部に当たり、歯付ベルトの内部に配されている心線に衝撃が加わることで発生すると考えられる。このようにして発生する噛み合い音は、モーターの回転数が比較的低いときにはそれほど問題となりにくいものである。しかしながら、噛み合い音は、特に上記のようにモーターの回転数が高いとき、比較的高い周波数で、可聴域において大きな耳障りな音に感じられるものとなる。特に、画像形成装置の各部の静音化が進み、画像形成装置全体としての動作音が小さくなった中で、このように高速動作時に伝達機構で発生する噛み合い音の問題は、顕著なものとなる。
【0017】
このようにして発生する噛み合い音に関する問題に対して、例えば、歯ピッチを小さくしたり、歯付プーリーの径を大きくしたりして、歯付プーリーの噛み合い部の多角化作用を改善することにより対策を図ることが考えられる。多角化作用とは、歯付ベルトのピッチラインがプーリーの歯底部で直線状になることで、ピッチラインが狂い、振動(騒音)が発生する現象をいう。しかしながら、歯ピッチを小さくすると、伝達機構に高トルクが掛けられる場合や、間欠動作が繰り返される部分で用いられる場合には、歯飛び(ジャンピング)が発生しやすくなる。伝達機構で歯飛びが発生すると、画像形成装置の動作が安定して行われなくなる。他方、歯付プーリーの径を大きくすると、画像形成装置が大型化してしまう。画像形成装置の小型化が進められている中で、伝達機構を配置するためのスペースには限りがある。そのため、耳障りな噛み合い音が低減するほど大きな歯付プーリーを配置することは困難である。
【0018】
なお、このような問題点に関し、上記特許文献のいずれにも、有効な解決策は何ら開示されていない。
【0019】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、駆動時の騒音を低減でき、かつ、小型化でき、安定して動作可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、画像形成装置は、駆動力を伝達する伝達機構を備え、伝達機構は、歯付プーリーと、歯付プーリーに噛み合い、心線を有する歯付ベルトとを有し、歯付プーリーと歯付ベルトとが噛み合う部分において、歯付ベルトの歯底部と歯付プーリーの歯先部とは互いに接触しないように構成されている。
【0021】
好ましくは歯付ベルトと歯付プーリーとが噛み合う部分において、歯付ベルトの歯底部と歯付プーリーの歯先部との間が空間となる。
【0022】
好ましくは歯付ベルトの歯部は、所定の規格で定められた歯形を有しており、歯付プーリーの歯部は、歯付ベルトの歯形に適合する歯形よりも歯先部の高さが低い歯形を有する。
【0023】
好ましくは歯付ベルトと歯付プーリーとが噛み合う部分において、歯付ベルトの歯部の側面と歯付プーリーの歯部の側面とが接触し、かつ、歯付ベルトの歯先部と歯付プーリーの歯底部とが接触する。
【0024】
好ましくは歯付プーリーの歯部のピッチと歯付ベルトの歯部のピッチとが異なる。
【0025】
好ましくは画像形成装置は、インナーローターモーターをさらに備え、歯付プーリーには、インナーローターモーターからの駆動力が伝達される。
【発明の効果】
【0026】
これらの発明に従うと、歯付プーリーと歯付ベルトとが噛み合う部分において、歯付ベルトの歯底部と歯付プーリーの歯先部とは互いに接触しない。したがって、駆動時の騒音を低減でき、かつ、小型化でき、安定して動作可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置を示す斜視図である。
【図2】伝達機構を示す図である。
【図3】歯付プーリーの外周部の部分拡大図である。
【図4】歯付ベルトの部分拡大図である。
【図5】歯付プーリーと歯付ベルトとが噛み合う部分を示す図である。
【図6】第2の実施の形態における歯付プーリーの外周部の部分拡大図である。
【図7】第2の実施の形態における歯付ベルトの部分拡大図である。
【図8】歯付プーリーと歯付ベルトとが噛み合う部分を示す図である。
【図9】歯付ベルトが歯付プーリーに噛み合うときの様子を説明する第1の図である。
【図10】歯付ベルトが歯付プーリーに噛み合うときの様子を説明する第2の図である。
【図11】従来の伝達機構の歯付ベルトと歯付プーリーとの噛み合い部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態における画像形成装置について説明する。
【0029】
[第1の実施の形態]
【0030】
まず、本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の全体の構成を説明する。
【0031】
[画像形成装置の全体構成]
【0032】
図1は、本発明の第1の実施の形態における画像形成装置1を示す斜視図である。
【0033】
第1の実施の形態において、画像形成装置1は、例えば電子写真方式により用紙に画像を形成するものである。画像形成装置1は、いわゆるタンデム型カラーデジタル複写機である。すなわち、画像形成装置1は、デジタル画像に基づいて用紙にカラー画像を形成できる。
【0034】
図1に示されるように、画像形成装置1は、画像形成装置1の上部に配置され原稿画像を読み取るイメージリーダー部10と、読み取った画像を記録シート(用紙)S上にプリントして再現するプリンター部20と、制御部30とを有している。
【0035】
イメージリーダー部10の一部には、ユーザーにより操作可能なパネル部200が設けられている。画像形成装置1の操作は、パネル部200を介して行うことができる。パネル部200は、例えばタッチパネルであって、プリンター部20で発生したジャムに関する情報や、例えばプリントカートリッジなどの寿命に関する情報など、種々の情報をユーザーに表示する。パネル部200はユーザーからのタッチ操作を受け付け、受け付けた操作に応じて制御部30に信号を送る。これにより、パネル部200により受け付けられたタッチ操作に応じて、画像形成装置1の制御が行われる。
【0036】
イメージリーダー部10は、原稿ガラス板(図示せず)に載置された原稿の画像を、スキャナーを移動させて読み取る公知のものである。原稿の画像は、赤(R)、緑(G)、青(B)の三色に色分解されて、不図示のCCDイメージセンサーにより電気信号に変換される。これにより、原稿のRGBの画像データが得られる。
【0037】
イメージリーダー部10で得られた各色成分の画像データは、制御部30において各種のデータ処理を受ける。画像データは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各再現色の画像データに変換される(以下、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各再現色をC、M、Y、Kと表し、各再現色に関連する構成部分の番号にこのC、M、Y、Kを添え字として付加する。)。
【0038】
制御部30は、画像メモリー33を有している。CMYKの画像データは、制御部30内の画像メモリー33に再現色ごとに格納され、位置ずれ補正のための必要な画像補正を受ける。画像補正を受けた後、画像データは、記録シートSの供給と同期して1走査ラインごとに読み出され、発光ダイオード(LED)の駆動信号となる。
【0039】
プリンター部20は、作像部40と、給紙部50と、中間転写ユニット60と、二次転写部70と、定着部80とを有している。
【0040】
給紙部50は、給紙カセット51と、給紙ローラー52と、レジストローラー53とを有している。給紙カセット51には、記録シートSが載置される。給紙ローラー52は、給紙カセット51に載置されている記録シートSを、給紙カセット51から繰り出す。レジストローラー53は、給紙ローラー52により繰り出された記録シートSを所定のタイミングで二次転写部70に繰り出す。
【0041】
第1の実施の形態において、給紙ローラー52は、モーター85により駆動される。モーター85の駆動力は、歯付プーリー91及び歯付ベルト95を有する伝達機構90により給紙ローラー52に伝達される。
【0042】
レジストローラー53よりも記録シートSの搬送方向の上流側には、シート検出センサーSE1が配置されている。シート検出センサーSE1は、レジストローラー53の直前に設けられている。シート検出センサーSE1は、記録シートSの先端が到達したことを検出する。
【0043】
給紙ローラー52により繰り出された記録シートSの先端がレジストローラー53に到達すると、シート検出センサーSE1によりその記録シートSが検出される。制御部30は、シート検出センサーSE1の検出信号を受信すると、その検出信号に応じたタイミングで、先端レジストローラー信号を出力する。先端レジストローラー信号は、レジストローラー53の駆動部(図示せず)に送られる。レジストローラー53の駆動部は、先端レジストローラー信号に応じてレジストローラー53による給紙を開始させ、記録シートSを二次転写部70に向けて搬送する。
【0044】
中間転写ユニット60は、転写駆動モーター34と、駆動ローラー61と、従動ローラー62と、中間転写ベルト103と、クリーナー部105とを有している。中間転写ベルト103は、駆動ローラー61と従動ローラー62との間に、図において左右方向に張架されている。従動ローラー62は、ばね(図示せず)により図において左方向に付勢されている。これにより、中間転写ベルト103に張力が与えられている。
【0045】
中間転写ベルト103の材質としては、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミドなど、種々のものを選択可能であるが、本実施の形態では、例えば、表面抵抗が10^10(10の10乗)Ω/□(オームパースクエア)程度のポリアミドイミドが採用されている。
【0046】
転写駆動モーター34は、制御部30による制御に基づいて駆動され、駆動ローラー61を回転させる。駆動ローラー61は、図において半時計回りに回転し、それにより、中間転写ベルト103が回転駆動される。駆動ローラー61と転写駆動モーター34との間には、エンコーダー341が設けられている。エンコーダー341は、駆動ローラー61の回転むらを検出する。エンコーダー341の検出結果に基づいて、転写駆動モーター34などのフィードバック制御が行われる。
【0047】
クリーナー部105は、二次転写部70において記録シートSに二次転写された後に中間転写ベルト103上に残った残留トナーを、従動ローラー62側の部位において除去する。クリーナー部105は、例えば、クリーニングブレード68と、スクリュー66と、クリーナーハウジング69とを有している。クリーナーハウジング69には、ジョイント107を介して、クリーナー部105により除去された残留トナーを廃トナーとして貯蔵する廃トナーボックス108が接続されている。
【0048】
クリーニングブレード68は、中間転写ベルト103上に接触するように配置されており、中間転写ベルト103上の残留トナーをかき取る。かき取られたトナーは、クリーナーハウジング69内で回転するスクリュー66より画像形成装置1の手前側に搬送される。スクリュー66により搬送されたトナーは、ジョイント107を介して、廃トナーボックス108内に廃棄される。
【0049】
作像部40は、Y、M、C、Kの各色別に4つのもの(作像部40Y,40M,40C,40K)が設けられている。作像部40のそれぞれは、中間転写ベルト103に対向して、クリーナー部105側(以下、単に上流側ということがある)から記録シートSが搬送される側(以下、単に下流側という)に沿って、Y,M,C,Kの順に、所定間隔で配置されている。
【0050】
各作像部40Y〜40Kは、画像プロセス部と露光走査部47Y〜47Kとで構成されている。画像プロセス部は、感光体ドラム41Y〜41Kと、帯電チャージャー42Y〜42K、現像器43Y〜43K、クリーナー44Y〜44Kなどを有している。帯電チャージャー42Y〜42K、現像器43Y〜43K、クリーナー44Y〜44Kは、感光体ドラム41Y〜41Kの周囲に配されている。中間転写ベルト103を挟んで各作像部40Y〜40Kの感光体ドラム41Y〜41Kに対向する位置には、転写ローラー45Y〜45Kが設けられている。
【0051】
各露光走査部47Y〜47Kは、制御部30から出力された駆動信号に応じて光を発する発光ダイオード(LED)46Y〜46Kを有している。各発光ダイオード46Y〜46Kは、発光することで、感光体ドラム41Y〜41Kの表面を露光走査する。
【0052】
感光体ドラム41Y〜41Kは、クリーナー44Y〜44Kで表面の残存トナーが除去され、さらにイレーサーランプ(図示せず)により除電された後、帯電チャージャー42Y〜42Kにより一様に帯電された状態で、露光走査部47Y〜47Kからの光を受ける。このように表面が一様に帯電した状態で露光されると、感光体ドラム41Y〜41Kの表面に、静電潜像が形成される。各静電潜像は、それぞれ各色の現像器43Y〜43Kにより現像される。これにより、感光体ドラム41Y〜41Kの表面に、それぞれ、Y、M、C、Kの各色のトナー像が形成される。
【0053】
転写ローラー45Y〜45Kは、感光体ドラム41Y〜41K上に形成されたトナー像を中間転写ベルト103に転写する(一次転写)。転写ローラー45Y〜45Kには、高電圧基板から電圧が印加され、感光体ドラム41Y〜41K上のトナー像が、中間転写ベルト103上に順次転写されていく。このとき、各色の作像動作は、そのトナー像が搬送されてくる中間転写ベルト103の同じ位置に重ねて転写されるように、上流側から下流側に向けて、タイミングをずらして実行される。
【0054】
二次転写部70は、中間転写ベルト103に対向するように配置された二次転写ローラー71と、二次転写ローラー71を駆動する二次転写駆動モーター35とを有している。
【0055】
中間転写ベルト103上に形成されたトナー画像は、二次転写部70まで搬送される。二次転写部70では、記録シートSが中間転写ベルト103と二次転写ローラー71との間を通過するとき、二次転写ローラー71に転写電圧が印加される。これにより、中間転写ベルト103上のトナー画像が、記録シートS上に転写される(二次転写)。
【0056】
なお、転写ローラー45Y〜45Kと二次転写ローラー71とは、例えばNBRゴムにイオン導電物質を添加し発泡させた弾性ローラーである。これらのローラーは、温度、湿度の影響で電気抵抗が変化するものであるため、画像形成装置1内に配置された温湿度センサー54により温度、湿度を測定し、適正な電流が転写ローラー45Y〜45Kと二次転写ローラー71とに流れるように、それぞれのローラーに印加される電圧が調整される。また、二次転写ローラー71には、図示しない圧接/離間機構が設けられている。二次転写ローラー71は、印字が行われないときには中間転写ベルト103から離間される。これにより、二次転写ローラー71の弾性体のクリープ変形が防止されている。
【0057】
定着部80は、公知の構造を有しており、例えば加熱ローラーと圧接ローラーとを有している。二次転写部70で各色のトナー像が転写された記録シートSは、定着部80にまで搬送される。定着部80において、記録シートSは、高熱で加圧される。これにより、記録シートSの表面のトナー粒子がシート表面に溶融付着し、トナー像が記録シートSに定着する。その後、記録シートSは、排紙ローラー82を通過し、排紙トレイ81上に排出される。
【0058】
[伝達機構90の説明]
【0059】
図2は、伝達機構90を示す図である。
【0060】
図2に示されるように、伝達機構90は、複数の歯部92を有する歯付プーリー(以下、単にプーリーということがある)91と、複数の歯部96を有する歯付ベルト(以下、単にベルトということがある)95とを有している。
【0061】
伝達機構90は、上述のモーター85の駆動力を給紙ローラー52などに伝達して駆動させる。モーター85は、例えばブラシレスDCモーターである。ここで、モーター85は、インナーローターモーターであり、高速回転可能なものである。高速回転とは、例えば、2000rpmを超えるような回転数で回転することをいう。本実施の形態において、プーリー91は、モーター85の駆動に伴い、モーター85の駆動力が伝達されることで、高速回転する。伝達機構90は、例えば、正逆両方向に回転可能に構成されているが、これに限られるものではない。
【0062】
図3は、歯付プーリー91の外周部の部分拡大図である。
【0063】
以下、プーリー91の外周部の一部分の形状を図示するとき、説明のため、歯部92が直線状に並んだラックの形状と同様にして示す。実際のプーリー91は円板状であって、歯部92は円周に沿うように並んでいる。
【0064】
図3に示されるように、プーリー91の歯部92は、略台形形状を有するものである。すなわち、プーリー91の側周面は、歯先部92aと、歯底部92bと、歯先部92aと歯底部92bとの間で傾斜するように形成された歯側部92cとで構成されている。各歯部92の表面は、歯側部92cと歯先部92aとで形成されている。すなわち、歯側部92cは、歯部92の側面であり、歯先部92aは、歯部92の上面である。各歯部92は、隣接する歯部92との間に歯底部92bを挟むようにして配置されている。歯部92の高さ(歯先部92aの高さ)X1すなわち歯底部92bから歯先部92aまでの寸法は、所定の値に設定されている。
【0065】
図4は、歯付ベルト95の部分拡大図である。
【0066】
ベルト95は、歯ゴム層95aと、背ゴム層95bと、心線97とで構成されている。歯ゴム層95a及び背ゴム層95bは、例えば、クロロプレンゴムやポリウレタンなどを用いて形成されている。心線97は、歯ゴム層95aと背ゴム層95bとの間に、環状に(長手方向に)配置されている。心線97は、例えば、ポリエステル繊維、グラス繊維やアラミド繊維などを用いた抗張体であり、ベルト95が伸びたり破断したりしにくくなるように配置されている。歯ゴム層95aの表面は、例えば帆布で覆われている。
【0067】
図4に示されるように、ベルト95の歯部96も、略台形形状を有している。すなわち、歯ゴム層95aの表面は、歯先部96a、歯底部96b、及び歯先部96aと歯底部96bとの間で傾斜するように形成された歯側部96cで構成されている。各歯部96の表面は、歯側部96c及び歯先部96aで形成されている。すなわち、歯側部96cは、歯部96の側面であり、歯先部96aは、歯部96の上面である。各歯部96は、隣接する歯部96との間に歯底部96bを挟むようにして配置されている。歯部96の高さ(歯先部96aの高さ))X2すなわち歯底部96bから歯先部96aまでの寸法は、所定の値に設定されている。
【0068】
本実施の形態において、ベルト95の歯部96は、所定の規格で定められた歯形を有している。すなわち、歯部96の高さX2は、所定の規格に基づく値となっている。所定の規格としては、例えば、JIS(日本工業規格)やISO(国際標準化機構)などの規格(JIS B 1856,JIS K6372,JIS K6373やそれに対応する他の規格など)が挙げられるが、この限りではない。
【0069】
ここで、上記のようにベルト95の歯部96が所定の規格で定められた歯形を有するものであるのに対して、プーリー91の歯部92は、ベルト95の歯部96に適合する歯形(図3において二点鎖線で示す形状)すなわち所定の規格で定められた歯形よりも、歯部92の高さX1が低い歯形を有する。本実施の形態において、歯部92の歯形は、高さX1が異なるほか、例えば歯側部92cの傾斜などは、ベルト95の歯部96に適合する歯形と同一である。
【0070】
伝達機構90は、このようにプーリー91の歯部92の高さX1がベルト95の歯部96の高さX2よりも低くなっていることにより、プーリー91とベルト95とが噛み合う部分において、ベルト95の歯底部96bとプーリー91の歯先部92aとが互いに接触しないように構成されている。
【0071】
図5は、歯付プーリー91と歯付ベルト95とが噛み合う部分を示す図である。
【0072】
図5に示されるように、ベルト95とプーリー91とが噛み合う部分において、ベルト95の歯底部96bと、プーリー91の歯先部92aとの間は、空間Cとなる。空間Cは、ベルト95の歯底部96b及び歯側部96cと、プーリー91の歯先部92aとに囲まれた部位である。ベルト95がプーリー91に噛み合うときには、ベルト95の歯先部96aがプーリー91の歯底部92bに当接する。このように歯先部96aが歯底部92bに当接することで、ベルト95がプーリー91に噛み合うとき、ベルト95の歯底部96bとプーリー91の歯先部92aとの間が離れたまま、確実に維持される。
【0073】
ベルト95とプーリー91とが噛み合う部分において、ベルト95側の歯側部96cと、プーリー91側の歯部92の歯側部92cとが接触し、かつ、ベルト95の歯先部96aとプーリー91の歯底部92bとが接触している。これにより、ベルト95とプーリー91とが噛み合っている状態においても、空間Cが構成され、ベルト95の歯底部96bとプーリー91の歯先部92aとが互いに接触しないままで維持される。
【0074】
このように、本実施の形態においては、プーリー91とベルト95とが噛み合う部分において、空間Cが存在しており、ベルト95の歯底部96bとプーリー91の歯先部92aとが接触しない。したがって、ベルト95がプーリー91に噛み合うとき、ベルト95の心線97がプーリー91の歯先部92aによりたたかれることがなくなる(心線97に大きな衝撃が加わることがなくなる。)。これにより、伝達機構90の駆動時において、耳障りな噛み合い音の発生を抑制することができる。特に、例えばモーター85の高速回転時など、伝達機構90が高速駆動される場合において、噛み合い音を大幅に抑制することができる。プーリー91の歯先部92aの全域が、ベルト95の歯底部96bのいずれの部位にも接触しないので、確実に噛み合い音の発生が抑制される。
【0075】
なお、空間Cの大きさは、使用しているベルト95の圧縮率によって変化するものである。一般的なベルト95の圧縮率は、1〜10%程度であることを考慮すると、空間Cを設けるためには、例えば、プーリー91の歯部92の高さX1を、ベルト95の歯部96の高さX2の高さよりも20〜30%だけ小さくするようにすればよい。空間Cは、比較的大きいものであるので、ベルト95とプーリー91との間の空気が空間C部分で圧縮される程度は小さく、空気の圧縮に伴い発生する異音なども発生しない。
【0076】
また、上記のように空間Cを設けることで、伝達効率が低下することが考えられるが、その低下の程度は比較的小さくすることができる。すなわち、本実施の形態においては、ベルト95とプーリー91の歯側部92c,96c同士と、ベルト95の歯先部96aとプーリー91の歯底部92bとは、互いに積極的に当接するため、伝達効率の低下は、最小限に抑えられている。また、これらの部位が互いに当接することは、高速回転時において心線97に起因して発生する音にはそれほど寄与しない。
【0077】
また、上述のように、プーリー91は、規格に対応する歯形よりも歯部の高さが低く設定されたものである一方で、ベルト95としては、所定の規格に対応するものを用いることができる。プーリー91は、専用品であっても、比較的製造しやすいものであるため、製造コストはそれほど高くならない。また、プーリー91の交換頻度は高くない。他方、ベルト95としては、入手性に優れており価格が比較的低い量産品を用いて、騒音低下効果が得られる伝達機構90を構成することができる。したがって、このような構成を有することで、画像形成装置1の製造コストを低減させることができ、画像形成装置1のメンテナンス性も高くすることができる。
【0078】
以上説明したように、プーリー91とベルト95の歯部92,96のモジュールを小さくすることなく(歯ピッチを小さくすることなく)、プーリー91を比較的小径とした場合であっても耳障り音の発生を抑制することができる。したがって、小型化が進められた画像形成装置1のように伝達機構90が配置されるスペースが狭くても、また、高トルク部で用いられる場合でも、伝達機構90を用いることで、安定した動作が行えるようになる。
【0079】
[第2の実施の形態]
【0080】
第2の実施の形態における画像形成装置の基本的な構成は、第1の実施の形態におけるそれと同じであるためここでの説明を繰り返さない。第2の実施の形態においては、歯付プーリーと歯付ベルトとの間に空間が設けられるメカニズムが第1の実施の形態と異なる。
【0081】
第2の実施の形態において、画像形成装置の伝達機構は、第1の実施の形態のそれとは若干構成が異なる歯付プーリー及び歯付ベルトを用いて構成されている。
【0082】
図6は、第2の実施の形態における歯付プーリー191の外周部の部分拡大図である。
【0083】
図6に示されるように、プーリー191の歯部192は、第1の実施の形態の歯部92と同様に、略台形形状を有するものである。すなわち、プーリー191の側周面は、歯先部192aと、歯底部192bと、歯先部192aと歯底部192bとの間で傾斜するように形成された歯側部192cとで構成されている。歯部192の高さ(歯先部192aの高さ)X11は、所定の値に設定されている。複数の歯部192は、所定のピッチ(歯ピッチ)P11毎に配置されている。
【0084】
歯部192において、歯先部192aと両歯側部192cとの間には、面取部192dが形成されている。面取部192dは、歯側部192cの形状が保たれる程度に小さな半径のR面取部である。
【0085】
図7は、第2の実施の形態における歯付ベルト195の部分拡大図である。
【0086】
図7に示されるように、ベルト195の歯部196も、略台形形状を有している。すなわち、ベルト195の歯ゴム層195aの表面は、歯先部196aと、歯底部196bと、歯先部196aと歯底部196bとの間で傾斜するように形成された歯側部196cとで構成されている。歯部196の高さ(歯先部196aの高さ)X12は、所定の値に設定されている。複数の歯部196は、所定のピッチ(歯ピッチ)P12毎に配置されている。
【0087】
第2の実施の形態において、プーリー191の歯部192の高さX11とベルト195の歯部196の高さX12とは、略同じ寸法に形成されている。他方、プーリー191の歯ピッチP11と、ベルト195の歯ピッチP12とは、異なっている。プーリー191の歯ピッチP11は、ベルト195の歯ピッチP12よりも若干大きい値である。また、このようにピッチが異なっていることにより、歯部92と歯部96とは、それぞれ、互いに異なる歯形を有している。
【0088】
図8は、歯付プーリー191と歯付ベルト195とが噛み合う部分を示す図である。
【0089】
第2の実施の形態においては、上記のようにプーリー191側の歯ピッチP11とベルト195側の歯ピッチP12とが異なることにより、プーリー191とベルト195とが噛み合う部位において、プーリー191の歯先部192aとベルト195の歯底部196bとが互いに接触しないように構成されている。
【0090】
図8に示されるように、プーリー191とベルト195とが噛み合う部分においては、ベルト195の歯部196は、プーリー191の歯部192間に納まっているものの、両歯ピッチP11,P12が互いに異なることにより、プーリー191とベルト195との間に、いくつかの空間ができる。
【0091】
すなわち、プーリー191の歯先部192aとベルト195の歯底部196bとの間には、空間Cが構成される。空間Cは、ベルト195の歯底部196b及び歯側部196cとプーリー191の歯先部192aとで囲まれる空間である。また、プーリー191の歯底部192bとベルト195の歯先部196aとの間には、空間Dが構成される。空間Dは、ベルト195の歯先部196a及び歯側部196cと、プーリー191の歯底部192b及び歯側部192cとで囲まれる空間である。すなわち、第2の実施の形態では、プーリー191とベルト195とが噛み合う部分において、歯先部192aと歯底部196bとの関係と同様に、プーリー191の歯底部192bとベルト195の歯先部196aとは、互いに接触しない。
【0092】
図9は、歯付ベルト195が歯付プーリー191に噛み合うときの様子を説明する第1の図である。
【0093】
図9及び後述する図10においては、模式的に、ラック状のプーリー191に、反ったベルト195の歯部196が順次噛み合う様子を示している。実際には、円板状のプーリー191にベルト195が巻き付くようにしてベルト195がプーリー191に噛み合う。また、以下の説明において左、右というのは、図9又は図10において左方、右方であることを示す。
【0094】
図9に示されるように、右から左にかけて、プーリー191には歯部192X,192Y,192Zが配置されており、ベルト195には歯部196X,196Y,196Zが配置されている。
【0095】
プーリー191が矢印R2方向に回転する場合において、ベルト195の歯部196Xがプーリー191の歯部192Xの右側に入った状態で、ベルト195の歯部196Yが、プーリー191の歯部192Xと歯部192Yとの間に入る場合を想定する。このとき、ベルト195の歯ピッチP12は、プーリー191の歯ピッチP11よりも若干小さい値であるので、歯部196の歯先部196aがプーリー191の歯部192Xと歯部192Yとの間に入ると、歯部196の右側の歯側部196cに、歯部192Xの歯先部192aの左端部に設けられた面取部192dが当接する。さらにプーリー191が回転すると、歯部192Xの面取部192dが歯部196の右側の歯側部196cに接触したまま歯底部196b側に向けて相対的に移動するようにして、歯部196Yが、歯部192Xと歯部192Yとの間に入る。
【0096】
このようにして、互いに隣り合う歯部196X,196Yが、ピッチが異なるプーリー191に噛み合うことで、ベルト195は、その歯ゴム層195a部分で若干ひずむ。ベルト195は、歯部196X,196Y間で若干延びるため、ベルト195がプーリー191に噛み合う部位において、プーリー191の歯先部192aの左右両端部(すなわち面取部192d)は、ベルト195の歯側部196c上で引っかかった状態となり、それ以上歯底部196bに近接しなくなる。すなわち、ベルト195の歯部196X,196Y間の歯底部196bと、プーリー191の歯部192Xの歯先部192aとの間に、空間Cが形成される。
【0097】
図10は、歯付ベルト195が歯付プーリー191に噛み合うときの様子を説明する第2の図である。
【0098】
上記のようにして、ベルト195の歯部196Yが、プーリー191の歯部192Xと歯部192Yとの間に入ると、その後、プーリー191が回転するのに伴い、プーリー191の歯部192Yが、ベルト195の歯部196Yと歯部196Zとの間に入る。このとき、歯部192Yの歯先部192aの右端部の面取部192dは、歯部196Yの左側の歯側部196cに摺接する。そして、その後、ベルト195の歯部196Zが、同様に、プーリー191の歯部192Yと歯部192Zとの間に入る。これにより、同様に、ベルト195の歯部196Y,196Z間の歯底部196bと、プーリー191の歯部192Yの歯先部192aとの間に、空間Cが形成される。
【0099】
このように、第2の実施の形態において、ベルト195側とプーリー191側とで、歯部196,192のピッチP12,P11が互いに異なる値となっていることで、ベルト195がプーリー191に噛み合うとき、ベルト195がわずかに延びてひずみながらプーリー191に入る。そのため、プーリー191の歯先部192aと、ベルト195の歯底部196bとの間に、空間Cが構成される。したがって、第1の実施の形態と同様に、ベルト195の心線97に衝撃が加わることを防止することができ、耳障りな噛み合い音を抑制することができる。歯部の大きさは、歯飛びの恐れがなくなるような大きさにすればよく、伝達機構90は、高トルク部にも用いることができ、また、狭い設置スペースにも配置することができる。
【0100】
また、プーリー191の歯部192のうち、ベルト195の歯側部196cに頻繁に摺接する部位には、面取部192dが設けられているので、ベルト195の寿命を長くすることができる。すなわち、ベルト195がプーリー191に噛み合うとき、歯側部196cには面取部192dが摺接するので、歯側部196cが損傷することを防止することができる。
【0101】
なお、プーリー191の歯ピッチP11は、ベルト195の歯ピッチP12に比べ、例えば1%から3%程度長い値とすればよい。また、面取部192dの寸法は、プーリー191の径や歯数などにもよるが、例えばR0.5〜R1.0程度にすることができる。プーリー191の歯先Rは、歯の高さの10%から20%程度の大きさとすることもできる。
【0102】
なお、第2の実施の形態において、ベルト195がプーリー191に噛み合うとき、プーリー191の歯先部192aと、ベルト195の歯底部196bとが接触する場合があったとしても、従来の構造と比較して、噛み合い音は大幅に抑制される。すなわち、この場合、上述のようにプーリー191側とベルト195側とで歯ピッチが異なることにより、プーリー191の歯先部192aは、ベルト195の歯底部192bに接触するまでにベルト195の他の部位に接触する。したがって、歯先部192aが歯底部192bに接触したときに心線97に伝わる衝撃が小さくなるので、噛み合い音の発生が抑制される。
【0103】
[実施例]
【0104】
第2の実施の形態について、次のようにして、伝達機構の耐久試験を実施した。耐久試験で使用したプーリー191は、歯数18、歯先円直径9.68mm、ピッチP11(歯部とその隣の歯部との距離)2mm、歯の高さ(歯底部192bから歯先部192aまでの長さ)0.76mm、面取部192dのR面取りの寸法R0.1の小型のものである。このプーリー191を使用して、実際の使用状態に近づけて耐久試験を行った結果、画像形成装置1などにおいて伝達機構90を使用する用途に問題は生じず、十分な耐久性を有していることが確認された。
【0105】
[その他]
【0106】
伝達機構は、所定の規格に対してベルト側の歯部の高さが高く構成されていることで、ベルトとプーリーの噛み合い部においてプーリーの歯先部がベルトの歯底部に接触しないように構成されていてもよい。また、ベルト側とプーリー側との両者の歯部の高さがそれぞれ所定の規格に対して変更され、プーリーの歯先部がベルトの歯底部に接触しないように構成されていてもよい。
【0107】
ベルトの歯部の歯形やプーリーの歯部の歯形は、台形形状に限られない。例えば曲面を有する歯形であってもよい。
【0108】
伝達機構とともに用いられるモーターは、インナーローターモーターに限られない。どのようなモーターの駆動力を伝達する用途にも、伝達機構を用いることができ、その場合、耳障りな噛み合い音の発生を低減することができる。
【0109】
また、伝達機構は、記録シートの給紙部に用いられるものに限られない。画像形成装置において、モーターを用いて駆動される部分に、広く適用可能なものである。例えば、イメージリーダー部において原稿を順次搬送する機構部分などに用いられるものであってもよい。
【0110】
画像形成装置としては、モノクロ/カラーの複写機、プリンター、ファクシミリ装置やこれらの複合機(MFP)などいずれであってもよい。電子写真方式により画像を形成するものに限られず、例えばいわゆるインクジェット方式により画像を形成するものであってもよい。
【0111】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0112】
1 画像形成装置
85 モーター(インナーローターモーター)
90 伝達機構
91,191 歯付プーリー
92,192 歯付プーリーの歯部
92a,192a 歯付プーリーの歯先部
92b,192b 歯付プーリーの歯底部
92c,192c 歯付プーリーの歯側部
95,195 歯付ベルト
96,196 歯付ベルトの歯部
96a,196a 歯付ベルトの歯先部
96b,196b 歯付ベルトの歯底部
96c,196c 歯付ベルトの歯側部
X1,X2,X11,X12 歯部の高さ(歯先部の高さ)
P11,P12 歯部のピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を伝達する伝達機構を備えた画像形成装置であって、
前記伝達機構は、
歯付プーリーと、
前記歯付プーリーに噛み合い、心線を有する歯付ベルトとを有し、
前記歯付プーリーと前記歯付ベルトとが噛み合う部分において、前記歯付ベルトの歯底部と前記歯付プーリーの歯先部とは互いに接触しないように構成されている、画像形成装置。
【請求項2】
前記歯付ベルトと前記歯付プーリーとが噛み合う部分において、前記歯付ベルトの歯底部と前記歯付プーリーの歯先部との間が空間となる、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記歯付ベルトの歯部は、所定の規格で定められた歯形を有しており、
前記歯付プーリーの歯部は、前記歯付ベルトの歯形に適合する歯形よりも歯先部の高さが低い歯形を有する、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記歯付ベルトと前記歯付プーリーとが噛み合う部分において、前記歯付ベルトの歯部の側面と前記歯付プーリーの歯部の側面とが接触し、かつ、前記歯付ベルトの歯先部と前記歯付プーリーの歯底部とが接触する、請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記歯付プーリーの歯部のピッチと前記歯付ベルトの歯部のピッチとが異なる、請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成装置は、インナーローターモーターをさらに備え、
前記歯付プーリーには、前記インナーローターモーターからの駆動力が伝達される、請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−15651(P2013−15651A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147933(P2011−147933)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】