説明

画像形成装置

【課題】定着ローラや転写ローラに外径差や加圧力の差が発生した場合でも、未定着画像の乱れの発生を好適に防止すること。
【解決手段】転写ローラ4と、定着部7と、を備え、転写ローラ4から定着部7にシートにループを形成させて搬送するレーザプリンタ1において、定着部7でのシートSの搬送速度を変更可能な定着部駆動装置72と、転写ローラ4と定着部7の間でシート幅方向の複数個所に配設され、シートの位置を検知する第1検知部60a及び第2検知部60bと、第1検知部60a及び第2検知部60bが所定の当接位置よりも高いことを検知すると定着部7のシート搬送速度を前記転写ローラ4のシート搬送速度よりも速くする遅くする定着部駆動制御部90と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に係り、詳しくは、転写部と定着部との間でループを形成させてシートを搬送する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置は、感光体ドラム等の像担持体に担持されたトナー像を転写部で転写し、転写された未定着のトナー像を定着部で定着させることでシートに画像を形成する。
【0003】
ここで、定着部では未定着のトナー像を加熱及び加圧により定着させるが、加熱による定着処理により定着部から一時的に奪われる熱は、未定着のトナー像のトナー付着量、シートの通過枚数あるいはシートの厚みや材質等による熱容量の違い等により変化する。そして、この定着部に発生する温度変化に対応するため、画像形成装置は、定着部の加熱ヒータをオン−オフ制御している。加熱ヒータによる加熱は、定着部の定着用或いは加熱用のローラに熱膨張を発生させ、熱膨張によるローラの外径の変化は、定着部でのシートの搬送速度と転写部でのシートの搬送速度に大きな速度差を生じさせる場合がある。
【0004】
定着部と転写部とで搬送速度に差が生じると、シートに記録される画像に乱れを生じさせるおそれがある。例えば、定着部による搬送速度が転写部による搬送速度よりも速すぎると、定着部と転写部との間でシートが引張られ、転写部によるトナー像の転写時に画像の乱れを発生させるおそれがある。一方、定着部による搬送速度が転写部による搬送速度よりも遅すぎると、シートが撓んで定着部と転写部との間で過大なループが形成され、このループが搬送ガイド等に接触すると画像が擦れて画像の乱れを生じさせる。
【0005】
そのため、従来、定着部と転写部との間でシート(記録材)に所定の大きさのループを形成させて、シートが引張られすぎたり、撓みすぎたりすることを防止する技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の画像形成装置は、定着部と転写部との間にシートのループの大きさを検知するループ検知センサを設け、検知したループの大きさに基づいて定着部でのシートの搬送速度を調整して画像の乱れを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−242251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示の画像形成装置は、シートの搬送方向と直交する幅方向における略中央部でのシートのループの高さを基準にシートのループの大きさを判断している。そのため、定着ローラや転写ローラの各々の長手方向での外径差や加圧力の差等によって、シートのループの高さがシートの幅方向で変化した場合には、シートの幅方向全域にループが形成されていない場合がある。例えば、ループ検知センサが所定の高さ以上と検知した場合でも、シートの端部等においてはループが形成されていない場合がある。この状態でシートの搬送速度を調整しようとすると、定着部と転写部との間でシートの幅方向に不要なテンションがかかってしまい、転写時や定着時の画像の乱れが発生するおそれがあるという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、定着ローラや転写ローラの各々に長手方向のおける外径差や加圧力等の差に起因してシート幅方向のループ量に差が生じた場合においても、シートに形成される未定着画像の乱れの発生を好適に防止可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、像担持体に担持されたトナー像をシートに転写する転写部と、前記転写部で転写されたトナー像をシートに定着する定着部と、を備え、前記定着部におけるシートの搬送速度を前記転写部におけるシートの搬送速度より遅くすることにより、搬送されるシートにループを形成させた状態で搬送する画像形成装置において、前記定着部を駆動すると共に前記定着部におけるシートの搬送速度を変更可能な定着部駆動手段と、前記転写部と前記定着部との間におけるループが形成される部位でシート搬送方向と直交するシート幅方向の複数個所に配設され、それぞれシートの位置を検知する複数の検知手段と、前記複数の検知手段のうちシートに当接し得るいずれもが所定の当接位置よりも高いことを検知すると、前記定着部におけるシートの搬送速度が前記転写部におけるシートの搬送速度よりも速くなるように前記定着部駆動手段を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、定着ローラや転写ローラの各々に長手方向における外径差や加圧力等の差に起因してシート幅方向のループ量に差が生じた場合においても、シートに形成される未定着画像の乱れの発生を好適に防止可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザプリンタの全体構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本実施形態に係るループ検知部を示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係る搬送ガイドに設けられるループ検知部を示す正面図である。
【図4】(a)は、本実施形態に係るループ検知部を示す側面図であり、(b)は、(a)に示すループ検知部を背面側から見た斜視図である。
【図5】(a)は、ループ検知部が第1検知位置に位置した状態を示す側面図であり、(b)は、(a)に示すループ検知部を背面側から見た斜視図である。
【図6】(a)は、ループ検知部が第2検知位置に位置した状態を示す側面図であり、(b)は、(a)に示すループ検知部を背面側から見た斜視図である。
【図7】本実施形態に係るレーザプリンタの制御部を示すブロック図である。
【図8】本実施形態に係る定着部駆動制御部によるループ検知部の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る複数の検知手段としてのループ検知部を備える画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれら複合機器等、搬送されるシートの位置を検知可能なループ検知部を備えた画像形成装置である。以下の実施形態においては、電子写真式のレーザビームプリンタ装置(以下、「レーザプリンタ」という)を用いて説明する。
【0013】
まず、レーザプリンタ1の概略構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るレーザプリンタ1の全体構造を模式的に示す断面図である。図1に示すように、レーザプリンタ1は、シートSを収納するシート収納部2と、画像を形成する画像形成部3と、画像形成部3で形成した画像をシートSに転写する転写部としての転写ローラ4と、シートSの位置を検知するループ検知部6と、シートSに転写された未定着の画像を定着させる定着部7と、画像が定着されたシートSを排出する排出部8と、を備える。
【0014】
シート収納部2は、シートSが積載収納される収納カセット20と、収納カセット20に収納されたシートSを給送する給送ローラ21と、給送ローラ21により給送されるシートSを1枚ずつに分離する分離ローラ対22と、を備える。
【0015】
画像形成部3は、像担持体としての感光体ドラム30と、感光体ドラム30に静電潜像を形成する露光装置32と、不図示の帯電器と、不図示の現像器等を備える。感光体ドラム30、帯電器及び現像器は、プロセスカートリッジ31として一体化しており、レーザプリンタ1に着脱可能に構成されている。転写ローラ4は、感光体ドラム30に圧接することで感光体ドラム30に担持されたトナー像をシートSに転写しながら搬送する。
【0016】
ループ検知部6は、転写ローラ4と定着部7との間に配設された搬送ガイド5に回動自在に支持されており、転写ローラ4と定着部7との間でシートSの搬送方向と直交する方向の位置を検知する。なお、ループ検知部6については、後に詳しく説明する。
【0017】
定着部7は、内部にヒータ(図示せず)を内蔵した定着フィルム70と、定着フィルム70に圧接する加圧ローラ71とを備える。加圧ローラ71は、図1においては不図示の定着部駆動手段としての定着部駆動装置72(後述の図7参照)に接続されており、定着部駆動装置72により回転駆動するように構成されている。定着部7は、定着部駆動装置72により加圧ローラ71が回転駆動することにより、圧接する定着フィルム70を従動回転させて、シートSに形成された未定着のトナー像を加熱及び加圧によりシートSに定着させながら搬送する。
【0018】
なお、定着部駆動装置72は、定着部7における搬送速度を転写ローラ4と感光体ドラム30とのニップにおける搬送速度よりも遅い速度(以下、「第1搬送速度」という)と、第1搬送速度よりも速い速度(以下、「第2搬送速度」という)に変更可能に構成されており、本実施形態においては、第2搬送速度は、第1搬送速度よりも15%速くなるように設定されている。例えば、転写ローラ4と感光体ドラム30とのニップにおける搬送速度を100%とすると、第1搬送速度は、90%であり、第2搬送速度は、105%に設定される。また、定着部駆動装置72は、後述する定着部駆動制御部90により駆動が制御されている。定着部駆動制御部90による定着部駆動装置72の駆動制御については、後に詳しく説明する。
【0019】
次に、上述のように構成されたレーザプリンタ1の画像形成処理について説明する。シート給送指令(コピーON)等に基づいて、給送ローラ21が収納カセット20からシートSを引き出して分離ローラ対22に給送すると、分離ローラ対22が引き出されたシートSを1枚ずつに分離して搬送ローラ対10へ受け渡す。搬送ローラ対10は、受け渡されたシートをレジストローラ対11に搬送し、レジストローラ対11は、所定のタイミングになるまでシートSを待機させる。
【0020】
このとき画像形成部3では、露光装置32がレーザービームをポリゴンミラーにより走査露光して、感光体ドラム30の表面に画像データに対応する静電潜像を形成する。感光体ドラム30に形成された静電潜像は、プロセスカートリッジ31内の現像器によってトナーを付着させてトナー像に現像される。
【0021】
感光体ドラム30にトナー像が形成されると、レジストローラ対11は、感光体ドラム30に形成されたトナー像の先頭にタイミングを合わせてシートSを感光体ドラム30及び転写ローラ4のニップに送り込む。転写ローラ4には、トナー像の帯電極性と逆極性の転写バイアスが印加されており、感光体ドラム30及び転写ローラ4のニップでは、感光体ドラム30のトナー像が、感光体ドラム30と転写ローラ4との間に形成される電界に応答してシートSの表面に移動する。
【0022】
感光体ドラム30及び転写ローラ4のニップでトナー像が転写されたシートSは、感光体ドラム30と転写ローラ4とが回転することで、搬送ガイド5にガイドされつつ定着部7へ搬送される。定着部7では、定着フィルム70及び加圧ローラ71のニップをシートSが通過する際に、トナー像が加熱及び加圧を受けて融解し、シートSの表面に固着して定着される。
【0023】
ここで、本実施形態においては、転写ローラ4と定着部7とは、シートSの搬送方向における長さよりもその間隔が短くなるように配置されている。そのため、定着部7に搬送されたシートSは、感光体ドラム30及び転写ローラ4のニップと、定着部7とのそれぞれで挟持された状態で搬送されるタイミングがある。これにより、この状態でシートSに所定のループを形成させ、形成されたループのループ量(シートの位置)に基づいて加圧ローラ71の回転速度(搬送速度)を調整することで、シートSが引っ張られすぎたり、撓みすぎたりしないようにしている。例えば、感光体ドラム30及び転写ローラ4のニップでの搬送速度は、250mm/sに設定され、定着部7での搬送速度は、225(250から10%分を引いた値で前述の第1搬送速度)mm/sに設定される。
【0024】
定着部7から排出された定着済みのシートSは、搬送ローラ12から排出ローラ対13に受け渡されてレーザプリンタ1の上面の排出部8へ排出される。これにより、レーザプリンタ1における画像形成動作が終了する。
【0025】
次に、ループ検知部6について、図2から図6(b)を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係るループ検知部6を示す斜視図である。図3は、本実施形態に係る搬送ガイド5に設けられるループ検知部6を示す正面図である。図4(a)は、本実施形態に係るループ検知部6を示す断面図である。図4(b)は、図4(a)に示すループ検知部6を背面側から見た斜視図である。図5(a)は、ループ検知部6が第1検知位置に位置した状態を示す側面図である。図5(b)は、図5(a)に示すループ検知部6を背面側から見た斜視図である。図6(a)は、ループ検知部6が第2検知位置に位置した状態を示す側面図である。図6(b)は、図6(a)に示すループ検知部6を背面側から見た斜視図である。なお、図4(a)、図5(a)及び図6(a)においては、第1遮光部63a及び第2遮光部64aは、省略している。
【0026】
図2に示すように、ループ検知部6は、搬送ガイド5に設けられている。ここで、搬送ガイド5は、感光体ドラム30及び転写ローラ4のニップから搬送されるシートSが定着部7に向かうようにガイドするものであり、転写ローラ4と定着部7との間においてシートSのループが形成される側に配設されている。つまり、ループ検知部6は、搬送ガイド5に向かって形成された、搬送ガイド5上(ループが形成される部位)を搬送するシートS(のループ)に当接して、転写ローラ4と定着部7との間のシートSのループ量を検知するように構成されている。以下、ループ検知部6について具体的に説明する。
【0027】
ループ検知部6は、シートの位置を検知可能な一対の検知手段としての第1検知部60a及び第2検知部60bを備えて構成されている。第1検知部60a及び第2検知部60bは、シートの位置(接触高さ)を検知することによりシートのループ高さ(ループ量)を検知する。なお、ここでいうシートの位置とは、感光体ドラム30及び転写ローラ4のニップと定着部7のニップとを結んだ基準面からの垂直方向における距離である。また、所定の位置より高いとは、基準面からの距離が所定の位置までの距離よりも長いことをいい、所定の位置よりも低いとは、基準面からの距離が所定の位置までの距離よりも短いことをいう。
【0028】
第1検知部60a及び第2検知部60bは、シート搬送方向Tと直交するシート幅方向Wにおいて、中央を挟んだ両側に、所定距離離間して配設されている。本実施形態においては、図3に示すように、搬送ガイド5のシート幅方向Wの中心Xから等間隔離間した位置にそれぞれ配設されており、シート幅方向WにおけるシートSの両端部のループ量を検知可能に構成されている。なお、第1検知部60a及び第2検知部60bは同じ構成であるため、以下においては、第1検知部60aについて説明し、第2検知部60bについては末尾の符号aの代わりに符号bを付すものとしてその説明を省略する。
【0029】
図4(a)及び図4(b)に示すように、第1検知部60aは、当接部61aと、アーム部62aと、第1遮光部63a及び第2遮光部64aと、第1センサ65a及び第2センサ66aと、を備えて構成されている。
【0030】
当接部61aは、シートSが形成するループに当接させるためのものである。本実施形態においては、当接部61aは、シート幅が異なる規格のシート(例えば、A4及びA5)を搬送させた場合においても、そのシートのシート幅方向両端に接触し得るようなシート幅方向の長さを有している。つまり、当接部61aは、シート幅が異なる規格のシートが形成するループと当接可能となるように、シート幅方向Wに長く形成されている(例えば、前述の図3参照)。
【0031】
アーム部62aは、先端に当接部61aが連結されており、基端部は回転軸67aを中心に搬送ガイド5に回動自在に支持されている。アーム部62aは、当接部61aが搬送されているシートSに当接することで回動するように構成されており、例えば、当接部61aが当接するシートSのループ量が大きいと、当接部61aの移動量が大きくなり、アーム部62aの回動量も大きくなる。また、アーム部62aは、当接部61aが搬送ガイド5からシート搬送路に露出するように不図示のねじりコイルばね等の付勢部材によりシート搬送路に向けて付勢されており、搬送ガイド5と係止することで当接部61aがシート搬送路に露出した状態で停止するように構成されている。なお、不図示の付勢部材は、コシ(剛性)の弱い薄紙等のシートが当接部61aに当接した場合においても、アーム部62aが回動し得る付勢力でアーム部62aを付勢している。
【0032】
第1遮光部63aは、アーム部62aの回動に連動して移動するようにアーム部62aに連結されている。第1遮光部63aは、搬送ガイド5上を搬送するシートSがループを形成して所定の当接位置としての第1当接位置になると、第1センサ65aを遮光(ON)するように形成されている。本実施形態においては、シートSの位置が上述の基準面から3〜15mmの間、遮光するように構成されている。第2遮光部64aは、アーム部62aの回動に連動して回動するようにアーム部62aに連結されている。第2遮光部64aは、シートSが第1当接位置よりも高い第2当接位置になると、第2センサ66aを遮光(ON)するように形成されている。本実施形態においては、シートSの位置が基準面から10〜15mm以上になると遮光するように構成されている。なお、第1当接位置は、第1遮光部63aの大きさを調整することにより変更可能であり、第2当接位置は、第2遮光部64aの大きさを調整することにより変更可能となっている。また、第1遮光部で回動角度によって異なるセンサを遮光する構成にすることで、第1当接位置及び第2当接位置を検知可能に構成してもよく、この場合、第2遮光部は設けなくてもよい。
【0033】
第1センサ65aは、アーム部62aが第1検知位置まで回動すると、第1遮光部63aにより遮光されるように配設されており、発光部と受光部とを有する光学センサ(例えば、フォトインタラプタ)等により構成されている。第2センサ66aは、アーム部62aが更に回動して、第2検知位置まで回動まですると、第2遮光部63aにより遮光されるように配設されており、第1センサ65aと同様の光学センサ(例えば、フォトインタラプタ)等により構成されている。
【0034】
このように、搬送ガイド5上を搬送するシートSがループを形成して第1当接位置になると、当接部61aがシートに押されてアーム部62aが第1検知位置まで回動し、第1遮光部63aが第1センサ65aを遮光する。これにより、第1検知部60aは、第1センサ65aがON状態、即ち、シートSのループが第1当接位置よりも高い状態(例えば、基準面から3mm以上)であることを検知する。更に、第1検知部60aは、シートSが第2当接位置になると、当接部61aがシートに押されてアーム部62aが第2検知位置まで回動し、第2遮光部64aが第2センサ66aを遮光する。これにより、第1検知部60aは、第2センサ66aがON状態、即ち、シートSのループが第2当接位置になった(例えば、基準面から10mm以上)ことを検知する。
【0035】
なお、第1遮光部63aが第1センサ65aを遮光せず(OFF状態)、第2遮光部64aが第2センサ66aを遮光していない(OFF状態)状態においては、第1検知部60aは、シートSのループが第1当接位置よりも低い状態(例えば、基準面から0〜2mm)であるであることを検知する(図4(a)及び図4(b)に示す状態)。
【0036】
次に、本実施形態に係るレーザプリンタ1の制御部9が有する定着部駆動制御部90について、図7を参照しながら説明する。図7は、本実施形態に係るレーザプリンタ1の制御部を示すブロック図である。
【0037】
図7に示すように、制御部9は、定着部7でのシートSの搬送速度を制御する定着部駆動制御部90と、第1検知部60a及び第2検知部60bで検知された当接位置の差が所定の大きさになったことを判断する判断部としてのエラー判定部91とを有している。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示すように、定着部駆動制御部90は、第1検知部60aの第1センサ65a及び第2センサ66aと、第2検知部60bの第1センサ65b及び第2センサ66bとがOFF状態の場合においては、定着部駆動装置72を制御して、定着部7におけるシートSの搬送速度を第1搬送速度にする。つまり、定着部駆動装置72の駆動制御の開始時においては、定着部7におけるシートSの搬送速度は、第1搬送速度に設定されており、ループが形成され得る状態となっている。
【0040】
次に、シートSのループが大きくなって、第1検知部60aの第1センサ65a及び第2検知部60bの第1センサ65bの両方がON状態になると、定着部駆動制御部90は、定着部駆動装置72を制御して、定着部7におけるシートSの搬送速度を第2搬送速度にする制御を行う。これにより、形成されたループが小さくなる。なお、第1検知部60aの第1センサ65a及び第2検知部60bの第1センサ65bのいずれか一方がON状態になった場合においては、第1搬送速度を維持する。
【0041】
このように、第1及び第2検知部の第1センサのいずれもが所定の当接位置よりも高いことを検知して初めて、定着部7におけるシートSの搬送速度を転写ローラ4におけるシートSの搬送速度よりも速くなるようにするのは、シートSのループ量にシート幅方向における差が生じるおそれがあるからである。例えば、一方のシート幅方向の端部ではループが所定の当接位置よりも高いが、他方のシート幅方向の端部ではループが所定の当接位置よりも低い場合が有り、その時にシートSの搬送速度を速くすると、他方のシート幅方向の端部側のシートSを引っ張ることになり、未定着画像の乱れが発生するおそれがあるからである。このため、第1及び第2検知部の一方の第1センサがON状態になった場合においては、第2搬送速度に変更することなく、第1搬送速度を維持する。
【0042】
一方、第1検知部60aの第1センサ65a及び第2センサ66aがON状態になり、第2検知部60bの第1センサ65b及び第2センサ66bがOFF状態の場合には、第1検知部60aと第2検知部60bとにより検知されたシートSの接触高さの差が所定の差よりも大きく、ループの変形量が大きいものとエラー判定部91が判断して、定着部駆動装置72を停止して、表示部14にエラー表示する制御を行う。同様に、第2検知部60bの第1センサ65b及び第2センサ66bがON状態になり、第1検知部60aの第1センサ65a及び第2センサ66aがOFF状態の場合には、第1検知部60aと第2検知部60bとにより検知されたシートSの接触高さの差が所定の差よりも大きく、ループの変形量が大きいものとエラー判定部91が判断して、定着部駆動装置72を停止して、表示部14にエラー表示する制御を行う。
【0043】
このように、エラー判定部91が判断するのは、第1及び第2検知部でシートSに当接する差が大きいと、例えば、第1検知部に合わせて定着部7におけるシートSの搬送速度を変更すると第2検知部側のシートSには逆方向に働く(遅くしたいのに引っ張ったり、速くしたいのにループを大きくしたりする)おそれがあり、定着部7におけるシートSの搬送速度の変更ができないからである。
【0044】
なお、第1検知部60aの第1センサ65a及び第2センサ66aがON状態になった場合においても、第2検知部60bの第1センサ65bがON状態の場合には、第2搬送速度が維持される。同様に、第2検知部60bの第1センサ65b及び第2センサ66bがON状態になった場合においても、第1検知部60aの第1センサ65aがON状態の場合には、第2搬送速度が維持される。
【0045】
なお、本実施形態においては、エラー判定部91は、エラー表示を行うと共に、画像形成処理を停止させる構成としたが、例えば、ローラの加圧量や位置を自動調整し、ループの変形量を補正するように制御する構成であってもよい。
【0046】
次に、レーザプリンタ1の定着部駆動制御部90による定着部駆動装置72の駆動制御について、図8を参照しながら説明する。図8は、本実施形態に係る定着部駆動制御部90によるループ検知部6の制御動作を示すフローチャートである。
【0047】
前述した画像形成処理が開始されると、感光体ドラム30からトナー像がシートSに転写され、トナー像が転写されたシートSは定着部7へと搬送される。そして、定着部7においてトナー像が定着される。その際、レーザプリンタ1は、転写ローラ4と定着部7との間隔が、シートSの長さよりも短く設定されている。そのため、シートSの先端が定着部7に進入した時点では、感光体ドラム30と転写ローラ4とのニップにおいて、シートSの後端部にトナー像の転写がまだ行われていることになる。
【0048】
これにより、シートSの先端が定着部7に突入した時点では、定着部駆動制御部90によって、定着部7におけるシートSの搬送速度が感光体ドラム30及び転写ローラ4のニップにおける搬送速度よりも遅い第1搬送速度に設定されている。その結果、転写ローラ4と定着部7との間では、シートSが搬送ガイド5側に撓んで次第にループが形成される。
【0049】
ここで、図8に示すように、このループの高さが第1当接位置になると、例えば、アーム部62aが第1検知位置まで回動して、第1遮光部63aが第1センサ65aを遮光する。これにより、第1検知部60aの第1センサ65aがON状態となる。同様に、第2検知部60bの第1センサ65bもON状態となる。その間も、シートSのループは、ある程度成長するが、第1検知部60aの第1センサ65a及び第2検知部60bの第1センサ65bの両方がON状態となると、定着部駆動制御部90は、定着部7におけるシートSの搬送速度を第2搬送速度に切り替える(ステップS10、S20)。
【0050】
定着部7におけるシートSの搬送速度が第2搬送速度になると、シートSのループは、徐々に低くなる。このループの高さが第1接触高さよりも低くなると、シートSのループが第1センサ65a又は第1センサ65bによって検知され、第1検知部60aの第1センサ65a又は第2検知部60bの第1センサ65bがOFF状態となる。第1検知部60aの第1センサ65a又は第2検知部60bの第1センサ65bがOFF状態となると、定着部駆動制御部90は、定着部7におけるシートSの搬送速度を第2搬送速度から第1搬送速度に切り替える。定着部7におけるシートSの搬送速度が第1搬送速度になると、シートSのループは再び徐々に高くなる。そして、これらの動作をシートSの後端が感光体ドラム30と転写ローラ4のニップを通過するまで繰り返すことになる(ステップS30、S40)。
【0051】
ここで、第1及び第2検知部のうちの1つの第1センサが所定の当接位置よりも低いことを検知すると、もう一方の第1検知センサによる前記検知を待つことなく、定着部におけるシートSの搬送速度を転写部におけるシートSの搬送速度よりも遅くするのは、シートSに生じているシート幅方向におけるループ量の差を考慮しているためである。このようにすることで、転写されたシートSを引っ張ることによる未定着画像の乱れの発生を防止できる。
【0052】
一方、第1検知部60aの第2センサ66a及び第2検知部60bの第2センサ66bの少なくとも一方がON状態になる(第2検知位置を検知)すると、エラー判定部91がループの変形量が大きいと判断して、画像形成動作を停止させ、表示部14にエラー表示を行う。そして、所定のサービスセンターにサービス呼び出し(サービスマンコール)を行い(ステップS50、S60)、画像の乱れを未然に防止する。そして、定着部駆動制御部90は、サービスモードに入り(ステップS70)、表示部14に所定の調整方法を表示する(ステップS80)。そして、サービスマン等により、例えば、転写ローラ圧の調整などでループ左右差を設定範囲内に調整が行われ、調整終了が入力されると、エラーが解除され、良好な画像を形成することが可能となる。
【0053】
以上のような構成を有する本実施形態に係るレーザプリンタ1によれば、以下のような効果を奏する。本実施形態に係るレーザプリンタ1は、第1検知部60aに第1センサ65a及び第2検知部60bの第2センサ66bの両方が第1当接位置を検知した場合に、定着部7におけるシートSの搬送速度を第2搬送速度に切り換える。そのため、例えば、定着フィルム70や転写ローラ4の長手方向での外径差や加圧力の差等によって、ループ高さがシートの幅方向で変化した場合(シート幅方向全域にループが形成されていない場合)においても、シートを引っ張ることを防止することができる。これにより、定着部7によって未定着のトナー像が転写されたシートSを引っ張ることによる未定着画像の乱れの発生を防止することができる。つまり、好適に、ループ量を減少させることができる。
【0054】
また、この状態でシートSの後端部の転写が終了していない場合には、第1検知部60a又は第2検知部60bのうちの1つが第1当接位置よりも低くなったことを検知した場合に、定着部7におけるシートSの搬送速度を再び第1搬送速度に切り換える。そのため、例えば、シートの端部等においてループが形成されていない状態でシートを引っ張ることを防止することができる。これにより、定着部7によって未定着のトナー像が転写されたシートSを引っ張ることによる未定着画像の乱れの発生を防止することができる。
【0055】
このように、本実施形態に係るレーザプリンタ1は、第1検知部60aと第2検知部60bを用いて、シートSのループ量に応じて定着部7の搬送速度を切り換える。そのため、定着フィルム70や転写ローラ4の長手位置での外径差や加圧力の差の発生によって、ループ高さがシートSの幅方向で変化した場合でも、シートSの未定着のトナー像の乱れの発生を好適に防止することができる。
【0056】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ1は、当接部61a及び当接部61bがシート幅方向Wに長く形成されている。そのため、例えば、シート幅が異なる種類のシートを搬送させた場合においても、各シートが形成するループと当接可能となる。つまり、本実施形態においては、汎用性の高いレーザプリンタ1を提供することができる。
【0057】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ1は、第1検知部60a及び第2検知部60bが検知する当接位置の差に基づいてループの変形量を判断する。そのため、例えば、差が大きい場合には、変形量が大きいことが判断可能となる。これにより、ループの変形量が大きくなった場合に生じ得る未定着画像の乱れの発生等を未然に防止することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されない。
【0059】
例えば、本実施形態においては、第1検知部60a及び第2検知部60bの2つの検知部を用いて説明したが、本発明においてはこれに限定されない。本発明においては、ループが形成される搬送ガイド上におけるシート幅方向の複数個所に、複数の検知部を用いる構成であればよい。
【0060】
また、本実施形態においては、定着フィルムと加圧ローラとを備える定着部7を用いて説明したが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、定着フィルムの代わりに定着ローラを用いる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 プリント装置(画像形成装置)
3 画像形成部
4 転写ローラ(転写部)
5 搬送ガイド
6 ループ検知部(ループ検知手段)
7 定着部
9 制御部
30 感光体ドラム(像担持体)
60a 第1検知部(一対の検知手段)
60b 第2検知部(一対の検知手段)
72 定着部駆動装置(定着部駆動手段)
90 定着部駆動制御部
91 エラー判定部(判断部)
T シート搬送方向
W シート幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に担持されたトナー像をシートに転写する転写部と、前記転写部で転写されたトナー像をシートに定着する定着部と、を備え、前記定着部におけるシートの搬送速度を前記転写部におけるシートの搬送速度より遅くすることにより、搬送されるシートにループを形成させた状態で搬送する画像形成装置において、
前記定着部を駆動すると共に前記定着部におけるシートの搬送速度を変更可能な定着部駆動手段と、
前記転写部と前記定着部との間におけるループが形成される部位でシート搬送方向と直交するシート幅方向の複数個所に配設され、それぞれシートの位置を検知する複数の検知手段と、
前記複数の検知手段のうちシートに当接し得るいずれもが所定の当接位置よりも高いことを検知すると、前記定着部におけるシートの搬送速度が前記転写部におけるシートの搬送速度よりも速くなるように前記定着部駆動手段を制御する制御部と、を備えた、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の検知手段のうちの1つが前記所定の当接位置よりも低いことを検知すると、前記定着部におけるシートの搬送速度が前記転写部におけるシートの搬送速度よりも遅くなるように前記定着部駆動手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の検知手段により検知された複数の当接位置の差が所定の大きさになったことを判断する判断部を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の検知手段は、シート幅方向の中央を挟んだ両側に配設される一対の検知手段からなり、
前記一対の検知手段は、シート幅が異なる種類のシート幅方向両端に接触し得るようなシート幅方向の長さを有する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−19956(P2013−19956A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150969(P2011−150969)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】